JP5224596B2 - リテーナコッタ組付方法 - Google Patents

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本発明は、シリンダヘッドへのバルブの組付工程において、シリンダヘッドに挿入されたバルブステムにリテーナ及びコッタを組み付けるための方法に関する。
エンジンのシリンダヘッドの給排気口には、バルブが開閉自在に組み付けられる。具体的には、図12に示すように、バルブ110のバルブステム111を内周に嵌合挿入したバルブガイド120と、バルブステムの外周に装着されたバルブスプリング140と、バルブスプリング140とシリンダヘッド100との間に装着されたスプリングシート150と、バルブステム111に嵌挿されると共にバルブガイド120の上端部に嵌着されたステムオイルシール121と、バルブガイド120から上方に飛び出したバルブステム111の端部に取り付けられたリテーナ131及びコッタ132とが設けられる。リテーナ131とシリンダヘッド100(スプリングシート150)との間にはバルブスプリング140が圧縮状態で保持され、このバルブスプリング140の弾性力により、バルブ110に図中上向きの力、すなわちシリンダヘッド100の給排気口101を閉じる方向の力が付勢される。
エンジンの組付ラインでは、図13に示すように、シリンダヘッド加工工程(SH加工工程)で加工されたシリンダヘッド100がシリンダヘッドサブアッシ工程(SHサブアッシ工程)に搬入され、ここでシリンダヘッド100にバルブが組みつけられる。一方、シリンダブロック300は、シリンダブロックサブアッシ工程(SBサブアッシ工程)でクランクシャフトやピストン等が組み付けられる。そして、SHサブアッシ工程を経たシリンダヘッド100とSBサブアッシ工程を経たシリンダブロック300とが組みつけられ(SH/SB組付工程)、その後、カムシャフト組付工程でシリンダヘッド100にカムシャフトが組み付けられる。
上記工程のうち、SHサブアッシ工程は、図14に示すように、バルブガイドの内周にバルブを挿入する工程と、バルブステムの外周にスプリングシート、ステムオイルシール、及びバルブスプリングを装着する工程と、バルブステムの端部にリテーナ及びコッタを組み付ける工程とを順に経て行われる。このうち、リテーナコッタ組付工程として、例えば特許文献1には、バルブスプリングの上にリテーナ及びコッタを載置した後、リテーナ及びコッタを押下パンチにより押圧することにより、バルブスプリングを圧縮しながらリテーナ及びコッタをバルブステムに装着する方法が示されている。
特開平6−320441号公報
ところで、SH加工工程では、図15に示すようにシリンダヘッド100にカムキャップ160をボルト161で固定した状態で、カムシャフト案内面170に仕上げ加工が施される。これにより、シリンダヘッド100とカムキャップ160との組付誤差に関わらず、カムシャフト案内面170が高精度に仕上げられる。こうしてカムキャップ160が装着されたシリンダヘッド100が、SHサブアッシ工程に搬入される。
シリンダヘッド100に取り付けられたカムキャップ160は、図16に示すように、上面視でバルブステム111に近接した位置に配され、これにより、カムシャフトのうち、バルブから負荷を受けるカムの近くをカムキャップで支持するようになっている。この場合、バルブスプリング140とカムキャップ160とが上面視で部分的に重なるため、特許文献1に示されている方法のようにリテーナ及びコッタをバルブスプリングの真上から載置したり押圧しようとすると、リテーナや押圧具がカムキャップと干渉してしまう。このため、SHサブアッシ工程の前で、シリンダヘッドに装着されたカムキャップが一旦取り外される。
SHサブアッシ工程の前で取り外されたカムキャップ160は、図13に示すように、カムシャフト組付工程まで搬送され、カムシャフトを組み付けたシリンダヘッドに固定される。このため、SHサブアッシ工程からカムシャフト組付工程までカムキャップ160を搬送する搬走装置が必要となる。また、カムキャップ160をシリンダヘッド100から取り外してから再び装着するまでの間、カムキャップ160及びシリンダヘッド100はそれぞれ分離して搬送されるため、カムキャップ及びシリンダヘッドの固定面に異物が付着し、両者の組付に支障を来たす恐れがある。
このような不具合は、シリンダヘッドにカムキャップを取り付けたままリテーナコッタ組付工程(SHサブアッシ工程)を行えば、解消される。しかし、上記のように、従来の方法では、カムキャップを取り付けたままリテーナ及びコッタをバルブに組み付けることは困難であった。
