上記の本発明の医療用接続ポートにおいて、前記係合構造が、前記オス型コネクタに設けられた係止爪と係合する第1段差部及び第2段差部を含むことが好ましい。この場合、前記第1接続状態において、前記係止爪が前記第1段差部と係合し、前記第2接続状態において、前記係止爪が前記第2段差部と係合することが好ましい。これにより、係止爪を備えた公知のオス型コネクタに適応した医療用接続ポートを実現できる。
前記第2接続状態から前記オス型コネクタと前記医療用接続ポートとを分離した分離状態に変化した後も、前記ガス流路の遮断状態が維持されることが好ましい。これにより、分離状態において、ガス流路を通じて医療用容器内の液状物が漏れ出すのを防止できる。
上記の本発明の医療用接続ポートは、前記第1接続状態から前記第2接続状態に変化するときの前記オス型コネクタの移動によって移動せしめられる可動部材を更に備える。前記第1接続状態から前記第2接続状態に変化するとき前記可動部材が移動して前記ガス流路を遮断する。これにより、医療用接続ポートとオス型コネクタとの接続状態を、第1接続状態から第2接続状態へ変化させると、ガス流路が自動的に遮断されるので、使い勝手の良い医療用接続ポートを実現できる。
この場合、前記第1接続状態から前記第2接続状態に変化するとき、前記可動部材は前記弁に対する前記管体部の挿入方向と平行な方向に移動することが好ましい。これにより、構造が簡単な医療用接続ポートを実現できる。
前記第1接続状態において前記可動部材がその自重によって移動して前記ガス流路を遮断するのを防止する、前記可動部材の第1移動制限機構が設けられていることが好ましい。これにより、第1接続状態にてEOG滅菌処理を行う際に、医療用容器内に滅菌ガスを確実に導入することができる。
前記第2状態から前記オス型コネクタと前記医療用接続ポートとを分離した分離状態に変化した後に前記可動部材がその自重によって移動して前記ガス流路の遮断状態を解除するのを防止する、前記可動部材の第2移動制限機構が設けられていることが好ましい。これにより、分離状態において意図せずにガス流路が形成され、ガス流路を通じて医療用容器内の液状物が漏れ出すのを確実に防止できる。
前記ガス流路の主要部が、前記弁に対する前記管体部の挿入方向と平行な方向に沿って形成されていても良い。あるいは、前記ガス流路の主要部が、前記弁に対する前記管体部の挿入方向と交差する方向に沿って形成されていても良い。
以下、本発明を好適な実施の形態を示しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる医療容器セット900を示した図である。この医療容器セット900は、医療用容器910と医療用チューブセット970とからなる。
医療用容器910は、容器本体920と医療用接続ポート931とからなる。容器本体920は、柔軟で可撓性を有する同一寸法の略長方形状の2枚のシート921を重ね合わせて、その周縁のシール領域922にて接合してなる袋状物(いわゆるパウチ)である。医療用接続ポート931が、容器本体920のシール領域922に、2枚のシート921間に挟まれた状態で取り付けられている。
シート921の材料は、特に制限はないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレン−メタクリレート共重合体等が挙げられる。シート材921の厚みは、特に制限はないが、例えば、0.1〜0.4mm程度が適当である。容器本体920の平面視形状についても特に制限はなく、例えば、長方形状、楕円形状等であってもよい。
医療用チューブセット970は、液状物を搬送する可撓性を有するチューブ971と、チューブ971の一端に接続されたオス型コネクタ800とを少なくとも備える。医療用チューブセット970の構成は特に制限はなく、医療用途において使用される公知のセットを使用できる。チューブ971の他端には、穿刺体(合成樹脂又は金属製の針)等のコネクタ(図示せず)が取り付けられていても良い。また、チューブ971の途中には、流路の開閉を行うためのクランプ972や点滴筒(図示せず)などが設けられていても良い。
図2は本発明の実施の形態1にかかる医療用接続ポート931の概略構成を示した斜視図、図3は図2の3−3線に沿った断面図である。
図2に示すように、医療用接続ポート931は、基台940と、基台940に設けられた第1接続ポート100及び第2接続ポート700とからなる。以下の説明の便宜のために、図示したように、第1接続ポート100及び第2接続ポート700の各中心軸と平行な方向をZ軸、Z軸と直交し且つ第1接続ポート100の中心軸と第2接続ポート700の中心軸とを結ぶ方向をX軸、Z軸及びX軸と直交する方向をY軸とする。Z軸方向において、基台940に対して第1接続ポート100が設けられた側(Z軸の矢印の側、即ち図3の紙面上側)を「上側」と呼び、その反対側(図3の紙面下側)を「下側」と呼ぶ。基台940は、XY面と平行な板状の平板部941と、平板部941の周囲を取り囲んで連続し、且つ平板部941に対して一方の側(下側)に向かってZ軸と平行に立設された周囲壁942とを備える。
周囲壁942を容器本体920を構成する2枚のシート921の周縁間に挟んだ状態で2枚のシート921の周縁をシール(例えば、ヒートシール、超音波シール)することで、シール領域922を形成するのと同時に医療用接続ポート931と容器本体920とを接合し一体化することができる(図1参照)。
図3に示すように、平板部941には、いずれも平板部941を貫通し且つその端縁形状が円形である第1開口951、第2開口952、第3開口953が形成されている。第3開口953は第1開口951の近傍に形成されている。
第1開口951と連通して第1接続ポート100が設けられている。第1接続ポート100の構成は、特に制限はなく、例えば上記特許文献1に開示されたものと同じであっても良い。本実施の形態の第1接続ポート100は、図2及び図3に示すように、第1開口951と連通した円筒状の筒状部101と、筒状部101の上側端の開口を封止する隔壁部材180と、隔壁部材180を筒状部101に固定するカバー部材190とからなる。筒状部101は、平板部941上に、平板部941の第1開口951の端縁に沿って、周囲壁942とは反対側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。
隔壁部材180は、中央部に直線状のスリット181(図2参照)が形成されたディスク状の弁である。カバー部材190は、中央に開口191を有する略円板形状を有しており、その基台940に対向する側の面に、開口191を取り囲むように円筒状の嵌入筒192が立設されている。
筒状部101の上側端近傍の内周面に、環状に突出した支持部102が形成されている。支持部102に隔壁部材180を載置し、次いで、カバー部材190の嵌入筒192を筒状部101内に嵌入させる。これにより、隔壁部材180は、その外周部分が支持部102とカバー部材190とで挟まれた状態で、筒状部101の上側端に固定される。このとき、カバー部材190の中央の開口191内に、隔壁部材180のスリット181が露出する。
筒状部101の外周面には、その周方向に連続する環状の窪みである第1段差部111及び第2段差部112が形成されている。第2段差部112は第1段差部111よりも基台940側(下側)に位置している。
図4は、筒状部101の近傍に形成された第3開口953及びその周辺構造を示した分解斜視図である。図5は、第3開口953の中心を通る、XZ面と平行な平面及びYZ面と平行な平面に沿った基台940の拡大断面図である。円筒状の外側筒状部121が、平板部941の下面に、周囲壁942と同じ側(下側)に向かってZ軸と平行に立設されている。第3開口953の周囲には、Z軸に沿って見た形状が円形である陥部123が形成されている。陥部123の上面は平板部941の上面よりも下側に位置し、陥部123の内径は外側筒状部121の内径よりも大きい。外側筒状部121の内側には、外側筒状部121と同軸に円筒状の内側筒状部125が配置されている。外側筒状部121と内側筒状部125とは、中央が開口した環状の底板127を介して接続されている。即ち、底板127の外周側端縁は外側筒状部121の下側端と接続され、底板127の内周側端縁は内側筒状部125の下側端と接続されている。この結果、第3開口953内に配置された内側筒状部125の中央の中空孔126が、平板部941の両側の空間をZ軸方向に連通させている。外側筒状部121の内周面には、周方向に連続した環状の環状突起122が形成されている。Z軸方向において、環状突起122は、底板127及び平板部941からほぼ等距離の位置に設けられている。
第3開口953には、可動部材130が上側から下側に向かって挿入される。図6は、可動部材130の斜視図である。図7(A)は可動部材130の正面図、図7(B)は可動部材130の側面図、図7(C)は図7(A)の7C−7C線に沿った可動部材130の矢視断面図である。
