JP4945097B2 - 全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物および光ピックアップレンズホルダー - Google Patents

全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物および光ピックアップレンズホルダー Download PDF

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Description

本発明は、情報記録再生装置に使用される光ピックアップレンズホルダーに使用される全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物の射出成形体を構成部材として含む光ピックアップレンズホルダーに関する。
光ピックアップは、コンパクトディスク、レーザーディスク、ビデオディスク、光磁気ディスク等に用いられ、半導体レーザーをレンズで数μm径スポットまで絞って照射し、ディスク上に記録された情報を読み取るものであり、一般に発光素子、受光素子、ミラー等の光学素子等を固定する光フレームと、対物レンズ、対物レンズホルダーを光ディスクの動きに追従させるためのアクチュエーター部と、このアクチュエーター部を保持し光フレームとの光学路を形成するベースフレームとから構成されている。
光ピックアップの軽量化、低コスト化が促進され、構成材料を金属から樹脂に代替する試みがなされており、特に液晶ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも、機械的特性、成形性、寸法精度、耐熱性および制振性に優れていることからレンズホルダー、ベースフレーム等の光ピックアップ部材として注目されてきた。しかし、近年のデジタルディスク駆動装置の扱う情報の大容量化、高速化に伴い、制振特性に対する要求が厳しくなっており、これを構成する液晶ポリエステル樹脂組成物にも高度の特性が要求されるようになった。
近年の光ピックアップレンズホルダーにおいては、特に厚さ0.3mm以下の部分を含むものにおいては、全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物のみで射出成形体を製造した場合、射出成形製品の表面でのフィブリルの発生・剥離等が光ピックアップレンズホルダーとして問題となる場合がある。
さらに、例えば、0.3mm厚み部分を含むものにおいても、2次共振点の周波数2500Hz以上かつ損失係数0.10以上が要求されるようになっている。また、これらは、低消費電力で駆動されることを前提としているから、金属材料では、低比重であるマグネシユウムでも比重1.8であり、また、その損失係数は小さいから満足することができない。
従来から、光ピックアップ部材に適した液晶ポリエステル樹脂組成物としては、液晶ポリエステルと繊維状充填材からなる組成物がいくつか提案されている。液晶樹脂に炭素繊維(特にPAN系)、ガラス繊維を配合した樹脂組成物の成形体であって、曲げ弾性率が高く、振動減衰性に優れ、成形時のバリの発生が少ない光ピックアップのレンズホルダーが提案されている(特許文献1参照)。液晶ポリエステルに平均繊維径が3〜18μm、平均繊維長が1〜1000μmのピッチ系炭素繊維を配合した樹脂組成物が、優れた機械的特性、耐熱性、薄肉成形性、寸法精度を有し、摺動性と面衝撃強度を改良するものであるとして提案されている(特許文献2参照)。また、液晶ポリマーにガラス繊維、炭素繊維等を配合した、特定のパラメータ(損失係数×弾性率、弾性率/比重)を満たす樹脂組成物用いることを提案している(特許文献3参照)。さらに、サーモトロピック液晶ポリエステルと特定の引張弾性率、繊維長、アスペクト比を有する炭素繊維を配合して、低成形収縮率、寸法精度およびアルミニウムに近い線膨張係数を与える射出成形用組成物が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、通常、ガラス繊維を充填した樹脂組成物では2次共振周波数が低くなる傾向があり、炭素繊維を充填した組成物では、2次共振周波数は高くなるが、損失係数が低くなる傾向がある。また公知の充填剤を多量に含有させた場合、全芳香族ポリエステルの優れた制振性効果が十分に発揮されない場合がある。さらに、従来の技術においては、2次共振点の周波数2500Hz以上かつ損失係数0.10以上を満足する厚さ0.3mm以下の部分を含む光ピックアップレンズホルダーを実現するに至っていない。
特開2002−197691号公報 特開平6−172619号公報 特開平11−126351号公報 特開平7−252406号公報
本発明の課題は、近年のデジタルディスク駆動装置の扱う情報の大容量化、高速化に対応するために、制振特性、特に2次共振点の周波数が2500Hz以上かつ損失係数が0.10以上を満たし、かつ厚さ0.3mm以下の部分を含む光ピックアップレンズホルダー部品を、射出成形で得るための樹脂組成物を提供することを目的とする。
