JP4790920B2 - 包装材用延伸成形体 - Google Patents

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  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装材用途に好適なグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸成形体に関する。更に詳しくは、生分解性を有し、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、容易に製造することが可能である、包装材用途に好適なグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムおよび延伸シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品などの包装は、その内容物の輸送や分配の作業を容易にするものであると同時に、品質維持が特に重要な役割である。従って、包装材には、品質維持性能の高さが要求される。具体的には、長期保存時に内容物を保護する性能として、衝撃や突き刺しなどの外力に対する機械的強度や、外気酸素による内容物の酸化劣化や内容物の水分蒸発による劣化に対するガスバリア性、包装材自体が保存時や使用時に変性や変形しない耐油性や耐熱性などの安定性、包装材自体からの有害物質、異味、異臭の移行がない衛生性などが挙げられる。
【0003】
従来から、これら包装材用途には、加工時や利用時の利便性からプラスチック製品が使用されていた。しかし、現在の消費社会では、その使用量は年々増加の一途をたどっており、同時にプラスチック廃棄物問題は年々深刻化している。プラスチック廃棄物は、多くは焼却や埋め立てにより処分されているが、近年は環境保全の観点から、回収して再びプラスチック製品の原料として用いるマテリアルリサイクルが提唱されている。
【0004】
しかし、上述のとおり、プラスチック製品の包装材としての要求性能は多岐にわたり、単一種類のプラスチックのみではこれら全ての要求を満たすことが出来ず、例えば多層化してガスバリア性フィルムや成形容器にするなど、一般に数種類のプラスチックを組み合わせて用いられている。この様な包装材は、各種樹脂への分別が非常に困難であり、コスト面などを考慮するとマテリアルリサイクルは不可能である。
【0005】
これに対し、例えば、特開平10−60136号公報には、融点Tmが150℃以上、融解熱ΔHmが20J/g以上、無配向結晶化物の密度が1.50g/cm3以上である特定のポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂よりなるポリグリコール酸配向フィルムが、土中崩壊性を示し、且つ強靭性やバリア性に優れる包材として使用することが出来ると開示されている。
しかしながら、上記特開平10−60136号公報に記載のポリグリコール酸配向フィルムは、融解熱ΔHmが20J/g以上、無配向結晶化物の密度が1.50g/cm3以上である非常に結晶性が高いポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料から形成されることから、延伸前溶融成形シートの成形時に非晶状態となるよう急冷しなければ延伸配向させることが困難になり、該配向フィルムの製造工程が非常に煩雑になるという問題点があった。
【0006】
また、包装材の要求特性としては、内容物の認識し易さや、購入者の購買意欲を促すディスプレイ効果により商品価値を高めるために、透明性も重要な因子である。ところが、該公報に記載のポリグリコール酸では、延伸前溶融成形シートの成形時に非常に煩雑な急冷操作を経て非晶状態としても、延伸時の加熱操作で白化し透明性が極度に劣る配向フィルムしか得られなかったり、透明性が優れる配向フィルムを得ようとする場合は延伸条件範囲が非常に狭く製造し難いという問題点があった。
【0007】
更に、上記特開平10−60136号公報に記載のポリグリコール酸配向フィルムは、融点Tmが150℃程度では依然として耐熱性が低く、電子レンジで使用する場合に発熱した内容物からの熱により大きく変形したり、溶融穿孔が起こったりする問題点があった。
なお、融解熱や密度と結晶性との関係は、詳しくは後述するが、例えば樹脂の結晶化度測定方法として熱分析法や密度法などがあり、一般に前者では融解熱、後者では密度と関連付けられている(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.340、紀伊国屋書店(1995))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生分解性を有し、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、容易に製造することが可能であり、包装材用途に好適なグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなる延伸成形体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、繰返し単位が主としてグリコール酸よりなる共重合体の融点、結晶化熱、融解熱、相対結晶化度、及び対数粘度数を特定すると共に、延伸成形体の100℃10分間における加熱収縮率を特定することにより、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなる延伸成形体が生分解性を有し、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、包装材料用途に好適であることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、
1. グリコール酸系共重合体の非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm(℃)、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc(J/g)、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm(J/g)が下式(1)〜(3)を満たし、且つ下式(4)で表される相対結晶化度Xrが3%以上50%以下、対数粘度数[η]が1.5dl/g以上であるグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなり、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが0.5〜45%であることを特徴とする包装材用延伸成形体、
式(1)175≦Tm≦205
式(2)ΔHc=0
式(3)0≦ΔHm<18.0
式(4)Xr=[(ρb−ρa)/(ρc−ρa)]×(ρc/ρb)×100
但し、ρa:非晶試験片の密度(g/cm3
ρb:150℃で5分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
ρc:150℃で100分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
2. グリコール酸系共重合体が、グリコリドとグリコリド以外の単量体を用いて開環重合し得られる共重合体であって、グリコリドよりなる繰返し単位の成分割合が78〜90mol%と、グリコリド以外の単量体よりなる繰返し単位の成分割合が22〜10mol%であることを特徴とする1記載の包装材用延伸成形体、
