JP4925990B2 - 高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 - Google Patents

高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材および高強度軟磁性鋼部品 Download PDF

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Description

本発明は、高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材、およびこれを用いて得られる高強度軟磁性鋼部品に関するものである。
自動車電装部品等における磁気回路を構成する鋼部品には、省電力化と応答性向上のため、低い外部磁界で容易に磁化し、且つ保磁力が小さいといった特性が要求される。このため上記鋼部品を製造するための材料として、部品内部の磁束密度が外部磁界に応答し易い軟磁性鋼材が一般に使用されている。
上記電装部品のうち、磁気応答性や消費電力低減を最重視する部品には、例えばC量が約0.01質量%以下の低炭素鋼などが用いられ、また、磁気特性と部品強度のバランスを重視する部品には、例えばC量が0.01質量%程度の低炭素鋼が用いられている。
近年、自動車の低燃費化や快適性向上を目的に電子・電磁制御部品の適用が増加しており、高強度と磁気特性を兼備した電装部品の要望が高まっている。特に、表層硬度を重視する部品では高周波焼入れにより表面硬さの改善が行われるが、高周波焼入れ後の表面硬さを増加させるには鋼材中のC量の増加が必要となる。しかし、C量の増加は、磁気特性を大幅に低下させ磁気回路抵抗の増加を招くため、電装部品の小型・軽量化や消費電力低減の点で大きな障害となっている。また、C量の増加は一般に冷間鍛造性を悪化させることから、冷間鍛造性に優れることも、切削等の工程を縮小して部品製造コストを低減する面から望まれている。
軟磁性鋼材の高強度化を図ったものとして、例えば特許文献1には、CuやNiを増量して時効硬化を利用する方法が提案されている。しかし、特許文献1の技術はC量が0.05%以下の熱間鍛造部品に着目してなされたものであり、Hv300以上の表層硬さが必要な高周波焼入れ部品に適用するには、改善の余地がある。
また、フェライト+パーライト組織の鋼材の冷間鍛造性を改善した例として、特許文献2や特許文献3等には、B添加により固溶Nを低減することで、加工発熱領域での冷間鍛造性を改善する方法が提案されている。ただし、これらの技術は冷間鍛造まま、あるいは冷間鍛造後に切削加工した状態でボルトやナット等の機械部品に使用することを想定しており、高周波焼入れ後の表面硬さを考慮したり、電装部品として適用すべく磁気特性の兼備を図ったものではない。
特開2007−46076号公報 特開2001−303189号公報 特開2001−342544号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高周波焼入れによって鋼表層部の高硬度化を図ることができると共に、部品成形時における冷間鍛造性に優れ、かつ圧延ままでもJIS SUY3種なみの磁気特性を有する軟磁性鋼材、およびこれを用いて得られる高強度軟磁性鋼部品を提供することにある。
本発明に係る高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材とは、
C:0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.02〜0.2%、
Mn:0.2〜0.6%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.002〜0.05%、
Cu:0.01〜0.2%、
Ni:0.01〜0.2%、
Cr:0.05〜0.5%、
Al:0.020〜0.070%、
