JP5341790B2 - タッチパネル用フィルムとこれを用いたタッチパネル - Google Patents

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Description

本発明は、タッチパネル用フィルムとこれを用いたタッチパネルに関し、特に当該フィルムの構成要素の密着性を向上させる技術に関する。
パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ノートパソコン、OA機器、医療機器、或いはカーナビゲーションシステム等の電子機器、またはFAで駆動される各種製造装置において、ディスプレイに入力手段を兼ね備えるためのタッチパネルが広く用いられている。
代表的なタッチパネルの方式としては抵抗膜式が挙げられる。これは透明面状部材の片面にインジウム酸化スズ(ITO)等の透明電極膜(透明導電膜)が形成された透明導電膜付フィルム(タッチパネル用フィルム)を、一定間隔をおいて対向配置させた構成を持つ。タッチパネルは良好な透明性を有するので、使用時に液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等のディスプレイ表面に直接配設される。
上記抵抗膜式タッチパネルでは、ユーザの指またはスタイラスペン等で一方のフィルムの所定領域を押圧して変形させ、他方のフィルムと接触させて通電させることにより入力が図られる。従って、透明面状部材の主材であるベースフィルムには、透明性とともに十分な入力耐性(例えばペン入力耐久性や打鍵耐久性)が要求され、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネン等の環状オレフィン系樹脂等の透明フィルム材料が用いられる。さらに、その表面には紫外線硬化樹脂等で形成された高硬度なハードコート層(以下、単に「HC層」と称する。)が配設され、強度の向上が図られている。
タッチパネルは、抵抗膜式タッチパネルの他にも、超音波式、光学式、静電容量式タッチパネルなどの方式もある。特に静電容量式タッチパネルでは、入力機能としてマルチタッチやジェスチャーを盛り込むことが可能となるので、近年では普及が進んできている。
上記静電容量式タッチパネルでは、指で表面を接触した際に生成する、指と透明電極間のキャパシタンスを介して電流が流れることを利用して位置検出がおこなわれる。いずれかの透明電極をX座標検出用にもう一方をY座標検出用として、これらを対向配置しておくことで位置検出が可能となる。電極間はプラスチックフィルムや粘着剤の全面貼合によって絶縁されていることが抵抗膜式と異なる点である。
ところで、近年のタッチパネル用フィルムでは、さらなる高機能化が模索されている。例えば特許文献1記載の透明導電性フィルムに示されるように、透明面状部材のHC層の表面に酸化ケイ素(SiO)等の無機層を多層積層した膜(以下、単に「MS膜」と称する。)が配設され、良好な透明性の確保が図られる場合がある。この酸化ケイ素(SiO)等の複数の無機層の最表面に対し、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる透明電極が配設される。
特許第3366864号公報 特開平9−123333号公報 特開平8−294989号公報 特開平8−62590号公報 WO2008/069217公報 特開2008−165984号公報
しかしながら、このような従来のタッチパネル用フィルムでは、積層された層同士の密着性が十分であるとは言い難い問題がある。
すなわち、一般にタッチパネルはディスプレイとともに大気中で使用されるが、使用環境によって様々な温湿度変化や外部光線の照射を受ける。屋外用途やナビゲーションシステム等の用途の場合、タッチパネルは屋内用途に比べて太陽光線・紫外線照射、高温・多湿環境等の影響を被りやすい。工場や公共施設で使用する場合には、水銀灯などの各種照明光源によって、継続的に光照射を受ける場合がある。
このような保管中またはタッチパネルへの使用開始直後において、タッチパネル用フィルムのMS膜とHC層の界面に環境雰囲気中の酸素や水蒸気が拡散侵入する。この状態で、外部より例えば紫外線や可視光短波長側の光(一例として、波長が300nm以上550nm以下の光)が高照度で長期間フィルム照射されると、MS膜と接するHC層の極く浅い表面領域(約10nm以下)に酸化や加水分解が生じる。これらの化学反応の結果、HC層表面の樹脂を構成する有機高分子が低分子化してしまい、最終的にMS膜との密着性低下を引き起こすおそれがある。
この耐光耐久性の問題は、タッチパネルを良好に使用し続ける上で、是非とも解決すべき課題である。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、たとえ過酷な環境下においても、HC層とMS膜間等の密着性低下を防止して、長期にわたり安定した耐光耐久性を発揮することが可能なタッチパネル用フィルムと、これを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、透明基板の一方の面に、紫外線硬化樹脂層および透明無機酸化物層が順次積層されてなるタッチパネル用フィルムであって、透明無機酸化物層の厚みが30nm以上300nm以下であり、紫外線硬化樹脂層は、有機成分および無機酸化物をともに含んでなり、少なくとも前記透明無機酸化物層と接する表面から深さ10nm以内の領域における、当該層中の有機成分中の有機元素数Aに対する無機酸化物中の無機元素数Bの比率B/Aが、元素数比で0.05以上0.35以下である構成とした。
ここで、前記無機酸化物にはSi、Zr、Sn、Sbの少なくともいずれかの元素が含まれ、
前記比率B/Aは、紫外線硬化樹脂層に含まれる無機酸化物を構成する各元素の和と、有機成分の炭素との元素数比(Si+Zr+Sn+Sb)/Cとして定義できる。この場合、前記比率B/Aは紫外線硬化樹脂層において、その前記表面から深さ方向に向かって、一定または漸減するように設定することもできる。
また本発明は、透明基板の一方の面に、紫外線硬化樹脂層および透明無機酸化物層が順次積層されてなるタッチパネル用フィルムであって、透明無機酸化物層の厚みが30nm以上300nm以下であり、紫外線硬化樹脂層には、平均一次粒径が5〜40nmであって、SiO、ZrO、SnO、酸化アンチモン錫(ATO)の中の少なくともいずれかからなる無機酸化物微粒子(無機酸化物製のいわゆるナノ粒子)が、20重量%以上90重量%以下の範囲で分散されている構成とすることもできる。このように調整しておくことで、透明無機酸化膜層と接する表面から深さ10nmの領域における、前記有機成分に対する無機酸化物の比率B/Aを0.05以上0.35以下の範囲にすることができる。
なお、本発明における前記無機酸化物には、TiOを含めないことが望ましい。これは、TiOがその光触媒活性によって、光存在下で有機成分の分解反応を促進する性質があるため、前記紫外線硬化樹脂層中に存在すると、比較的早期に当該樹脂層の劣化を生じ、MS膜とHCとの密着性が低下する恐れがあるからである。但し、実際の製造工程においては、不純物レベル(紫外線硬化樹脂層中において例えば2wt%以下)でTiOが混入する場合があるが、このような極微量の混入レベルでは、密着性低下の問題は無視できる程度に小さい。
ここで、透明無機酸化物層は、少なくとも2種類以上の異なる層を積層した多層構造で構成することもできる。
また、透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層側から、第一の屈折率を有する第一層と、透明導電膜とを同順に積層してなる構成とすることもできる。
或いは前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層側から、第一の屈折率と異なる第二の屈折率を有する第二層と、第一の屈折率を有する第一層と、透明導電膜を同順に積層してなる構成とすることもできる。
或いは前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層の上に、直接配された透明導電膜であり、当該透明導電膜の厚みが30nm以上である構成とすることもできる。
