JP5031681B2 - インクジェット用記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット用記録媒体に関する。
銀塩系写真や製版方式の多色印刷によって得られる記録画像と比較して、定着性や発色性の点で遜色のない記録画像を、インクジェット記録方式で出力することが求められている。このような要求を満たすために、インクジェット記録方式等に用いられるインクジェット用記録媒体として、様々な形態のものが提案されている。例えば、インク受容層の構成材料として、アルミナ水和物を含有するインクジェット用記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
また、近年、インクジェット用記録媒体に形成する記録画像は、良好な耐光性、耐ガス性を有することが求められている。そこで、耐光性、耐ガス性を向上させるために、画像退色防止剤としてヒンダードアミン化合物を含有させたインクジェット用記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。また、5価のリン酸誘導体を含有させたインクジェット用記録媒体が提案されている(特許文献3参照)。さらに、5価のリン酸エステル化合物を含有させたインクジェット用記録媒体が提案されている(特許文献4参照)。
特開平7−232475号公報 特開平3−13376号公報 特開2004−188667号公報 特開2006−123316号公報
しかし、特許文献1〜3に記載のインクジェット用記録媒体は、耐光性、耐ガス性、インクの均一な吸収性等を、さらに良好なものとすることが要求されている。また、特許文献4に記載のインクジェット用記録媒体が含有するリン酸エステル化合物は、加水分解性に問題があり、インク受容層の形成に水を使用すると、インクジェット用記録媒体上の記録画像の画像濃度が低下する。よって、リン酸エステル化合物をインク受容層に含有する場合、有機溶剤を必要とする。
従って、本発明は、近年要求されているような、高い耐光性、耐ガス性、インクの均一な吸収性を有するインクジェット用記録媒体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために詳細な検討を行い、以下の本発明を見出した。
即ち、本発明は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有するインクジェット用記録媒体であって、該インク受容層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット用記録媒体である。
一般式(1)
Figure 0005031681
(式中のR、R、Rは、直鎖または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基であって、R、R、Rの少なくとも1つはヒドロキシル基を有する。)
本発明によれば、近年要求されているような、高い耐光性、耐ガス性、インクの均一な吸収性を有するインクジェット用記録媒体を提供することが可能である。
本発明のインクジェット用記録媒体について、以下に詳細に説明する。
本発明のインクジェット用記録媒体は、支持体と、支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有する。インク受容層は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
一般式(1)
Figure 0005031681
(式中のR、R、Rは、直鎖または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基であって、R、R、Rの少なくとも1つはヒドロキシル基を有する。)
上記一般式(1)で表される化合物は、インクジェット用記録媒体中で画像退色防止剤として働き、得られる記録画像の耐光性、耐ガス性等の耐候性は良好なものとなる。本発明の一般式(1)で表される化合物が、インクジェット用記録媒体で画像退色防止剤として働き、得られる記録画像の耐候性が良好なものとなる理由は明らかではないが、本発明者らは、以下のようなメカニズムによるものであると考える。本発明の一般式(1)で表される化合物は、キセノン照射等によりインク成分の染料または顔料分子内に発生する一重項酸素に対して、高いクエンチ能力を有している。これは、一般式(1)で表される化合物中のP−C結合が、P−O結合やP−S結合と比較して、一重項酸素のクエンチ能力が高いことによると考えられる。この結果、一般式(1)で表される化合物を含有するインクジェット記録用媒体の方が、リン酸エステル化合物を含有するインクジェット記録用媒体よりも、得られる記録画像の耐候性がより良好となる。
また、一般式(1)で表される化合物を含有したインクジェット用記録媒体は、インク吸収の均一性が良好である。
以下に、一般式(1)で表される化合物の構造について詳しく説明するが、本発明の一般式(1)で表される化合物は、これらに限定されるものでは無い。
一般式(1)中のR、R、Rの少なくとも1つはヒドロキシル基を有する。このことにより、一般式(1)で表される化合物は水溶性が高くなり、水系インクジェット受容層用塗工液に添加して、インク受容層に含有させることができる。
これまで、−COOM,−SOM(Mは水素原子又は金属原子を表す。)といった可溶化基を有した5価のリン酸エステル化合物が提案されている。これらの化合物は水溶性であり、水系インクジェット用塗工液に添加することができる。しかし、これらの化合物を水系インクジェット受容層用塗工液に添加し、記録媒体の受容層とすると、記録媒体の表面のpHが下がり、記録媒体のインク吸収性や顔料の分散性が劣化し、得られる記録画像の画像品位が劣化する場合がある。
これに対し、本発明の一般式(1)で表される化合物中のR、R、Rに置換したヒドロキシル基は中性可溶化基であり、上記のようなインク吸収性や画像品位への弊害が少ない。
一般式(1)で表される化合物は、特開平4−39324号公報等に示される、工業的に行なわれている公知の方法で製造することができる。具体的な方法としては、まず、アゾイソブチルニトリル等のアゾビス系ラジカル触媒の存在下で、各種オレフィンへのホスフィンのラジカル付加反応で、アルキルホスフィンを得る。その後、このアルキルホスフィンを過酸化水素で酸化することによって対応するホスフィンオキシドへ添加し、一般式(1)で表される化合物を製造する。例えば、トリス−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイドは、アゾビス系ラジカル触媒の存在下でアリルアルコールとホスフィンを反応させて得られるトリス−ヒドロキシプロピルホスフィンを過酸化水素で酸化することで製造される。
