JP4987225B2 - 顕微鏡装置 - Google Patents
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Description
また、蛍光は、試料から反射されるその他の波長の光に比べて光量が非常に小さい。このため、所望の蛍光波長以外の波長を遮断するバリア性能が高くないと、蛍光を高精度に検出することが困難になる。
しかるに、特許文献1に記載のような従来の音響光学素子を用いた蛍光フィルタでは、所望の蛍光波長以外の波長を遮断するバリア性能を高くすることが困難であり、高精度な蛍光検出が困難であった。
本発明の蛍光フィルタによれば、蛍光が音響光学素子を2回通過するようにしたので、フィルタを交換することなく、簡単な構成で、バリア性能を格段に向上させることができ、高精度に蛍光を検出することができる。
即ち、1回目に音響光学素子に入射する光には、試料で発した所望の蛍光波長の他に、試料で反射した励起波長等、所望の蛍光波長以外の波長の光が、蛍光に比べて遥かに多くの割合で含まれている。音響光学素子では、所望の蛍光波長を±1次回折光として回折、偏向するとともに、多くの割合で含まれている蛍光以外の波長を0次回折光として通過させる。(なお、0次回折光について使用の用途がない場合には、0次回折光の光路上に、迷光を防ぐための光学的な遮光部材を設けて0次回折光を遮断する。)このとき、音響光学素子で回折、偏向された±1次回折光には、所望の蛍光波長の他に、わずかな割合で蛍光波長以外の波長が含まれる。(ここで、音響光学素子での回折に際し、±1次回折光中に含まれる蛍光波長以外の波長の割合をn/100とする)。本発明では、この音響光学素子で1回回折、偏向された1次回折光を、さらに音響光学素子に入射させる(2回目の入射)。このとき、音響光学素子で遮断対象となる波長の光量は、1回目に遮断対象となる波長の光量に比べて遥かに小さくなっている。この遥かに小さい光量の波長の光を音響光学素子で0次回折光として通過させ、光学的な遮光部材を設けて遮断して、1次回折光から除外することになるため、音響光学素子で回折、偏向された光に含まれる蛍光波長以外の波長の割合が2乗倍(即ち、(n/100)2)に少なくなる。これにより、本発明の蛍光フィルタによれば、バリア性能を格段に向上させることができる。
なお、本発明の蛍光フィルタにおいて、蛍光が2回通過する音響光学素子を2つ有し、該2つの音響光学素子を通過した蛍光がそれぞれ別の検出器で検出されるようにしてもよい。このようにすれば、蛍光の偏光成分ごとの信号強度を検出することができる。
また、本発明の蛍光フィルタにおいては、前記光合成素子をアキシコーンプリズムで構成するのが好ましい。
図10は、音響光学素子に印加するRF周波数に対する回折効率の関係を示すグラフである。
ここで、音響光学素子の回折効率をη、音響光学素子に印加する高周波電圧(RF)のパワーをP0、音響光学素子に印加する電圧の周波数をf、1次回折光の強度が最大となる周波数をf0、Δf=f−f0、カットオフ周波数をΔfcとする。すると、回折効率ηは次式のように表すことができる。
音響光学素子を2回通過させたときの回折効率は、η2で表すことができる。図10のグラフに示すように、2回通過させたときの回折効率は二乗で効いてくる。このため、同じ周波数Δfずれた光のバリア性能は格段に向上する。
図1は本発明の実施例1〜実施例5にかかる蛍光フィルタを備えた顕微鏡装置の一構成例を示す概略構成図である。
本構成例における実施例1〜実施例5にかかる蛍光フィルタを備えた顕微鏡装置は、レーザ光源51と、ファイバ52と、走査ユニット62と、瞳投影レンズ56aと、結像レンズ56bと、対物レンズ56と、制御部63を有している。
走査ユニット62は、コリメータレンズ53と、ビームスプリッタ54と、光走査手段55と、反射ミラー58と、共焦点レンズ59と、共焦点ピンホール60と、レンズ61と蛍光フィルタユニット部1を有している。
