JP5342767B2 - ポリカーボネート樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂成形品、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このガラスフィラーとしては、一般にEガラスと呼ばれているガラスから構成されたガラス繊維が使用されているが、ポリカーボネート樹脂のナトリウムD線における屈折率(nD、以下単に屈折率とする)は、1.580〜1.590であるのに対し、Eガラスの屈折率は1.555程度と若干小さく、機械強度を向上させるために必要な量のガラスフィラーを添加すると、この屈折率の差によって、Eガラス強化ポリカーボネート樹脂組成物では、透明性が得られず、光沢粒子を添加しても、成形品の表面近傍の光沢粒子しか見えず、メタリック調外観や銀河調外観が得られにくい。
前記(2)のポリカーボネート樹脂組成物においては、ポリカプロラクトンを含むために、ポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.015以下のガラスフィラーでも透明性は維持できるものの、耐熱性や機械物性が低下するのを免れないという問題がある。
前記(3)のガラス組成物においては、ZrO2、TiO2、BaO、ZnOなどをそれぞれの含有量を適切に調整しないとガラスが失透してしまい、屈折率がポリカーボネート樹脂と同じでも、それを含むポリカーボネート樹脂組成物は、透明性が得られない場合がある。加えてガラスフィラー自身の比重も大きくなるので、軽量化という意味でガラスフィラー強化ポリカーボネート樹脂組成物を用いる意義が薄れてしまう。加えて前記(1)、(2)、(3)の場合には、ウェルドライン及び光沢粒子の配向の低減については何ら記載がない。
この現象を図1で説明すると、樹脂組成物にガラスフィラーが含まれない場合、図1の1)記載のように、溶けた樹脂組成物同士が中央部で合流してウェルドラインが生成すると、その近傍で樹脂組成物中に含まれる、メタリック調外観や銀河調外観を得るために添加された光沢粒子が倒れずに突き立った(配向した)状態となる。この現象により、光沢粒子による光の反射が乱され、その結果、ウェルドライン近傍では、黒ずんで見えるようになる。
この現象が現れると、樹脂成形品の価値は低下するので、これを防止する方策もいろいろ提案されている。
しかしながら、前記(4)、(5)の場合には、ガラスフィラーを添加した場合のことは記載がない。加えて難燃性についても記載がなく、難燃性を付与しないと使用できる分野が限られる。
なお、(6)メタリック調外観を有するガラスフィラー強化ポリカーボネート樹脂組成物(特許文献6参照)も提案されているが、この場合には、ウェルドラインにおける光沢粒子の配向低減については記載がない。加えて難燃性についても記載がなく、難燃性を付与しないと使用できる分野が限られる。
すなわち、本発明は、
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂90質量部を越え99質量部以下と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー1〜10質量部未満とからなる組成物100質量部に対して、(C)光沢粒子0.01〜3.0質量部、(D)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.01〜3.0質量部、及び(E)有機アルカリ金属塩化合物及び/又は有機アルカリ土類金属塩化合物0.03〜1.0質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、
(2)前記(B)成分のガラスフィラーが、ガラス繊維である上記(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(3)前記(B)成分のガラスフィラーが、屈折率1.583〜1.587である上記
(1)又は(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(4)前記(C)成分の光沢粒子が、マイカ、金属粒子、金属硫化物粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレークからなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(5)前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、さらに(F)着色剤0.0001〜1質量部を含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリカーボネ−ト樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、
(7)金型温度120℃以上で射出成形してなる上記8に記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(8)UL94に準拠した難燃性評価法で1.5mmV−0である上記(6)又は(7)に記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(9)ポリカーボネート樹脂組成物のペレット中または成形品中のガラスフィラーの平均長さが300μm以上である上記(6)〜(8)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(10)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を、金型温度120℃以上で射出成形し、成形品を作製することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法、
を提供するものである。
請求項5に記載の本発明によれば、さらに任意の色調のポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
