以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置の電気制御部の構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されるものである。したがって、エンジンEGが本発明の車両走行用の駆動力を得るための駆動手段に相当する。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、制御手段としての図2に示す空調制御装置60とを備えている。
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、第1ヒータコア14、第2ヒータコア15等を収容したものである。
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ71によって駆動され、この電動アクチュエータ71は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン12aを電動モータ12bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御信号によって回転数(送風量)が制御される。
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、加熱冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としての第1、第2ヒータコア14、15が配置されている。第1ヒータコア14は、エンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する第1加熱用熱交換器である。第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14の空気流れ下流側に配置されており、エンジンEGの冷却水と第1ヒータコア14通過後の空気とを熱交換させて、第1ヒータコア14通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器である。ちなみに、冷却水は、水もしくは添加成分を含む水である。
車両用空調装置1は、第1、第2ヒータコア14、15とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30を有している。この冷却水回路30には、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とが並列して設けられている。
第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31は、分岐点31aと合流点31bを有し、エンジンEGから流出した冷却水が、分岐点31aで分岐して第1ヒータコア14に向かって流れる第1ヒータコア14用の冷却水流路33と、第2ヒータコア15に向かって流れる第2ヒータコア用の冷却水流路34とを有している。合流点31bで、第1、第2ヒータコア14、15をそれぞれ通過した冷却水が合流する。このように、第1、第2ヒータコア14、15は、冷却水流れに対して並列に配置されている。
第2ヒータコア用の冷却水流路34においては、第2ヒータコア15よりも冷却水流れの下流側に吸熱部としての吸熱側熱交換器51が設けられ、第2ヒータコア15よりも冷却水流れの上流側に放熱部としての放熱側熱交換器52が設けられている。さらに、第2ヒータコア用の冷却水流路34の外側において、吸熱側熱交換器51と放熱側熱交換器52との間にペルチェ素子53が設けられている。
吸熱側熱交換器51は、冷却水から吸熱するための熱交換器であり、放熱側熱交換器52は、冷却水に放熱するための熱交換器である。吸熱側熱交換器51の内部を流れる冷却水の向きと、放熱側熱交換器52の内部を流れる冷却水の向きは正反対であり、冷却水が対向して流れるようになっている。
ペルチェ素子53は、吸熱側熱交換器51と熱的に接続された吸熱面と放熱側熱交換器52と熱的に接続された放熱面とを有し、直流電流が流れることで、吸熱面が吸熱するとともに放熱面が放熱するものである。すなわち、ペルチェ素子53は、吸熱面側から放熱面側へ熱を汲み上げる汲上手段である。この汲み上げられる熱量は、電流量の大きさによって調整される。
なお、熱的に接続されたとは、熱が伝導する状態となっていることを意味する。したがって、ペルチェ素子53は、直流電流が流れると、吸熱側熱交換器51を介して、第2ヒータコア15流出側の冷却水から吸熱し、放熱側熱交換器52を介して、第2ヒータコア15流入側の冷却水に放熱するようになっている。このペルチェ素子53は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、電源のON、OFFや、ON時の電流量等が制御される。
エンジンEGの冷却水入口側には、サーモスタット42が設けられており、このサーモスタット42によって、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とを流れる冷却水の流量が調整される。また、冷却水回路30には、冷却水流れを形成する電動式のウォータポンプ43が設けられている。このウォータポンプ43は、エンジンEGの停止時であっても、空調制御装置60による制御によって作動する。なお、ウォータポンプ43は、エンジンEGからの動力を受けて作動するものであっても良く、この場合、エンジンEGの停止と共にウォータポンプ43も停止する。
エンジンEGの冷却水出口付近には、エンジンEGから流出した冷却水の温度を検出する第1冷却水温度センサ65が設けられている。また、冷却水回路30の放熱側熱交換器52と第2ヒータコア15との間に、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度を検出する第2冷却水温度センサ66が設けられている。
一方、加熱冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および加熱冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
したがって、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ72によって駆動され、この電動アクチュエータ72は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26が設けられている。
デフロスタ開口部24には、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。フェイス開口部25には、図示しないフェイスダクトが接続され、フェイスダクト先端部のフェイス吹出口から車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。また、フット開口部26には、図示しないフットダクトが接続され、フットダクト先端部のフット吹出口から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、ケーシング11には、吹出口モードを切り替えるための吹出口モードドアとして、フロスタ開口部24を開閉するデフロスタドア24aと、フェイス開口部25を開閉するフェイスドア25aと、フット開口部26を開閉するフットドア26aとが設けられている。これらの吹出口モードドア24a、25a、26aは、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ73によって駆動され、この電動アクチュエータ73は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機12、各種電動アクチュエータ71、72、73、ペルチェ素子53等の作動を制御する。