蛍光フィルタユニット部1は後述する実施例1〜5のいずれかの蛍光フィルタと検出器(PMT)を有して構成されている。なお、図1では、制御部と蛍光フィルタユニット部1とを接続する回線は便宜上一つのみ示してあるが、実際の回線の個数は、各実施例において用いる検出器の個数及び蛍光フィルタを構成する音響光学素子の個数によって異なり、それぞれの検出器及び音響光学素子に接続されている。
なお、本発明の蛍光フィルタが適用される顕微鏡装置は、図1のレーザ走査型共焦点顕微鏡に限定されるものではない。蛍光観察が可能な顕微鏡装置であれば、どのような光学構成の顕微鏡装置にも本発明の蛍光フィルタは適用可能である。
実施例1の蛍光フィルタ101は、偏光ビームスプリッタ11と、音響光学素子(ATOF)12と、ミラー13,14と、λ/2板15を有して構成されている。なお、16は検出器(PMT)である。蛍光フィルタ101と検出器16とで図1の顕微鏡装置における蛍光フィルタ部1を構成している。(なお、図2においては、図示を省略したが、0次回折光について使用の用途がない場合には、音響光学素子12の0次回折光の光路上に、迷光を防ぐための光学的な遮光部材を設けて0次回折光を遮断するように構成する。)
偏光ビームスプリッタ11に入射したS偏光成分の光は、偏光ビームスプリッタ11で反射して、音響光学素子12に導かれる。音響光学素子12に入射したS偏光成分の光のうち所望の蛍光の周波数に合わせて設定されたRF周波数に一致する周波数の波長は、音響光学素子12を介して±1次回折光のうち他方の1次回折光として回折され、検出器16方向に偏向され、検出器16で検出される。
このため、実施例1の蛍光フィルタ101によれば、従来の蛍光フィルタに比べて、フィルタを交換することなく、簡単な構成で、バリア性能を格段に向上させることができ、高精度に蛍光を検出することができる。
実施例2の蛍光フィルタ102は、偏光ビームスプリッタ11と、音響光学素子(AOTF)12と、ミラー13,14と、λ/2板15とを有して構成される第1の蛍光フィルタ系10Aと、偏光ビームスプリッタ21と、音響光学素子(AOTF)22と、ミラー23,24,25と、λ/2板26と、ミラー27とを有して構成される第2の蛍光フィルタ系10Bとを有して構成されている。なお、16は第1のフィルタ系10Aの音響光学素子12からの±1次回折光のうちの他方の1次回折光及び第2のフィルタ系10Bの音響光学素子22からの±1次回折光のうちの一方の1次回折光を検出する検出器(PMT)である。蛍光フィルタ102と検出器16とで図1の蛍光フィルタ部1を構成している。(なお、図3においては、図示を省略したが、0次回折光について使用の用途がない場合には、音響光学素子12,22のそれぞれの0次回折光の光路上に、迷光を防ぐための光学的な遮光部材を設けて0次回折光を遮断するように構成する。)
±1次回折光のうちの一方の1次回折光として回折されたP偏光成分の光は、ミラー13,14で反射し、λ/2板15に導かれ、λ/2板15を通過することによりS偏光成分の光に偏光されて、偏光ビームスプリッタ11に入射する。
偏光ビームスプリッタ11に入射したS偏光成分の光は、偏光ビームスプリッタ11で反射して、音響光学素子12に導かれる。音響光学素子12に入射したS偏光成分の光のうち所望の蛍光の周波数に合わせて設定されたRF周波数に一致する周波数の波長は、音響光学素子12を介して±1次回折光のうち他方の1次回折光として回折され、検出器16方向に偏向され、検出器16で検出される。
±1次回折光のうちの他方の1次回折光として回折されたS偏光成分の光は、ミラー23,24,25で反射し、λ/2板26に導かれ、λ/2板26を通過することによりP偏光成分に偏光されて、偏光ビームスプリッタ21に入射する。