B:0.0020〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0050%、
O:0.0100%以下(0%を含まない)、
固溶B:4〜10質量ppm、および
0.5≦B/N≦1.7[但し、Bは鋼中B量(%)、Nは鋼中N量(%)]を満たし、
残部:鉄および不可避不純物からなるところに特徴を有する。
本発明の軟磁性鋼材は、更に他の元素として、Bi:0.005〜0.05%を含むものであってもよい。
本発明は、前記鋼材に冷間鍛造を施した後、高周波焼入れを行って得られる鋼部品であって、鋼表層部のビッカース硬さHvが300以上で、かつ鋼表面から1mm深さ位置のビッカース硬さHvが300以上であるところに特徴を有する高強度軟磁性鋼部品も規定するものである。
尚、上記「鋼表層部」とは、後述する実施例に示す通り、鋼表面を研磨して得られる鋼表面から0.25mmの面をいう。
本発明によれば、高周波焼入れによって鋼表層部の高硬度化を図ることができると共に、部品成形時における冷間鍛造性に優れ、かつ圧延ままでもJIS SUY3種なみの磁気特性を有する軟磁性鋼材が得られる。また、該軟磁性鋼材を軟磁性鋼部品の製造に用いれば、高歩留まりかつ低コストで高強度軟磁性鋼部品を製造することができ、熱処理省略に伴うCO削減にも大きく寄与することができる。そして、上記軟磁性鋼材を用いて得られる高強度軟磁性鋼部品は、部品の高強度化と優れた磁気特性の両立が必要な、自動車部品や電車、船舶用の電装部品に最適である。
本発明者らは、高周波焼入れによって鋼表層部の高硬度化を図ることができると共に、冷間鍛造性に優れ、かつ磁気特性も兼備する軟磁性鋼材を実現すべく、C量を下記の通り0.10〜0.30%とすることを前提に、組織や析出物の影響など様々な角度から実験、検討してきた。その結果、特に、B量、固溶B量およびB/Nを規定することにより、金属組織中に固溶状態のBとBN析出物の双方を混在させるようにすることで、ひずみ時効による冷間鍛造性の悪化を改善できると共に、高周波焼入れ後の部品強度を増加できること、またB量を規定範囲内とすることで、磁気特性に有害な固溶Nを低減できると共に、Cを上記量以上に含有させることなく所望の部品強度を確保でき、結果としてこれが磁気特性の向上にもつながることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明について詳述する。
〈C:0.10〜0.30%〉
まず本発明では、高周波焼入れにより鋼表層部の高硬度化を図るべく、0.10〜0.30%とする。Cは、焼入れ性への影響が大きい元素であり、高周波焼入れ後の硬さを決める主要元素である。本発明では、最低限の部品強度の確保、特に高周波焼入れ後の表面硬さ:Hv300以上を確保する観点から、C量の下限を0.10%とした。好ましくは0.15%以上である。
一方、Cは電気抵抗率への影響も大きい元素であり、高周波加熱時の発熱量を増す点からは有効であるが、C量が増加すると磁気特性の著しい低下を招く。本発明では、JIS−SUY3種以上の磁気特性を確保する観点から、C量の上限を0.30%とした。好ましくは0.25%以下である。
〈B:0.0020〜0.0050%〉
Bは、固溶NをBNの形で固定し、動的ひずみ時効を抑制する効果を有する。また、鋼中に固溶Bとして存在させることで焼入れ性が向上するため、強度確保の観点からも重要な元素である。これらの効果を十分に発揮させるには、B量を0.0020%以上(より好ましくは0.0025%以上)とする必要がある。しかしB量が過剰になると、磁気特性の低下を招くため、0.0050%を上限とする。より好ましくは、0.0040%以下である。
〈0.5≦B/N≦1.7〉
本発明では、磁気特性を確保する観点から、Bを含有させて固溶Nを低減すると共に、上記量の固溶Bを残存させて、高周波焼入れでの焼入性を高める。この様な観点から上記B量とあわせてB/Nについても規定する。