また、空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Tamを検出する外気センサ62(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器13から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、エンジン冷却水温度TWを検出する第1、第2冷却水温度センサ65、66(冷却水温度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ70a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ70b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ70c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ70d等が設けられている。
さらに、空調制御装置60は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置80に電気的接続されており、空調制御装置60およびエンジン制御装置80は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置60がエンジン制御装置80へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
次に、図3により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図3は、空調制御装置60の制御処理を示すフローチャートである。なお、図3中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
次のステップS2では、操作パネル70の操作信号や、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群61〜66等の検出信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ70cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
ステップS3では、車室内吹出空気の目標吹出空気温度TAOを算出する。目標吹出空気温度TAOは、空調熱負荷、すなわち、車室内設定温度と、車室内温度等の車両環境条件とに基づいて算出され、具体的には、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ70cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
続くステップS4では、空調制御装置60に接続された各種機器の制御目標値、例えば、送風機12の送風量(ブロワレベル)、吸込口モード、吹出口モード、エアミックスドアの開度、エンジン作動要求の要否、ペルチェ素子53のON/OFF等を決定する。送風量、吹出口モード等については、目標吹出空気温度TAOに基づいて決定する。エンジン作動要求の要否については、第1冷却水温度センサ65で検出した冷却水温度TW1が所定の基準温度(エンジン作動の要求水温)よりも低い場合に、エンジン作動要求信号の出力を決定する。なお、ペルチェ素子53のON/OFFの決定については後述する。
その後、ステップS5では、ステップS4で決定された制御目標値が得られるように、空調制御装置60に接続された各種機器やエンジン制御装置80に対して制御信号を出力する。
これにより、送風機12が所望の送風量となるように作動し、所望の吹出口モードとなるように、吹出口モードドアが所定の位置となり、必要に応じてエンジンEGが作動する。
続く、ステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
次に、上述したステップS4での制御目標値の決定処理のうちペルチェ素子53のON/OFFの決定処理を説明する。図4に、ペルチェ素子53のON/OFFの決定処理を説明するためのフローチャートを示す。
ステップS11では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDを算出する。第2ヒータコア吹出空気温度TWDは、第2ヒータコア15からの吹出空気温度であり、第2ヒータコア15で冷却水との熱交換によって空気が加熱されたときの加熱空気温度である。このヒータコア吹出空気温度TWDは、厳密には、第2冷却水温度センサ66で検出した冷却水温度TW2、蒸発器13の通過後の空気温度TE、第2ヒータコア15の熱交換性能等に基づいて算出されるが、冷却水温度TW2と略同一である。
続く、ステップS12では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDと目標吹出空気温度TAOを比較し、TWDがTAOよりも低いか否かを判定する。TWDがTAOよりも低ければ、YES判定して、ステップS13に進み、ペルチェ素子53を通電(ON)状態とする。一方、TWDがTAO以上であれば、NO判定して、ステップS14に進み、ペルチェ素子53を非通電(OFF)状態とする。
したがって、エンジンEGの停止後から長時間経過して、エンジンEGの作動時よりも冷却水温度が低下した場合、TWDがTAOよりも低くなる。そこで、このような場合に、本実施形態では、ペルチェ素子53を通電し、第2ヒータコア15を通過した後の冷却水から吸熱して、第2ヒータコア15に向かう冷却水に放熱させる。これにより、第2ヒータコア15に流入する冷却水温度を上昇させて、冷却水の温度を暖房に必要な温度にすることができる。なお、この場合、空調制御装置60は、エアミックスドア19を最大暖房位置とすることが好ましい。
一方、エンジンEGの作動時や、エンジンEGの停止後からの経過時間が短く、冷却水温度がエンジンEGの作動時に近い場合のように、冷却水の温度が十分に高く、TWDがTAO以上となる場合であれば、ペルチェ素子53による冷却水の加熱が不要なので、空調制御装置60はペルチェ素子53を非通電とする。この場合、空調制御装置60は、従来と同様に、エアミックスドア19の位置(開度)を制御することによって、空調風の温度を調整する。
次に、本実施形態の主な効果について説明する。
(1)本実施形態によれば、エンジンEGの作動の代わりに、ペルチェ素子53の作動によって、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度を上昇させるようになっているので、ペルチェ素子53を備えていない場合と比較して、エンジンEGの作動頻度を低減でき、エンジンEGの燃費を向上させることができる。
また、ペルチェ素子53によって冷却水の温度を上昇させているので、ペルチェ素子53を備えていない場合と比較して、エンジンEGの停止直後からの冷却水の温度低下を遅くでき、冷却水温度TW1がエンジン作動の要求水温より低くなるまでの時間を長くすることができる。よって、このことからも、本実施形態によれば、ペルチェ素子53を備えていない場合と比較して、エンジンEGの作動頻度を低減できると言える。
(2)ところで、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度は、暖房の熱源として必要な温度、例えば、60℃以上であることが望まれる。一方、エンジンEGの内部を流れる冷却水の温度は、エンジンEGの各部が暖まってエンジンEGが良好に作動する下限温度以上、例えば、40℃以上であることが望まれる。
このため、ペルチェ素子53を有していない従来の車両用空調装置では、暖房の熱源を確保するため、冷却水温度が60℃以上となるように、エンジン作動の要求水温を例えば60℃付近に設定する必要があった。
これに対して、本実施形態によれば、エンジンEGの停止時に、冷却水の温度が60℃を下回っても、ペルチェ素子53を作動させて、冷却水の温度を上昇させることができるので、エンジン作動の要求水温を従来よりも低い温度、例えば40℃付近に設定することができる。
ちなみに、この要求水温の設定については、ペルチェ素子53の作動によっても、暖房に必要な温度に維持できなくなる場合や、エンジンEGが良好に作動する温度を維持できなくなる場合に、エンジンが作動するように、エンジン作動の要求水温を設定すれば良い。
