JP5271081B2 - 球形素顆粒およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬品製剤の剤形の一種であるフィルムコーティング顆粒の製造技術に関する。
医薬品固形製剤は副作用の低減、服用回数の低減、薬物の効果向上、苦味の抑制、薬物の安定化、等を目的として、徐放性、腸溶性、苦味マスク、等のフィルムコーティングを施す場合がある。フィルムコーティングに供されるのに適した剤形の一つとして、真球度の高い顆粒がある。このような顆粒を球形素顆粒という。

球形素顆粒の製造方法としては、薬物と賦形剤を原料として押出造粒した後、球形化する方法(押出−マルメ法)や、球状核粒子の表面を薬物で被覆する方法(レイヤリング法)(例えば、特許文献1、特許文献2参照)などが知られている。
レイヤリング法は、球状核粒子を、薬物含有被覆層で被覆して顆粒を製造する方法である。具体的には、薬物粉末と結合剤水溶液を同時に供給して被覆する方法、薬物粒子の懸濁液を供給して被覆する方法、薬物水溶液を供給して被覆する方法、などがある。
レイヤリング法は、真球度が高く、粒度分布の狭い球状核粒子を使用することによって、真球度が高く、粒度分布の狭い球形素顆粒を得ることができる。そのため、レイヤリング法はフィルムコーティングを施すための球形素顆粒を製造する方法として好適である。

ところで、球形素顆粒の形状は均一であることが望ましい。その理由は、形状に分布があると、フィルムコーティングを施した場合に個々の粒子間でフィルムの厚みに差が出るからである。特に徐放性フィルムの場合、精緻な溶出制御を求めるので、球形素顆粒の形状の均一性は重要である。
球形素顆粒は真球の単分散とすることが理想であり、従来、核粒子や素顆粒の粒度分布や真球度について考慮されてきたが(例えば、特許文献3、特許文献4参照)、真球にすることも、粒度分布を単分散にすることも現実的には不可能である。

特開昭63−301816号公報 特開2000−1429号公報 特開平7−173050号公報 特開平10−139659号公報
本発明は、フィルムコーティングに適した物性を有する球形素顆粒を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決するため、球形素顆粒の諸物性について鋭意検討した結果、特定の形状を有する球形素顆粒が、フィルムコーティングの製造にきわめて適していることを見出した。
具体的には、均一なフィルムコーティングを可能とするためには、球形素顆粒の真球度、粒度分布に加え、短長径比分布が重要な因子であること、および、真球度が多少低く、粒度分布が単分散とはいえない場合であっても、短長径比分布係数を高くすることにより均一なフィルムコーティングが可能となることを見出した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]薬物を含有し、短径分布係数が0.65以上、平均短長径比が0.85以上、短長径比分布係数が0.75以上、圧壊強度が10MPa以上である球形素顆粒。
[2]短径分布係数が0.65以上、0.80以下である[1]記載の球形素顆粒。
[3]平均短長径比が0.85以上、0.90以下である[1]又は[2]記載の球形素顆粒。
[4]平均短長径比が0.90以上である[1]又は[2]記載の球形素顆粒。
[5]平均短長径比が0.95以上である[4]記載の球形素顆粒。
[6]圧壊強度が15MPa以上である[1]〜[5]記載の球形素顆粒。
[7]圧壊強度が20MPa以上である[6]記載の球形素顆粒。
[8]平均短径が50〜1200μmである[1]〜[7]いずれか1項記載の球形素顆粒。
[9]前記薬物の含有量が0.01質量%以上である[1]記載の球形素顆粒。
[10]以下の条件(1)〜(4)を満たす薬学的に不活性な球状核粒子と、
その周囲を被覆する、薬物と水溶性高分子化合物を含む薬物含有層と、
を有する、[1]〜[9]いずれか1項記載の球形素顆粒;
(1)結晶セルロースを30質量%以上含有し、
(2)平均短径が50〜1000μmであり、
(3)短径分布係数が0.60以上、平均短長径比が0.80以上、短長径比分布係数が
0.70以上であり、
(4)圧壊強度が10MPa以上である。
[11]球状核粒子の圧壊強度が15MPa以上である[10]の球形素顆粒。
[12]球状核粒子の圧壊強度が20MPa以上である[11]の球形素顆粒。
[13]球状核粒子の保水性が0.5g/cm以上である[10]〜[12]いずれか1項の球形顆粒。
[14]フィルムコーティング顆粒製造用である[1]〜[13]いずれか1項記載の球形素顆粒。
[15][1]〜[13]いずれか1項記載の球形素顆粒と、その周囲を被覆するフィルムコーティング層とを有するフィルムコーティング顆粒。
[16]フィルムコーティング顆粒製造のための[1]〜[13]いずれか1項記載の球形素顆粒の使用。
[17][1]〜[13]いずれか1項記載の球形素顆粒にフィルムコーティングを施す、フィルムコーティング顆粒の製造方法。
[18]流動層型フィルムコーティング装置を使用して、前記条件(1)〜(4)を満たす薬学的に不活性な球状核粒子に薬物と水溶性高分子化合物を含む水溶液または水懸濁液を噴霧し、該球状核粒子を薬物含有層で被覆する[10]記載の球形素顆粒を製造する製造方法。