すなわち本発明の第1は、全芳香族液晶ポリエステル100質量部と炭素繊維10〜100質量部とを溶融混練して得ることができる全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物であって、当該組成物中の全芳香族液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸60〜70モル%、テレフタル酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニルあわせて40〜30モル%、イソフタル酸および/またはヒドロキノン0〜5モル%(いずれにおいてもこれらの誘導体を含む。これらの合計を100モル%とする。)を重縮合してなる全芳香族液晶ポリエステルであることおよび炭素繊維が数平均繊維長30〜200μmの範囲にあるピッチ系炭素繊維であることを特徴とする厚さ0.3mm以下の部分を含み、2次共振点の周波数が2500Hz以上かつ損失係数が0.10以上である制振性に優れた光ピックアップレンズホルダーの射出成形に用いられる全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物であり、樹脂成分として非晶性全芳香族ポリエステル樹脂を含まない
本発明の第2は、本発明の第1において、ピッチ系炭素繊維が光学的に異方性を示すメソフェーズピッチを原料とする炭素繊維であることを特徴とする全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、ピッチ系炭素繊維の電気抵抗度が3×10−6Ωm未満、かつ、熱伝導度が500W/mK以上であることを特徴とする全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の第4は、本発明の第1〜3のいずれかの全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる厚さ0.3mm以下の部分を含み、2次共振点の周波数が2500Hz以上かつ損失係数が0.10以上である制振性に優れた光ピックアップレンズホルダーである。
本発明によれば、0.3mm以下の薄肉部を有する光ピックアップレンズホルダーであっても、制振性が改良された光ピックアップレンズホルダーを得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物は、特定の構造を有する全芳香族液晶ポリエステル、それに含有される特定の数平均繊維長を有するピッチ系炭素繊維からなることを基本構造とし、当該全芳香族液晶ポリエステルの有する制振特性を、射出成形工程を経由してその特性を光ピックアップレンズホルダー中に出現させるものである。
本発明で用いる全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、p−ヒドロキシ安息香酸60〜70モル%、テレフタル酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニルあわせて40〜30モル%、イソフタル酸および/またはヒドロキノン0〜5モル%(いずれにおいてもこれらの誘導体を含む。以下、特に断らない限り誘導体を含む。)を使用し、これらの合計を100モル%とした原料を重縮合してなる。イソフタル酸および/またはヒドロキノンは、要求性能に応じて、任意成分として適宜使用することができる。これらの誘導体としては、公知の誘導体のいずれも用いることができるが、フェノール性水酸基をアシル化したもの、例えば、酢酸または無水酢酸によるアセチル化誘導体またはフェノール類によるフェニルエステル化誘導体が溶融重合の進行が早く副反応を抑制でき、モノマー原料の配合が全芳香族ポリエステル樹脂の分子構造に反映されるので好ましい。
本発明者らは、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、4、4´−ジヒドロキシビフェニルが全モノマーの95〜100モル%からなることにより全芳香族ポリエステル分子構造に高い剛直性が付与されること、かつ、その分子構造の60〜70モル%を特に剛直付与効果が高いp−ヒドロキシ安息香酸が占めること、ベンゼン環が炭素結合およびエステル結合等で連結される構造を有すること等が相乗効果的に光ピックアップレンズホルダー等に対する制振性付与に大きな効果を与えていると考えている。
特に、p−ヒドロキシ安息香酸の含有量は重要であって、これは、60モル%未満では剛直性の付与が十分でなく、70モル%を超えると溶融温度が高目となり、通常の射出成形において分解等が生じるためか成形体中での上記分子構造効果の出現が不十分となる。
全芳香族ポリエステルの融点あるいは射出成形温度の低下調整の目的で任意成分として併用可能なモノマーとしては数多くのモノマーが公知であるが、本発明の全芳香族液晶ポリエステルにおいては、上記制振特性を維持するために、イソフタル酸、ヒドロキノンを使用することが好ましい。ただし、これらの芳香族化合物が5モル%を超えると、分子構造の剛直性低下のためか制振特性が低下するので好ましくない。これらが好ましい理由は明らかではないが、これらが芳香族環を1つのみ有する構造を有していることから、これらの含有にかかわらず、全芳香族ポリエステルの分子構造において、ベンゼン環が炭素結合およびエステル結合等で連結される基本構造が保たれるためと推定される。
