JP5317688B2 - 捲回型蓄電源およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、それぞれ帯状の正極および負極が積重されて捲回されてなる電極捲回ユニットを有する捲回型蓄電源およびその製造方法に関する。
近年、グラファイト等の炭素材料よりなる負極と、LiCoO2 等のリチウム含有金属酸化物よりなる正極とを有する電池が開発されている。この電池は、電池を組み立てた後に充電することにより、正極を構成するリチウム含有金属酸化物から負極にリチウムイオンが供給され、更に放電する際には、負極からリチウムイオンが正極に戻されるという、いわゆるロッキングチェア型電池であり、負極に金属リチウムを使用せずにリチウムイオンのみが充放電に関与することから、リチウムイオン二次電池と称され、リチウム金属を用いるリチウム電池とは区別されている。このリチウムイオン二次電池は、高電圧および高容量で、高安全性を有することを特長とするものである。
また、環境問題がクローズアップされる中、太陽光発電や風力発電によるクリーンエネルギーの貯蔵システムや、ガソリン車に代わる電気自動車またはハイブリッド電気自動車に用いられる電源の開発が盛んに行われている。さらに、最近では、パワーウインドウやIT関連機器などの車載装置や設備が高性能・高機能化されることに伴い、高いエネルギー密度および高い出力密度を有する新しい電源の開発が求められている。
そして、高エネルギー密度および高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電源として、近年、リチウムイオン二次電池および電気二重層キャパシタの蓄電原理が組み合わされた、ハイブリッドキャパシタと称される蓄電源が注目されている。かかるハイブリッドキャパシタとしては、リチウムイオンを吸蔵、脱離し得る炭素材料に、予め化学的方法または電気化学的方法によって、リチウムイオンを吸蔵、担持(以下、「ドーピング」ということもある。)させて負極の電位を下げることにより、高いエネルギー密度が得られる炭素材料よりなる負極を有する有機電解質キャパシタが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
このような有機電解質キャパシタにおいては、高性能が期待されるものの、負極に予めリチウムイオンをドーピングさせるときに極めて長時間を要することや、負極全体にリチウムイオンを均一に担持させることが必要となる、という問題を有し、特に電極を捲回した円筒型電池や複数枚の電極を積層した角型電池のような大型の高容量セルとしては、実用化が困難とされていた。
このような問題を解決するために、それぞれ表裏面に貫通する孔が形成された集電体を有する正極および負極を備え、負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質よりなり、正極および負極がセパレータを介して積重された状態で捲回されてなる筒状の電極捲回ユニットと、この電極捲回ユニットにおける外周面および内周面のいずれかに設けられたリチウムイオン供給源とにより構成され、負極とリチウム金属との電気化学的接触によって、リチウムイオンが負極にドーピングされる捲回型蓄電源が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
この捲回型蓄電源においては、集電体に表裏面を貫通する孔が設けられているため、リチウムイオン供給源が電極捲回ユニットにおける外周面および内周面のいずれかに配置されていても、リチウムイオンが集電体に遮断されることなく、当該集電体の孔を通って電極間を移動し、これにより、リチウムイオン供給源近傍の負極部分だけでなく、リチウムイオン供給源から離れた負極部分にも、リチウムイオンを電気化学的にドーピングさせることが可能である。
そして、リチウムイオンを吸蔵、脱離し得る炭素材料等に予めリチウムイオンをドーピングさせた負極は、上述のように、電気二重層キャパシタに用いられる活性炭よりも電位が卑となるため、正極活性炭と組み合わせたセルの耐電圧が向上し、また、負極の容量が活性炭に比較して極めて大きいため、当該負極を備えた捲回型蓄電源によれば、高いエネルギー密度が得られる。
然るに、このような捲回型蓄電源においては、リチウム金属が電極素子の外周面および内周面のいずれか一方のみに設けられるため、リチウムイオンを負極全体に均一にドーピングするために長い時間が必要となる、という問題がある。また、電極捲回ユニットの外周面のみにリチウムイオン供給源が設けられる場合には、高電圧および高容量が得られるものの、ドーピングされるリチウムイオン量が多くなることから、厚みの大きいリチウムイオン供給源を用いることが必要となるため、電極の充填量が低下し、十分に高いエネルギー密度を得ることが困難となる、という問題がある。
このような問題を解決するため、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な正極活物質を含有する電極層が形成されてなる正極と、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有する電極層が形成されてなる負極とが、セパレータを介して積重された状態で捲回されてなる筒状の電極捲回ユニットとを有し、この電極捲回ユニットにおける内周面および外周面の両方にリチウムイオン供給源が配置されて構成され、負極および/または正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極および/または当該正極にドーピングされる捲回型蓄電源が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
特開平8−107048号公報 特許第3485935号公報 特開2007−67105号公報
しかしながら、このような捲回型蓄電源においては、電解液の浸透に長い時間を要し、しかも、リチウムイオンを負極全体に均一にドーピングするために長い期間が必要となり、高い生産性が得られないことが判明した。これは、リチウムイオン供給源によって電極捲回ユニットの表面が覆われているため、電解液が電極捲回ユニットの内部に拡散されにくいためと考えられる。
また、特許文献3に記載の捲回型蓄電源においては、電極捲回ユニットを組み立てた後、その内周面および外周面にリチウムイオン供給源が配置されるため、製造工程が煩雑であり、これによっても、高い生産性が得られない、という問題がある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、電極捲回ユニットの内部に短時間で電解液が浸透し、短期間でリチウムイオンが電極に均一にドーピングされ、高い生産性が得られる捲回型蓄電源およびその製造方法を提供することにある。
本発明の捲回型蓄電源は、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な正極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の正極と、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の負極とを有し、当該正極および当該負極がセパレータを介して積重されてなる電極積重体が、その一端から捲回されて構成され、その最外周部分および最内周部分が前記セパレータである筒状の電極捲回ユニット、
この電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の内周面に設けられたリチウムイオン供給源、および、
リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液よりなる電解液を備えてなり、
前記負極および/または前記正極と前記リチウムイオン供給源との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極および/または当該正極にドーピングされる捲回型蓄電源であって、
前記電極捲回ユニットにおける電極積重体が、前記セパレータの一端側部分に、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源が配置されたものであり、
前記リチウムイオン供給源が設けられた前記電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の周面における当該リチウムイオン供給源に覆われていない領域の割合が、それぞれ10〜70%であることを特徴とする。
本発明の捲回型蓄電源においては、リチウムイオン供給源は、セパレータによって正極および負極と接触しないよう設けられていることが好ましい。
また、リチウムイオン供給源は、金属製集電体に圧着または積重されていることが好ましく、このリチウムイオン供給源が圧着または積重された金属製集電体は多孔箔よりなることが更に好ましい。
また、電極積重体は、第1のセパレータ、負極、第2のセパレータおよび正極の順で積重されてなり、当該第1のセパレータの一端側部分には、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源が配置され、電極積重体がその一端から捲回されることによって電極捲回ユニットが構成されていることが好ましい。
また、電極捲回ユニットは、正極の最外周部分がセパレータを介して負極の最外周部分に覆われ、更に、当該負極の最外周部分がセパレータの最外周部分に覆われており、当該セパレータの最外周部分における内周面にリチウムイオン供給源が設けられていることが好ましい。
