図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写ローラとしての中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための画像形成手段としての記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面である一次画像形成面上に一次画像である画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
図1に示すように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
画像形成装置100はまた、中間転写体37の上方において中間転写体37に対向するように配設され、記録液が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上すなわち一次画像形成面上に残留している記録液を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としてのクリーニングユニットであるクリーニング装置40と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ62とを有している。
画像形成装置100はまた、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行う通電手段33と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての図示しない制御部とを有している。
図3ないし図6にクリーニング装置40の各種構成例を示す。なお、これらの各図において、中間転写体37は表面が平面状をなすように描かれているが、実際には中間転写体37の表面は図1または図2に示すように円弧状をなしている。
これらの図に示されているように、クリーニング装置40は、基本的構成として、少なくとも、中間転写体37に当接し中間転写体37上の記録液をクリーニングするための絶縁性のクリーニング部材としてのクリーニングブレード41と、中間転写体37との間で電圧を印加され、少なくともクリーニングブレード41によって中間転写体37上からクリーニングされた記録液を、電気分解によりクリーニングするためのクリーニング用電極42と、中間転写体37とクリーニング用電極42とに接続され、これらの間に、少なくともクリーニングブレード41によって中間転写体37上からクリーニングされた記録液を電気分解するための電圧を印加する電圧印加手段としての電源43とを有している。図3に示すクリーニング装置40は、このような基本的構成を採用している。
クリーニングブレード41は、中間転写体37にその一部すなわち先端を当接することで、中間転写体37表面の記録液、具体的には転写後に残留している記録液を掻き取るような機能があればよく、絶縁性で、耐磨耗性が必要となる。これを満たす材料として、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、またそれらにフッ素コートしてあるエラストマーなどが好ましい。クリーニングブレード41の厚みは1〜5mm程度が好ましい。クリーニングブレード41の厚みが1mm以下だと、不意に中間転写体37とクリーニング用電極42とが接触し、ショートする恐れがあるためである。また、クリーニングブレード41の厚みが5mm以上だと、中間転写体37とクリーニング用電極42とのギャップ距離が長いため効果的なクリーニング性が得られにくいためである。中間転写体37に対するクリーニングブレード41の当接角は45度とされている。
クリーニング用電極42は良導電性であればよいが、記録液がアニオン性の場合、陽極として備えられることとなるため電極が腐食しやすい傾向にある。そのため、耐腐食性の高い金属か、グラッシーカーボンのような炭素プレートを使用するのが好ましい。また、後述するように中間転写体37を構成するのと同様の導電性ゴムによって構成しても良い。
図3ないし図5に示す構成例のように、クリーニング用電極42をブレード状としクリーニングブレード41と一体の部材として用いる場合、クリーニング用電極42とクリーニングブレード41とは別々の材料によって構成し、これらを接合させて使用することが可能である。ただし、クリーニング用電極42とクリーニングブレード41とは同一材料で場所により物性値を変えたものによって一体的に構成しても構わない。例えば、シリコーンゴムの表面はカーボンブラックがなく絶縁であるが、裏面はカーボンブラックを多く含み導電性を有するものとする。また、表面から裏面にかけてカーボンブラックの含有量を連続的に変化させたゴム材料であってもよい。
図6に示す構成例のように、クリーニング用電極42をローラとする場合も、クリーニング用電極42をブレード状とする場合と同様の機能が必要である。ただし、中間転写体37とのギャップに高い位置精度が要求されるので、弾性を有する導電性ローラでなく金属ローラによってクリーニング用電極42を構成するほうが好ましい。
クリーニング装置40のその余の点については後述する。
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37に従動回転し中間転写体37との間の転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による一次画像をその転写紙Sに転写して転写記録する転写記録手段である転写手段としての加圧ローラである転写ローラ38と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
図2に示すように、中間転写体37は、アルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成された導電性シリコーンゴム製の表面層37bからなっている。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、良導電性で機械的強度がある必要があり、金属や合金によって形成される。表面層37bは、導電性シリコーンゴム製に限らず、導電性及び撥水性が高く平滑な弾性材料で形成すれば良い。表面層37bの導電性は、中間転写体37とクリーニング用電極42との間に電圧を印加して水の電気分解を起こさせるのに必要な機能である。表面層37bの撥水性は、記録液が中間転写体37の表面層から転写紙Sへ転写するときの転写しやすさの指標となり、撥水性が高いほど転写率が良く、クリーニングブレード41でのクリーニングがしやすくなる。表面層37bの弾性は、転写の際に必要な機能で、表面層37bが転写紙Sの繊維に沿って変形することで接触面積が向上し高い転写率が達成される。低い圧力で転写するには表面層37bの材料としてある程度柔らかい材料を選択しなければならない。
