JP4923814B2 - 液体移送装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体流入口から複数の液体流出口までアクチュエータにより液体を移送する液体移送装置に関するものである。
インクタンクから供給されるインクを移送して、ノズルから記録用紙等に向けてインク液滴を噴射するインクジェットヘッドが既に知られている。このインクジェットの方式は、噴射エネルギーの発生方法の違いにより分類されており、圧電素子の振動力を利用してインク液滴を噴射させる圧電方式や、熱エネルギーによる気泡の発生でインク液滴を噴射させるバブルジェット(登録商標)方式などが存在する。それらの中でも圧電方式は、機械的動力を噴射エネルギーとして利用しているため、インク種類の選択自由度が高く、インク噴射量が精密に制御されて液滴階調が可能であり、耐久性も高いという利点がある。
例えば、特開平10−146968号公報(特許文献1)等に開示された圧電方式のインクジェットヘッドは、インク供給口から複数のノズルまでの流路中に各ノズルに夫々対応する複数の圧力室が設けられた流路ユニットと、この流路ユニットの上に積層されて圧力室の容積を選択的に変動させる圧電アクチュエータとを備えている。また、圧電アクチュエータは、振動板と、この振動板の上面に形成されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電層の積層体と、この圧電層間に介挿形成された複数の電極とを有している。
このようなインクジェットヘッドによれば、圧電アクチュエータの電極に対して選択的に駆動電圧が印加されると、その電極で挟まれた圧電層の活性部に電界が作用して厚み方向の変形が生じる。そして、この圧電層の変形が振動板に伝達されて圧力室の容積が変動し、圧力室内のインクに生じた圧力変動によりインク液滴がノズルより噴射されることとなる。
特開平10−146968号公報
ところで、近年のインクジェットヘッドでは、印刷速度を向上させるためにノズル数を増加させる高密度化が図られている。しかしながら、ノズル数の増加に伴って圧電アクチュエータの各電極も高密度化されることとなるため、圧電アクチュエータ全体として発熱量が増大するという問題がある。また、インク液滴を効率よく噴射させるために、圧電アクチュエータが圧力室に対してその容積変動を十分に与えるには、圧力室に対向する電極の面積を大きくする必要があるが、そうすると、電極間の静電容量が大きくなり、圧電アクチュエータ全体としての発熱量が大きくなり、消費電力も増す。一方、電極の面積を小さく設計すると、圧電アクチュエータの駆動時の変形量が小さくなり、インク液滴が十分に噴射されなくなる。よって、インク噴射性能を維持しながら発熱量を低減するために、駆動効率の良いアクチュエータの開発が望まれている。
そこで、本発明は、駆動効率の良好なアクチュエータを有する液体移送装置を提供することを目的としている。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る液体移送装置は、液体流入口から複数の液体流出口までの流路中に前記複数の液体流出口に夫々対応する複数の圧力室が設けられた流路ユニットと、前記流路ユニットに重ねられ前記圧力室の容積を変動させるアクチュエータとを備え、前記流路ユニットは、前記複数の圧力室をその間に隔壁を介在して列状に配置して有し、前記アクチュエータは、前記各圧力室に夫々対面して前記複数の圧力室にわたって連続して設けられた振動板と、前記振動板の前記圧力室と反対側に設けられた圧電体とを有し、前記圧電体は、前記複数の圧力室にわたる大きさであって前記振動板と平行な方向と直交する方向に重ねられる圧電材シートと、前記圧電材シートに重ねられて前記複数の圧力室に対応して連続配置された共通電極と、前記共通電極との間で前記圧電材シートを挟み前記複数の圧力室の夫々に対応するように個別配置された複数の個別電極とを有し、前記個別電極は、前記直交する方向から見た平面視で前記圧力室よりも小さい面積であり、前記圧電体は、前記平面視で前記個別電極に対応する領域であって前記共通電極と前記個別電極との間に生じる電界により変形する活性部と、前記活性部以外の部分である不活性部とを有し、前記振動板と平行な方向に扁平で前記振動板側の面が前記圧力室の列方向に平坦に形成されており、前記振動板と前記圧電体との間には、前記不活性部を前記隔壁に連結する固定体と、前記活性部の変形を前記振動板に伝達する変位伝達体とが介設され、前記変位伝達体が、その外周部と前記固定体との間に隙間をあけて前記振動板の変形を拘束するように前記振動板の所定範囲にわたって配置されていると共に、前記不活性部に接合されずに前記活性部に接合されており、前記振動板における、前記変位伝達体によって変形を拘束される変形拘束面積が、前記変位伝達体における、前記活性部からの圧力を受ける受圧面積よりも大であることを特徴とする。