或いは前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層の上に、第一の屈折率と異なる第二の屈折率を有する第二層と、第一の屈折率を有する第一層とを同順に積層し、前記第二層及び第一層の積層単位を2以上繰り返して積層してなり、透明基板の他方の面に透明導電膜が形成されている構成とすることもできる。この場合、前記第一層または前記第二層の内の一方の層は、TiO、Ta、Nbの内の1種以上を含む無機酸化物層で構成することが可能である。また、前記第一層または前記第二層の内の一方の層は、SiO及びSnOの少なくともいずれかを含む無機酸化物層で構成することも可能である。
或いは、前記透明無機酸化物層の最上面に、フルオロシラン系やフッ素系樹脂を含む層を積層してなり、透明基板の他方の面に透明導電膜が形成されている構成とすることもできる。
或いは、前記透明無機酸化物層は、紫外線硬化樹脂層の上に、低密度シロキサン層を積層してなり、透明基板の他方の面には、紫外線硬化樹脂層及び透明導電膜が順次積層されている構成とすることもできる。
また本発明は、一対の透明導電膜付基板が、互いの透明導電膜を対向させた状態で一定間隔をおいて配置されてなるタッチパネルであって、前記透明導電膜付基板の少なくとも一方として、前記した本発明のいずれかのタッチパネル用フィルムを用いた構成とした。
また本発明は、一対の透明導電膜付基板が、互いの透明導電膜を対向させた状態で一定間隔をおいて配置されてなるタッチパネルであって、前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、前記した本発明のいずれかのタッチパネル用フィルムであり、前記透明無機酸化物層がタッチ側表面に配向するようにタッチパネル用フィルムが配設されている構成とした。
以上の構成を有する本発明のタッチパネル用フィルムでは、透明基板に形成された紫外線硬化樹脂層(HC層)が、透明無機酸化物層(MS膜)と対向する表面及びその付近において、所定の無機酸化物成分リッチな領域を設けている。
これにより本発明では、紫外線硬化樹脂層(HC層)が透明無機酸化物層(MS膜)と接触する表面近傍の領域において、紫外線硬化樹脂層(HC層)中に無機酸化物が多く存在する構成となり、互いの構成成分が類似するように図られ、両者の親和性が格段に改善されている。したがって、従来に比べて紫外線硬化樹脂層(HC層)が透明無機酸化物層(MS膜)の密着性が飛躍的に向上され、容易に剥離を生ずることがない。
前記効果を発揮するためには、HC層中の無機酸化物は透明無機酸化膜層と接するHC層表面から深さ10nmの領域における有機成分に対する無機酸化物の比率(前記比率B/A)が0.05以上0.35以下、好ましくは0.1以上0.3以下の範囲である必要がある。また、10nmよりも深い領域においても、前記比率B/Aを維持するか、または前記組成から連続的に比率を低下させていく構成とする。
ここで、前記比率B/Aが0.1未満であると、本発明の主要な効果である耐光耐久性が得られない。また0.35ではHC表面の無機酸化物が多くなりすぎるため、表面にクラックが発生しやすくなる。
HC層表面から深さ10nmの領域における有機成分に対する無機酸化物の前記比率B/Aを0.05以上0.35以下に調整する方法としては、例えば、(1)特許文献1に記載のSiなどの半導体や金属の極薄層を形成する方法、(2)シランカップリング剤を用いてこれを表面に気相接触させる方法(シランカップリング剤による表面修飾)、(3)シリコーン成分(紫外線や熱に対する反応性・非反応問わず)を混合しておく方法などでも、可能である。しかし、(1)〜(3)に例示した方法では、本発明の効果は全く得られず、むしろ耐光耐久性を低下させてしまうことがある。
本発明の効果が得られる理由として、本発明では、HC層に分散されている無機酸化物とHC層を形成する紫外線硬化樹脂が、いわゆる投錨(アンカー)効果等により物理的に結合しているためであり、この点が例示した(1)〜(3)とは決定的に異なる点である。
本発明では、MS膜と接触する表面近傍のHC層表面の無機酸化物が元々リッチとなっていて、元々有機高分子の光酸化劣化の影響などを受けにくいのであるが、もし有機高分子の劣化が生じてもアンカー作用があるためMS膜の剥離が極めて生じにくいと考えられる。
このことから、本発明のタッチパネル用フィルムでは、タッチパネル用フィルムの使用中または保管中において、フィルムの内部に酸素が拡散侵入し、当該フィルムが外部から紫外線や可視光短波長側の比較的高エネルギーの光を継続的に受けたとしても、紫外線硬化樹脂層(HC層)と透明無機酸化物層(MS膜)との剥離を防止し、長期間の優れた耐光耐久性を発揮することで安定した形態を維持できるようになっている。
その結果、長期にわたり高い入力耐久性を有する高い信頼性を有するタッチパネルの実現が期待できる。
実施の形態1のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態2のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態3のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態4のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態5のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態6のタッチパネル用フィルムの構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態7の抵抗膜式タッチパネル付LCDの構成を示す斜視図である。 実施の形態7の抵抗膜式タッチパネル付LCDの構成を示す断面図である。 実施例3の反射スペクトルを示すグラフである。 実施例4の反射スペクトルを示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの実施形式に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(透明導電膜付フィルムの構成)
図1は、本実施の形態1におけるタッチパネル用フィルム1の積層構造を示す断面図である。
タッチパネル用フィルム1(以下、単に「フィルム1」と称する。は、透明面状部材4の一方の主面に、中屈折層42と低屈折層43、及び透明導電膜13を含むMS膜3を形成して構成される。
当該フィルム1は、抵抗膜式タッチパネルにおいては実施の形態7で説明するように、一対(2枚)を用意し、互いの透明導電膜13が対向させるように配置させて利用される(後述する図8のフィルム1a、1bおよび透明導電膜13a、13bを参照)。なお図1では矢印で示すように紙面上部を対向面側とし、紙面下部を入力面側(タッチ側表面)として図示している。
透明面状部材4は、ベースフィルム40の両面に、紫外線硬化樹脂層であるHC(ハードコート層)41、44を形成して構成される。
ベースフィルム40は、透明性及び可撓性、打鍵耐久性等のタッチパネル特性に優れる樹脂フィルムで構成された透明基板である。その素材は限定しないが、前記特性を満たすものとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネンなどの環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)等などが例示できる。市販製品としては、東洋紡績株式会社製「コスモシャイン A4300」、JSR社製「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製「ゼオノア」シリーズ等が挙げられる。
HC層41、44はベースフィルム40を保護するとともに、フィルム1に所定の硬度、透明性等を付与する目的で設けられる。厚みは1μm以上10μm以下の範囲が好適である。材料としては、紫外線硬化型アクリル樹脂やウレタン樹脂等の有機成分を主成分とし、これに無機酸化物(Si、Zr、Sn、Sbの少なくともいずれかの元素を含む酸化物)を含んでなる。このうち、少なくともHC層41は本発明の主たる特徴部分であって、MS膜3と接する表面とその近傍領域における無機酸化物の比率が、これ以外の領域よりも所定の値まで高くなるように設定されている。ここで言う「近傍領域」とは、前記表面から少なくとも深さ10nm以内の領域を指す。しかしながら、これより深い領域にわたって、前記無機酸化物の比率が、当該領域以外に比べて高い構成であってもよい。