3. グリコリド以外の単量体が脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の環状二量体およびラクトン類から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする1又は2記載の包装材用延伸成形体、である。
【0011】
以下、本発明の包装材用延伸成形体について詳細に説明する。
本発明でいう延伸成形体とは、延伸フィルムおよび延伸シートを指す。但し、ブロー成形体は含まない。また、本発明において、フィルムとシートの区別は、単に厚みの違いによって異なる呼称を用いているものであり、以下、フィルムとシートを総称して成形体と称する。
本発明の包装材用延伸成形体は、本発明で規定する結晶化熱ΔHc、融解熱ΔHmおよび相対結晶化度Xrがそれぞれ特定範囲にあるような結晶性を有するグリコール酸系共重合体を用いることにより、延伸前溶融成形体の成形時に急冷するなどの煩雑な工程を必要としないため作業効率が大幅に向上し、更に延伸時の加熱操作で白化することなく、透明性の非常に優れた延伸成形体を容易に、且つ経済的に製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、延伸成形体の加熱収縮率が、100℃10分間で0.5〜45%であることから、本発明の延伸成形体は、該加熱収縮率が低い領域では、上記結晶化熱ΔHc、融解熱ΔHmおよび相対結晶化度Xrがそれぞれ特定範囲にあるような結晶性を有するグリコール酸系共重合体を用いた場合でも耐熱性を十分発揮することが可能になり包装材として使用することが可能となり、一方該加熱収縮率が高い領域では特に延伸成形体をシュリンク包装用途で使用する際にシワやタルミが発生せずフィット性を著しく高めることが可能になる。
【0013】
重合体の結晶性とは、重合体の結晶化し易さを指しおり、一般には結晶化速度や結晶化度を指標として表される。
結晶化速度は、過冷却融体から結晶状態に非可逆的に転移するときの速度であり、その目安として熱分析における等速冷却過程での結晶化温度の測定が行われていて、結晶化速度が速い方が結晶化温度は高くなるとされている(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.339、紀伊国屋書店(1995))。
【0014】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体は、冷却速度10℃/分で測定した示差走査熱量測定( JIS K7121およびK7122に準拠 以下DSCという。)における1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/gであることが必要である。即ちDSCの測定条件(冷却速度10℃/分)では結晶化が起こらない結晶化速度であることが必要である。DSCにおける等速冷却過程で結晶化ピークが現れない場合(結晶化熱ΔHc=0J/g)、試験片の結晶性は、非晶質であり全く結晶化しないか、或いは結晶化速度が遅いためDSCの測定条件(冷却速度10℃/分)では結晶化が起こらないかの二通りが考えられる。ここで、本発明の重合体は、後述のとおりDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが175〜205℃であるので、上述した非晶質であり全く結晶化しない場合とは異なるものである。
【0015】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体が、1回目の冷却過程において該結晶化熱ΔHcが0J/gとなる結晶化速度であれば、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる包装材用延伸成形体の製造は、延伸前溶融成形体の成形時に急冷操作などの特別な非晶化過程が不要で製造工程が簡便になり、更に延伸時の加熱操作で白化することもなく非常に透明性が優れた延伸成形体を製造することが可能である。
【0016】
一方、結晶化度は、高分子固体における結晶領域の重量分率として定義され、例えば熱分析法や密度法などにより測定される。
熱分析法は、一般に理論融解熱ΔHfに対する試験片の実測融解熱ΔHmの比として、結晶化度Xc(%)=ΔHm/ΔHf×100より求められる(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.339、紀伊国屋書店(1995))。該式において、ΔHmは示差走査熱量測定(JIS K7122に準拠)により測定した値を用い、ΔHfはホモポリマーの場合は例えばPOLYMER HANDBOOK(JOHN WILEY & SONS)等に記載の値を用いる。
【0017】
また、密度法は、一般に試験片の実測密度をd、完全非晶および完全結晶の密度をdaおよびdcで表すと、結晶化度Xc(%)=[(d−da)/(dc−da)]×(dc/d)×100により求められる(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.586、紀伊国屋書店(1995))。該式において、dやdaは試験片や試験片を加熱融解した後急冷することで得られる非晶体を例えば浮沈法や密度勾配管法(JIS K7112準拠)により測定した値を用い、dcはホモポリマーの場合は例えばPOLYMER HANDBOOK(JOHN WILEY & SONS)等に記載の値を用いる。しかしながら、上記ΔHfやdcは、共重合体の場合は共重合成分やその成分割合が多岐に渡るために文献値が無い場合が多い。
【0018】
熱分析法では、結晶化度Xcを求める上記計算式は試験片の実測融解熱ΔHmが大きい方が結晶化度は高くなることを意味していることから、本発明においては、ΔHmの値によって結晶化度を判断する。本発明のグリコール酸系共重合体は、DSC測定における2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g以上20J/g未満であることが必要である。
また、密度法では、本発明においては結晶化が十分進むと考えられる条件で加熱し結晶化させた場合の密度を用いて求めた相対結晶化度の値によって、共重合体の結晶化度を判断する。本発明のグリコール酸系共重合体は、下記式(4)で表される相対結晶化度Xrが3%以上50%以下の範囲内であることが必要である。
式(4)Xr=[(ρb−ρa)/(ρc−ρa)]×(ρc/ρb)×100
但し、ρa:非晶試験片の密度(g/cm3
ρb:150℃で5分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
ρc:150℃で100分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
【0019】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体の該ΔHmの値が0J/gということは、前述の結晶化熱ΔHcの場合と同様に、本発明の重合体が後述のとおりDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが175〜205℃に規定しているので非晶質であり全く結晶化しない場合とは異なり、DSCの測定条件(昇温速度10℃/分)では結晶化が起こらない結晶化速度であることを意味している。該ΔHmの値が20J/g以上の場合、該重合体は結晶性が非常に高いために、該重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる包装材用延伸成形体の製造は、延伸前溶融成形シートの成形時に非晶状態となるよう急冷しなければ延伸配向させることが困難になり非常に煩雑になる。
【0020】