このようにすると、圧電体の不活性部と圧力室の隔壁との間に介設された固定体に対して変位伝達体が隙間をあけて配置されているため、圧電体の不活性部が固定体に、組み立て上多少ずれて連結され、活性部が変位伝達体に対してずれて位置しても、活性部の変形は振動板を所要量確実に変形させることができる。また、アクチュエータの活性部の変形が変位伝達体に伝達されると、変位伝達体が移動して振動板を変形させて圧力室の容積が変動することとなる。そうすると、アクチュエータの活性部の変形状態にかかわらず振動板の変位伝達体による変形拘束面積分が安定して変位する。したがって、アクチュエータの活性部の変位量が小さくなっても圧力室に安定した容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。
また、圧力室の変動容積は、振動板の変位量及び振動板の変位箇所面積に比例するが、変位伝達体により変形を拘束される振動板の変形拘束面積が、活性部からの圧力を受ける変位伝達体の受圧面積よりも大であるので、変位伝達体の存在により活性部の変位箇所面積よりも振動板の変位箇所面積を大きくさせる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータの活性部の変位量が小さくても圧力室に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。
また、振動板に対する変位伝達体の接合面積が、アクチュエータの活性部の面積よりも大であることで、活性部すなわち電極間に挟まれた部分の面積を小さくして静電容量を減少させながら、アクチュエータの変位箇所面積よりも振動板の変位箇所面積が大きくなる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータの変位量が小さくても圧力室に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する
前記変位伝達体が、前記活性部との接合面積よりも前記振動板との接合面積を大きくした形状であってもよい。
このようにすると、変位伝達体により変形を拘束される振動板の変形拘束面積が、活性部からの圧力を受ける変位伝達体の受圧面積よりも大となる構成を容易に形成することができ、生産性が向上する。より具体的には、変位伝達体は、前記振動板と平行な方向と直交する方向に切断した断面視で凸形状を呈したものとすると好適である。
記固定体および前記変位伝達体における、前記圧電体との接合面が前記振動板から同じ高さにあってもよい。
このようにすると、固定体および変位伝達体の圧電体との接合面が振動板から同じ高さであるので、平坦なプレートによりアクチュエータの積層構造を容易に形成することができ、生産性が向上する。
前記振動板の前記流路ユニットと対面する側の面において、前記変位伝達体に対応する位置に変形拘束体が設けられていると共に、前記平面視で前記固定体と重なる位置に第2固定体が設けられ、前記変形拘束体が、その外周部と前記第2固定体との間に隙間をあけて前記振動板の変形を拘束するように前記振動板の所定範囲にわたって配置されており、前記振動板における、前記変形拘束体によって変形を拘束される変形拘束面積が、前記変位伝達体における、前記活性部からの圧力を受ける受圧面積よりも大であってもよい。
このようにすると、第2固定体に対して変形拘束体が隙間をあけて配置されているため、第2固定体が圧力室間の隔壁に、組み立て上多少ずれて連結されても、振動板がその変形を妨げられることなく所期量確実に変形される。また、アクチュエータの活性部の変形が変位伝達体に伝達されると、変位伝達体の移動により振動板の変形拘束体が設けられた部分が変位して圧力室の容積が変動することとなる。そうすると、アクチュエータの活性部の変形状態にかかわらず振動板の変形拘束体による変形拘束面積分が安定して変位する。したがって、アクチュエータの活性部の変位量が小さくなっても圧力室に安定した容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。
また、圧力室の変動容積は、振動板の変位量及び振動板の変位箇所面積に比例するが、変形拘束体により変形を拘束される振動板の変形拘束面積が、活性部からの圧力を受ける変位伝達体の受圧面積よりも大であるので、変形拘束体によって活性部の変位箇所面積よりも振動板の変位箇所面積を大きくさせる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータの活性部の変位量が小さくても圧力室に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。
