JP4801509B2 - 金属板の表面処理方法とそれを用いた車両 - Google Patents

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Description

本発明は、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板表面に膜を貼付けて装飾などする金属板の表面処理方法とそれを用いた車両に関するものである。
鉄道車両、バス、トラック、旅客機など大型の交通機関を始めとする各種車両において、近年、樹脂製や箔製のテープなどの膜材を表面に貼り付けて装飾を行い差別化したり、季節感や名所、旧跡、景観、広告などの各種表示をすることが行われている。
一方、板状部材を重ね合わせ、その面外方向からレーザビームを移動しながら連続的に照射し、レーザビームを照射した板の反対側の板の内部までの領域を加熱溶融させ、それにより生じた溶融池の底部が反対側の板状部材の外側面に到達しないようにレーザビームの出力または移動速度を制御しならがらそれら板状部材どうしを接合して十分な接合品質を確保すると、反対側の板状部材の外側面に前記溶接により生じた角折れ部の稜線状の溶接痕が視覚的に目立つことが知られており、これに対応するのに、反対側の板状部材として予めレーザビームによる溶接線方向とほぼ平行に研磨加工が外側面に施されたものを用いることにより、溶接痕が目立たなくできるようにした技術が既に提案され、無塗装の鉄道車両構体、あるいはバス、トラックなどの車体に特に適した技術としている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2005−329412号公報
ところで、特許文献1に記載の鉄道車両などの車体の外板に対しても、既述した樹脂テープなどの膜を貼り付けて装飾や広告などを行うことが求められる。
本発明者は、そのような要求に応えるべく、図8に示すように樹脂テープなどの膜aを特許文献1に記載の技術を採用した車両の外板bに貼り付け装飾などを行ったところ、既述の溶接ラインc上の膜aの表面で溶接痕に類似な視覚的に目立った外観となってしまった。
これにつき、種々に考察したところ樹脂テープなどの表面が一種の光沢面をなしていること、また、貼り付けた樹脂テープは外板の外面形状を再現していること、が複合して、角折れに対する研磨などの効果を消失させて溶接痕に類似の視覚的な外観を呈してしまうことを知見した。また、このようなことは、特許文献1に記載のようなレーザ溶接による溶接痕の場合に限らず、アーク溶接やその他の溶接であっても溶接側からの溶け込みが裏側から及ぶ金属板の表面に共通して生じる。
本発明の目的は、上記のような知見に基づき、溶接痕に類似な視覚的外観をもたらさない膜の貼付けによる金属板の表面処理方法とそれを用いた車両を提供することにある。
上記のような課題を達成するために、本発明の金属板の表面処理方法は、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板表面に樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けて装飾する金属板の表面処理方法であって、溶接ラインを外して複数の膜を貼付けることを1つの特徴としている。
このような構成によれば、裏側からの溶け込みをもってライン状に溶接された金属板の表面には溶接ラインに沿う溶接痕が生じているが、この溶接ラインを外して複数の樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付け装飾の表面処理を行うので、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜による表面処理が溶接ラインを跨ぐ広域に及んでも、貼り付けた膜が溶接ラインから外れていて、それに沿った溶接痕が生じている金属板の表面形状を再現するのを回避することができる。
そこで、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接された金属板よりなる外板を有した車両において、外板をなす金属板の表面に溶接ラインを外して複数の樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けた表面処理をすることで、同様の作用が得られる。
溶接ラインに、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジ、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジ間、透明部と不透明部との境界線、または縞模様の境界線を沿わせる、さらなる構成によれば、