偏光ビームスプリッタ21に入射したP偏光成分の光は、偏光ビームスプリッタ21を透過して、音響光学素子22に導かれる。音響光学素子22に入射したP偏光成分の光のうち所望の蛍光の周波数に合わせて設定されたRF周波数に一致する周波数の波長は、音響光学素子22を介して±1次回折光のうちの一方の1次回折光として回折され、ミラー27方向に偏向される。偏向された光は、ミラー27で反射して、検出器16で検出される。
また、実施例2の蛍光フィルタ102によれば、一つの検出器でP波とS波の両方の偏光成分の蛍光を検出することができ、光量ロスなく効率よく蛍光を検出することができる。
なお、第1のフィルタ系10Aから検出器16に向かう光と第2のフィルタ系10Bから検出器16に向かう光は、互いに平行な光線になり重ならないが、検出器16は、互いに平行な光線のいずれも受光できる大きさの受光面を備えている。
実施例3の蛍光フィルタ103は、第1のフィルタ系10Aの音響光学素子12からの回折光を検出する検出器(PMT)16とは別個に、第2のフィルタ系10Bの音響光学素子22からの回折光を検出する検出器(PMT)28を有している。蛍光フィルタ103と検出器16,28とで図1の蛍光フィルタ部1を構成している。(なお、図4においては、図示を省略したが、0次回折光について使用の用途がない場合には、音響光学素子12,22のそれぞれの0次回折光の光路上に、迷光を防ぐための光学的な遮光部材を設けて0次回折光を遮断するように構成する。)
実施例3の蛍光フィルタ103によれば、第1のフィルタ系10Aと第2のフィルタ系10Bとでそれぞれ別個に検出器を設けたので、別個の検出器でもって蛍光の偏光成分ごとの信号強度を検出することができる。
その他の構成及び作用効果は実施例2の蛍光フィルタとほぼ同じである。
実施例4の蛍光フィルタ104は、偏光ビームスプリッタ11と、合成プリズムとしてのアキシコーンプリズム31と、音響光学素子(AOTF)12と、ミラー13と、1/2λ板15と、ミラー14と、ミラー32と、λ/2板33を有して構成されている。なお、16は検出器(PMT)である。蛍光フィルタ104と検出器16とで図1の蛍光フィルタ部1が構成される。(なお、図5においては、図示を省略したが、0次回折光について使用の用途がない場合には、音響光学素子12の0次回折光の光路上に、迷光を防ぐための光学的な遮光部材を設けて0次回折光を遮断するように構成する。)
アキシコーンプリズム31は、図6に示すように、異なる2方向から入射された光線を平行に出射する、即ち、同じ方向に導く機能を有している。
音響光学素子12に入射した互いに平行な光は、互いに平行な状態のまま、実施例1と同様に、音響光学素子12に入射したP偏光成分の光のうち所望の蛍光の周波数に合わせて設定されたRF周波数に一致する周波数の波長が、音響光学素子12を介して±1次回折光のうちの一方の1次回折光として回折され、ミラー13方向に偏向される。
偏光ビームスプリッタ11に入射した互いに平行なS偏光成分の光は、互いに平行な状態のまま、偏光ビームスプリッタ11で反射して、アキシコーンプリズム31に入射する。
なお、異なる2方向からの光は、アキシコーンプリズム31を介して平行な光線になり、重ならないが、検出器16は、互いに平行な光線のいずれも受光できる大きさの受光面を備えている。
その他の作用効果は、実施例1の蛍光フィルタとほぼ同じである。
実施例5の蛍光フィルタ105は、実施例4の蛍光フィルタ105における偏光回転素子を図7に示した偏光ビームスプリッタとλ/4板とミラーを有して構成したものである。
即ち、実施例5の蛍光フィルタ105は、図5に示した構成におけるλ/2板15に代えて、偏光ビームスプリッタ41と、λ/4板42と、ミラー43を有し、さらに、ミラー44を有して構成されている。その他の構成は、実施例4の蛍光フィルタ104とほぼ同じである。