[19]前記流動層型フィルムコーティング装置が、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型であるか、または、底部に回転機構を備えた転動流動層型である[18]記載の球形素顆粒の製造方法。
本発明によれば、高い生産性で、精緻な溶出制御を可能とするフィルムコーティング顆粒を製造し得る。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の球形素顆粒は、その形状が「球形」で、かつ、「均一」であることが必要である。
本発明において、球形素顆粒の短径分布係数とは、以下の式で表される値である。
短径分布係数=D10/D90
ここで、D10は短径の篩下積算分布における積算10%の値であり、D90は積算90%の値を意味する。
球形素顆粒の短径分布係数が、0.65以上であれば、真球度の点で多少劣っていても、均一なフォルムコーティングが可能となる。好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上である。理論上の最大値は1であり、均一なフィルムにコーティングを施すという観点からは1に近いほど好ましいが、現行の製造技術では1にすることは難しく、収率が著しく低下するので、製造効率の観点から0.9程度が最大の値である。
本発明において、球形素顆粒の平均短長径比とは、以下の式で表される値である。
平均短長径比=[D/L]50
ここで、[D/L]50は粒子の短長径比を最小値側から積算したときの積算分布における積算50%の値を意味する。
平均短長径比は、0.85以上である必要がある。好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上である。理論上の最大値は1であり、均一なフィルムにコーティングを施すという観点からは1に近いほど好ましい。
本発明において、球形素顆粒の短長径比分布係数とは、以下の式で表される値である。
短長径比分布係数=[D/L]10/[D/L]90
ここで、[D/L]10は短長径比を最小値側から積算したときの積算分布における積算10%の値であり、[D/L]90は積算90%の値を意味する。
短長径比分布係数は、0.7以上である必要がある。好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。理論上の最大値は1であり、1に近いほど好ましい。
短長径比分布係数を0.75以上とすることにより、短径分布係数や真球度(平均短長径比)が、それぞれ、0.65〜0.8、0.85〜0.9程度の比較的低い値である場合にも、精緻な徐放性フィルムコーティングが可能となり、また、最低限のフィルムで苦味マスキングを達成することができる。
球形素顆粒の大きさは、平均短径(D50)が50〜1200μm程度であることが好ましい。
ここで、本発明において、平均短径(D50)とは、短径の篩下積算分布における積算50%粒子径を意味する。
本発明の球形素顆粒は、少なくとも0.01質量%の薬物を含有することが好ましい。
本発明において「薬物」とは、人または動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具・機械ではないもののことをいう。
具体例としては、下記のようなものが挙げられる。抗癲癇剤(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム等)、解熱鎮痛消炎剤(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド等)、鎮暈剤(ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン等)、骨格筋弛緩剤(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン等)、自律神経用剤(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン等)、鎮痙剤(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン等)、抗パーキンソン剤(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン等)、不整脈用剤(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド等)、利尿剤(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド等)、血圧降下剤(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ等)、血管収縮剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン等)、血管拡張剤(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン等)、動脈硬化用剤(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート等)、循環器官用剤(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン等)、呼吸促進剤(塩酸ジメフリン等)、鎮咳去痰剤(臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等)、利胆剤(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン等)、整腸剤(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド等)、消化器官用剤(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン等)、ビタミン剤(酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム等)、化学療法剤(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン等)が挙げられる。