本発明の解決すべき課題は、シリンダヘッドにカムキャップを取り付けたまま、シリンダヘッドに挿入したバルブにリテーナ及びコッタを組み付けることができる方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、カムキャップを装着したシリンダヘッドにバルブを組み付けるに際し、シリンダヘッドに挿入されたバルブステムにリテーナ及びコッタを組み付けるための方法であって、シリンダヘッドにバルブスプリングを装着するステップと、リテーナにコッタを載せるステップと、リテーナの軸心を、カムキャップから離反する方向にバルブスプリングの軸心に対してオフセットさせるステップと、リテーナ及びコッタをバルブスプリングの上方から相対的に降下させ、下方に向けて徐々に縮径したリテーナのテーパ状外周面をバルブスプリングの開口部の内周に当接させることで、リテーナの軸心とバルブスプリングの軸心とが一致する方向にリテーナをガイドしながら、リテーナ及びコッタをバルブスプリングの上に載置するステップと、リテーナ及びコッタを上方から押圧してバルブステムに装着するステップとを経て行われるリテーナコッタ組付方法を提供する。
このように、本発明のリテーナコッタ組付方法では、リテーナ及びコッタをバルブスプリングの上方から降下させる際、リテーナの軸心とバルブステムの軸心とをオフセットさせることで、リテーナとカムキャップとの干渉を回避できる。また、リテーナに形成されたテーパ状外周面をバルブスプリングの開口部の内周に当接させることにより、リテーナ及びバルブスプリングの軸心が一致する方向にリテーナがガイドされ、リテーナ及びコッタをバルブスプリングの軸心位置に載置することができる。従って、上記の方法によれば、シリンダヘッドにカムキャップを装着した状態であっても、カムキャップと干渉することなくリテーナ及びコッタをバルブスプリングの軸心位置に載置することができる。
上記の方法において、リテーナ及びコッタを上方から押圧するにあたり、図17に示すようにリテーナ押圧部材233’とカムキャップ160とが軸方向で干渉すると(P部参照)、リテーナ131を押圧することができない。例えば、図18に示すように、外径寸法の小さいリテーナ押圧部材233’’を用いれば、カムキャップ160との干渉を回避することは可能であるが、リテーナ押圧部材233’’自身の強度が低下すると共に、リテーナ押圧部材233’’によるリテーナ131の押圧面積が小さくなるため、押圧力が不足する恐れがある。そこで、カムキャップ160と干渉する領域を除去したリテーナ押圧部材を用いれば、リテーナ押圧部材の強度の低下や押圧面積の縮小を抑えつつ、押圧具とカムキャップとの干渉を確実に回避できる(図5参照)。
以上のように、本発明のリテーナコッタ組立方法によれば、シリンダヘッドにカムキャップを取り付けたまま、シリンダヘッドに挿入したバルブにリテーナ及びコッタを装着することができる。
(a)は、バルブスプリングの上にリテーナ及びコッタを載置する様子を示す軸方向断面図であり、(b)は同平面図である。 バルブスプリングの上にリテーナ及びコッタを載置する様子を示す断面図である。 リテーナコッタ圧入装置の断面図である。 押圧具の断面図である。 (a)はリテーナ押圧部材の軸方向断面図であり、(b)は同平面図である。 リテーナコッタ圧入工程を示す断面図である。 リテーナコッタ圧入工程を示す断面図である。 押圧具による圧入手順を示す断面図である。 押圧具による圧入手順を示す断面図である。 押圧具による圧入手順を示す断面図である。 押圧具による圧入手順を示す断面図である。 シリンダヘッドにバルブを組み付けた状態を示す断面図である。 エンジンの組付ラインの平面図である。 シリンダヘッドのサブアッシ工程のブロック図である。 シリンダヘッド及びカムキャップの断面図である。 バルブスプリング及びカムキャップの平面図(上面視)である。 リテーナ押圧部材とカムキャップが干渉する様子を示す平面図である。 小径なリテーナ押圧部材でリテーナを押圧する様子を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、図14に示すシリンダヘッドのサブアッシ工程のうち、リテーナコッタ組付工程を示している。このサブアッシ工程に搬入されるシリンダヘッド100には、カムキャップ160が装着されている。シリンダヘッド100のバルブガイド120の内周にはバルブ110のバルブステム111が挿入され、バルブガイド110から上方に飛び出したバルブステム111の外周にスプリングシート150、ステムオイルシール121、及びバルブスプリング140が装着される。
