JP4838967B2 - 天然ゴムマスターバッチ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ゴムマスターバッチおよびその製造方法に関し、詳しくは、加工性、補強性、耐摩耗性が改良された天然ゴム組成物の製造に有用な天然ゴムマスターバッチおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、天然ゴムは、機械的特性、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴムとして知られている。また、環境にやさしい素材としても注目されている。この天然ゴム中にはアミド結合(タンパク質)を含有する非ゴム成分が存在する。天然ゴム中の非ゴム成分は、老化防止あるいは加硫促進作用を有することが知られているが、他方アミド結合の水素結合性によって分子同士が絡み合い、ゴムの粘度上昇をもたらすため、合成ゴムに比較して加工性に劣る欠点がある。
また、最近では、医療用天然ゴム製品など特殊用途として、ラテックスの遠心分離などによりタンパク質などの非ゴム成分を高度に除去した天然ゴムが知られている。(特開平6−56902号公報、特開平8−143606号公報、特開平11−71408号公報、特開2000−19801号公報等)。
しかし、この場合には、老化防止作用あるいは加硫促進作用を有する非ゴム成分がほぼ完全に取り去られるために、ゴムの弾性率が低下したり、老化特性が劣るという欠点を有する。
【0003】
また、一般に、加工性に優れたゴムの製造方法としてウェットマスターバッチを用いることが知られている。これは、カーボンブラック、シリカ等の充填材と水とをあらかじめ一定の割合で混合し機械的な力で充填材を水中に微分散させたスラリーと、ゴムラテックスを混合し、その後、酸、無機塩、アミン等の凝固剤を加えて凝固させたものを、回収、乾燥するものである(特公昭36−22729号公報、特公昭51−43851号公報等)。
【0004】
しかし、天然ゴムと、カーボンブラック、シリカ、他の無機充填剤等からなるウェットマスターバッチは、合成ゴムのウェットマスターバッチに比べて、加工性の改良幅が小さく、充填材の良好な分散を得られにくいという問題点があった。また、分散が良好なスラリーを得るために機械的なせん断力をかけすぎると、充填材のアグリゲート(ストラクチャー)が壊れてしまい、従ってゴムの補強性が低下し、耐摩耗性が悪化する問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下で、本発明の目的は、加工性、補強性、耐摩耗性などが改良された天然ゴム組成物に適用される天然ゴムマスターバッチ及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、当該マスターバッチを用いた天然ゴム組成物及びこれを用いたタイヤを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムマスターバッチの製造において、天然ゴムラテックスの変性、及び/又はこれと混合される充填材分散スラリーの製法を工夫することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1は、(A)天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解するアミド結合分解工程と、(B)当該アミド結合分解工程後のラテックスとカーボンブラック、シリカ、又は一般式(I)
nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
[式中、M1 は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
で表わされる無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含むことを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法を提供するものである。
また、本発明の第2は、天然ゴムラテックスと、カーボンブラック、シリカ、又は前記一般式(I)で表される無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程において、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記製造方法により得られた天然ゴムマスターバッチ、及び当該マスターバッチを用いた天然ゴム組成物及びタイヤをも提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における天然ゴムマスターバッチの第1の製造方法は、(A)天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解するアミド結合分解する工程(1)と、(B)当該アミド結合分解工程後のラテックスを、カーボンブラック、シリカ及び上記一般式(I)で表わされる無機充填材の群から選ばれる少なくとも1種の充填材をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液と混合する工程(2)とを含むものである。
上記工程(1)において、天然ゴムラテックス中のアミド結合の分解に際しては、各種の方法が適用できる。その中でも、プロテアーゼを利用する方法、または芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いる方法を使用することが好ましい。
【0008】
まず、プロテアーゼを利用する方法において、プロテアーゼは、天然ゴムラテックス粒子の表面層成分中に存在するアミド結合を加水分解する性質を有するもので、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼなどが挙げられる。本発明においては、特にアルカリ性プロテアーゼが効果の点から好ましい。
【0009】