表面層37bのこれらの機能を満たす材料としては、例えば、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料にカーボンブラックやカーボンナノチューブ、金や銀などの金属微粒子を混入させた導電性ゴムが挙げられる。導電性を上げるためには導電性微粒子を増やすことが考えられるが、表面の導電性微粒子の密度が高いと撥水性低下の要因となる。導電性は、支持体37aと表面層37bとの膜厚方向に対して有していれば良く、面方向には絶縁の異方導電性であっても良い。導電性微粒子の大きさは、画像を構成する20〜50μm程度のドットより十分小さい必要があり、0.1μm以下であれば問題ない。また、表面層37bは、撥水性を上げるためシリコンオイルを含浸させたものでも構わないし、単層構造、多層構造のどちらでも構わない。
表面層37bのバルク物性と表面物性は以下のものが好ましい。体積抵抗率は104Ω・cm以下、好ましくは102Ω・cm以下である。撥水性は水の後退接触角が60°以上、好ましくは80°以上であり、硬度はJIS−Aで60以下、好ましくは40以下である。また、表面層の厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
キャリッジ62は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はフルライン型となっている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
ポンプは、制御部によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる記録液の吐出が停止されているときに、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の溶媒とを少なくとも含んでいる。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は水溶性インクである水溶性記録液となっている。色剤は、溶媒中にて帯びるイオン性がアニオン性の、アニオン性着色剤及び/又はアニオン性樹脂を使用している。
アニオン性の色剤であるアニオン性染料の具体例としては、たとえば、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、食用染料に分類される染料が挙げられる。
より具体的には、酸性染料および食用染料として、 C.I.アシッドイエロー 17、23、42、44、79、142 C.I.アシッドレッド 1、8、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、87、89、92、97、106、111、114、115、134、186、249、254、289 C.I.アシッドブルー 9、29、45、92、249 C.I.アシッドブラック 1、2、7、24、26、94 C.I.フードイエロー 3、4 C.I.フードレッド 7、9、14 C.I.フードブラック 1、2等がある。
直接性染料として、 C.I.ダイレクトイエロー 1、12、24、26、33、44、50、86、120、132、142、144 C.I.ダイレクトレッド 1、4、9、13、17、20、28、31、39、80、81、83、89、225、227 C.I.ダイレクトオレンジ 26、29、62、102 C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、15、22、25、71、76、79、86、87、90、98、163、165、199、202 C.I.ダイレクトブラック 19、22、32、38、51、56、71、74、75、77、154、168、171 等がある。
反応性染料としてC.I.リアクティブ.ブラック3、4、7、11、12、17、C.I.リアクティブ.イエロー1、5、11、13、14、20、21、22、25、40、47、51、55、65、67、C.I.リアクティブ.レッド1、14、17、25、26、32、37、44、46、55、60、66、74、79、96、97、C.I.リアクティブ.ブルー1、2、7、14、15、23、32、35、38、41、63、80、95等があり、溶解性の高さ、色調の良好さ、本発明にかかる方法で記録した場合の耐水性の良さから、好ましく用いることができる。
染料としては、特に分子中に3個以上のカルボキシル基、スルホン酸基を含むものが、水の電気分解で発生する水素イオンとの反応性が高く、且つ、記録液の保存安定性、耐目詰まり特性を確保できる点で好ましい。
記録液に用いられる色剤である顔料としては、無機顔料、有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの白色顔料や酸化鉄などの黒色顔料などが挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
また、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用され得る。
より具体的には、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(ベンガラ)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
着色剤として顔料を含む記録液を用いる場合には、たとえば、酸化反応によりカルボキシル基が導入されたカーボンブラック、カルボキシル基やスルホン酸基を含むジアゾニウム塩から生成されるラジカルとカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドンなどの顔料を反応させてなる自己分散性の顔料、カルボキシル基やスルホン酸基を含むラジカル開始剤とカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドンなどの顔料を反応させてなる自己分散性の顔料、顔料の官能基とカルボン酸の無水物を反応させてなる自己分散性顔料など、イオン性の基、特にカルボキシル基が共有結合で結合している顔料が好ましく用いられる。