請求項6〜9に記載の本発明によれば、上記の優れた特性を有する樹脂組成物を成形してなる、銀河調外観やメタリック調外観に優れたポリカーボネート樹脂成形品を得ることができる。
請求項10に記載の本発明によれば、上記の優れた特性を有する樹脂組成物を成形してなる、銀河調外観やメタリック調外観に優れたポリカーボネート樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
二価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。この他、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることもできる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系のものが好ましく、特にビスフェノールAが好適である。
なお、このPC樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α’’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)等がある。
本発明において、(A)成分として用いられるPC樹脂の粘度平均分子量は(Mv)は、通常10,000〜50,000、好ましくは13,000〜35,000、更に好ましくは15,000〜20,000である。
この粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
炭素数10〜35のアルキル基を有する一価のフェノールとしては、例えばデシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール、イコシルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール及びペンタトリアコンチルフェノール等が挙げられる。
この置換基としては、少なくとも1個が前記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
炭素数が10〜35のアルキル基を有する一価のフェノールによる末端封止は、片末端及び両末端のいずれでもよく、また、末端変性率は、得られるPC樹脂組成物の高流動化の観点から、全末端に対して20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
すなわち、他の末端は、水酸基末端、又は下記の他の末端停止剤を用いて封止された末端であってもよい。
本発明のPC樹脂組成物においては、(A)成分の芳香族PC樹脂は、前記のPC樹脂以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂等の共重合体、あるいはその他のポリカーボネート樹脂を適宣含有することができる。
ガラスフィラーとPC樹脂の屈折率差が0.002を超えると、PC樹脂組成物を用いて得られた成形品の透明性が不充分となる。該屈折率差は、好ましくは0.001以下であり、特にガラスフィラーの屈折率と、(A)成分として用いる芳香族PC樹脂の屈折率とが同じであることが好ましい。このようなガラスフィラーとして、屈折率が1.583〜1.587であるものを使用することが好ましい。
上記のようなガラスフィラーを構成するガラスとしては、以下に示す組成を有するガラスI及びガラスIIを挙げることができる。
ガラスIにおいては、Eガラスのように、B2O3を2〜8質量%含有することができる。この場合、TiO2の含有量は、屈折率の向上効果及び失透抑制などの観点から、2〜10質量%であることが好ましい。
また、ガラスIIにおいては、耐酸性や耐アルカリ性に優れるECRガラス組成のように、B2O3を実質的に含有しないことが好ましい。この場合、TiO2の含有量は、屈折率の調整の観点から、2〜5質量%であることが好ましい。また、ZrO2の含有量は、屈折率の増大、化学的耐久性の向上及びガラス製造時の溶解性の観点から、2〜5質量%であることが好ましい。
ガラスI及びIIにおいて、MgOは任意成分であり、引張り強度などの耐久性の向上及びガラス製造時の溶解性の観点から、0〜5質量%程度含有させることができる。また、ZnO及びBaOは任意成分であり、屈折率の増大、失透の抑制の観点から、それぞれ0〜5質量%程度含有させることができる。
ガラスI及びIIにおいて、アルカリ成分であるLi2O、Na2O、K2Oは任意成分であり、それぞれ0〜2質量%程度含有させることができ、かつそれらの合計含有量は0〜2質量%であることが好ましい。この合計含有量が2質量%以下であれば、耐水性の低下を抑制することができる。
このように、ガラスI及びIIは、アルカリ成分が少ないので、(A)成分の芳香族PC樹脂の分解による分子量低下を抑制し、成形品の物性低下を防止することができる。
当該ガラスI及びIIにおいては、前記のガラス成分以外に、紡糸性、耐水性等に悪影響を及ばさない範囲で、例えば、ガラスの屈折率を上げる成分として、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)又はタングステン(W)等の元素を含む酸化物を含んでもよい。また、ガラスの黄色を消色する成分として、コバルト(Co)、銅(Cu)又はネオジウム(Nd)等の元素を含む酸化物を含んでもよい。
また、ガラスI及びIIの製造に使用されるガラス原料には、着色を抑えるために、不純物として、酸化物基準でFe2O3含有量が、ガラス全体に対して0.01質量%未満であることが好ましい。
当該ガラスフィラーの形態に特に制限はないが、ウェルドラインの左右において明度差を視認できないくらいに低減するには、ペレット中又は成形品中のガラスフィラーの平均繊維長が300μm以上であることが望ましく、この観点からガラス繊維が好適である。
ガラス繊維の径に特に制限はないが、通常3〜25μm程度のものが好ましく用いられる。径が3μm以上であれば、乱反射を抑制して成形品の透明性の低下を防止することができ、また、25μm以下であれば、良好な強度を有する成形品を得ることができる。