球形素顆粒にフィルムコーティングを施す場合について説明する。
本発明においては、薬物の溶出速度の調整(徐放、腸内放出、時限放出、パルス放出、苦味マスクなど)や、防湿、色つけなどを目的として、球形素顆粒にフィルムコーティングを施すことができる。
球形素顆粒は、遠心流動コーティング装置(フロイント産業社製「CFグラニュレーター」など)や流動層コーティング装置など、公知の装置を使用してフィルムコーティングできる。流動層コーティング装置は、通常の流動層型の他に、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型や、底部に回転機構を備えた転動流動層型なども使用できる。
装置の例としては、フロイント産業社製「フローコーター」「スパイラフロー」、Glatt社製「WST/WSGシリーズ」「GPCGシリーズ」、不二パウダル社製「ニューマルメライザー」、パウレック社製「マルチプレックス」などを挙げることができる。
フィルムコーティング液の供給は、トップスプレー、ボトムスプレー、サイドスプレー、タンジェンシャルスプレー等の各装置に適した方法が選択でき、球形素顆粒に噴霧される。噴霧終了後は、サンプルを取り出すことなく、そのまま、あるいは風量および温度を適宜調節して、フィルムコーティング顆粒を乾燥できる。

フィルムコーティング液としては、例えば、固体状のフィルムコーティング剤を有機溶媒に溶解したもの、微粉末状のフィルムコーティング剤を可塑剤とともに水に分散したもの、あるいはラテックスタイプのフィルムコーティング剤に必要に応じて可塑剤を配合したもの等が使用できる。
フィルムコーティング剤としては、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーSなどのアクリル樹脂系コーティング剤;エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどのセルロース系コーティング剤;酢酸ビニル樹脂水分散液などの酢酸ビニル樹脂系コーティング剤などが使用できる。
これらのフィルムコーティング液には、成膜性、コーティング性、安定性、溶出性などを調整するために、可塑剤、無機物粒子、水溶性物質などの添加剤を配合してもよい。有機溶媒の使用は、作業環境および自然環境保全の点から忌避されており、水系のものを使用することが好ましい。
特に好ましいフィルムコーティング液は、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、メタクリル酸コポリマーLD水分散液、エチルセルロース水分散液、酢酸ビニル樹脂水分散液などのラテックスタイプのコーティング剤からなるものである。
最近は、生産性の観点に加え、より小さな素顆粒に対するフィルムコーティング性の観点から、ワースターカラムを有する噴流層型あるいは転動流動層型の流動層コーティング装置が使用されることが多い。これらの装置は粒子に対する転動力が強い点が特徴であるが、安定/大量生産のためには被フィルムコーティング顆粒(球形素顆粒)の強度が高くなければならない。特に、生産機になると仕込み量が増すため、装置の攪拌力に加え、素顆粒自身の重力に耐える必要がある。
そのため、本発明の球形素顆粒は、その圧壊強度が10MPa以上であることが必要であり、好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。これによって、素顆粒の破壊、薬物層の剥離が起こらず、安定的にフィルムコーティングを行うことができる。
なお、本発明において、圧壊強度とは、以下の式で表される値である。
圧壊強度[MPa]=0.7×P/{π×(d/2)
ここで、dは粒子の直径[μm]、Pは粒子が破壊される荷重[N]を意味する。
本発明の球形素顆粒は、押出造粒後に球形化する方法、高速撹拌造粒後に球形化する方法、および、球状核粒子の表面を薬物で被覆する方法(レイヤリング法)等により製造することができる。以下に一例として、レイヤリング法により製造する場合について説明する。
レイヤリング法において使用される好ましい球状核粒子は、結晶セルロースを30質量%以上含んだものである。結晶セルロースが30質量%未満であると、球状にすることが困難であり、また、強度が低下する。より好ましくは結晶セルロースが70質量%であり、さらに好ましくは100質量%である。
なお、本発明において「結晶セルロース」とは、第十四改正日本薬局方の「結晶セルロース」の規格に適合するものを意味する。
本発明において、球状核粒子は薬学的に不活性、すなわち、薬物を含まないことが好ましい。結晶セルロース以外の成分としては、医薬品の製剤化に通常使用される添加物を例示することができる。
