JP4981386B2 - 熱媒体加熱装置およびそれを用いた車両用空調装置 - Google Patents
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Description
PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
このような特長を有することから、PTCヒータは、多くの技術分野において用いられており、空調の分野においても、例えば、車両用空調装置において、空気加温用の放熱器に供給する熱媒体(ここでは、エンジンの冷却水)を加熱するための加熱装置に適用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この場合、流体流路に対する伝熱面積を大きくすることができるものの、発熱要素であるPTC素子を凹み部に挿入し、それを仕切り壁の壁面に密着させて組み付けることの困難性は避けがたく、流体流路への熱伝導性や加熱装置の組み立て性等について、改善すべき課題を有している。
また、上記の加熱装置を電気自動車用の空調装置に適用した場合、PTCヒータに、例えば300Vの高電圧が印加されることになる。このため、PTCヒータと流体流路との間の電気絶縁性確保が大きな課題の1つとなるが、特許文献1には、そのような課題すら記載されていない。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、PTC素子を挟んでその両面に各々電極板、非圧縮性絶縁層および圧縮性熱伝導層が順次設けられた積層構造のPTCヒータと、該PTCヒータの両面に各々密着させて設けられ、各々内部に熱媒体の流通路が形成された熱媒体流通ボックスと、を備え、前記圧縮性熱伝導層は、圧縮機能が確保可能な厚さを有する圧縮性のシート材により構成され、前記積層構造のPTCヒータと、その両面に設けられる前記熱媒体流通ボックスとは、互いに積層されて締め付け固定されることにより一体化され、前記PTCヒータの両面からの放熱により前記熱媒体流通ボックス内を流通する熱媒体が加熱されるとともに、前記熱媒体流通ボックスのいずれか一方の前記PTCヒータと当接される面とは反対側の面に、基板収容ボックスが設けられ、該基板収容ボックス内に、前記PTCヒータ制御用の制御基板が収納設置されていることを特徴とする。
以下、本発明の一実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。
図1には、本実施形態にかかる車両用空調装置1の概略構成図が示されている。車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調し、それを車室内へと導く空気流路2を形成するためのケーシング3を備えている。
ケーシング3の内部には、空気流路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスして流れる空気量との割合を調整し、その下流側でミックスされる空気の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置される。
冷却器5は、図示省略の圧縮機、凝縮器、膨張弁と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることにより、そこを通過する空気を冷却するものである。
放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10と共に熱媒体循環回路11を構成し、熱媒体加熱装置10により加熱された熱媒体がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
上部熱媒体流通ボックス30は、アルミニウム合金等の熱伝導性材料により構成される長方形状の箱体であり、その上面側には、両端部に形成される一対の入口ヘッダ31および出口ヘッダ32と、この入口ヘッダ31および出口ヘッダ32間に形成される多数のセパレートされた平行な溝状の流通路33と、が設けられる。この入口ヘッダ31および出口ヘッダ32並びに流通路33の上面は、上記した基板収容ボックス20の底面により密閉される(図5参照)。これにより、上部熱媒体流通ボックス30内には、入口ヘッダ31内に流入された熱媒体が多数の流通路33に分配され、流通路33内を同時平行的に流れて出口ヘッダ32に至る熱媒体の流通経路が形成される。また、基板収容ボックス20の底面に設けられている冷却部25が、上記の流通路33内を流通される熱媒体によって冷却される制御基板の冷却構造が提供される。
また、上部熱媒体流通ボックス30の下面側には、PTCヒータ40を収容設置するための凹面37(図5,6参照)が設けられる。この凹面37は、熱媒体が流通する流通路33の裏面と対向され、PTCヒータ40が密着されるよう平坦面とされている。