B/Nが小さすぎる、即ち、鋼中のN量がB量に対して過剰であると、鋼中のBが窒化物の形成に用いられて固溶Bを確保できなくなるので、B/Nは0.5以上とする。好ましくは0.7以上である。一方、B/Nが大きすぎる、即ち、鋼中のB量がN量に対して過剰であると、固溶B量が過剰となり、磁気特性に悪影響を及ぼす他、焼入性の効果が飽和する一方、粒界強度を低下させ、衝撃値が低下する。よって本発明ではB/Nを1.7以下とする。好ましくは1.5以下である。
〈固溶B:4〜10質量ppm〉
固溶Bは、高周波焼入れでの焼入性向上に大きく寄与する。そのため本発明では、鋼中固溶B量を4質量ppm以上(好ましくは5質量ppm以上)と規定した。一方、固溶B量が過剰であると、磁気特性に悪影響を及ぼすため、本発明では、鋼中固溶B量を10質量ppm以下とした。好ましくは8質量ppm以下である。
尚、上記固溶B量を確保するには、成分組成において、B量、N量、および上記B/Nを規定範囲内とすると共に、製造工程における圧延条件を制御するのがよい。
この様に本発明のポイントは、C量を従来の軟磁性鋼材よりも高めとし、更にBを含有させ、かつB/Nを制御して固溶B量をコントロールすることにより、高周波焼入れ性、冷間鍛造性および磁気特性を兼備させることができた点にあるが、上記作用効果を有効に発揮させて、より確実に高周波焼入れ性、冷間鍛造性および磁気特性を確保するには、鋼材におけるその他の成分組成を下記範囲とする必要がある。
〈Si:0.02〜0.2%〉
Siは、溶製時に脱酸剤として作用し、また磁気特性を向上させる効果をもたらす。この様な効果を発揮させるには、Si量を0.02%以上含有させるのがよく、好ましくは0.04%以上である。しかし、Si量が過剰になると冷間鍛造性が低下する。本発明では、部品成型時の冷間鍛造性を確保する観点から、0.2%を上限とした。好ましくは、0.1%以下である。
〈Mn:0.2〜0.6%〉
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中のS(硫黄)と結合しSによる脆化を抑制する。また、焼入れ性向上元素として、高周波焼入れ後の硬さ増加に有効である。これらの観点から、Mn量を0.2%以上(好ましくは0.25%以上)含有させる。しかしMn量が増大すると、磁気特性が低下するため0.6%以下とする。好ましくは0.5%以下である。
〈P:0.02%以下(0%を含まない)〉
P(リン)は、粒界偏析を起こして、冷鍛性と磁気特性の低下を招く元素である。よって本発明では、P含有量の上限を0.02%とする。好ましくは0.015%以下である。
〈S:0.002〜0.05%〉
S(硫黄)は、MnS含有析出物の構成元素であり、該MnS含有析出物を析出させることで、切削性を向上させることができる。よって本発明では、S量を0.002%以上(好ましくは0.004%以上)とする。しかしS量が過剰になると、多量にMnSが析出して冷間鍛造性を著しく劣化させるので、0.05%以下(好ましくは0.02%以下)にするのが良い。
〈Cu:0.01〜0.2%〉
Cuは、鋼材の強度を増加させる効果を有する。該効果を発揮させるため、0.01%以上(好ましくは0.02%以上)含有させる。しかしCu量が過剰になると、磁気特性の低下を招くため、上限を0.2%とする。好ましくは0.1%以下である。
〈Ni:0.01〜0.2%〉
Niは、Cuと同様、鋼材の強度を増加させる効果を有する。該効果を発揮させるため、0.01%以上(好ましくは0.02%以上)含有させる。しかしNi量が過剰になると、磁気特性の低下を招く。本発明では、磁気特性への悪影響を抑えるため上限を0.2%とする。好ましくは0.1%以下である。
〈Cr:0.05〜0.5%〉
Crは、鋼中で炭窒化物を生成し、固溶Cおよび固溶Nによるひずみ時効の抑制に有効な元素である。また、一般に、強度を向上させると冷間鍛造性は低下しやすい傾向にあるが、Crは、C,Si等よりも強度上昇効果に対する冷間鍛造性の低下が小さいため、高強度と冷間鍛造性の両特性を確保する点からも重要な元素である。この様な効果を十分発揮させるには、少なくとも0.05%の含有量が必要である。好ましくは0.10%以上である。但し、多量に添加すると粗大な炭窒化物の生成を招き、冷間鍛造性と磁気特性を低下させるため、上限を0.5%とする。好ましくは0.3%以下である。