上述の通り、ペレット中又は成形品中のガラス繊維の平均長さは300μm以上、好ましくは350μm以上が望ましい。ガラス繊維長の平均長さが300μm未満であると、ウェルドライン左右での明度差を低減する効果が得られにくくなる傾向が出てくる。
なお、平均長さは、ペレット又は成形品の一部を電気炉で空気中600℃、2時間焼却し、燃焼残渣を顕微鏡観察などにより測定することができる。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等を使用することができる。特に芳香族PC樹脂とガラスとの接着性が良好である点からシラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。
このようなカップリング剤を用いて前記ガラスフィラーの表面処理を行うには、通常の公知の方法で行うことができ、特に制限はない。例えば、上記カップリング剤の有機溶媒溶液あるいは懸濁液をいわゆるサイジング剤としてガラスフィラーに塗布するサイジング処理法、あるいはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディゲミキサー、V型ブレンダーなどを用いての乾式混合法、スプレー法、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法など、ガスフィラーの形状により適宣な方法にて行うことができるが、サイジング処理法、乾式混合法、スプレー法により行うことが望ましい。
(B)成分の含有量が1質量%未満では剛性の向上効果が充分に発揮されず、また10質量部以上では、ウェルドラインの左右において、明度差が視認できるようになり、いずれの場合も好ましくない。
本発明において、ガラスフィラーの含有量を特定範囲とすることにより、成形品のウェルドラインの左右において、明度差が生じない理由を、図1を用いて説明する。
図1の2)は本発明のようにガラスフィラーが樹脂組成物中に含まれている場合の光沢粒子の状態を示す。
すなわち、本発明の場合、樹脂組成物が左右から流れて中央で合流すると、ウェルドラインが生成したとしても、ガラスフィラーが樹脂組成物の流れ方向と並行に流れ、その作用で光沢粒子の配向が阻止されて、光沢粒子もガラスフィラーと平行に流れ、ウェルドラインの左右においても、光沢粒子の立ち上がりがほとんどなくなる。そのために、本発明では、ウェルドラインの左右を観察しても、光沢粒子による光の反射がほぼ均一となり、明度差が視認できなくなる。
金属粒子の具体例としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属粉末、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子の具体例としては、酸化チタンで被覆された雲母チタン、三塩化ビスマスで被覆された雲母のような金属酸化被膜雲母系のもの、金属硫化物粒子の具体例としては、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化マンガン、等の金属硫化物粉末、及び表面を金属又は金属酸化物で被覆したガラスフレークに用いられる金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、銅、クロム、錫、チタン、ケイ素などを、それぞれ挙げることができる。
(C)成分としての光沢粒子の体積平均粒径は10〜300μm程度が好ましい。
上記(C)成分の光沢粒子の配合量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、0.01〜3.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部である。
(C)成分が0.01質量部未満であると、銀河調外観やメタリック調外観が形成されにくくなり、3.0質量部を超えると、光沢粒子自身の表面に浮き出る量が多くなり、前記外観が損なわれると共に、難燃性も低下する傾向となるため好ましくない。
R1 aR2 bSiO(4-a-b)/2 (1)
で表される基本構造を有する、ポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体を挙げることができる。
前記一般式(1)において、R1は反応性官能基を示す。この反応性官能基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシ基、シラノール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基及びビニル基等が挙げられる。これらの中で、アルコキシ基、水酸基、水素基、エポキシ基及びビニル基が好ましい。
R2は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基などが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などを挙げることができる。
a及びbは、0<a≦3、0<b≦3、0<a+b≦3の関係を満たす数を示す。R1が複数ある場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)で表される基本構造を有するポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体は、その反応性官能基(R1)数/炭化水素基(R2)数の比が、通常0.1〜3、好ましくは0.3〜2程度のものが好ましい。
これらの反応性官能基含有シリコーン化合物は液状物、パウダー等であるが、溶融混練において分散性の良好なものが好ましい。例えば、室温での粘度が10〜500,000mm2/s程度の液状のものを例示することができる。
本発明のPC樹脂組成物にあっては、反応性官能基含有シリコーン化合物が液状であっても、組成物に均一に分散するとともに、成形時又は成形品の表面にブリードすることが少ない特徴がある。