PTCヒータ40は、長方形状に構成された平板状のPTC素子41を発熱要素とし、このPTC素子41を挟んでその両面に各々電極板42、非圧縮性絶縁層43および圧縮性熱伝導層44が順次積層されて設けられた積層構造を有するものである。
PTC素子41は、複数組、例えば4組のPTC素子41が並置されて設けられたものであり、制御基板22に組み込まれている制御回路により、各々PTC素子41単位でオンオフ制御される構成とされている。
非圧縮性絶縁層43は、長方形状の薄板であり、アルミナ等の絶縁材により構成され、熱伝導性を有するものである。この非圧縮性絶縁層43は、電極板42よりも大きな面積を有し、電極板42の外面側に積層された状態において、その四辺が電極板42の四辺よりも少し外側に延出されるようになっている(図5参照)。
また、圧縮性熱伝導層44は、シリコンシートにより構成される場合、その厚さが0.4mm〜2.0mmとされる。これは、厚さを2.0mm以下に制限し、発熱要素であるPTC素子41と上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50間の熱抵抗を極力小さくするためである。また、厚さを少なくとも0.4mm以上とすることにより圧縮機能を確保し、上部熱媒体流通ボックス30と下部熱媒体流通ボックス50との間にPTCヒータ40を組み付ける際に、圧縮性を利用してPTCヒータ40に上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50を確実に密着させるとともに、組み付け寸法公差を吸収するためである。
下部熱媒体流通ボックス50は、アルミニウム合金等の熱伝導性材料により構成される長方形状の箱体であり、その下面側には、一端部に形成される一対の入口ヘッダ52および出口ヘッダ53と、この入口ヘッダ52から他端側に延び、他端部でUターンして出口ヘッダ53に戻る、多数のセパレートされた平行な溝状の流通路54と、が設けられる。この入口ヘッダ52および出口ヘッダ53並びに流通路54の下面は、蓋51によって密閉される。これによって、下部熱媒体流通ボックス50内に、入口ヘッダ52内に流入された熱媒体が、入口ヘッダ52により多数の流通路54に分配され、各流通路54内を同時平行的に流通して他端部でUターンし、出口ヘッダ53に至る熱媒体の流通経路が形成される。なお、流通路54は、Uターン流路であり、上部熱媒体流通ボックス30の流通路33よりも長く圧損の増加が予測されることから、流通路54を構成する溝幅を流通路33の溝幅よりも大きくしている(図5,6参照)。
下部熱媒体流通ボックス50の上面は、平坦面55(図,6参照)とされ、上部熱媒体流通ボックス30の平坦な凹面37との間で、PTCヒータ40をサンドイッチ状に挟み込むことにより、これらの面37,55が、PTCヒータ40の圧縮性熱伝導層44に圧着されるようになっている。
こうして、PTCヒータ40は、その両面に各々密着されて設けられる上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50内を流通される熱媒体に対して、両面から放熱して熱媒体を加熱できるよう構成される。
上部熱媒体流通ボックス30の流入口34には、熱媒体循環回路11が接続される。ポンプ9から圧送されてくる低温の熱媒体は、流入口34から入口ヘッダ31に流入し、各流通路33に分配される。各流通路33を出口ヘッダ32に向って流通された熱媒体は、出口ヘッダ32でいったん合流された後、連通口35を経て下部熱媒体流通ボックス50の入口ヘッダ52に流入される。この熱媒体は、入口ヘッダ52により各流通路54に分配され、各流通路54内を流通して他端部でUターンされた後、出口ヘッダ53に至り、再び合流される。この熱媒体は、出口ヘッダ53に連通されている流出口36から熱媒体循環回路11へと流出される。以上により熱媒体の流通経路が構成される。
上記車両用空調装置1において、ブロア4に吸い込まれた外気または車室内空気は、冷却器5へと圧送され、冷却器5でその内部を流通する冷媒と熱交換されて冷却される。この冷却空気は、エアミックスダンパ7により分流され、一部は放熱器6へと流入し、他の一部は放熱器6をバイパスして流れる。放熱器6で加温された空気は、その下流側で放熱器6をバイパスした空気とエアミックスされ、所定温度に調節された後、車室内へと吹き出される。これによって、車室内が温調される。
PTC素子41は、4組設けられており、熱媒体加熱装置10に流入されてくる熱媒体の温度に応じて、制御基板22により各々PTC素子41単位で個別にオンオフされ、加熱能力が制御される。これにより、熱媒体を所定の温度に加熱昇温して流出させることができる。