(3)本実施形態では、ペルチェ素子53が空気ではなく、エンジンEGの冷却水から吸熱している。
ここで、ペルチェ素子53の吸熱対象を、エンジンEGの冷却水の代わりに、外気とすることもできる。しかし、ヒータコアによる送風空気の加熱能力を確保するために、エンジン冷却水を所望温度まで上昇させようとする場合、外気温が低いほど、ペルチェ素子53に要求される熱の汲上能力が大きくなり、ペルチェ素子53の消費電力が大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態によれば、冬場の外気温よりも温度が高いエンジンEGの冷却水から吸熱しているので、外気から吸熱する場合と比較して、ペルチェ素子53から冷却水への放熱量を多くできる。この結果、冷却水を所望温度まで上昇させるためのペルチェ素子53の消費電力を低減できる。
ちなみに、空調制御装置60は、冷却水温度TW1がエンジン作動の要求水温よりも低い場合にエンジン作動を要求するようになっており、本実施形態では、少なくとも冷却水温度を40℃以上としているので、常に、冷却水温度は外気温よりも高くなっている。
(4)ペルチェ素子53を有していない従来の車両用空調装置では、第2ヒータコア15から流出した冷却水がそのままエンジンEGに流入するので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量が、エンジンEGの表面から放出されていた。
これに対して、本実施形態では、ペルチェ素子53によって、第2ヒータコア15から流出した冷却水から熱を汲み上げているので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量をさらに暖房に利用することができ、従来よりも冷却水の熱量を有効に利用できる。
(第2実施形態)
図5に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態の冷却水回路30は、第2ヒータコア用の冷却水流路34において、放熱側熱交換器52に流入する前の冷却水の一部を吸熱側熱交換器51に導く第1バイパス流路35と、第1バイパス流路35に流れる冷却水の流量を調整する第1流量調整バルブ36とを有している。
第1バイパス流路35は、一端が放熱側熱交換器52の上流側に連なり、他端が第2ヒータコア15と吸熱側熱交換器51との間に連なっている。このため、この第1バイパス流路35を流れる冷却水は、放熱側熱交換器52と第2ヒータコア15を迂回して、放熱側熱交換器52で放熱しないとともに第2ヒータコア15で空気と熱交換せずに、吸熱側熱交換器51に流入する。
第1流量調整バルブ36は、放熱側熱交換器52に向かって冷却水が流れる冷却水流路と第1バイパス流路35との分岐点に配置されている。この流量調整バルブ36は、放熱側熱交換器52に向かって流れる冷却水の流量と、第1バイパス流路35を流れる冷却水の流量とを調整するものである。なお、第1流量調整バルブ36は、第1バイパス流路35の途中に配置されていても良い。
本実施形態では、空調制御装置60は、ペルチェ素子53の通電時に、第1バイパス流路35に冷却水の一部が流れ、ペルチェ素子53の非通電時に、第1バイパス流路35の冷却水流量が0となるように、第1流量調整バルブ36を制御する。
これにより、ペルチェ素子53の通電時では、放熱側熱交換器52に流入する前の冷却水の一部が吸熱側熱交換器51に導かれるので、放熱側熱交換器52に流入する冷却水の温度と、吸熱側熱交換器51に流入する冷却水の温度とを近づけることができる。ここで、ペルチェ素子53は、吸熱面と放熱面との温度差が小さいほど、放熱量が多いことが知られている。したがって、本実施形態によれば、第1バイパス流路35を有していない場合と比較して、放熱側熱交換器52で冷却水に放熱される放熱量を多くでき、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度上昇を大きくできる。
また、本実施形態では、ペルチェ素子53の通電時に、空調制御装置60は、第1流量調整バルブ36を制御して、第2ヒータコア15に要求される暖房能力に応じて、第1バイパス流路35の冷却水流量を調整する。
例えば、吹出口からの吹出風量が少ないときのように、第2ヒータコア15に要求される暖房能力が小さい場合、第1バイパス流路35を流れる冷却水の流量を、加熱側熱交換器52を流れる冷却水の流量よりも多くする。この場合、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を少なくしているので、放熱側熱交換器52での放熱による冷却水の温度上昇が大きくなる。
また、吹出口からの吹出風量が多いときのように、第2ヒータコア15に要求される暖房能力が大きい場合、第1バイパス流路35を流れる冷却水の流量を、加熱側熱交換器52を流れる冷却水の流量よりも少なくする。このように、加熱側熱交換器52を流れる冷却水の流量を多くすることで、第2ヒータコア15の暖房能力を大きくできる。
なお、本実施形態では、第1流量調整バルブ36を用いたが、第1流量調整バルブ36の代わりに、第1バイパス流路35の冷却水流量を0より多い所定量と0との間で切り替える流量切替バルブを用いても良い。
(第3実施形態)
図6に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態の車両用空調装置1は、第2ヒータコア15から吹き出される温風をフット開口部26のみに導くフット専用通路27を有している。このフット専用通路27は、ケーシング11の内部のうち、第2ヒータコア15の空気流れ下流側の空間をフット開口部26側の空間と他の開口部24、25側の空間とに仕切る仕切壁11aによって形成されている。
また、仕切壁11aの第2ヒータコア15の直後には、開口部28とこの開口部28を開閉する開閉ドア28aが設けられている。この開閉ドア28aが開口部28を開くことで、第2ヒータコア15から吹き出される温風をデフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26のいずれにも導くことができる。一方、開閉ドア28aが開口部28を閉じることで、第2ヒータコア15から吹き出される温風をフット開口部26のみに導くようになっている。
また、第1ヒータコア14の方が第2ヒータコア15よりも体格が大きく、開閉ドア28aが開口部28を閉じた場合、第1ヒータコ14から吹き出される温風の一部が、第2ヒータコア15を通過せず、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25に流れるようになっている。
本実施形態では、ペルチェ素子53の通電時において、空調制御装置60が、開閉ドア28aを閉じる制御を行う。これにより、例えば、フット吹出口とサイドフェイス吹出口とから空調風が吹き出されるフットモード時では、フット吹出口から第1、第2ヒータコア14、15で加熱された空気を吹き出し、サイドフェイス吹出口から第1ヒータコア14で加熱された空気を吹き出すので、頭寒足熱の空調を実施でき、乗員の快適性を向上できる。
(第4実施形態)
図7に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
第1実施形態では、第1、第2ヒータコア14、15が冷却水流れに対して並列に配置されていたのに対して、本実施形態では、第1、第2ヒータコア14、15が冷却水流れに対して直列に配置されている。
具体的には、冷却水回路30において、第1、第2ヒータコア用の冷却水流路31は、1つの流路となっており、エンジンEGの冷却水出口から流出した冷却水が、第1ヒータコア14を流れた後、第2ヒータコア15を流れ、エンジンEGの冷却水入口に流入するようになっている。このように、第1ヒータコア14が冷却水流れの上流側に配置され、第2ヒータコア15が冷却水流れの下流側に配置されている。
吸熱側熱交換器51は、第2ヒータコア15よりも冷却水流れの下流側に配置されており、加熱側熱交換器52は、第1ヒータコア14よりも冷却水流れの下流側であって、第2ヒータコア15よりも冷却水流れの上流側に配置されている。