可動部材130は、円板状の上板131と、上板131の下面に下方に向かって立設された略円筒状の筒状部132と、上板131の下面に下方に向かって立設された略円柱状の柱状部139とを備えている。柱状部139は、筒状部132の内側に、筒状部132から離間して、筒状部132と同軸に配置されている。筒状部132は、相対的に大きな外径を有する径大部132aと、相対的に小さな外径を有する径小部132bとを有する。径大部132aは上板131側に配置されている。筒状部132の径小部132bには、筒状部132の下端から所定深さの一対の切り欠き133が形成されている。また、筒状部132の径小部132bの外周面には、一対の第1係止爪134と、一対の第2係止爪135とが、外方向に突出して形成されている。一対の第1係止爪134及び一対の第2係止爪135は、いずれも筒状部132の中心軸に対して対称位置に設けられている。Z軸方向において、一対の第1係止爪134は筒状部132の下端近傍の位置に設けられており、一対の第2係止爪135は、一対の第1係止爪134よりも上板131側の位置に設けられている。
図2及び図3に示すように、第2開口952と連通して第2接続ポート700が設けられている。第2接続ポート700の構成は特に制限はなく、例えば上記特許文献1に開示されたものと同じであっても良い。本実施の形態の第2接続ポート700は、第2開口952と連通した筒状の台座部701と、台座部701内に嵌入されて台座部701の上側端の開口を封止する栓体702とからなる。台座部701は、平板部941上に、平板部941の第2開口952の端縁に沿って、周囲壁942とは反対側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。
隔壁部材180及び栓体702を除く医療用接続ポート931を構成する各部品の材料、特に制限はないが、硬質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂を含む硬質プラスチックであると好ましい。これらの各部品は、それぞれこれらの材料を用いて射出成形などにより一体成形することができる。
隔壁部材180の材料は、特に制限はなく、一般的なゴム状弾性を示す材料が好ましく、例えば硬度JIS−A硬度が20〜60の材料を好ましく用いることができる。具体的には、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムやニトリルゴム等の合成ゴム、または熱可塑性エラストマー等を例示できる。
栓体702の材料も特に制限はなく、従来から医療用容器の接続ポートを構成する栓体の材料として公知の材料であれば、いずれであってもよい。具体的には、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等のゴム状弾性を示す材料を例示できる。
第1接続ポート100にはオス型コネクタが着脱可能に接続される。オス型コネクタの構成は特に制限はなく、例えば上記特許文献1に開示されたものと同じであっても良い。図8は、第1接続ポート100に着脱可能に接続されるオス型コネクタ800の斜視図である。図9(A)はオス型コネクタ800の正面図、図9(B)はオス型コネクタ800の側面図、図9(C)は図9(B)の9C−9C線に沿ったオス型コネクタ800の断面図である。
オス型コネクタ800は、その中央に、液状物が通過する筒状の通液部801を有する。通液部801は、互いに連通した管体部802と基端部803とからなる。オス型コネクタ800を第1接続ポート100に後述する第2接続状態にて接続したとき、管体部802は、第1接続ポート100の隔壁部材180に形成されたスリット181に挿入される。基端部803には、医療用チューブセット970のチューブ971(図1参照)が接続される。説明の便宜のため、通液部801の長手方向軸をZ軸とする。
通液部801の管体部802を取り囲むように、略円筒状のフード810が配置されている。一対の連結部811がフード810と通液部801とを接続している。
通液部801の中心軸に対して対称位置に、一対のロックレバー820が配置されている。ロックレバー820は、Z軸方向とほぼ平行に延在し、管体部802側に係止片821を有し、基端部803側に操作片822を有する。ロックレバー820は、係止片821と操作片822との間の位置(即ちロックレバー820のZ軸方向のほぼ中央位置)に設けられた弾性連結部829を介して通液部801に接続されている。係止片821はフード810に形成された切り欠き812内に配置され、操作片822はZ軸方向にフード810よりも基端部803側に突出している。一対のロックレバー820の一対の操作片822を、互いに接近するように指でつまむと、弾性連結部829が弾性変形して、一対の係止片821が互いに離間するように変位する。この状態から、一対の操作片822から指を離すと、弾性連結部829が弾性回復して一対の係止片821が互いに接近して初期状態に戻る。係止片821の管体部802に対向する面には、管体部802に向かって係止爪823が立設されている。係止爪823は、傾斜面823aと、傾斜面823aよりも操作片822側に位置する係止面823bとを含む。傾斜面823aは、係止片821の厚みが操作片822側ほど厚くなるようにZ軸に対して傾斜している。係止面823bは、Z軸に対してほぼ垂直である。
オス型コネクタ800の材料は、特に制限はないが、管体部802を隔壁部材180に形成されたスリット181に挿入させるために必要な硬度と、ロックレバー820を揺動可能にするのに必要な弾性(可撓性)とを有することが好ましい。例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が好適である。
以上のように構成された本実施の形態1の医療用接続ポート931の第1接続ポート100に対してオス型コネクタ800を着脱する際の動作を以下に説明する。
最初に、図5に示すように、可動部材130を基台940の平板部941に形成された第3開口953内にZ軸と平行な方向に沿って挿入する。次いで、第1接続ポート100にオス型コネクタ800のフード810をZ軸と平行な方向に沿って外挿して、第1接続ポート100とオス型コネクタ800とを第1接続状態にて接続する。
図10〜図12は、第1接続ポート100とオス型コネクタ800との第1接続状態を示した図であり、図10はその斜視図、図11は第1接続ポート100の中心軸を含むXZ面に平行な面での断面図、図12は第3開口953の周辺部のXZ軸と平行な面に沿った拡大断面図である。図10及び図11では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート931に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970との図示を省略している(図1参照)。
図11に示すように、第1接続状態では、第1接続ポート100の筒状部101の外周面に形成された第1段差部111にオス型コネクタ800の係止爪823が嵌入する。このとき、係止爪823の係止面823bが第1段差部111の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第1段差部111と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート100とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。また、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に接近又は接しているが、隔壁部材180に形成されたスリット181(図2参照)には挿入されていない。オス型コネクタ800のフード810の下端が可動部材130の上板131の上面に接近又は接触しており、これが可動部材130が第3開口953から脱落するのを防止している。
図12に示すように、可動部材130の筒状部132は、外側筒状部121と内側筒状部125との間の隙間に挿入されている。そして、可動部材130の筒状部132の下端近傍に設けられた一対の第1係止爪134が、外側筒状部121の内周面に突出した環状の環状突起122と当接し、これにより可動部材130が更に下方に移動するのが規制されている。即ち、一対の第1係止爪134と環状突起122とは、第1接続状態において、可動部材130がその自重や振動などによって第3開口953内に更に進入するのを防止する、可動部材130の第1移動制限機構として機能する。従って、可動部材130の柱状部139が内側筒状部125内に意図せずに挿入されて(後述する図15参照)、後述するガス流路140が遮断されることがない。
外側筒状部121の内径(環状突起122が形成されていない位置での内径)DIN121は可動部材130の筒状部132の径大部132aの外径DOUT132よりも大きく、内側筒状部125の外径DOUT125は筒状部132の内径DIN132よりも小さい。従って、図12に示した第1接続状態では、外側筒状部121の内周面と筒状部132の外周面との間の隙間、一対の切り欠き133(図6参照)、内側筒状部125の外周面と筒状部132の内周面との間の隙間、及び、内側筒状部125の中央の中空孔126が連通し、医療用容器910の内外間でガスの通過を可能にするガス流路140(図5参照)が形成される。