具体的には、HC層41において、MS膜3と接する表面とその近傍領域における有機成分中の有機元素数A(ここでは炭素成分)に対する、無機酸化物中の無機元素数B(ここではSi、Zr、Sn、Sbの元素数和)の比率B/A(すなわち(Si+Zr+Sn+Sb)/C)が0.05以上0.35以下、好ましくは0.1以上0.3以下となるように調整されている。
このようなHC層41、44は、例えば特許文献5に示すような方法を用いて構成することができる。特許文献5は、(a)RSiX4−nで表わされる有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、(b)金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基もしくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、およびそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/またはそれから誘導される化合物、(c)紫外線硬化性化合物を含有することを特徴とする有機無機複合体である。このような有機無機複合体は、(a)(b)(c)の原料を配合した塗料をベースフィルム40の表面に塗布したのち、溶媒を揮発除去し、その後、表面を紫外線で重合させて構成することができる。このようにして得られたHC層の表面は無機酸化物(シロキサン)成分リッチとなる。また、当該HC層は前記表面から深さ方向に向かって傾斜組成を有した構成となる。
また、特許文献6の実施例として記載されている方法などを利用することもできる。特許文献6は、バインダー成分並びに該バインダー成分中に分散した導電性粉体及び高屈折率粉体からなり、該導電性粉体は0.1〜30質量%の水酸化錫粉体と70〜99.9%質量%のその他の導電性粉体とからなる透明導電膜形成用組成物、そのような組成物から形成される透明導電膜等に関する発明である。本発明の実施のためには、特に導電性粉体ではなく、SiO、ZrOなどの絶縁性粉体であっても一向に構わない。本発明を実施するための手法としては、特許文献6の記載を参考にできる。
これらの方法によりHC層41の前記表面には、無機酸化物成分リッチな領域410が形成されるので、このような無機酸化物成分リッチな領域410を持たない従来のHC層に比べ、HC層41の上に積層されるMS膜3との相性が改善され、優れた密着性が発揮される。
すなわち、従来のタッチパネル用フィルムは、波長300nm以上550nm以下程度の紫外から可視光の低波長領域の光を高照度で長期間連続的に受けた場合、HC層と透明無機酸化物層(本発明では透明面状部材4とMS膜3)との間で剥離が生じやすい問題が確認されている。さらに本願発明者らが鋭意検討したところ、この剥離のしやすさは、MS膜のトータル膜厚に依存することが見出された。すなわち、タッチパネル用フィルムはその使用経過に伴い、フィルム中に拡散侵入した酸素や水分の存在下で外部より前記波長の光照射を受けると、MS膜と対向するHC層の有機高分子が低分子化(劣化)する。そして、MS膜とHC層界面に元々内在していた応力により、HCの劣化した箇所で剥離が生じる。その理由としては、MS膜はその厚みが増すと応力も強くなるため、剥離しやすさが増すと考えられる。本願発明者らは、このような剥離は、透明無機酸化物層とHC層の厳密な界面で剥離しているわけでなく、HCの表層から数nm程度HCの内部に入った箇所で剥離していることを見出した。
このような問題に対し、フィルム1では、HC層41の表面に所定の無機酸化物成分リッチな領域410を設けているので、有機高分子のみからなるHC層よりも表面付近の酸化や加水分解を受けにくく、MS膜3とHC層41との密着性が従来よりも向上しており、両者の剥離が効果的に防止される。このため、長期間にわたりフィルム1を使用しても、安定した密着性によりタッチパネル機能が維持される。
このような本発明の効果は、たとえば波長300nm〜550nm程度の光を継続的に照射される使用環境において、各層の剥離防止を図って安定したタッチパネルの動作を維持できる点において、特に有用性が高いものである。
なお、このような無機酸化物成分リッチなHC層の構成は、実施の形態1の他、以下に示す各実施の形態に共通して、少なくともMS膜3を積層するHC層41のみに適用すればよいが、これに加えて図1のようにHC層44に適用してもよい。HC層44の表面(図1では紙面下方表面)に無機酸化物成分リッチな領域440が形成されている。
またHC層は、少なくともベースフィルム40の一方の主面に形成されていればよいが、両面に設けることが機械的強度等を得る面で望ましい。ベースフィルム40の下面側にもHC層44を設けることにより、ユーザの指或いは入力手段であるスタイラスペン等の操作性(筆記性)、防汚性、耐指紋性、防汚性および表面の耐摩耗性等が付与される。
また、HC層41、44の少なくともいずれかには、エンボス賦型を行うことなどの公知の表面処理を施しても良い。
無機酸化物成分リッチな領域410、440はX−ray Photoelectron Spectroscopy(XPS)によって確認および定量分析することができる。XPS測定時に、Arイオンでのスパッタエッチングを併用することで、HC層の深さ方向プロファイルも測定できる。
MS膜3は、透明面状部材4側から順に、中屈折層42、低屈折層43、透明導電膜13を積層した透明無機酸化物層として構成される。これらはいずれも各種薄膜形成法(例えばスパッタリング法、電子ビーム法、イオンビーム法、真空蒸着法、プラズマCVD法、Cat−CVD法、MBE法等)のいずれかを用いて形成できるが、タッチパネルのような厚みや表面抵抗の均一性が要求される用途に対しては、スパッタリング法が好適に用いられる。これらの成膜を実施することで、MS膜3の合計厚みは30nm以上300nm以下、ここでは120nmに設定されている。MS膜3の構成要素となる各層は、それぞれ所定の透明性及び屈折率を有し、外光反射の防止性等、フィルム1に光学特性を付与するために配設される。
中屈折層42は、厚み60nm程度の透明無機材料からなる第一層であり、例示するならばSiON、あるいはSiO−SnO系、SiO−TiO系の膜等であってもよい。
中屈折層42の屈折率は、後述の低屈折層43の屈折率よりも高い1.6〜1.9程度(波長630nm)に設定される。
低屈折層43は、MS膜3中の第二の屈折層であって、酸化ケイ素(SiO)を主成分とする無機成分を含んでなる第二層である。層厚みは15nm以上60nm以下、屈折率は1.46程度(波長630nm)にそれぞれ設定されている。
このように中屈折層42、低屈折層43は、互いに異なる屈折率を有する層として構成されており、これらを利用することでフィルム1に良好な光学特性(透明性)が付与される。
なお、中屈折層42、低屈折層43は、繰り返し積層して配設させてもよいが、あまり積層数を増すとフィルム1に反りが発生したり、MS膜3中にクラックが発生するので留意する必要がある。
透明導電膜13は、既知の抵抗値(表面抵抗)を持つITO、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化インジウム−酸化タングステン系、酸化インジウム−酸化チタン系、或いはこれ以外の各種金属材料等のいずれか1種以上の材料を用い、CVD、真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム等の方法で成膜することで形成される。ここではITOのみを用いた抵抗膜(透明電極膜)として構成されている。なお、成膜にあたっての設定例としては、表面抵抗を200〜1kΩ/sq.、厚みを20nm以上40nm以下、屈折率は1.9〜2程度である。
ここで、一般にタッチパネル用フィルムでは、使用経過に伴ってフィルム内に酸素や水蒸気が拡散侵入する。この酸素が侵入した状態で、光存在下での長時間の使用を続けた場合、HC層中の樹脂分子が光酸化劣化等により低分子化する。この酸化反応は、当該フィルムに対して波長300nm以上550nm以下の光が継続的に照射されると、そのエネルギーを受けて発生頻度が高まる。発明者らの検討によれば、このようなプロセスにより、MS膜とHC層との密着性が低下すると考えられる。