前記変形拘束体および前記第2固定体は、前記振動板から同じ高さに突出していてもよい。
このようにすると、第2固定体および変形拘束体が振動板からほぼ同じ高さであるので、平坦なプレートを利用してアクチュエータの積層構造を容易に形成することができ、生産性が向上する。
記変形拘束体の前記振動板に対する接合面積は、前記変形拘束体に対応する前記活性部の面積よりも大であってもよい。
このようにすると、振動板に対する変形拘束体の接合面積が、アクチュエータの活性部の面積よりも大であるので、活性部すなわち電極間に挟まれた部分の面積を小さくして静電容量を減少させながら、アクチュエータの変位箇所面積よりも振動板の変位箇所面積が大きくなる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータの変位量が小さくても圧力室に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、圧力室に安定した容積変動を与えることができ、アクチュエータの駆動効率が向上する。
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るカラー用のインクジェットヘッド1を示す分解斜視図である。図1に示すように、インクジェットヘッド(液体移送装置)1は、複数枚のプレートが積層された流路ユニット2と、その流路ユニット2に対して重ねて接着される圧電式のアクチュエータ3とを備えている。流路ユニット2は、最下層の下面側に開口したノズル孔17a(図2参照)から下向きにインクが噴射される構成となっている。アクチュエータ3は、電界が選択的に付与されることで所要箇所が選択的に変形する圧電体5と、圧電体5の下面に配置される振動板ユニット4とを備えている。圧電体5の上面には表面電極7が形成されており、外部機器との電気的接続を行うためのフレキシブルフラットケーブル6が重ねて配置されている。フレキシブルフラットケーブル6の下面に露出した端子(図示せず)は、圧電体5の表面電極7に導通接続されている。
図2は図1に示すインクジェットヘッド1の分解斜視図である。図3は図1のIII−III線断面の要部拡大図である。図2及び図3に示すように、流路ユニット2は、圧力室プレート10と、第1接続流路プレート11と、第2接続流路プレート12と、第1マニホールドプレート13と、第2マニホールドプレート14と、ダンパープレート15と、カバープレート16と、ノズルプレート17とがそれぞれ接着積層された構成となっている。ノズルプレート17はポリイミド等の樹脂シートで、それ以外の各プレート10〜16は42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板であり、各々50〜150μm程度の肉厚を有している。各プレート10〜17には、電解エッチング、レーザ加工、プラズマジェット加工等により、流路を構成する開口又は凹部が形成されている。
図2に示すように、圧力室プレート10は、長辺に沿うように5列に並べられた多数の圧力室孔10aと、インク供給孔(液体流入口)10cとを有し、圧力室層を構成している。圧力室孔10aは、平面視で列方向と直交する方向の長軸を有する長円形状となっており(図4参照)、列方向及びそれと直交する方向に隣接する他の圧力室孔とは隔壁10bによって隔てられている。5列の圧力室孔10aのうち、左側2列はブラックインク用に、残りの3列はそれぞれシアン、マゼンダ、イエローのいずれかのカラーインク用に使用される。
図2及び図3に示すように、第1接続流路プレート11は、圧力室孔10aの端部に夫々連通する連通孔11aと、圧力室孔10aの反対側の端部に連通する流出用貫通孔11bと、インク供給孔10cに同形状で連通するインク供給孔11cとを有している。第2接続流路プレート12は、連通孔11aに一端が連通され圧力室孔10aの長軸方向に沿って形成された凹部12aと、その凹部12aの他端に形成された連通孔12bと、流出用貫通孔11bに連通する流出用貫通孔12cと、インク供給孔11cに同形状で連通するインク供給孔12dとを有している。そして、前記した第1接続流路プレート11と第2接続流路プレート12とで接続流路層が構成されている。
第1マニホールドプレート13は、圧力室孔10aの各列にそれぞれ連通孔12bを介して連通するように圧力室孔10aの下方で列方向に延在する第1マニホールド孔13aと、流出用貫通孔12cにそれぞれ連通する流出用貫通孔13bとを有している。第2マニホールドプレート14は、第1マニホールド孔13aに連通する第2マニホールド孔14aと、流出用貫通孔13bに連通する流出用貫通孔14bとを有している。そして、前記した第1マニホールドプレート13と第2マニホールドプレート14とでマニホールド層が構成されている。