第1接続状態から、オス型コネクタ800を基台940に向かってZ軸と平行な方向に沿って更に押し込むと、第1接続ポート100とオス型コネクタ800とを第2接続状態にて接続することができる。
図13〜図15は、第1接続ポート100とオス型コネクタ800との第2接続状態を示した図であり、図13はその斜視図、図14は第1接続ポート100の中心軸を含むXZ面に平行な面での断面図、図15は可動部材130の周辺部のXZ面と平行な面に沿った拡大断面図である。図13及び図14では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート931に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970との図示を省略している(図1参照)。
図11に示した第1接続状態からオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、オス型コネクタ800の係止爪823の傾斜面823aが筒状部101の外周面に形成された第1段差部111の下側の端縁と当接して、ロックレバー820が弾性変位する。従って、係止爪823と第1段差部111との係合状態が自動的に解除される。更にオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、図14に示すように、オス型コネクタ800の係止爪823が筒状部101の外周面に形成された第2段差部112に嵌入して、第2接続状態となる。このときも、係止爪823の係止面823bが第2段差部112の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第2段差部112と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート100とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、オス型コネクタ800の管体部802は、第1接続ポート100の隔壁部材180に向かってZ軸と平行な方向に沿って移動する。そして、第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に形成されたスリット181(図4参照)に挿入されている。従って、オス型コネクタ800の通液部801の基端部803に接続された医療用チューブセット970(図1参照)と、医療用接続ポート931に一体化された容器本体920(図1参照)の内部空間とが連通する。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、可動部材130の上板131の上面はオス型コネクタ800のフード810の下端から下向きの押力を受け、可動部材130はZ軸と平行な方向に沿って下方に移動する。この過程で、可動部材130の筒状部132の外周面に設けられた一対の第1係止爪134及び一対の第2係止爪135は、外側筒状部121の内周面に突出した環状突起122を順に乗り越える。また、可動部材130の上板131が、基台940の第3開口953の周囲に形成された陥部123内に嵌入する。そして、第2接続状態では、図15に示すように、可動部材130の上板131の上面と基台940の平板部941の上面とがほぼ同一平面をなす。また、可動部材130の一対の第2係止爪135が外側筒状部121の環状突起122と係合する。一対の第2係止爪135と環状突起122とが係合し、且つ、可動部材130の上板131の上面の少なくとも一部をフード810が覆っているので、可動部材130が第3開口953から抜け落ちることはない。
第2接続状態では、可動部材130の柱状部139が内側筒状部125内に嵌入されている。柱状部139の外径DOUT139は内側筒状部125の内径DIN125とほぼ同じか、これより僅かに大きいので、柱状部139の外周面と内側筒状部125の内周面とが密着する。従って、第1接続状態において可動部材130の筒状部132及び柱状部139の表面に沿って形成された上記のガス流路140(図5参照)が閉塞(遮断)される。
第2接続状態において、オス型コネクタ800の一対のロックレバー820の一対の操作片822を互いに接近するように指でつまむと、オス型コネクタ800の係止爪823と第1接続ポート100の第2段差部112との係合状態が解除される。この状態でオス型コネクタ800を第1接続ポート100に対してZ軸と平行な方向に沿って上方に移動させると、図16に示すように、オス型コネクタ800と第1接続ポート100とが分離された分離状態となる。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に形成されたスリット181から抜き取られ、スリット181が閉じられる。
一方、可動部材130の基台940に対する相対的関係は、第2接続状態から分離状態に変化しても何ら変化しない。即ち、第2接続状態において形成された、可動部材130の一対の第2係止爪135と外側筒状部121の環状突起122と係合状態(図15参照)は、分離状態においても維持され、これにより可動部材130が第3開口953から抜け出るのが防止される。即ち、一対の第2係止爪135と環状突起122とは、分離状態において、可動部材130がその自重や振動などによってZ軸と平行な方向に沿って上側に向かって移動するのを防止する、可動部材130の第2移動制限機構として機能する。従って、可動部材130の柱状部139が基台940の内側筒状部125から意図せずに抜け出ることで上記のガス流路140の遮断状態が解除されることがない。
また、上記の第2接続状態(図15参照)と同様に、可動部材130の上板131は、基台940の第3開口953の周囲に形成された陥部123内に嵌入し、可動部材130の上板131の上面と基台940の平板部941の上面とがほぼ同一平面をなしている。このことと、上記の第2移動制限機構とが相俟って、作業者が可動部材130を基台940から意図的に抜き取ることを困難にしている。
以上のように、本実施の形態1の第1接続ポート100は、オス型コネクタ800の管体部802が抜き差しされることで開閉される弁としての隔壁部材180と、オス型コネクタ800の係止爪823と係合する係合構造としての第1段差部111及び第2段差部112とを備える。そして、第1接続ポート100とオス型コネクタ800との接続状態を、第1接続状態、第2接続状態、分離状態に順に切り替えることができる。このような第1接続ポート100は例えば以下のように使用することができる。
オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート100の第1段差部111と係合する第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に挿入されないが、基台940に形成された第3開口953を利用したガス流路140を通じて容器本体920の内外間でガスの通過が可能である。従って、医療用容器910の医療用接続ポート931の第1接続ポート100と医療用チューブセット970のオス型コネクタ800とをこの第1接続状態で接続してEOG滅菌処理を行えば、滅菌ガスを上記ガス流路140を通じて容器本体920内に流入させることができるので、容器本体920内を同時に滅菌処理することができる。しかも、第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に挿入されていないので、EOG滅菌処理時の高温によって隔壁部材180が永久変形してしまうことにより隔壁部材180のリシール性が消失してしまうという問題は生じない。
第1接続状態にてEOG滅菌処理をした医療用容器910及び医療用チューブセット970は第1接続状態のままで病院等の医療機関に納入されることが好ましい。そして、医療機関において医療用容器910内に液状物を注入する必要が生じた際に、第1接続状態から第2接続状態に切り替えることが好ましい。切り替えは、オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート100の第2段差部112と係合するまで、オス型コネクタ800を第1接続ポート100に対して押し込むだけで足りる。このようにすれば、EOG滅菌処理をした後から医療用容器910内に液状物を注入するまでの間に、第1接続ポート100の隔壁部材180やオス型コネクタ800の管体部802が人手に触れることがないので、これらの滅菌状態を容易に維持することができる。
第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180のスリット181に挿入される。従って、医療用チューブセット970を通じて医療用容器910内に液状物を注入することができる。また、第2接続状態では、上記ガス流路140は可動部材130によって遮断される。従って、医療用容器910内に注入された液状物がガス流路140を通じて漏れ出すことがない。
