JP5058565B2 - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Description

本発明はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関する。さらに詳しくは、本発明は高い剛性を有するのみならず、成形品が非常に良好な外観を示し、更に初期成形条件出し等を含む成形性、離型性、塗装性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
本発明の樹脂組成物は自動車、建築、電気・電子機器およびその他の諸工業の分野で、高い剛性が要求される内外装部品に好適に用いられ、特に高剛性かつ良好な外観が必要な自動車内外装部品であるドアミラーまたはインナーミラー用のステー、アウターハンドルおよびワイパー部品等に好適に用いられる。
結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばポリアルキレンテレフタレート樹脂等は機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ、加工性が良好であるがゆえにエンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広汎な用途に使用されている。
かかる結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独でも種々の成形品に用いられているが、利用分野によってはその性質、特に機械的性質を改善する目的で、様々な強化剤、添加剤を配合することが行われてきた。そして、高い機械的強度、剛性の要求される分野においては、ガラス繊維、カーボン繊維等に代表される繊維状の強化剤を用いることが周知である。
しかしながら、一般的な繊維状強化剤を含む結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、剛性等は確かに改善されるが、得られる成形品の表面外観が強化充填剤自体の浮き出しや、強化充填剤による流動性の低下によるフローマーク等により、不良となることがあり、良好な外観を得ることが困難である。
特にポリブチレンテレフタレートの如く、結晶性の高いポリマーを用いる場合には、成形時の結晶化に伴い、金型への転写性も悪いため、満足する外観を得ることは困難である。また、成形開始直後から良好な外観を得ることが困難な場合がある。
さらに、意匠や機能上の目的から成形品の形状が複雑化することに伴い、単純な平板形状ではなく、リブやボスが配置された成形品が実用的に用いられるが、この場合、リブやボスの裏側にあたる部分は樹脂の収縮量や強化充填剤の配向に由来するヒケ等の外観不良を発生しやすく、満足する外観を得ることが困難である。
これらの問題を解決する方法として、強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂にポリエチレンテレフタレート(特許文献1)やポリカーボネート(特許文献2)等の異種ポリマーを配合することが提案されている。
しかしながら、特許文献1のポリエチレンテレフタレートを配合する方法では、光沢は改善されるもののガラス繊維浮きやヒケの改善が不充分であり、またバリ発生等、成形性が悪化し、後加工が必要になる不具合や成形サイクルの遅延があり実用性に問題がある。また、ヒケのレベルも薄肉の成形片では悪くはないが、大型の実用部品では流動性が不充分となりヒケが改善されないという不具合があった。
特許文献2の変性ポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート、結晶化核剤等を配合した組成物では、比較的良好な外観・ヒケ・成形性のバランスをとることが可能であるが、そらに良好な外観・成形性(特に離型性)の向上が望まれてきている。
また、表面外観の問題を解決するためには、タルク・炭酸カルシウム等の微粉末充填剤を添加する方法等が知られているが、このような微粉末充填剤では高い機械的強度、剛性を得ることはできない。
一方、成形品の変形改善、機械的強度及び耐衝撃性の向上目的で、扁平ガラス繊維の使用が提案されているが(特許文献3、4)、高い機械的強度や衝撃性を得るために充填量を増量していくと表面外観が損なわれる不具合があった。
更に、かかる分野の部品成形においては、良外観を得る目的で、樹脂温度を上げ、組成物の流動性を向上させる方法、あるいは金型温度を上げることで結晶化速度を遅らせ、転写性を向上させる方法等が一般的に用いられているが、かかる成形面での改良には限界があり、無理に樹脂温度を上げると、樹脂が熱分解し、ガスの発生・金型汚染等を引き起こす。また金型温度を上げることにより成形サイクル時間が長くなり、量産性が損なわれるなどの問題があった。また、成形性を改善するために、エステル化合物やワックス等を離型剤として用いることも一般的に知られているが、かかる離型剤の配合は塗装の乗りを悪化させるため、かかる分野での使用については制約があった。
特開平8−120166号公報 特開平9−291204号公報 特開平2−173047号公報 特開2004−285487号公報
本発明は従来技術の欠点を改善し、高い機械的強度、剛性を有し、良好な外観を有し離型性が良好であり、かつ塗装性にも優れた材料を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題に鑑み、強化充填剤を添加したポリブチレンテレフタレート樹脂組成に関して優れた表面外観性、成形性を得るため鋭意検討した。その結果、特定の変性ポリブチレンテレフタレート共重合体にポリカーボネート樹脂を併用し、かつ特定の強化充填剤と離型剤を併用することにより、多量の無機充填剤を配合しながら、得られた成形品表面は充填剤浮きが目立ち難く、非常に良好な外観を有し、かつ優れた成形性、塗装性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は
(A) 5〜30モル%のイソフタル酸ユニットを含有する固有粘度(IV)が0.60〜0.80の変性ポリブチレンテレフタレート樹脂95〜55重量%と、