プロテアーゼによってアミド結合の分解を行う場合は、混合する酵素に適した条件で行えばよく、例えば天然ゴムラテックスにノボザイムズ製アルカラーゼ2.5LタイプDXを混合する場合には、通常20〜80℃の範囲で、処理することが望ましい。この際のpHは、通常6.0〜12.0の範囲で行われる。また、プロテアーゼの添加量は、天然ゴムラテックスに対して、通常0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.02重量%〜1重量%の範囲である。
【0010】
また、芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いる方法において、芳香族ポリカルボン酸誘導体とは、下記一般式(II)で示される化合物をいう。
【0011】
【化1】
Figure 0004838967
【0012】
[式(II)中、mおよびkはそれぞれ1〜3の整数、pは1〜4の整数で、m+k+p=6であり、m≧2の場合、カルボキシル基の一部または全部が分子内で無水化されていてもよい。Xは、酸素、NR3(R3は水素または炭素数1〜24のアルキル基)または−O(R4O)q(R4は炭素数1〜4のアルキレン基、qは1〜5の整数)。R1は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基または炭素数6〜24のアリール基、R2は、水素、−OH、アルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、R1およびR2は共に一部または全部の水素がハロゲンで置換されていてもよい。]
【0013】
本発明においては、上記一般式(II)で表される芳香族ポリカルボン酸誘導体のうち、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびその無水物のいずれかの誘導体が好ましく、具体的には、フタル酸モノステアリル、フタル酸モノデシル、フタル酸モノオクチルアミド、フタル酸ポリオキシエチレンラウリルエステル、トリメリット酸モノデシル、トリメリット酸モノステアリル、ピロメリット酸モノステアリル、ピロメリット酸ジステアリル等が挙げられる。
なお、芳香族ポリカルボン酸誘導体を、天然ゴムラテックスに混合する場合の条件は、天然ゴムラテックスの種類、また使用する芳香族ポリカルボン酸の種類に応じて適宜選択して行えばよい。
【0014】
芳香族ポリカルボン酸誘導体の添加量は、天然ゴムラテックスに対して、0.01〜30重量%配合することが好ましい。添加量が0.01重量%未満ではムーニー粘度を十分に低下できないことがあり、一方、30重量%を超えると、その増量に見合った効果が得られないばかりではなく、加硫ゴムの破壊特性などに悪影響を生じることがある。使用する天然ゴムラテックスの種類、グレードなどにより、その添加量は上記配合範囲内で変動するものであるが、コスト、物性などの面から、0.05〜20重量%の範囲が望ましい。
【0015】
また、天然ゴムラテックスのアミド結合を分解する工程においては、さらに、ラテックスの安定性を向上させる目的で、界面活性剤を加えることが望ましい。界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性界面活性剤を使用できるが、特にアニオン系、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの性状に応じて適宜調整しうるが、通常天然ゴムラテックスに対して、0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.02重量%〜1重量%である。
上記変性ラテックスとスラリー溶液とを混合する工程(2)においては、あらかじめ、水中にカーボンブラック、シリカ、前記一般式(I)で表される無機充填材の少なくとも1種が分散したスラリー溶液を製造しておくことが必要であるが、このスラリー溶液の製造方法は公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
例えば、ホモミキサーに所定量の充填材と水を入れ、一定時間攪拌することで、当該スラリー溶液を調製することができる。
【0016】
次に、本発明における天然ゴムマスターバッチの第2の製造方法では、充填材のスラリー溶液の製造に際しては、水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布と、充填材の24M4DBP吸油量とが特定範囲のものに限定される。
すなわち、本発明における天然ゴムマスターバッチの第2の製造方法は、天然ゴムラテックスと、カーボンブラック、シリカ、又は前記一般式(I)で表される無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程において、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることが必要である。ここで、24M4DBP吸油量は、ISO 6894に準拠して測定される値である。
さらに好ましくは、体積平均粒子径(mv)が20μm以下、かつ90体積%粒径(D90)が25μm以下である。粒度が大きすぎるとゴム中の充填材分散が悪化し、補強性、耐摩耗性が悪化することがある。
他方、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、充填材のストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こす。水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填剤の24M4DBP吸油量が、スラリーに投入する前の充填材の24MDBP吸油量の93%以上であることが必要である。さらに好ましくは96%以上である。
充填材の水分散スラリー溶液の製造には、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等が用いられる。
例えば、コロイドミルに所定量の充填剤と水を入れ、高速で一定時間攪拌することで、当該スラリー溶液を調製することができる。
【0017】