貼り付けた樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジやエッジ間、透明部と不透明部との境界線、縞模様の境界線が溶接ラインに沿っていると、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジや樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジ間、透明部と不透明部との境界線、縞模様の境界線が形成するライン状の意匠によって金属板表面の溶接ラインに沿った溶接痕を視覚的に目立たないようにできる。
金属板の表面は、梨地加工か、ライン状の溶接方向の研磨加工か、が施されている、さらなる構成によれば、貼り付けた樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜や樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜の不透明部を溶接ラインから外して貼付け、金属板の溶接ライン部の表面が露出または透視する状態にて、金属板の溶接痕が梨地加工や研磨加工効果による視覚的に目立たない状態を損なわない。
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限りにおいて種々な組合せで複合して用いることができる。
本発明によれば、裏側からの溶け込みをもってライン状に溶接された金属板の表面には溶接ラインに沿う溶接痕が生じているのを金属板の表面が梨地加工や研磨加工が施されて目立たなくされているのに、溶接ラインを跨ぐ領域への膜の貼付けのために金属板の表面形状を再現してしまい、溶接痕に類似した視覚的外観を呈するようなことを防止することができる。
また、溶接ラインに、膜のエッジ、膜のエッジ間、透明部と不透明部との境界線、または縞模様の境界線を沿わせると、それらエッジやエッジ間、境界線が形成するライン状の意匠によって金属板表面の溶接ラインに沿った溶接痕を梨地加工や研磨加工を省略して視覚的に目立たなくできる。
本発明の金属板の表面処理方法とそれを用いた車両に係る実施の形態につき、図1〜図7を参照しながら具体的に説明し、本発明の理解に供する。
本実施の形態は図3〜図7に示すように、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板1の表面に塩ビなどの樹脂製や金属箔などのテープ状、シート状をした膜4を貼付けて装飾などの表面処理を行う方法である。図1、図2に示す例では金属板1は鉄道車両の外板に適用する場合の一例であり、より具体的には、側窓21と側出入り口22との間の裏面に車両20の長手方向に向く金属製の骨材2を多数重ね合わせてライン状に溶接する場合を例示している。しかし、これに限られることはなく交通機関の外板一般に適用できるし、車両以外のパネル類などどのような用途、形態の金属板1でも本発明は同様に適用できる。
図1、図3〜図6に示す骨材2はハット型断面を有し図3〜図6に示すように両側のL字状の取り付けフランジ2aを金属板1の裏面に当てがい金属板1への裏面側からの溶け込み10を伴いレーザ溶接されている。これにより、金属板1は溶接ライン3に沿って表面側に稜線ができるいわゆる角折れを生じて表面に溶接痕をなし、この溶接痕が視覚上目立った状態となる。なお、このような溶接痕は、レーザ溶接や重ね溶接に限らず、金属板1に裏面から溶け込みが及び表面に至らない溶接状態にて生じ、同様な外観上の問題を有している。これには、既述したように、金属板1の表面に梨地加工や溶接ライン3の方向に向く研磨加工が施された図3、図4に示すような粗面による乱反射効果にて溶接痕が視覚的に目立たなくすることはできる。しかし、膜4を貼り付けて溶接ライン3を跨ぐ広域を表面処理するのに、膜4が金属板1の外面形状を平滑に再現してしまい、前記粗面効果を損ない溶接痕に類似の視覚的外観を呈してしまう。これは膜4の表面を粗面にすれば解消できる。しかし、膜4による装飾や表示などの表面処理上平滑性を保ちたいことに支障となる。
そこで、本実施の形態では、特に、図1、図3、図5に示す例のように、金属板1の表面に溶接ライン3を外して複数の膜4を貼付けることを基本的な特徴として対応している。このようにすると、裏側からの溶け込み10をもってライン状に溶接された金属板1の表面には溶接ライン3に沿う既述した溶接痕が生じているが、この溶接ライン3を跨ぐ領域に不透明な膜4を貼り付けて表面処理するのに、溶接ライン3を外して膜4を貼付けるので、貼り付けた膜4が溶接ライン3に沿った溶接痕が生じている金属板1の表面形状を再現するのを回避することができる。
したがって、裏側からの溶け込み10をもってライン状に溶接された金属板1の表面に溶接ライン3に沿う溶接痕が生じているのを金属板1の表面が梨地加工や研磨加工が施されて目立たなくされているのに、膜4の貼付けのために金属板1の表面形状を再現してしまい溶接痕に類似した視覚的外観を呈するようなことを防止することができる。