また、本発明の捲回型蓄電源は、リチウムイオンキャパシタまたはリチウムイオン二次電池として好適である。
本発明によれば、リチウムイオン供給源が設けられた電極捲回ユニットの最外周部分および/または最内周部分の内周面には、リチウムイオン供給源に覆われていない領域が存在し、この領域の割合が電極捲回ユニットの最外周部分および/または最内周部分の内周面全面に対して、それぞれ10〜70%であるため、電極捲回ユニットの内部に短時間で電解液が浸透し、しかも、短期間でリチウムイオンが電極全体に均一にドーピングされるため、高い生産性が得られる。
また、予めセパレータにリチウムイオン供給源を配置した状態で電極積重体が捲回されることによって、電極捲回ユニットの作製とリチウムイオン供給源の配置とを同一の工程で行うことができるため、一層高い生産性が得られる。
以下、本発明の捲回型蓄電源を、捲回型リチウムイオンキャパシタ(以下、「捲回型LIC」ともいう。)として実施した場合について説明する。
図1は、本発明に係る捲回型LICの一例における構成を示す説明用断面図である。
この捲回型LICにおいては、外装容器20内に電極捲回ユニット10が設けられている。この電極捲回ユニット10は、図2に示すように、第1のセパレータ13の一面に、負極12、第2のセパレータ14および正極11がこの順で積重されてなる電極積重体10Aが、その一端から芯棒19に円筒状に捲回されて構成されている。ここで、正極11および負極12は、後述するそれぞれの電極層が第2のセパレータ14を介して互いに対向するよう配置されている。図示の例では、電極積重体10Aは第1のセパレータ13が内側となるよう捲回されており、これにより、電極捲回ユニット10全体の最内周部分が第1のセパレータ13の最内周部分13aとされている。また、負極12は、正極11よりも長尺であって、正極11の最外周部分が負極12の最外周部分に捲回されて覆われており、更に、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、負極12よりも長尺であって、負極12の最外周部分が、第1のセパレータ13の最外周部分および第2のセパレータ14の最外周部分14aにこの順で捲回されて覆われており、これにより、電極捲回ユニット10全体の最外周部分が第2のセパレータ14の最外周部分14aとされている。
本発明において、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味し、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
電極捲回ユニット10の最内周部分(第1のセパレータ13の最内周部分13a)の内周面、すなわち第1のセパレータ13の一端側部分における負極12が配置される一面とは反対の他面には、それぞれ第1のセパレータ13の幅方向(図1において紙面と垂直な方向)に伸びる複数の矩形の膜状のリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源15が、互いに周方向に離間した状態で、当該第1のセパレータ13に圧着されて配置され、当該リチウムイオン供給源15は第1のセパレータ13によって正極11および負極12の各々とは直接接触しない状態とされている。また、電極捲回ユニット10の最外周部分(第2のセパレータ14の最外周部分14a)の内周面すなわち第2のセパレータ14の他端側部分の表面には、それぞれ第2のセパレータ14の幅方向(図1において紙面と垂直な方向)に伸びる複数の矩形の膜状のリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源16が互いに周方向に離間して配置され、当該リチウムイオン供給源16は第2のセパレータ14によって正極11および負極12の各々とは直接接触しない状態とされている。本発明において、「内周面」とは、電極捲回ユニットの中心側の面を意味し、「外周面」とは、内周面とは反対の面を意味する。
また、この例の捲回型LICにおいては、図3に示すように、電極捲回ユニット10が、テープ25よって捲かられることにより固定されており、これにより、電極捲回ユニット10を外装容器20内に収容する作業が容易となり、捲回型LICの組立て作業性が向上する。また、電極捲回ユニット10の両端には、それぞれ正極11および負極12に電気的に接続された正極端子17および負極端子18が引き出されている。
そして、外装容器20内には、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液よりなる電解液が充填されている。
本発明においては、電極捲回ユニット10の最外周部分および最内周部分の少なくとも一方の内周面にリチウムイオン供給源15,16が設けられていればよいが、当該リチウムイオン供給源15,16が設けられた電極捲回ユニット10の最外周部分の内周面および/または最内周部分の内周面におけるリチウムイオン供給源15,16に覆われていない領域(以下、「非占有領域」という。)Rの割合(最外周部分の内周面の面積に対する非占有領域Rの面積の割合および/または最内周部分の内周面の面積に対する非占有領域Rの面積の割合)が、それぞれ10〜70%とされ、好ましくは15〜50%、より好ましくは20〜30%とされる。非占有領域Rの割合が上記の範囲にあれば、電解液の浸透が短時間で達成され、これにより、リチウムイオンが短時間で負極12全体に均一にドーピングされると共に、プレドープが短時間で完了される。
この非占有領域Rの割合が10%未満である場合には、電解液の浸透に長い時間を要するため、結局、リチウムイオンが負極12の電極層12a全体に均一にドーピングされるまでに長い時間が必要となるので好ましくない。一方、この非占有領域Rの割合が70%を超える場合には、正極11および/または負極12に対向するリチウムイオン供給源15,16の面積が小さいため、プレドープが完了するまでに長い時間を要するので好ましくない。
また、非占有領域Rは電極捲回ユニット10の最外周部分および/または最内周部分の内周面全域にわたって均一に分布していることが好ましい。例えば、面積の小さい1つのリチウムイオン供給源を用いるのではなく、複数の小さい面積のリチウムイオン供給源を互いに離間して配置することにより、所定の面積の非占有領域Rを確保することが、電解液の流通経路を広く確保できることから好適である。また、パンチング等により多孔化したリチウムイオン供給源を用いる場合には、1つのリチウムイオン供給源によって所定の面積の非占有領域を確保できることから、更に好適である。
正極11および負極12(以下、両者を併せて「電極」ともいう。)は、それぞれ帯状の集電体の少なくとも一面に電極層が形成されてなるものであり、両者は実質的に同一の構造であるので、以下、同一の図面を用いて説明する。
図4は、電極捲回ユニットにおける電極を展開した状態で示す説明用平面図であり、図5は、図4に示す電極のA−A断面を拡大して示す説明図である。
この例の負極12(正極11)は、帯状の負極集電体12a(正極集電体11a)の一面(図5において上面)に、下地層12c(11c)を介して負極活物質または正極活物質を含有してなる電極層12b(11b)が形成されてなり、負極集電体12a(正極集電体11a)の他面には、負極端子18(正極端子17)が例えばステッチングまたはコールドウェルディングによって固定されて接続されている。
電極として、負極集電体12aまたは正極集電体11aの両面に電極層12bまたは電極層11bが形成されてなるものを用いる場合には、電極層12bまたは電極層11bを部分的に負極集電体12aまたは正極集電体11aから剥離して、当該負極集電体12aまたは当該正極集電体11aに負極端子18または正極端子17を接続することができる。
ここで、負極端子18および正極端子17は、電極捲回ユニット10の両端から別々に引き出されていても、一方の端部から引き出されていてもよい。また、負極端子18および正極端子17は、それぞれ1つ設けられていればよいが、それぞれ複数設けられることが、内部抵抗が低下するため好ましい。
正極集電体11aおよび負極集電体12a(以下、両者を併せて「電極集電体」ともいう。)は、表裏面を貫通する孔Pを有する多孔材よりなるものであり、かかる多孔材の形態としては、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属網、発泡体、あるいはエッチングにより貫通孔が形成された多孔質箔等が挙げられる。
電極集電体の孔Pの形状は、円形、矩形、その他適宜の形状に設定することができる。また、電極集電体の厚みは、強度および軽量化の観点から、20〜50μmであることが好ましい。
電極集電体の気孔率は、通常、10〜79%、好ましくは20〜60%である。ここで、気孔率は、[1−(電極集電体の質量/電極集電体の真比重)/(電極集電体の見かけ体積)]×100によって算出されるものである。
電極集電体の材質としては、一般に有機電解質電池などの用途で使用されている種々のものを用いることができる。負極集電体12aの材質の具体例としては、ステンレス、銅、ニッケル等が挙げられ、正極集電体11aの材質のとしては、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