第2接続状態にて医療用容器910内に液状物を注入した後は、オス型コネクタ800と第1接続ポート100とを分離して分離状態とするのが好ましい。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート100の隔壁部材180に形成されたスリット181から抜き取られる。管体部802が隔壁部材180に挿入されていない第1接続状態でEOG滅菌処理を施しておくことにより、隔壁部材180のリシール性は消失しないから、スリット181は確実にシールされる。また、分離状態においても、上述したガス流路140は可動部材130によって遮断された状態が維持される。従って、医療用容器910のシール性が確保され、医療用容器910内に貯留した液状物が隔壁部材180のスリット181やガス流路140を通じて外部に漏れ出すことがない。
医療用容器910内の液状物に薬液等を混注するには、分離状態にて、第1接続ポート100の隔壁部材180に形成されたスリット181に、針なし注射器の先端(雄ルアー)を挿入して行うことが出来る。あるいは、第2接続ポート700の栓体702に注射器の金属針を突き刺して行っても良い。
医療用容器910内に注入された液状物の患者への投与は、第1接続ポート100又は第2接続ポート700に送液ラインのチューブを接続することにより行うことが出来る。第1接続ポート100に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた針なし注射器の先端(雄ルアー)を隔壁部材180に形成されたスリット181に挿入すればよい。あるいは、第1接続ポート100に、送液ラインの一端に取り付けられたオス型コネクタ800を上記の第2接続状態にて接続しても良い。第2接続ポート700に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた金属針を栓体702に突き刺せばよい。
(実施の形態2)
図17は本発明の実施の形態2にかかる医療用接続ポート932の概略構成を示した斜視図、図18は図17のXZ面に平行な18−18線に沿った断面図、図19は図17のYZ面に平行な19−19線に沿った断面図である。本実施の形態2にかかる医療用接続ポート932は、第1接続ポート及びその周辺構造において実施の形態1にかかる医療用接続ポート931と異なる。本実施の形態2では、実施の形態1で説明した要素と同一の構造又は機能を有する要素には同一の符号を付している。実施の形態1と重複する説明を省略し、実施の形態1と異なる点を説明する。
図17に示すように、医療用接続ポート932は、基台940と、基台940に設けられた第1接続ポート200及び第2接続ポート700とからなる。実施の形態1と同様に、図示したように、第1接続ポート200及び第2接続ポート700の各中心軸と平行な方向をZ軸、Z軸と直交し且つ第1接続ポート200の中心軸と第2接続ポート700の中心軸とを結ぶ方向をX軸、Z軸及びX軸と直交する方向をY軸とする。Z軸方向において、基台940に対して第1接続ポート200が設けられた側(Z軸の矢印の側、即ち図18の紙面上側)を「上側」と呼び、その反対側(図18の紙面下側)を「下側」と呼ぶ。
実施の形態1の医療用接続ポート931に替えて本実施の形態2の医療用接続ポート932を用いて医療用容器910を構成することができる。即ち、実施の形態1の医療用接続ポート931と同様に、周囲壁942が容器本体920を構成する2枚のシート921の周縁間に挟まれた状態で医療用接続ポート932と容器本体920とが一体化されて医療用容器910が構成される(図1参照)。
図18に示すように、平板部941には、いずれも平板部941を貫通し且つその端縁形状が円形である第1開口951、第2開口952、第3開口953が形成されている。第3開口953は第1開口951の近傍に形成されている。
第1開口951と連通して第1接続ポート200が設けられている。第1接続ポート200の構成は、特に制限はなく、例えば上記特許文献1に開示されたものと同じであっても良い。本実施の形態の第1接続ポート200は、図17及び図18に示すように、第1開口951と連通した円筒状の筒状部201と、筒状部201の上側端の開口を封止する隔壁部材280と、隔壁部材280を筒状部201に固定するカバー部材290とからなる。筒状部201は、平板部941上に、平板部941の第1開口951の端縁に沿って、周囲壁942とは反対側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。筒状部201の上側端の近傍には小径部202が設けられている。小径部202の外径は、これより下側の筒状部201の部分の外径よりも小さい。
隔壁部材280は、中央部に直線状のスリット281が形成されたディスク状の弁である。カバー部材290は、中央に開口291を有する略円板形状を有しており、その基台940に対向する側の面に、開口291を取り囲むように略円筒状の嵌合筒292が立設されている。嵌合筒292の外周面には、その周方向に連続する環状の窪みである第1段差部211が形成されている。
筒状部201の上側端面に隔壁部材280を載置し、次いで、カバー部材290の嵌合筒292の内周面と筒状部201の小径部202の外周面とを嵌合させる。これにより、隔壁部材280は、その外周部分が筒状部201の上側端面とカバー部材290とで挟まれた状態で、筒状部201の上側端に固定される。このとき、カバー部材290の中央の開口291内に、隔壁部材280のスリット281が露出する。
筒状部201とカバー部材290の嵌合筒292とを上記のように嵌合させると、嵌合筒292の下端より下側に、小径部202の外周面の一部が露出する。小径部202の外径は嵌合筒292の外径よりも小さい。この露出した小径部202の部分が、第1接続ポート200の周方向に連続する環状の窪みである第2段差部212を形成する。第2段差部212は第1段差部211よりも基台940側(下側)に位置している。
筒状部201の外周面を取り囲むように、外筒220が、平板部941上に周囲壁942とは反対側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。筒状部201と外筒220とは互いに離間し、両者間に環状溝221が形成されている。外筒220の筒状部201と対向する内周面は、筒状部201と共通する中心軸を有する円筒面である。環状溝221内に、可動部材230が上側から下側に向かって嵌入されている。
図20は、筒状部201の近傍に形成された第3開口953及びその周辺構造を示した斜視図である。図20では、可動部材230の図示を省略している。外筒220の内周面には、いずれもZ軸と平行に延びた摺動溝222と一対の案内溝223とが形成されている(一対の案内溝223のうちの1つは筒状部201によって見えない)。また、筒状部201の外周面には、一対の案内溝223に対向する位置に、Z軸と平行に延びた一対の逃げ溝203が形成されている(一対の逃げ溝203のうちの1つは筒状部201によって見えない)。
図18及び図20に示されているように、摺動溝222は、Z軸方向において、外筒220の上端から下端(即ち、平板部941)にまで形成されている。第3開口953は、摺動溝222が平板部941と交差する位置に形成されている。第3開口953と連通した円筒状の筒状部228が、平板部941上に、筒状部101及び外筒220と同じ側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。
図19に示されているように、案内溝223は、Z軸方向において、外筒220の上端から所定高さまで形成されている。外筒220の、案内溝223の下端224よりも下側の位置に、外筒220をY軸方向に貫通する係止孔225が形成されている。逃げ溝203は、Z軸方向において、小径部202から外筒220の下端(即ち、平板部941)にまで形成されている。
図21は可動部材230の斜視図である。図22(A)は可動部材230の正面図、図22(B)は可動部材230の側面図、図22(C)は図22(A)の22C−22C線に沿った可動部材230の矢視断面図である。
可動部材230は、全体として略円筒形状を有しており、その下端近傍の外周面に外方向に向かって突出した一対の係止爪231が形成されている。各係止爪231を周方向に挟むように、可動部材230の下端から所定深さのスリット233が形成されている。従って、一対のスリット232で挟まれた係止爪231を含む係止片232は可動部材230の中心軸を中心とする半径方向に弾性変位可能である。
可動部材230の外周面に、Z軸と平行に延びた摺動突起235が形成されている。摺動突起235の下端面には、Z軸と平行に柱状部236が突出している。柱状部236は、摺動突起235に近い側に略円柱形状を有する封止部237を有し、摺動突起235から遠い側に通気部238を有する。通気部238の外周面には、Z軸方向に延びた複数の溝が形成されている。
可動部材230の材料は、特に制限はないが、実施の形態1の可動部材130の材料と同様に、硬質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂を含む硬質プラスチックであると好ましい。可動部材230は、これらの材料を用いて射出成形などにより一体成形することができる。