また、延伸前溶融成形体の成形時に非常に煩雑な急冷操作を経て非晶状態としても、延伸時の加熱操作で白化し透明性が極度に劣る配向成形体しか得られなかったり、透明性が優れる配向成形体を得ようとする場合は延伸条件範囲が非常に狭く製造し難くなる。該ΔHmの値は、より容易に延伸成形体を製造することが可能で、より透明性が高い包装材用延伸成形体を得る為には、0J/g以上18.0J/g以下の範囲が好ましい。
【0021】
また、前記式(4)で表される相対結晶化度Xrが3%より低い場合は、グリコール酸系共重合体の結晶性が低過ぎて、該重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる包装材用延伸成形体は耐熱性が著しく劣るものとなる。一方、該Xrの値が50%より高い場合は、該重合体は結晶性が非常に高いために、該重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる包装材用延伸成形体の製造は、延伸前溶融成形体の成形時に非晶状態となるよう急冷しなければ延伸配向させることが困難になり非常に煩雑になる。また、延伸前溶融成形体の成形時に非常に煩雑な急冷操作を経て非晶状態としても、延伸時の加熱操作で白化し透明性が極度に劣る配向成形体しか得られなかったり、透明性が優れる配向成形体を得ようとする場合は延伸条件範囲が非常に狭く製造し難くなる。該Xrの値は、より高い耐熱性とより高い透明性を兼備する為には、10%以上40%以下の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、前記式(4)において、150℃で100分間加熱した際の密度ρcが、その加熱前の非晶試験片の密度ρaと等しい場合には、該式により相対結晶化度Xrを算出することが出来ない。この場合には、測定に供したサンプルは、該加熱条件では結晶化せず結晶性が非常に低いか、或いは非晶性であることを意味しており、相対結晶化度Xrは0%と見なし本発明の請求の範囲から外れるものである。
本発明では特定範囲の融点を有するグリコール酸系共重合体を用いることにある。かかる相違点により、本発明の包装材用延伸成形体は、電子レンジで使用する場合でも発熱した内容物からの熱で延伸成形体自体が溶融穿孔することなく、包装材の要求特性である高い耐熱性を満たすことが可能になる。
【0023】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体の融点は、グリコール酸系共重合体を250℃に設定した加熱プレス機で5分間加熱加圧し、その後25℃に設定した冷却プレスで冷却し得られる厚み約200μmの非晶シートを、150℃に設定した熱風循環恒温槽中で100分間加熱した結晶化物を試験片として、加熱及び冷却速度が10℃/分の条件で測定した示差走査熱量測定(DSC、JIS K7121準拠)で一回目の昇温過程での融点Tmが175℃以上205℃以下の範囲内である。該Tmの値が175℃より低い場合は、グリコール酸系共重合体の融点が低過ぎて、該重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸成形体の耐熱性は著しく劣り、包装材として耐熱性を要求される用途では使用することが出来なくなる。
【0024】
一方、該Tmの値が205℃より高い場合は、グリコール酸系共重合体の結晶性が非常に高くなるために、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなる延伸成形体の製造は、延伸前溶融成形体の成形時に非晶状態となるよう急冷しなければ延伸配向させることが困難になり非常に煩雑になる。また、延伸前溶融成形シートの成形時に非常に煩雑な急冷操作を経て非晶状態としても、延伸時の加熱操作で白化し透明性が極度に劣る配向成形体しか得られなかったり、透明性が優れる配向成形体を得ようとする場合は延伸条件範囲が非常に狭く製造し難くなる。該Tmの値は、より高い耐熱性とより高い透明性を兼備する為には、185℃以上200℃以下の範囲から選ぶことが好ましい。なお、上記示差走査熱量測定において、結晶の融解に起因する吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温の吸熱ピーク温度を融点Tmとする。
【0025】
本発明の包装材用延伸成形体を構成する主たる素材であるグリコール酸系共重合体とは、主たる単量体にグリコール酸の環状二量体であるグリコリド(1,4−ジオキサ−2,5−ジオン)を用いての開環重合、又はグリコール酸を用いての直接脱水重縮合、例えばグリコール酸メチルなどのグリコール酸エステル類を用いて脱アルコールしながらの重縮合などにより得られる共重合体であって、これら主たる単量体と共重合し得るグリコリド以外の単量体を共重合させて得られるもののうち本発明の要件を満たすものである。
【0026】
主たる単量体以外の共重合に用いられるグリコリド以外の単量体としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシブタン酸、その他公知の脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、これら脂肪族ヒドロキシカルボン酸類のエステル誘導体、これら脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の同種、又は異種の環状二量体など、およびβ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類から少なくとも一種が選ばれる。
【0027】
また、これらの他に、等モル量の多価アルコール類と多価カルボン酸を組み合わせて、上記主たる単量体と共重合させたものでもよい。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール類、或いはこれら脂肪族ジオール類が複数結合した、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどが挙げられ、多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸などの脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタリンジカルボン酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、これら脂肪族ジカルボン酸類や芳香族ジカルボン酸類のエステル誘導体、これら脂肪族ジカルボン酸類の無水物などが挙げられ、これらを多成分に組み合わせてもよい。
【0028】
上記に例示した本発明の包装材用延伸成形体を構成する主たる素材であるグリコール酸系共重合体のうち好ましい共重合体は、より分子量の高い共重合体を得易いという観点から、グリコリドとグリコリド以外の単量体を用いて開環重合し得られる共重合体であって、グリコリドよりなる繰返し単位の成分割合が78〜90mol%と、グリコリド以外の単量体よりなる繰返し単位の成分割合が22〜10mol%からなるものである。より好ましくはグリコリドよりなる繰返し単位の成分割合が81〜88mol%と、グリコリド以外の単量体よりなる繰返し単位の成分割合が19〜12mol%からなるものである。
【0029】
該共重合体を構成する単量体のうちグリコリド以外の単量体としては、好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の環状二量体、およびラクトン類から少なくとも一種が選ばれ、乳酸の環状二量体であるラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン)が特に好ましい。なお、ラクチドは光学活性物質でありL−体、D−体のいずれであってもよいし、D,L−体混合物やメソ体であってもよい。また、グリコリド−L−ラクチド共重合体とグリコリド−D−ラクチドの混合物であってもよい。