前記(D)成分の含有量が0.01質量部未満では、燃焼時における溶融滴下(ドリッピング)防止効果が不充分であり、また、3.0質量部を超えると混練時にスクリューの滑りが発生してフィードがうまくできず、生産能力が低下する。溶融滴下防止、及び生産性の観点から、前記(D)成分の好ましい含有量は0.1〜1.5質量部であり、より好ましい含有量は0.5〜1.0質量部である。また、これらの反応性官能基含有シリコーン化合物は、添加時の透光性を保持するために、屈折率が1.45〜1.65、好ましくは1.48〜1.60のものが好ましい。
有機アルカリ金属塩化合物及び/又は有機アルカリ土類金属塩化合物としては、種々のものが挙げられるが、少なくとも一つの炭素原子を有する有機酸又は有機酸エステルのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩である。
ここで、有機酸又は有機酸エステルとしては、有機スルホン酸、有機カルボン酸、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。一方、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどが挙げられる。中でも、ナトリウム、カリウム及びセシウムの塩が好ましく用いられる。また、その有機酸の塩は、フッ素、塩素及び臭素のようなハロゲン原子で置換されていてもよい。
(CcF2c+1SO3)dM (2)
(式中、cは1〜10の整数を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等のアリカリ金属、又はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属を示し、dはMの原子価を示す。)
で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩化合物やアルカリ土類金属塩化合物が好ましく用いられる。これらの化合物としては、例えば、特公昭47−40445号公報に記載されているものが該当する。
その他、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸及びこれらのフッ素置換体並びにポリスチレンスルホン酸等の有機スルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。特に、有機スルホン酸としては、パーフルオロアルカンスルホン酸及びジフェニルスルホン酸が好ましい。
次に、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩化合物及び/又アルカリ土類金属塩化合物としては、一般式(3)
で表わされるスルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を挙げることができる。
ここで、スルホン酸塩基はスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどが挙げられる。
本発明のPC樹脂組成物が難燃性の効果を得るためには、スルホン酸塩基の置換比率はスルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の含有量等を考慮して決定され、特に制限はないが、一般的には10〜100%置換のものが用いられる。
ここで、酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の製造方法としては、(a)前記のスルホン酸基等を有する芳香族ビニル系単量体、又はこれらと共重合可能な他の単量体とを重合又は共重合する方法、(b)芳香族ビニル系重合体、又は芳香族ビニル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体、又はこれらの混合重合体をスルホン化し、アルカリ金属及び/又アルカリ土類金属で中和する方法がある。
前述のスルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の重量平均分子量としては、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜200,000程度である。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法で測定することができる。
有機アルカリ金属塩及び有機アルカリ土類塩において、スルホン酸アルカリ金属塩、スルホン酸アルカリ土類金属塩、ポリスチレンスルホン酸アルカリ金属塩及びポリスチレンスルホン酸アルカリ土類金属塩が好ましい。
有機アルカリ金属塩化合物及び/又は有機アルカリ土類塩化合物は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記(E)成分の含有量が0.03質量部未満では、更なる難燃性の発現が不充分となり、また、1.0質量部を超えると、透明性を維持することが困難となる。難燃性の発現及び透明性の維持の観点から、前記(E)成分の好ましい含有量は0.05〜0.4質量部であり、より好ましい含有量は0.1〜0.3質量部である。
このような上記(F)成分の着色剤としては、隠蔽性を持たないものがよく、例えばメチン系染料、ピラゾロン系染料、ペリノン系染料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アンスラキノン系染料などが挙げられる。