本実施形態においても、ペルチェ素子53によって、吸熱側熱交換器51を介して、第2ヒータコア15で空気と熱交換した後の冷却水から吸熱し、放熱側熱交換器52を介して、第2ヒータコア15に流入する冷却水に放熱するので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
ただし、本実施形態では、第1ヒータコア14で空気と熱交換した後の冷却水が、放熱側熱交換器52に流入するので、第1、第2ヒータコア14、15が冷却水流れに対して並列に配置されている第1実施形態と比較して、放熱側熱交換器52に流入する冷却水の温度が低くなり、第2ヒータコアの暖房能力が低下してしまう。このため、本実施形態よりも第1実施形態の方が好ましい。
(第5実施形態)
図8に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
第1〜第4実施形態の車両用空調装置1は、第1、第2ヒータコア14、15の2つのヒータコアを有していたが、本実施形態の車両用空調装置1は、1つのヒータコア14を有している。
車両用空調装置1は、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30を有している。この冷却水回路30には、ヒータコア14用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とが並列して設けられている。
ヒータコア14用の冷却水流路31においては、ヒータコア14よりも冷却水流れの下流側に吸熱部としての吸熱側熱交換器51が設けられ、ヒータコア14よりも冷却水流れの上流側に放熱部としての放熱側熱交換器52が設けられている。
本実施形態においても、ペルチェ素子53によって、吸熱側熱交換器51を介して、ヒータコア14で空気と熱交換した後の冷却水から吸熱し、放熱側熱交換器52を介して、ヒータコア14に流入する冷却水に放熱するので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第6実施形態)
図9に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態は、第2実施形態と第5実施形態とを組み合わせたものである。
本実施形態では、図8に示す冷却水回路30に対して、放熱側熱交換器52に流入する前の冷却水の一部を吸熱側熱交換器51に導く第1バイパス流路35と、第1バイパス流路35に流れる冷却水の流量を調整する流量調整バルブ36とを設けている。この流量調整バルブ36は、第2実施形態と同様に空調制御装置60によって制御される。したがって、本実施形態においても、第2、第5実施形態と同様の効果を奏する。
(第7実施形態)
図10に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態では、図8に示す冷却水回路30に対して、放熱側熱交換器52に流入する前の冷却水と、吸熱側熱交換器51に流入する前の冷却水との間で熱交換させる熱交換器37を設けている。
具体的には、熱交換器37の内部に、放熱側熱交換器52の冷却水流れ上流側の冷却水が流れるとともに、第2ヒータコア15から流出した冷却水が流れるようになっており、両方の冷却水の間で熱交換がされる。そして、第2ヒータコア15から流出した冷却水は、熱交換器37で熱交換して温度が上昇した後に、吸熱側熱交換器51に流入するようになっている。
これにより、放熱側熱交換器52に流入する冷却水の温度と、吸熱側熱交換器51に流入する冷却水の温度とを近づけることができる。ここで、ペルチェ素子53は、吸熱面と放熱面との温度差が小さいほど、放熱量が多いことが知られている。したがって、本実施形態によれば、熱交換器37を有していない場合と比較して、放熱側熱交換器52で冷却水に放熱される放熱量を多くでき、ヒータコア14に流入する冷却水の温度上昇を大きくできる。
(第8実施形態)
図11に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態では、図8に示す冷却水回路30に対して、放熱側熱交換器52よりも上流側の冷却水の一部を、エンジンEGの冷却水入口に導く第2バイパス流路38と、第2バイパス流路38を流れる冷却水の流量を調整する第2流量調整バルブ39とを設けている。
この第2バイパス流路38は、一端がエンジンEGの冷却水入口の下流側であって放熱側熱交換器52の上流側の冷却水流路に連なり、他端が吸熱側熱交換器51の下流側であってエンジンEGの冷却水出口の上流側に連なっている。このため、この第2バイパス流路38を流れる冷却水は、放熱側熱交換器52、ヒータコア14および吸熱側熱交換器51を迂回して、エンジンEGに流入する。
第2流量調整バルブ39は、放熱側熱交換器52に向かって冷却水が流れる冷却水流路と第2バイパス流路38との分岐点に配置されている。第2流量調整バルブ39は、放熱側熱交換器52に向かって流れる冷却水の流量と、第2バイパス流路38を流れる冷却水の流量とを調整するものである。なお、第2流量調整バルブ39は、第2バイパス流路38の途中に配置されていても良い。
本実施形態では、空調制御装置60は、ペルチェ素子53の通電時に、第2バイパス流路38に冷却水の一部が流れ、ペルチェ素子53の非通電時に、第2バイパス流路38の冷却水流量が0となるように、第2流量調整バルブ39を制御する。
ここで、図8に示す冷却水回路30のように、第2バイパス流路38を有していない場合、ペルチェ素子53が冷却水から吸熱すると、吸熱側熱交換器51から流出する冷却水の温度が低くなるので、エンジンEGの冷却水入口に流入する冷却水と、エンジンEGの冷却水出口から流出する冷却水の温度差が大きくなる恐れがある。この場合、エンジンEGにおける冷却水の入口側部位と出口側部位との間での温度差によって、エンジンEGに熱歪みが生じ、エンジンEGの破損につながってしまう。
これに対して、本実施形態によれば、ペルチェ素子53の通電時に、放熱側熱交換器52よりも上流側の冷却水の一部を、エンジンEGの冷却水入口に導くので、エンジンEGの冷却水入口に流入する冷却水と、エンジンEGの冷却水出口から流出する冷却水との温度差を低減でき、エンジンEGの熱歪みの発生を抑制できる。
なお、エンジンEGの冷却水入口に流入する冷却水と、エンジンEGの冷却水出口から流出する冷却水との温度差を低減するという観点より、第2バイパス流路38に冷却水の一部を流す場合では、放熱側熱交換器52に向かって流れる冷却水の流量よりも、第2バイパス流路38を流れる冷却水の流量を多くすることが望ましい。
また、本実施形態では、第2流量調整バルブ39を用いたが、第2流量調整バルブ39の代わりに、第2バイパス流路38の冷却水流量を0より多い所定量と0との間で切り替える流量切替バルブを用いても良い。
(第9実施形態)
図12に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態では、ヒータコア用の冷却水流路31に対して、ヒータコア14を迂回させる第3バイパス流路54と、この第3バイパス流路54を流れる冷却水の流量を調整する第3流量調整バルブ55とを設けている。
ヒータコア用の冷却水流路31には、エンジンEGの冷却水出口からヒータコア14に向かって冷却水が流れ、ヒータコア14から流出した冷却水がエンジンEGの冷却水入口に向かって冷却水が流れる。第3流量調整バルブ55は、ヒータコア用の冷却水流路31と第3バイパス流路54との分岐点に配置されている。
そして、吸熱側熱交換器51は、ヒータコア14の冷却水流れ下流側ではなく、第3バイパス流路54の途中に吸熱側熱交換器51が配置されている。このため、吸熱側熱交換器51は、ヒータコア14で空気と熱交換した後の冷却水から吸熱するのではなく、エンジンEGの冷却水出口から流出した冷却水から吸熱する。
一方、放熱側熱交換器52は、ヒータコア用の冷却水流路31のうち第3流量調整バルブ55よりも冷却水流れの下流側であって、ヒータコア14の上流側に配置されている。
空調制御装置60は、ペルチェ素子53の通電時では、吸熱側熱交換器51と放熱側熱交換器52の両方に冷却水が流れ、ペルチェ素子53の非通電時では、第3バイパス流路54を閉じてヒータコア14のみに冷却水が流れるように、第3流量調整バルブ55を制御するようになっている。