以下、本発明の一実施形態に係るリテーナコッタ組付方法を説明する。まず、リテーナ131にコッタ132を載せる。リテーナ131は、図1に示すように、下方へ向けて漸次縮径したテーパ状内周面131aと、同じく下方へ向けて漸次縮径したテーパ状外周面131bと、テーパ状外周面131bの上端部から外径側に水平に延びたスプリング受け面131cとを有する。コッタ132は、略円筒形の部材を中心軸に沿って2分割した一対の部材からなり、円筒状内周面132aと、円筒状内周面から内径向きに突出した環状の凸部132bと、リテーナ131のテーパ状内周面131aと嵌合するテーパ状外周面132cとを有する。コッタ132をリテーナ131の内周に配すると、コッタ132同士が互いに当接すると共に、コッタ132のテーパ状外周面とリテーナ131のテーパ状内周面131aとが嵌合し、これによりコッタ132がリテーナ131の内周に保持される。
次に、リテーナ131及びコッタ132をバルブスプリング140の上方から降下させる。このとき、図1に示すように、リテーナ131の軸心Mとバルブステム111の軸心Nとを、リテーナ131がカムキャップ160から離反する方向にオフセットさせることにより、リテーナ131とカムキャップ160との干渉を回避できる。
リテーナ131及びコッタ132の降下を進めて、リテーナ131をバルブスプリング140に当接させる。このとき、リテーナ131のテーパ状外周面131bが、バルブスプリング140の上端開口部の内周に当接することにより、リテーナ131がバルブスプリング140の軸心N側にガイドされる(図2参照)。また、リテーナ131及びコッタ132がバルブスプリング140に当接することで、バルブスプリング140に振動が発生する。この振動により、リテーナ131を、途中で引っかかることなくバルブスプリング140の軸心位置まで確実に移動させることができる。そして、リテーナ131がバルブスプリング140の上端開口部に嵌り込んだら、リテーナ131のスプリング受け面131cとバルブスプリング140の上端開口部とが当接し、載置が完了する。このとき、リテーナ131の軸心M及びバルブスプリング140の軸心Nは一致している。
上記のようにしてバルブスプリング140の上にリテーナ131及びコッタ132を載置したら、シリンダヘッド100がリテーナコッタ圧入工程に搬送される。
このリテーナコッタ圧入工程で使用されるリテーナコッタ圧入装置200は、図3に示すように、シリンダヘッド100を位置決めする位置決め部220と、リテーナ131及びコッタ132を上方から押圧する押圧具230と、シリンダヘッド100を昇降させる昇降手段(図示省略)とを有する。位置決め手段220は下方に突出した位置決めピン221を有し、本実施形態では、シリンダヘッド100のプラグ穴103に嵌合する位置決めピン221が、プラグ穴103と同数だけ設けられる。
押圧具230は、図4に示すように、バルブステム111と略同径をなしたガイドピン231と、ガイドピン231の外周に配された円筒状のコッタ押圧部材232と、コッタ押圧部材232の外周に配された略円筒状のリテーナ押圧部材233とを有する。押圧具230は、自身の軸心L方向(本実施形態では鉛直方向)で全体が昇降可能であると共に、ガイドピン231、コッタ押圧部材232、及びリテーナ押圧部材233は互いに摺動可能に設けられ、軸心L方向で相対移動可能とされる。
リテーナ押圧部材233は、図5に示すように、カムキャップ160と干渉する領域を除去した形状を成している。具体的には、全体として略中空円筒形状を成し、図5(b)に示す上面視でカムキャップ160と重なる部分を切り欠いている。リテーナ押圧部材233の切り欠き部233aは、少なくともカムキャップ160と干渉し得る軸方向領域において形成される。このようにリテーナ押圧部材233に切り欠き部233aを設けることにより、リテーナ押圧部材233の強度の低下や、リテーナ131を押圧する面積の縮小を招くが、除去されるのはカムキャップ160との干渉を回避する最小限の領域だけであるため、例えばリテーナ押圧部材の外径を小さくする場合(図18参照)と比べて、リテーナ押圧部材233の強度の低下や押圧面積の縮小を抑えることができる。また、切り欠き部233aを設けることにより、リテーナ押圧部材233の内孔の位置や形状等は変わらない。従って、切り欠き部233aを設けない場合と同様に、リテーナ押圧部材233の内孔に円筒形状のコッタ押圧部材232をバルブ100と同軸上に配することができるため、コッタ押圧部材232によりコッタ132の上端面の全周をバランスよく押圧することができる。