これに対し本発明のフィルム1では、前述の通り、HC層41の表面とその付近に無機酸化物成分リッチな領域410を設けることにより、MS膜3とHC層41との親和性を改善しているので、互いの密着性が飛躍的に向上されている。したがって、前記界面付近におけるHC層41の有機成分が、フィルム1内部に酸素が拡散侵入した状態で、外部からの前記一定波長の光照射を継続的に受けたとしても、MS膜3がHC層41の表面から容易に剥離することはない。
このような優れた耐光耐久性を備えることにより、フィルム1では安定した密着性が発揮される。
したがって本発明のフィルム1によれば、MS膜3とHC層41との密着性を向上させることによって、大気中において水銀灯やキセノンランプなどに起因する波長の短い紫外線等、比較的高照度の光照射を受けるような使用環境下でも、長期にわたって安定した密着性が発揮され、優れた耐光耐久性を有するタッチパネルを実現できるので非常に有用性が高い。
以下、上記以外のタッチパネル用フィルムの実施の形態について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
<実施の形態2>
図2は、実施の形態2のタッチパネル用フィルム1Aの構成を示す部分的な断面図である。
当図に示すフィルム1Aの特徴は、中屈折層42を省略し、HC層41の上に直接低屈折層43を形成した点にある。この例でMS膜3は、低屈折層43と透明導電膜13のみで構成される。MS膜3の厚みは35nm〜90nm程度に設定されている。
このような実施の形態2のフィルム1Aにおいても、無機酸化物成分リッチな領域410を配設することによって、フィルム1と同様にHC層41とMS膜3(特に低屈折層43)との親和性が向上され、両者の密着性が向上されている。
すなわち、製造後のフィルム1Aを大気中に保管し、波長300nm〜550nm程度の光照射を継続的に受けた場合であっても、HC層41と中屈折層42との界面付近において、HC層41の劣化反応(有機成分が低分子化する反応)を生ずることが抑制される。また、タッチパネルの使用中においても、十分な入力耐久性が発揮され、構成要素の剥離を防いで安定したタッチパネル特性を長期にわたり維持することができる。
<実施の形態3>
図3は、実施の形態3のタッチパネル用フィルム1Bの構成を示す部分的な断面図である。
当図に示すフィルム1Bの特徴は、中屈折層および低屈折層を用いず、HC層41の上に直接、透明導電膜13を形成した点にある。
このような構成のフィルム1Bにおいても、実施の形態1及び2と同様に良好な耐光耐久性及びタッチパネル特性が発揮される。
また、本実施の形態3は、透明導電膜13の膜厚が比較的厚い場合において、特に良好な剥離防止効果を奏する。一般に、抵抗膜式タッチパネルの透明導電膜13の厚みは15nmから40nm程度であるが、40nm以上の厚みになると当該膜13自体が有する応力が強まるので、透明面状部材4との追従性が低下する。このため、HC層と透明導電膜との間で密着性低下が生じやすくなる。
しかしながら本発明では、HC層41と透明導電膜13との密着性が改善されているので、透明導電膜13の厚みが30nm以上の比較的厚い場合であっても、当該膜13がHC層41側から容易に剥離することがない。このため、HC層41に直接透明導電膜13を形成した構成においても、長期にわたって安定した密着性が発揮され、耐久性に優れたタッチパネルが実現される。
<実施の形態4>
図4は、実施の形態4のタッチパネル用フィルム1Cの構成を示す部分的な断面図である。
当図に示すフィルム1Cは、MS膜3及び透明面状部材4の積層構造は実施の形態1のフィルム1と同様であるが、透明面状部材4において、HC層41A、42Aの内部に所定のナノ微粒子50を分散させた構成を特徴とする。
ナノ粒子50は、無機顔料(SiO、ZrO、アンチモンスズ酸化物(ATO)のうちの1種以上)からなり、平均一次粒径が(5〜40nm)の無機微粒子で構成されている。
ナノ粒子50の添加濃度としては、HC層41A、44Aにおいて、乾燥後(有機溶媒を含まない)の塗膜中での重量%濃度で、20重量%以上90重量%の範囲となるように調整されている。このように設定されたHC層でも、HC表面とその近傍領域における有機成分の有機元素数Aに対する、無機酸化物成分中の無機元素数B(ここではSi、Zr、Sn、Sbの元素数の和)の比率B/A(すなわち、(Si+Zr+Sn+Sb)/C)を0.05以上0.35以下とすることができる。
このようなナノ粒子50を利用したHC層41A、44Aを持つフィルム1Cにおいても、実施の形態1と同様に、フィルム1C中に酸素が侵入し、波長350nm以上550nm以下の可視光照射を受ける使用環境において、主としてMS膜3とHC層41Aとの間で優れた耐光耐久性が発揮されるとともに、良好なタッチパネル特性が得られる。
本実施の形態4では、HC層41A、44Aのいずれにおいても、各々の層全体にわたりナノ粒子50を分散させた構成を例示したが、たとえば実施の形態1のHC層41のように、MS膜3と直接接触する表面付近にナノ粒子50を偏在させるようにしてもよい。この場合の製造方法としては、HC層の材料となる塗料(通常は有機溶媒を含む)を複数用意してベースフィルム40の表面に段階的に塗布し、最上位の表面部分として、ナノ粒子50を分散させた塗料を塗布・乾燥させることが例示できる。このような構成によっても、HC層41AとMS膜3との密着性を向上させることができると考えられる。
<実施の形態5>
図5は、実施の形態5のタッチパネル用フィルム1Dの構成を示す部分的な断面図である。当図では、紙面上方を入力面側(タッチ側)表面とし、下方を対向面側(ディスプレイ側)表面としている。
当図に示すフィルム1Dは、ベースフィルム40の両面にHC層41、44を形成し、対向面側のHC層41の表面に透明導電膜13を積層してなる実施の形態3のフィルム1Bを基本構造とする。そして、入力面側のHC層44の上に、中屈折層42a、低屈折層43a、中屈折層42b、低屈折層43bを順次積層するとともに、その最上層として滑剤層45を配設した構成を有する。中屈折層の42aと42b、低屈折層の43aと43bは、それぞれ同一の組成である。MS膜3の膜厚は220nm程度に設定される。このように中屈折層と低屈折層を交互に積層することによって、フィルム1Dに良好な光反射防止(AR)特性が付与される。
滑剤層45は、フィルム1に滑性を付与することでタッチパネルのペンでの筆記入力特性を改善するために設けられる層である。また、滑剤層45を設けておくことで、入力とともに生じる摩擦力によってMS膜3に生じる外力を低減させることができる。ここでは公知のフルオロシラン系フッ素系防汚剤(たとえばダイキン工業株式会社製「オプツールTMDSX」)を用いて構成されている。
滑剤層45の厚みは非常に薄く、約1nmとすることができる。
なお、本実施の形態5では、2種類以上の異なる材料で構成された層を積層してなる多層構造でMS膜3を構成しているが、この各層の積層順序はいずれであってもよい。図5の例では、低屈折層43a(または43b)を先にHC層44上に積層し、当該低屈折層43a(または43b)の上に中屈折層42a(または42b)を積層してもよい。
また、低屈折層および中屈折層の一組の積層単位は、これを2以上繰り返して積層してもよい。中屈折層はTiO、Ta、Nbの内の1種以上を含む無機酸化物層で構成することができる。このうち、Nbを単独で用いた層の屈折率は2.3に調整することができる。
また、低屈折層は、SiO及びSnOの少なくともいずれかを含む無機酸化物層で構成することが可能である。SiOを単独で用いた層の屈折率は1.46、SiO及びSnOで構成した層の屈折率は1.9にそれぞれ調整することができる。
これらの低屈折層、中屈折層の各膜厚は、任意に調整が可能であり、例えば10nm程度から120nm程度の範囲にそれぞれ調整できる。このように、低屈折層および中屈折層の積層単位を一組以上用いることで、後述する性能確認実験で示すように、人間が感知し易い可視光(例えば550nm近傍の波長可視光)の反射率を効果的に低減でき、HC層44の耐光耐久性と相まって良好な効果を期待できる。但し、厚すぎると可視光透過率が低下し、薄すぎると十分な強度及び反射率が得にくくなるため注意が必要である。
また、本発明はこの構成に限定されず、積層順序を逆にすることもできる。或いは、多段に中屈折層45と低屈折層46を積層して構成することも可能である。このような層構成の調整を行うことで、タッチパネルに必要とされるAR特性に合致させるようなMS膜を得ることができる。
<実施の形態6>