例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどの賦形剤;低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、キサンタンガムなどの結合剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマーLD、エチルセルロース水分散液、などのコーティング剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート60などの乳化剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのその他の添加物等を挙げることができる。
水溶性の医薬品添加物の配合は、レイヤリング時の粒子の凝集を増やすので、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
本発明において、球状核粒子の形状は均一であることが好ましい。平均短径(D50)は、50〜1000μmであることが好ましい。
そして、短径分布係数は0.60以上、平均短長径比は0.80以上、短長径比分布係数は0.7以上であることが好ましい。これによって、薬物含有層のレイヤリング後に得られる球形素顆粒の短径分布係数、平均短長径比、短長径比分布係数を本発明の数値範囲に容易に調整することができる。
球状核粒子の保水性は0.5cm/g以上であることが好ましい。0.7cm/gであると凝集が著しく抑制されるので、より好ましい。さらに好ましくは0.9cm/g以上である。上限は無いが、吸水して膨潤すると、薬物含有層被覆後の乾燥時に収縮し、球形素顆粒の強度が低下するので好ましくない。吸水しても、膨潤しない粒子の最大の保水性は、おおよそ2.0cm/gである。嵩密度は、強度と保水性の兼ね合いによって決まるが、おおよそ0.5〜2.0cm/gである。結晶セルロースのみからなる球状核粒子の場合は、0.5〜1.0cm/g程度である。
ここで、保水性とは、単位質量あたりに保持できる水の容量であり、以下の式で表される。
保水性G[cm/g]=H/W
H:球状核粒子が保持できる水の容量[cm/g]
W:球状核粒子の質量[g]
具体的には、サンプル10g(乾燥物換算)に純水30mLを加え、1時間室温で放置後、固形分を濾紙で分離し、表面付着水を別の濾紙で軽くぬぐい取った後、その質量重量を測定し、10gを差し引いた値(含水量)を10で除すことによって求められる。
球状核粒子を薬物含有層でレイヤリング(被覆)するためには、フィルムコーティングの場合と同様の装置が、同様の使い方で使用できる。好適な装置は、フィルムコーティングの場合と同様に、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型、あるいは、底部に回転機構を備えた転動流動層型の流動層コーティング装置である。ただし、異なる点は、フィルムコーティング液ではなく、薬物の水溶液あるいは水懸濁液等のレイヤリング液を使用することである。レイヤリング液は、有機溶媒系とすることもできるが、作業環境および自然環境の保全の観点から、水系とすることが好ましい。
レイヤリング液中の薬物の濃度は、薬物の溶解度と粘度、および懸濁性に依存するが、おおよそ、5〜30質量%であることが好ましい。レイヤリング液には、必要に応じて、その他の医薬品添加物を配合しても良い。
このような医薬品添加物として最も有効なものは水溶性高分子化合物(結合剤)であり、これにより薬物含有層の強度を上げることができる。水溶性高分子化合物の具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、アルファー化デンプン、アラビアゴム末、カルボキシビニルポリマー、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、カラギーナン、キサンタンガム、プルランなどを挙げることができる。なかでも、結合性と薬物の即溶出性を兼ね備えたヒプロメロース(置換度タイプ:2910)やポビドンが好ましい。
また、レイヤリング液が水懸濁液である場合の薬物粒子の懸濁安定性向上、および球形素顆粒における薬物含有層の剥離防止のために、結晶セルロース・カルメロースナトリウムを配合することも有効である。
薬物と水溶性高分子化合物の水溶液あるいは水懸濁液等のレイヤリング液に替えて、薬物粉末と水溶性高分子化合物水溶液を球状核粒子に同時に供給することもできる。この方法の場合、薬物以外の添加剤、例えば賦形剤は、適宜、薬物粉末と混合して使用できる。
このようなレイヤリング液を球状核粒子に、連続的に、あるいは間欠的に噴霧しつつ、乾燥し、薬物含有層を形成する。この時、粒子が凝集しないように、また、噴霧液が核粒子に付着する前に乾燥し、粉末化(ダスティング)しないように、温風量、回転機構の回転速度、薬物噴霧液の噴霧圧などを最適化することが好ましい。そのため、球状核粒子の破壊強度は、10MPa以上であることが好ましい。圧壊強度が低いと、粒子の攪拌力を低く設定せざるを得ず、薬物水溶液(水懸濁液)の噴霧速度もまた、低速になり、生産性が低下する。より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。