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。例えば、ジメチルヒドロキシメチルホスフィンオキサイド、ジメチルヒドロキシエチルホスフィンオキサイド、ジエチルヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、エチル−ビス(3−ヒドロキシエチル)ホスフィンオキサイド、エチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシメチルホスフィンオキサイド、トリス−2−ヒドロキシエチルホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、トリス−4−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド、トリス−ヒドロキシペンチルホスフィンオキサイド、トリス−ヒドロキシヘキシルホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、化合物中のリン含有率、入手の容易さの観点から、トリス−n−ブチルホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、トリス−4−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドが好ましい。さらに、リン化合物が高い水溶性を示し、水系インクジェット受容層用塗工液への添加が容易であるという観点から、特にトリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、トリス−4−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド、トリス−3−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイドが好ましい。
上記の化合物のうち、4種類の化合物の構造を以下に示す。
(トリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド)
Figure 0005031681
(トリス−4−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド)
Figure 0005031681
(トリス−3−ヒドロキシブチルホスフィンオキサイド)
Figure 0005031681
(n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド)
Figure 0005031681
一般式(1)で表される化合物をインク受容層中に含有させる方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(a)顔料等の微粒子の分散体中に一般式(1)で表される化合物を添加した後、この分散体を、支持体上に塗工、乾燥させてインク受容層とする方法。
(b)予めインク受容層を形成し、インク受容層上に一般式(1)で表される化合物を含有する塗工液を塗工し、一般式(1)で表される化合物をインク受容層中に浸透させ、含有させる方法。
一般式(1)で表される化合物を支持体、インク受容層に含有させる方法としては、製造が容易であるという理由で、(a)の方法が好ましい。
本発明のインクジェット用記録媒体のインク受容層は、上記一般式(1)で表される化合物以外に、顔料、バインダーを含有することが好ましい。顔料としては、無機顔料及び有機顔料を使用することができる。
無機顔料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
有機顔料としては、例えばスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。
顔料は、上記の中から1種、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの顔料でも、インク吸収性、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性の点で、無機顔料を用いることが好ましい。また、無機顔料でも、アルミナ水和物及びシリカ、特にはアルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物は、顔料自体が高い染料定着能力を持っており、シリカの様に別途染料定着剤を多量に添加する必要がなく、それ自体で高い細孔容積とインク吸収が得られるためである。
顔料の平均粒子径は、1mm以下であることが好ましい。また、平均粒子径が1mm以下であり、シリカ微粒子、または、アルミナ、アルミナ水和物等のアルミナ系水和物であることが、透明性、光沢性の観点からより好ましい。このシリカ微粒子としては、市場より入手可能なコロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子が好ましい。また、シリカ微粒子として特に好ましいものとして、例えば、特許第2803134号公報や特許第2881847号公報に開示されたものを挙げられる。アルミナ系顔料の中でも、アルミナ水和物が好ましい。アルミナ水和物とは、例えば、下記一般式(2)により表されるものである。
一般式(2)
Al−n(OH)2n・mH
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。また、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る)。
アルミナ水和物は、一般的には、公知の方法で製造することができる。この具体的な方法としては、アルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解を行なう方法(米国特許第4242271号明細書、米国特許第4202870号明細書)を挙げることができる。また、アルミン酸ナトリウムの水溶液に硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行なう方法(特公昭57−447605号公報)を挙げることができる。