(B) ポリカーボネート樹脂5〜45重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、
(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維60〜150重量部、
(D) 平均粒径10〜60μmの粒子状もしくは板状充填剤10〜50重量部及び
(E) モンタン酸化合物0.1〜5重量部
を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である。
本発明の如く、特定組成のポリブチレンテレフタレート共重合体にポリカーボネート樹脂を併用し、かつ特定の強化充填剤と離型剤を併用することにより、高い機械的強度、剛性を有し、良好な成形性、離型性、塗装性を有しながら非常に優れた成形品外観を示すポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られる。このような特性を有する本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、特に耐熱性か強度かつ良好な外観が要望される自動車・電機および建材等の内外装部品に好適に用いられる。
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。まず、本発明の樹脂材料の基体樹脂である(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂とはテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と炭素数4のアルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体を重縮合反応して得られるポリブチレンテレフタレートを主成分とし、これに5〜30モル%のイソフタル酸をコモノマーユニットとして導入した共重合体である。イソフタル酸は、エステル形成可能な誘導体、例えばジメチルエステルの如き低級アルコールエステルの形で重縮合に使用し、コポリマー成分として導入することも可能である。
ここでイソフタル酸コモノマーユニットの導入量は5〜30モル%であり、好ましくは10〜30モル%であり、特に好ましくは10〜20モル%である。導入量が5モル%未満では、結晶性が高いため、金型への転写性が悪く、充分な外観を得ることが困難である。また導入量が30モル%を超えると、本来のポリブチレンテレフタレートの優位点である強度および熱安定性の低下が大きく、かつ結晶化が著しく低下、遅延されることで、成形サイクルの低下、離型性の低下を引き起こし、実用的に用いられない問題を生じる。
本発明で用いられる変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてo−クロロフェノールを用い、25℃で測定した固有粘度(IV)が0.60〜0.80(dl/g)、好ましくは0.60〜0.70の範囲であることが重要である。IV値が0.60より小さい場合、著しく靱性が低下し好ましくない。また、IV値が0.80より大きい場合、流動性が低下し良外観が得られず好ましくない。
また本発明では、離型性の向上や成形サイクルの短縮を目的として、上記変性ポリブチレンテレフタレート樹脂に少量の未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を添加したものを(A) 成分として使用してもよい。未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の添加量は、変性及び未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の総重量に対して、好ましくは0〜15重量%であり、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂に含まれるイソフタル酸ユニット量が5〜30モル%であり、かつ添加後のポリブチレンテレフタレート樹脂のIV値が0.60〜0.80の範囲であれば、何れの粘度の未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂も用いることが可能である。押出し、成形条件によってIV値が変化するが、成形品のIV値が上記範囲内であれば本組成物として特に問題はない。
次に本発明では、(B) ポリカーボネート樹脂が添加される。ポリカーボネート樹脂は、溶剤法、即ち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、好適に使用し得る二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4 −ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物又はビス(3,5 −ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5 −ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。これら二価フェノールは二価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマーであってもよい。更に本発明で用いるポリカーボネート樹脂は多官能性芳香族化合物を二価フェノール及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
本発明に用いるポリカーボネートは特に高流動性のものが好ましく、溶融粘度(300 ℃、剪断速度1000sec-1)が0.20〜0.50 kPa・sec の範囲のポリカーボネートが好ましく用いられ、より好ましくは0.20〜0.30 kPa・sec のものである。ポリカーボネートの溶融粘度が0.20未満では物性低下が著しく、また0.50を超えると流動性の大幅な低下が生じ、好ましくない。
又、ポリカーボネート(B) の添加量は、(A) 、(B) 成分の合計中、5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%である。過少の場合は本発明の目的とする成形品の良好な外観(特にひけ)が劣り、過大の場合は成形サイクルの増加、離型性の悪化等、成形上の問題が生じ好ましくない。