実施例6の顕微鏡装置は、図2に示した実施例1の蛍光フィルタ101の音響光学素子12の0次回折光の光路上をレーザ光源51からのレーザ光が通過するように蛍光フィルタ部1を配置して構成されている。また、コリメータレンズ53と蛍光フィルタ101の音響光学素子12との間には、コリメータレンズ53からのレーザ光の偏光成分をP偏光に変換する偏光板64が設けられている。
音響光学素子12を通過したP偏光は偏光ビームスプリッタ11を透過し、レンズ61、共焦点ピンホール60、共焦点レンズ59を経て平行光の状態で、光走査手段55で所定方向に偏向され、結像レンズ56b、対物レンズ56を経て、試料57上に集光、照射される。
偏光ビームスプリッタ11に入射した光は、実施例1と同様の経路を辿り、所望蛍光波長が検出器16で検出される。
10A 第1の蛍光フィルタ系
10B 第2の蛍光フィルタ系
11、21、41 偏光ビームスプリッタ
12、22 音響光学素子
13、14、23、24、25、27、32、43、44 ミラー
15、26、33 λ/2板
16、28 検出器(PMT)
31 合成手段(アキシコーンプリズム)
42 λ/4板
51 レーザ光源
52 ファイバ
53 コリメータレンズ
54 ビームスプリッタ
55 走査手段
55a、55b 光走査ミラー
56 対物レンズ
56a 瞳投影レンズ
56b 結像レンズ
57 試料
58 反射ミラー
59 共焦点レンズ
60 共焦点ピンホール
61 レンズ
62 走査ユニット
63 制御部
64 偏光板
101、102、103、104、105 蛍光フィルタ
Claims (9)
- 少なくとも一つの音響光学素子を有し、蛍光が同じ前記音響光学素子を2回通過するようにした蛍光フィルタを備えたことを特徴とする顕微鏡装置。
- 少なくとも一つの音響光学素子と、偏光ビームスプリッタと、偏光回転素子を有し、前記偏光ビームスプリッタと前記偏光回転素子を介して、蛍光が前記音響光学素子を2回通過するようにした蛍光フィルタを備えたことを特徴とする顕微鏡装置。
- 前記蛍光フィルタを二つ組み合わせてなる蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡装置。
- 前記音響光学素子を二つ有し、該二つの前記音響光学素子を通過した前記蛍光がそれぞれ別の検出器で検出されるようにした前記蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顕微鏡装置。
- 一つの前記音響光学素子と、偏光ビームスプリッタと、偏光回転素子と、異なる方向から入射された光を同一方向に射出する合成プリズムを有し、前記偏光ビームスプリッタと前記偏光回転素子と前記合成プリズムを介して、前記蛍光が前記音響光学素子を2回通過するようにした前記蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の顕微鏡装置。
- 前記偏光回転素子が、λ/2板で構成されている前記蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項2、請求項2に従属する請求項3又は4、請求項5のいずれかに記載の顕微鏡装置。
- 前記偏光回転素子が、λ/4板とミラーと偏光ビームスプリッタとを組み合わせて構成されている前記蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項2、請求項2に従属する請求項3又は4、請求項5のいずれかに記載の顕微鏡装置。
- 前記合成プリズムが、アキシコーンプリズムで構成されている前記蛍光フィルタを備えたことを特徴とする請求項5、請求項5に従属する請求項6又は7のいずれかに記載の顕微鏡装置。
- 前記蛍光フィルタに備わる前記音響光学素子の0次回折光の光路上を光源からの照明光が通過するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡装置。
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