PTCヒータ40の両面から放熱し、上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50内を流通する熱媒体を加熱する構成とされているため、PTCヒータ40の放熱効率を高めて加熱性能を向上させることができる。また、PTCヒータ40を上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50によりサンドイッチ状に挟み込み、PTCヒータ40の両面に上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50を密着させる積層構造としているため、PTCヒータ40と上部熱媒体流通ボックス30および下部熱媒体流通ボックス50とを密着させて組み付けることができ、熱伝導性および組み立て性を良好にすることができる。
また、上部熱媒体流通ボックス30に接する基板収容ボックス20内に、FET23等の発熱部品を有する制御基板22を設置し、上部熱媒体流通ボックス30内を流通する熱媒体により強制冷却するようにしているため、制御基板22を熱的に保護し、その耐熱信頼性を向上させることができる。特に、上記発熱部品を、基板収容ボックス20に設けられている冷却部25に接触させて熱伝導により直接冷却できるようにしているため、冷却効果をより高めることができる。しかも、上記発熱部品および冷却部25を上部熱媒体流通ボックス30の入口側近傍に配設しているため、比較的低温の熱媒体により効率よく冷却することができる。
4 ブロア
5 冷却器
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
20 基板収容ボックス
22 制御基板
23 FET(発熱部品)
25 冷却部
30 上部熱媒体流通ボックス
33 流通路
40 PTCヒータ
41 PTC素子
42 電極板
43 非圧縮性絶縁層
44 圧縮性熱伝導層(絶縁シート)
50 下部熱媒体流通ボックス
54 流通路
Claims (9)
- PTC素子を挟んでその両面に各々電極板、非圧縮性絶縁層および圧縮性熱伝導層が順次設けられた積層構造のPTCヒータと、
該PTCヒータの両面に各々密着させて設けられ、各々内部に熱媒体の流通路が形成された熱媒体流通ボックスと、を備え、
前記圧縮性熱伝導層は、圧縮機能が確保可能な厚さを有する圧縮性のシート材により構成され、
前記積層構造のPTCヒータと、その両面に設けられる前記熱媒体流通ボックスとは、互いに積層されて締め付け固定されることにより一体化され、
前記PTCヒータの両面からの放熱により前記熱媒体流通ボックス内を流通する熱媒体が加熱されるとともに、
前記熱媒体流通ボックスのいずれか一方の前記PTCヒータと当接される面とは反対側の面に、基板収容ボックスが設けられ、該基板収容ボックス内に、前記PTCヒータ制御用の制御基板が収納設置されていることを特徴とする熱媒体加熱装置。 - 前記PTCヒータの両面に設けられた前記熱媒体流通ボックスの熱媒体流通路が、互いに連通されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
- 前記制御基板に設けられる発熱部品は、前記熱媒体流通ボックスの熱媒体流通路の入口側近傍に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱媒体加熱装置。
- 前記発熱部品は、前記熱媒体流通ボックス内を流通される熱媒体により冷却される部位に接触されて配設されていることを特徴とする請求項3に記載の熱媒体加熱装置。
- 前記圧縮性熱伝導層は、絶縁材により構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
- 前記非圧縮性絶縁層の面積は、前記電極板の面積よりも大きくされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
- 前記圧縮性熱伝導層の面積は、前記非圧縮性絶縁層の面積よりも大きくされていることを特徴とする請求項5または6に記載の熱媒体加熱装置。
- 前記PTC素子は、複数組設けられ、各々PTC素子単位でオンオフ制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
- 外気または車室内空気循環させるブロアと、該ブロアの下流側に設けられる冷却器と、該冷却器の下流側に設けられる放熱器と、を備えた車両用空調装置において、
前記放熱器に、前記請求項1ないし8のいずれかに記載された熱媒体加熱装置により加熱された熱媒体が循環可能に構成されることを特徴とする車両用空調装置。
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