このような多孔材を電極集電体として用いることにより、リチウムイオン供給源15,16が電極捲回ユニット10における内周面および外周面の両方に配置されていても、リチウムイオンがリチウムイオン供給源15,16から電極集電体の孔Pを通って自由に各電極間を移動するので、負極12および/または正極11にリチウムイオンをドーピングすることができる。
また、本発明においては、電極集電体における少なくとも一部の孔Pを、脱落しにくい導電性材料を用いて閉塞し、この状態で、電極集電体の一面に、電極層11a,12aが形成されることが好ましく、これにより、電極の生産性を向上させることができると共に、電極集電体から電極層11b,12bが脱落することによって生じる蓄電源の信頼性の低下を防止または抑制することができる。
また、電極の厚み(電極集電体および電極層の合計の厚み)を小さくすることにより、一層高いエネルギー密度および出力密度を得ることができる。
また、電極集電体における孔Pの形態および数等は、後述する電解液中のリチウムイオンが集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できるように、また、導電性材料によって閉塞し易いように適宜設定することができる。
負極12における電極層12bは、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有してなるものである。
電極層12bを構成する負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子数比(以下「H/C」と記す。)が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(以下、「PAS」という。))等を好適に用いることができ、これらの中では、PASは高容量が得られる点でより好ましい。例えばH/Cが0.2程度のPASに400mAh/gのリチウムイオンを担持(充電)させた後に放電させると、650F/g以上の静電容量が得られ、また、500mAh/g以上のリチウムイオンを担持(充電)させると、750F/g以上の静電容量が得られる。このことから、PASが非常に大きな静電容量を有することが理解される。
本発明において、負極活物質としてPAS等のアモルファス構造を有するものを用いた場合には、担持させるリチウムイオン量を増加させるほど電位が低下するので、得られる蓄電源の耐電圧(充電電圧)が高くなり、また、放電における電圧の上昇速度(放電カーブの傾き)が低くなるため、求められる蓄電源の使用電圧に応じて、リチウムイオン量は活物質のリチウムイオン吸蔵能力の範囲内において適宜設定することが好ましい。
また、PASはアモルファス構造を有することから、リチウムイオンの挿入・脱離に対して膨潤・収縮等の構造変化が生じないため、サイクル特性に優れ、また、リチウムイオンの挿入・脱離に対して等方的な分子構造(高次構造)であるため、急速充電、急速放電にも優れた特性を有することから、負極活物質として好適である。
PASの前駆体である芳香族系縮合ポリマーは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物である。芳香族炭化水素化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類を好適に用いることができる。例えば、下記式で表されるメチレン・ビスフェノール類、ヒドロキシ・ビフェニル類、ヒドロキシナフタレン類などが挙げられる。これらの中では、実用的に、フェノール類、特にフェノールが好適である。
Figure 0005317688
(式中、xおよびyはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。)
また、上記芳香族系縮合ポリマーとしては、フェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の一部をフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化合物、例えばキシレン、トルエン、アニリン等で置換した変芳香族系縮合ポリマー、例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を用いることもできる。更に、メラミン、尿素で置換した変芳香族系ポリマーを用いることもでき、フラン樹脂も好適である。
PASは、不溶不融性基体として使用され、当該不溶不融性基体は例えば上記芳香族系縮合ポリマーから次のようにして製造することもできる。すなわち、上記芳香族系縮合ポリマーを、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で400〜800°Cの温度まで徐々に加熱することにより、H/Cが0.5〜0.05、好ましくは0.35〜0.10の不溶不融性基体を得ることができる。
但し、不溶不融性基体の製造方法はこれに限定されることなく、例えば、特公平3−24024号公報等に記載の方法で、H/Cが上記の範囲にあり、かつ600m2 /g以上のBET法による比表面積を有する不溶不融性基体を得ることもできる。
上記不溶不融性基体においては、X線回折(CuKα)によれば、メイン・ピークの位置が2θで表して24°以下に存在し、また、該メイン・ピークの他に41〜46°の間にブロードな他のピークが存在する。すなわち、上記不溶不融性基体は、芳香族系多環構造が適度に発達したポリアセン系骨格構造を有し、かつアモルファス構造を有し、リチウムイオンを安定にドーピングすることができることから、リチウムイオン蓄電源用の負極活物質として好適である。
本発明において、負極活物質は、細孔直径が3nm以上で細孔容積が0.10mL/g以上のものが好ましく、その細孔直径の上限は限定されないが、通常は3〜50nmの範囲である。また、細孔容積の範囲についても特に限定されないが、通常0.10〜0.5mL/gであり、好ましくは0.15〜0.5mL/gである。
本発明に係る捲回型LICにおいて、負極12における電極層12bは、上記の炭素材料やPAS等の負極活物質を含有してなる材料を用いて負極集電体12a上に形成されるが、その方法は特定されず公知の方法が利用することができる。具体的には、負極活物質粉末、バインダーおよび必要に応じて導電性粉末が水系媒体または有機溶媒中に分散されてなるスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体12aの表面に塗布して乾燥することによって、或いは上記スラリーを予めシート状に成形し、得られる成形体を負極集電体12aの表面に貼り付けることによって、電極層12aを形成することができる。
ここで、スラリーの調製に用いられるバインダーとしては、例えばSBR等のゴム系バインダーや、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の合フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中では、バインダーとしてフッ素系樹脂が好ましく、特にフッ素原子/炭素原子の原子比(以下、「F/C」という。)が0.75以上で1.5未満であるフッ素系樹脂を用いることが好ましく、F/Cが0.75以上で1.3未満のフッ素系樹脂が更に好ましい。
バインダーの使用量は、負極活物質の種類や電極形状等により異なるが、負極活物質に対して1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。
また、必要に応じて使用される導電性材料としては、例えばアセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。この導電性材料の使用量は、負極活物質の電気伝導度、電極形状等により異なるが、負極活物質に対して2〜40質量%の割合で用いることが好ましい。
負極集電体12aに上記スラリーを塗工することによって、電極層12bを形成する場合には、図5に示すように、負極集電体12aの塗工面に導電性材料の下地層12cを形成することが好ましい。負極集電体12aの表面にスラリーを直接塗工する場合には、負極集電体12aが多孔材であるため、スラリーが負極集電体12aの孔Pから洩れ出したり、あるいは負極集電体12aの表面が平滑でないため、均一な厚みを有する電極層12bを形成することが困難となることがある。そして、負極集電体12aの表面に下地層12cを形成することにより、孔Pが下地層12cによって塞がれると共に、平滑な塗工面が形成されるので、スラリーを塗工しやすくなると共に、均一な厚みを有する電極層12bを形成することができる。
図示の例では、電極層12bが負極集電体12aの一面のみに形成されているが、電極層12bが負極集電体12aの両面に形成される場合には、例えば負極集電体12aの両面のいずれかにスラリーを間欠塗工して負極集電体12aに未塗工領域を形成することにより、当該未塗工領域に負極端子18を接続することができる。
負極12における電極層12bの厚みは、得られる捲回型LICに十分なエネルギー密度を確保されるよう正極11における電極層11bの厚みとのバランスで設計されるが、得られる捲回型LICの出力密度、エネルギー密度および工業的生産性等の観点から、負極集電体12aの一面に形成される場合では、通常、15〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
正極11における電極層11bは、リチウムイオンおよび/または例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持できる正極活物質を含有してなるものである。