変性したポリブチレンテフタレート共重合体を単独に使用しても、ある程度外観は改善されるものの、その効果は充分ではなく、また強度低下および熱安定性の低下が大きく、強化剤の添加効果が減少する。また未変性のポリブチレンテレフタレート樹脂にポリカーボネート樹脂を添加した場合も外観改良の効果は認められるものの、その効果は充分でなく、大量に無機充填剤を添加した場合、充填剤の表面への浮き出しを抑制することは困難である。
次に本発明で用いられる(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維とは、長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10、好ましくは1.5〜8、特に好ましくは2〜5の間にあるガラス繊維である。具体的な形状としては、略楕円形、略長円形、略まゆ形等である。
(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維は、機械的強度に優れ、良好な外観を有する成形品を得るための成形条件出し等を含む成形性にも優れる。
又、扁平な断面形状を有するガラス繊維は、その平均断面積が100〜300マイクロ平方メートルのものが好ましい。
本発明において用いられる(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維の配合量は、(A) 成分と(B) 成分からなる樹脂成分の合計100重量部に対し、60〜150重量部、好ましくは70〜140重量部である。配合量が60重量部未満では機械的強度が低く、また150重量部を超えると成形品外観を著しく悪化するため好ましくない。
(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維の使用にあたっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物がいずれも好ましく用いられる。これ等の化合物は予め表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。また、併用される官能性表面処理剤の使用量は、充填剤に対し0〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
かかるガラス繊維(C) としては、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョップドストランド、ロービングガラス等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、使用可能である。
本発明に用いる(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維は、溶融ガラスを吐出するために使用するブッシングとして、長円形、楕円形、矩形、スリット状等の適当な孔形状を有するノズルを用いて紡糸することにより調製される。又、各種の断面形状(円形断面を含む)を有する近接して設けられた複数のノズルから溶融ガラスを紡出し、紡出された溶融ガラスを互いに接合して単一のフィラメントとすることにより調製できる。
次に、本発明においては、平均粒径10〜60μmの粒子状もしくは板状充填剤(D) として、マイカ、例えばフロゴバイトまたはマスコトバイトが、高い機械的特性を保持した上でなおかつ良外観を得るため好ましく用いられる。
(D) 成分の平均粒径が10μm未満であると外観は良好であるが、機械的強度や剛性(曲げ弾性率)が低く実用に耐えない。また、平均粒径が60μmを超えては流動性の悪化や金型への転写性の悪化、充填剤の浮きなどが生じる。また、靱性の低下から機械的強度の低下を招く。
(D) 成分の配合量は、(A) 成分と(B) 成分からなる樹脂成分の合計100重量部に対し、10〜50重量部である。配合量が10重量部未満では機械的強度が低く、また50重量部を超えると成形品外観を著しく悪化するため好ましくない。
平均粒径10〜60μmの粒子状もしくは板状充填剤(D) の使用にあたっては、(C) 成分について述べたと同様な収束剤、表面処理剤による処理を施すことが望ましい。
次に本発明に用いられる(E) モンタン酸化合物とは、モンタン酸(C2755COOH)を主成分とする炭素数26〜32の脂肪族カルボン酸の混合物と1価又は多価アルコールのエステルである。アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、グリセロール等である。
一般に離型剤として用いられているステアリン酸のエステル化合物を用いた場合、離型性は良好となるが、成形品表面への染み出しの影響からか、塗装性の低下が生じ好ましくない。
(E) モンタン酸化合物の配合量は、(A) 成分と(B) 成分からなる樹脂成分の合計 100重量部に対し、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、特に好ましくは0.5〜2重量部である。
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、結晶化核剤等を更に添加併用することができる。特に酸化防止剤は本発明の組成物の熱安定性を向上させるため、有効であり、具体的には、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の化合物が使用できる。その中でもヒンダードフェノール系化合物およびリン系化合物の1種または2種以上の併用が効果的である。
特にリン系安定剤の添加は(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂のエステル交換を抑制する効果が高く、得られた組成物はより高い熱安定性を示す。
ここで使用する酸化防止剤の添加量は、(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂との合計100重量部あたり0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部である。