上記(F)成分の着色剤の配合量は、(A)成分の芳香族PC樹脂と(B)成分のガラスフィラーとからなる組成物100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0質量部、より好ましくは0.3〜1.0質量部である。0.0001質量部未満であると、所望の色調が得られにくく、1.0質量部を超えると、隠蔽性が高まり、メタリック調外観が得られにくくなる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。その添加量は、前記(A)成分の芳香族PC樹脂と(B)成分のガラスフィラーとからなる組成物100質量部に対して、通常0.05〜1.0質量部程度である。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−α−クミル)−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。中でも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤としては、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼンなどが挙げられるが、中でも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。その添加量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、通常0.05〜2.0質量部程度である。
これらの離型剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部程度である。
蛍光増白剤としては、例えばスチルベン系、ベンズイミタゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系化合物等が挙げられる。具体的には、ユビテック(商品名 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、OB−1(商品名 イーストマン社製)、TBO(商品名 住友精化(株)製)、ケイコール(商品名 日本曹達(株)製)、カヤライト(商品名 日本化薬(株)製)、リューコプアEGM(商品名 クラリアントジャパン(株)製)などの市販品を用いることができる。
なお、シランカップリング剤としては、前述で例示した化合物を用いることができる。
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選定される。
なお、芳香族PC樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、該芳香族PC樹脂の一部と溶融混練したもの、すなわち、マスターバッチとして添加することもできる。
このようにして調製された本発明のPC樹脂組成物は、UL94に準拠した難燃性評価で、1.5mmV−0であり、優れた難燃性を有している。なお、難燃性評価試験については、後で説明する。
本発明のPC樹脂成形品は、前述の本発明のPC樹脂組成物を成形してなるものである。その際、PC樹脂組成物の厚さは好ましくは0.3〜10mm程度とし、該成形品の用途によって、前記範囲から適宜選定される。
本発明のPC樹脂成形品の製造方法に特に制限はなく、従来公知の各種成形方法、例えば射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法などを用いることができるが、金型温度120℃以上、好ましくは120℃〜140℃で射出成形することが好ましい。この際、射出成形における樹脂温度は、通常240〜300℃程度、好ましくは260〜280℃である。
金型温度120℃以上、好ましくは120℃〜140℃で射出成形することにより、ガラスフィラーが沈み、良好な外観が得られるなどのメリットが得られる。より好ましい金型温度は、125℃以上140℃以下であり、さらに好ましくは130℃〜140℃である。
成形原料である本発明のPC樹脂組成物は、前記溶融混練方法により、ペレット状にして使用することが好ましい。
なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、又は軽量化のためのガス注入成形を採用することができる。
このようにして得られた本発明のPC樹脂成形品では、ウェルドラインができたとしても、その左右における明度差を視認できず、成形品の表面全体に良好なメタリック調外観や銀河調外観が得られる。
なお、ウェルドラインの左右における明度差の測定方法については、後で説明する。
本発明のPC樹脂組成物は、芳香族PC樹脂の屈折率と屈折率が同じか、又は近似したガラスフィラー、及び光沢粒子を含有し、透明性、機械強度、耐衝撃性及び耐熱性などに優れると共に、反応性官能基を有するシリコーン化合物と、有機アルカリ金属塩化合物及び/又は有機アルカリ土類金属塩化合物を含むので、高い難燃性が得られる。そして、この組成物を用いて得られた本発明のPC樹脂成形品は、メタリック調外観や銀河調外観に加えて、透明性、難燃性、機械強度、耐衝撃性及び耐熱性などに優れている。
本発明のPC樹脂成形品は、例えば、
(1)テレビ、ラジオカセット、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、ディスプレイ、コンピュータ、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ等の各種部品、外板及びハウジング材等の電気・電子機器用部品、
(2)PDA、カメラ、スライドプロジェクター、時計、計測器、表示器械等の精密機械などのケース及びカバー類等の精密機器用部品、
(3)インスツルメントパネル、アッパーガーニッシュ、ラジエータグリル、スピーカーグリル、ホイールカバー、サンルーフ、ヘッドランプリフレクター、ドアバイザー、スポイラー、リアウィンド、サイドウィンド等の自動車内装材、外装品及び車体部品等の自動車用部品、
(4)イス、テーブル、机、ブラインド、照明カバー、インテリア器具類等の家具用部品
などとして好適に用いることができる。
なお、下記の実施例と比較例で得られたPC樹脂組成物ペレットを用い、以下のようにして試験片を成形して、諸特性を評価した。
(1)機械特性
ペレットを100t射出成形機[東芝機械(株)製、機種名「IS100E」]を用いて金型温度130℃、樹脂温度280℃で射出成形し、所定形状の各試験片を作製した。
各試験片について、荷重撓み温度をASTM D648に、比重をASTM D792に準拠して、それぞれ測定した。
(2)難燃性