レイヤリング液噴霧終了後は、球形素顆粒を乾燥する。このとき、サンプルを取り出すことなく、そのまま、あるいは風量および温度を適宜調節して、球形素顆粒を乾燥することもできる。
薬物含有層の被覆量は、一回の服用量や製剤の大きさなどの製剤設計から決まるものであるが、あえて例を示せば、球状核粒子に対して0.5〜200質量%程度である。
また、本発明の球形素顆粒は、これに徐放性フィルムコーティングを施すことによって、含有する薬物の溶出を精緻に制御することができるので、球形素顆粒自体を徐放性にする必要はない。むしろ、薬物の溶け残りを防ぐという観点からは、球形素顆粒自体は除放性ではない方が好ましい。したがって、薬物含有層は、薬物と水溶性高分子化合物を主成分とするものであることが好ましく、薬物と水溶性高分子化合物の合計量が薬物含有層の80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。さらに、球形素顆粒の薬物含有層には、その溶出速度を低下させるような添加物(例えば、水不溶性高分子化合物)は配合しないことが好ましい。
球形素顆粒の製造工程の一例を、説明する。
(a)レイヤリング液の調製;まず、水に薬物と、必要な医薬品添加剤を配合し、充分撹拌溶解(懸濁)する。
(b)球状核粒子および流動層コーティング装置の加温;次いで、流動層コーティング装置に球状核粒子を仕込み、排風温度が所定の温度に達するまで、温風を装置下部から供給し、核粒子を流動させる(流動層コーティング装置が転動流動層型である場合、同時に回転部を回転する)。
(c)薬物含有層の被覆;次に、レイヤリング液を所定の速度で連続的に、あるいは間欠的に、あるいは段階的に速度を上げて噴霧し、所定の被覆量に達したらレイヤリング液の供給を停止する。
(d)球形素顆粒の乾燥;必要に応じて、温風の量および温度(転動流動層型の場合は回転部の回転速度)を調節し、乾燥する。
(e)球形素顆粒の取り出し;最後に、球形素顆粒を取り出す。
得られた球形素顆粒は、必要に応じて整粒され、徐放性、腸溶性、苦味マスクなどのフィルムコーティングを施され、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、等として使用できる。
本発明を実施例に基づいて説明する。まず、物性の測定方法を以下にまとめて記す。
<球状核粒子および球形素顆粒の平均短径、短径分布係数、短長径比分布係数、平均短長径比>
サンプルの形状を、デジタルマイクロスコープ(VH−7000、(株)キーエンス製)で撮影し(50倍または100倍レンズを使用)、画像解析装置(ImageHyper、(株)インタークエスト製)を用いて100個の粒子の短径(D)、長径(L)を測定する。ここで、短径と長径は、粒子の境界画素上に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺を短径とし、長辺を長径とする。
短径の篩下積算分布における積算10%粒子径を「D10」、積算50%粒子径を「D50」、積算90%粒子径を「D90」で表す。平均短径とは、D50のことであり、短径分布係数とは、D10/D90のことである。
また、短径と長径の比(短長径比)を「D/L」で表し、D/Lの最小値の側から積算したときの積算分布における積算10%短長径比を「[D/L]10」、積算50%短長径比を「[D/L]50」、積算90%短長径比を「[D/L]90」で表す。短長径比分布係数とは、[D/L]10/[D/L]90のことであり、平均短長径比とは、[D/L]50のことである。
平均短径[μm]=D50
短径分布係数[−]=D10/D90
短長径比分布係数[−]=[D/L]10/[D/L]90
平均短長径比[−]=[D/L]50
<球状核粒子および球形素顆粒の圧壊強度[MPa]>
顆粒強度測定装置(グラノ、岡田精工(株)製)を用いて、粒子の直径(d[μm])と破壊荷重(P[N])を測定する。定格5Nまたは20Nのロードセルを使用し、下降速度を100μm/sでチップを下降させ粒子に荷重を付加する。チップの変位に対するチップが粒子から受ける荷重の推移をグラフ化した時、荷重が0.15N以上低下する点を破壊点とし、その時、粒子にかかっていた荷重を破壊荷重P[N]として、下式より圧壊強度を算出する。50個の粒子について測定を繰り返し、その平均値を求める。
圧壊強度[MPa]=0.7×P/{π×(d/2)
<球形素顆粒およびフィルムコーティング顆粒の回収率[質量%]>
球形素顆粒またはフィルムコーティング顆粒の回収量[g]、用いた原料の総量[g]から、下式により算出する。
回収率[質量%]={回収量[g]/原料の総量[g]}×100
<球形素顆粒およびフィルムコーティング顆粒の凝集率[%]>
球形素顆粒あるいはフィルムコーティング顆粒を紙上に分散させ、目視で凝集顆粒を構成している粒子数(a[個])と、単一粒子数(b[個])を数え、下式により算出する。観察する粒子数は1000個(=a+b)とする。
凝集率[%]={a/(a+b)}×100
<フィルムコーティング顆粒の苦味感知時間[sec]>
三人の専門パネラーが、フィルムコーティング顆粒0.5g口中に含み、舌の上にのせ、舌を動かさない状態で苦味を感じるまでの時間の平均値を、苦味感知時間とした。
[実施例1]
(核粒子の製造)