電極層11bを構成する正極活物質としては、例えば活性炭、導電性高分子、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であってH/Cが0.05〜0.50であるポリアセン系骨格構造を有するPAS等を用いることができる。
正極11における電極層11bは、負極12における電極層2bと同様の方法によって形成することができる。
本発明に係る捲回型LICにおいては、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11および負極12の電位が2.0V以下となることが好ましい。
従来の電気二重層キャパシタにおいては、通常、正極および負極における活物質としてそれぞれ同種のもの(主に活性炭)が略同量用いられている。この活物質はキャパシタの組立時においては、約3Vの電位を有しており、キャパシタに充電することにより、正極の表面においてアニオンが電気二重層を形成することによって、正極の電位が上昇し、一方、負極の表面においてカチオンが電気二重層を形成することによって、負極の電位が降下する。逆に、放電時においては、正極からアニオンが、負極からはカチオンがそれぞれ電解液中に放出されることにより、電位がそれぞれ下降または上昇し、最終的に電位が約3Vとなる。このように、通常の炭素材料は約3Vの電位を有しているため、正極および負極の両方に炭素材料が用いられた有機電解質キャパシタは、正極と負極とを短絡させた後における正極および負極の電位はいずれも約3Vとなる。
これに対し、本発明に係る捲回型LICにおいては、上記したように正極11と負極2とを短絡した後における正極11の電位は2.0V(Li/Li+ 、以下同じ。)以下となることが好ましい。すなわち、本発明に係る捲回型LICにおいては、正極活物質としてリチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能なものを用い、一方、負極活物質としてリチウムイオンを可逆的に担持可能な活物質を用い、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11および負極12の電位が2.0V以下になるように、負極12および/または正極11に予めリチウムイオンを担持させることが好ましい。
なお、本発明において、正極と負極とを短絡させた後における正極の電位が2.0V以下とは、以下の(A)又は(B)の2つのいずれかの方法で求められる正極の電位が2.0V以下となる場合をいう。
(A)リチウムイオンによってドーピングされた後、正極端子と負極端子とを導線で直接結合させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、0.5〜1.5時間内に測定した正極の電位。
(B)充放電試験機により12時間以上かけて0Vまで定電流放電させた後に、正極端子と負極端子とを導線で結合させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、0.5〜1.5時間内に測定した正極の電位。
また、本発明において、正極11と負極12とを短絡させた後における正極電位が2.0V以下とは、リチウムイオンがドーピングされた直後に限られるものではなく、充電状態、放電状態あるいは充放電を繰り返した後に短絡した場合など、いずれかの状態で短絡後の正極電位が2.0V以下となることである。
本発明において、正極と負極とを短絡させた後における正極の電位が2.0V以下になるということに関し、更に詳細に説明する。
上述のように活性炭や炭素材は通常3V(Li/Li+ )前後の電位を有しており、活物質として正極および負極の両方に活性炭を用いてキャパシタを構成した場合には、いずれの電位も約3Vとなるため、正極と負極とを短絡しても正極の電位は変化せず約3Vのままである。また、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質としてリチウムイオン二次電池に使用されている黒鉛や難黒鉛化炭素等の炭素材料を用いた、いわゆるハイブリットキャパシタの場合も同様であり、いずれの電位も約3Vとなるため、正極と負極とを短絡しても正極の電位は変化せず約3Vのままである。従って、正極および負極の質量バランスにもよるが、充電すると負極の電位が0V近傍まで推移するので、充電電圧を高くすることが可能となるため、高電圧、高エネルギー密度を有するキャパシタが得られる。一般的に、充電電圧の上限は正極の電位の上昇による電解液の分解が起こらない電圧に定められるので、正極の電位を上限にした場合には、負極の電位が低下する値だけ、充電電圧を高めることが可能となる。
しかしながら、短絡時に正極電位が約3Vとなる上述のハイブリットキャパシタにおいては、正極の上限電位が例えば4.0Vとした場合に、放電時の正極の電位は3.0Vまでであり、正極の電位の変化は1.0V程度と正極の容量を充分に利用することができない。更に、負極にリチウムイオンを挿入(充電)、脱離(放電)した場合に、初期の充放電効率が低い場合が多く、放電時に脱離できないリチウムイオンが存在していることが知られている。これは、負極の表面において電解液の分解に消費されたり、炭素材の構造欠陥部にトラップされたりすること等の説明がなされているが、この場合には、正極の充放電効率に比べて負極の充放電効率が低くなり、充放電を繰り返した後に正極と負極とを短絡させると、正極電位は3Vよりも高くなり、さらに利用容量は低下する。すなわち、正極は4.0Vから2.0Vまで放電可能であるところ、4.0Vから3.0Vまでしか放電することができない場合や、利用可能容量の半分の量しか利用していないこととなり、高電圧を得ることは可能であるが、高容量を得ることは困難である。
従って、キャパシタとして、高電圧および高エネルギー密度を得るだけでなく、高容量および高エネルギー密度を得るためには、正極の利用容量を向上させることが必要となる。
正極と負極との短絡後における正極の電位が3.0Vよりも低ければ、それだけ利用容量が増加し、高容量になるということである。正極と負極との短絡後における正極の電位を2.0V以下とするためには、キャパシタの充放電により充電される量だけでなく、別途リチウム金属などのリチウムイオン供給源から負極にリチウムイオンを充電することが好ましい。正極および負極以外からリチウムイオンが供給されることにより、正極と負極とを短絡させたときには、正極、負極およびリチウム金属が平衡電位になるため、正極の電位および負極の電位の両方ともに3.0V以下となる。また、リチウムイオン供給源を構成するリチウム金属の量が多くなる程、平衡電位は低くなる。負極活物質および正極活物質が変われば平衡電位も変わるので、正極と負極との短絡後における正極電位が2.0V以下となるように、負極活物質および正極活物質の特性を考慮して負極に担持させるリチウムイオン量の調整が必要である。
本発明に係る捲回型LICにおいて、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11の電位が2.0V以下となるということは、上記したように、捲回型LICの正極11および負極12以外から正極および/または負極12にリチウムイオンが供給されるということである。リチウムイオンの供給は、負極12および正極11の一方あるいは両方のいずれでもよいが、例えば正極活物質として活性炭を用いた場合には、リチウムイオンの担持量が多くなり、正極11の電位が低くなると、リチウムイオンを不可逆的に消費してしまい、キャパシタの容量が低下するなどの不具合が生じる場合があるため、負極12および正極11に供給するリチウムイオンの量は不具合が生じないよう適宜制御が必要である。いずれの場合でも、予め正極11および/または負極12に供給されたリチウムイオンはセルの充電により負極12に供給されるので、負極12の電位は低下する。
また、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11の電位が2.0Vよりも高い場合には、正極11および/または負極12に供給されたリチウムイオンの量が少ないため、得られる捲回型LICのエネルギー密度は小さい。リチウムイオンの供給量が多くなるほど、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11の電位は低くなり、エネルギー密度は向上する。高いエネルギー密度を得るには2.0V以下が好ましく、更に高いエネルギー密度を得るには1.0V(Li/Li+ )以下が好ましい。正極11と負極12とを短絡させた後における正極11の電位が低くなるということは、換言すると、捲回型LICに充電することにより、負極12に供給されるリチウムイオンの量が多くなるということであり、負極12の静電容量が増大すると共に、負極12の電位変化量が小さくなり、結果的に正極11の電位変化量が大きくなって捲回型LICの静電容量および容量が大きくなり、高いエネルギー密度が得られるのである。
また、正極11の電位が0.1Vを下回ると、正極活物質にもよるが、ガスの発生や、リチウムイオンを不可逆に消費してしまう等の不具合が生じるため、正極11の電位の測定が困難となる。また、正極11の電位が低くなりすぎる場合には、負極活物質の質量が過剰ということであり、逆にエネルギー密度は低下する。従って、一般的には、正極11の電位は0.1V以上であり、好ましくは0.3V以上である。