【0030】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく従来公知の一般的な方法で行われる。例えば、主たる単量体にグリコリドを用いて開環重合しグリコール酸系共重合体を得るには、Gildingらの方法(Polymer,vol.20,December(1979))などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
該共重合体の分子量は、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸成形体が包装材として要求される外力に対する機械的強度を有する為には、対数粘度数で少なくとも1.5dl/g以上が必要であり、1.8dl/g以上であることが好ましい。対数粘度数[η]は、一般に下式(5)により求められる値であり、濃度0.2%以下の希薄溶液では高分子の分子量の指標として用いられる固有粘度に近似できる(化学大辞典 縮刷版、p.746、共立出版(1963)、及び新版 高分子分析ハンドブック、p.120、紀伊国屋書店(1995))。
式(5) [η]={ln(t/to)}/c
但し、t:毛管粘度計で測定される高分子溶液の流下時間(秒)
to:毛管粘度計で測定される溶媒の流下時間(秒)
c:溶質高分子の濃度(g/dl)
【0031】
一方、該共重合体の分子量の上限は、延伸前溶融成形体をより容易に製造するためには対数粘度数で8.0dl/g以下に留めることが望ましいが、可塑剤などの添加により溶融流動性を調節すれば良く特に限定されるものではない。
なお、本発明で用いるグリコール酸系共重合体の分子量は数平均分子量で表すと7.0×104以上、好ましくは1.0×105以上である。なお、該分子量の上限は、数平均分子量で表すと7.0×105以下、好ましくは6.0×105以下に留めることが望ましい。
本発明の包装材用延伸成形体は、上記特定のグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなることを特徴としているが、以下に本発明でいう該熱可塑性樹脂組成物について説明する。
【0032】
本発明において、上記特定のグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物とは、該グリコール酸系共重合体の単体、或いは該グリコール酸系共重合体と他の重合体との組成物、これらグリコール酸系共重合体の単体または共重合体と他の重合体との組成物と、可塑剤、酸化防止剤などの添加剤との組成物を指していう。該熱可塑性樹脂のうちグリコール酸系共重合体と他の重合体との組成物の場合には、その組成割合は、包装材として使用される時に要求される内容物の品質保持性能、例えばガスバリア性や耐熱性などによって異なるが、望ましくは該組成物の各重合体の繰返し単位全体のうち成分割合50mol%以上がグリコリドからなる繰返し単位となるよう混合する場合であり、より高い内容物の品質保持性能が要求される包装材用途では、より望ましくは該成分割合が70mol%以上の場合である。
【0033】
具体的には、例えばグリコール酸系共重合体としてグリコリド80mol%とラクチド20mol%の繰返し単位からなる共重合体と、ラクチド100mol%の繰返し単位からなるポリ乳酸とを混合する場合では、該混合組成物の全繰返し単位に占めるグリコリドの成分割合が50mol%以上とする為には、該グリコール酸系共重合体の組成割合は66.5重量%以上にしなければならない。又、グリコール酸系共重合体としてグリコリド90mol%とラクチド10mol%の繰返し単位からなる共重合体と、ラクチド100mol%の繰返し単位からなるポリ乳酸とを混合する場合では、該混合組成物の全繰返し単位に占めるグリコリドの成分割合が50mol%以上とする為には、該グリコール酸系共重合体の組成割合は60.3重量%以上にしなければならない。
【0034】
なお、延伸成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物のグリコリドからなる繰返し単位の成分割合は、通常の分析手法により解析することができる。例えば、延伸成形体をヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPと略記する。)に溶解し、ろ過して不溶分を取り除く。次いで、得られた熱可塑性樹脂のHFIP溶液をメタノール中に注ぎ、樹脂成分を再沈殿させる。得られた再沈殿樹脂成分を真空乾燥機で十分乾燥した後、重水素化トリフルオロ酢酸または重水素化HFIPを溶媒として1H−NMRや13C−NMRを測定し、熱可塑性樹脂のグリコリドからなる繰返し単位の成分割合を解析することができる。
【0035】
上記本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明で特定するグリコール酸系共重合体に他の重合体を混合する場合には、混合しうる他の重合体としては、上記具体例として挙げたポリ乳酸や、下記に挙げる重合体より少なくとも一種が選ばれ、これらのうち生分解性を有するものが望ましい。例えば、グリコール酸系重合体では、本発明で特定するグリコール酸系共重合体よりもグリコリドの成分割合が高く結晶性が高いものであってもよいし、或いは該成分割合が低く結晶性が低いものでもよい。単量体が光学活性物質であるポリ乳酸では、L−体またはD−体の何れであってもよいし、D,L−体の混合割合が任意の混合組成物、D,L−体の共重合割合が任意の共重合体、或いはメソ体の何れであってもよい。
【0036】
これらの他に、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシブタン酸、その他公知の脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、これら脂肪族ヒドロキシカルボン酸類のエステル誘導体、これら脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の同種、又は異種の環状二量体から得られる単独重合体、或いはこれらより任意に選択した二種以上から得られる共重合体であるポリヒドロキシカルボン酸類、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類から得られる単独重合体、或いはこれらより任意に選択した二種以上から得られる共重合体であるポリラクトン類、等モル量の多価アルコールと多価カルボン酸を組み合わせであって、多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール類、或いはこれら脂肪族ジオール類が複数結合した、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど、多価カルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸などの脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタリンジカルボン酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、これら脂肪族ジカルボン酸類や芳香族ジカルボン酸類のエステル誘導体、これら脂肪族ジカルボン酸類の無水物などから得られる多価アルコール類と多価カルボン酸が各々一種づつの単独重合体、或いは多価アルコール類と多価カルボン酸のうち何れか一方が一種で他方が任意に選択した二種以上から得られる共重合体、又は多価アルコール類と多価カルボン酸の各々が任意に選択した二種以上から得られる共重合体である脂肪族ポリエステル類、こられ以外の公知の生分解性プラスチックである、例えばポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸類、酢酸セルロースなどのセルロースエステル類、脂肪族ポリエステルカーボネート類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイド、低分子量のポリエチレン等であってもよい。