〈Al:0.020〜0.070%〉
Alは、固溶NをAlNとして固定することで冷間鍛造性を向上させる効果があるため、本発明ではAl量を0.020%以上とする。好ましくは0.025%以上である。しかし、AlNは結晶粒成長を抑制する効果も有しているため、Al量が過剰になりAlNが多量に析出すると磁気特性が低下する。よって本発明では、Al量を0.070%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
〈N:0.0010〜0.0050%〉
N(窒素)は、Al,B等と結合して窒化物を形成するが、これらの元素と窒化物を形成しないNは固溶Nの状態で残存し、冷間鍛造時の変形抵抗増大や磁気特性の低下を招く。固溶N量を低減するためには、鋼中全窒素量を低減することが効果的であるが、工業生産的に対応可能な範囲として0.0050%を上限とした。好ましくは0.0030%以下である。尚、本発明では、フェライト中に生成する窒化物を、セメンタイト等の炭化物を析出させる際の核として利用すると共に、鋼中の固溶B量を適正範囲に制御する観点から、N量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0020%以上である。
〈O:0.0100%以下(0%を含まない)〉
O(酸素)は常温では鋼に殆ど固溶せず、硬質の酸化物として存在し、磁気特性を大幅に低下させる。ゆえにO含有量は極力低減すべきであり、本発明では0.0100%以下に抑える。好ましくは0.0050%以下にするのがよい。
上記成分組成とすることによって、C量が同程度の従来鋼材よりも優れた高周波焼入れ性を確保できることを図1に示す。
図1は、後述する実施例に示す鋼材を用いて、後述する実施例に示す方法で高周波焼入れを行い、鋼表面から0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mmおよび1.25mmの深さ位置のビッカース硬度(Hv)を測定し、その結果を整理したものである。この図1から、本発明の鋼材を用いて高周波焼入れを行なうと、C量が同レベルの鋼材(図1における●と○、▲と△)では、本発明で規定する成分組成を満たすようにすることで、鋼表層部の高硬度化を実現できるだけでなく、鋼内部にまでこの高硬度を維持でき、耐摩耗性に優れた電装部品に最適であることがわかる。
また、上記成分組成とすることによって、C量が同程度の従来鋼材よりも優れた磁気特性を確保できることを図2に示す。
図2は、後述する実施例に示す鋼材を用いて、後述する実施例に示す方法で保磁力を求め、下記式(1)で示されるCeq(炭素等量)と上記保磁力との関係をまとめたものである。この図2から、Ceqが同レベルの従来鋼材よりも保磁力が十分に小さく、圧延ままでもJIS SUY3種なみの磁気特性を有することがわかる。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(1)
[式(1)中、C、Si、Mn、Crは鋼中の各含有量(質量%)を示す]
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。更に、本発明の作用に悪影響を与えない範囲で下記元素を積極的に含有させることも可能である。
〈Bi:0.005〜0.05%〉
Biは、被削性を高めるのに有効な元素であり、そのためには0.005%以上含有させるのがよい。より好ましくは0.01%以上である。しかし過剰に含有させると、熱間鍛造等の熱間加工時に割れが生じ易くなるので、0.05%以下に抑えるのがよく、より好ましくは0.03%以下である。