これらの顔料は水の電気分解で発生する水素イオンとの反応性が高く、よってクリーニング装置40による後述のクリーニング作用が良好に得られる。またかかる顔料は記録液の保存安定性、耐目詰まり性に優れる。
記録液は、好ましくは、アニオン性の高分子分散剤で分散された顔料を含む。
アニオン性基を有する高分子分散剤の例として、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体およびその塩、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−アクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−メタクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−マレイン酸共重合体およびその塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体およびその塩、酢酸ビニル−エチレン共重合体およびその塩、酢酸ビニル−クロトン酸共重合およびその塩、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体およびその塩、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、等が挙げられる。
これらのアニオン性高分子は、水の電気分解で発生する水素イオンと反応して凝集するため自己分散顔料単体よりも凝集性において好ましい。また、これらのアニオン性高分子は着色剤の接着機能を有するため、転写工程における中間転写体37から転写紙Sへの転写率を向上させるのに効果的である。
アニオン性の界面活性剤も顔料分散剤として好ましく用いられる。
具体的には、オレイン酸およびその塩、ラウリン酸およびその塩、ベヘン酸およびその塩、ステアリン酸およびその塩、またそのような脂肪酸およびその塩、ドデシルスルホン酸およびその塩、デシルスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルスルホン酸およびその塩、ラウリル硫酸塩、オレイル硫酸塩などのアルキル硫酸エルテル類、ドデシルベンゼンスルホン酸およびその塩、ラウリルベンゼンスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルベンゼンスルホン酸とその塩、ジオクチルスルホ琥珀酸およびその塩、ジヘキシルスルホ琥珀酸およびその塩、またそのようなジアルキルスルホ琥珀酸およびその塩、ナフチルスルホン酸およびその塩、ナフチルカルボン酸およびその塩、またそのような芳香族アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、フッ素化アルキルカルボン酸およびその塩、フッ素化アルキルスルホン酸およびその塩等のフッ素系アニオン性界面活性剤などを用いて顔料が分散して用いられる。
これらの界面活性剤を顔料の分散剤として用いる場合、アルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等のカルボキシル基を含む界面活性剤を用いることが、水の電気分解で発生する水素イオンと反応性が高く好ましい。
顔料を分散させた記録液を用いる場合に、顔料の粒径に特に制限は無いが、最大個数換算で最大頻度が20〜150nmの粒径の顔料インクを用いることが好ましい。粒径が150nmを超えると、記録液としての顔料分散安定性が悪くなるばかりでなく、記録液の吐出安定性も劣化し、画像濃度などの画像品質も低くなり好ましくない。粒径が20nm未満では、記録液の保存安定性、プリンタでの噴射特性は安定し、高い画像品質も得られるが、そのように細かな粒径にまで分散せしめるのは、分散操作や、分級操作が複雑となり、経済的に記録液を製造することが困難となる。
記録液に用いる着色剤として好ましいものの他の例は、着色樹脂微粒子が懸濁された、所謂、着色エマルジョンを用いた記録液である。
着色樹脂微粒子は、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを油性染料、分散染料または顔料などにより着色したものである。微粒子の殻に当たる部分をポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの親水性を有する樹脂で形成したり、反応性の界面活性剤などイオン性を有する界面活性剤で懸濁することによりたとえばアニオン性の着色微粒子が水を主体とする液媒体に懸濁された記録液が得られる。
着色エマルジョンを用いた記録液を用いる場合にも、前述のアニオン性界面活性剤で乳化し重合したもの、外殻がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの親水性を有する樹脂で形成したエマルジョンを用いることが、水素イオンとの反応性が高く、クリーニング装置40による後述のクリーニング作用が非常に良好に得られる点で特に好ましい。また、これらの着色樹脂微粒子は最低造膜温度にもよるが、転写工程における中間転写体37から転写紙Sへの転写率を向上させるのに効果的である。転写工程で最低造膜温度以上に加熱すれば、高い転写率と良好な光沢性、耐光性、耐水性、耐擦性をもつ印刷物が得られる。
記録液に親水性高分子化合物を添加することで、水素イオンとの反応により記録液の増粘作用、凝集作用を強め、クリーニング装置40による後述のクリーニング作用が向上する。
記録液に添加可能な親水性高分子化合物としては、天然系ではアラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子またはセラック等、半合成系ではメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、力ルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子、純合成系ではポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びそのアルカリ金属塩、水溶性スチレン−アクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレン−アクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレン−マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、等が挙げられる。