【0037】
尚、ここに挙げた種々の重合体を構成する単量体の二種以上を任意の割合で共重合させた共重合体であってもよく、該単量体が光学活性物質である場合には、L−体またはD−体の何れであってもよいし、D,L−体の混合割合が任意の混合組成物、D,L−体の共重合割合が任意の共重合体、或いはメソ体の何れであってもよい。
また、上記混合しうる他の重合体としては、生分解性を有しないものであっても、本発明の熱可塑性樹脂組成物の生分解性を阻害しない範囲で混合してもよい。例えば、ポリオレフィン類、芳香族ポリエステル類、ポリアミド類、エチレン−ビニルアルコール系共重合体類、石油樹脂類やテルペン系樹脂類、その水素添加物などが挙げられる。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて無機および/または有機化合物よりなる添加剤、例えば、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、結晶核剤等が適宜混合されてもよい。使用される可塑剤の具体例としては、例えばジオクチルフタレートやジエチルフタレートなどのフタル酸エステル類、ラウリン酸エチルやオレイン酸ブチル、リノール酸オクチルなどの脂肪酸エステル類、ジオクチルアジペートやジブチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、アセチルくえん酸トリブチルなどの脂肪族三塩基酸エステル類、グリセリンジアセテートラウレートやグリセリントリアセテートなどのグリセリン脂肪酸エステル類、リン酸ジオクチルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油などの変性植物油類、ポリブチレンセバケートなどのポリエステル系可塑剤などが挙げられ、安全衛生性の観点からグリセリン脂肪酸エステル類が特に望ましい。
【0039】
これらから一種、または二種以上を選び、添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜50重量部程度である。また、使用される酸化防止剤の具体例としては、例えばフェノール系、フェニルアクリレート系、リン系、イオウ系等から一種、又は二種以上を選び、添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部程度である。
本発明における熱可塑性樹脂組成物の製造は、本発明の上記特定のグリコール酸系共重合体と、これと混合し得る他樹脂や添加剤などを、全部、或いは一部を単軸、又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー等を使用して溶融混合させ用いるのが望ましい。
【0040】
次に、本発明の延伸成形体について説明する。本発明でいう延伸成形体とは、前記したように延伸フィルムおよび延伸シートを指す。但し、ブロー成形体は含まない。
延伸成形体の製造方法は、特に限定されるものではなく従来公知の一般的な方法で行われる。例えば、延伸前溶融成形体の製造方法としては、溶融押出法、キャスティング法(溶液流延法)、カレンダー法、溶融プレス成形法などが挙げられる。具体的には、本発明のグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物を原料として用い、例えば溶融押出法では、該原料を押出機に供給して加熱溶融し、押出機の先端に接続したダイスより押出することにより製造することができる。また、溶融プレス成形法では、該原料を金型に供給し、常圧或いは減圧雰囲気下で加熱溶融させプレスすることにより製造することができる。この場合、原料の加熱融解は、通常は(融点−5℃)〜(融点+65℃)の温度範囲から適宜選ばれる温度が望ましい。
【0041】
その後の延伸方法としては、一軸延伸の場合は、溶融押出法でTダイより溶融押出し、キャストロールで冷却した延伸前溶融成形体を、ロール延伸機で樹脂の流れ方向に縦一軸延伸したり、該縦延伸倍率を極力抑えてテンターで横一軸延伸して製造する方法。或いは、二軸延伸の場合は、溶融押出法でTダイより溶融押出し、キャストロールで冷却した延伸前溶融成形体を、ロール延伸機で縦延伸し、その後テンターで横延伸して製造したり、溶融押出法でサーキュラーダイより溶融押出し、水冷リング等で冷却した延伸前溶融成形環状体を、チューブラー延伸して製造する方法などである。この場合、延伸の操作は、通常はガラス転移温度〜(ガラス転移温度+60℃)の延伸温度で、少なくとも一軸方向に面積倍率2〜40倍の延伸倍率で適宜選ばれる延伸条件で行われることが望ましく、さらに望ましい範囲を限定するとすれば、(ガラス転移温度+5℃)〜(ガラス転移温度+40℃)の延伸温度で、少なくとも一軸方向に面積倍率4〜35倍の延伸倍率で行うことである。
【0042】
本発明者は、特定範囲の結晶性を有するグリコール酸系共重合体を包装材用途のフィルム、またはびシートとして使用するにあたり、延伸加工を施すことにより包装材の要求特性である機械的強度や透明性を高められることを見出した。これは、延伸することにより高分子鎖が配向して強度を発揮する効果を発現し、その後の熱処理を施す際に結晶サイズの成長を抑制する効果を発現するものである。従って、延伸加工を施さない場合は、高分子鎖の配向度合いが少なくて成形体は強度がより低いものとなり、或いは強度を高めようとして熱処理を施すと成長した結晶での光散乱により成形体が白化し透明性が損なわれたりする問題を生じる。
【0043】
上記の延伸成形体の製造方法の他に、例えば、溶融押出法でインフレーションダイより溶融押出しした溶融チューブを内部の空気圧で膨張させ、空気冷却や水冷却により固定させるインフレーション法で製造する方法などでも良い。このインフレーション法は一般にフィルムの急冷が困難であることから、前記特開平10−60136号公報に記載のポリグリコール酸では、非常に結晶性が高いために透明性が優れる延伸フィルムを得ることは困難である。
【0044】
本発明において延伸成形体とは延伸フィルムおよび延伸シートを言うが、その厚みは、その用途により適宜選ばれ、通常は延伸フィルムでは3〜100μm、延伸シートでは0.1〜1mmであるが特に限定されるものではない。これら延伸フィルム、及び延伸シートは、その厚みにおける製造し易さを勘案すると、通常は延伸フィルムはチューブラー延伸法で、延伸シートはテンター延伸法で製造することが望ましい。但し、フィルムとシートの区別は、単に厚みの違いによって異なる呼称を用いているものであって、本発明の課題であるところの透明性の高い延伸成形体を容易に製造できることに何ら差はない。従って、後述する実施例では、厚み約30μmの延伸フィルムをもって物性測定や評価を行って本発明を詳細に説明した。
【0045】
得られた延伸成形体は、電子レンジなどで加熱して使用され耐熱性が要求される包装材や容器の用途で、発熱した内容物からの熱による変形や溶融穿孔を防ぐ目的で熱処理を施すことが好ましい。更に、経時寸法安定性や物性安定性を向上させる目的で、エージング処理などを施すことが望ましい。これらの目的を達成する為に、本発明の延伸成形体は、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが0.5〜45%の範囲に留めることが必要であり、0.5〜35%の範囲であることが好ましい。該値が45%より大きい場合は、熱よる変形や溶融穿孔が起こり包装材としての機能が損なわれる。