以上のように構成された本実施の形態2の医療用接続ポート932の第1接続ポート200に対してオス型コネクタ800を着脱する際の動作を以下に説明する。
最初に、図17に示すように、可動部材230を、基台940の平面部941に形成された筒状部201と外筒220との間の環状溝221内にZ軸と平行な方向に沿って挿入する。このとき、外筒220の摺動溝222内に可動部材230の摺動突起235が嵌入し、外筒220の一対の案内溝223内に可動部材230の一対の係止爪231が嵌入する。次いで、第1接続ポート200にオス型コネクタ800のフード810をZ軸と平行な方向に沿って外挿して、第1接続ポート200とオス型コネクタ800とを第1接続状態にて接続する。
図23〜図25は、第1接続ポート200とオス型コネクタ800との第1接続状態を示した図であり、図23はその斜視図、図24(A)は図23の24A−24A線、即ち第1接続ポート200の中心軸を含むYZ面に平行な面での矢視断面図、図24(B)は図23の24B−24B線、即ち第1接続ポート200の中心軸を含むXZ面に平行な面での矢視断面図、図25は第3開口953の周辺部のXZ軸と平行な面に沿った拡大断面図である。図23、図24(A)及び図24(B)では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート932に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970との図示を省略している(図1参照)。
図24(B)に示すように、第1接続状態では、第1接続ポート200のカバー部材290の外周面に形成された第1段差部211にオス型コネクタ800の係止爪823が嵌入する。このとき、係止爪823の係止面823bが第1段差部211の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第1段差部211と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート200とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。また、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に接近又は接しているが、隔壁部材280に形成されたスリット281(図17参照)には挿入されていない。オス型コネクタ800のフード810の下端が可動部材230の上面に接近又は接触しており、これが可動部材230が環状溝221から脱落するのを防止している。
図25に示すように、第1接続状態では、第3開口953と連通した円筒状の筒状部228に、可動部材230の柱状部236の通気部238の下端を含む一部のみが嵌入している。図21に示したように、通気部238の外周面にはZ軸方向に延びた複数の溝が形成されている。従って、図25に示す第1接続状態では、通気部238の外周面の溝に沿って、医療用容器910の内外間でガスの通過を可能にするガス流路240が形成される。
図24(A)に示すように、可動部材230の一対の係止爪231が外筒220の一対の案内溝223の下端224と当接し、これにより可動部材230が更に下方に移動するのが規制されている。即ち、一対の係止爪231と一対の案内溝223の下端224とは、第1接続状態において、可動部材230がその自重や振動などによって環状溝221内に更に進入するのを防止する、可動部材230の第1移動制限機構として機能する。従って、可動部材230の柱状部236の封止部237が筒状部228内に意図せずに挿入されて(後述する図28参照)、ガス流路240が遮断されることがない。
第1接続状態から、オス型コネクタ800を基台940に向かってZ軸と平行な方向に沿って更に押し込むと、第1接続ポート200とオス型コネクタ800とを第2接続状態にて接続することができる。
図26〜図28は、第1接続ポート200とオス型コネクタ800との第2接続状態を示した図であり、図26はその斜視図、図27(A)は図26の27A−27A線、即ち第1接続ポート200の中心軸を含むYZ面に平行な面での矢視断面図、図27(B)は図26の27B−27B線、即ち第1接続ポート200の中心軸を含むXZ面に平行な面での矢視断面図、図28は第3開口953の周辺部のXZ軸と平行な面に沿った拡大断面図である。図26、図27(A)及び図27(B)では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート932に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970との図示を省略している(図1参照)。
図24(B)に示した第1接続状態からオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、オス型コネクタ800の係止爪823の傾斜面823aがカバー部材290の外周面に形成された第1段差部211の下側の端縁と当接して、ロックレバー820が弾性変位する。従って、係止爪823と第1段差部211との係合状態が自動的に解除される。更にオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、図27(B)に示すように、オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート200の外周面に形成された第2段差部212に嵌入して、第2接続状態となる。このときも、係止爪823の係止面823bが第2段差部212の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第2段差部212と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート200とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、オス型コネクタ800の管体部802は、第1接続ポート200の隔壁部材280に向かってZ軸と平行な方向に沿って移動する。そして、第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に形成されたスリット281(図20参照)に挿入されている。従って、オス型コネクタ800の通液部801の基端部803に接続された医療用チューブセット970(図1参照)と、医療用接続ポート932に一体化された容器本体920(図1参照)の内部空間とが連通する。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、可動部材230の上面はオス型コネクタ800のフード810の下端から下向きの押力を受け、可動部材230はZ軸と平行な方向に沿って下方に移動する。この過程で、可動部材230の外周面に設けられた一対の係止爪231は、外筒220の内周面に形成された一対の案内溝223から抜け出す。このとき、一対の係止爪231が形成された一対の係止片232は互いに接近する方向に弾性変形する。筒状部201の外周面に形成された一対の逃げ溝203(図20参照)が、弾性変形した一対の係止片232を受け入れる。そして、第2接続状態では、図27(A)に示すように、一対の係止片232が弾性回復して、一対の係止爪231が外筒220の一対の係止孔225に嵌入する。一対の係止爪231と一対の係止孔225とが係合し、且つ、可動部材230の上面の少なくとも一部をフード810が覆っているので、可動部材230が環状溝221から抜け落ちることはない。このとき、可動部材230の上面と基台940の外筒220の上面とがほぼ同一平面をなしている。
図28に示すように、第2接続状態では、第3開口953と連通した円筒状の筒状部228に、可動部材230の柱状部236の封止部237が嵌入している。封止部237の外径は筒状部228の内径とほぼ同じか、これより僅かに大きいので、封止部237の外周面と筒状部228の内周面とが密着する。従って、第1接続状態において可動部材230の通気部238の外周面の溝に沿って形成された上記のガス流路240(図25参照)が閉塞(遮断)される。
第2接続状態において、オス型コネクタ800の一対のロックレバー820の一対の操作片822を互いに接近するように指でつまむと、オス型コネクタ800の係止爪823と第1接続ポート200の第2段差部212との係合状態が解除される。この状態でオス型コネクタ800を第1接続ポート200に対してZ軸と平行な方向に沿って上方に移動させると、図29に示すように、オス型コネクタ800と第1接続ポート200とが分離された分離状態となる。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に形成されたスリット281から抜き取られ、スリット281が閉じられる。