このように、本実施形態では、ペルチェ素子53の通電時に、吸熱側熱交換器51と放熱側熱交換器52の両方に、エンジンEGの冷却水出口から流出した冷却水が流れることから、ペルチェ素子53の吸熱面と放熱面とが同じ温度となる。よって、本実施形態によれば、ペルチェ素子53による放熱量を多くすることができる。
(第10実施形態)
図13に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
本実施形態の車両用空調装置1は、エンジン用冷却水回路30とは別に、ヒータコア用温水回路90を有している。
エンジン用冷却水回路30は、エンジンEGの冷却水がエンジンEGとラジエータ41との間を循環する閉回路であり、冷却水流路31によって形成されている。
一方、ヒータコア用温水回路90は、エンジン用冷却水回路30とは独立した回路であって、ヒータコア14で送風空気を加熱するための加熱流体としての温水が循環する閉回路である。このヒータコア用温水回路90は、温水流路91によって形成されており、温水流路91の途中に温水流れを形成するウォータポンプ92が配置されている。
そして、本実施形態では、吸熱側熱交換器51はエンジン用冷却水回路30に配置されており、エンジンEGの冷却水から吸熱するようになっている。一方、放熱側熱交換器52はヒータコア用温水回路90に配置されており、温水に放熱するようになっている。このため、ペルチェ素子53は、通電時に、吸熱側熱交換器51を介してエンジンEGの冷却水から吸熱して、放熱側熱交換器52を介してヒータコア14に流入する温水に放熱することで、温水を加熱するようになっている。したがって、本実施形態においても、ヒータコア14は、エンジンEGの冷却水を熱源として、送風空気を加熱していると言える。
また、本実施形態では、冷却水回路30においては、第1冷却水温度センサが検出した冷却水温度TW1が要求水温よりも低下した場合に、空調制御装置60がエンジンEGの作動要求を行う。この要求水温は、エンジンEGが良好に作動できる下限温度、例えば、40℃付近に設定される。これにより、冷却水は、エンジンEGが良好に作動できる下限温度以上に維持される。
一方、温水回路90においては、第2冷却水温度センサが検出した冷却水温度TW2が暖房に必要な温度以上、例えば、60℃以上となるように、空調制御装置60がペルチェ素子53の通電、非通電を制御するとともに、通電時の電流量を制御する。
このように、本実施形態では、ペルチェ素子53によって、エンジンEGの冷却水からヒータコア14を流れる温水に熱を汲み上げることで、温水の温度を暖房に必要な温度以上とするので、エンジンEGの冷却水の温度を暖房に必要な温度以上にする必要がない。したがって、本実施形態によれば、エンジン作動の要求水温を従来よりも低い温度に設定できるので、エンジンEGの作動頻度を低減でき、エンジンEGの燃費を向上できる。
また、本実施形態では、ペルチェ素子53が空気ではなく、エンジンEGの冷却水から吸熱しているので、本実施形態においても、第1実施形態で説明した(3)の効果を奏する。
ところで、図8に示す冷却水回路30のように、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する場合では、ペルチェ素子53によって、ヒータコア14から流出の冷却水からヒータコア14に流入する冷却水へ熱を汲み上げたとき、ヒータコア14での送風空気との熱交換で余った熱が、吸熱側熱交換器51で全部吸収されずに、エンジンEGで放熱されてしまうという問題が考えられる。
これに対して、本実施形態によれば、エンジン用冷却水回路30と独立したヒータコア用温水回路90を採用しており、温水は閉じられたヒータコア用温水回路90のみを流れるので、ペルチェ素子53で汲み上げた熱量を全てヒータコア14で利用することができる。
なお、本実施形態では、ヒータコアが1つであったが、第1実施形態のように、2つのヒータコアを用いることもできる。例えば、ケーシング11の内部の空気流れ上流側に第1ヒータコアを配置し、その下流側に第2ヒータコアを配置する場合、第1ヒータコアにエンジンEGの冷却水が流れ、図13のヒータコア14のように、第2ヒータコアに温水回路90の温水が流れるようにする。このとき、冷却水回路30においては、第1ヒータコアを流れる冷却水路と、吸熱側熱交換器を流れる冷却水流路とを並列に設けることが好ましい。第1ヒータコアと吸熱側熱交換器との両方に温度が高い冷却水を流すことができるからである。
(第11実施形態)
図14に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態は、汲上手段としてヒートポンプサイクル100を用いている。
具体的には、本実施形態の車両用空調装置は、第5実施形態で説明した図8に示す車両用空調装置に対して、ペルチェ素子53をヒートポンプサイクル100に変更した構成となっている。
このヒートポンプサイクル100は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機101と、圧縮機101から吐出された高圧冷媒の熱を放熱する放熱器102と、放熱器102から流出した高圧冷媒を減圧する減圧手段としての膨張弁103と、膨張弁103により減圧された低圧冷媒に吸熱させる吸熱器104と、吸熱器104からの低圧冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を圧縮機101に供給する気液分離器105と、冷媒流路を形成する冷媒配管106とを有している。
このうち、吸熱器104は、吸熱側熱交換器51と熱的に接続されており、吸熱側熱交換器51を介してエンジンEGの冷却水から吸熱する。放熱器102は、放熱側熱交換器52と熱的に接続されており、放熱側熱交換器52を介してエンジンEGの冷却水に放熱する。
本実施形態においても、ヒートポンプサイクル100によって、吸熱側熱交換器51を介して、ヒータコア14で空気と熱交換した後の冷却水から吸熱し、放熱側熱交換器52を介して、ヒータコア14に流入する冷却水に放熱するので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
ところで、本実施形態と異なり、上記特許文献1のように、ヒートポンプサイクルで空気から吸熱し、この熱によってエンジン冷却水を加熱することが考えられる。
しかし、ヒータコアによる送風空気の加熱能力を確保するために、エンジン冷却水を所望温度まで上昇させようとする場合、外気温が低いほど、ヒートポンプサイクルに要求される熱の汲上能力が大きくなり、ヒートポンプサイクルの消費エネルギーが大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態によれば、冬場の外気温よりも温度が高いエンジンEGの冷却水から吸熱しているので、外気から吸熱する場合と比較して、ヒートポンプサイクルから冷却水への放熱量を多くできる。この結果、冷却水を所定温度まで上昇させるためのヒートポンプサイクルの消費エネルギーを低減できる。
また、空気から吸熱する場合、空気は熱伝導率が低いので、熱交換面積を大きくする必要があり、吸熱用の熱交換器が大型化していたが、本実施形態によれば、空気よりも熱伝導率が高い冷却水から吸熱するので、吸熱側熱交換器51の小型化が可能となる。
なお、本実施形態は、第5実施形態の車両用空調装置1に対して、ペルチェ素子53をヒートポンプサイクル100に変更したものであったが、第1〜第4、第6〜第10実施形態の車両用空調装置1に対して、ペルチェ素子53をヒートポンプサイクル100に変更しても良い。
(第12実施形態)
図15に本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態は、第2ヒータコア用の冷却水流路34における構成が第1実施形態と異なるものであり、以下では、第1実施形態と異なる点について説明する。
第2ヒータコア用の冷却水流路34において、第2ヒータコア15よりも冷却水流れ上流側に水加熱用電気ヒータ111が設けられ、第2ヒータコア15よりも冷却水流れ下流側に流量調整弁112が設けられている。また、第2ヒータコア用の冷却水流路34には冷却水同士の間で熱交換させる顕熱交換器113が設けられている。