【0046】
一方、該値が0.5%より小さい場合は、延伸することで高分子鎖が配向して強度を発揮する効果が損なわれたり、配向度合いが少なくて熱処理を施すと成形体が白化し透明性が損なわれたりする問題を生じる。この場合、熱処理は通常は60〜160℃の温度範囲から適宜選ばれる温度で1秒〜3時間行われることが好ましく、エージング処理は通常は25〜60℃の温度範囲から適宜選ばれる温度で3時間〜10日間程度行われることが望ましい。
【0047】
得られた延伸成形体は、そのまま家庭用ラップ等の包装材などとして使用しても良いが、必要に応じて帯電防止剤や防曇性を向上させる目的でコーティングやコロナ処理等の各種表面処理を施しても良いし、シール適性、防湿性、ガスバリア性、印刷適性などを向上させる目的でラミネート加工やコーティング加工、或いはアルミニウムなどの真空蒸着を施しても良い。更に、二次加工により、用途に応じた形状に成形して使用しても良い。二次加工品としては、例えば延伸フィルムの場合はピロー包装用途やウェルドタイプのケーシング包装用途などの包装材とするシール加工品があり、延伸シートの場合はプラグアシスト成形法やエアークッション成形法などの真空成形加工、圧空成形加工、雄雌型成形加工などを施してトレイやカップなどの容器、又はブリスターパッケージングシートなどがある。
【0048】
得られた本発明の延伸成形体は、該延伸成形体を構成する主たる素材として特定範囲の結晶性を有するグリコール酸系共重合体を用い、且つ該延伸成形体の100℃10分間における加熱収縮率を規定することにより、生分解性を有し、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、包装材用途に好適に利用できる。特に、可塑剤を比較的多量添加し引張弾性率が4.0GPa未満である軟質から中質の延伸フィルムは、ピロー包装、シュリンク包装、ストレッチ包装、ケーシング、家庭用ラップ等の包装材用途に好適である。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、これらの具体例は本発明の範囲を限定するものではない。また、物性測定方法、評価方法と尺度を下記に示すが、サンプルは特に断りのない限り測定サンプル作製後に温度(23±2)℃、関係湿度(50±5)%の雰囲気下に1〜3日間保管したものを物性測定や評価に供した。
[物性測定方法]
(1)示差走査熱量測定(DSC)
融点Tm、結晶化熱ΔHc、融解熱ΔHmは、測定装置にセイコー電子工業(株)製DSC6200を使用し、JIS K7121、及びK7122に準拠して測定した。サンプルは、グリコール酸系共重合体を250℃に設定した加熱プレス機で5分間加熱加圧し、その後25℃に設定した冷却プレスで冷却し得られた厚み約200μmの非晶シートを、150℃に設定した熱風循環恒温槽中で100分間加熱した結晶化物を試験片として用いた。試験片重量は7.5mgとして、先ず0℃で3分間保持した後、加熱速度10℃/分で250℃まで加熱し1回目の昇温過程での融点Tmを測定した。250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で0℃まで冷却し1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcを測定した。次いで、0℃で1分間保持した後、再び加熱速度10℃/分で250℃まで加熱し2回目の昇温過程での融解熱ΔHmを測定した。なお、温度と熱量の校正は、標準物質としてインジウムを用いて行った。なお、本発明でいう非晶シートとは、上記手順で作製したシートをサンプルとして、広角X線回折法により回折強度曲線を測定し、該回折強度曲線に結晶に起因する回折ピークが存在しないものを指す。また、上記示差走査熱量測定において、結晶の融解に起因する吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温の吸熱ピーク温度を融点Tmとする。
【0050】
(2)相対結晶化度
本発明では、式(4)で表される相対結晶化度の値を採用している。上記DSC測定方法で示した手順によりグリコール酸系共重合体の非晶シートを得て、該非晶シートを150℃に設定した熱風循環恒温槽中で5分間、及び100分間加熱結晶化させ結晶化物を得た。これら非晶シートの試験片、150℃で5分間加熱した結晶化物、150℃で100分間加熱した結晶化物をサンプルとして、JIS K7112C法に準拠して密度を測定した。密度測定は、20℃でエタノール/塩化亜鉛水溶液系浮沈法により浮沈状態を観察して測定した。サンプルの密度測定結果から、式(4)により相対結晶化度Xrを求めた。
式(4)Xr=[(ρb−ρa)/(ρc−ρa)]×(ρc/ρb)×100
但し、ρa:非晶物の密度(g/cm3
ρb:150℃で5分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
ρc:150℃で100分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
(3)対数粘度数
純溶媒HFIPと、グリコール酸系共重合体の濃度が0.1g/dlとなるよう溶解したHFIP溶液をサンプルとして、ウベローデ型毛管粘度計を使用し20℃で毛管中を流下する時間を測定し、式(5)により対数粘度数[η]を求めた。
式(5) [η]={ln(t/to)}/c
但し、t:毛管粘度計で測定される高分子溶液の流下時間(秒)
to:毛管粘度計で測定される溶媒の流下時間(秒)
c:溶質高分子の濃度(g/dl)
【0051】
(4)加熱収縮率
100℃10分間における加熱収縮率ΔLは、延伸成形体をサンプルとして、JIS K7133に準拠して測定した。サンプルを、一辺120mmの正方形に切り出し、これに辺に沿った標線間の距離が100mmとなるように4点の印を付け、試験片とした。この試験片を、カオリンやタルクなどの粉末を振りかけてカオリン床に平らに置き、100℃に設定した熱風循環恒温槽中で10分間加熱した。その後、試験片を取り出して直交する2方向の標線間距離を測り、式(6)により加熱前の標線間距離に対する加熱後の標線間距離の収縮量の比の百分率ΔL(%)を算出した。加熱収縮率ΔLの測定結果は、試験片数3個について各々直交2方向の測定を行い、それらの平均値で示した。なお、本発明では、収縮率が正の値となるように式(6)を採用している。但し、延伸前溶融成形シートがヘーズ20%以上となる場合、原料として用いたグリコール酸系共重合体は、結晶性が高く本発明の特定の結晶性から外れるものである。この場合は延伸操作を行わず、加熱収縮率ΔLの測定も行わなかった。
式(6) ΔL=[(Lo−L)/Lo]×100
但し、Lo:加熱前の標線間距離100mm
L:加熱後の標線間距離(mm)
【0052】
[評価方法と尺度]
(1)透明性
透明性は、延伸フィルムをサンプルとして、ヘーズを測定し評価した。ヘーズの測定は、測定装置に村上色彩技術研究所社製ヘーズ計HR−100を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。厚み約30μmの延伸フィルムサンプルを、一辺50mmの正方形に切り出し、これをホルダーにセットしサンプルのヘーズを測定した。ヘーズの測定結果は、サンプル数5個づつ測定し、その平均値で示した。このヘーズを透明性の指標とした。但し、後述の延伸前溶融成形シートの作製手順で得られたシートがヘーズ20%以上となる場合は、延伸加工が容易ではないことから、評価から除外し判定は「×」とした。
<評価尺度>
ヘーズ 判 定 備 考
2%未満 ◎ 透明で視認性は非常に優れる
2%以上5%未満 ○ 若干白化する程度で視認性は優れる
5%以上10%未満 △ 白化し視認性が劣る
10%以上 × 著しく白化し視認性が非常に劣る