平均重合度220の結晶セルロース10kgを転動流動層造粒装置(「マルチプレックス」MP−25型、(株)パウレック製)に仕込み、回転数336rpm、風量1.7〜4.5m/min、給気温度55℃の条件で、蒸留水を100g/minの速度で14kgをトップスプレー方式で噴霧した。その後、そのままの条件で60分間、転動と流動を行い、次いで、給気温度を70℃とし、20分毎に回転数を50rpmずつ減少し、排気温度が35℃になるまで乾燥した。乾燥後、710μm以上の粗大粒子と、300μm以下の微粉を篩で除去して球状核粒子Aを得た。
核粒子の物性を表2に示す。
(球形素顆粒の製造)
水102gをプロペラ攪拌しながら、ポビドン(K−30、ISP Tec.Inc.製)3g、スルピリン(メルクホエイ製)15gを投入し、完全に溶解するまで攪拌し、レイヤリング液を調整した。噴流型(ワースター型)コーティング装置(「マルチプレックス」MP−01型、ワースターカラム使用、(株)パウレック製)に上記球状核粒子を0.5kg仕込み、スプレーエアー圧0.16MPa、スプレーエアー流量40L/min、給気温度75℃、風量31〜43m/h、の条件で、排気温度が40℃になるまで予備加温した。レイヤリング液噴霧速度3g/min(球状核粒子1kgあたり、固形分として0.9g/minの被覆速度に相当)の条件で、球状核粒子に対して2.4質量%(薬物として2.0質量%)になるまでレイヤリングした。以上の操作を2回行い、得られたものを混合して、球形素顆粒とした。
球形素顆粒は、高回収率で、しかも低凝集率であった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
苦味をマスクするためのフィルムコーティングを行うために、まず、エチルセルロース水分散液(「Aquacoat」ECD−30、固形分濃度30質量%、FMC製)10.9部(固形分)、クエン酸トリエチル(東京化成工業(株)製)2.7部、D−マンニトール(東和化成工業(株)製)1.4部、水85部の割合からなるフィルムコーティング液を調製した。次いで、転動流動コーティング装置(「マルチプレックス」MP−01型、(株)パウレック製)に球形素顆粒を0.8kg仕込み、給気温度75℃、風量37〜50m/h、回転板回転数200rpmの条件で核粒子を転動流動し、排気温度が38℃になるまで予備加温した。タンジェンシャルボトムスプレーを使用し、スプレーエアー圧0.16MPa、スプレーエアー流量40L/min、排気温度36〜38℃、コーティング液噴霧速度10.0g/minの条件で、球形素顆粒に対してフィルムコーティング液の固形分が15質量%になるまでコーティングした。コーティング終了後、乾燥時は回転板回転数を200rpmとして、排気温度が40℃になるまで加温し、次いで、ヒーターを切り給気温度が40℃になるまで冷却した。得られたフィルムコーティング顆粒はバットに薄く広げ、80℃のオーブン中で60分間キュアリング(加熱成膜処理)し、フィルムコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒は、苦味は48秒程度抑制され、また、凝集も極め
て少なかった。結果を表1に示す。
[実施例2]
(核粒子の製造)
平均重合度220の結晶セルロース10kgを転動流動層造粒装置(「マルチプレックス」MP−25型、(株)パウレック製)に仕込み、回転数336rpm、風量1.7〜4.5m/min、給気温度55℃の条件で、蒸留水を200g/minの速度で14kgをトップスプレー方式で噴霧した。その後、そのままの条件で60分間、転動と流動を行い、次いで、給気温度を80℃とし、20分毎に回転数を50rpmずつ減少し、排気温度が35℃になるまで乾燥した。乾燥後、710μm以上の粗大粒子と、300μm以下の微粉を篩で除去して球状核粒子Bを得た。
核粒子の物性を表2に示す。
(球形素顆粒の製造)
次いで実施例1と同様にしてレイヤリングを行い、球形素顆粒を得た。
球形素顆粒は、仕込み原料に対してほぼ全量が回収され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は29秒程度抑制され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
[実施例3]
(球形素顆粒の製造)
水540gをプロペラ攪拌しながら、ポビドン(K−30、ISP Tec.Inc.製)10g、スルピリン(メルクホエイ製)50gを投入し、完全に溶解するまで攪拌し、レイヤリング液を調製した。転動流動コーティング装置(「マルチプレックス」MP−01型、(株)パウレック製)に、実施例1で得られた球状核粒子A1.0kgを仕込み、給気温度75℃、風量37〜50m/h、回転板回転数200rpmの状態で、排気温度が40℃になるまで予備加温した。タンジェンシャルボトムスプレーを使用し、回転板回転数380rpm、スプレーエアー圧0.16MPa、スプレーエアー流量40L/min、給気温度75℃、排気温度40℃、風量37〜50m/h、レイヤリング液噴霧速度8.0g/min(球状核粒子1kgあたり、固形分として0.8g/minの被覆速度に相当)の条件で、球状核粒子に対して6.0質量%(薬物として5.0質量%)になるまでレイヤリングした。その後、回転板回転数を200rpmにし、排気温度が42℃に上昇するまで乾燥し、次いで、給気の加熱ヒーターをオフにして、給気温度が40℃になるまで冷却した。