図6は、実施の形態6のタッチパネル用フィルム1Eの構成を示す部分的な断面図である。当図では、紙面上方を入力面側(タッチ側)表面とし、下方を対向面側(ディスプレイ側)表面としている。
当図に示すフィルム1Eは、実施の形態3のフィルム1Bを基本構造とし、その入力面側のHC層44の上に、中屈折層42a、低屈折層43aを順次積層するとともに、その最上層に低密度シロキサン層46を形成した構成を有する。
ここで言う低密度シロキサン層46とは、ここではゾルゲル法に基づき所定の材料を塗布・乾燥して構成された層であり、内部に多数の微細な空間(数〜数十nmの気泡)やメチル基、エチル基やフッ素基が存在する層である。これによりバルクSiO(密度2.22g/cm)の屈折率1.46よりも低屈折率となり、フィルム1Eに対して良好なAR特性を付与することができる。
当該層46の化学構造を例示すると、たとえばシロキサン結合骨格を主体とし、これにフルオロシラン化合物やメチル基、エチル基等が適量導入された構成が挙げられる。この構成では、導入されたフルオロシラン化合物やメチル基がSi原子と結合するので、SiOを主体とするネットワーク構造の密度を低下させることができ、十分に低い屈折率を持つ低密度シロキサン層46を形成できる。
このようなフィルム1Eにおいても、実施の形態1と同様にHC層44とMS膜3との間で良好な密着性が発揮され、互いに剥離を生じるのが効果的に防止される。また、低密度シロキサン層46を利用することで、良好な透明性を備えたタッチパネルを実現することができる。
<実施の形態7>
図7は、実施の形態7にかかる抵抗膜式タッチパネル2(以下、単に「タッチパネル2」と称する。)の構成と、これに組み合わされるLCDとの構成例を示す組図である。また図8は、当該タッチパネル2の断面図である。
図7及び図8に示されるように、タッチパネル2では、上から順に反射防止(AR)フィルム11、フィルム1a、スペーサー15、配線基板30、リブスペーサー17、フィルム1b等を積層してなる。フィルム1bの下面には、さらに接着層などを含む複数層からなる中間層20を介してLCD201が同順に積層されており、全体としてLCD一体型タッチパネルが構成されている。この構成のうち、フィルム1a、1bに実施の形態1のタッチパネル用フィルム1が使用されている。
なお、タッチパネル2と組み合わされるディスプレイは、当然ながらLCDに限らず、CRT、有機EL、PDP、電子ペーパー等の他の種類のディスプレイであってもよい。
当該タッチパネル2は、いわゆる「4線式」と呼ばれる入力検出方法が採用されている。
ARフィルム11は、トリアセチルセルロース(TAC)やPETをベースフィルムとして、その入力面(タッチ面)側にベースフィルムからハードコート層と反射防止層を順次形成したものである。通常、ARフィルム11とフィルム1aは、不図示の接着層を介して前面貼合されて用いられる。
フィルム1a、1bは、それぞれの片面に形成されている透明導電膜13a、13bが一定間隔をおいて対向するように、対をなして配置されている。各々のフィルム1a、1bの少なくとも一方の対向表面側には、所望の表面粗さを持つ担持体を圧着したり(エンボス賦型)、HC層41の形成前のHC塗料中にSiOなどの微粒子(平均粒径数μm)を適宜分散させておく等の方法を用いて表面に微細な凹凸処理を施すことも好適である。これによりフィルム1a、1bにおけるニュートンリングの発生を効果的に抑制し、視認性を向上させることができる。なお、当該ニュートンリング防止処理は必要に応じて適宜実施すればよい。
透明導電膜13a、13bは、ここでは低屈折層43の表面でストライプ状の所定のパターンをなすように形成されている。透明導電膜13a、13bの全体的なパターンとしては、図7に示す例では矩形状に形成しているが、これに限定されない。さらに、当該透明導電膜13a、13bのy軸或いはx軸に並行な一対の辺に沿って、それぞれ引き出し線131、132、141、142が配設され、全体としてxy直交座標をなすように形成されている。引き出し線131、132、141、142には、電極端子131a、132a、141a、142aが設けられる。図7中、133は、電極端子132aと引き出し線132との接続線である。
透明導電膜13a、13bの周囲には、粘着材、粘着シート、プラスチックフィルム両面に粘着材層を有する両面テープ等のいずれかで構成された高さ約50μmのリブスペーサー17が配設される。これにより、通常は当該透明導電膜13a、13b同士が互いに一定間隔16を置くように対向配置されている。
さらに、透明導電膜13bの表面には、xy方向に沿ってマトリクス状に半球状の突起スペーサー15が一定間隔毎に配設され、透明導電膜13a、13b同士の不要な接触が回避されている。突起スペーサー15は透明な光硬化型アクリル樹脂で作製され、フィルム1a、1bの対向距離に合わせ、例えば高さ10μm、直径10μm〜50μmのサイズに設定されている。図7では図示の都合上、実際より突起スペーサー15のサイズを大きく模式的に表している。当該突起スペーサー15は、半球状以外の形状、例えば円錐状や円柱状等としてもよい。
透明導電膜13a、13bの間には、フィルム1a、1b上の各々の電極端子131a、132a、141a、142aの位置に合わせ、フレキシブルコネクター30が介設される。フレキシブルコネクター30は、PET或いはポリイミド等の樹脂材料で作製されたフレキシブル基板301に対し、当該基板表面にAu、Ag、Cu等の良好な導電性を持つ材料からなる配線302〜305が形成されてなる。配線302〜305には電極端子302a〜305aが形成され、前記電極端子131a、132a、141a、142aと接続されるようになっている。
タッチパネル2の入力検出原理(4線式)は、駆動時において、y軸に沿った引き出し線131、132間に0〜5V程度の直流電圧を印加しておく。ユーザによる入力がなされると、x軸に沿った引き出し線141、142を電圧検出電極としてy軸方向の位置データを獲得する。
次に、x軸に沿った引き出し線141、142間に電圧印加を行い、y軸に沿った引き出し線131、132を電圧検出電極としてx軸方向の位置データを獲得する。以上でxy両方の座標情報が得られる。タッチパネル2ではこの検出ステップを交互に繰り返すことにより、逐次的にユーザからの入力情報を獲得し、GUI(Graphical User Interface)が実現される。
ここにおいて、本実施の形態7のタッチパネル2の主たる特徴は、透明導電膜13a、13bをそれぞれ片面に有するフィルム1a、bに、実施の形態1のタッチパネル用フィルム1を使用した点にある。当該フィルム1a、1bは実施の形態1で述べたように、HC層41に所定の無機酸化物成分リッチな領域410を設けたことによって、主としてMS膜3との間における密着性が向上されている。このため、タッチパネル2は構成要素が強固な密着性を維持するように積層されており、長期にわたって優れた入力耐久性を発揮できるようになっている。
したがって、このような効果が得られることにより、タッチパネル2を紫外線照射量が比較的多い野外で使用したり、高温環境下になりやすいカーナビゲーションシステムで使用するほか、波長300nm以上550nm以下の光が連続的に照射される環境で継続的に使用しても、長期間にわたり安定した入力特性を維持することができる。
なお、本発明のタッチパネルの構成は図7及び図8の構成に限定されるものではなく、例えばフィルム1bにおけるベースフィルムをガラス基板で構成する、いわゆるF−Gタイプとしてもよい。
また、タッチパネル2では実施の形態1のフィルム1をフィルム1a、1bとして利用する例を示したが、フィルム1a、1bには当然ながらこれに限定されず、これ以外の実施の形態2〜6のフィルム1A〜1Eのいずれかを適用することができる。この場合、一方のフィルムと他方のフィルムにそれぞれ別の実施の形態のフィルムを適用することもできる。
なお、実施の形態1〜4で例示したフィルム1、1A〜1Cのいずれかを適用する場合、図1〜図4に示した各々のフィルムのMS膜3はタッチパネルにおいて互いに対向する面側(対向面側)に配設されることとなる。一方、実施の形態5、6で例示したフィルム1D、1Eのいずれかを適用する場合、図5、6に示す各々のフィルムのMS膜3は、タッチパネルの入力面側(タッチ側表面)またはLCD201側に配向される点に留意する。
