JP5234250B2 - 電子楽器のペダル装置 - Google Patents

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本発明は、楽音の発生態様を制御するための電子楽器のペダル装置に関する。
従来から、電子楽器のペダル装置において、アコースティックピアノのペダルに似た操作感を得るようにすることは知られている。例えば、下記特許文献1では、踏み込み操作によって揺動するレバーと、レバーを付勢するための第1のばね及び第2のばねを備え、レバーの踏み込みが浅い時は第1のばねのみがレバーを付勢し、所定量以上踏み込まれているときは、第1のばね及び第2のばねがレバーを付勢するようにしている。したがって、演奏者は踏み込みの途中からペダルが重くなったような操作感を得る。このようにして、アコースティックピアノにおけるダンパーペダルの操作感を模擬している。
特開2004−334008号公報
アコースティックピアノにおいては、演奏者がダンパーペダルを踏み込んだ場合、踏み込み量に応じて、ペダルの反力の変化率が段階的に変化するように感じる。この点について、図5を用いて説明する。アコースティックピアノのダンパーペダルとダンパーは、幾つかの連結部を介して連結されている。これらの連結部には遊びが設けられている。したがって、ダンパーペダルの踏み込みが浅く、図5のA1の範囲にあるとき、その動作はダンパーに伝達されず、ペダルからの反力の変化率は小さい。ダンパーペダルの踏み込み量が増して、図5のA2の範囲に移行すると、連結部を介してダンパーに踏み込み力が伝わり始め、連結部全体が有する弾性要素からの反力の増加、部分的に弦から持ち上げられ始めたダンパーの重さ及び摩擦によって、ペダルからの反力の変化率が大きくなる。さらに踏み込み量が増して、図5のA3の範囲に移行すると、ダンパーが弦から完全に離れるので摩擦が減少する。また、連結部全体が有する弾性要素からの反力が増加しなくなる。したがって、ペダルからの反力の変化率が再び小さくなる。なお、領域A2の後半から領域A2,A3間の境界を越えて領域A3に侵入する領域(図示のAH領域)を通常ハーフペダル領域という。そして、この領域AHにおいて上級演奏者はダンパーペダルの踏み込み深さを微妙に変化させることにより、発生される楽音の音色、響きなどを微妙に変化させることができる。また、機種及びメーカーによって、ダンパーペダル、連結部及びダンパーの構造が異なると、図5におけるA1、A2、AH及びA3の各範囲の広さも異なる。しかし、上記のような従来の電子楽器のペダル装置では、図5のA2の範囲を超えた図5のA3の範囲(再び反力の変化率が小さくなった状態)の操作感を実現できなかった。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、軽量で、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現し得る電子楽器のペダル装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、踏み込み操作により揺動するレバーと、レバーの踏み込み操作に対抗する反力をレバーに与える付勢手段とを備える電子楽器のペダル装置において、レバーに連動するとともに、付勢手段に係合し、レバーの踏み込み量に応じて前記反力を変化させるカムであって、付勢手段と係合する少なくとも3つの面を有するカムを有し、前記反力の変化率を、レバーの踏み込み量が第1の所定量未満のとき、第1の変化率に設定し、レバーの踏み込み量が前記第1の所定量以上かつ第2の所定量以下の範囲にあるとき、第1の変化率よりも大きな第2の変化率に設定し、レバーの踏み込み量が前記第2の所定量を超えているとき、第2の変化率よりも小さな第3の変化率に設定したことにある。
この場合、付勢手段は、第1のばね及び第2のばねから構成され、第1のばねは、カムに係合することなく、レバーに係合して、レバーの踏み込み操作に対抗する反力をレバーに直接与え、第2のばねは、カムに係合して、レバーの踏み込み操作に対抗する反力をカムを介してレバーに与えるようにするとよい。さらに、レバーの踏み込み量が第1の所定量未満のとき、第2のばねの付勢力が一定に保たれ、レバーの踏み込み量が第1の所定量以上のとき、第2のばねの付勢力が変化するようにしてもよい。