得られた球形素顆粒は、コーティング装置の内壁への付着が少なく、ほぼ全量が回収された。また、凝集もきわめて少なかった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は35秒程度抑制され、凝集も少なかった。
結果を表1に示す。
[実施例4]
(核粒子の製造)
平均重合度140の結晶セルロース10kgを転動流動層造粒装置(「マルチプレックス」MP−25型、(株)パウレック製)に仕込み、回転数250rpm、風量3.5〜4.5m/min、給気温度50℃の条件で、蒸留水を150g/minの速度で11kgをトップスプレー方式で噴霧した。その後、そのままの条件で30分間、転動と流動を行い、次いで、給気温度を80℃とし、20分毎に回転数を50rpmずつ減少し、排気温度が35℃になるまで乾燥した。乾燥後、710μm以上の粗大粒子と、300μm以下の微粉を篩で除去して球状核粒子Cを得た。
核粒子の物性を表2に示す。
(球形素顆粒の製造)
次いで実施例1と同様にしてレイヤリングを行い、球形素顆粒を得た。
球形素顆粒は、仕込み原料に対してほぼ全量が回収され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は53秒程度抑制され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
[実施例5]
(球形素顆粒の製造)
球状核粒子として、実施例4で得られた球状核粒子Cを用いる以外は実施例3と同様にしてレイヤリングを行い、球形素顆粒を得た。
球形素顆粒は、仕込み原料に対してほぼ全量が回収され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は51秒程度抑制され、凝集も少なかった。結果を表1に示す。
[比較例1]
(核粒子の製造)
平均重合度220の結晶セルロース10kgを転動流動層造粒装置(「マルチプレックス」MP−25型、(株)パウレック製)に仕込み、回転数250rpm、風量3.5〜5.5m/min、給気温度55℃の条件で、蒸留水を200g/minの速度で14kgをトップスプレー方式で噴霧した。その後、風量8m/min、給気温度80℃とし、20分毎に回転数を50rpmずつ減少し、排気温度が35℃になるまで乾燥した。乾燥後、500μm以上の粗大粒子と、250μm以下の微粉を篩で除去して球状核粒子aを得た。
核粒子の物性を表2に示す。
(球形素顆粒の製造)
次いで実施例1と同様にしてレイヤリングを行い、球形素顆粒を得た。
球形素顆粒は、仕込み原料に対してほぼ全量が回収されたが、凝集が多かった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は8秒程度で感じられ、充分に抑制されていなかった。結果を表1に示す。
[比較例2]
(球形素顆粒の製造)
球状核粒子として、比較例1で得られた球状核粒子aを用いた以外は、実施例3と同様にしてレイヤリングを行い、球形素顆粒を得た。
球形素顆粒は、ほぼ全量回収されたが、凝集が多かった。結果を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は11秒程度で感じられ、充分に抑制されていなかった。結果を表1に示す。
[比較例3]
(球形素顆粒の製造)
平均重合度140の結晶セルロース200g、乳糖(Pharmatose、200M、DMV製)132.2g、トウモロコシデンプン(日澱化学(株)製)60g、およびスルピリン7.8gをプラネタリーミキサー(5DM−03−R型、ビーター型パドル、(株)品川製作所製)に仕込み、63rpmで撹拌し、水240gを加え、さらにそのまま5分間混合した。得られた混合物を押出造粒機(ドームグラン、DG−L1型、300μm孔径のダイ、スクリュー回転数40rpm、(株)不二パウダル製)で造粒し、さらに球形化装置(マルメライザー、Q−230型、3mmギザプレート、(株)不二パウダル製)に仕込み、690rpmで20分間、球形化した。以上の操作を3回行い、得られた造粒物をまとめてオーブン中で、45℃、16時間乾燥し、710μm以上の粗大粒子と、300μm以下の微粉を篩で除去してスルピリンを1.95質量%含有する球形素顆粒を得た。物性を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は9秒程度で感じられ、充分に抑制されていなかった。結果を表1に示す。
[比較例4]
(球形素顆粒の製造)
加水量を280gとした以外は、比較例3と同様にして造粒を行い、スルピリンを1.95質量%含有する球形素顆粒を得た。物性を表1に示す。
(フィルムコーティング)
次いで実施例1と同様にしてフィルムコーティングを行い、フィルムコーティングコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒の苦味は13秒程度で感じられ、充分に抑制されていなかった。結果を表1に示す。
実施例1〜5、比較例1〜4の結果を表1に示す。
短長径比分布係数、平均短長径比、短径分布係数が本発明の数値範囲にある実施例1〜5の球形素顆粒は、フィルムコーティングを施した際の凝集が少なく、苦味が充分抑制されていた。これに対して、比較例1〜4の球形素顆粒は、フィルムコーティングの際に凝集が発生し、苦味の抑制も充分でなかった。