一方、可動部材230の基台940に対する相対的関係は、第2接続状態から分離状態に変化しても何ら変化しない。即ち、第2接続状態において形成された、可動部材230の一対の係止爪231と外筒220の一対の係止孔225と係合状態(図27(A)参照)は、分離状態においても維持され、これにより可動部材230が環状溝221から抜け出るのが防止される。即ち、一対の係止爪231と一対の係止孔225とは、分離状態において、可動部材230がその自重や振動などによってZ軸と平行な方向に沿って上側に向かって移動するのを防止する、可動部材230の第2移動制限機構として機能する。従って、可動部材230の柱状部236の封止部237が基台940の筒状部228から意図せずに抜け出ることで上記のガス流路240の遮断状態が解除されることがない。
また、上記の第2接続状態(図27(A)及び図27(B)参照)と同様に、可動部材230の上面と基台940の外筒220の上面とがほぼ同一平面をなしている。このことと、上記の第2移動制限機構とが相俟って、作業者が可動部材230を基台940から意図的に抜き取ることを困難にしている。
以上のように、本実施の形態2の第1接続ポート200は、オス型コネクタ800の管体部802が抜き差しされることで開閉される弁としての隔壁部材280と、オス型コネクタ800の係止爪823と係合する係合構造としての第1段差部211及び第2段差部212とを備える。そして、第1接続ポート200とオス型コネクタ800との接続状態を、第1接続状態、第2接続状態、分離状態に順に切り替えることができる。このような第1接続ポート200は例えば以下のように使用することができる。
オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート200の第1段差部211と係合する第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に挿入されないが、基台940に形成された第3開口953を利用したガス流路240を通じて容器本体920の内外間でガスの通過が可能である。従って、医療用容器910の医療用接続ポート932の第1接続ポート200と医療用チューブセット970のオス型コネクタ800とをこの第1接続状態で接続してEOG滅菌処理を行えば、滅菌ガスを上記ガス流路240を通じて容器本体920内に流入させることができるので、容器本体920内を同時に滅菌処理することができる。しかも、第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に挿入されていないので、EOG滅菌処理時の高温によって隔壁部材280が永久変形してしまうことにより隔壁部材280のリシール性が消失してしまうという問題は生じない。
第1接続状態にてEOG滅菌処理をした医療用容器910及び医療用チューブセット970は第1接続状態のままで病院等の医療機関に納入されることが好ましい。そして、医療機関において医療用容器910内に液状物を注入する必要が生じた際に、第1接続状態から第2接続状態に切り替えることが好ましい。切り替えは、オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート200の第2段差部212と係合するまで、オス型コネクタ800を第1接続ポート200に対して押し込むだけで足りる。このようにすれば、EOG滅菌処理をした後から医療用容器910内に液状物を注入するまでの間に、第1接続ポート200の隔壁部材280やオス型コネクタ800の管体部802が人手に触れることがないので、これらの滅菌状態を容易に維持することができる。
第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280のスリット281に挿入される。従って、医療用チューブセット970を通じて医療用容器910内に液状物を注入することができる。また、第2接続状態では、上記ガス流路240は可動部材230によって遮断される。従って、医療用容器910内に注入された液状物がガス流路240を通じて漏れ出すことがない。
第2接続状態にて医療用容器910内に液状物を注入した後は、オス型コネクタ800と第1接続ポート200とを分離して分離状態とするのが好ましい。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート200の隔壁部材280に形成されたスリット281から抜き取られる。管体部802が隔壁部材280に挿入されていない第1接続状態でEOG滅菌処理を施しておくことにより、隔壁部材280のリシール性は消失しないから、スリット281は確実にシールされる。また、分離状態においても、上述したガス流路240は可動部材230によって遮断された状態が維持される。従って、医療用容器910のシール性が確保され、医療用容器910内に貯留した液状物が隔壁部材280のスリット281やガス流路240を通じて外部に漏れ出すことがない。
医療用容器910内の液状物に薬液等を混注するには、分離状態にて、第1接続ポート200の隔壁部材280に形成されたスリット281に、針なし注射器の先端(雄ルアー)を挿入して行うことが出来る。あるいは、第2接続ポート700の栓体702に注射器の金属針を突き刺して行っても良い。
医療用容器910内に注入された液状物の患者への投与は、第1接続ポート200又は第2接続ポート700に送液ラインのチューブを接続することにより行うことが出来る。第1接続ポート200に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた針なし注射器の先端(雄ルアー)を隔壁部材280に形成されたスリット281に挿入すればよい。あるいは、第1接続ポート200に、送液ラインの一端に取り付けられたオス型コネクタ800を上記の第2接続状態にて接続しても良い。第2接続ポート700に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた金属針を栓体702に突き刺せばよい。
(実施の形態3)
図30は本発明の実施の形態3にかかる医療用接続ポート933の概略構成を示した斜視図、図31は図30のXZ面に平行な31−31線に沿った矢視断面図である。本実施の形態3にかかる医療用接続ポート933は、第1接続ポート及びその周辺構造において実施の形態1,2にかかる医療用接続ポート931,932と異なる。本実施の形態3では、実施の形態1,2で説明した要素と同一の構造又は機能を有する要素には同一の符号を付している。実施の形態1,2と重複する説明を省略し、実施の形態1,2と異なる点を説明する。
本実施の形態3にかかる医療用接続ポート933は、基台940と、基台940に設けられた第1接続ポート300及び第2接続ポート700とからなる。第2接続ポート700の構成は、実施の形態1,2と同じであるので、図30、図31では第2接続ポート700の図示を省略している。実施の形態1,2と同様に、図示したように、X軸、Y軸、Z軸を設定する。Z軸方向において、基台940に対して第1接続ポート300が設けられた側(Z軸の矢印の側、即ち図31の紙面上側)を「上側」と呼び、その反対側(図31の紙面下側)を「下側」と呼ぶ。
実施の形態1の医療用接続ポート931に替えて本実施の形態3の医療用接続ポート933を用いて医療用容器910を構成することができる。即ち、実施の形態1の医療用接続ポート931と同様に、周囲壁942が容器本体920を構成する2枚のシート921の周縁間に挟まれた状態で医療用接続ポート933と容器本体920とが一体化されて医療用容器910が構成される(図1参照)。
図31に示すように、平板部941には、平板部941を貫通し且つその端縁形状が円形である第1開口951が形成されている。図示していないが、実施の形態1,2と同様に、平板部941には更に第2開口952が形成されている(図3、図18参照)。但し、本実施の形態3では、実施の形態1,2では形成されていた第3開口953は形成されていない。
第1開口951と連通して第1接続ポート300が設けられている。第1接続ポート300は、図31に示すように、第1開口951と連通した円筒状の筒状部301と、筒状部301の上側端の開口を封止する隔壁部材380と、隔壁部材380を筒状部301に固定するカバー部材390とからなる。筒状部301は、平板部941上に、平板部941の第1開口951の端縁に沿って、周囲壁942とは反対側(上側)に向かってZ軸と平行に立設されている。筒状部301の上側端の近傍には小径部302が設けられている。小径部302の外径は、これより下側の筒状部301の部分の外径よりも小さい。
隔壁部材380は、中央部に直線状のスリット381が形成されたディスク状の弁である。カバー部材390は、中央に開口391を有する略円板形状を有しており、その基台940に対向する側の面に、開口391を取り囲むように略円筒状の嵌合筒392が立設されている。嵌合筒392の外周面には、その周方向に連続する環状の窪みである第1段差部311が形成されている。
筒状部301の上側端面に隔壁部材380を載置し、次いで、カバー部材390の嵌合筒392の内周面と筒状部301の小径部302の外周面とを嵌合させる。これにより、隔壁部材380は、その外周部分が筒状部301の上側端面とカバー部材390とで挟まれた状態で、筒状部301の上側端に固定される。このとき、カバー部材390の中央の開口391内に、隔壁部材380のスリット381が露出する。