また、上記F−Gタイプの構成においては、ガラス基板の代わりに、ガラス板または樹脂板に上記面状部材のフィルム材料を適宜粘着材で貼着してなる積層体(F−F−Gタイプ、あるいはF−F−Pタイプとも称される)を配設するようにしてもよい。また、フィルムとガラス基板との積層枚数、積層順等についても適宜変更調整が可能である。
さらに本発明を適用するタッチパネルの入力方式はいずれの方式であってもよく、例えば静電容量式であってもよい。
<フィルムの製造方法>
ここでは、実施の形態1のタッチパネル用フィルム1の製造方法を主として例示する。
以下、1、2の各ステップではベースフィルムの両主面に同一構成のHC層を形成する場合を例示する。
なお、各層の形成方法を例示するが、実施の形態によっては、各構成要素の積層順序が変わるため、それぞれに応じて成膜順序を設定すべき点に留意する。
1.ベースフィルム40として、厚さ188μm、幅300mmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製「コスモシャイン A4300」を用意する。
2.HC層の作製
(実施の形態1〜3、5、6のHC層(特許文献5の記載に基づく無機酸化物成分リッチ領域を有するHC層)の作製)
まず、特許文献5の実施例に従って、膜中にポリシロキサン結合を多量に含む紫外線硬化型塗料を得る。
調整した塗料は、例えばロールコーティング法に基づき、ベースフィルム40の一方主面に塗布する。その後、塗膜を乾燥させて余分な溶媒を除去する。この溶媒除去の際、いわゆる塗料中の組成が分離し、当該塗料の塗膜表面の付近における無機酸化物(ポリシロキサン)成分と有機成分との元素数の比率(前述の比率B/A)が、これ以外の当該塗膜の領域よりも増加するように調整される。溶媒を揮発除去した後は、高圧水銀灯等を用いて紫外線照射することで塗膜にUVキュアを行い、前記樹脂材料を重合させる。これにより、最終厚みが(1μm以上10μm以下程度)のHC層41を形成する。同様の層をベースフィルム40の他方の主面にも形成し、HC層44とする。最終的に、前記ポリシロキサン中のSiOは、最終的に形成されるHC層において、表面から深さ10nm以内の領域におけるSiとCの元素数比Si/Cが0.05〜0.35の範囲となるように調整する。
なお、表面から深さ10nm以内の領域における前記元素数比は、一定とすることもできるが、表面から深さ方向に向かって、当該元素数比を漸減させ、いわゆる傾斜組成となるように設定してもよい。この場合は、前述した特許文献5記載の方法を実施する他、前記ポリシロキサンの含有量が異なる塗料を数段階に分け、重ねて塗布する方法が挙げられる。
(実施の形態4のHC層(無機酸化物ナノ粒子分散型HC層)の作製)
紫外線(UV)硬化樹脂材料と、Si,Zr、Sn、Sbの少なくともいずれかの元素(無機成分)を含むナノ酸化物粒子材料を添加し、MEK、MIBK、イソブチルアルコール(IBA)、エチルアルコール、メチルアルコール、ノルマルブチルアルコール(NBA)、シクロヘキサノン(CAN)、ジアセチルアセトン(DAA)、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール(IPA)等の溶媒を加えて塗料(揮発性溶液)を調整する。これらの材料としては、パウダーまたは有機溶媒に均一分散された各種市販品を利用することができる。
紫外線硬化樹脂は、骨格中にビニル基を含むものであれば良く、例えば3官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートあるいはそれのEO変性、PO変性物、4官能モノマーとしてはペンタエリスリトールテトラアクリレート、6官能モノマーとしてはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが例示できる。また、ビニル基を含むオリゴマー成分を適宜選択して導入しても良い。
重合開始剤としては、例えばチバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製イルガキュア907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)などを用いる。
ナノ粒子50としては、無機顔料(SiO、ZrO、アンチモンスズ酸化物(ATO)のうちの1種以上)からなり、一次粒径が5nm以上40nm以下程度の無機酸化物微粒子を用いる。
ナノ粒子50の添加濃度については、最終的に形成されるHC層41A、44A内において、乾燥後(有機溶媒を含まない)の塗膜中での重量%濃度で50重量%以上90重量%の範囲となるように調整する。これにより、当該HC層中において、有機成分中の有機元素数Aに対する無機酸化物中の無機元素数Bの比率B/Aを、元素数比で0.05以上0.35以下となるように調整する。
なお、当該層中の有機成分中の有機元素数Aに対する無機酸化物中の無機元素数Bの比率B/Aが、元素数比で0.35よりも高い場合は、紫外線硬化時の重合率が低下する傾向がみられる。これは、無機酸化物成分が紫外線硬化樹脂中の相当な体積を占有するために、ラジカル重合反応を阻害することに起因すると考えられる。
なお、重合率は、赤外線吸収スペクトル測定などにより、硬化膜後のC=C結合の消失により推定することができる。
なお、この実施の形態4を用いたHC層の具体的な成膜方法については、例えば特許文献6の記載を参考にすることができる。
3.中屈折層の作製
スパッタリング成膜装置の内部に成膜対象のフィルムを載置する。そして装置内部を十分に減圧するとともに、酸素、窒素等のガスを導入し、ターゲットにシリコンを用いたスパッタリングを実施する。これによりHC層41の上に、オキソ窒化ケイ素(SiON)からなる屈折率1.74の無機層を形成し、中屈折層42とする。なお、SiONの屈折率は、スパッタリング中の酸素と窒素ガスの流量比により制御することができる。
なお、最終的な膜厚は、60nm(45nm以上70nm以下の範囲)に設定する。
また、中屈折層42は、上記した組成の他、例えばSiO−SnO系の組成で構成することもできる。さらに成膜法もスパッタリング法等の真空成膜法に限定せず、所定の材料を用い、大気雰囲気下でゾルゲル法に基づいてウェットコートにより成膜しても良い。例えば、HC層41の最表面上において、Si、Ti、Al、Zrの少なくとも何れかの元素を含む化合物を1種又は2種以上含有する無機成分(例えば酸化チタンゾル)を含む有機・無機複合材料を含有し、且つ、所定の粒径を持つ粒子状無機フィラーを分散させて形成することもできる。前記粒子状無機フィラーには、TiO、SiO、Al、ZrOの少なくとも何れかを利用できる。その平均粒径は特に限定されず、例えば10nm〜70nm程度が例示できる。層厚みは40nm以上90nm以下に設定できる。
ここで、例えばZrO単体の屈折率は2.2〜2.4程度であるが、有機材料と複合化することで1.6〜1.9の範囲に低下する。また膜厚を上記範囲とすることで、好ましい光透過特性を実現することができる
4.低屈折層の作製
成膜装置内部に、成膜対象のフィルムを載置する。装置内部を十分に減圧した後に酸素ガスを導入し、ターゲットにSi材料を用いてスパッタリングを実施する。これにより中屈折層42の上に、厚さ30nm(15nm以上35nm以下の範囲)のSiO膜を形成し、第二の屈折層(低屈折層)43を得る。
なお、低屈折層43の成膜方法も中屈折層42と同様に薄膜形成法に限定されず、これ以外の形成方法で形成してもよい。例えば、SiO成分を分散させた溶液を用いたゾルゲル法で形成することもできる。当該ゾルゲル法は塗布方法の一つであり、比較的大面積へ成膜する場合に製造効率が良い。
5.透明導電膜の作製
スパッタリング成膜装置内部に、成膜対象のフィルムを載置する。装置内部を減圧するとともにArと酸素ガスを導入し、ターゲットに酸化インジウムと酸化錫を混合して焼結させたセラミックターゲット等を用いてスパッタリングを実施する。Arガスと酸素ガスの流量比は、所定のタッチパネル特性(表面抵抗や透明性)が得られるように事前に確認された値に適宜設定する。また、スパッタに必要な放電電力やスパッタリング時間も適宜調整する。これにより、最終生成物として表面抵抗が200Ω/sq.以上1kΩ/sq.以下、且つ、厚みが20nm以上40nm以下の透明導電膜13(ITO膜)を得る。なお、透明導電膜13の結晶性は、前記スパッタリング法による成膜の際に、例えばIn−SnOセラミックターゲットのSnO組成を低くしたもの(SnO組成が3〜10wt%含有)を用い、基板温度を調整することで制御できる。
