JP4925990B2 - 高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 - Google Patents
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Description
C:0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.02〜0.2%、
Mn:0.2〜0.6%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.002〜0.05%、
Cu:0.01〜0.2%、
Ni:0.01〜0.2%、
Cr:0.05〜0.5%、
Al:0.020〜0.070%、
B:0.0020〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0050%、
O:0.0100%以下(0%を含まない)、
固溶B:4〜10質量ppm、および
0.5≦B/N≦1.7[但し、Bは鋼中B量(%)、Nは鋼中N量(%)]を満たし、
残部:鉄および不可避不純物からなるところに特徴を有する。
まず本発明では、高周波焼入れにより鋼表層部の高硬度化を図るべく、0.10〜0.30%とする。Cは、焼入れ性への影響が大きい元素であり、高周波焼入れ後の硬さを決める主要元素である。本発明では、最低限の部品強度の確保、特に高周波焼入れ後の表面硬さ:Hv300以上を確保する観点から、C量の下限を0.10%とした。好ましくは0.15%以上である。
Bは、固溶NをBNの形で固定し、動的ひずみ時効を抑制する効果を有する。また、鋼中に固溶Bとして存在させることで焼入れ性が向上するため、強度確保の観点からも重要な元素である。これらの効果を十分に発揮させるには、B量を0.0020%以上(より好ましくは0.0025%以上)とする必要がある。しかしB量が過剰になると、磁気特性の低下を招くため、0.0050%を上限とする。より好ましくは、0.0040%以下である。
本発明では、磁気特性を確保する観点から、Bを含有させて固溶Nを低減すると共に、上記量の固溶Bを残存させて、高周波焼入れでの焼入性を高める。この様な観点から上記B量とあわせてB/Nについても規定する。
固溶Bは、高周波焼入れでの焼入性向上に大きく寄与する。そのため本発明では、鋼中固溶B量を4質量ppm以上(好ましくは5質量ppm以上)と規定した。一方、固溶B量が過剰であると、磁気特性に悪影響を及ぼすため、本発明では、鋼中固溶B量を10質量ppm以下とした。好ましくは8質量ppm以下である。
Siは、溶製時に脱酸剤として作用し、また磁気特性を向上させる効果をもたらす。この様な効果を発揮させるには、Si量を0.02%以上含有させるのがよく、好ましくは0.04%以上である。しかし、Si量が過剰になると冷間鍛造性が低下する。本発明では、部品成型時の冷間鍛造性を確保する観点から、0.2%を上限とした。好ましくは、0.1%以下である。
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中のS(硫黄)と結合しSによる脆化を抑制する。また、焼入れ性向上元素として、高周波焼入れ後の硬さ増加に有効である。これらの観点から、Mn量を0.2%以上(好ましくは0.25%以上)含有させる。しかしMn量が増大すると、磁気特性が低下するため0.6%以下とする。好ましくは0.5%以下である。
P(リン)は、粒界偏析を起こして、冷鍛性と磁気特性の低下を招く元素である。よって本発明では、P含有量の上限を0.02%とする。好ましくは0.015%以下である。
S(硫黄)は、MnS含有析出物の構成元素であり、該MnS含有析出物を析出させることで、切削性を向上させることができる。よって本発明では、S量を0.002%以上(好ましくは0.004%以上)とする。しかしS量が過剰になると、多量にMnSが析出して冷間鍛造性を著しく劣化させるので、0.05%以下(好ましくは0.02%以下)にするのが良い。
Cuは、鋼材の強度を増加させる効果を有する。該効果を発揮させるため、0.01%以上(好ましくは0.02%以上)含有させる。しかしCu量が過剰になると、磁気特性の低下を招くため、上限を0.2%とする。好ましくは0.1%以下である。
Niは、Cuと同様、鋼材の強度を増加させる効果を有する。該効果を発揮させるため、0.01%以上(好ましくは0.02%以上)含有させる。しかしNi量が過剰になると、磁気特性の低下を招く。本発明では、磁気特性への悪影響を抑えるため上限を0.2%とする。好ましくは0.1%以下である。
Crは、鋼中で炭窒化物を生成し、固溶Cおよび固溶Nによるひずみ時効の抑制に有効な元素である。また、一般に、強度を向上させると冷間鍛造性は低下しやすい傾向にあるが、Crは、C,Si等よりも強度上昇効果に対する冷間鍛造性の低下が小さいため、高強度と冷間鍛造性の両特性を確保する点からも重要な元素である。この様な効果を十分発揮させるには、少なくとも0.05%の含有量が必要である。好ましくは0.10%以上である。但し、多量に添加すると粗大な炭窒化物の生成を招き、冷間鍛造性と磁気特性を低下させるため、上限を0.5%とする。好ましくは0.3%以下である。
Alは、固溶NをAlNとして固定することで冷間鍛造性を向上させる効果があるため、本発明ではAl量を0.020%以上とする。好ましくは0.025%以上である。しかし、AlNは結晶粒成長を抑制する効果も有しているため、Al量が過剰になりAlNが多量に析出すると磁気特性が低下する。よって本発明では、Al量を0.070%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
N(窒素)は、Al,B等と結合して窒化物を形成するが、これらの元素と窒化物を形成しないNは固溶Nの状態で残存し、冷間鍛造時の変形抵抗増大や磁気特性の低下を招く。固溶N量を低減するためには、鋼中全窒素量を低減することが効果的であるが、工業生産的に対応可能な範囲として0.0050%を上限とした。好ましくは0.0030%以下である。尚、本発明では、フェライト中に生成する窒化物を、セメンタイト等の炭化物を析出させる際の核として利用すると共に、鋼中の固溶B量を適正範囲に制御する観点から、N量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0020%以上である。