上記のように構成した本発明によれば、レバーに連動するカムが付勢手段に係合することにより、レバーの踏み込み量に応じて、付勢手段の付勢力の変化率を、始め小さく、次に大きく、さらに次に小さくというように段階的に増減させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。また、構造が単純であるので、軽量なペダル装置を実現することができる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明に係るペダル装置を適用した電子楽器の全体構成例についてのブロック図である。電子楽器10は、鍵盤11、ペダル装置12、複数のパネル操作子13、表示器14、音源回路15、コンピュータ部16、時計回路17及び外部記憶装置18を備えている。鍵盤11は、演奏者の手によって操作されて、発生楽音の音高をそれぞれ指定する。鍵盤11の操作は、バス21に接続された検出回路22によって検出され、操作内容を表すデータ(例えば、ノートデータ、キーオンデータ、キーオフデータなど)が、バス21を介してコンピュータ部16に供給される。ペダル装置12は、演奏者の足によって操作されて、電子楽器10の楽音の発生態様を制御する。本実施形態においては、ペダル装置12は、演奏者の足による踏み込み操作により、発生される楽音にダンパー効果を付与するためのダンパーペダルである。ペダル装置12の操作は、詳しくは後述するように、バス21に接続された検出回路23によって検出され、操作内容を表すデータがバス21を介してコンピュータ部16に供給される。複数のパネル操作子13は、電子楽器の動作を設定するためのものである。パネル操作子13の操作は、バス21に接続された検出回路24によって検出され、操作内容を表すデータがバス21を介してコンピュータ部16に供給される。表示器14は、液晶ディスプレイ、CRTなどで構成され、文字、数字、図形などを画面上に表示する。表示器14はバス21に接続された表示回路25によって制御され、表示内容が、バス21を介して表示回路25に供給される表示用の指示信号及びデータにより指定される。
音源回路15は、バス21に接続されていて、コンピュータ部16からバス21を介して供給される楽音制御データ(ノートデータ、キーオンデータ、キーオフデータ、音色制御データ、音量制御データなど)に基づいてディジタル楽音信号を生成し、生成したディジタル楽音信号を効果回路26に供給する。効果回路26は、バス21に接続されていて、コンピュータ部16からバス21を介して供給される効果制御データに基づいて、供給されたディジタル楽音信号に効果を付してサウンドシステム27に供給する。前述したダンパー効果は、音源回路15又は効果回路26でディジタル楽音信号に付与される。サウンドシステム27は、D/A変換器、アンプ、スピーカなどからなり、前記供給された効果の付与されたディジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換して、同アナログ楽音信号に対応した楽音を放音する。
コンピュータ部16は、バス21に接続されたCPU16a、RAM16b、ROM16cに加えて、CPU16aに接続されたタイマ16dからなり、プログラムの実行により、電子楽器10を制御する。時計回路17は、継続的に日時を計測する。外部記憶装置18は電子楽器10に組み込まれたハードディスク及びフラッシュメモリ、電子楽器10に接続可能なコンパクトディスクなどの種々の記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、大量のデータ及びプログラムの記憶及び読み出しを可能にしている。
電子楽器10は、さらに、ネットワーク用インターフェース回路28及びMIDIインターフェース回路29を備えている。ネットワーク用インターフェース回路28は、電子楽器10を、通信ネットワークNWを介してサーバ装置30に交信可能に接続する。MIDIインターフェース回路29は電子楽器10を、他の電子楽器又はシーケンサなどの外部MIDI機器31に交信可能に接続する。
次に、本発明に係るペダル装置12について詳しく説明する。図2は本発明に係る電子楽器のペダル装置の側面図である。レバー40は、長尺状の板状部材で、前部(図2において左側)が踏み込み部であり、幅広となっている。レバー40は、中間部にてフレームFRに設けられたレバー支持部41に支持され、回転中心42を中心として、前端部を上下方向に揺動可能としている。フレームFRの前部には、フェルトなどの衝撃吸収材によって構成された長尺状の下限ストッパ43が横方向に延設してフレームFRに固定されている。この下限ストッパ43はレバー40の前部の下方への変位を規制する。なお、フレームFRとは、ペダル装置12の種々の部品を支持するための構造体及びペダル装置12のハウジング自体を意味する。また、レバー40の後部下方には、下限ストッパ43と同様な上限ストッパ44がフレームFR上に固定されており、レバー40の前部の上方への変位を規制する。
レバー40の後部上方には、第1圧縮ばね45がフレームFRに固定されていて、レバー40の後部を下方へ付勢している。また、レバー40の後部上面にはカム46が設けられている。