水加熱用電気ヒータ111は、第2ヒータコア15に流入する前の冷却水を加熱するものであり、走行用電動モータへの電力供給用に車両に搭載されている高電圧バッテリや高電圧キャパシタ等の高電圧電源から電力供給されて発熱する電気ヒータである。水加熱用電気ヒータ111は、所定条件時に通電するように空調制御装置60に制御される。
流量調整弁112は、流路断面積が変更可能な構成であって、第2ヒータコア用の冷却水流路34を流れる冷却水の流量を調整する流量調整手段である。流量調整弁112としては、例えば、電動弁もしくは電磁弁等を採用することができる。また、流量調整弁112は、空調制御装置60によって制御される。
顕熱交換器113は、水加熱用電気ヒータ111よりも冷却水流れ上流側の冷却水と、第2ヒータコア15よりも冷却水流れ下流側の冷却水との間で熱交換させ、第2ヒータコア15流出後の冷却水から水加熱用電気ヒータ111流入前の冷却水に向けて熱移動させるためのものである。顕熱交換器113としては、一般的な構成のものを採用することができ、例えば、ヒートパイプや、2重管構造のものが挙げられる。本実施形態では、対向流型の顕熱交換器113を用いている。
また、第2ヒータコア用の冷却水流路34には、第2ヒータコア15よりも冷却水流れ下流側において、顕熱交換器113を迂回して冷却水を流すためのバイパス流路114と、バイパス流路114と顕熱交換器113を流れる流路との間で冷却水流路を切り替える流路切替弁115とが設けられている。
バイパス流路114は、一端が流量調整弁112と顕熱交換器113との間に連なり、他端が顕熱交換器113と合流点31bとの間に連なっている。流路切替弁115は、バイパス流路114の冷却水流れ上流側の端部に配置されている。なお、流路切替弁115をバイパス流路114の冷却水流れ下流側の端部に配置しても良い。
図16に本実施形態における車両用空調装置の電気制御部の構成を示す。図16に示すように、空調制御装置60は、出力側に接続された水加熱用電気ヒータ111、流量調整弁112、流路切替弁115の作動を制御する。すなわち、空調制御装置60は、図3に示す空調制御中のステップS4で、以下のように、水加熱用電気ヒータ111のON(通電)、OFF(非通電)を決定したり、流量調整弁112の開度を決定したり、流路切替弁115が開放する冷却水流路を決定したりする。
図17に水加熱用電気ヒータ111のON、OFFの決定処理を説明するためのフローチャートを示す。水加熱用電気ヒータ111のON、OFFの決定処理では、ステップS21で、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度TW2と、第1ヒータコア14に流入する冷却水の温度TW1とに基づいて、吹出口からの吹出空気温度TA1を算出する。なお、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度TW2は、第2冷却水温度センサ66で検出され、第1ヒータコア14に流入する冷却水の温度TW1は、第1冷却水温度センサ65で検出される。
ステップS22で、ステップS21で冷却水温度に基づいて算出した吹出空気温度TA1と目標吹出空気温度TAOとを比較して、TA1がTAOよりも低いか否かを判定する。TA1がTAOよりも低ければ、YES判定して、ステップS23に進み、水加熱用電気ヒータ111を通電(ON)に決定する。一方、TA1がTAO以上であれば、NO判定して、ステップS24に進み、水加熱用電気ヒータ111を非通電(OFF)に決定する。
また、流量調整弁112の開度決定処理では、水加熱用電気ヒータ111の通電時の冷却水流量を、水加熱用電気ヒータ111の非通電時の冷却水流量と比較して減少させるように、流量調整弁112の開度を決定する。具体的には、水加熱用電気ヒータ111の非通電時は、第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量と第2ヒータコア15を流れる冷却水流量とが同じとなる第1開度に決定する。水加熱用電気ヒータ111の通電時は、第2ヒータコア15を流れる冷却水流量が第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量よりも少なくなるように、第1開度よりも小さな第2開度に決定する。
また、流路切替弁115の切替決定処理では、水加熱用電気ヒータ111の通電時は顕熱交換器113のみに冷却水が流れ、水加熱用電気ヒータ111の非通電時はバイパス流路114のみに冷却水が流れるように、冷却水流路の切替を決定する。
ここで、エンジンEGの停止後から長時間経過して、エンジンEGの作動時よりも冷却水温度が低下した場合、TA1がTAOよりも低くなり、すなわち、冷却水温度が暖房に必要な温度よりも低くなる。
そこで、空調制御装置60は、ステップS22、S23のごとく、冷却水温度が暖房に必要な温度よりも低いと判断した場合、水加熱用電気ヒータ111を通電して冷却水を加熱するとともに、流量調整弁112の開度を第2開度として、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を少なくする。また、空調制御装置60は流路切替弁115を制御して、第2ヒータコア15流出後の冷却水が顕熱交換器113を流れるようにし、顕熱交換器113で、第2ヒータコア15流出後の冷却水から水加熱用電気ヒータ111流入前の冷却水に向けて熱移動させる。この場合、空調制御装置60は、エアミックスドア19を最大暖房位置とすることが好ましい。
これにより、第2ヒータコア用の冷却水流路34を流れる冷却水の温度は以下のようになる。例えば、第2ヒータコア15通過直後の目標空気温度を50℃とする場合、エンジンEG流出直後の冷却水温度が40℃のとき、顕熱交換器113通過後の冷却水は45℃に上昇し、水加熱用電気ヒータ111通過後の冷却水は70℃に上昇する。そして、第2ヒータコア15で冷却水が放熱することにより、第2ヒータコア15の冷却水出口での冷却水温度は46℃となり、顕熱交換器11通過後の冷却水温度は41℃となる。
このようにして、エンジン作動の代わりに、第2ヒータコア15に流入する冷却水温度を上昇させることにより、暖房を可能としている。
一方、エンジンEGの作動時や、エンジンEGの停止後からの経過時間が短く、冷却水温度がエンジンEGの作動時に近い場合のように、冷却水の温度が十分に高く、TA1がTAO以上となる場合であれば、水加熱用電気ヒータ111による冷却水の加熱が不要なので、空調制御装置60は水加熱用電気ヒータ111を非通電とするとともに、流量調整弁112の開度を第1開度として、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を多くする。また、流路切替弁115を制御して、第2ヒータコア15流出後の冷却水がバイパス流路114を流れるようにする。この場合、空調制御装置60は、従来と同様に、エアミックスドア19の位置(開度)を制御することによって、空調風の温度を調整する。
次に、本実施形態による主な効果について説明する。
(1)本実施形態によれば、冷却水温度が暖房に必要な温度よりも低く、暖房の熱源が不足する場合、エンジンEGの作動の代わりに、水加熱用電気ヒータ111によって、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度を上昇させるようになっているので、水加熱用電気ヒータ111を備えていない場合と比較して、エンジンEGの作動頻度を低減でき、エンジンEGの燃費を向上させることができる。
ところで、第2ヒータコア15に流入する冷却水の温度は、暖房の熱源として必要な温度、例えば、60℃以上であることが望まれる。一方、エンジンEGの内部を流れる冷却水の温度は、エンジンEGの各部が暖まってエンジンEGが良好に作動する下限温度以上、例えば、40℃以上であることが望まれる。
このため、水加熱用電気ヒータ111を有していない車両用空調装置では、暖房の熱源を確保するため、冷却水温度が60℃以上となるように、エンジン作動の要求水温を例えば60℃付近に設定する必要があった。