このリテーナコッタ圧入工程では、まず、パレット210に載置されたシリンダヘッド100がリテーナコッタ圧入装置200内に搬入された後、パレット210及びシリンダヘッド100が昇降手段により持ち上げられ(図3の矢印参照)、シリンダヘッド100のプラグ穴103に位置決めピン221が嵌合挿入される(図6参照)。これにより、シリンダヘッド100がリテーナコッタ圧入装置200内で所定位置に位置決めされる。その後、シリンダヘッド100、パレット210、及び位置決め部220を一体にチルトさせ、押圧具230の軸心Lとバルブ110の軸心Nとを一致させる(図7参照)。図示例では、押圧具230の軸心Lが鉛直方向に設けられており、上記のチルトによりバルブ110の軸心Nが鉛直方向とされる。
この状態で、押圧具230を上方から降下させ、リテーナ131及びコッタ132を鉛直方向上方から押圧することで、リテーナ131及びコッタ132をバルブステム111に圧入する。この押圧具230による圧入手順を図8〜図11を用いて説明する。尚、こられの図は、リテーナ押圧部材233のうち、切り欠き部233aを含まない軸方向断面を示している。
まず、押圧具230全体を降下させ、リテーナ押圧部材233の下端部をリテーナ131の上端面に当接させ、バルブスプリング140の弾性力に抗してリテーナ131を押し下げる。さらに押圧具230を降下させ、ガイドピン231をコッタ132の内周に挿入してコッタ132を外径側に押し広げながら、コッタ押圧部材232でコッタ132の上端面を押圧する(図8参照)。さらに押圧具230を降下させてリテーナ131及びコッタ132を押し下げられ、コッタ132の内周面の凸部132bがバルブステム111に設けられた環状溝111aを越えて下方に配される(図9参照)。
その後、押圧具230を上昇させると、リテーナ131がバルブスプリング140の弾性力により持ち上げられる。これに伴って、リテーナ131の内周面とテーパ嵌合したコッタ132が、内径向きの力を受けながら持ち上げられる。コッタ132の凸部132bがバルブステム111の環状溝111aの位置に達したら、両者が嵌合する(図10参照)。さらに押圧具230を上昇させると、コッタ132とバルブステム111とが軸方向に係合した状態でリテーナ131のみが上昇し、リテーナ131のテーパ状内周面131aとコッタ132のテーパ状外周面132cとがテーパ嵌合する(図11参照)。これにより、リテーナ131の上昇が規制され、リテーナ131とシリンダヘッド100(スプリングシート150)との間にバルブスプリング140が圧縮状態で保持される。以上により、リテーナ131及びコッタ132の組付が完了する。
100 シリンダヘッド
110 バルブ
111 バルブステム
131 リテーナ
132 コッタ
140 バルブスプリング
150 スプリングシート
160 カムキャップ
200 リテーナコッタ圧入装置
230 押圧具
231 ガイドピン
232 コッタ押圧部材
233 リテーナ押圧部材

Claims (2)

  1. カムキャップを装着したシリンダヘッドにバルブを組み付けるに際し、シリンダヘッドに挿入されたバルブステムにリテーナ及びコッタを組み付けるための方法であって、
    シリンダヘッドにバルブスプリングを装着するステップと、
    リテーナにコッタを載せるステップと、
    リテーナの軸心を、カムキャップから離反する方向にバルブスプリングの軸心に対してオフセットさせるステップと、
    リテーナ及びコッタをバルブスプリングの上方から相対的に降下させ、下方に向けて徐々に縮径したリテーナのテーパ状外周面をバルブスプリングの開口部の内周に当接させることで、リテーナの軸心とバルブスプリングの軸心とが一致する方向にリテーナをガイドしながら、リテーナ及びコッタをバルブスプリングの上に載置するステップと、
    リテーナ及びコッタを上方から押圧してバルブステムに装着するステップとを経て行われるリテーナコッタ組付方法。
  2. カムキャップと干渉する領域を除去した押圧具で、リテーナ及びコッタを上方から押圧してバルブステムに装着する請求項1記載のリテーナコッタ組付方法。
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