ペレットを45t射出成形機[東芝機械(株)製、機種名「IS45PV」]を用いて、金型温度130℃、樹脂温度280℃で射出成形し、127×12.7×1.5mmの試験片を作製した。この試験片について、難燃性をUL94(アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94)に準拠して測定した。
(3)光学特性
ペレットを100t射出成形機[住友重機械工業(株)製、機種名「SG100M−HP」]を用いて、2点ゲートを有する金型で、金型温度130℃で射出成形し、80×80×2mmのウェルドラインを有する試験片を作製した。こうして得られた試験片に、斜め45°からデイライトを照射し、ウェルドラインの左右で光沢粒子の明度差が視認できるかどうかを測定した。
(4)ペレット中のガラス繊維長測定
ペレット数gをSiO2/Al2O3坩堝に計り取り、ヤマト科学社製のマッフル炉FP−21で空気中600℃、2時間焼成した。その後、燃焼残渣の一部をスライドガラスで挟み込んで、日本光学工業社製の万能投影機V−24Bで繊維長を観察。一回の測定につき、200本の繊維の長さを測定し平均を求めた。1つのサンプルに対し、これを3回行い、その平均を平均繊維長とした。
(1)PC;粘度平均分子量19000であるビスフェノールAポリカーボネート[出光興産(株)製、商品名「タフロンFN1900A」、屈折率1.585]
(2)屈折率改良GF1;屈折率1.585であるφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーガラス(株)製、ガラス組成:SiO257.5質量%、Al2O312.0質量%、CaO21.0質量%、TiO25.0質量%、MgO2.5質量%、ZnO1.5質量%、Na2O+K2O+Li2O=0.5質量%]
(3)GF1;屈折率1.555のEガラス製のφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーガラス(株)製、商品名「03MA409C」、ガラス組成:SiO255.4質量%、Al2O314.1質量%、CaO23.2質量%、B2O36.0質量%、MgO0.4質量%、Na2O+K2O+Li2O=0.7質量%、Fe2O30.2質量%、F20.6質量%]
(4)GF2;屈折率1.579のECRガラス製のφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーガラス(株)製、ガラス組成:SiO258.0質量%、Al2O311.4質量%、CaO22.0質量%、TiO22.2質量%、MgO2.7質量%、ZnO2.7質量%、Na2O+K2O+Li2O=0.8質量%、Fe2O30.2質量%]
(5)安定化剤1;酸化防止剤。オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「Irganox1076」]
(6)安定化剤2;酸化防止剤。トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「Irgafos168」]
(7)離型剤;ペンタエリスリトールテトラステアレート[理研ビタミン(株)製、商品名「EW440A」]
(8)難燃剤1;パーフルオロブタンスルホン酸カリウム[大日本インキ化学工業(株)製、商品名「メガファックF114」]
(9)難燃剤2;重量平均分子量が20000であり、かつスルホン化率が100%であるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの濃度30質量%の水溶液[ライオン(株)製、商品名「レオスタッド FRPSS−NA30」]
(10)難燃助剤1;屈折率が1.51であり、官能基としてビニル基及びメトキシ基を有する反応性シリコーン化合物[信越化学工業(株)製、商品名「KR−219」]
(11)難燃助剤2;屈折率が1.49であり、官能基としてビニル基及びメトキシ基を有する反応性シリコーン化合物[東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「DC3037」]
(12)難燃助剤3;ポリテトラフルオロエチレン樹脂[旭硝子(株)製、商品名「CD076」]
(13)光沢粒子1;酸化チタンをコーティングしたガラスフレーク[日本板硝子(株)製、商品名「MC1030RS」]
(14)光沢粒子2;酸化チタン及び酸化ケイ素をコーティングしたガラスフレーク[MERCK社製、商品名「Miraval5411」]
(15)光沢粒子3;着色材をコーティングしたアルミニウム箔[日本防湿工業(株)製、商品名「アストロフレーク」]
(16)着色剤1;アンスラキノン系オレンジ染料[三菱化学(株)製、商品名「ダイヤレジンオレンジHS」]
(17)着色剤2;アンスラキノン系グリーン染料[住友化学(株)製、商品名「スミプラストグリーンG」]
表1に示す配合割合で、各成分を混合し、2軸押出し機[東芝機械(株)製、機種名「TEM−35B」]を用い、280℃にて溶融混練することにより、各PC樹脂組成物ペレットを作製した。
この各ペレットを用い、前述したように試験片を成形して、機械特性、難燃性及び光学特性を求めた。その結果を第1表に示す。
各実施例から、所定量の芳香族PC樹脂と、該PC樹脂との屈折率差が0.002以下の所定量のガラスフィラーとからなる組成物に、光沢粒子、反応性官能基含有シリコーン化合物及び有機アルカリ金属塩化合物、さらに着色剤を配合して得られたPC樹脂組成物を成形することにより、成形品のウェルドライン左右における明度差が視認できず、良好な銀河調外観が得られることがわかる。さらに強度及び耐熱性を維持したまま、優れた難燃性を付与することができることがわかる。
比較例1、2から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、反応性官能基を有するシリコーン、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物であっても、ガラスフィラーの配合量が本発明に規定した範囲を超えると、十分な難燃性は維持できるが、ウェルドライン左右における明度差が視認され、表面全体の銀河調外観が劣ることがわかる。