図1、図2に示すように、裏面側からの溶け込み10を持ってライン状に溶接された金属板1を外板として有した車両20などにおいて、外板をなす金属板1の表面に溶接ライン3を外して複数の膜4を貼付けて表面処理することで、鉄道車両、バス、トラック、旅客機など大型の交通機関を始めとする各種車両において行われる、樹脂製や箔製のテープ、シートなどの膜材を広域な表面に貼り付けて装飾を行い差別化したり、季節感や名所、旧跡、景観、広告などの各種表示をすることが、溶接ライン3に沿った溶接痕の影響なく実現できる。特に鉄道の車両20では、図1に示すように外板となる金属板1の裏側に車両の長手方向に向く骨材2が各所に多数溶接接合されることが多くなっているなか、このような膜4の貼付けによる表面処理方法は有用である。
前記のように、金属板1の外面が梨地加工や研磨加工により溶接痕が目立たなくされている環境では、図4、図6に示す例のように、透明部4aと不透明部4bを有した膜4の透明部4aを溶接ライン3に対応させると、連続した膜4の貼付けによっても透明部4aが金属板1の表面の梨地加工や研磨加工による乱反射効果を生かせるので、溶接痕を持った金属板1の表面形状を再現するものの、溶接痕に類似した視覚的外観を呈するのを膜4が溶接ライン3部で分断せずに連続したままで防止することができる。
もっとも、図5に示すように溶接ライン3に膜4のエッジ4cを沿わせるか、図示していないが膜4のエッジ間を狭くして沿わせるか、図6に示すように溶接ライン3に膜4の透明部4aと不透明部4bとの境界線4dを沿わせるかすれば、膜4のエッジ4cや膜4の透明部4aと不透明部4bとの境界線4dが形成するライン状の意匠によって金属板1の表面の溶接ライン3に沿った溶接痕を梨地加工や研磨加工を省略して視覚的に目立たないようにできる。この結果、金属板1を採用した車両などの製品の低コスト化が図れる。また、溶接ライン3に縞模様の境界線を沿わせてもこの境界線が形成するライン状の意匠によって金属板1の表面の溶接ライン3に沿った溶接痕を梨地加工や研磨加工を省略して視覚的に目立たないようにできる。これによって膜4は不透明なものでもよくなり、色、彩度、濃淡などによる縞模様とすればよく、図1、図2の例の側窓21と側出入り口22との間のように溶接ライン3が多数平行に走るような箇所に有効であり、構体構造によっては腰板部分や幕板部分などでもそのような条件が採用されることもある。
また、図7に示す別の例のように、本実施の形態での表面処理方法は、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板1表面に装飾などするのに、金属板1の溶接ライン部表面3aと非溶接ライン部表面1aとの双方に対し、それら溶接ライン部表面3aと非溶接ライン部表面1aとの色相、彩度、明度のいずれかの差を上まわる色相、彩度、明度のいずれかの差を持ち、少なくとも、溶接ライン3の方向に連続または並び、溶接ライン3に交叉する方向には断続した模様11を、例えば、図7のAグループ、Bグループ、Cグループ、Dグループ、Eグループ、Fグループなどのように施すようにしている。このようにすると、金属板1の表面に、溶接ライン部表面3a、非溶接ライン部表面1a、模様が併存し、この模様11が溶接ライン部表面3aおよび非溶接ライン部表面1aの双方に対し、これら溶接ライン部表面3aおよび非溶接ライン部表面1a間の色相、彩度、明度のいずれかの差を上回る色相、彩度、明度のいずれかの差を、少なくとも溶接ライン3の方向に連続するか断続した模様11の溶接ライン3に交叉する方向に断続してできる間隔位置にて露出している金属板1の表面との間で示して、溶接ライン部表面3aが模様11の下になる場合はもとより、金属板1の溶接ライン部表面3aと非溶接ライン部表面1aとが露出してもそれらの間の色相、彩度、明度のいずれかの差、従って溶接ライン3の存在を視覚的に目立たなくすることができる。この効果はまた、金属板1の表面に対する模様11の表面の面積比が、それらの間の色相、彩度、明度のいずれかの比率以上程度で十分に得られ、模様11の表面の面積比が上回るほど高くなるといえる。また、模様11はそれ自体が溶接ライン部表面3a、非溶接ライン部表面1a双方間の色相、彩度、明度のいずれかの差を上まわる色相、彩度、明度のいずれかの差をCグループ、Dグループ、Eグループのように濃淡、色、彩度の違いによって持つものとすることもできる。
したがって、金属板1の表面が鏡面のままでも溶接ライン3が視覚的に目立たなくすることができ、梨地加工や研磨加工を省略することができる。