なお、本発明において、静電容量および容量は次のように定義する。キャパシタの静電容量とは、キャパシタの放電カーブの傾きを示し、単位はF(ファラッド)、キャパシタの単位質量当たりの静電容量とは、キャパシタの静電容量を正極活物質の質量および負極活物質の質量の合計で割った値であり、単位はF/g、正極の静電容量とは、正極の放電カーブの傾きを示し、単位はF、正極の単位質量当たりの静電容量とは、正極の静電容量を正極活物質の質量で割った値であり、単位はF/g、負極の静電容量とは、負極の放電カーブの傾きを示し、単位はF、負極の単位質量当たりの静電容量とは、負極の静電容量を負極活物質の質量で割った値であり、単位はF/gである。
更に、キャパシタの容量とは、キャパシタの放電開始電圧と放電終了電圧との差、すなわち電圧変化量とキャパシタの静電容量との積であり、単位はC(クーロン)であるが、1Cは1秒間に1Aの電流が流れたときの電荷量であるので、本明細書においては、換算してmAh表示する。正極の容量とは、放電開始時の正極の電位と放電終了時の正極の電位の差(正極電位変化量)と、正極の静電容量との積であり、単位はCまたはmAh、負極の容量とは、放電開始時の負極の電位と放電終了時の負極の電位の差(負極電位変化量)と、負極の静電容量との積であり、単位はCまたはmAhである。キャパシタの容量と、正極の容量および負極の容量とは一致する。
本発明に係る捲回型LICにおいては、負極活物質の単位質量当たりの静電容量が正極活物質の単位重量当たりの静電容量の3倍以上で、かつ、正極活物質の質量が負極活物質の質量よりも大きいことが好ましく、例えば、正極の静電容量を考慮して負極12へのリチウムイオンの充填量(プレドープ量)を適切に制御することにより、負極活物質の単位質量当たりの静電容量を正極活物質の単位質量当たり静電容量の3倍以上とし、かつ、正極活物質の質量を負極活物質の質量よりも大きくすることができる。これにより、従来の電気二重層キャパシタよりも高電圧かつ高容量のキャパシタが得られる。
さらに、正極活物質の単位重量当たりの静電容量よりも大きい単位重量当たりの静電容量を有する負極活物質を用いる場合には、負極12の電位変化量を変えずに負極活物質の質量を減らすことが可能となるため、正極活物質の充填量が多くなり、捲回型LICの静電容量および容量を大きくすることができる。
正極活物質の質量は、負極活物質の質量よりも大きいことが好ましいが、負極活物質の質量の1.1〜10倍であることが更に好ましい。正極活物質の質量が負極活物質の質量の1.1倍未満である場合には、容量差が小さくなるため好ましくない。一方、正極活物質の質量が負極活物質の質量の10倍を超える場合には、逆に容量が小さくなる場合もあり、また、正極11と負極12との厚み差が大きくなり過ぎるので、捲回型LICの構成上好ましくない。
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14としては、電解液、正極活物質或いは負極活物質に対して耐久性があり、連通気孔を有する電気伝導性の小さい多孔体等を用いることができる。
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の材質としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他公知のものを用いることができる。これらの中では、セルロース(紙)が耐久性および経済性の点で好ましい。
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の厚みは特に限定されないが、通常、20〜50μm程度が好ましい。
図6に示すように、リチウムイオン供給源15,16は、金属製集電体(以下、「リチウム極集電体」という。)15a,16aに圧着または積重されていることが好ましい。このような構成においては、リチウム極集電体15a,16aにはリチウム極端子を設けることにより、当該リチウム極端子を介して例えば負極端子18に電気的に接続することかできる。
このリチウム極集電体15a,16aとしては、リチウムイオン供給源15,16を構成するリチウム金属が圧着しやすく、必要に応じてリチウムイオンが通過するよう、電極集電体と同様な多孔構造のものを用いることが好ましい。また、リチウム極集電体15a,16aの材質は、ステンレス等のリチウムイオン供給源15,16と反応しないものを用いることが好ましい。
また、リチウム極集電体15a,16aとして、ステンレスメッシュ等の導電性多孔体を用いる場合には、リチウムイオン供給源15,16を構成するリチウム金属の少なくとも一部、特に80質量%以上が、リチウム極集電体15a,16aの孔に埋め込まれていることが好ましく、これにより、リチウムイオンが負極12に担持された後も、リチウム金属の消失によって電極間に生じる隙間が少なくなり、得られる捲回型LICの信頼性をより確実に維持することができる。
また、リチウム極集電体15a,16aの厚みは、10〜200μm程度であることが好ましい。
また、リチウム極集電体15a,16aに圧着されるリチウム金属の厚みは、負極12に予め担持するリチウムイオンの量を考慮して適宜定められるが、通常、50〜300μm程度が好ましい。
リチウムイオン供給源15,16を構成するリチウム金属の量は、正極11と負極12とを短絡させた後における正極11の電位が2.0V以下となるように、リチウムイオンがドーピングされる量に設定することが好ましく、更に、例えば負極12に対して、リチウムイオンが電極捲回ユニット10の外周面および内周面の両側から可能な限り均衡して迅速にドーピングされるように、リチウムイオン供給源15を構成するリチウム金属の量およびリチウムイオン供給源16を構成するリチウム金属の量を配分することが好ましい。
負極端子18および正極端子17の材質としては、導電性を有するものあれば特に限定されず種々のものを用いることができるが、それぞれ負極集電体12aおよび正極集電体11aの材質と同一のものが、接続性や膨張性などの点から好ましい。
テープ25の材質としては、電解液に対して耐久性を有し、得られる捲回型LICに悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の材質と同一のものが好ましい。
また、テープ25の厚みは、厚さ50〜100μm程度、幅が5〜10mm程度のものが、電極捲回ユニット10を安定して固定することができ、かつ、作業性も向上するので好ましい。
また、テープ25の数やテープ25によって固定される位置は、主として電極捲回ユニット10の寸法に応じて適宜定められるが、通常、テープ25の数が2〜3であれば、電極捲回ユニット10を安定的に固定することができる。
芯棒19の材質としては、ステンレス、銅、ニッケルなどの金属材料を用いることができる。
また、芯棒19の径は、電極捲回ユニット10の内周の径に応じて適宜設定することができる。
外装容器20の材質は特に限定されず、一般に電池またはキャパシタに用いられている種々のものを用いることができ、例えば鉄、アルミニウム等の金属材料、プラスチック材料、あるいはそれらを積層した複合材料等を用いることができるが、外装容器20としては、捲回型LICの小型化、軽量化の観点からは、アルミニウムと、ナイロン、ポリプロピレンなどの高分子材料とのラミネートフィルムを用いたフィルム型のものが好ましい。 外装容器20の形状も特に限定されず、円筒型や角型など、用途に応じて適宜選択することができるが、円柱状の電極捲回ユニット10を収容する場合には円筒型のものを、扁平円柱状の電極捲回ユニット10を収容する場合には角型のものが好ましい。
外装容器20内に充填される電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液が用いられる。
電解質を構成するリチウム塩としては、リチウムイオンを移送可能で、高電圧下においても電気分解を起こさず、リチウムイオンが安定に存在し得るものであればよく、その具体例としては、LiClO4 、LiAsF6 、LiBF4 、LiPF6 、Li(C2 5 SO2 2 Nなどが挙げられる。
非プロトン性有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの非プロトン性有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
電解液は、上記の電解質および溶媒を充分に脱水された状態で混合することによって調製されるが、電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするために、少なくとも0.1モル/L以上であることが好ましく、0.5〜1.5モル/Lであることが更に好ましい。
このような捲回型LICは、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、正極集電体11aの一面に、例えばカーボン系導電性材料よりなる下地層11cを形成することにより、正極集電体11aの孔Pを塞いだ後、当該下地層11cの表面に、正極活物質およびバインダーを含有してなるスラリーを塗工して電極層11aを形成することにより、正極11を作製すると共に、負極集電体12aの一面に、例えばカーボン系導電性材料よりなる下地層12cを形成することにより、負極集電体12aの孔Pを塞いだ後、当該下地層12cの表面に、負極活物質およびバインダーを含有してなるスラリーを塗工して電極層12aを形成することにより、負極12を作製する。そして、正極11における正極集電体11aおよび負極12における負極集電体12aに、正極端子17および負極端子18を、例えばステッチングによって固定して接続する。