ここで、カム46の形状について説明する。カム46の前面は、後述の押圧部材47の先端が摺接する面となっている。この面は、図3に示すように、第1領域46a、第2領域46b、第3領域46cの3つの領域から構成される。第1領域46aは、レバー40の上方に位置し、レバー40の上面に対して垂直な平面である。第2領域46bは第1領域46aの下部から前下方へ向かって傾斜する平面である。第3領域46cは、第2領域46bの下部から前下方に向かって、上に凸の曲面となっており、第2領域46bと比べるとレバー40の面に対して垂直に近い面となっている。
押圧部材47は、円柱状の部材で、先端部は半球状に成形されている。押圧部材47は、その円柱部より直径の大きい円板状部材を介して、第2圧縮ばね48の一端に組みつけられている。第2圧縮ばね48の他端はフレームFRに固定されている。また、押圧部材47は、図示しないガイド部材によって、前後方向にのみ移動可能となっている。
また、フレームFRの内側天井面には、レバー40の踏み込み量を検出するための踏み込み量センサ49が組みつけられている。この踏み込み量センサ49は、レバー40の上面までの距離を電気的又は光学的(例えばレーザー光の反射)に検出することにより、レバー40の踏み込み量を検出する。なお、この踏み込み量センサ49は、検出回路23の一部を構成するものである。また、この踏み込み量センサ49に代えて、レバー40の上下変位量を機械的かつ電気的(例えば可変抵抗)に検出するセンサを用いてもよい。
次に、上記のように構成したペダル装置の動作を説明する。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1圧縮ばね45によって、レバー40の後部が下方に付勢される。また、第2圧縮ばね48も押圧部材47を介して、カム46の第1領域46aを後方へ付勢し、レバー40を、回転中心42を中心として、図4(A)にて時計回りに回転させようとする。したがって、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接してレバー40は静止し、図2の状態となっている。
演奏者が、第1圧縮ばね45及び第2圧縮ばね48による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心42を中心として、図4(A)にて反時計回りに回転し始め、レバー40の後部が上方へ変位する。これにより、第1圧縮ばね45が圧縮され、第1圧縮ばね45によるレバー40への付勢力が増大する。
一方、カム46の第1領域46aはレバー面に対して垂直な平面となっているから、カム46が回転中心42を中心に、図4(A)にて反時計まわりに回転しても、押圧部材47とカム46が接する点には下方向の分力はほとんど発生せず、接点の変位も小さい。そのため、押圧部材47が、カム46の第1領域46aに摺接している間(図4(A)から図4(B)の間)は、第2圧縮ばね48による付勢力もほとんど変化しない。したがって、この操作範囲では、レバー40の踏み込み操作に対抗する反力は、第1圧縮ばね45及び第2圧縮ばね48によって発生し、反力の変化は、第1圧縮ばね45によってのみ発生する。
レバー40の踏み込み量が増すと、さらにレバー40の後部が上方へ変位することにより、第1圧縮ばね45によるレバー40への付勢力がさらに増大する。一方押圧部材47は、カム46の第2領域46bに摺接し始める(図4(B))。第2領域46bは前方に傾斜した平面となっているから、カム46が回転中心42を中心として図4(B)にて反時計まわりに回転すると、第2圧縮ばね48による付勢力の下方向への分力が発生し、さらに、押圧部材47はカム46に押されて、第2圧縮ばね48を圧縮しながら前方へ変位する。そのため、第2圧縮ばね48によるレバー40への付勢力が大きく変化する。したがって、この操作範囲(図4(B)から図4(C)の間)では、レバー40の踏み込み操作に対抗する反力及び反力の変化は、第1圧縮ばね45に加え、第2圧縮ばね48によって発生する。
さらにレバー40の踏み込み量が増すと、前述と同様に、第1圧縮ばね45によるレバー40への付勢力がさらに増大する。一方、押圧部材47は、カム46の第3領域46cに摺接し始める(図4(C))。第3領域46cは第2領域46bに比べると、レバー40の上面に対して垂直に近い曲面となっているから、カム46が回転中心42を中心に、図4(C)にて反時計まわりに回転しても、第2圧縮ばね48による付勢力の下方向への分力の発生が僅かであり、押圧部材47とカム46が接する点の変位量も僅かである。そのため、第2圧縮ばね48による付勢力の変化も僅かである。したがって、この操作範囲(図4(C)から図4(D)の間)では、レバー40の踏み込み操作に対抗する反力は第1圧縮ばね45及び第2圧縮ばね48によって発生し、反力の変化は、大部分が第1圧縮ばね45により発生し、第2圧縮ばね48によるところは僅かである。