そこで、裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接された金属板1よりなる外板を有した車両20において、外板をなす金属板1の表面に、溶接ライン部表面3aと非溶接ライン部表面1aとの双方に対し、それら溶接ライン部表面3aと非溶接ライン部表面1aとの色相、彩度、明度のいずれかの差を上まわる色相、彩度、明度のいずれかの差を持ち、少なくとも、溶接ライン3の方向に連続または並び、溶接ライン3に交叉する方向には断続した模様11を、施してあることにより同様の作用、効果が得られる。
以上のような模様11は、塗料などによる模様付けで施してもよいし、テープやシートなどの膜材を貼り付けて施してもよい。
本発明はライン状に溶接痕を持った金属板表面に膜を貼付けて表面処理するのに、膜が溶接痕を持った金属板表面を再現することによる視覚的な問題を回避できる。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両の一部を示す側面図である。 図1の鉄道車両の全体側面図である。 本実施の形態の金属板とそれに貼り付けた膜と溶接ラインとの関係を示す1つの例の断面図である。 本実施の形態の金属板とそれに貼り付けた膜と溶接ラインとの関係を示す別の例の断面図である。 本実施の形態の金属板とそれに貼り付けた膜と溶接ラインとの関係を示す他の例の断面図である。 本実施の形態の金属板とそれに貼り付けた膜と溶接ラインとの関係を示す今1つの例の断面図である。 本実施の形態の金属板とそれを外板とする車両とにおける表面処理方法の模様付け例を示す説明図である。 溶接痕が問題となる金属板とそれに貼り付けた膜と溶接ラインとの関係を示す側面図である。
符号の説明
1 金属板
1a 非溶接ライン部表面
2 骨材
2a フランジ
3 溶接ライン
3a 溶接ライン部表面
4 膜
4a 透明部
4b 不透明部
4c エッジ
4d 境界線
10 溶け込み
11 模様
20 車両

Claims (8)

  1. 裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板表面に膜を貼付けて装飾する金属板の表面処理方法であって、
    溶接ラインを外して複数の樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けることを特徴とする金属板の表面処理方法。
  2. 溶接ラインに、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジ、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜のエッジ間を沿わせる請求項1に記載
    の金属板の表面処理方法。
  3. 金属板の表面は、梨地加工か、ライン状の溶接方向の研磨加工か、が施されている請求項1、2のいずれか1項に記載の金属板の表面処理方法。
  4. 裏面側から溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板表面に膜を貼付けて装飾する金属板の表面処理方法であって、
    金属板の表面は、梨地加工か、ライン状の溶接方向の研磨加工か、が施されており、溶接ラインには透明部を対応させて複数の不透明部を有した樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けることを特徴とする金属板の表面処理方法。
  5. 裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接された金属板よりなる外板を有した車両であって、
    外板をなす金属板の表面に溶接ラインを外して複数の樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けてあることを特徴とする車両。
  6. 外板をなす金属板の表面は、梨地加工か、ライン状の溶接方向の研磨加工か、が施されている請求項5に記載の車両。
  7. 裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接された金属板よりなる外板を有した車両であって、金属板の表面は、梨地加工か、ライン状の溶接方向の研磨加工か、が施されており、溶接ラインには透明部を対応させて複数の不透明部を有した樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜を貼付けてある車両。
  8. 裏面側からの溶け込みを持ってライン状に溶接されている金属板表面に膜を貼付けて装飾する金属板の表面処理方法であって、
    溶接ラインに、樹脂製または金属製のテープ状またはシート状をした膜の透明部と不透明部との境界線、または縞模様の境界線を沿わせる金属板の表面処理方法。
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