本発明の鋼材は、圧延後のミクロ組織がフェライト+パーライトの2相を主体(合計で98面積%以上)とするものであり、具体的にはフェライトとパーライトの層状組織である。本発明は、上記成分組成とすることにより、フェライト+パーライトの2相組織中に、固溶BとBN析出物の双方を混在させることができる。
尚、上記フェライト+パーライト以外の組織として、例えばベイナイトが過剰に存在すると、優れた磁気特性の確保に寄与するフェライトが相対的に減少し、磁気特性の確保が難しくなるので好ましくない。
本発明に係る高周波焼入れ性、冷間鍛造性および磁気特性に優れた軟磁性鋼材を得るには、規定する化学成分を含有する鋼材を一般的な方法で溶解、鋳造した後、下記の条件で熱間圧延し、上記組織を有すると共に上記規定範囲内の固溶BおよびBN析出物を確保することが大変有効である。
〈熱間圧延に際しての加熱温度〉
合金成分を母相に完全に固溶させるため、できるだけ高温で加熱することが望ましい。しかし1100℃を超えると、AlNなどの窒化物が完全に固溶し、固溶Nが増加することで、BN析出物の形成により鋼中の固溶B量が低減し、結果として高周波焼入れ性が低下する、といった問題をもたらす。よって本発明では、1050℃を上限とするのがよい。より好ましくは1025℃以下である。
一方、加熱温度が低すぎると、圧延時のロール負荷が上昇し生産性が低下すると共に、BN等の窒化物が固溶しなくなり、固溶B量が増大するため好ましくない。よって本発明では、加熱温度を900℃以上とするのがよい。より好ましくは950℃以上である。
〈仕上げ圧延温度〉
窒化物の固溶を抑制するため、仕上げ圧延温度を750℃以上とすることが好ましく、より好ましくは825℃以上である。一方、仕上げ圧延温度が高すぎると、固溶B量が過剰になるため、950℃以下(より好ましくは900℃以下)とすることが好ましい。
〈圧延後の巻取り温度〉
仕上げ圧延温度と同様に、温度が低下するとミクロ組織が細粒化する傾向にあり、冷間鍛造性と磁気特性に支障をもたらすため、800℃以上とするのがよい。より好ましくは850℃以上である。
一方、圧延後の巻取り温度が高すぎると、窒化物の析出が遅くなり固溶B量が過剰になるため、950℃以下(より好ましくは900℃以下)とすることが好ましい。
後述する鋼部品を容易に製造するには、軟磁性鋼材の形態を、線状や棒状等とするのがよく、そのサイズは、最終製品である電装部品に応じて適宜決めることができる。
本発明は上記軟磁性鋼材を用いれば、良好に冷間鍛造を行うことができ、また、高周波焼入れを施すことによって高強度の軟磁性鋼部品を得ることができる。
本発明では、この様な軟磁性鋼部品として、鋼表層部のビッカース硬さHvが300以上で、かつ鋼表面から1mm深さ位置のビッカース硬さHvが300以上である鋼部品も含む。
上記鋼部品は、例えば常法により溶解、鋳造して得た後、前述の条件で熱間圧延して得られる例えば棒状または線状の軟磁性鋼材を用いて、冷間鍛造や切削加工を施した後、高周波焼入れを行なうことにより得られるが、鋼表層部と鋼表面から1mm深さ位置が上記の通り高強度で、かつJIS SUY3種なみの磁気特性を示す軟磁性鋼部品を得るには、上記高周波焼入れを下記の条件で行なうのがよい。
・周波数:10〜100kHz
・電力:20〜100kW
・ソリュブル濃度:0.5〜3.0%
・加熱時間:2〜20秒間
・冷却時間:5〜60秒間
この様にして得られる本発明の軟磁性鋼部品は、自動車部品や電車、船舶用の電装部品として最適である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す含有成分の供試材を真空溶製にて各150kg試作した。そして、溶製材を155mm×155mm角に鍛造加工し、ダミービレット材に溶接した後、表2に示す条件で熱間圧延を行ってφ30mmの鋼線材を得た。これを用いて、ミクロ組織の分類、高周波焼入れ後の硬さ分布測定、冷間鍛造性、および磁気特性を夫々下記の要領で評価した。