ダンパープレート15は、マニホールド孔14aとは反対側から凹部を形成することで薄肉化されたダンパー壁15aと、流出用貫通孔14bに連通する流出用貫通孔15cとを有し、ダンパー層を構成している。即ち、図3に示すように、ダンパー層は、各ダンパー壁15aを境にマニホールド孔14aの反対側に形成された空隙部15bを有している。カバープレート16は、流出用貫通孔15cに連通する流出用貫通孔16aを有している。ノズルプレート17は、流出用貫通孔16aに連通して外部にインクを噴射するノズル孔(液体流出口)17aを有している。
図3に示すように、アクチュエータ5は、1枚の厚さが略30μm程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる多数枚の圧電材シート22〜28と、絶縁性を有するトップシート29とが積層されている。圧電材シート22〜28は、振動板19と平行な方向に扁平であり、該平行な方向と直交する方向に積層されている。各圧電材シート22〜26のうち最下層の圧電材シート22から上方へ数えて奇数番目の圧電材シート22,24,26の上面には、多数の圧力室孔10aに対応して連続配置された共通電極30が印刷形成されている。各圧電材シート22〜26のうち最下層の圧電材シート22から上方へ数えて偶数番目の圧電材シート23,25の上面には、各圧力室孔10aの夫々に対応するよう配置された多数の個別電極31が5列に印刷形成されている。圧電体5は、個別電極31に対応する変形可能な部分が活性部A1であり、その他の部分が不活性部A2となっている。さらに、共通電極30及び個別電極31は各圧電材シート22〜28及びトップシート29の側端面またはスルーホール(図示せず)に設けた中継導電体(図示せず)を介して最上層のトップシート29の上面の表面電極7(図1参照)に導通されている。
振動板ユニット4は、厚さが20〜50μm程度のポリイミド等の平坦な樹脂シートからなる振動板19と、振動板19の上面に重ねて接着された厚さが50〜150μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板が用いられた中間プレート20とを備えている。また、図2に示すように、振動板ユニット4は、平面視で流路ユニット2と同じ外形であり、圧力室プレート10のインク供給孔10cに対応する位置にインク供給孔19a,20cを有し、そのインク供給孔19a,20cにはインクタンク(図示せず)から供給されるインクに混入した塵を除去するためのフィルタ21が被せられている。
図4は図1に示すインクジェットヘッド1の変位伝達体37を含む要部分解斜視図である。図5は図1に示すインクジェットヘッド1の変位伝達体37の配置を説明する要部平面図である。図3乃至図5に示すように、中間プレート20は、平面視で圧力室孔10aの外周に沿った環状の隙間20aで囲まれた変位伝達体37と、圧電体5の不活性部A2を振動板19を介して圧力室プレート10の隔壁10bに連結する固定体20bとを備えている。固定体20bは、圧力室孔10aを囲む隔壁10bと平面視においてほぼ一致した形状を備えている。変位伝達体37は、平面視で圧力室孔10aの内部に収まった長円形状である変形拘束部37bと、変形拘束部37bより上方に突出して平面視で変形拘束部37bの内部に収まった長円形状である受圧部37aとを備えている。即ち、図3に示すように、変位伝達体37は、断面視で凸形状を呈しており、受圧部37aと圧電体5の活性部A1との接合面積S1(受圧面積)よりも、変形拘束部37bと振動板19との接合面積S2(変形拘束面積)が大きい形状となっている。
換言すれば、変位伝達体37の受圧部37aの圧電体5に対する接合面積S1は、その変位伝達体37に対応する活性部すなわち個別電極31の面積S1と同一である一方、変位伝達体37の変形拘束部37bの振動板19に対する接合面積S2は、その変位伝達体37に対応する活性部すなわち個別電極31の面積S1よりも大となっている。また、固定体20b及び変位伝達体37の圧電体5との接合面は、振動板19から略同一高さにある。なお、変位伝達体37は振動板19よりも材質的又は構造的に剛性が高ければよく、例えば、変位伝達体と振動板とが同材質で且つ変位伝達体を平面視でハニカム構造等にすることで剛性を高めてもよい。また、受圧部37a及び変形拘束部37bの厚みは特に限定されないが、本実施形態では夫々互いに同一となっている。