本発明の前記第1及び第2の天然ゴムマスターバッチの製造方法において、用いられるカーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独にまたは混合して使用することができる。
また、本発明で用いるシリカとしては特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
【0018】
前記一般式(I)で表わされる無機充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(I)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
【0019】
なお、上記カーボンブラック、シリカ、無機充填材の少なくとも一種を含む充填材のスラリー濃度は、スラリーに対して0.5重量%〜60重量%が好ましく、特に好ましい範囲は1重量%〜30重量%である。
前記充填材は、天然ゴムマスターバッチのゴム成分100重量部に対して、5〜100重量部添加されるのが好ましく、特には10〜70重量部の範囲であることが好ましい。充填材の量が5重量部より少ないと充分な補強性が得られない場合があり、また100重量部を超えると加工性が悪化する場合があるからである。
また、上記カーボンブラック、シリカ、及び前記一般式(I)で表される無機充填材は単独でまたは二種以上のものを混合して用いることもできる。
【0020】
次に、前記スラリー溶液と前記アミド結合分解工程を経た天然ゴムラテックスとの混合方法としては、例えば、ホモミキサー中に該スラリー溶液を入れ、攪拌しながら、ラテックスを滴下する方法や、逆にラテックスを攪拌しながら、これに該スラリー溶液を滴下する方法がある。また、一定の流量割合をもったスラリー流とラテックス流とを、激しい水力攪拌の条件下で混合する方法などを用いることもできる。
【0021】
マスターバッチの凝固方法としては、通常と同様、蟻酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩の凝固剤を用いて行われる。また、本発明においては、凝固剤を添加せず、天然ゴムラテックスと前記スラリーとを混合することによって、凝固がなされる場合もある。
また、マスターバッチには、所望に応じて、カーボンブラック、シリカ、前記一般式(I)で表される無機充填材以外に、界面活性剤、加硫剤、老化防止剤、着色剤、分散剤等の薬品など種々の添加剤を加えることができる。
【0022】
マスターバッチ製造の最終工程として、乾燥が通常行われる。本発明においては、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、さらに充填材の分散性を向上させるためには、機械的せん断力をかけながら乾燥を行なうことが好ましい。これにより、加工性、補強性、低燃費性に優れたゴムを得ることができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行なうことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の2軸混練押出機を用いることがより好ましい。
【0023】
また、上記のせん断力をかけながら乾燥を行う工程においては、乾燥工程前のマスターバッチ中の水分は10%以上であることが好ましい。この水分が10%未満であると、乾燥工程での充填材分散の改良幅が小さくなってしまうことがある。
すなわち、本発明におけるマスターバッチは、アミド結合が分解された天然ゴムラテックスとカーボンブラック、シリカ又は前記一般式(I)で表わされる無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合し、凝固させて得られた天然ゴムマスターバッチである。
本発明のゴム組成物は、前記の充填材含有天然ゴムマスターバッチを用いて得られるが、このゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤,加硫促進剤,老化防止剤,スコーチ防止剤,亜鉛華,ステアリン酸などを添加することができる。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
各実施例、比較例における各種測定は下記により行なった。
(1)スラリー溶液中の充填材の粒度分布測定(体積平均粒子径(mv)、90体積%粒径(D90))
レーザー回折型粒度分布計(MICROTRAC FRA型)を使用し、水溶媒(屈折率1.33)を用いて測定した。粒子屈折率(Particle refractive index)は全ての測定において1.57を用いた。また、充填材の再凝集を防ぐため、分散後直ちに測定を行った。
(2)充填材の24M4DBP吸油量
ISO 6894に準拠して測定した。
(3)ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6300−1994に準拠し、130℃で測定した。数値が小さいほど加工性が良好である。
【0025】
(4)補強性(破壊強力)
JIS K6251−1993に準拠し、23℃で測定した時の引張強さを求めた。値が大きいほど補強性が高い。
(5)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率40%で摩耗量を測定し、その逆数を、実施例1〜4、参考例及び比較例1〜3では比較例3を、実施例6〜8及び比較例4,5では比較例5を、実施例9及び比較例6では比較例6を、それぞれ100とする指数で表示した。値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
【0026】
実施例1〜4、参考例、実施例6〜9及び比較例1〜6
A.ラテックスの調製
(1)ラテックス1
天然ゴムのフィールドラテックス(ゴム分24.2%)を脱イオン水で希釈し、ゴム分20%のものにした。
(2)ラテックス2
ラテックス1にアニオン系界面活性剤(花王製デモール N)を0.5%、アルカリ性プロテアーゼ(ノボザイムス社製アルカラーゼ2.5LタイプDX)を0.1%加え、40℃で8時間攪拌することにより、天然ゴム中のアミド結合を分解した。
(3)ラテックス3