アルミナ水和物の中でも、X線回折法による分析でベーマイト構造若しくは非晶質を示すものが好ましい。このアルミナ水和物としては特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が好ましい。
また、インクジェット用記録媒体のインク受容層中において、一般式(1)で表される化合物の含有量を固形分換算質量でA質量部、顔料の含有量を固形分換算質量でB質量部としたときに、A/Bが、
1≦(A/B)×100≦20.0
の関係を満たすことが好ましい。0.1≦(A/B)×100であることが、記録画像の耐光性が良好となるため好ましい。また、0.2≦(A/B)×100であることがより好ましく、3.0≦(A/B)×100であることがさらに好ましい。さらに、(A/B)×100≦20.0であることが、記録画像の画像退色防止剤の添加によるインク吸収性の均一性の劣化を抑制可能であるため好ましく、(A/B)×100≦6.0であることがより好ましい。
本発明のインクジェット用記録媒体に含有させるバインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の従来公知のバインダーが挙げられる。これらのバインダーは単独、又は複数種を組み合わせて使用できる。なお、バインダーとしては水溶性樹脂を用いることが好ましい。水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコールを使用することがより好ましい。インク受容層中に顔料を含有する場合、インク受容層中のバインダーの含量は、顔料100質量部に対して、5質量部以上とすることが好ましい。5質量部未満であると、受容層の強度が低下する傾向となる。また、20質量部以下とすることが好ましく、15質量部以下とすることがより好ましい。20質量部を超えると、細孔容積が低下し、インク吸収性が低下する。
また、インク受容層中には、架橋剤としてホウ酸化合物を1種以上、含有させることが好ましい。この際、使用できるホウ酸化合物としては、例えばオルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、ジホウ酸等を挙げることができる。また、ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましく、具体的には、例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na・10HO、NaBO・4HO等)、カリウム塩(K・5HO、KBO等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH・3HO、NHBO等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。これらの中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。
ホウ酸化合物は、インク受容層中のバインダー100質量部に対して、1.0質量部以上含有させることが好ましい。また、20.0質量部以下含有させることが好ましく、15.0質量部以下含有させることがより好ましい。ホウ酸化合物の含有量が上記条件を満たすことで、塗工液の経時安定性を向上させることができる。具体的には、生産時に塗工液を長時間にわたって使用した場合であっても、塗工液の粘度上昇や、ゲル化物の発生を抑制する。この結果、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が不要となり、生産性を向上させることができる。尚、さらに製造条件等を更に適切に選択することによって、クラック(ひび割れ)発生をより効果的に防止することができる。
インク受容層は、インク吸収性、定着性を良好なものとするため、インク受容層の細孔物性が、下記の条件を満足することが好ましい。
(1)インク受容層の細孔容積は、0.1cm/g以上、1.0cm/g以下の範囲内にあることが好ましい。インク受容層の細孔容積が0.1cm/g以上の場合には、十分なインク吸収性能が得られ、インク吸収性に優れたインク受容層とすることができる。また、インク受容層の細孔容積が1.0cm/g以下の場合には、インク溢れ・画像滲みを防止すると共に、クラックや粉落ちを抑制可能である。
(2)インク受容層のBET比表面積は、20m/g以上、450m/g以下であることが好ましい。インク受容層のBET比表面積が20m/g以上の場合、十分な光沢性が得られ、透明性が向上する。更に、インク中の染料の吸着性が向上する。また、インク受容層のBET比表面積が450m/g以下の場合、インク受容層にクラックが生じにくくなる。なお、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求めることができる。
また、インク受容層中には、一般式(1)で表される化合物の他に、必要に応じてその他の添加剤を添加することもできる。その他の添加剤としては、分散剤、増粘剤、PH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
インク受容層の乾燥塗工量は、30g/m以上、60g/m以下とすることが好ましい。インク受容層の乾燥塗工量が30g/m以上の場合、十分なインク吸収性が得られ、インク溢れが生じてブリーディングが発生することを抑制可能である。また、高温、高湿の環境下においても十分なインク吸収性を有するインク受容層を得ることができる。特に、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクに、ブラックインクの他、複数の淡色インクを使用するプリンタに用いた場合、この傾向が顕著となる。また、インク受容層の乾燥塗工量が60g/m以下の場合、クラックの発生を抑えることができる。また、インク受容層の塗工ムラが生じにくくなり、安定した厚みのインク受容層を製造することができる。
本発明のインクジェット用記録媒体で用いる支持体としては、例えば、フィルム、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィン等の樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)等からなるものを好ましく使用することができる。支持体に使用するフィルムとしては、以下の透明な熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等が挙げられる。