次いで、第1のセパレータ13の一面に、負極12、第2のセパレータ14および正極11をこの順で積重することにより、この電極積重体10Aを作製する。ここで、正極11および負極12は、それぞれの電極層11b,12bが第2のセパレータ14を介して互いに対向するよう配置されている。そして、芯棒19に対し、作製した電極積重体10Aを、その第1のセパレータ13が内側となるよう当該電極積重体10Aの一端から捲回することにより、電極捲回ユニット10を作製し、この電極捲回ユニット10にテープ25を捲くことによって固定する。
以上において、第1のセパレータ13には、図7に示すように、電極捲回ユニット10の最内周部分となる一端側部分における負極12が配置される一面とは反対の他面に、電極捲回ユニット10の最内周部分の内周面に配置されるリチウムイオン供給源15が圧着されて固定されており、更に、このリチウムイオン供給源15上には、図8に示すように、リチウム極集電体15aが圧着されて固定されている。一方、第2のセパレータ14には、図9に示すように、電極捲回ユニット10の最外周部分となる他端側部分の表面に、電極捲回ユニット10の外周面に配置されるリチウムイオン供給源16が圧着されて固定されており、更に、このリチウムイオン供給源16上に、図10に示すように、リチウム極集電体16aが圧着されて固定されている。このようにして、電極捲回ユニット10の内周面および外周面の各々に、リチウムイオン供給源15,16が配置される。
このようにして作製した電極捲回ユニット10を、外装容器20内に収容すると共に、外装容器20内に電解液を充填し、更に、電極捲回ユニット10における正極端子17および負極端子18を、外装容器20の外部に引き出した状態で、外装容器20を封止することにより、捲回型LICが得られる。
そして、このようにして作製された捲回型LICにおいては、外装容器20内にリチウムイオンを供給し得る電解液が充填されているため、適宜の期間放置されると、負極12および/または正極11とリチウムイオン供給源15,16との電気化学的接触によって、リチウムイオン供給源15,16から放出されたリチウムイオンが負極12および/または正極11にドーピングされる。
而して、本発明によれば、リチウムイオン供給源15,16が設けられた電極捲回ユニット10の最外周部分および/または最内周部分の内周面には、リチウムイオン供給源15,16に覆われていない非占有領域Rが存在し、この非占有領域Rの割合が電極捲回ユニット10の最外周部分および/または最内周部分の内周面全面に対して、それぞれ10〜70%であるため、電極捲回ユニット10の内部に短時間で電解液が浸透し、短期間でリチウムイオンが負極12全体に均一にドーピングされるため、高い生産性が得られる。 また、予め第1のセパレータ13および第2のセパレータ14にリチウムイオン供給源15,16を配置した状態で電極積重体10Aが捲回されることによって、電極捲回ユニット10の作製とリチウムイオン供給源15,16の配置とを同一の工程で行うことができるため、一層高い生産性が得られる。
図11は、本発明に係る捲回型LICの他の例における電極捲回ユニットの構成を示す説明用断面図である。
この例の捲回型LICにおける電極捲回ユニット10は、第1のセパレータ13の一面に、負極12、第2のセパレータ14および正極11がこの順で積重された電極積重体が、第1のセパレータ13が内側となるよう、当該電極積重体の一端から扁平円筒状に捲回されて構成されており、これにより、電極捲回ユニット10全体の最内周部分が第1のセパレータ13の最内周部分13aとされている。また、正極11の最外周部分が負極12の最外周部分に捲回されて覆われており、更に、負極12の最外周部分が第1のセパレータ13の最外周部分および第2のセパレータ14の最外周部分14aにこの順で捲回されて覆われており、これにより、電極捲回ユニット10全体の最外周部分が第2のセパレータ14の最外周部分14aとされている。
電極捲回ユニット10の最内周部分(第1のセパレータ13の最内周部分13a)の内周面、すなわち第1のセパレータ13の一端側部分における負極12が配置される一面とは反対の他面には、それぞれ第1のセパレータ13の幅方向(図11において紙面と垂直な方向)に伸びる、リチウム極集電体15aの両面の各々に圧着された複数の矩形の膜状のリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源15が、互いに離間した状態で配置され、当該リチウムイオン供給源15は第1のセパレータ13によって正極11および負極12の各々とは直接接触しない状態とされている。また、電極捲回ユニット10の最外周部分(第2のセパレータ14の最外周部分14a)の内周面すなわち第2のセパレータ14の他端側部分の表面には、それぞれ第2のセパレータ14の幅方向(図11において紙面と垂直な方向)に伸びる、リチウム極集電体16aの一面に圧着された複数の矩形の膜状のリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源16が配置され、当該リチウムイオン供給源16は第2のセパレータ14によって正極11および負極12の各々とは直接接触しない状態とされている。図示の例では、2つのリチウムイオン供給源16が、電極捲回ユニット10の外周における一面およびこれに対向する他面に配置されている。
そして、リチウムイオン供給源15,16が設けられた電極捲回ユニット10の最外周部分の内周面および/または最内周部分の内周面における非占有領域Rの割合が、それぞれ10〜70%とされ、好ましくは15〜50%、より好ましくは20〜30%とされる。
以上において、正極11、負極12およびその他の部材の構成は、基本的に図1に示す捲回型LICと同様である。
また、図11に示す電極捲回ユニット10は、図1に示す捲回型LICの電極捲回ユニット10と同様にして製造することができる。
このような電極捲回ユニット10を有する捲回型LICは、電極捲回ユニット10を、外装容器内に収容すると共に、外装容器内に電解液を充填し、更に、電極捲回ユニット10における正極端子17および負極端子18を、外装容器の外部に引き出した状態で、外装容器を封止することによって得られる。
そして、このようにして作製された捲回型LICにおいては、外装容器内にリチウムイオンを供給し得る電解液が充填されているため、適宜の期間放置されると、負極12および/または正極11とリチウムイオン供給源15,16との電気化学的接触によって、リチウムイオン供給源15,16から放出されたリチウムイオンが負極12および/または正極11にドーピングされる。
而して、このような捲回型LICによれば、リチウムイオン供給源15,16が設けられた電極捲回ユニット10の最外周部分および/または最内周部分の内周面における非占有領域Rの割合が、それぞれ10〜70%であるため、電極捲回ユニット10の内部に短時間で電解液が浸透し、短期間でリチウムイオンが負極12全体に均一にドーピングされるため、高い生産性が得られる。
また、予め第1のセパレータ13および第2のセパレータ14にリチウムイオン供給源15,16を配置した状態で電極積重体10Aが捲回されることによって、電極捲回ユニット10の作製とリチウムイオン供給源15,16の配置とを同一の工程で行うことができるため、一層高い生産性が得られる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、本発明は、捲回型LICに限定されず、リチウムイオン二次電池にも好適に適用することができ、また、その他の捲回型蓄電源に適用することもできる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(1)負極の製造:
厚みが0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコニット電気炉中に入れ、窒素雰囲気下で50℃/時間の速度で500℃まで昇温し、更に10℃/時間の速度で660℃まで昇温して熱処理することにより、PAS板を製造した。得られたPAS板をディスクミルで粉砕することにより、PAS粉体を調製した。このPAS粉体のH/C比は0.21であった。
次いで、調製したPAS粉体100質量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10質量部とを、N−メチルピロリドン80質量部に添加して溶解・分散することにより、負極用スラリーを調製した。この負極用スラリーを、厚みが32μmで気孔率が50%の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)よりなる負極集電体の両面に、ダイコーターによって、塗工部の長さが49.3cm、未塗工部の長さが10cmとなるよう間欠塗工して乾燥し、得られた塗膜に対してプレス加工を施すことにより、電極層を形成し、以て、負極を製造した。
得られた負極の厚み(負極集電体とその両面に形成された電極層との合計の厚み)は、77μmであった。
また、この負極を作用極、リチウム金属を対極、参照極とし、プロピレンカーボネートに1モル/Lの濃度でLiPF6 が溶解されてなる電解液を用いてキャパシタを構成し、負極活物質の質量に対して400mAh/g分のリチウムイオンを充電し、負極の単位重量当たりの静電容量を求めたところ、661F/gであった。
(2)正極の製造:
比表面積が1950m2 /gの活性炭粉末100質量部と、アセチレンブラック10質量部と、アクリル系バインダー7質量部と、カルボキシメチルセルロース4質量部とを、水に添加して分散することにより、正極用スラリーを調製した。