ラテックス2と同様にして、アニオン系界面活性剤(花王製デモール N)を0.5%、フタル酸モノステアリルを3%加え、80℃で12時間攪拌することにより、天然ゴム中のアミド結合を分解した。
【0027】
B.充填材の水分散スラリーの調製
▲1▼スラリー1
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、カーボンブラック(N110)の75グラムを投入し、ローター・ステーター間隙1mm、回転数1500rpmで10分間攪拌した。
▲2▼スラリー2
スラリー1と同様にして、ローター・ステーター間隙0.3mm、回転数5000rpmで10分間攪拌した。
▲3▼スラリー3
スラリー1に、更にアニオン系界面活性剤(花王デモール N)を0.05%加え、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力500kPaの条件で3回循環させた。
▲4▼スラリー4
スラリー3と同様にして、圧力1000kPaの条件で5回循環させた。
▲5▼スラリー5
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、湿式シリカ(ニップシールLP)75gを投入し、ローター・ステーター間隙0.5mm、回転数1500rpmで10分間攪拌した。
▲6▼スラリー6
スラリー5と同様にして、ローター・ステーター間隙0.3mm、回転数7000rpmで10分間攪拌した。
▲7▼スラリー7
ローター径50mmのコロイドミルに、脱イオン水1425gと、ギブサイト型水酸化アルミニウム(ハイジライトH−43M)75gを投入し、ローター・ステーター間隙0.5mm、回転数1500rpmで10分間攪拌した。
上記で得られた水分散スラリー中の充填材の粒度分布(mv, D90)と、乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量(以下、24M4DBPという)及びその保持率を第1表に示す。なお、スラリー投入前の充填材の24M4DBPは、第1表の注に記載した。
【0028】
【表1】
Figure 0004838967
【0029】
(注)スラリー投入前の充填材の24M4DBP
カーボンブラック;N110(24M4DBP:98)
シリカ;ニップシールLP、日本シリカ工業(株)製(24M4DBP:150)
水酸化アルミニウム;ハイジライトH−43M、昭和電工(株)製(24M4DBP:52)
C.凝固工程
ホモミキサー中に、上記により調製されたラテックスとスラリーを、ゴム分100重量部に対して、第2表に示す各充填材を50重量部になるよう添加し、攪拌しながら、蟻酸をpH4.5になるまで加えた。凝固したマスターバッチを回収、水洗し、水分が約40%になるまで脱水を行った。
【0030】
D.乾燥工程
▲1▼バンドドライヤーを用いて温度120℃で乾燥するバンドドライヤー法、又は▲2▼神戸製鋼製2軸混練押出機(同方向回転スクリュー径 30mm、L/D=35、ベントホール3ヶ所)を用いて、バレル温度120℃、回転数100rpmで乾燥する2軸混練押出機法のいずれかの方法により行なった。
上記により得られたマスターバッチ中の充填材量はいずれも、天然ゴム100重量部に対して、約50重量部であった。
なお、比較例3,5,6については、マスターバッチ(MB)の代わりに、いわゆるドライ練りとして、天然ゴム(SMR)100重量部、充填材50重量部をプラストミルで配合して得たゴム組成物を用いた。
【0031】
E.ゴム組成物の調製
上記のマスターバッチ又はドライ練りにより得られた充填材配合ゴム(天然ゴム100重量部と充填材50重量部)に対して、酸化亜鉛3重量部、硫黄1.2重量部、ステアリン酸2重量部、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)1重量部およびN−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6C)1重量部、さらに、充填材がシリカの場合はシランカップリング剤(デグサ社製,Si69「商標」) 4重量部を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
このゴム組成物について、ムーニー粘度を測定するとともに、150℃で30分間加硫して得たゴムについて、破壊強力(引張強さ)と耐摩耗性とを測定した。結果を第2表に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0004838967
【0033】
【表3】
Figure 0004838967
【0034】
(注)MB:マスターバッチ
上記第2表において、実施例1〜4、参考例及び比較例1〜3はカーボンブラック配合系である。ここで、実施例1〜3は本発明におけるマスターバッチの第2の製造方法によるもの、実施例5は第1の製造方法によるもの、実施例4は、第1及び第2の双方の製造方法を満足するものである。これらの実施例を、本発明における製造方法を用いない比較例1,2の場合と比べれば、実施例1〜のものは、加工性、補強性、耐摩耗性が高いレベルでバランスしていることが分かる。なお、比較例3はドライ練りによるものであり、加工性は著しく悪い。
また、実施例6〜8及び比較例4、5はシリカ配合系である。ここで、実施例6、7は本発明におけるマスターバッチの第2の製造方法によるもの、実施例8は第1の製造方法によるものである。これらの実施例を、本発明における製造方法を用いない比較例4の場合と比べれば、実施例6〜8は、加工性、補強性、耐摩耗性が高いレベルでバランスしていることが分かる。なお、比較例5はドライ練りによるものであり、加工性は著しく悪い。
さらに、実施例9及び比較例6は水酸化アルミニウム配合系である。ここで、実施例9は本発明におけるマスターバッチの第2の製造方法によるものである。これをドライ練りによる比較例6の場合と比べれば、加工性、補強性、耐摩耗性が高いレベルでバランスしていることが分かる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、加工性、補強性、耐摩耗性を高いレベルでバランスした性能を有する天然ゴム組成物に好適に用いられる天然ゴムマスターバッチを得ることができる。