水溶性高分子化合物を記録液に用いる場合にも、カルボン酸をアニオン基として含むものを使用することが、水素イオンとの反応性が高く、クリーニング装置40による後述のクリーニング作用が大きい点で、特に好ましい。また、前述のアニオン性高分子や樹脂エマルジョンと同様に、転写工程における中間転写体37から転写紙Sへの転写率を向上させるのに効果的である。
記録液は水を主な液媒体として使用するが、記録液を所望の物性にするため、あるいは記録液の乾燥による後述するノズル61cの詰まりを防止するため、前述の水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。
水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。
これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。これらの水溶性有機溶媒の含有量は特に制限はないが、好ましくは記録液全体の1〜60重量%、更に好ましくは5〜30重量%の範囲で用いる。
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等が用いられる。
その他、必要に応じてpH緩衝剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、防錆剤等の添加剤を用いても構わない。
記録液の物性の好適な範囲は、25℃付近でpHが6〜12、好ましくは8〜10、表面張力が10〜60mN/m、好ましくは20〜50mN/m、粘度が1〜20mPa・s、好ましくは2〜8mPa・s、導電率が10〜1000mS/m、好ましくは500〜800mS/mである。
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側において、導電性部材である導電性オリフィス61aと、絶縁性部材である絶縁性オリフィス61bと、導電性オリフィス61a及び絶縁性オリフィス61bに形成された孔が互いに連通して形成された微小なノズル61cとを有している。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKはまた、図示を省略するが、ノズル61cから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるための、画像信号に基づいて駆動されるアクチュエータとして、ピエゾ素子の変位で液室内の記録液に圧力を加えてノズル61cから記録液を吐出させるピエゾ方式の可動アクチュエータを有しているが、アクチュエータは他の方式の可動アクチュエータであってもよい。その他、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ヒータ加熱で発生するバブルで液室内の記録液に圧力を加えてノズル61cから記録液を吐出させるサーマル方式等の加熱膜沸騰方式を用いても良い。ノズル61cは各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1つのみを図示している。
導電性オリフィス61aは記録液吐出側におけるヘッド61Y、61M、61C、61BKの表面をなしている。導電性オリフィス61aは後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
絶縁性オリフィス61bはヘッド61Y、61M、61C、61BKに収容された記録液と導電性オリフィス61aとの間を絶縁するためにこれらの間に介在するように設けられている。絶縁性オリフィス61bの材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されない。
本形態では導電性オリフィス61aと絶縁性オリフィス61bとが接合した二重構造となっているが、これらは必ずしも接合されたものでなくともよく、また絶縁性オリフィス61bと記録液との間に他の層を介在させても良い。
図2に示すように、通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aと導電性オリフィス61aとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電源33aは、電気回路により、陽極を支持体37aに接続され、陰極を導電性オリフィス61aに接続されている。よって、通電手段33は、支持体37a、中間転写体37をアノードとして備え、導電性オリフィス61aをカソードとして備えている。通電手段33は、後述するように、記録液が電気分解する電圧を支持体37aとヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に印加するための電圧印加手段として機能する。
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
このとき、電圧印加制御手段としての制御部により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aと導電性オリフィス61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与される。このとき、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、同図(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61cと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、同図(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって、中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードである導電性オリフィス61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4H2O+4e−→2H2+4OH−・・・反応式(1)
アノード:2H2O→4H++O2+4e−・・・反応式(2)