本発明の全芳香族液晶ポリエステルの製造は、これらのモノマーを使用して公知の溶融重縮合、または、溶融重縮合と固相重縮合で行うことができる。重縮合反応において触媒は使用してもしなくてもよい。使用する触媒としては、ポリエステルの重縮合用触媒として従来公知の触媒を使用することができ、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチアネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒等が挙げられる。
また,溶融重縮合における重合器は特に限定されるものではないが,一般の高粘度反応に用いられる攪拌設備、例えば錨型、多段型、螺旋帯、螺旋軸等の各種形状の攪拌機またはそれらを変形したものを有する攪拌槽型重合器、具体的にはワーナー式ミキサー、バンバリーミキサー、ポニーミキサー、ミュラーミキサー、ロールミル、連続操作可能のコニーダー、パグミル、ギアーコンパウンダーなどから選ぶことが望ましい。
本発明においては、炭素繊維の、(1)低比重かつ高弾性率の特性に基づく効果、(2)繊維状形状の特性に基づく異方性付与効果、(3)成形体が有する光ピックアップレンズホルダーの表面形状にあたえる影響等を考慮しなければならない。
これらの点を総合的に判断して、本発明においては、炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維を使用する。
本発明においては、ピッチ系炭素繊維の数平均繊維長を30〜200μmの範囲とする。この範囲は、射出成形において、これら繊維が本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル組成物の流動に追従して、その流動方向に沿って容易に配向する繊維の数平均長さの範囲であり、かつ、射出成形品としての光ピックアップレンズホルダーに高弾性率を付与する繊維状充填剤材としての形状を有する範囲である。なお、数平均繊維長が30μm未満であると、配向は容易であるが高弾性率を得ることが困難であり、200μmを超えると高弾性率を得ることは容易であるが流動方向に沿った均一な配向を得ることが容易ではない。
本発明者らは、ピッチ系炭素繊維がPAN系炭素繊維に比べて優れた光ピックアップレンズホルダーを与えるのは、ピッチ系炭素繊維が光学的に異方性を示すメソフェーズピッチを原料として得られたものであることに起因する、その異方性(繊維の伸長方向に分子が配向していること、および、その断面構造がオニオン構造を有していること。以下、同じ。)の大きさに依存していると考えている。すなわち、本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物の射出成形体からなる光ピックアップレンズホルダーにおいては、上述した理由により剛直分子の配向方向と含有される高弾性繊維状充填剤の配向方向同士が近似し、かつ、炭素繊維内の配向方向もこれらに近似していることが本発明に係る光ピックアップレンズホルダーにおける良好な制振性を与えているものと考えている。
さらに、ピッチ系繊維の中でもオニオン構造の発現の由来となる芳香環の連続した領域が大きいことが好ましく、発明者らは当該構造が優れた制振性の寄与に関していると考えている。この領域のピッチ系炭素繊維中の相対的な大きさは、電気抵抗度、熱伝導度の値に対応することが経験的に知られているから、これらの値がそれぞれ3×10−6Ωm未満、500W/mK以上のものが好ましい。この特性を満たすものとして、日本グラファイトフイバーのCN−90C、XN−100が市場から入手できる。
本発明に係るピッチ系炭素繊維の数平均繊維長の範囲は、通常のチョップドストランドタイプの炭素繊維を含む全芳香族液晶ポリエステル組成物を公知の方法で溶融混練することで得ることができる。すなわち、常法に従い、適宜混練条件または混練機を選択すれば、混練操作中に切断が生じて、適切な繊維長に収まる。この数値範囲内にない数平均繊維長30μm未満の値を有するミルドファイバー単独での使用、あるいは、ロービングタイプの炭素繊維の連続投入等は避けるべきである。
また、本発明においては炭素繊維が10質量部より少ないときは、全芳香族ポリエステルのフィブリルの生成可能性に起因する表面特性低下の観点から好ましくない。一方、100質量部より多いときは、射出成形時の流動性不足に起因する表面特性低下の観点から好ましくない。特に好ましい範囲は、20〜80質量部である。
本発明では、その効果を妨げない範囲で他の充填剤、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、ケイ藻土、などのケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ、硫酸カルシウム、その他各種金属粉末、各種金属箔、フッ素系ポリマー、芳香族ポリイミド、ポリアミドなどからなる耐熱性高強度の繊維のような有機充填剤などが挙げられる。