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1圧縮ばね45及び第2圧縮ばね48の付勢力によって、レバー40は回転中心42を中心として、図4(D)にて時計回りに回転し、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接して元の状態(図4(A))に復帰する。また、上記のようなレバー40の踏み込み量は、踏み込み量センサ49によって検出されて、発生楽音に前記踏み込み量に応じたダンパー効果が付与される。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においては、図5に示すようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの踏み込み量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性を実現することができる。すなわち、カム46の第1領域46a、第2領域46b及び第3領域46cの形状を適切に設定することにより、図5のA2の範囲に相当する操作範囲においては、第1圧縮ばね45に加えて、第2圧縮ばね48によるレバー40への付勢力が変化するようになっている。そして、その他の操作範囲(図5のA1及びA3に相当する範囲)では、第2圧縮ばね48による付勢力はほとんど変化せず又は変化が僅かであって、付勢力の変化の大部分は第1圧縮ばね45によって発生するようになっている。なお、図5のA4の範囲は、アコースティックピアノにおいて、レバー及びリンク機構が各ストッパ部材に当接して、僅かにそれらのストッパ部材を圧縮することによって発生するレバーの踏み込み量と反力の関係を示す。この範囲は、本実施形態に係るペダル装置12において、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接している状態に相当する。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図5のようなアコースティックピアノの特性を実現できる。また、構造が単純であるので、軽量なペダル装置を実現できる。
なお、上記実施形態においては、ペダル装置12を電子楽器のダンパーペダルに適用した。しかし、上記ペダル装置12は、電子楽器のソステヌートペダル、ソフトペダル等のペダルにも適用されるものである。
本発明の実施形態に係るペダル装置が適用された電子楽器の全体構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るペダル装置の側面図である。 図2のカムの構成を示す詳細図である。 (A)〜(D)は、レバーの踏み込み操作時における第1圧縮ばね、第2圧縮ばね及びカムの位置関係を示す図である。 アコースティックピアノのレバーの踏み込み量と反力の変化特性を示す特性グラフである。
符号の説明
10…電子楽器、11…鍵盤、12…ペダル装置、15…音源回路、16…コンピュータ部、40…レバー、41…レバー支持部、43…下限ストッパ、44…上限ストッパ、45…第1圧縮ばね、46…カム、47…押圧部材、48…第2圧縮ばね

Claims (3)

  1. 踏み込み操作により揺動するレバーと、
    前記レバーの踏み込み操作に対抗する反力を前記レバーに与える付勢手段とを備える電子楽器のペダル装置において、
    前記レバーに連動するとともに、前記付勢手段に係合し、前記レバーの踏み込み量に応じて前記反力を変化させるカムであって、前記付勢手段と係合する少なくとも3つの面を有するカムを有し、
    前記反力の変化率を、前記レバーの踏み込み量が第1の所定量未満のとき、第1の変化率に設定し、前記レバーの踏み込み量が前記第1の所定量以上かつ第2の所定量以下の範囲にあるとき、前記第1の変化率よりも大きな第2の変化率に設定し、前記レバーの踏み込み量が前記第2の所定量を超えているとき、前記第2の変化率よりも小さな第3の変化率に設定したことを特徴とする電子楽器のペダル装置。
  2. 前記付勢手段は、第1のばね及び第2のばねから構成され、
    前記第1のばねは、前記カムに係合することなく前記レバーに係合して、前記レバーの踏み込み操作に対抗する反力を前記レバーに直接与え、
    前記第2のばねは、前記カムに係合して、前記レバーの踏み込み操作に対抗する反力を前記カムを介して前記レバーに与えることを特徴とする請求項1に記載の電子楽器のペダル装置。
  3. 前記レバーの踏み込み量が前記第1の所定量未満のとき、前記第2のばねの付勢力が一定に保たれ、
    前記レバーの踏み込み量が前記第1の所定量以上のとき、前記第2のばねの付勢力が変化することを特徴とする請求項に記載の電子楽器のペダル装置。
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