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図7に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61cの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
ここで、図8を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層EC及びEAが形成されるが、電気二重層EC及びEAの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層EAの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。一方、電気二重層ECの容量は、電気二重層EAの容量よりも十分に大きいため、カソードCの表面では、水が還元しにくい。これは、カソードCである導電性オリフィス61aの面積は、アノードAとしての中間転写体37の面積よりも十分に大きいためである。なお、顔料の凝集の度合いは、プロトンの生成量、即ち、液柱のブリッジを形成する時間、通電手段33による印加電圧等により制御することが可能である。また、水が酸化してプロトンが生成する際に、酸素も発生するが、微量であることに加え、水に溶解すると考えられるため、画像形成を阻害しない。
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、記録液、記録液の反応によって形成された凝集成分等の混合物が、転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングが防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、上述の混合物はほとんど残っていないが、中間転写体37は次に述べるようにクリーニング装置40による混合物のクリーニングを受けることで、かかる混合物のオフセットがさらに高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
図1に示したクリーニング装置40は、図3ないし図6に示した構成の何れかを採るが、まず、図3に示した構成のクリーニング装置40によって行われる中間転写体37のクリーニングについて説明する。
クリーニングブレード41は、A1方向において転写部31より下流側且つヘッド61Y、61M、61C、61BKによる記録液の付与位置より上流側の位置において中間転写体37表面に当接しており、転写部31において記録紙Sに転写しきれず中間転写体37表面に残った記録液あるいは記録液及び上述の凝集成分を含む混合物を、クリーニングブレード41に一体のクリーニング用電極42とともに掻き取り、記録液あるいはかかる混合物の塊を形成する。
電源43は、中間転写体37を陰極すなわちカソードとして、またクリーニング用電極42を陽極すなわちアノードとして、水の電気分解が起きる電圧を印加することで、かかる記録液等の塊に含まれる水分の電気分解を起こす。この電気分解は、すでに示した反応式(1)、(2)と同様に生じるものである。
この電気分解により、図2(b)に示した記録液からなる液注のブリッジが形成された状態において生じる、すでに述べた反応と同様の反応が生じる。
すなわち、記録液等の塊の接触した中間転写体37近傍すなわち中間転写体37と記録液等による汚れとの界面では水素及び水酸基イオンの発生によりpHが上昇してアルカリ性になり記録液等の塊中の顔料の溶解及び分散が起きる。これは、記録液が、負帯電の静電反発により顔料の分散性を高めたアニオン性インクであるため、pH上昇により顔料の分散・溶解性が増加する傾向にあるためである。
一方、クリーニング用電極42近傍すなわちクリーニング電極42と記録液等による汚れとの界面では酸素及び水素イオンの発生によりpHが低下して酸性になり記録液等の塊中の色剤の凝集及びクリーニング用電極42極表面への固定化が起きる。
この反応が十分速いと、記録液等の塊中の色剤は、クリーニングブレード41と中間転写体37との間を通過することなく、クリーニング用電極42側に転移するため、単にクリーニングブレード41を中間転写体37に押し当てて掻き取るよりも効果的に記録液等による中間転写体37の汚れ、さらには記録液等によるクリーニングブレード41の汚れを除去することが可能となる。クリーニングブレード41の汚れを除去する点において、クリーニング用電極42及び電源43はクリーニング部材浄化手段として機能する。
かかるクリーニング装置40による中間転写体のクリーニング作用及びクリーニング部材浄化手段によるクリーニングブレード41のクリーニング作用は、中間転写体37の送り速度や電源43に印加する電圧で異なり、電流量や電荷量に依存したものである。また、記録液には界面活性剤が含まれており、電気化学反応で発生する水素ガスや酸素ガスの気泡を維持する傾向があるため、この気泡により記録液等による汚れが取れやすくなっている。
図4に示したクリーニング装置40は、図3に示した構成に加えて、クリーニング用電極42をクリーニングするための電極クリーニング手段44を有している。
電極クリーニング手段44は、クリーニング用電極42に当接した電極クリーニング部材としてのクリーニング用ローラ45と、クリーニング用ローラ45によってクリーニング用電極42から除去した記録液等の成分を回収する回収部としての転写残回収タンク46と、クリーニング用ローラ45を回転駆動する図示しない駆動源とを有している。
クリーニング用ローラ45は、駆動源による回転駆動により、クリーニング用電極42を擦り上げる方向に回転してクリーニング用電極42に対して摺動し、クリーニング用電極42に付着した、記録液の凝集成分を含む記録液等を除去するとともに、除去した成分がクリーニング電極42を乗り越えるようにして転写残回収タンク46側に移動させ、転写残回収タンク46内に回収する。
そのため、クリーニング用ローラ45は、表面に凹凸があったり、歯車形状であったり、鋸状であったりするとかかる作用を発揮するのに好適である。また、クリーニング用ローラ45は、断面が真円の円柱であっても、楕円の円柱であってもよく、楕円の場合、クリーニング用電極42に接触する面積が広がり、効果的なクリーニングと転写残インク汚れの移動を円滑に行うことが可能となる。また、転写残回収タンク46は、底に図示しない吸水性の材料を備えており、この材料で余分な水分を吸収することで、クリーニング装置40内さらには画像形成装置100内の湿度上昇を抑えている。