【0053】
(2)機械的強度
機械的強度は、延伸フィルムをサンプルとして、引張破断強さを測定し評価した。引張破断強さの測定は、測定装置に島津製作所社製オートグラフAGS−1kNGを使用し、JIS K7127に準拠して測定した。厚み約30μmの延伸フィルムサンプルを、長さ200mm、幅10mmの短冊形に切り出し、これをチャック間100mmに設定したチャックに装着し、引張速度100mm/分で試験を行った。引張破断強さの測定結果は、サンプル数10個づつ測定し、その平均値で示した。この引張破断強さを機械的強度の指標とした。但し、後述の延伸前溶融成形シートの作製手順で得られたシートがヘーズ20%以上となる場合は、延伸加工が容易ではないことから、評価から除外し判定は「×」とした。
<評価尺度>
引張破断強さ 判 定 備 考
150MPa以上 ◎ 非常に強く実用上問題はない
50MPa以上150MPa未満 ○ 強く高強度用途以外で使用可
15MPa以上50MPa未満 △ 弱く実用上問題がある
15MPa未満 × 非常に弱く実用に耐えない
【0054】
(3)ガスバリア性
ガスバリア性は、延伸フィルムをサンプルとして、酸素透過度を測定し評価した。酸素透過度の測定は、測定装置にmocon社製酸素透過率測定装置OX−TRAN200H型を使用し、JIS K7126B法に準拠して測定した。厚み約30μmの延伸サンプルを、一辺120mmの正方形状に切り出し、温度23℃、関係湿度65%の条件で試験を行った。酸素透過度の測定結果は、サンプル数3個づつ測定し、厚み10μmに換算した値の平均値で示した。この酸素透過度をガスバリア性の指標とした。但し、後述の延伸前溶融成形シートの作製手順で得られたシートがヘーズ20%以上となる場合は、延伸加工が容易ではないことから、評価から除外し判定は「×」とした。
<評価尺度>
酸素透過度 判 定 備 考
100未満 ◎ ガスバリア性が非常に高い
100以上500未満 ○ ガスバリア性が高い
500以上1000未満 △ ガスバリア性が低く用途により使用不可
1000以上 × ガスバリア性が非常に低く用途により使用不可酸素透過度の単位:cc・10μm/m2・day・atm
【0055】
(4)耐熱性
耐熱性は、耐荷重切断試験と耐溶融穿孔試験の評価結果を指標とし、この両者の判定結果のうち低い方の判定結果をそのまま耐熱性の判定結果とした。耐荷重切断試験は、短冊状試験片に荷重30gをかけた状態で、一定温度に設定した熱風循環恒温槽中で1時間加熱し試験片の切断の有無を調べ、試験片が切断しない最高温度を測定した。厚み約30μmの延伸フィルムを、縦140mm、横30mmの短冊状に切り出した。短冊状試験片の上下端25mmづつの部分に固定治具と荷重治具を各々取り付け、一定温度に設定した熱風循環恒温槽中で1時間加熱し試験片の切断の有無を調べた。短冊状試験片が切断しない場合は、新しい試験片で設定温度を5℃上げて前記手順を繰返し試験した。短冊状試験片が切断しない最高温度の測定結果は、この試験を各延伸フィルムにつき5回づつ行い最頻値で示した。
【0056】
耐溶融穿孔試験は、金枠に緊張状態で張った試験片の中央部に、一定温度に設定した熱風を吹き付けて試験片の穿孔の有無を調べ、試験片が穿孔しない最高温度を測定した。厚み約30μmの延伸フィルムを、一辺180mmの正方形に切り出し試験片とした。外寸法一辺180mm、内寸法一辺150mmの正方形の金枠に、この試験片の外縁が金枠の外縁と重なるようにして周辺を固定した。試験片を固定した金枠を水平に設置し、熱風発生機に接続した直径50mmの円形ノズルから、ノズル先端部での風速が2m/秒、ノズル先端部から試験片までの距離が50mmとなるように、試験片中央部に下から垂直に一定温度に設定した熱風を10分間吹き付け、試験片の穿孔の有無を調べた。
【0057】
試験片に穿孔が発生しない場合は、新しい試験片で設定温度を5℃上げて前記手順を繰返し試験した。試験片が穿孔しない最高温度の測定結果は、この試験を各延伸フィルムにつき5回づつ行い最頻値で示した。但し、後述の延伸前溶融成形シートの作製手順で得られたシートがヘーズ20%以上となる場合は、延伸加工が容易ではないことから、評価から除外し判定は「×」とした。
<評価尺度>
耐荷重切断試験 判 定 備 考
180℃以上 ◎ 耐熱性が非常に高く実用上問題はない
160〜175℃ ○ 耐熱性が高く用途により使用可
140〜155℃ △ 耐熱性が劣り用途が制限される
135℃以下 × 耐熱性は著しく低く実用に耐えない
<評価尺度>
耐溶融穿孔試験 判 定 備 考
180℃以上 ◎ 耐熱性が非常に高く実用上問題はない
160〜175℃ ○ 耐熱性が高く用途により使用可
140〜155℃ △ 耐熱性が劣り用途が制限される
135℃以下 × 耐熱性は著しく低く実用に耐えない
【0058】
【実施例1】
[単量体の精製]
グリコリド250gを、脱水酢酸エチル500gに75℃で溶解させた後、室温にて10時間放置し析出させた。濾取した析出物を、室温で約500gの脱水酢酸エチルを用いて洗浄を行った。再度この洗浄操作を繰返した後、洗浄物をナス型フラスコ内に入れ、60℃に設定したオイルバスに浸漬し24時間真空乾燥を行った。この乾燥物を、170℃に設定したオイルバスに浸漬し、乾燥窒素雰囲気下で6〜7mmHgに減圧し単蒸留にて133〜134℃の留出物として蒸留精製グリコリド80gを得た。
【0059】
L−ラクチド250gを、脱水トルエン500gに80℃で溶解させた後、室温にて10時間放置して析出させた。濾取した析出物を、室温で約500gの脱水トルエンを用いて洗浄を行った。再度この洗浄操作を繰返した後、洗浄物をナス型フラスコ内に入れ60℃に設定したオイルバスに浸漬して24時間真空乾燥を行い、精製L−ラクチド120gを得た。
[重合体の調製]
上記単量体の精製で得られたグリコリド70gとラクチド32g、及び触媒として2−エチルヘキサン酸すず0.03gと脱水ラウリルアルコール0.01gを耐圧管に仕込み、乾燥窒素を吹き込みながら約30分間室温で乾燥した。次いで、乾燥窒素を吹き込みながら130℃に設定したオイルバスに浸漬し、20時間撹拌して重合を行った。重合操作の終了後、室温まで冷却し、耐圧管から取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕した。この粉砕物を、脱水酢酸エチルを用いて10時間ソックスレー抽出した後、HFIP200gに50℃で溶解し、次いで2000gの精製メタノールで再沈殿させた。この再沈殿物を、110℃に設定した真空乾燥機内で24時間真空乾燥を行い、グリコール酸系共重合体85gを得た。得られた該共重合体をP1とする。
【0060】
該共重合体P1は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が86mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が14mol%であった。該共重合体P1をHFIPに溶解しガスクロマトグラフィーにて残存する単量体を定量したところ、単量体であるグリコリドとラクチドの残量は両者の合計で490ppmであった。該共重合体P1をサンプルとして、前述のDSC、相対結晶化度、対数粘度数の測定を行ったところ、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmは194℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcは0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmは0J/g、相対結晶化度Xrは33%、対数粘度数[η]は2.5dl/gであった。
【0061】
[延伸前溶融成形シートの作製]