特に、実施例2、4、5のように、平均短長径比、短径分布係数が比較的低く、真球・単分散とは言い難い球形素顆粒であっても、短長径比分布係数を本発明の数値範囲内にすることにより、フィルムコーティングの際の凝集を抑制でき、苦味の抑制が充分な均一なフィルムコーティングが達成できた。
[実施例6]
実施例2で得た球形素顆粒を用いて徐放性フィルムコーティング顆粒を調製した。
まず、エチルセルロース水分散液(「セリオスコート」EC−30A、固形分濃度30質量%、旭化成ケミカルズ)11.5部(固形分)、クエン酸トリエチル(東京化成工業(株)製)2.9部、D−マンニトール(東和化成工業(株)製)0.6部、水85部の割合からなるフィルムコーティング液を調製した。次いで、噴流型(ワースター型)コーティング装置(GPCG−1型、グラット社製)に実施例2で得た球形素顆粒0.5kgを仕込み、給気温度65℃、排気温度47〜50℃、風量80m/h、スプレーエアー圧0.16MPa、コーティング液噴霧速度2.0g/minの条件で、球形素顆粒に対してフィルムコーティング液の固形分が5質量%になるまでコーティングした。スルピリンのフィルムへの混入を抑制するために、排気温度が53℃になるまで乾燥した後、再度コーティングを行った。この時の条件はコーティング液噴霧速度を3.0〜4.8g/minとした以外は先ほどと同じに設定した。コーティング終了後、排気温度が53℃になるまで加温し、次いで、ヒーターを切り給気温度が36℃になるまで冷却した。得られた顆粒をバットに薄く広げ、80℃のオーブン中で60分間キュアリング(加熱成膜処理)し、徐放性フィルムコーティング顆粒を得た。
得られたフィルムコーティング顆粒からのスルピリンの溶出速度を、第十四改正日本薬局方、一般試験法「溶出試験法」の第2法(パドル法)に準じて測定した。パドル回転数は100rpmとし、試験液は「溶出試験第1液」を使用した。測定の結果、フィルムコーティング顆粒からのスルピリンの溶出率は、2時間:37.5%、4時間:54.1%、6時間:63.2%、8時間:69.1%、10時間:73.1%であった。
[比較例5]
比較例3と同様にして得た球形素顆粒に、実施例6と同様にしてフィルムコーティングを行い、徐放性フィルムコーティング顆粒を得た。フィルムコーティング顆粒からのスルピリンの溶出率は、2時間:41.9%、4時間:60.4%、6時間:70.2%、8時間:76.5%、10時間:81.0%であった。
比較例5のフィルムコーティング顆粒のスルピリンの溶出速度は、実施例6のフィルムコーティング顆粒のスルピリンの溶出速度と比較して、1割程度大きかったが、これは、用いた球形素顆粒の短径分布係数が小さいことによると考えられる。
本発明の製造方法は、フィルムコーティングを施した医薬品顆粒製造の分野で好適に利用できる。

Claims (14)

  1. 以下の条件(1)〜(4)を満たす薬学的に不活性な球状核粒子と、その周囲を被覆する、薬物と水溶性高分子化合物を含む薬物含有層と、を含有し、短径分布係数が0.65以上0.80以下、平均短長径比が0.85以上0.90以下、短長径比分布係数が0.75以上、圧壊強度が10MPa以上である球形素顆粒
    (1)結晶セルロースを30質量%以上含有し、
    (2)平均短径が397〜1000μmであり、
    (3)短径分布係数が0.60以上、平均短長径比が0.84以上0.90以下、短長径比分布係数が0.70以上であり、
    (4)圧壊強度が10MPa以上である。
  2. 圧壊強度が15MPa以上である請求項1記載の球形素顆粒。
  3. 圧壊強度が20MPa以上である請求項記載の球形素顆粒。
  4. 平均短径が50〜1200μmである請求項1〜いずれか1項記載の球形素顆粒。
  5. 前記薬物の含有量が0.01質量%以上である請求項1〜4いずれか1項記載の球形素顆粒。
  6. 球状核粒子の圧壊強度が15MPa以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の球形素顆粒。
  7. 球状核粒子の圧壊強度が20MPa以上である請求項1〜6いずれか1項記載の球形素顆粒。
  8. 球状核粒子の保水性が0.5g/cm3以上である請求項1〜7いずれか1項の球形顆粒。
  9. フィルムコーティング顆粒製造用である請求項1〜いずれか1項記載の球形素顆粒。
  10. 請求項1〜いずれか1項記載の球形素顆粒と、その周囲を被覆するフィルムコーティング層とを有するフィルムコーティング顆粒。
  11. フィルムコーティング顆粒製造のための請求項1〜いずれか1項記載の球形素顆粒の使用。
  12. 請求項1〜いずれか1項記載の球形素顆粒にフィルムコーティングを施す、フィルムコーティング顆粒の製造方法。
  13. 流動層型フィルムコーティング装置を使用して、前記条件(1)〜(4)を満たす薬学的に不活性な球状核粒子に薬物と水溶性高分子化合物を含む水溶液または水懸濁液を噴霧し、該球状核粒子を薬物含有層で被覆する請求項1〜9いずれか1項記載の球形素顆粒を製造する製造方法。
  14. 前記流動層型フィルムコーティング装置が、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型であるか、または、底部に回転機構を備えた転動流動層型である請求項13記載の球形素顆粒の製造方法。
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