このような構成のクリーニング装置40では、図3に示したクリーニング装置40の動作、作用に加えて、次のような動作、作用がなされる。すなわち、図3に示したクリーニング装置40ではクリーニング用電極42が記録液の顔料等の凝集成分等で被覆されるとクリーニング効果が低下してしまうため、クリーニング用電極42表面のリフレッシュが必要となり得るのに対し、図4に示したクリーニング装置40では、クリーニング用ローラ45がクリーニング用電極42表面の凝集成分等を除去し、除去された凝集成分等が転写残回収タンク46に移されるため、経時的にクリーニング用電極42の性能が維持され、中間転写体37及びクリーニングブレード41のクリーニングが経時的に良好に行われる。クリーニング用ローラ45のこのリフレッシング動作は、クリーニング用電極42の電気化学的なクリーニング機能を損なわなければ常時行っても良いし、定期的に行っても良い。
図5に示したクリーニング装置40は、図4に示した構成に加えて、少なくとも中間転写体37、クリーニング用電極42、本形態においてはさらにクリーニングブレード41、クリーニング用ローラ45に付着した記録液等の成分と反応し記録液等をクリーニングするためのクリーニング液を、少なくとも中間転写体37、クリーニング用電極42、本形態においてはさらにクリーニングブレード41、クリーニング用ローラ45に接触するように供給するクリーニング液供給手段50を有している。
クリーニング液供給手段50は、クリーニング装置40の筐体48と、クリーニング液収容部としてのクリーニング液タンク51と、クリーニング液タンク51内のクリーニング液を、中間転写体37、クリーニング用電極42、クリーニングブレード41、クリーニング用ローラ45に接触するようにクリーニング液タンク51外に圧送する送液手段52と、クリーニング液が少なくとも中間転写体37、クリーニング用電極42、クリーニングブレード41、本形態においてはさらにクリーニング用ローラ45に接触することで形成される液溜りにおけるクリーニング液の量を検知する液量検知手段53とを有している。
送液手段52は、クリーニング液タンク51内から液溜りに向けて延設されクリーニング液流路を形成したパイプ54と、クリーニング液タンク51内のクリーニング液をパイプ54を通じて液溜りに向けて圧送するポンプ55とを有している。
液量検知手段53は、液溜りにおけるクリーニング液の水位を検知するために上下方向において並設された上段水位計測センサ56と、下段水位計測センサ57とを有している。上段水位計測センサ56と下段水位計測センサ57とは何れも、液溜りにおけるクリーニング液の水位を光学的に検知するものであり、クリーニング液には非接触である。液溜りにおけるクリーニング液の水位が上段水位計測センサ56と下段水位計測センサ57との間にあるとき、液溜りにおけるクリーニング液の量は、クリーニング装置40外に漏れず、記録液等をクリーニングするのに過不足のない、適した量となる。下段水位計測センサ57がクリーニング液の液面を検知するとポンプ55が作動してクリーニング液の液溜への供給が開始され、上段水位計測センサ56がクリーニング液の液面を検知するとポンプ55が停止してクリーニング液の液溜への供給が停止される。
よって、送液手段52は、液量検知手段53によって検知された液溜りにおけるクリーニング液の量に基づいて液溜りにクリーニング液を供給し、かかる量を適量に制御する液量制御手段として機能する。なお、液量検知手段53は、クリーニング液に接触しているか否かを検知するセンサにより液溜りにおけるクリーニング液の量が適量であるか否かを検知するものであっても良い。
クリーニング液は、中間転写体37とクリーニング用電極42との間の電気化学反応の媒体となるものである。ベースは水であるが、クリーニング液のイオン伝導性が高いほど、水の電気分解速度が速いので、短時間で効果的なクリーニング効果が発揮される。イオン伝導性を上げる支持電解質として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機系アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなどの有機系アルカリ金属塩、塩化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム硝酸塩などの有機系アンモニウム塩などが挙げられる。
これら支持電解質の濃度が高いほど導電率が高くなるが、あまり高すぎると記録液中の色剤と反応・凝集する、所謂、塩析が起きる。クリーニング液中で凝集体が形成されると、クリーニング用電極42やクリーニング用ローラ45の機能が低下するため、支持電解質の濃度は塩析が生じない程度とされている。また、2価以上の多価金属塩や塩酸、硫酸などの強酸性電解質は、クリーニング液中での顔料の凝集効果が高いため、支持電解質としては1価の金属塩でかつ中性電解質であることが好ましい。
クリーニング液は、乾燥を防ぐため、不揮発性の水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。クリーニング液の供給にはポンプ55を使用するため、低粘度であることが望ましい。クリーニング液は、界面活性剤を含んでいても良いが、筐体48は完全な密閉状態ではないので、クリーニング動作中にクリーニング液の漏れがないようにある程度の表面張力は必要である。
このような構成のクリーニング装置40では、図4に示したクリーニング装置40の動作、作用に加えて、次のような動作、作用がなされる。すなわち、液溜りでは、記録液の色剤等及び記録液の凝集成分がクリーニング液と接触すると、クリーニング液と反応し、分解、拡散によりクリーニング液全体に拡がろうとするが、クリーニング電極42近傍では、pHが低いために凝集が起こり、特にクリーニング電極42表面に記録液の色剤の析出・固定化が起きる。このように、液溜りでは、クリーニング液が記録液の色剤等及び記録液の凝集成分と反応し分解機能を発揮するため、液溜りはクリーニング領域として機能する。