更に、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加して、所定の特性を付与することができる。
本発明の全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物は、当該技術分野で一般的に使用されている溶融混練方法で得ることができるものであり、製造方法に特に制限はない。好ましい製造法としては、1対の2条スクリュを有する混練機で、ホッパーから投入した全芳香族液晶ポリエステルおよび炭素繊維を投入する方法が挙げられる。この混練機は、2軸混練機と呼ばれるものであり、その中でも切り替えし機構を有することで充填剤の均一分散を可能とする同方向回転式であるもの、充填剤の食い込みが容易となるバレル−スクリュウ間の空隙が大きい40mmφ以上のシリンダー径を有するものが好ましい。さらに、スクリュウ間の大きいかみ合い率1.45以上のものを使用すると、サイジング剤等の揮発成分が容易に除去でき、射出成形時において、特に表面状態の優れを与える本発明に係る全芳香族ポリエステル樹脂組成物が効率よく得ることができる。
このようにして得られる全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物は、2次共振点の周波数と損失係数が共に要求性能を満たしており、0.3mm以下、好ましくは0.3〜0.05mmの厚みを有する光ピックアップレンズホルダー部材として好適である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下のとおり全芳香族液晶ポリエステルA〜Fを製造した。全芳香族液晶ポリエステルA〜Cは本発明の要件を充足するものであり、全芳香族液晶ポリエステルD〜Fは本発明の要件を充足しないものである。
全芳香族液晶ポリエステルAの製造:
溶融重縮合:SUS316を材質とし、ダブルヘリカル攪拌翼を有する1700L重合槽(神戸製鋼所製)にp−ヒドロキシ安息香酸197.5kg(1.43キロモル:65モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル71.7kg(0.385キロモル:17.5モル%)、テレフタル酸64.0kg(0.385キロモル:17.5モル%)、触媒として酢酸カリウム0.06kgを仕込み、重合槽の減圧−窒素注入を2回行って窒素置換した後、無水酢酸242.6kg(2.3キロモル)を添加し、攪拌翼の回転数45rpmで150℃まで1.5時間で昇温して還流状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分で昇温して、305℃において重合物を重合槽下部の抜き出し口から取り出した。
固相重縮合:
取り出した該重合体を冷却固化した後、ホソカワミクロン株式会社製の粉砕機により粉砕してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは、高砂工業株式会社製のロータリーキルンを用い固相重縮合を行った。キルン内筒の形状は概ね正6角形であり、一辺の長さ500mm、全長3500mmである。プレポリマーを該キルンに150kg充填し、窒素を15Nm/時間流通し、回転数2rpmでヒーター内の温度を室温から400℃まで5時間で昇温し、400℃で12時間保持した。粉砕物の温度が340℃に到達したことを確認し、加熱を停止してロータリーキルンを回転しながら7時間冷却して全芳香族液晶ポリエステルAを得た。
全芳香族液晶ポリエステルBの製造:
全芳香族液晶ポリエステルAにおける原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸197.5kg(1.43キロモル:65モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル71.7kg(0.385キロモル:17.5モル%)、テレフタル酸60.3kg(0.363キロモル:16.5モル%)、イソフタル酸3.65kg(0.022キロモル:1.0モル%)、に変え、以下全芳香族液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合を行い、全芳香族液晶ポリエステルBを得た。
全芳香族液晶ポリエステルCの製造:
全芳香族液晶ポリエステルAにおける原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸197.5kg(1.43キロモル:65モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル71.7kg(0.385キロモル:17.5モル%)、テレフタル酸60.3kg(0.363キロモル:16.5モル%)、ヒドロキノン2.42kg(0.022キロモル:1.0モル%)、に変え、以下全芳香族液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合を行い、全芳香族液晶ポリエステルCを得た。