また、成形性を改善する目的で、ボロンナイトライド、タルク等の公知の無機結晶化核剤や、ロジン酸誘導体、エステル金属塩等の公知の有機結晶化核剤を用いることが可能であり、(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂との合計100重量部あたり好ましくは0.01〜2重量部が配合される。かかる公知の物質は、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。
更に又、樹脂成分として本発明の目的を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂(例えばアクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)、軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/エチルアクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステルエラストマーなど)を添加することもでき、これらの樹脂は、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて難燃剤、難燃助剤、上記以外の充填剤等を配合することができる。難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化ジフェニル、臭素化ジフェニルエーテル等の公知のハロゲン含有化合物系難燃剤が使用でき、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン等のアンチモン化合物の他、亜鉛、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウムの如き粘土質珪酸塩等が使用できる。さらには、昨今の環境への配慮から非ハロゲン系難燃剤を使用することも可能である。
充填剤としては、本発明で規定した以外のガラス繊維、ミルドガラスファイバー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、シリカ、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維、黒鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等の金属酸化物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩や硫酸塩、さらには炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が例示され、有機充填剤としては、高融点の芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等が例示される。更に顔料や染料等の着色剤等が使用可能である。
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練込押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。 樹脂を金型に充填するための成形法としては、射出成形法、押出圧縮成形法等があるが射出成形法が一般的である。本発明の樹脂組成物は、高剛性・良外観・成形性に優れるので自動車用装飾部品、特にドアミラーまたはインナーミラー用のステー、アウターハンドルおよびワイパー部品等に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、以下の例に示した物性評価の測定法は次の通りである。
(1)物性
a.流動性
東洋精機製作所製キャピログラフを使用して測定した溶融粘度を流動性として評価した。詳細な条件は以下の通りである。
測定ポイント;SR=1000sec-1
温度;260℃
キャピラリー;径φ1.0mm
長さ;20mm
b.引張強さ
ISO−527(試験片ISOタイプ型;厚み4mm)に準じて測定した。
c.曲げ強さ・弾性率
ISO−178に準じて測定した。
d.シャルピー衝撃強さ
ISO−179に準じて測定した。
また外観状態および成形性については下記の方法にて測定した。
(2)表面外観
図1に示すモデル試験金型(自動車アウトドアハンドルエスカッション)を用いて下記条件にて成形したサンプルの表面状態を観察し評価した。
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
a.表面外観−1
上記成形サンプルの表面状態を目視にて観察し、充填剤の表面への浮き出し状態を評価し、下記点数をつけた。
5;表面全体に充填剤の浮きが全くなく、均一な表面を示す
4;表面一部に充填剤の浮きがほんの僅かに見られる
3;表面一部に充填剤の浮きが見られる
2;表面数カ所に充填剤の浮きが多く見られる
1;表面全体に充填剤の浮きが激しく見られる
b.表面外観−2
上記成形サンプルのボス裏のひけレベルの状態を目視観察および輪郭形状測定機((株)ミツトヨ製SV600)にて評価し、下記点数をつけた。
5;表面にひけマークが全く見られず、ひけレベルがほとんど0μmである
4;表面に僅かにひけが見られ、ひけレベルが5μm以下である
3;表面に多少ひけが見られ、ひけレベルが5〜10μmである
2;表面にひけが見られ、ひけレベルが10〜20μmである
1;表面に大きくひけが見られ、ひけレベルが20μm以上である
c.表面外観−3
上記成形サンプルの表面状態を目視にて観察し、シボ面への転写性を評価し、下記点数をつけた。
5;表面全体が平滑で均一である
4;表面の一部にほんの僅かに転写むらが見られる
3;表面の一部に転写むらが見られる
2;表面の数カ所に転写むらが見られる
1;表面全体に転写むらが見られる
(3)成形性
図1に示すモデル試験金型(自動車アウトドアハンドルエスカッション)を用いて、下記の基本条件にて安定成形後、冷却時間を短縮し連続成形性を評価した。
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(基本成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