透明導電膜材料としては、ITO以外にも、アンチモン添加酸化鉛、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫、スズ酸化膜の中から選択された1種以上が例示できる。
これによりMS膜3が形成される。
この透明導電膜13についても低屈折層43、中屈折層42と同様に塗布方法で形成できる。この場合、PSS/PEDOTなどのチオフェン系導電性高分子材料やバインダーにカーボンナノチューブなどの導電材料を分散させてなる塗料を用いることができる。
6.滑剤層の作製
例えばダイキン工業株式会社製「オプツールTMDSX」をパーフルオロヘキサンを用い、濃度を0.1重量%に希釈する。次に、この塗料をグラビア法によりMS膜表面に塗布して乾燥することで、最終厚み約1nmのフッソ系滑剤層を得る。
7.低密度シロキサン層の作製
所定容量のフルオロシラン化合物あるいはメチル基、エチル基等を有する有機シラン材料を用意する。
これらの材料をゾルゲル法に基づき塗料化し、塗布・乾燥させることにより、低密度のシロキサンからなる層を形成する。
具体的には、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランなどの有機シラン材料の一部加水分解、脱水縮合させたものと、これにIPAやIBAなどのアルコール系有機溶媒、水、塩酸を配合させたものを塗料とする。この塗料を、グラビアコート法、スピンコート法、ディップコート法などで所望の厚みに塗布することで低密度シロキサン層を得ることができる。
以上の手順で、本発明のタッチパネル用フィルムが完成する。
<性能確認実験>
次に、本発明の性能を確認するために実施例を作製し、各種実験を行った結果について説明する。
(実施の形態1〜3、5〜6のHC層(特許文献5による無機酸化物成分リッチ領域を有するHC層の性能確認実験)
実施の形態1〜3、5、6に示したHC層を用いた場合における、HC層とMS膜との密着性について確認試験を行った。
実施例のサンプルとして、上記したフィルムの製造方法に基づき、実施の形態1と同様の構成を作製した。
比較例のサンプルとして、シロキサン成分を全く含まないHC膜を用意した。
具体的な作成手順は以下の通りである。
(塗料の用意)
エポキシアクリレート8重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート22重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184)1.5重量部、MEKとシクロヘキサノン50:50混合溶媒を70重量部で調整した塗料を用意した。
(HC膜の形成)
前記塗料をマイヤーバー(#10)でベースフィルム(PETフィルム、東洋紡績コスモシャインA4300−188μm厚み)に塗布形成後、80℃にて有機溶媒を揮発させた。次に、窒素パージ雰囲気下において高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで約5μmのHC膜を得た。
なお、実施例及び比較例の両方とも、HC層の厚みを変化させた複数のサンプルを作製した。
試験方法として、まずサンプルのタッチパネル用フィルムに形成したMS膜に対し、その1mm四方の表面に合計100個のマス目をカッターでハーフカット処理して設けた。次に、スガ試験機株式会社製の紫外線フェードメーター(カーボンアーク)を用い、前記ハーフカット処理したMS膜を形成した表面と反対側の表面から、各々のサンプルに対して連続的に所定波長の紫外線を照射した。この紫外線照射中、48時間ごとにサンプルを試験機から取り出し、MS膜表面にニチバン株式会社製セロファンテープを貼着して、MS膜の剥離テストを行った。このときの剥離の発生の有無は目視にて確認した。
なお、本効果の検証は最大1200hrまで実施したがそれ以上は実施しなかった。
試験結果を表1に示す。
Figure 0005341790
表1に示す結果から、実施例のサンプルは比較例のサンプルに比べ、長時間にわたる紫外線照射を受けても剥離の発生が抑制され、良好な耐光耐久性を有していることが確認できた。特に、実施例のサンプルは、HC層の厚みを増加させても剥離の発生が効果的に防止できる点は高く評価できる。すなわち、本発明はHC層の厚みにそれほど依存することなく、MS膜とHC層間の剥離を防止する効果が認められるため、設計上の制約が小さく、実際に本発明を実現する上で極めて有用性が高いと考えられる。
(実施の形態4のHC層(無機酸化物ナノ粒子分散型HC層)の性能確認実験)
実施の形態4に示したナノ粒子を用いた場合における、HC層とMS膜との密着性について確認試験を行った。実施例と比較例の各サンプルは以下のものを用意した。
実施例1;
PET製のベースフィルム(透明基板)として、東洋紡績株式会社製「A4300−188μm厚み」を用意した。
SiOからなるナノ粒子が溶媒乾燥後のHC層に35〜40重量%含まれる塗料として、JSR株式会社製Z7524を用いた。これを前記ベースフィルム上に塗布し、溶媒を除去して紫外線を照射することにより厚み5μmのHC層を構成した。
ここで得られたHC表面のXPSによる元素数比測定結果は、Si/C=0.225であった。
実施例2;
特許文献6に記載と同様な方法で、ATO、SnO、ZrOナノ粒子を含む塗料を作成した。これを前記ベースフィルム上に塗布し、溶媒を除去して紫外線を照射することにより厚み2μmのHC層を構成した。
ここで得られたHC表面のXPSによる元素数比測定結果は、(Zr+Sn+Sb)/C=0.119であった。
比較例1;
実施例2のサンプルにおいて、ナノ粒子を未添加とした点のみ異なる構成を別途作製した。
ここで得られたHC表面のXPSによる分析では、Si、Zr、Sn、Sbなどの元素は測定範囲内で確認することができなかった。
次に、上記作製した各々のHC層の上に、上層から下層の順にITO(30nm)/SiO(60nm)/SiO−SnO(屈折率1.70、30nm)/Si(1nm)を積層した構成を持つMS膜を積層した。ITO成膜温度は150℃、それ以外の層の成膜温度は60℃に設定した。
以上で実施例1、2、比較例1のタッチパネル用フィルムを作製した。
続いて、上記作製した各サンプルに対し、室温状態において、スガ試験機株式会社製の紫外線フェードメーターを用い、波長300nm以上550nmの高照度での光照射を行った。このときに剥離が発生した時間を測定した。剥離の有無は目視にて確認した。
なお、本効果の検証は最大1680hrまで実施したがそれ以上は実施しなかった。
その実験結果を表2に示す。
Figure 0005341790
表2に示すように、比較例1では試験開始後240時間程度で剥離を発生することが確認された。
これに対し、実施例1、2は、いずれも1200時間またはそれ以上の剥離寿命を発揮することが確認された。特に実施例2については、1680時間経過後も剥離を発生することがなく、安定したタッチパネル用フィルム特性を発揮できることが分かる。
このような結果が得られた理由として、実施例1、2ではナノ粒子の配合により、HC層が無機酸化物成分リッチな構成となったため、無機材料からなるMS層に対して親和性が高まり、密着性が向上したものと考えられる。一方、このようなナノ粒子を分散させていないHC層を配設した比較例1では、その分、実施例1、2よりも密着性が不足し、早期に剥離を発生したものと思われる。
(低屈折層及び中屈折層の多層構造の反射防止特性に関する性能確認実験)
本発明のフィルムをタッチパネルで使用する場合、長期間の使用にわたり、ディスプレイ面の外光反射を低減し、視認性の向上を図ることは重要である。そこでMS膜を、所定の組成及び膜厚からなる低屈折層及び中屈折層を多層構造として構成した場合における反射防止特性を調べた。
実施例3として、HC層側から、以下に示す無機酸化物層である第一層〜第四層を順次積層したフィルムを作製した。これらの各層は、スパッタリング装置の内部に成膜対象フィルムを載置し、装置内部を減圧するとともにArガス及びOガスを導入し、各種セラミックターゲットを用いて形成した。ここで、第一層と第二層、第三層と第四層が、それぞれ実施の形態5で言及した積層単位に相当する。
第一層(中屈折層)は、膜厚13nm、屈折率2.3の酸化ニオブ(Nb)層とした。
第二層(低屈折層)は、膜厚25nm、屈折率1.46の酸化珪素(SiO)層とした。
第三層(中屈折層)は、膜厚112nm、屈折率2.3の酸化ニオブ(Nb)層とした。