一方、厚さが35μmで気孔率が50%のアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)よりなる正極集電体の両面に、非水系のカーボン系導電塗料(日本アチソン株式会社製:EB−815)を、ダイコーターによって、塗工部の長さが46.3cm、未塗工部の長さが10cmとなるよう間欠塗工して乾燥することにより、下地層を形成した。正極集電体とその両面に形成された下地層との合計の厚みは、52μmであり、正極集電体の孔は、下地層によって閉塞されていた。
次いで、調製した正極用スラリーを、下地層が形成された正極集電体の両面に、ダイコーターによって、塗工部の長さが46.3cm、未塗工部の長さが10cmとなるよう間欠塗工して乾燥し、得られた塗膜に対してプレス加工を施すことにより、電極層を形成し、以て、正極を製造した。
得られた正極の厚み(正極集電体とその両面に形成された下地層および電極層との合計の厚み)は、212μmであった。
また、この正極を作用極、リチウム金属を対極、参照極とし、プロピレンカーボネートに1モル/Lの濃度でLiPF6 が溶解されてなる電解液を用いてキャパシタを構成し、3.5V〜2.5V間の放電時間より正極の単位重量当たりの静電容量を求めたところ、119F/gであった。
(3)電極捲回ユニットの作製:
製造した負極を、その端部から10mmの位置で負極集電体の未塗工部を含むように5.6cm(幅)×49.3cm(長さ)の寸法にカットした後、ニッケル製の負極端子を負極集電体の未塗工部上に配置して超音波溶接により接続した。
また、製造した正極を、その端部から10mmの位置で正極集電体の未塗工部を含むように5.4cm(幅)×46.3cm(長さ)の寸法にカットし、アルミニウム製の正極端子を正極集電体の未塗工部上に配置して超音波溶接により接続した。
また、それぞれ厚みが35μmのセルロース/レーヨン混合不織布よりなる第1のセパレータおよび第2のセパレータを用意し、得られる電極捲回ユニットの最内周部分となる第1のセパレータの一端側部分の表面に、縦横の寸法が5.4cm×0.9cmで、厚みが170μmのリチウム金属箔よりなるリチウムイオン供給源を配置し、これを圧着することによって固定し、このリチウムイオン供給源上に、縦横の寸法が7.4cm×0.9cm、厚みが32μmで気孔率が50%の銅製エキスパンドメタルよりなるリチウム極集電体を配置し、これを圧着することによって固定した。一方、得られる電極捲回ユニットの最外周部分となる第2のセパレータの他端側部分の表面に、それぞれ縦横の寸法が5.4cm×2.0cmで、厚みが170μmのリチウム金属箔よりなる2つのリチウムイオン供給源を、0.5cmの間隔で離間して配置し、これを圧着することによって固定し、これらのリチウムイオン供給源上に、縦横の寸法が5.4cm×2.0cm、厚みが32μmで気孔率が50%の銅製エキスパンドメタルよりなるリチウム極集電体を配置し、これを圧着することによって固定した。
そして、第1のセパレータにおけるリチウムイオン供給源が圧着された面とは反対の面上に、負極、第2のセパレータおよび正極をこの順で積重することにより、電極積重体を構成した。ここで、正極および負極は、それぞれの電極層が第2のセパレータを介して互いに対向するよう配置した。この電極積重体を、直径3.5mmのステンレス製の芯棒に対し、第1のセパレータが内側となるよう当該電極積重体の一端から捲回することにより、内径3.5mm、外径15.5mmの円筒状の電極捲回ユニットを作製し、この電極捲回ユニットにテープを捲くことによって固定した。
電極捲回ユニットの最外周部分および最内周部分の内周面におけるリチウムイオン供給源に覆われていない領域(非占有領域)の割合は、それぞれ20%であった。
また、各リチウムイオン供給源を予め第1のセパレータおよび第2のセパレータに圧着したため、電極捲回ユニットの作製を容易に行うことができた。
(4)捲回型LICの作製:
外径が18mmで高さが65mmの鉄−ニッケルメッキ製の有底筒状の外装容器材を用意し、この外装容器材の内部に、作製した電極捲回ユニットを収納すると共に、当該電極捲回ユニットの負極端子を、外装容器材の内底部に抵抗溶接した後、外装容器材の上部に溝入れ加工を施した。次いで、外装容器材の上部にポリプロピレン製ガスケットを取り付けた後、電極捲回ユニットの正極端子を蓋材に抵抗溶接した。そして、外装容器材の内部に、プロピレンカーボネートに1モル/Lの濃度でLiPF6 が溶解されてなる電解液9gを注入し、真空含浸させたところ、完了までの時間が2分間であった。その後、外装容器材に蓋材を被せた状態で当該外装容器材をかしめて密閉することにより、外装容器を構成した。このようにして、円筒状の捲回型LICを合計で3つ作製した。
(5)捲回型LICの初期評価:
作製した3つの捲回型LICを、作製してから7日間放置した後に、1つの捲回型LICを分解したところ、リチウムイオン供給源であるリチウム金属箔が消失していることが確認された。このことから、作製してから7日間経過後には、所期の量のリチウムイオンが負極にドーピングされたと判断される。
(6)捲回型LICの特性評価
2つの捲回型LICの各々に対し、750mAの定電流によってキャパシタの電圧が3.8Vになるまで充電し、その後、3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を0.5時間行った。次いで、750mAの定電流によってキャパシタの電圧が2.2Vになるまで放電した。この操作を1サイクルとして繰り返して行い、10サイクル目の放電におけるキャパシタの容量、エネルギー密度、内部抵抗を測定し、2つの捲回型LICについての平均値を算出した。結果を下記表1に示す。
Figure 0005317688
以上の結果から明らかなように、実施例1によれば、電極捲回ユニットの作製が容易で、短時間で電解液の浸透が行われ、短期間でリチウムイオンが負極全体に均一にドーピングされるため、高い生産性が得られ、しかも、静電容量およびエネルギー密度が高く、内部抵抗の低い捲回型LICが得られることが確認された。
〈比較例1〉
電極捲回ユニットの内周面に配置されるリチウムイオン供給源として、縦横の寸法が5.4cm×1.0cmで厚みが135μmのリチウム金属箔を1枚用い、電極捲回ユニットの外周面に配置されるリチウムイオン供給源として、縦横の寸法が5.4cm×5.0cmで厚みが135μmのリチウム金属箔を1枚用いたこと以外は、実施例1と同様にして電極捲回ユニットを作製し、捲回型LICを3個作製した。
以上において、電極捲回ユニットの最外周部分および最内周部分の内周面におけるリチウムイオン供給源に覆われていない領域(非占有領域)の割合は、それぞれ0%であった。
また、捲回型LICの作製において、電解液を注入して真空含浸させたところ、完了までの時間が4分間であった。
作製した捲回型LICについて、実施例1と同様して初期評価を行ったところ、リチウム金属箔が残存していることが確認された。
また、作製した捲回型LICについて、実施例1と同様して特性評価を行った。結果を下記表2に示す。
Figure 0005317688
以上の結果から、比較例1においては、非占有領域の割合が0%であるため、実施例1に比較して、電解液の浸透に長い時間を要し、また、リチウムイオンを負極全体に均一にドーピングするために長い時間が必要であった。
〈比較例2〉
実施例1と同様にして負極および正極を製造した。
製造した負極を、その端部から10mmの位置で負極集電体の未塗工部を含むように5.6cm(幅)×49.3cm(長さ)の寸法にカットした後、ニッケル製の負極端子を負極集電体の未塗工部上に配置して超音波溶接により接続した。
また、製造した正極を、その端部から10mmの位置で正極集電体の未塗工部を含むように5.4cm(幅)×46.3cm(長さ)の寸法にカットし、アルミニウム製の正極端子を正極集電体の未塗工部上に配置して超音波溶接により接続した。
そして、それぞれ厚みが35μmのセルロース/レーヨン混合不織布よりなる第1のセパレータおよび第2のセパレータを用意し、第1のセパレータ、負極、第2のセパレータおよび正極をこの順で積重することにより、電極積重体を構成した。ここで、正極および負極は、それぞれの電極層が第2のセパレータを介して互いに対向するよう配置した。この電極積重体を、直径3.5mmのアルミニウム製の芯棒に対し、第1のセパレータが内側となるよう当該電極積重体の一端から捲回することにより、内径3.5mm、外径15.5mmの電極捲回ユニットを作製し、この電極捲回ユニットにテープを捲くことによって固定した。
次いで、縦横の寸法が5.4cm×5.0cmで、厚みが134μmのリチウム金属箔よりなるリチウムイオン供給源に、縦横の寸法が5.4cm×5.0cm、厚みが32μmの銅製エキスパンドメタルよりなるリチウム極集電体を圧着し、当該リチウム極集電体が圧着されたリチウムイオン供給源を、電極捲回ユニットの外周面に対接するよう配置した。また、縦横の寸法が5.4cm×1.0cmで、厚みが134μmのリチウム金属箔よりなるリチウムイオン供給源に、縦横の寸法が5.4cm×1.0cm、厚みが32μmの銅製エキスパンドメタルよりなるリチウム極集電体を圧着し、当該リチウム極集電体が圧着されたリチウムイオン供給源を、電極捲回ユニットの内周面に対接するよう配置した。
電極捲回ユニットの内周面および外周面におけるにおけるリチウムイオン供給源に覆われていない領域(非占有領域)の割合は、それぞれ0%であった。