クリーニング用ローラ45は、クリーニング用電極42に付着したクリーニング液を、クリーニング用電極42に付着した記録液や凝集成分等とともに除去してクリーニングし、転写残回収タンク46は、クリーニング用ローラ45によりクリーニング用電極から除去されクリーニングされたクリーニング液、記録液、凝集成分等を回収する。よって、液溜りのクリーニング液は、クリーニング用ローラ45の回転により、凝集成分等とともに転写残回収タンク46に移されるものの、送液手段52及び液量検知手段53により、新鮮且つ適量に保たれる。したがって、クリーニング用電極42、クリーニング用ローラ45、中間転写体37及びクリーニングブレード41のクリーニングが経時的に良好に行われる。クリーニング液供給手段50はこのように、中間転写体クリーニング手段、クリーニング部材浄化手段、電極クリーニング手段としても機能する。
図6に示したクリーニング装置40は、図3ないし図5に示した、クリーニング用電極42がクリーニングブレード41と一体の構成と異なり、クリーニング用電極42が、クリーニングブレード41と別体であるとともに、ローラとなっている点で異なっており、またこれに伴って、クリーニング用電極42を図6において反時計方向に回転駆動する図示しない駆動源を有している。
クリーニング用電極42は、その大部分が液溜りのクリーニング液に浸漬されているが、上方の一部がかかるクリーニング液の液面上に現れ露出した状態となっている。
クリーニング用電極42と中間転写体37とのギャップは、狭ければ狭いほど電気化学的なクリーニング作用は大きい。しかし、ギャップを小さくすると、クリーニング用電極42と中間転写体37とが接触してショートするおそれがある。そこで、かかるギャップは0.5〜2mm程度になるようにされている。
また、図6に示したクリーニング装置40は、図5に示した、電極クリーニング手段44がクリーニング用電極42に当接した電極クリーニング部材としてクリーニング用ローラ45を備えている構成と異なり、電極クリーニング手段44が、クリーニング用電極42に当接した電極クリーニング部材として、クリーニング用ブレード49を備えている。クリーニング用ブレード49は、クリーニング用電極42の、クリーニング液の液面上に現れた部分に、その先端が当接している。
また、図6に示したクリーニング装置40は、クリーニング液供給手段50が、図5に示した構成に加えて、転写残回収タンク46に回収されたクリーニング液をクリーニング液タンク51に戻して液量制御手段として機能する送液手段52に供給するリサイクル手段58を有している。
リサイクル手段58は、転写残回収タンク46内からクリーニング液タンク51内に向けて延設され循環用クリーニング液流路を形成したパイプ59と、転写残回収タンク46内のクリーニング液をパイプ59を通じてクリーニング液タンク51内に向けて圧送するポンプ55とを有している。このポンプ55は、送液手段52のポンプ55と共通のものを使用しているが、送液手段52のポンプ55と別に設けても良い。
このような構成のクリーニング装置40の動作、作用を、図5に示したクリーニング装置40の動作、作用と異なる事項について説明すると次のとおりである。クリーニング用ブレード49は、クリーニング用電極42の回転に伴って、クリーニング液の液面上に現れた部分のクリーニング用電極42に摺接し、クリーニング用電極42に付着したクリーニング液、記録液や記録液の凝集成分等を除去してクリーニングする。クリーニング用電極42からクリーニングされたクリーニング液等は、クリーニング用電極42の回転駆動に伴ってクリーニング用ブレード49を乗り越えて転写残回収タンク46に移され、回収される。転写残回収タンク46に回収されたクリーニング液等のうち、記録液の凝集成分は十分に凝集しており、しばらくすると固液分離が起きる。リサイクル手段58は、固液分離によって転写残回収タンク46内に生じた上澄み液を、クリーニング液として再度使用するべく、ポンプ55を駆動しパイプ59を通してクリーニング液タンク51に戻す。
なお、図6に示したように、クリーニング用電極42をクリーニングブレード41と別体とした場合であっても、クリーニング用電極42は、ローラでなく、図3ないし図5に示したように、板状の形状としても良い。
〔実施例〕
以上の条件を考慮した次の実験により、図3ないし図6に示した各構成のクリーニング装置40におけるクリーニング性能を確かめた。
実験の条件は次のとおりである。
<ブラック記録液>
・スルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−JET−200、固形分20質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):35.0質量%
・2−ピロリドン:10.0質量%
・グリセリン:14.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:0.9質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<イエロー記録液>
・スルホン酸基結合型イエロー顔料分散液(CAB−O−JET−270Y、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・トリエチレングリコール:15.0質量%
・グリセリン:25.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:6.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<マゼンタ記録液>
・スルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液(CAB−O−JET−260M、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・ジエチレングリコール:20.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:3.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<シアン記録液>
・スルホン酸基結合型シアン顔料分散液(CAB−O−JET−250C、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・エチレングリコール:4.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:6.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<画像形成条件>