筒状部301とカバー部材390の嵌合筒392とを上記のように嵌合させると、嵌合筒392の下端より下側に、小径部302の外周面の一部が露出する。小径部302の外径は嵌合筒392の外径よりも小さい。この露出した小径部302の部分が、第1接続ポート300の周方向に連続する環状の窪みである第2段差部312を形成する。第2段差部312は第1段差部311よりも基台940側(下側)に位置している。
筒状部301の外周面の一部を覆うように、可動部材330が外装されている。図32は、可動部材330が除去された第1接続ポート300及びその近傍の概略構成を示した斜視図である。
図31及び図32に示すように、筒状部301には、筒状部301をZ軸と直交する方向に貫通する通気孔303が形成されている。Z軸方向において、通気孔303は、第2段差部312よりも基台940側(下側)に位置している。通気孔303をZ軸方向において挟むように、筒状部301の周方向に沿って2本の環状溝304a,304bが形成されている。環状溝304a,304bには、O−リング320a,320bがそれぞれ嵌装されている。更に、環状溝304a,304bよりも基台940側(下側)の位置に、筒状部301の周方向に沿って第1及び第2係合溝306,307が形成されている。第2係合溝307は、第1係合溝306よりも基台940側(下側)に位置している。
図33は可動部材330の斜視図である。図34(A)は可動部材330の正面図、図34(B)は可動部材330の側面図、図34(C)は図34(A)の34C−34C線に沿った可動部材330の矢視断面図である。
可動部材330は、全体として略円筒形状を有しており、その下端近傍の内周面に内方向に向かって突出した一対の係止爪331が形成されている。各係止爪331を周方向に挟むように、可動部材330の下端から所定深さのスリット333が形成されている。従って、一対のスリット332で挟まれた係止爪331を含む係止片332は可動部材330の中心軸を中心とする半径方向に弾性変位可能である。可動部材330には、可動部材330をZ軸と直交する方向に貫通する貫通孔335が形成されている。
可動部材330の材料は、特に制限はないが、実施の形態1,2の可動部材130,230の材料と同様に、硬質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂を含む硬質プラスチックであると好ましい。可動部材330は、これらの材料を用いて射出成形などにより一体成形することができる。
以上のように構成された本実施の形態3の医療用接続ポート933の第1接続ポート300に対してオス型コネクタ800を着脱する際の動作を以下に説明する。
最初に、図30、図31に示すように、可動部材330を、基台940の筒状部301にZ軸と平行な方向に沿って外挿する。このとき、筒状部301の外周面に装着されたO−リング320a,320b上を可動部材330の内周面が摺動する。そして、筒状部301の第1係合溝306内に可動部材330の一対の係止爪331が嵌入する。次いで、第1接続ポート300にオス型コネクタ800のフード810をZ軸と平行な方向に沿って外挿して、第1接続ポート300とオス型コネクタ800とを第1接続状態にて接続する。
図35〜図36は、第1接続ポート300とオス型コネクタ800との第1接続状態を示した図であり、図35はその斜視図、図36は図35の36−36線、即ち第1接続ポート300の中心軸を含むXZ面に平行な面での矢視断面図である。図35及び図36では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート933に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970と、第2接続ポート700との図示を省略している(図1参照)。
図36に示すように、第1接続状態では、第1接続ポート300のカバー部材390の外周面に形成された第1段差部311にオス型コネクタ800の係止爪823が嵌入する。このとき、係止爪823の係止面823bが第1段差部311の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第1段差部311と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート300とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。また、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に接近又は接しているが、隔壁部材380に形成されたスリット381(図30参照)には挿入されていない。筒状部301の第1係合溝306と可動部材330の一対の係止爪331とが係合することに加えて、オス型コネクタ800のフード810の下端が可動部材330の上面に接近又は接触していることが、可動部材330が筒状部301から脱落するのを防止している。
図36に示すように、第1接続状態では、可動部材330に形成された貫通孔335と筒状部301に形成された通気孔303とが連通する。従って、貫通孔335及び通気孔303を通り、更に基台940の第1開口951を通ることで、医療用容器910の内外間でガスの通過を可能にするガス流路340が形成される。
図36に示すように、可動部材330の一対の係止爪331が筒状部301の第1係合溝306に嵌入することで、可動部材330が更に下方に移動するのが規制されている。即ち、一対の係止爪331と第1係合溝306とは、第1接続状態において、可動部材330がその自重や振動などによって筒状部301に更に外挿されるのを防止する、可動部材330の第1移動制限機構として機能する。従って、可動部材330が筒状部301に意図せずに深く外挿されて(後述する図38参照)、ガス流路340が遮断されることがない。
第1接続状態から、オス型コネクタ800を基台940に向かってZ軸と平行な方向に沿って更に押し込むと、第1接続ポート300とオス型コネクタ800とを第2接続状態にて接続することができる。
図37〜図38は、第1接続ポート300とオス型コネクタ800との第2接続状態を示した図であり、図37はその斜視図、図38は図37の38−38線、即ち第1接続ポート300の中心軸を含むXZ面に平行な面での矢視断面図である。図37及び図38では、図面を簡単化するために、医療用接続ポート933に一体化された容器本体920と、オス型コネクタ800に接続された医療用チューブセット970と、第2接続ポート700との図示を省略している(図1参照)。
図36に示した第1接続状態からオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、オス型コネクタ800の係止爪823の傾斜面823aがカバー部材390の外周面に形成された第1段差部311の下側の端縁と当接して、ロックレバー820が弾性変位する。従って、係止爪823と第1段差部311との係合状態が自動的に解除される。更にオス型コネクタ800を基台940に向かって押し込むと、図38に示すように、オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート300の外周面に形成された第2段差部312に嵌入して、第2接続状態となる。このときも、係止爪823の係止面823bが第2段差部312の下方を向いた側壁と当接するため、一対のロックレバー820を操作して第2段差部312と係止爪823との係合状態を解除しない限り、第1接続ポート300とオス型コネクタ800とをZ軸方向に分離することはできない。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、オス型コネクタ800の管体部802は、第1接続ポート300の隔壁部材380に向かってZ軸と平行な方向に沿って移動する。そして、第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に形成されたスリット381(図30参照)に挿入されている。従って、オス型コネクタ800の通液部801の基端部803に接続された医療用チューブセット970(図1参照)と、医療用接続ポート932に一体化された容器本体920(図1参照)の内部空間とが連通する。
第1接続状態から第2接続状態に変化する過程で、可動部材330の上面はオス型コネクタ800のフード810の下端から下向きの押力を受け、可動部材330はZ軸と平行な方向に沿って下方に移動する。この過程で、可動部材330の一対の係止片332は互いに離れる方向に弾性変形し、一対の係止爪331は筒状部301の外周面に形成された第1係合溝306から抜け出す。そして、第2接続状態では、可動部材330の一対の係止片332が弾性回復して、一対の係止爪331が筒状部301の第2係合溝307に嵌入する。一対の係止爪331と第2係合溝307とが係合し、且つ、可動部材330の上面の少なくとも一部をフード810が覆っているので、可動部材330が筒状部301から抜け落ちることはない。可動部材330が移動する際、可動部材330の内周面は筒状部301の外周面に装着されたO−リング320a,320b上を摺動する。