全芳香族液晶ポリエステルDの製造:
全芳香族液晶ポリエステルAにおける原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸151.9kg(1.1キロモル:50モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル102.4kg(0.55キロモル:25モル%)、テレフタル酸91.4kg(0.55キロモル:25モル%)、に変え、以下全芳香族液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合を行い、全芳香族液晶ポリエステルDを得た。
全芳香族液晶ポリエステルEの製造:
全芳香族液晶ポリエステルAにおける原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸227.9kg(1.65キロモル:75モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル51.2kg(0.275キロモル:12.5モル%)、テレフタル酸45.7kg(0.275キロモル:12.5モル%)、に変え、以下全芳香族液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合を行い、全芳香族液晶ポリエステルEを得た。
全芳香族液晶ポリエステルFの製造:
全芳香族液晶ポリエステルAにおける原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸197.5kg(1.43キロモル:65モル%)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル71.7kg(0.385キロモル:17.5モル%)、テレフタル酸60.3kg(0.363キロモル:16.5モル%)、2,6−ナフタレンジカルボン酸4.76kg(0.022キロモル:1.0モル%)、に変え、以下同様の溶融重合と固相重縮合を行い、全芳香族液晶ポリエステルFを得た。
以下の実施例および比較例で使用した充填剤を示す。
(1)炭素繊維a:平均繊維径9μm、数平均繊維長さ6mmのピッチ系チョップド炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製、XN−100−06。電気抵抗度 1.0〜1.5×10−6Ωm、熱伝導度900W/mK以上。)
(2)炭素繊維b:平均繊維径9μm、数平均繊維長さ150μmのピッチ系ミルド炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製、XN−100−15M。電気抵抗度 1.0〜1.5×10−6Ωm、熱伝導度900W/mK以上。)
(3)炭素繊維c:平均繊維径7μm、数平均繊維長さ6mmのPAN系チョップド炭素繊維(東邦テナックッス(株)製、HTA−C6−N)
(4)炭素繊維d:平均繊維径7μm、数平均繊維長さ160μmのPAN系ミルド炭素繊維(東邦テナックッス(株)製、HTA−CMF−0160−OH)
(5)炭素繊維e:炭素繊維bのボールミル粉砕品。数数平均繊維長さ30μm。
(6)炭素繊維f:炭素繊維aのロービングタイプ
全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物の製造:
表1に記載の配合割合の全芳香族液晶ポリエステル、炭素繊維a〜eとをあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を2軸押出機((株)神戸製鋼所製KTX−46)のホッパーから投入して、シリンダーの最高温度370℃で溶融混練してペレットを得た。
なお、炭素繊維fは途中のベント孔からスクリュウに巻き取らせながら、溶融混練を行った。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物中の炭素繊維の数平均繊維長の測定方法。
組成物ペレット約2gを10%アルカリ水溶液に浸し、耐圧容器中で120℃で24時間加熱し樹脂成分を加水分解して得られた炭素繊維を含有する液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影した。この写真に撮影された炭素繊維の繊維長の測定を500本行い、数平均繊維長を求めた。
光ピックアップレンズホルダーとしての制振特性等の評価方法
各樹脂組成物のペレットから、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG−25)を用いてシリンダー温度410℃の条件で、下記試験用の試験片を各5個づつ成形し、以下の方法で評価した。
(1)2次共振周波数、損失係数
幅12.7mm、厚み0.3mm、長さ40mmの試験片により、JIS G 0602に準じて測定を行った。上記試験片をブリュエルケア−社の加振器に有効長20mmとなるように試験片の1端を取り付け、ポリテック社のレーザー振動計にて測定を行った。2次共振点の周波数を共振周波数とし、そのときの損失係数を半値幅法により求めた.