成形サイクル;射出・保圧時間12sec 、冷却時間23sec 、中間時間15sec
a.成形性−1(成形条件出しショット数)
上記基本成形条件にて成形を開始し、成形条件調整を含む1ショット目から良外観品が得られるショット数を成形条件出しショット数とする。基本成形条件の範囲で良外観品が得られない場合はNGとする。
b.成形性−2(成形サイクル)
上記基本成形条件にて成形が安定(約10ショット)した後、冷却時間を徐々に短縮し、各時間の連続成形性を調べる。金型開き時のスプルー及びランナーの折れが発生しない最短冷却時間を限界成形サイクルとする。
c.成形性−3(離型性)
上記基本成形条件にて成形が安定(約10ショット)した後、冷却時間を徐々に短縮した時の成形品の離型性を調べる。離型時の突出しピン跡が発生しない最短冷却時間を離型性とする。
(4)塗装性
下記条件で成形した120mm ×120mm ×3t平板に関西ペイント(株)製の二液ウレタン塗料(レタンPG60)をコート塗装し、80℃×30分乾燥後、一昼夜放置し、JIS K5400に準拠し碁盤目試験を行い塗装性を評価した。
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(基本成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
成形サイクル;射出・保圧時間15sec 、冷却時間20sec 、中間時間15sec
実施例1〜10、比較例1〜11
表1〜2に示す各成分を表1〜2に示す割合で二軸押出機(日本製鋼製TEX30)に供給し、シリンダー温度260 ℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を用いて上記各種評価を行った。結果を表1〜2に示す。
尚、実施例・比較例で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂
(A-1) ;ジメチルイソフタレートを12.5モル%共重合することにより変性したポリブチレンテレフタレート共重合体(IV=0.65);ウィンテックポリマー(株)製200JP
(A-2) ;ジメチルイソフタレートを12.5モル%共重合することにより変性したポリブチレンテレフタレート共重合体(IV=0.76);ウィンテックポリマー(株)製400JP
(A-3) ;ジメチルイソフタレートを12.5モル%共重合することにより変性したポリブチレンテレフタレート共重合体(IV=0.85);上記(A-1) を用いて、窒素通気下で170 ℃×40時間の固相重合処理を行ってIVを調整したもの
(A-0) ;未変性ポリブチレンテレフタレー樹脂(IV=0.65);ウィンテックポリマー(株)製200FP
(B) ポリカーボネート樹脂
帝人化成(株)製パンライト1225WX
(C) ガラス繊維
(C-1) ;日東紡(株)製CSG3PA−830、扁平な断面形状を有するガラス繊維、長径・短径比:4、平均断面積196μm
(C'-1) ;日本電気ガラス(株)製ECS03T−187、平均繊維径13μm(円形断面)
(D) 粒子状・板状充填剤
(D-1-1) マスコバイト、(株)山口雲母工業所製ミカレット21P5(330)、平均粒径23μm
(D-1-2) マスコバイト、(株)山口雲母工業所製A61、平均粒径55μm
(D'-1-1)マスコバイト、(株)山口雲母工業所製A11、平均粒径5μm
(D'-1-2)マスコバイト、(株)レプコ製M−100W、平均径65μm
(E) エステル化合物
(E-1) モンタン酸エステルワックス、クラリアントジャパン(株)製Luzawax-EP、リコルブWE1
(E'-1) ペンタエリスリトールテトラステアレート、日本油脂(株)製ユニスターH−476
Figure 0005058565
Figure 0005058565
図1は実施例において表面外観の評価に用いたモデル試験金型の形状を示す図である。

Claims (6)

  1. (A) 5〜30モル%のイソフタル酸ユニットを含有する固有粘度(IV)が0.60〜0.80の変性ポリブチレンテレフタレート樹脂95〜55重量%と、
    (B) ポリカーボネート樹脂5〜45重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、
    (C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維60〜150重量部、
    (D) 平均粒径10〜60μmの粒子状もしくは板状充填剤10〜50重量部及び
    (E) モンタン酸エステルワックス0.1〜5重量部
    を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、
    前記(C) 扁平な断面形状を有するガラス繊維が、長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10の間にあるものであり、かつ平均断面積100〜300マイクロ平方メートルのものである、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
  2. (D) 粒子状もしくは板状充填剤がフロゴバイト及びマスコトバイトの何れか1種以上である請求項記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. 請求項1または2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるドアミラー。
  4. 請求項1または2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるインナーミラー用のステー。
  5. 請求項1または2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるアウターハンドル。
  6. 請求項1または2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるワイパー部品。
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