まず、ミクロ組織の分類は次の方法で行った。即ち、線材の横断面を露出させた状態で支持基材内に埋め込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させた後、光学顕微鏡によって表層部、D/4部(Dは直径)、およびD/2部の組織を100倍および400倍で撮影し、混粒の有無や組織の同定を行った。
更に、鋼中の固溶B量を、次の(1)〜(3)の手順に沿って求めた。
(1)ICP発光分光分析法で鋼中のトータルB量(%)を測定
(2)電解抽出法で、化合物[BN、Fe23(CB)]を形成するB量(%)を定量
(3)下記式(2)から固溶B量を算出
固溶B量(%)=トータルB量(%)−化合物を形成するB量(%)…(2)
高周波焼入れ性の評価は、次の様にして行なった。即ち、上記鋼線材から、φ10mm×100mmLの試料を、試験片の長さ方向が鋼線材の軸方向と平行になるよう採取し、下記の条件ですることで焼入れ処理を実施した。
〈高周波焼入れ条件〉
・高周波焼入れ装置の形式:移動焼入れ型
・周波数40kHzの交流磁界を印加
・出力:200kW
・使用コイル:φ32mm×20mmL
・冷却ジャケット:φ80mm×35mmL
・焼入れ時の冷却剤:ソリュブル液、濃度:2.0%
・加熱時間:4秒
・冷却時間:10.0sec
高周波焼入れ後の鋼表層から0.25mm、1mmの位置のビッカース硬さは、次の様にして測定した。即ち、焼入れ部中心を横断するよう軸に対して垂直に切断し、表層から0,25mm、1mmのそれぞれの位置について90°ごとに4点の硬さを測定し、その平均値を求めた。
そして、高周波焼入れ後の鋼表層から0.25mmの位置のビッカース硬さ、および高周波焼入れ後の鋼表層から1mmの位置のビッカース硬さがいずれもHv300以上のものを高周波焼入れ性に優れると評価した。
冷間鍛造性の評価は、圧縮加工時に割れが発生しない最大の圧縮率を測定して行なった。詳細には、棒状鋼材の軸方向と平行に直径20mm×高さ30mmの試料を採取し、この試料を用いて端面拘束圧縮(ひずみ速度10/s)を行い、割れが発生しない限界の圧縮率(割れ発生限界圧縮率)を求めた。そして、上記割れ発生限界圧縮率が70%のものを冷間鍛造性に優れると評価した。
磁気特性は、棒状鋼材から外形28mm×内径20mm×高さ4mmのリング状試料を作製し、JIS C 2504(2000年)に規定する方法を行なって評価した。そして、1000A/mでの磁束密度が1.20T以上で、かつ保磁力が240A/m以下のものを磁気特性に優れると評価した。
これらの結果を表2に併記する。
Figure 0004925990
Figure 0004925990
表1,2から次のように考察することができる(尚、下記のNo.は、表2中の実験No.を示す)。No.1〜4,10,13は、本発明で規定する成分組成を満たしており、かつ本発明で規定する方法で製造したので、得られた鋼材は、いずれも高周波焼入れ性に優れて、高周波焼入れ後の鋼表層の高硬度化を図ることができると共に、優れた冷間鍛造性と磁気特性を兼備していることがわかる。
これに対し、No.5〜9,11,12,14〜31は、鋼材の化学成分が本発明の規定要件を外れるか本発明で規定するBの存在形態が規定要件を外れているため、高周波焼入れ後の鋼表層の硬さが目標に達していないか、冷間鍛造時の変形能が十分でないかまたは磁気特性が十分でない等の好ましくない結果となった。
詳細には、No.5〜9から圧延条件の影響を見ることができる。高周波焼入れ性と磁気特性を両立させるには、推奨される条件で圧延を行うことによって、固溶B量を4〜10ppmに制御する必要があることがわかる。
No.11,12は、B/Nが規定範囲を外れる(B量とN量のバランスが不適である)例である。B/Nが規定範囲を外れても、冷間鍛造性への影響は認められないが、高周波焼入れ性または磁気特性のいずれかが低下する結果となった。
No.14〜16からは、C量の影響をみることができる。C量が0.10%未満ではBを添加しても十分な強度は得られず、一方、C量が0.30%を超えると磁気特性が大幅に低下する結果となった。
No.17は、Si量が過多な場合であり、冷間鍛造性と磁気特性が低下している。