これに対して、本実施形態によれば、エンジンEGの停止時に、冷却水の温度が60℃を下回っても、水加熱用電気ヒータ111を作動させて、冷却水の温度を上昇させることができるので、エンジン作動の要求水温を従来よりも低い温度、例えば40℃付近に設定することができる。これにより、水加熱用電気ヒータ111を備えていない場合と比較して、エンジンEGの作動頻度を低減でき、エンジンEGの燃費を向上させることができる。
(2)本実施形態では、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15とを冷却水流れに対して並列に配置し、第2ヒータコア15の冷却水流れ上流側に水加熱用電気ヒータ111を設けている。そして、暖房の熱源が不足する場合、水加熱用電気ヒータ111によって冷却水の全体を加熱するのではなく、第2ヒータコア15に流入する冷却水を加熱するので、冷却水の全体を加熱する場合と比較して、水加熱用電気ヒータ111の消費電力を低減できる。
また、第2ヒータコア15は第1ヒータコア14通過後の空気を加熱するように配置されている。これにより、第1ヒータコア14で低温度の冷却水によって空気温度を上昇させた後、第2ヒータコア15で水加熱用電気ヒータ111によって加熱された高温度の冷却水によって空気温度をさらに上昇させることができ、熱量を有効に利用して暖房することができる。
(3)本実施形態では、水加熱用電気ヒータ111の通電時に、流量調整弁112によって、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を水加熱用電気ヒータ111の非通電時よりも少なくするとともに、流路切替弁115によって、第2ヒータコア15流出後の冷却水が顕熱交換器113を流れるようにしている。
ここで、本実施形態に対して流量調整弁112と顕熱交換器113とを省略した場合、第2ヒータコア15流出の冷却水がエンジンEGに戻ったときに、第2ヒータコア15で空気と熱交換されなかった熱量がエンジン表面から放出され、水加熱用電気ヒータ111によって投入した熱量を無駄に消費してしまうという問題が生じる。
例えば、第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量と第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量が同じ所定流量として、第2ヒータコア15通過直後の空気の目標温度を50℃とする場合、水加熱用電気ヒータ111によって冷却水温度を40℃から55℃まで上昇させたとき、第2ヒータコア15の冷却水出口での冷却水温度は53℃となる。この場合、水加熱用電気ヒータ111によって投入した熱量のうち、熱交換前後の冷却水温度差(55℃−53℃)分の熱量しか空気へ放熱されず、残りの熱量は、エンジン表面から放出されてしまう。
これに対して、本実施形態によれば、水加熱用電気ヒータ111の通電時に第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を少なくしているので、冷却水の流量が多い場合と比較して、水加熱用電気ヒータ111による冷却水への投入熱量に対する第2ヒータコア15での冷却水からの放熱量の割合を高めることができる。これにより、流量調整弁112と顕熱交換器113とを省略した場合と比較して、第2ヒータコア15の冷却水出口での冷却水温度を低下させることができる。これは、冷却水から空気への放熱量が一定の場合、冷却水の流量が多いほど、熱交換前後における冷却水の温度差が小さくなり、冷却水の流量が少ないほど、熱交換前後における冷却水の温度差が大きくなるからである。
この結果、第2ヒータコア15で空気と熱交換されなかった熱量がエンジンEGの表面から放出されることを抑制でき、水加熱用電気ヒータ111の加熱によって得た熱量を有効に利用できる。
さらに、顕熱交換器113によって、第2ヒータコア15流出後の冷却水から水加熱用電気ヒータ111流入前の冷却水に向けて熱移動させるので、これによっても、第2ヒータコア15で空気と熱交換されなかった熱量がエンジンEGの表面から放出されることを抑制できる。また、顕熱交換器113によって、水加熱用電気ヒータ111に流入する冷却水の温度が上昇するので、その温度上昇分の加熱に必要な水加熱用電気ヒータ111の消費電力を低減できる。
(4)本実施形態では、冷却水の加熱手段として、走行用電動モータへの電力供給用の高電圧電源を電源とする水加熱用電気ヒータ111を用いている。
ここで、特許文献2に記載のように、PTC素子からなる電気ヒータを用いて、第2ヒータコア15通過後の空気を加熱する場合、高電圧電源を使用すると、乗員の感電事故が生じる恐れがあるため、高電圧電源を使用できず、オーディオ等の電子機器への電力供給用の低電圧電源(低電圧バッテリ)を使用しなければならない。そして、ハイブリッド車両の電源経路において、低電圧電源の電力は、DC−DCコンバータによって高電圧電力を電圧変換することによって得られるが、この変換時に電力ロスが生じてしまう。このため、低電圧電源を使用することは好ましくない。
これに対して、水加熱用電気ヒータ111によって冷却水を加熱する場合では、水加熱用電気ヒータ111をエンジンコンパートメント内等に設置することにより、乗員の感電事故を防止できるので、高電圧電源を使用できる。これにより、DC−DCコンバータによる電力ロスを回避できる。また、高電圧電源を使用することで、低電圧電源を使用する場合と比較して、電線の軽量化が可能となる。
なお、本実施形態では、ステップS22、S23で、冷却水温度に基づく吹出空気温度TA1が目標吹出空気温度TAOよりも低い場合を、冷却水の温度が暖房に必要な温度よりも低い場合として判断したが、第1冷却水温度センサ65、第2冷却水温度センサ66で検出した冷却水温度TW1、TW2が所定温度よりも低い場合を、冷却水の温度が暖房に必要な温度よりも低い場合として判断しても良い。この所定温度としては、エンジン作動の要求水温を用いることができる。
また、本実施形態では、水加熱用電気ヒータ111の通電時における流量調整弁112の開度を第1開度よりも小さな第2開度としたが、水加熱用電気ヒータ111による冷却水への投入熱量を第2ヒータコア15で放熱しきるように、流量調整弁112の開度を設定することが好ましい。
また、本実施形態では、流量調整弁112の配置場所を、第2ヒータコア15よりも冷却水流れ下流側としたが、第2ヒータコア15の上流側としても良い。
また、本実施形態では、水加熱用電気ヒータ111の非通電時に、バイパス流路114に冷却水が流れるように流路切替弁115によって冷却水流路を切り替えたが、第2ヒータコア15流出後の冷却水の温度Taが、水加熱用電気ヒータ111流入前の冷却水の温度Tbよりも低い場合に、流路切替弁115によってバイパス流路114に冷却水が流れるようにしても良い。要するに、第2ヒータコア15流出後の冷却水から水加熱用電気ヒータ111流入前の冷却水に向けて熱移動できない条件時に、顕熱交換器114に冷却水を流さずに、バイパス流路114に冷却水を流すように、流路切替弁115によって冷却水流路を切り替えれば良い。
(第13実施形態)
図18に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態は、第12実施形態の車両用空調装置に対して、顕熱交換器113、バイパス流路114および流路切替弁115を省略したものである。
本実施形態のように、顕熱熱交換器113を省略しても、水加熱用電気ヒータ111の通電時に、流量調整弁112によって、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量を水加熱用電気ヒータ111の非通電時よりも少なくするので、エンジンEGの表面からの放熱を抑制する効果が得られる。
(第14実施形態)
図19に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態は、第12実施形態の車両用空調装置に対して、水加熱用電気ヒータ111の代わりにインバータ121を冷却水の加熱手段として用いる点と、顕熱交換器113、バイパス流路114および流路切替弁115を省略した点が異なっている。