図6(a)(b)は図3に示すインクジェットヘッドに含まれる振動板ユニット4の製造手順を説明する要部断面図である。振動板ユニット4の製造手順は、まず、図6(a)に示すように、厚さが20〜50μm程度のポリイミド等の樹脂シートからなる振動板19と、厚さが50〜150μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板からなる中間プレート20’とを互いに接着する。この状態から、図6(b)に示すように、中間プレート20’のみについてハーフエッチング等により平面視で環状の隙間20aを段差状に形成して、断面視で凸形状かつ平面視で長円形状の変位伝達体37を形成する。そして、振動板ユニット4は、流路ユニット2と圧電体5との間に介挿されるに際して、まず圧電体5と接着され、アクチュエータ3を形成する。このとき、振動板ユニット4の変位伝達体37と固定体20bの上面が同じ高さにあり、圧電体5の下面が平坦であるので、その両者間に接着剤を介挿して振動板ユニット4と圧電体5とを上下からそれぞれ平坦な治具で挟んで押圧することで、確実に接着できる。また、圧電体5の活性部と変位伝達体37とは正確に対応することが望ましいが、組み立て上、多少ずれても、固定体20bに対し隙間20aを介して変位伝達体37の位置が正確に確保されているので、圧力室35に対する振動板19の変位量が十分に確保される。
次に、流路ユニット2内におけるインクの流路を図3に基づいて説明する。インク供給孔10c,11c,12d,19a,20c(図2参照)に連通する共通液室33が、マニホールド孔13a,14aの上下を第2接続流路プレート12とダンパープレート15とで閉鎖することで形成されている。この共通液室33は、後述する圧力室35に平面視で重なるように列方向に延在している。共通液室33の下面は、平面視で共通液室33と略同一形状のダンパー壁15aにより形成されている。ダンパー壁15aを境に共通液室33とは反対側に位置する空隙部15bは、その下側がカバープレート16で閉鎖されることで密閉されている。
共通液室33は、クランク状の接続流路34を介して上方にある圧力室35の一端部に連通している。接続流路34は、第1接続流路プレート11の連通孔11a、第2接続流路プレート12の凹部12a及び連通孔12bにより形成されている。接続流路34は、共通液室33から圧力室35までの流路中で最も狭い流路断面積で最も大きい流路抵抗となる絞り部34aを有している。圧力室35は、圧力室孔10aの上下が振動板19及び第1接続流路プレート11で閉鎖されることで形成されている。圧力室35の他端部には流出路36が連通している。流出路36は、流出用貫通孔11b,12c,13b,14b,15c,16a,17aにより形成されており、下方のノズル孔17aに向けて徐々に縮径する形状で積層方向(プレート面に直交する方向)に真っ直ぐ垂設されている。
次に、インクジェットヘッド1の作用について説明する。図7は図3に示すインクジェットヘッドのインク噴射動作を説明する要部拡大図である。図7に示すように、圧電体5の個別電極31に選択的に電圧が印加されて共通電極30との間に電位差が生じることで、圧電材シート23〜26の各電極30,31間に位置する活性部A1に電界が作用して積層方向の歪み変形が発生する。この活性部A1の変形が変位伝達体37の受圧部37aに伝達されると、変位伝達体37が下方に変位して変形拘束部37bが振動板19を押圧して変形させる。そして、この振動板19の変形により圧力室35内のインクに圧力が付与され、該インクが流出路36を通ってノズル孔17aより噴射される。
その際、圧力室35の変動容積は、振動板19の下方への変位量及び振動板19の変位箇所面積に比例する。そして、活性部A1からの圧力を受ける変位伝達体37の受圧部37aの受圧面積S1よりも、変位伝達体37の変形拘束部37bにより変形を拘束される振動板19の変形拘束面積S2が大であるので、活性部A1の変位箇所面積よりも振動板19の変位箇所面積を大きくさせる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータ3の圧電体5の活性部A1の平面視での変位面積が小さくても圧力室35に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。また、それにより活性部A1の面積を小さくしても圧力室35に十分な容積変動を与えることができるので、圧電材シート22〜28の静電容量を小さくして消費電力を低減することができ、アクチュエータ3の発熱量も抑制することが可能となる。
なお、本実施形態では変位伝達体37は一体に形成されているが、その受圧部37aと変形拘束部37bとを夫々別体で形成してもよい。また、本実施形態では、変位伝達体37の受圧部37aと圧電体5との接合面積S1は受圧面積と同一であるが、変位伝達体を例えば平面視でハニカム構造のようにすることで、当該接合面積よりも受圧面積が大きくなるようにしてもよい。同様に、変位伝達体37の変形拘束部37bと振動板19との接合面積S2は変形拘束面積と同一であるが、変位伝達体を例えば平面視でハニカム構造のようにすることで、当該接合面積よりも変形拘束面積が大きくなるようにしてもよい。
(第2実施形態)