(2)成形性(成形品外観)
幅12.7mm、厚さ0.3mm、長さ50mmの試験片について、ルーペにて成形性を観察し、表面にフィブリル等の剥離、流動性不良による面荒れの有無を確認した。
表1に実施例および比較例の組成比および評価結果を示した。
Figure 0004945097
表−1に示すように、本発明に従って製造された実施例1〜5の全芳香族ポリエステル樹脂組成物は、良好な成形性を示し、得られた射出成形品は、2次共振周波数および損失係数ともに良好な結果となり、制振性能に優れていた。これに対し、全芳香族液晶ポリエステルD〜Fを使用した比較例7〜9の樹脂組成物および成形品、全芳香族液晶ポリエステルA〜Cを用いたが充填材の配合量が本発明の範囲外の比較例1、2の樹脂組成物および成形品、および充填材の種類が本発明と異なるものである比較例3〜6の樹脂組成物および成形品は、成形性、制振性のいずれかまたは両方が、本発明に従って製造されたものより劣っていた。
本発明の全芳香族液晶ポリエステル樹脂成形体は、薄肉部を有する光ピックアップレンズホルダー成形材料として、特に、近年のデジタルディスク駆動装置の扱う情報の大容量化、高速化に伴い、制振特性に対する要求が厳しい光ピックアップレンズホルダー成形材料として使用でき、得られた光ピックアップレンズホルダーは、優れた制振性能を有する。

Claims (4)

  1. 全芳香族液晶ポリエステル100質量部と炭素繊維10〜100質量部とを溶融混練して得ることができる全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物であって、当該組成物中の全芳香族液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸60〜70モル%、テレフタル酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニルあわせて40〜30モル%、イソフタル酸および/またはヒドロキノン0〜5モル%(いずれにおいてもこれらの誘導体を含む。これらの合計を100モル%とする。)を重縮合してなる全芳香族液晶ポリエステルであることおよび炭素繊維が数平均繊維長30〜200μmの範囲にあるピッチ系炭素繊維であることを特徴とする厚さ0.3mm以下の部分を含み、2次共振点の周波数が2500Hz以上かつ損失係数が0.10以上である制振性に優れた光ピックアップレンズホルダーの射出成形に用いられる全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物であり、樹脂成分として非晶性全芳香族ポリエステル樹脂を含まない
  2. ピッチ系炭素繊維が光学的に異方性を示すメソフェーズピッチを原料とする炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物。
  3. ピッチ系炭素繊維の電気抵抗度が3×10−6Ωm未満、かつ、熱伝導度が500W/mK以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかの全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる厚さ0.3mm以下の部分を含み、2次共振点の周波数が2500Hz以上かつ損失係数が0.10以上である制振性に優れた光ピックアップレンズホルダー。
JP2005196603A 2005-07-05 2005-07-05 全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物および光ピックアップレンズホルダー Expired - Fee Related JP4945097B2 (ja)

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