本実施形態では、エンジンEG流出の冷却水がインバータ121を通過した後、第2ヒータコア15に流入する流路と、閉回路のインバータ冷却回路120とが切替可能に構成されている。
インバータ冷却回路120は、インバータ121と、ウォータポンプ122と、放熱器123と、第1流路切替弁124と、第2流路切替弁125とを備えている。
インバータ121は、ハイブリッド車両に搭載され、走行用電動モータに供給される電流を直流から交流に変換するものである。ウォータポンプ122は、冷却水流れを形成する電動式のものである。放熱器123は、インバータ121通過後の冷却水から空気へ放熱させる熱交換器である。
第1流路切替弁124、第2流路切替弁125は、図中実線矢印で示すように、エンジンEG流出の冷却水がインバータ121を通過した後、第2ヒータコア15に流入する第1流路と、図中破線矢印で示すように、インバータ121→ウォータポンプ122→放熱器123→インバータ121の順に冷却水が循環する第2流路とを切り替えるものである。
空調制御装置60は、第1冷却水温度センサ65で検出した冷却水温度TW1が所定温度よりも低い場合、インバータ冷却回路120のウォータポンプ122を停止させ、冷却水流れが第1流路となるように第1流路切替弁124、第2流路切替弁125を制御する。このとき、インバータ121の変換効率を通常よりも落として、発熱量を増大させるように、直接、もしくは、インバータ制御装置を介して、インバータ121を制御する。
これにより、冷却水の温度が暖房に必要な温度よりも低い場合、インバータ121の発熱量を確保して、インバータ121を冷却水の加熱手段として利用することができる。
なお、インバータ121の変換効率を落としても、走行用電動モータへの電力供給に支障は生じないので、車両走行には影響せず、インバータ121の発熱量が増加しても、エンジン冷却水でインバータ121を冷却しているので、インバータ121を構成する素子への影響もない。
一方、冷却水温度TW1が所定温度よりも高い場合、冷却水流れが第2流路となるように第1流路切替弁124、第2流路切替弁125を制御し、インバータ冷却回路120のウォータポンプ122を作動させる。このとき、インバータ121の変換効率が高くなるように、インバータ121を制御する。
これにより、エンジン冷却水の温度が暖房に必要な温度以上の場合、インバータ冷却回路120で冷却水を循環させることで、インバータ121を冷却する。このとき、第2ヒータコア15には冷却水が流れず、第1ヒータコア14のみに冷却水が流れ、第1ヒータコア14で空気を加熱する。
なお、本実施形態では、冷却水の加熱手段として、インバータ121を用いたが、インバータ121に限らず、エンジンEG以外に車両に搭載された廃熱を生じる発熱体を利用することができる。例えば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載のモータジェネレータや、エンジンEGと燃料電池とのハイブリッド車両に搭載の燃料電池等の発熱体を利用できる。また、エンジンEGの排気ガスを熱源として冷却水を加熱しても良い。
(第15実施形態)
図20に、本実施形態における第1、第2ヒータコア14、15の斜視図を示す。本実施形態は、第13実施形態における第1、第2ヒータコア14、15を一体化するとともに、流量調整弁112を用いる代わりに、第2ヒータコア15の流水抵抗を第1ヒータコア14の流水抵抗を高くしたものである。
図20に示す熱交換器は、入口側第1ヘッダタンク131、入口側第2ヘッダタンク132、出口側ヘッダタンク133、入口側第1ヘッダタンク131と出口側ヘッダタンク133に連なる複数の第1チューブ134、入口側第2ヘッダタンク132と出口側ヘッダタンク133に連なる複数の第2チューブ135を備えている。
入口側第1ヘッダタンク131、入口側第2ヘッダタンク132は、それぞれの冷却水入口131a、132aから流入した冷却水を、第1、第2チューブ134、135に分配するものである。出口側ヘッダタンク133は、第1、第2チューブ134、135を通過した冷却水を集合させ、集合した冷却水を冷却水出口133aから流出するものである。
第1ヒータコア14は、入口側第1ヘッダタンク131と、第1チューブ134と、出口側ヘッダタンク133とによって構成されている。第2ヒータコア15は、入口側第2ヘッダタンク132と、第2チューブ135と、出口側ヘッダタンク133とによって構成されている。
そして、第2ヒータコア15は、第2チューブ135が内部に形成する冷却水流路の断面積が、第1ヒータコア14の第1チューブ134よりも小さくなっている。これにより、第2ヒータコア15の流水抵抗が第1ヒータコア14の流水抵抗よりも高くなっている。なお、第2ヒータコア15の入口側第2ヘッダタンク132の流路断面積を、第1ヒータコア14の入口側第1ヘッダタンク131の流路断面積よりも小さくする等の他の手段によって、第2ヒータコア15の流水抵抗を第1ヒータコア14の流水抵抗よりも高くしても良い。
また、第2ヒータコア15の冷却水入口132aと、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31の分岐点31aとの間に水加熱用電気ヒータ111が配置されている。
このように、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15とは、共通の出口側ヘッダタンク133を有しており、この出口側ヘッダタンク133によって一体化している。そして、常に、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量が第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量よりも少ない構成となっている。
これにより、水加熱用電気ヒータ111の通電時では、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量が、第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量よりも少ないので、第1ヒータコア14を流れる冷却水の流量と同じ場合と比較して、水加熱用電気ヒータ111による冷却水への投入熱量に対する第2ヒータコア15での冷却水からの放熱量の割合を高めることができる。
この結果、第2ヒータコア15で空気と熱交換されなかった熱量がエンジンEGの表面から放出されることを抑制でき、水加熱用電気ヒータ111の加熱によって得た熱量を有効に利用できる。
なお、本実施形態では、第1、第2ヒータコア14、15の内部における流水抵抗について説明したが、第2ヒータコア15用の冷却水流路34における流水抵抗を、第1ヒータコア14用の冷却水流路33における流水抵抗よりも高くしても良い。例えば、第2ヒータコア15用の冷却水流路34の流路断面積を、第1ヒータコア14用の冷却水流路33の流路断面積よりも小さくしても良い。
(他の実施形態)
上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置を、エンジンEGと走行用電動モータとを備えるハイブリッド車に搭載される車両用空調装置に適用したが、アイドルストップ車に搭載される車両用空調装置や、エンジン以外の走行用の駆動力を得るための駆動手段を備える車両に搭載される車両用空調装置にも適用可能である。
例えば、燃料電池と走行用電動モータとを備える燃料電池車に用いられる車両用空調装置であって、燃料電池の冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器を備える車両用空調装置に対して、本発明の適用が可能である。
また、上述の各実施形態では、冷却流体として冷却水を用いていたが、水の代わりに他の液体を溶媒とする冷却液や冷却用の気体を用いても良い。同様に、第10実施形態では、加熱流体として温水を用いていたが、水の代わりに他の液体や、気体を用いても良い。
なお、上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。