以上の各記録液を図1に示したヘッド61Y、61M、61C、61BK(リコー製GX−5000)にそれぞれ充填した。
中間転写体37は、支持体37aが直径60mm、長さ250mmのアルミ素管であり、支持体37aの外周に表面層37bとして体積抵抗率が500Ω・cmの導電性シリコーンゴム層を0.2mmの厚みで形成したものであり、200mm/sで回転駆動させている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との距離は任意で構わないが1mmとした。
転写ローラ38は、荷重20kgf/cm2で中間転写体37に押し当てられている。
記録液によって中間転写体37上に形成されたドットは、中間転写体37と転写ローラ38との間に、転写紙Sとしての普通紙(type6200)を通紙することで、転写紙S表面に転写する。
転写後に中間転写体37上に残った転写残記録液を、図3ないし図6に示したクリーニング装置40で回収し、中間転写体37表面をクリーニングして初期化する。
このクリーニングの結果を、図3ないし図6に示したクリーニング装置40に相当する、次の実施例1ないし4について、それぞれ評価した。
・実施例1
実施例1は、図3に示したクリーニング装置40に相当するクリーニング装置を用いたものである。クリーニング用電極42として厚み2mmのグラッシーカーボンプレートを、クリーニングブレード41としてグラッシーカーボンプレート上に成型した厚み1mmのフッ素ゴムを使用した。中間転写体37の回転駆動中、グラッシーカーボンプレートと中間転写体の支持体37aとの間に電圧50Vをかけておく。ヘッド61Y、61M、61C、61BKからは、4色のトータル平均で、転写紙Sとしての普通紙の画像面積率が5%になるように記録液を吐出し続けた状態になっており、普通紙を連続で通紙して中間転写体37上の記録液を普通紙上に転写させている。100枚ごとに計1000枚までプリントした後の中間転写体37の転写残の記録液、凝集成分等をプリンタックで剥離し、紙に写して画像濃度を計測した。
比較例として、クリーニング用電極42としてのグラッシーカーボンプレートと中間転写体37の支持体37aとの間の電圧を印加しない場合でも、同様の条件でクリーニングを行い、画像濃度を計測した。
かかる比較例と比べ、実施例1ではかかる画像濃度の低下が見られ、明らかに電気化学的クリーニング効果があった。ただし、プリント枚数増加に従い、次第にかかる画像濃度が上昇してクリーニング機能の低下が見られた。1000枚通紙後、グラッシーカーボンプレート表面には転写残の記録液の顔料がかなり付着していた。
・実施例2
実施例2は、図4に示したクリーニング装置40に相当するクリーニング装置を用いたものである。クリーニング用ローラ45として長径20mm、短径10mmの楕円状のテフロン(登録商標)を用いて、その表面をブラスト処理により微細な凹凸をつけたものを使用した。テフロン(登録商標)ローラはクリーニング用電極42であるグラッシーカーボンプレートに当接しており、テフロン(登録商標)ローラの回転軸は、グラッシーカーボンプレートに対するテフロン(登録商標)ローラの圧力が常に一定となるように、スプリングで押さえつけているとともに、テフロン(登録商標)ローラ表面にかかる力に応じて変位するようになっている。楕円状のテフロン(登録商標)ローラが回転することでそれに接触しうるグラッシーカーボン表面エリアはクリーニングされ、転写残の記録液に起因する汚れは転写残回収タンク46に流される。その余の点は実施例1と同様である。
実施例1と同様の評価方法で実施例2のクリーニング効果を評価した。実施例1と比較すると、プリント枚数増加に伴うクリーニング効果の低下が抑制されていた。グラッシーカーボンプレート表面の転写残の顔料の付着具合は、プリント枚数によってほとんど違いがなく、電気化学的なクリーニング効果が持続されていると考えられる。
・実施例3
実施例3は、図5に示したクリーニング装置40に相当するクリーニング装置を用いたものである。ポンプ55はダイヤフラムポンプとした。クリーニング液は、以下のものを用いた。
<クリーニング液>
・エチレングリコール:15.0質量%
・グリセリン:15.0質量%
・塩化カリウム:1.0質量%
・蒸留水:残量
クリーニング液の物性値は、粘度6.0mPas、導電率1.4S/m、表面張力65mN/mであった。その余については、図5に示した構成のクリーニング液供給手段50を有する点を除けば実施例2と同様である。
実施例1、実施例2と同様の評価方法により実施例3のクリーニング効果を評価した。実施例2と比較すると、中間転写体37表面の画像濃度は大幅に低減し、クリーニング液を介したほうが電気化学的なクリーニング効果は大きいものとなった。
・実施例4
実施例4は、図6に示したクリーニング装置40に相当するクリーニング装置を用いたものである。クリーニング用電極42は直径15mmのステンレス丸棒に、外周にカーボンブラックを分散させた導電性テフロン(登録商標)層を0.2mmの厚みで形成したものである。クリーニング用ブレード49には当接する部分が鋭角となった形状のフッ素ゴムを使用した。その余については、図6に示した構成のクリーニング液供給手段50を有する点を除けば実施例3と同様である。
実施例1、実施例2、実施例3と同様の評価方法により実施例4のクリーニング効果を評価した。実施例3と比較すると、同様のクリーニング効果が得られた。また、クリーニングが安定しており、プリント枚数によるクリーニング効果の低下がほとんど見られなかった。
以上の評価から、実施例1に相当する図3に示した構成のクリーニング装置40、実施例2に相当する図4に示した構成のクリーニング装置40でも、電気分解を用いる本発明にかかるクリーニング方式の効果が得られることが分かった。ただし、実施例1に相当する図3に示した構成のクリーニング装置40よりも、実施例2に相当する図4に示した構成のクリーニング装置40の効果が高く、また実施例2に相当する図4に示した構成のクリーニング装置40よりも、実施例3に相当する図5に示した構成のクリーニング装置40、実施例4に相当する図6に示した構成のクリーニング装置40の方が高い効果が得られることが分かった。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、中間転写体はローラ状でなく、無端ベルト状であっても良い。
また、本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。