以上において、リチウムイオン供給源の配置には、長時間を要した。
外径が18mmで高さが65mmの鉄−ニッケルメッキ製の有底筒状の外装容器材を用意し、この外装容器材の内部に、作製した電極捲回ユニットを収納すると共に、当該電極捲回ユニットの負極端子を、外装容器材の内底部に抵抗溶接した後、外装容器材の上部に溝入れ加工を施した。次いで、外装容器材の上部にポリプロピレン製ガスケットを取り付けた後、電極捲回ユニットの正極端子を蓋材に抵抗溶接した。そして、外装容器材の内部に、プロピレンカーボネートに1モル/Lの濃度でLiPF6 が溶解されてなる電解液9gを注入し、真空含浸させたところ、完了までの時間が3分間であった。その後、外装容器材に蓋材を被せた状態で当該外装容器材をかしめて密閉することにより、外装容器を構成した。このようにして、円筒状の捲回型LICを合計で3つ作製した。
作製した捲回型LICについて、実施例1と同様して初期評価を行ったところ、リチウム金属箔が残存していることが確認された。分解した捲回型LICを組み立て、2日間放置(合計9日間放置)した後、捲回型LICを再度分解したところ、リチウムイオン供給源であるリチウム金属箔が消失していることが確認された。このことから、作製してから9日間経過後には、所期の量のリチウムイオンが負極にドーピングされたと判断される。 また、作製した捲回型LICについて、実施例1と同様して特性評価を行った。結果を下記表3に示す。
Figure 0005317688
以上の結果から、比較例2においては、非占有領域の割合が0%であるため、実施例1に比較して、電解液の浸透に長い時間を要し、また、リチウムイオンを負極全体に均一にドーピングするために長い時間が必要であった。また、得られた捲回型LICの内部抵抗が高いものであった。これは、電極捲回ユニットを作製した後、リチウムイオン供給源を配置したため、当該電極捲回ユニットと当該リチウムイオン供給源との接圧が不十分であったためと考えられる。
本発明に係る捲回型LICの一例における構成を示す説明用断面図である。 電極積重体の構成を示す説明用断面図である。 図1に示す捲回型LICにおける電極捲回ユニットを示す説明図である。 電極捲回ユニットにおける電極を展開した状態で示す説明用平面図である。 図4に示す電極のA−A断面を拡大して示す説明図である。 リチウムイオン供給源およびリチウム極集電体を示す説明用断面図である。 第1のセパレータの一端側部分における他面に、リチウムイオン供給源が圧着された状態を示す説明図である。 第1のセパレータに圧着されたリチウムイオン供給源に、リチウム極集電体が圧着された状態を示す説明図である。 第2のセパレータの余剰部分における表面に、リチウムイオン供給源が圧着された状態を示す説明図である。 第2のセパレータに圧着されたリチウムイオン供給源に、リチウム極集電体が圧着された状態を示す説明図である。 本発明に係る捲回型LICの他の例における電極捲回ユニットの構成を示す説明用断面図である。
符号の説明
10 電極捲回ユニット
10A 電極積重体
11 正極
11a 正極集電体
11b 電極層
11c 下地層
12 負極
12a 負極集電体
12b 電極層
12c 下地層
13 第1のセパレータ
13a 最内周部分
14 第2のセパレータ
14a 最外周部分
15,16 リチウムイオン供給源
15a,16a リチウム極集電体
17 正極端子
18 負極端子
19 芯棒
20 外装容器
25 テープ
P 孔
R 非占有領域

Claims (10)

  1. 表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な正極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の正極と、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の負極とを有し、当該正極および当該負極がセパレータを介して積重されてなる電極積重体が、その一端から捲回されて構成され、その最外周部分および最内周部分が前記セパレータである筒状の電極捲回ユニット、
    この電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の内周面に設けられたリチウムイオン供給源、および、
    リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液よりなる電解液を備えてなり、
    前記負極および/または前記正極と前記リチウムイオン供給源との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極および/または当該正極にドーピングされる捲回型蓄電源であって、
    前記電極捲回ユニットにおける電極積重体が、前記セパレータの一端側部分に、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源が配置されたものであり、
    前記リチウムイオン供給源が設けられた前記電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の周面における当該リチウムイオン供給源に覆われていない領域の割合が、それぞれ10〜70%であることを特徴とする捲回型蓄電源。
  2. リチウムイオン供給源は、セパレータによって正極および負極と接触しないよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の捲回型蓄電源。
  3. リチウムイオン供給源は、金属製集電体に圧着または積重されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の捲回型蓄電源。
  4. リチウムイオン供給源が圧着または積重された金属製集電体は多孔箔よりなることを特徴とする請求項3に記載の捲回型蓄電源。
  5. 電極積重体は、第1のセパレータ、負極、第2のセパレータおよび正極の順で積重されてなり、当該第1のセパレータの一端側部分には、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源が配置され、電極積重体がその一端から捲回されることによって電極捲回ユニットが構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の捲回型蓄電源。
  6. 電極捲回ユニットは、正極の最外周部分がセパレータを介して負極の最外周部分に覆われ、更に、当該負極の最外周部分がセパレータの最外周部分に覆われており、当該セパレータの最外周部分における内周面にリチウムイオン供給源が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の捲回型蓄電源。
  7. リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の捲回型蓄電源。
  8. リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の捲回型蓄電源。
  9. 表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な正極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の正極と、表裏面を貫通する孔を有する集電体の少なくとも一面に、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有する電極層が形成されてなる帯状の負極とを有し、当該正極および当該負極がセパレータを介して積重されてなる電極積重体が、その一端から捲回されて構成され、その最外周部分および最内周部分が前記セパレータである筒状の電極捲回ユニット、
    この電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の内周面に設けられたリチウムイオン供給源、および、
    リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液よりなる電解液を備えてなり、
    前記負極および/または前記正極と前記リチウムイオン供給源との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極および/または当該正極にドーピングされる捲回型蓄電源の製造方法であって、
    前記セパレータの一端側部分に、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源を配置した電極積重体をその一端から捲回させる工程を有し、
    前記リチウムイオン供給源が設けられた前記電極捲回ユニットの最外周部分の内周面および最内周部分の内周面における当該リチウムイオン供給源に覆われていない領域の割合が、それぞれ10〜70%であることを特徴とする捲回型蓄電源の製造方法。
  10. 電極積重体は、第1のセパレータ、負極、第2のセパレータおよび正極の順で積重されてなり、当該第1のセパレータの一端側部分には、負極が配置される面とは反対の面に、電極捲回ユニットの最内周部分における内周面に設けられるリチウムイオン供給源が配置され、電極積重体がその一端から捲回されることによって電極捲回ユニットが構成されていることを特徴とする請求項9に記載の捲回型蓄電源の製造方法。
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