第四層(低屈折層)は、膜厚90nm、屈折率1.46の酸化珪素(SiO)層とした。
実施例4として、HC層側から、以下に示す無機酸化物層である第一層〜第四層を順次積層したフィルムを作製した。成膜条件は、材料以外は実施例3とほぼ同様に設定した。ここで、第一層と第二層、第三層と第四層がそれぞれ実施の形態5で言及した積層単位に相当する。
第一層(中屈折層)は、膜厚25nm、屈折率1.9の酸化珪素−酸化スズ(SiO−SnO)層とした。
第二層(低屈折層)は、膜厚28nm、屈折率1.46の酸化珪素(SiO)層とした。
第三層(中屈折層)は、膜厚85nm、屈折率1.9の酸化珪素−酸化スズ(SiO−SnO)層とした。
第四層(低屈折層)は、膜厚90nm、屈折率1.46の酸化珪素(SiO)層とした。
これらの実施例3、4は、上記成膜面を測定面とし、裏面を反射を遮るためにサンドペーパーで荒らした後、5°正反射スペクトルの測定に供した。その測定結果を図9、10に示す。
図9、10に示す結果が示すように、実施例3、4ともに、人間が感知し易い波長550nm付近での可視光反射率を低減できることが分かった。また、これ以外の波長領域でも、ある程度の可視光反射率が抑制されているのが確認できる。これにより、実施例3、4のフィルムをディスプレイ面に配設した場合には、良好な反射防止特性を期待することができる。
また、これらの実施例3、4ではHC層を形成しているので、上記した良好な反射防止特性が長期間にわたり発揮することも期待できる。
また、実施例3、4では2単位の積層構造としたが、これ以上の積層単位を持つ積層構造としても、同等以上の反射率防止特性が期待できる。但しこの場合、可視光透過率の低下には留意すべきである。
<その他の事項>
上記実施の形態では、各構成の特徴を説明するため、透明面状部材の一方の主面にのみMS層を形成する場合を示したが、当然ながら本発明はこれに限定されず、両方の主面にそれぞれMS膜を形成することができる。この場合、透明基板の両周面に設けるHC層について、それぞれ本発明の構成(組成分離による無機酸化物成分リッチな領域を有するHC層、または無機酸化物ナノ粒子分散型HC層)を適用させるべき点に留意する。
本発明のタッチパネル用フィルムは、パーソナルコンピュータのディスプレイに適用するタッチパネルの他、例えば紫外線照射量が比較的多い野外使用や、高温高湿条件下での使用が想定されるカーナビゲーションシステムのディスプレイ用タッチパネルなど、幅広い用途で利用することが可能である。
もちろん本発明のタッチパネル用フィルムは、他のいかなるディスプレイに搭載されるタッチパネルの構成要素としても利用することでより一層の信頼性を高めることができる。
1、1A〜1E、1a、1b タッチパネル用フィルム
2 タッチパネル
3 多層無機酸化物層(MS膜)
4 透明面状部材
13、13a、13b 透明導電膜(透明電極膜)
40 ベースフィルム
41、41A、44、44A ハードコート(HC)層
42、42a、42b 中屈折層(第一屈折層)
43、43a、43b 低屈折層(第二屈折層)
45 滑剤層
46 低密度シロキサン層
50 ナノ粒子(無機酸化物微粒子)
131、132、141、142 引き出し線
133 接続線
131a、132a、141a、142a 電極端子
302、303、304、305 引き出し線
302a〜305a 電極端子
301 フレキシブル基板
410、440 無機酸化物成分リッチな領域

Claims (12)

  1. 透明基板の一方の面に、紫外線硬化樹脂層および透明無機酸化物層が順次積層されてなるタッチパネル用フィルムであって、
    透明無機酸化物層の厚みが30nm以上300nm以下であり、
    紫外線硬化樹脂層は、有機成分および無機酸化物をともに含んでなり、少なくとも前記透明無機酸化物層と接する表面から深さ10nm以内の領域における、当該層の有機成分中の有機元素数Aに対する無機酸化物中の無機元素数Bの比率B/Aが、元素数比で0.05以上0.35以下である
    ことを特徴とするタッチパネル用フィルム。
  2. 前記無機酸化物成分にはSi、Zr、Sn、Sbの少なくともいずれかの元素が含まれ、
    前記比率B/Aは、紫外線硬化樹脂層に含まれる無機酸化物成分を構成する各元素の和と、有機成分の炭素との元素数比(Si+Zr+Sn+Sb)/Cであって、
    前記比率B/Aは紫外線硬化樹脂層において、その前記表面から深さ方向に向かって、一定または漸減するように設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用フィルム。
  3. 紫外線硬化樹脂層には、平均一次粒径が5〜40nmであって、SiO、ZrO、SnO、ATOの中の少なくともいずれかからなる無機酸化物微粒子が、20重量%以上90重量%以下の範囲で分散されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用フィルム。
  4. 透明無機酸化物層は、少なくとも2種類以上の異なる層を積層した多層構造を有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル用フィルム。
  5. 透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層側から、第一の屈折率を有する第一層と、透明導電膜とを同順に積層してなる
    ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル用フィルム。
  6. 前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層側から、第一の屈折率と異なる第二の屈折率を有する第二層と、第一の屈折率を有する第一層と、透明導電膜を同順に積層してなる
    ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル用フィルム。
  7. 前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層の上に、直接配された透明導電膜であり、
    当該透明導電膜の厚みが30nm以上である
    ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル用フィルム。
  8. 前記透明無機酸化物層は、前記紫外線硬化樹脂層の上に、第一の屈折率と異なる第二の屈折率を有する第二層と、第一の屈折率を有する第一層とを同順に積層し、前記第二層及び第一層の積層単位を2以上繰り返して積層してなり、
    透明基板の他方の面には、紫外線硬化樹脂層及び透明導電膜が順次積層されている
    ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル用フィルム。
  9. 前記透明無機酸化物層の最上面に、フッ素系滑剤を含む層を積層してなり、
    透明基板の他方の面に透明導電膜が形成されている
    ことを特徴とする請求項8に記載のタッチパネル用フィルム。
  10. 前記透明無機酸化物層は低密度シロキサン層であり、透明基板の他方の面に透明導電膜が形成されている
    ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル用フィルム。
  11. 一対の透明導電膜付基板が、互いの透明導電膜を対向させた状態で一定間隔をおいて配置されてなるタッチパネルであって、
    前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、請求項5〜7のいずれかに記載のタッチパネル用フィルムである
    ことを特徴とするタッチパネル。
  12. 一対の透明導電膜付基板が、互いの透明導電膜を対向させた状態で一定間隔をおいて配置されてなるタッチパネルであって、
    前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、請求項8〜10のいずれかに記載のタッチパネル用フィルムであり、
    前記透明無機酸化物層がタッチ側表面に配向するようにタッチパネル用フィルムが配設されている
    ことを特徴とするタッチパネル。
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