また、本発明のゴム組成物は、タイヤ用途をはじめベルト、ホース、防振ゴムその他のゴム製品に適用可能であり、特にタイヤの用途に好適に用いられる。

Claims (17)

  1. (A)天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解するアミド結合分解工程と、(B)当該アミド結合分解工程後のラテックスと、カーボンブラック、シリカ、又は一般式(I)
    nM1・xSiOy・zH2O ・・・(I)
    [式中、M1は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
    で表わされる無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程とを含み、
    前記混合する工程において、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持しており、
    前記スラリー溶液を製造する際の前記分散が、ハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、及びコロイドミルの何れかによることを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  2. 天然ゴムラテックスと、カーボンブラック、シリカ、又は前記一般式(I)で表される無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程において、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持しており、
    前記スラリー溶液を製造する際の前記分散が、ハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、及びコロイドミルの何れかによることを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  3. 天然ゴムラテックスが、ラテックス中のアミド結合を分解する工程を経ていることを特徴とする請求項2記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  4. アミド結合分解工程において、プロテアーゼおよび/または芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いることを特徴とする請求項1又は3に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  5. プロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼであることを特徴とする請求項4に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  6. 天然ゴムラテックスおよび/または前記スラリー溶液に界面活性剤を加えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  7. シリカが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  8. 前記一般式(I)で表わされる無機充填材が、アルミナ(Al23)、アルミナ一水和物(Al23・H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、結晶性アルミノケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  9. 前記一般式(I)において、M1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  10. 凝固後の天然ゴムマスターバッチを乾燥させる工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  11. 連続混練機を用いて乾燥を行うことを特徴とする請求項10記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  12. 連続混練機が2軸混練押出機であることを特徴とする請求項11記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  13. アミド結合が分解された天然ゴムラテックスとカーボンブラック、シリカ又は一般式(I)
    nM1・xSiOy・zH2O ・・・(I)
    [式中、M1は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
    で表わされる無機充填材の少なくとも1種をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合し、(i)前記スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)前記スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持しており、
    前記スラリー溶液を製造する際の前記分散が、ハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、及びコロイドミルの何れかによりなされ、
    前記混合後に、凝固させて得られることを特徴とする天然ゴムマスターバッチ。
  14. 請求項1記載の方法により製造された天然ゴムマスターバッチ。
  15. 請求項2又は3記載の方法により製造された天然ゴムマスターバッチ。
  16. 請求項13〜15のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチを用いたゴム組成物。
  17. 請求項16に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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