図8は第2実施形態のインクジェットヘッド40の要部断面図である。なお、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。図8に示すように、振動板ユニット41は、厚さが20〜50μm程度のポリイミド等の樹脂シートからなる振動板19と、振動板19の上面に重ねて接着された厚さが50〜150μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板が用いられた第1中間プレート42と、振動板19の下面に重ねて接着された厚さが30〜100μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板が用いられた第2中間プレート43を備えている。
第1中間プレート42は、平面視で圧力室孔10aの外周に沿った環状の隙間42aで囲まれた変位伝達体44と、圧電体5の不活性部A2を振動板19及び第2中間プレート43を介して圧力室プレート10の隔壁10bに連結する固定体42bとを備えている。変位伝達体44は、平面視で圧力室孔10aの内部に収まった平坦な長円柱形状であり、圧電体5の活性部A1との接合面積S1(受圧面積)と、振動板19との接合面積S1とが略同一となっている。
第2中間プレート43は、平面視で圧力室孔10aの外周に沿った環状の隙間43aで囲まれた変形拘束体45と、圧電体5の不活性部A2を振動板19を介して圧力室プレート10の隔壁10bに連結する第2固定体43bとを備えている。変形拘束体45は、平面視で圧力室孔10aの内部に収まった平坦な長円柱形状であり、平面視で変位伝達体44よりも大きい面積を有している。即ち、変位伝達体44の圧電体5の活性部A1との接合面積S1(受圧面積)よりも、変形拘束体45の振動板19との接合面積S2(変形拘束面積)の方が大きい構成となっている。固定体42b、44bは、圧力室孔10aを囲む隔壁10bと平面視においてほぼ一致した形状を備えている。
換言すれば、変位伝達体44の圧電体5に対する接合面積S1は、その変位伝達体44に対応する活性部すなわち個別電極31の面積と同一である一方、変形拘束体45の振動板19に対する接合面積S2は、その変形拘束体45に対応する活性部すなわち個別電極31の面積よりも大となっている。また、変形拘束体45及び第2固定体43bは、振動板19から下方へほぼ同じ高さに突出している。また、第2固定体43bは、固定体42bと平面視でほぼ重なる位置に設けられている。なお、変形拘束体45は振動板19よりも材質的又は構造的に剛性が高ければよく、例えば、変形拘束体と振動板とが同材質で且つ変形拘束体を平面視でハニカム構造等にすることで剛性を高めてもよい。
図9(a)(b)は図8に示すインクジェットヘッドに含まれる振動板ユニット41の製造手順を説明する要部断面図である。振動板ユニット41の製造手順は、まず、図9(a)に示すように、厚さが30〜100μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板からなる第2中間プレート43’の上面に、厚さが20〜50μm程度のポリイミド等の樹脂シートからなる振動板19を重ねて接着し、振動板19の上面に厚さが50〜150μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板からなる第1中間プレート42’を重ねて接着する。この状態から、図6(b)に示すように、第1中間プレート42’についてエッチング等により平面視で環状の隙間42aを形成して、長円柱形状の変位伝達体44を形成する。そして、第2中間プレート43’についてエッチング等により平面視で隙間42よりも内径の大きい環状の隙間43aを形成して、長円柱形状の変形拘束体45を形成する。
前記実施形態と同様に、振動板ユニット41は圧電体5と接着され、アクチュエータ47を形成する。このとき、振動板ユニット41の変位伝達体44と固定体42bの上面が同じ高さにあり、変形拘束体45と固定体43bの下面が同じ高さにあり、圧電体5の下面が平坦であるので、振動板ユニット4と圧電体5とを上下からそれぞれ平坦な治具で挟んで押圧することで、確実に接着できる。
そして、振動板ユニット41と圧電体5とからなるアクチュエータ47が、複数のプレートをあらかじめ積層固定した流路ユニット2に接着される。圧電体5の活性部と変位伝達体37とが多少ずれても、振動板19の変位量が確保されるのは前記実施形態と同様である。さらに、固定体43bが流路ユニットの隔壁10bに対して多少ずれて接着されても、固定体43bに対し隙間43aを介して変形拘束体45の位置が正確に確保されているので、振動板19の変位を妨げることはない。また、圧力室プレート10の圧力室孔10aの上方が振動板19及び変形拘束体45で閉鎖され、圧力室孔10aの下方が第1接続流路プレート11で閉鎖されることで、圧力室孔10a及び隙間43aに圧力室46が形成されている。