図38に示すように、第2接続状態では、可動部材330の貫通孔335は下側のO−リング320bよりも下側に移動している。Z軸方向において通気孔303は2つのO−リング320a,320bの間に位置し、O−リング320a,320bは可動部材330の内周面と密着している。従って、第1接続状態において通気孔303と貫通孔335とが連通することによって形成された上記のガス流路340(図36参照)が遮断される。
第2接続状態において、オス型コネクタ800の一対のロックレバー820の一対の操作片822を互いに接近するように指でつまむと、オス型コネクタ800の係止爪823と第1接続ポート300の第2段差部312との係合状態が解除される。この状態でオス型コネクタ800を第1接続ポート300に対してZ軸と平行な方向に沿って上方に移動させると、図39に示すように、オス型コネクタ800と第1接続ポート300とが分離された分離状態となる。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に形成されたスリット381から抜き取られ、スリット381が閉じられる。
一方、可動部材330の基台940に対する相対的関係は、第2接続状態から分離状態に変化しても何ら変化しない。即ち、第2接続状態において形成された、可動部材330の一対の係止爪331と筒状部301の第2係合溝307との係合状態(図38)は、分離状態においても維持され、これにより可動部材330が筒状部301から抜け落ちるのが防止される。即ち、一対の係止爪331と第2係合溝307とは、分離状態において、可動部材330がその自重や振動などによってZ軸と平行な方向に沿って上側に向かって移動するのを防止する、可動部材330の第2移動制限機構として機能する。従って、可動部材330が筒状部301から意図せずに抜け落ちることで上記のガス流路340の遮断状態が解除されることがない。また、この第2移動制限機構は、作業者が可動部材330を筒状部301から意図的に抜き取ることを困難にしている。
以上のように、本実施の形態3の第1接続ポート300は、オス型コネクタ800の管体部802が抜き差しされることで開閉される弁としての隔壁部材380と、オス型コネクタ800の係止爪823と係合する係合構造としての第1段差部311及び第2段差部312とを備える。そして、第1接続ポート300とオス型コネクタ800との接続状態を、第1接続状態、第2接続状態、分離状態に順に切り替えることができる。このような第1接続ポート300は例えば以下のように使用することができる。
オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート300の第1段差部311と係合する第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に挿入されないが、可動部材330の貫通孔335と筒状部301の通気孔303とが連通することで形成されたガス流路340を通じて容器本体920の内外間でガスの通過が可能である。従って、医療用容器910の医療用接続ポート931の第1接続ポート300と医療用チューブセット970のオス型コネクタ800とをこの第1接続状態で接続してEOG滅菌処理を行えば、滅菌ガスを上記ガス流路340を通じて容器本体920内に流入させることができるので、容器本体920内を同時に滅菌処理することができる。しかも、第1接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に挿入されていないので、EOG滅菌処理時の高温によって隔壁部材380が永久変形してしまうことにより隔壁部材380のリシール性が消失してしまうという問題は生じない。
第1接続状態にてEOG滅菌処理をした医療用容器910及び医療用チューブセット970は第1接続状態のままで病院等の医療機関に納入されることが好ましい。そして、医療機関において医療用容器910内に液状物を注入する必要が生じた際に、第1接続状態から第2接続状態に切り替えることが好ましい。切り替えは、オス型コネクタ800の係止爪823が第1接続ポート300の第2段差部312と係合するまで、オス型コネクタ800を第1接続ポート300に対して押し込むだけで足りる。このようにすれば、EOG滅菌処理をした後から医療用容器910内に液状物を注入するまでの間に、第1接続ポート300の隔壁部材380やオス型コネクタ800の管体部802が人手に触れることがないので、これらの滅菌状態を容易に維持することができる。
第2接続状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380のスリット381に挿入される。従って、医療用チューブセット970を通じて医療用容器910内に液状物を注入することができる。また、第2接続状態では、可動部材330が移動することによって上記ガス流路340が遮断される。従って、医療用容器910内に注入された液状物がガス流路340を通じて漏れ出すことがない。
第2接続状態にて医療用容器910内に液状物を注入した後は、オス型コネクタ800と第1接続ポート300とを分離して分離状態とするのが好ましい。分離状態では、オス型コネクタ800の管体部802は第1接続ポート300の隔壁部材380に形成されたスリット381から抜き取られる。管体部802が隔壁部材380に挿入されていない第1接続状態でEOG滅菌処理を施しておくことにより、隔壁部材380のリシール性は消失しないから、スリット381は確実にシールされる。また、分離状態においても、上述したガス流路340は可動部材330によって遮断された状態が維持される。従って、医療用容器910のシール性が確保され、医療用容器910内に貯留した液状物が隔壁部材380のスリット381やガス流路340を通じて外部に漏れ出すことがない。
医療用容器910内の液状物に薬液等を混注するには、分離状態にて、第1接続ポート300の隔壁部材380に形成されたスリット381に、針なし注射器の先端(雄ルアー)を挿入して行うことが出来る。あるいは、第2接続ポート700の栓体702に注射器の金属針を突き刺して行っても良い。
医療用容器910内に注入された液状物の患者への投与は、第1接続ポート300又は第2接続ポート700に送液ラインのチューブを接続することにより行うことが出来る。第1接続ポート300に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた針なし注射器の先端(雄ルアー)を隔壁部材380に形成されたスリット381に挿入すればよい。あるいは、第1接続ポート300に、送液ラインの一端に取り付けられたオス型コネクタ800を上記の第2接続状態にて接続しても良い。第2接続ポート700に送液ラインを接続するためには、送液ラインの一端に取り付けられた金属針を栓体702に突き刺せばよい。
上記の実施の形態1〜3は一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されず、適宜変更することができる。
例えば、オス型コネクタと係合する、第1接続ポートに設けられた係合構造として、実施の形態1〜3ではオス型コネクタ800の一対の係止爪823と係合するように第1接続ポート100,200,300に設けられた第1段差部111,211,311及び第2段差部112,212,312を示したが、これら以外の係合構造であっても良い。オス型コネクタの構造に応じて係合構造を適宜変更することができる。例えば、上記係合構造が、オス型コネクタに形成された雌ネジと係合するように第1接続ポートに設けられた連続する雄ネジであっても良い。
可動部材の構成、可動部材の移動を制限する第1及び第2移動制限機構の構成なども、本発明の効果が奏される範囲内で適宜変更することができる。
実施の形態1,2のガス流路140,240の主要部は管体部802の移動方向(Z軸方向)に対してほぼ平行であり、実施の形態3のガス流路340の主要部は管体部802の移動方向(Z軸方向)に対してほぼ直角であったが、ガス流路の経路はこれらに限定されず適宜変更することができる。
上記の実施の形態1〜3の医療用接続ポート931,932,933は、第1接続ポート100,200,300の他に第2接続ポート700を備えていたが、本発明はこれに限定されない。本発明の医療用接続ポートはオス型コネクタを着脱可能に接続することができるポートを有していれば良い。従って、例えば第2接続ポート700を省略することができ、あるいは更に別のポートを備えていても良い。
本発明の医療用容器は、本発明の医療用接続ポートを備えていれば良く、図1に示した構成に限定されない。同様に、本発明の医療用容器セットを構成する医療用チューブセットは、オス型コネクタ及びチューブを備えていれば良く、図1に示した構成に限定されない。オス型コネクタは、上記の実施の形態1〜3に示した構成に限定されない。オス型コネクタの構成に応じて医療用接続ポートの構成を変更することができる。