No.18〜20は、B量が不足し、かつB/Nも下限を下回っている例である。これらの例では、固溶B量が確保できず、高周波焼入れ性に劣っており、また、ひずみ時効の原因となる固溶Nの残存量が多いため、冷間鍛造性、磁気特性の低下が認められる。
No.21は、Mn量が不足している例である。この例では、鋼中のSをMnSとして固定することができず、冷間鍛造性と磁気特性の双方が低下している。
No.22は、Mn量が過多の例である。この例では、磁気モーメントを減少させる過剰のMnにより、磁束密度と保磁力が共に好ましくない結果となっている。
No.23から、P量が増大すると、冷間鍛造性と磁気特性が共に低下することがわかる。
No.24からは、S量の影響を見ることができる。この例の様にS量が過剰であると、C量過多の場合と同様に割れ発生限界の低下が認められる。また、磁気特性の低下も認められる。
No.25とNo.26は、CuとNiの影響を示す例である。これらの例より、Cu、Niを過多に添加すると、割れ発生限界圧縮率の低下を招くことが分かる。また、磁気特性の低下も認められる。
No.27は、Cr量が過多の場合である。この例では、多量のCrが粗大な炭窒化物の生成を招き、冷間鍛造性と磁気特性が低下している。
No.28は、Al量が過多の例である。この例から、Alが過剰であると、AlNとしての析出に寄与しないAlがフェライト中に固溶し、磁気特性の低下をもたらしていることが分かる。
No.29は、B量が過剰な例である。この例では、過剰に存在する固溶Bが固溶した際にFe格子を歪めて磁気モーメントの低下を招くため、磁束密度と保磁力がともに低下する結果となっている。
No.30は、N量が過剰な例である。この例から、N量が過剰であると、ひずみ時効に伴い冷間鍛造性が大幅に低下するとともに、磁気特性が大きく低下することが分かる。
No.31は、Bi量が好ましい範囲の上限を外れた場合の影響を示す例である。Biを規定範囲内で含有させる場合には、高周波焼入れ性、冷間鍛造性および磁気特性への影響は殆ど認められないが、多量添加した場合には、熱間延性が著しく低下し、圧延前の鍛造工程で割れが発生した。本結果から、Biを多量に含有させると鋼材生産性を著しく悪化させることが分かる。
鋼表面からの距離(深さ)と高周波焼入れ後のビッカース硬さ(Hv)の関係を示すグラフである。 Ceqと保磁力の関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. C:0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:0.02〜0.2%、
    Mn:0.2〜0.6%、
    P:0.02%以下(0%を含まない)、
    S:0.002〜0.05%、
    Cu:0.01〜0.2%、
    Ni:0.01〜0.2%、
    Cr:0.05〜0.5%、
    Al:0.020〜0.070%、
    B:0.0020〜0.0050%、
    N:0.0010〜0.0050%、
    O:0.0100%以下(0%を含まない)、
    固溶B:4〜10質量ppm、および
    0.5≦B/N≦1.7[但し、Bは鋼中B量(%)、Nは鋼中N量(%)]を満たし、
    残部:鉄および不可避不純物からなることを特徴とする高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材。
  2. 更に他の元素として、Bi:0.005〜0.05%を含有する請求項1に記載の軟磁性鋼材。
  3. 前記請求項1または2に記載の鋼材に冷間鍛造を施した後、高周波焼入れを行って得られる鋼部品であって、鋼表層部のビッカース硬さHvが300以上で、かつ鋼表面から1mm深さ位置のビッカース硬さHvが300以上であることを特徴とする高強度軟磁性鋼部品。
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