比較例3から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、反応性官能基を有するシリコーン、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物であっても、ガラスフィラーの配合量が本発明に規定した範囲未満となると、十分な難燃性も維持できず、かつ、ウェルドライン左右における明度差が視認され、表面全体の銀河調外観が劣ることがわかる。
比較例4から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、反応性官能基を有するシリコーン、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物であっても、光沢粒子の配合量が本発明に規定した範囲を超えると、十分な難燃性は維持できるが、ウェルドライン左右における明度差が視認され、表面全体の銀河調外観が劣ることがわかる。
比較例5、6から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002を越えるEガラス(屈折率1.555)又はECRガラス(屈折率1.579)からなるガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、反応性官能基を有するシリコーン、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物では、強度及び難燃性は維持できるが、表面模様は石目調となり、銀河調外観を付与することはできないことがわかる。
比較例7から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物であっても、難燃助剤として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を使用すると、強度及び難燃性は維持できるが、表面模様は石目調となり、銀河調外観を付与することはできない。
比較例8から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物では、強度、及び銀河調外観は維持できるが、難燃性を付与することはできないことがわかる。
比較例9から、芳香族PC樹脂、該PC樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー、有機アルカリ金属塩化合物、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物では、強度及び銀河調外観は維持できるが、やはり満足な難燃性を付与することはできないことがわかる。
Claims (10)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂90質量部を越え99質量部以下と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー1質量部以上10質量部未満とからなる組成物100質量部に対して、(C)光沢粒子0.01〜3.0質量部、(D)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.01〜3.0質量部、及び(E)有機アルカリ金属塩化合物及び/又は有機アルカリ土類金属塩化合物0.03〜1.0質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物であって、前記(D)反応性官能基を有するシリコーン化合物の反応性官能基がアルコキシ基、アリールオキシ基、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシ基、シラノール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基及びビニル基から選ばれるものである、ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(B)成分のガラスフィラーが、ガラス繊維である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(B)成分のガラスフィラーが、屈折率1.583〜1.587である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(C)成分の光沢粒子が、マイカ、金属粒子、金属硫化物粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレークからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、さらに(F)着色剤0.0001〜1質量部を含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネ−ト樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。
- 金型温度120℃以上で射出成形してなる請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
- UL94に準拠した難燃性評価法で1.5mmV−0である請求項6又は7に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
- ポリカーボネート樹脂組成物のペレット中またはその成形品中のガラスフィラーの平均長さが300μmである請求項6〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を、金型温度120℃以上で射出成形し、成形品を作製することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
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