また、これら以外にも、支持体として、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填若しくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙等)を使用できる。また、ガラス又は金属等からなるシート等を使用しても良い。更に、これらの支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例で使用したリン化合物)
本発明の一般式(1)で表される化合物として、下記のリン化合物1〜4を使用した。
(リン化合物1)
Figure 0005031681
(リン化合物2)
Figure 0005031681
(リン化合物3)
Figure 0005031681
(リン化合物4)
Figure 0005031681
1.インクジェット用記録媒体の作製
(支持体の作製)
下記のようにして支持体を作製した。先ず、下記組成の紙料を調整した。
パルプスラリー 100質量部
濾水度450ML CSF(CANADIAN STANDARAD FREENESS)の広葉樹晒しクラフトパルプ(lBKP) 80質量部
濾水度480ML CSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP) 20質量部
カチオン化澱粉 0.6質量部
重質炭酸カルシウム 10質量部
軽質炭酸カルシウム 15質量部
アルキルケテンダイマー 0.1質量部
カチオン性ポリアクリルアミド 0.03質量部
次に、この紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸し、さらに乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
次に、この基紙Aのインク受容層を設ける表面に、低密度ポリエチレン(70質量部)、高密度ポリエチレン(20質量部)、酸化チタン(10質量部)からなる樹脂組成物を25g/m塗布した。更に、基紙Aの裏面他方の面に、高密度ポリエチレン(50質量部)、低密度ポリエチレン(50質量部)からなる樹脂組成物を、25g/m塗布することにより、両面を樹脂被覆した支持体を得た。
(微粒子の分散体1の作製)
純水中に、無機顔料粒子としてアルミナ水和物(DISPERAL HP14、サソール製)を23質量%となるように添加して、アルミナ水和物水溶液を得た。次に、このアルミナ水和物水溶液に対して、固形分換算質量で(酢酸)/(アルミナ水和物)×100=2.0となるように酢酸を加えて攪拌し、微粒子の分散体1を作製した。
(微粒子の分散体2の作製)
純水中に、無機顔料粒子として、シリカ微粒子である気相法シリカ(アエロジル380、日本アエロジル製)を10質量%となるように添加した。次に、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(シャロールDC902P、第一工業製薬製)を、固形分換算質量で(シャロールDC902P)/(シリカ)×100=4.0となるように加えた。この後、高圧ホモジナイザーで分散し、微粒子の分散体2を作製した。
(実施例1)
ポリビニルアルコールPVA235(クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。前記微粒子の分散体1に、リン化合物1を固形分換算質量で(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=0.1となるように加え、攪拌した。さらに、前記作成したPVA溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(アルミナ水和物)×100=10となるように加え、混合して混合液を得た。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=1.7となるように加え、混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、上記支持体の表面に、乾燥塗工量が35g/mとなるようにダイコーターで塗工し、インク受容層とした。このようにして、インクジェット用記録媒体1を作製した。
(実施例2)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=1となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体2を作製した。
(実施例3)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=2となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体3を作製した。
(実施例4)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=4となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体4を作製した。
(実施例5)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=6となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体5を作製した。
(実施例6)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=10となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体6を作製した。
(実施例7)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=20となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体7を作製した。
(実施例8)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=25となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体8を作製した。