次に、インクジェットヘッド40の作用について説明する。図8に示すように、圧電体5の活性部A1からの圧力を受ける変位伝達体44の受圧面積S1よりも、変形拘束体45により変形を拘束される振動板19の変形拘束面積S2が大であるので、活性部A1の変位箇所面積よりも振動板19の変位箇所面積を大きくさせる増幅効果が得られる。したがって、アクチュエータ47の圧電体5の活性部A1の変位面積が小さくても圧力室46に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。また、それにより活性部A1の面積を小さくしても圧力室46に十分な容積変動を与えることできるので、アクチュエータ47の静電容量を小さくして発熱量も抑制することが可能となる。
(第3実施形態)
図10は第3実施形態のインクジェットヘッド50の要部断面図である。なお、第1実施形態又は第2実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。図10に示すように、振動板ユニット51は、振動板19と、振動板19の上面に重ねて接着された第1中間プレート20と、振動板19の下面に重ねて接着された第2中間プレート43を備えている。即ち、第1中間プレート20は第1実施形態と同一のものであり、第2中間プレート43は第2実施形態のものと同一である。
第1中間プレート20において固定体20bとの間に環状の隙間20aをあけて形成された変位伝達体37は、断面視で凸形状を呈しており、その受圧部37aと圧電体5の活性部A1との接合面積S1(受圧面積)よりも、変形拘束部37bと振動板19との接合面積S2(変形拘束面積)が大きい形状となっている。
第2中間プレート43において第2固定体43bとの間に環状の隙間43aをあけて形成された変形拘束体45は長円柱形状であり、その振動板19との接合面積S2(変形拘束面積)が変位伝達体37の振動板19に対する接合面積S2と略同一となっている。即ち、変形拘束体45は、平面視で変位伝達体37の変形拘束部37bとほぼ重なる位置に設けられている。
図11(a)(b)は図11に示すインクジェットヘッド50に含まれる振動板ユニット51の製造手順を説明する要部断面図である。振動板ユニット51の製造手順は、まず、図11(a)に示すように、厚さが30〜100μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板からなる第2中間プレート43’の上面に、厚さが20〜50μm程度のポリイミド等の樹脂シートからなる振動板19を重ねて接着し、振動板19の上面に厚さが50〜150μm程度の42%ニッケル合金鋼板(42合金)等の金属板からなる第1中間プレート20’を重ねて接着する。この状態から、図11(b)に示すように、第1中間プレート20’についてハーフエッチング等により平面視で環状の隙間20aを形成して、断面凸形状の変位伝達体37を形成する。そして、第2中間プレート43’についてエッチング等により平面視で環状の隙間43aを形成して、長円柱形状の変形拘束体45を形成する。そして、図10に示すように、振動板ユニット51を流路ユニット2と圧電体5との間に介挿接着し、振動板ユニット51と圧電体5とでアクチュエータ53を形成する。
次に、インクジェットヘッド50の作用について説明する。図10に示すように、圧電体5の活性部A1からの圧力を受ける変位伝達体37の受圧部37aの受圧面積S1よりも、変位伝達体37の変形拘束部37b及び変形拘束体45により変形を拘束される振動板19の変形拘束面積S2が大であるので、活性部A1の変位箇所面積よりも振動板19の変位箇所面積を大きくさせる増幅効果が得られる。この際、振動板19は上下から変形が拘束されるので、変形拘束効果がより一層安定して得られることとなる。
以上により、アクチュエータ53の圧電体5の活性部A1の変位量が小さくても圧力室46に大きな容積変動を与えることができ、駆動効率が向上する。また、それにより活性部A1の面積を小さくしても圧力室46に十分な容積変動を与えることできるので、アクチュエータ53の静電容量を小さくして発熱量も抑制することが可能となる。
なお、前述した各実施形態は本発明をインクジェットヘッドに適用したものであるが、インク以外の液体を移送する液体移送装置に適用してもよい。
以上のように、本発明に係る液体移送装置は、アクチュエータの駆動効率が向上する優れた効果を有し、インクジェットヘッド等に適用すると有益である。