O(酸素)は常温では鋼に殆ど固溶せず、硬質の酸化物として存在し、磁気特性を大幅に低下させる。ゆえにO含有量は極力低減すべきであり、本発明では0.0100%以下に抑える。好ましくは0.0050%以下にするのがよい。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(1)
[式(1)中、C、Si、Mn、Crは鋼中の各含有量(質量%)を示す]
Biは、被削性を高めるのに有効な元素であり、そのためには0.005%以上含有させるのがよい。より好ましくは0.01%以上である。しかし過剰に含有させると、熱間鍛造等の熱間加工時に割れが生じ易くなるので、0.05%以下に抑えるのがよく、より好ましくは0.03%以下である。
合金成分を母相に完全に固溶させるため、できるだけ高温で加熱することが望ましい。しかし1100℃を超えると、AlNなどの窒化物が完全に固溶し、固溶Nが増加することで、BN析出物の形成により鋼中の固溶B量が低減し、結果として高周波焼入れ性が低下する、といった問題をもたらす。よって本発明では、1050℃を上限とするのがよい。より好ましくは1025℃以下である。
窒化物の固溶を抑制するため、仕上げ圧延温度を750℃以上とすることが好ましく、より好ましくは825℃以上である。一方、仕上げ圧延温度が高すぎると、固溶B量が過剰になるため、950℃以下(より好ましくは900℃以下)とすることが好ましい。
仕上げ圧延温度と同様に、温度が低下するとミクロ組織が細粒化する傾向にあり、冷間鍛造性と磁気特性に支障をもたらすため、800℃以上とするのがよい。より好ましくは850℃以上である。
・周波数:10〜100kHz
・電力:20〜100kW
・ソリュブル濃度:0.5〜3.0%
・加熱時間:2〜20秒間
・冷却時間:5〜60秒間
(1)ICP発光分光分析法で鋼中のトータルB量(%)を測定
(2)電解抽出法で、化合物[BN、Fe23(CB)6]を形成するB量(%)を定量
(3)下記式(2)から固溶B量を算出
固溶B量(%)=トータルB量(%)−化合物を形成するB量(%)…(2)
〈高周波焼入れ条件〉
・高周波焼入れ装置の形式:移動焼入れ型
・周波数40kHzの交流磁界を印加
・出力:200kW
・使用コイル:φ32mm×20mmL
・冷却ジャケット:φ80mm×35mmL
・焼入れ時の冷却剤:ソリュブル液、濃度:2.0%
・加熱時間:4秒
・冷却時間:10.0sec
高周波焼入れ後の鋼表層から0.25mm、1mmの位置のビッカース硬さは、次の様にして測定した。即ち、焼入れ部中心を横断するよう軸に対して垂直に切断し、表層から0,25mm、1mmのそれぞれの位置について90°ごとに4点の硬さを測定し、その平均値を求めた。
Claims (3)
- C:0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.02〜0.2%、
Mn:0.2〜0.6%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.002〜0.05%、
Cu:0.01〜0.2%、
Ni:0.01〜0.2%、
Cr:0.05〜0.5%、
Al:0.020〜0.070%、
B:0.0020〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0050%、
O:0.0100%以下(0%を含まない)、
固溶B:4〜10質量ppm、および
0.5≦B/N≦1.7[但し、Bは鋼中B量(%)、Nは鋼中N量(%)]を満たし、
残部:鉄および不可避不純物からなることを特徴とする高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材。 - 更に他の元素として、Bi:0.005〜0.05%を含有する請求項1に記載の軟磁性鋼材。
- 前記請求項1または2に記載の鋼材に冷間鍛造を施した後、高周波焼入れを行って得られる鋼部品であって、鋼表層部のビッカース硬さHvが300以上で、かつ鋼表面から1mm深さ位置のビッカース硬さHvが300以上であることを特徴とする高強度軟磁性鋼部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007256254A JP4925990B2 (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007256254A JP4925990B2 (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 |
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JP2009084645A JP2009084645A (ja) | 2009-04-23 |
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JP2007256254A Active JP4925990B2 (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 |
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JP2003213365A (ja) * | 2002-01-25 | 2003-07-30 | Jfe Engineering Kk | 表面性状に優れたCu含有鋼およびその製造方法 |
JP2004218081A (ja) * | 2002-12-25 | 2004-08-05 | Jfe Steel Kk | 高張力鋼板の製造方法 |
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2007
- 2007-09-28 JP JP2007256254A patent/JP4925990B2/ja active Active
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