(実施例9)
実施例1において、リン化合物1を(リン化合物)/(アルミナ水和物)×100=0.05となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で、インクジェット用記録媒体9を作製した。
(実施例10)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物2とした以外は実施例4と同様の方法で、インクジェット用記録媒体10を作製した。
(実施例11)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物3とした以外は実施例4と同様の方法で、インクジェット用記録媒体11を作製した。
(実施例12)
前記作製した微粒子の分散体1に、前記作成したPVA溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(アルミナ水和物)×100=10となるように混合して混合液を得た。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=1.7となるように加え、混合してインク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、上記支持体の表面に、乾燥塗工量が35g/mとなるようにダイコーターで塗工し、インク受容層を支持体上に形成した。
さらに、このインク受容層上に、リン化合物1の5質量%メタノール溶液を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100=4.0となるようにメイヤーバーで塗工し、インク受容層に浸透させた。このようにして、インクジェット用記録媒体12を作製した。
(実施例13)
実施例12において、リン化合物1をリン化合物4に変更した以外は実施例12と同様の方法でインクジェット用記録媒体13を作製した。
(実施例14)
前記作製した微粒子の分散体2にリン化合物1を固形分換算質量で(リン化合物)/(シリカ)×100=4.0となるようにリン化合物1を加え、攪拌した。次に、実施例1に記載のPVA水溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(シリカ)×100=20となるように加えて混合液を得た。また、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=6.0となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、実施例1で用いたものと同様の支持体の表面に、実施例1と同様の方法により、乾燥塗工量25g/mとなるように塗工して、インクジェット用記録媒体14を得た。
(実施例15)
前記作製した微粒子の分散体2に、実施例1に記載のPVA水溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(シリカ)×100=20となるように加えて混合液を得た。また、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=6.0となるように加え、混合してインク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、実施例1で用いたものと同様の支持体の表面に、実施例1と同様の方法により、乾燥塗工量25g/mとなるように塗工し、インク受容層を支持体上に形成した。
さらに、このインク受容層上に、リン化合物1の5質量%メタノール溶液を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(シリカ)×100=4.0となるようにメイヤーバーで塗工し、インク受容層に浸透させた。このようにして、インクジェット用記録媒体15を作製した。
(実施例16)
実施例14において、リン化合物1をリン化合物2に変更した以外は実施例14と同様の方法でインクジェット用記録媒体16を作製した。
また、比較例に用いる化合物として、下記のリン化合物5〜7を使用した。
(リン化合物5)
Figure 0005031681
(リン化合物6)
Figure 0005031681
(リン化合物7)
Figure 0005031681
(比較例1)
前記作製した微粒子の分散体1に、前記作成したPVA溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(アルミナ水和物)×100=10となるように加え、混合して混合液を得た。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=1.7となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、ダイコーターにより、上記の両面を樹脂被覆した支持体の表面の上に、乾燥塗工量が35g/mとなるように塗工して、インクジェット用記録媒体17を作製した。本比較例は、インク受容層中にリン化合物を含有させていない例である。
(比較例2)
実施例10において、リン化合物1をリン化合物5に変更し、メタノールをMIBK(メチルイソブチルケトン)に変更した以外は実施例9と同様の方法でインクジェット用記録媒体18を作製した。
(比較例3)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物6に変更した以外は実施例4と同様の方法でインクジェット用記録媒体19を作製した。
(比較例4)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物7とした以外は実施例1と同様の方法で、作製した微粒子の分散体1に、リン化合物7を加え攪拌したが、リン化合物7は溶解せず、均一な分散体を得ることが出来なかった。
(比較例5)
実施例12において、リン化合物1をリン化合物6に変更し、メタノールをMIBK(メチルイソブチルケトン)に変更した以外は実施例12と同様の方法でインクジェット用記録媒体20を作製した。
(比較例6)