本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドを示す分解斜視図である。 図1に示すインクジェットヘッドの分解斜視図である。 図1のIII−III線断面の要部拡大図である。 図1に示すインクジェットヘッドの変位伝達体を含む要部分解斜視図である。 図1に示すインクジェットヘッドの変位伝達体の配置を説明する要部平面図である。 (a)(b)は図3に示すインクジェットヘッドに含まれる変位伝達体の製造手順を説明する要部断面図である。 図3に示すインクジェットヘッドのインク噴射動作を説明する要部拡大図である。 第2実施形態のインクジェットヘッドの要部断面図である。 (a)(b)は図8に示すインクジェットヘッドに含まれる変位伝達体及び変形拘束体の製造手順を説明する要部断面図である。 第3実施形態のインクジェットヘッドの要部断面図である。 (a)(b)は図10に示すインクジェットヘッドに含まれる変位伝達体及び変形拘束体の製造手順を説明する要部断面図である。
1,40,50 インクジェットヘッド(液体移送装置)
2 流路ユニット
3,47,53 アクチュエータ
4,41,51 振動板ユニット
5 圧電体
10b 隔壁
10c,11c,12d,19a,20c インク供給孔(液体流入口)
17a ノズル孔(液体流出口)
19 振動板
20b,42b 固定体
22〜28 圧電材シート
30 共通電極
31 個別電極
35,46 圧力室
37,44 変位伝達体
43b 第2固定体
45 変形拘束体
A1 活性部
A2 不活性部
S1 受圧面積
S2 変形拘束面積

Claims (7)

  1. 液体流入口から複数の液体流出口までの流路中に前記複数の液体流出口に夫々対応する複数の圧力室が設けられた流路ユニットと、前記流路ユニットに重ねられ前記圧力室の容積を変動させるアクチュエータとを備え、
    前記流路ユニットは、前記複数の圧力室をその間に隔壁を介在して列状に配置して有し、
    前記アクチュエータは、前記各圧力室に夫々対面して前記複数の圧力室にわたって連続して設けられた振動板と、前記振動板の前記圧力室と反対側に設けられた圧電体とを有し、
    前記圧電体は、前記複数の圧力室にわたる大きさであって前記振動板と平行な方向と直交する方向に重ねられる圧電材シートと、前記圧電材シートに重ねられて前記複数の圧力室に対応して連続配置された共通電極と、前記共通電極との間で前記圧電材シートを挟み前記複数の圧力室の夫々に対応するように個別配置された複数の個別電極とを有し、前記個別電極は、前記直交する方向から見た平面視で前記圧力室よりも小さい面積であり、
    前記圧電体は、前記平面視で前記個別電極に対応する領域であって前記共通電極と前記個別電極との間に生じる電界により変形する活性部と、前記活性部以外の部分である不活性部とを有し、前記振動板と平行な方向に扁平で前記振動板側の面が前記圧力室の列方向に平坦に形成されており、
    前記振動板と前記圧電体との間には、前記不活性部を前記隔壁に連結する固定体と、前記活性部の変形を前記振動板に伝達する変位伝達体とが介設され、
    前記変位伝達体が、その外周部と前記固定体との間に隙間をあけて前記振動板の変形を拘束するように前記振動板の所定範囲にわたって配置されていると共に、前記不活性部に接合されずに前記活性部に接合されており、
    前記振動板における、前記変位伝達体によって変形を拘束される変形拘束面積が、前記変位伝達体における、前記活性部からの圧力を受ける受圧面積よりも大であることを特徴とする液体移送装置。
  2. 前記変位伝達体が、前記活性部との接合面積よりも前記振動板との接合面積を大きくした形状である請求項1に記載の液体移送装置。
  3. 前記変位伝達体は、前記振動板と平行な方向と直交する方向に切断した断面視で凸形状を呈している、請求項2に記載の液体移送装置。
  4. 前記固定体および前記変位伝達体における、前記圧電体との接合面が前記振動板から同じ高さにある請求項1乃至3のいずれかに記載の液体移送装置。
  5. 前記振動板の前記流路ユニットと対面する側の面において、前記変位伝達体に対応する位置に変形拘束体が設けられていると共に、前記平面視で前記固定体と重なる位置に第2固定体が設けられ、
    前記変形拘束体が、その外周部と前記第2固定体との間に隙間をあけて前記振動板の変形を拘束するように前記振動板の所定範囲にわたって配置されており、
    前記振動板における、前記変形拘束体によって変形を拘束される変形拘束面積が、前記変位伝達体における、前記活性部からの圧力を受ける受圧面積よりも大である請求項1乃至4のいずれかに記載の液体移送装置。
  6. 前記変形拘束体および前記第2固定体は、前記振動板から同じ高さに突出している請求項5に記載の液体移送装置。
  7. 前記変形拘束体の前記振動板に対する接合面積は、前記変形拘束体に対応する前記活性部の面積よりも大である請求項5又は6に記載の液体移送装置。
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