前記作製した微粒子の分散体2に、実施例1に記載のPVA水溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(シリカ)×100=20となるように加え、混合液を得た。また、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100=6.0となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、実施例1で用いたものと同様の支持体上に、実施例1と同様の方法により、乾燥塗工量25g/mとなるように塗工して、インクジェット用記録媒体21を作製した。
(比較例7)
実施例12において、リン化合物1をリン化合物6に変更した以外は実施例12と同様の方法で、インクジェット用記録媒体22を作製した。
(比較例8)
実施例15において、リン化合物1をリン化合物6に変更し、メタノールをMIBK(メチルイソブチルケトン)に変更した以外は実施例15と同様の方法でインクジェット用記録媒体23を作製した。
(比較例9)
実施例12において、リン化合物1をリン化合物7に変更した以外は実施例12と同様の方法でインクジェット用記録媒体24を作製した。
2.インクジェット用記録媒体の評価
上記実施例1〜16、並びに比較例1〜9で作製したインクジェット用記録媒体1〜24を用い、記録物の耐候性(耐光性、耐オゾン性)、インク吸収性(均一性)を下記の方法、基準で評価した。評価結果を表1に示す。
(記録物の作製)
インクジェット記録装置として、PIXUS iP8600(インク:BCI−7、キヤノン製)を使用した。該インクジェット記録装置により、インクジェット用記録媒体1〜24の記録面に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチを、印字濃度(O.D.)が1.0となるように印字し、記録物を作製した。
<耐光性>
上記記録物に対して、キセノンフェザーメーター(型式:XL−750、スガ試験機製)を用いて、キセノン暴露試験を行なった。
・試験条件
積算照射:40000klux・hr
試験槽内温湿度条件:23℃、50%RH
・耐光性の評価方法;
上記記録物の試験前後の画像濃度を分光光度計(商品名:スペクトリノ、グレタグマクベス製)を用いて測定し、次式より濃度残存率を求め、以下の判定基準により判定した。
濃度残存率(%)=(試験後の画像濃度/試験前の画像濃度)×100
[判定基準]
A;イエロー濃度残存率85%以上。
B;イエロー濃度残存率80%以上85%未満。
C;イエロー濃度残存率70%以上80%未満。
D;イエロー濃度残存率70%未満。
<耐オゾン性>
オゾンウエザオメーター(型式:OMS−HS、スガ試験機製)を用いて、オゾン暴露試験を行った。
・試験条件
暴露ガス組成:オゾン10ppm
試験時間:8時間
試験槽内温湿度条件:23℃、50%RH
・耐オゾン性の評価方法;
耐光性試験で用いたのと同様の記録物の、試験前後のL*値、a*値およびb*値を、分光光度計(商品名:スペクトリノ、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、次式よりΔEを求め、以下の判定基準により判定した。
ΔE={(試験前の記録物のL値−試験後の記録物のL値)+(試験前の記録物のa値−試験後の記録物のa値)+(試験前の記録物のb値−試験後の記録物のb値)1/2
[判定基準]
A;ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのΔEのうち、最大の値が5未満。
B;ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのΔEのうち、最大の値が5以上10未満。
C;ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのΔEのうち、最大の値が10以上20未満。
D;ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのΔEのうち、最大の値が20以上。
<インク吸収性>
(記録物の作製)
インクジェット記録装置として、PIXUS iP8600(インク:BCI−7、キヤノン製)を使用した。該インクジェット記録装置により、インクジェット用記録媒体1〜24の記録面に、シアン単色からマゼンタ単色までの中間色8階調をパッチ状に印字して、記録物を作製した。
上記記録物に対して、画像品位を下記判定基準で目視により判定した。
[判定基準]
A;パッチ内の画像は、インクの浸透が非常に均一で、濃淡のムラは認めれない。
B;パッチ内の画像は、インクの浸透が均一で、濃淡のムラはほぼ認められない。
C;パッチ内の画像は、インクの浸透に差があり、濃淡のムラが認められる。
D;パッチ内の画像は、インクの浸透にかなりの差があり、濃淡のムラが目立つ。
Figure 0005031681
表1の実施例1〜16と比較例1〜9の結果を比較すると、インク受容層中に一般式(1)で表される化合物を含有したインクジェット用記録媒体は、耐オゾン性、対光性、インク吸収性の全ての面で優れていることが分かる。

Claims (5)

  1. 支持体と、該支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有するインクジェット用記録媒体であって、
    該インク受容層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット用記録媒体。
    一般式(1)
    Figure 0005031681
    (式中のR、R、Rは、直鎖または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基であって、R、R、Rの少なくとも1つはヒドロキシル基を有する。)
  2. 前記インク受容層が顔料を含有する請求項1に記載のインクジェット用記録媒体。
  3. 前記顔料がアルミナ水和物である請求項2に記載のインクジェット用記録媒体。
  4. 前記一般式(1)で表される化合物の含有量を固形分換算質量でA質量部、前記顔料の含有量を固形分換算質量でB質量部としたときに、A/Bが、
    0.1≦(A/B)×100≦20.0
    を満たす請求項2または3に記載のインクジェット用記録媒体。
  5. インク受容層が水溶性樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用記録媒体。
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