上記重合体の調製で得られたグリコール酸系共重合体P1を、130℃に設定した熱風循環恒温槽中で含有水分量が200ppm以下になるまで約2時間放置して乾燥操作を行った後、250℃に設定した加熱プレス機で5分間加熱加圧し、その後25℃に設定した冷却プレスで冷却し厚み350μmの非晶シートを得た。
[延伸フィルムの作製、及び評価]
上記延伸前溶融成形シートの延伸は、東洋精機社製二軸延伸試験装置を使用して行った。上記延伸前溶融成形シートの作製で得られた非晶シートを、一辺90mmの正方形に切り出して、延伸温度65℃に設定したチャンバー内にクランプ間80mmのクランプに装着し、延伸速度50%/分で縦3.5倍、横3.5倍まで同時二軸延伸を行った。延伸操作の終了後、直ちに冷風を吹き付けて冷却し延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムを、金枠に固定して、120℃に設定した熱風循環恒温槽中で1分間熱処理を行い厚み30μmの延伸フィルムを得た。該熱処理した延伸フィルムをサンプルとして、前述の加熱収縮率の測定を行ったところ、100℃10分間における加熱収縮率ΔLは2%であった。
【0062】
該熱処理した延伸フィルムをサンプルとして、前述の透明性、機械的強度、ガスバリア性、耐熱性の評価を行ったところ、ヘーズは1.5%、引張破断強さは198MPa、酸素透過度は21.2cc・10μm/m2・day・atm、切断しない最高温度は185℃であり、判定は透明性が◎、機械的強度が◎、ガスバリア性が◎、耐熱性が◎、総合判定が◎であった。
以上の評価結果から、グリコール酸系共重合体P1を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムは、生分解性樹脂よりなり、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、包装材用途に好適であることが判る。
【0063】
実施例2〜4、実施例6〜7、参考例1、及び比較例1〜4】
次いで、グリコリドを65g、ラクチドを36g、重合時間を30時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP2とする。該共重合体P2は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が83mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が17mol%であった。該共重合体P2は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが188℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g、相対結晶化度Xrが34%、対数粘度数[η]が3.6dl/gであった。該共重合体P2を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが2%であった(実施例2)。
【0064】
ラクチドを29g、重合時間を25時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP3とする。該共重合体P3は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が88mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が12mol%であった。該共重合体P3は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが199℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが5.8J/g、相対結晶化度Xrが33%、対数粘度数[η]が2.9dl/gであった。該共重合体P3を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが3%であった(実施例3)。
【0065】
グリコリドを60g、ラクチドを38g、重合時間を40時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP4とする。該共重合体P4は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が80mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が20mol%であった。該共重合体P4は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが182℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g、相対結晶化度Xrが19%、対数粘度数[η]が4.0dl/gであった。該共重合体P4を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが3%であった(実施例4)。
【0066】
グリコリドを75g、ラクチドを26g、重合時間を15時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP5とする。該共重合体P5は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が90mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が10mol%であった。該共重合体P5は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが203℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが18.2J/g、相対結晶化度Xrが30%、対数粘度数[η]が1.9dl/gであった。該共重合体P5を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが2%であった(参考例1)。
【0067】
グリコリドを60g、ラクチドを46gとすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP6とする。該共重合体P6は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が78mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が22mol%であった。該共重合体P6は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが175℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g、相対結晶化度Xrが14%、対数粘度数[η]が2.4dl/gであった。該共重合体P6を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが3%であった(実施例6)。
【0068】
グリコリドを55g、ラクチドを24g、無水炭酸カリウムで脱水乾燥後に蒸留して精製したε−カプロラクトン(6−ヘキサノラクトン)を2g、触媒をジブチルすずジメトキシド0.2g、重合時間を30時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP7とする。該共重合体P7は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が86mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が10mol%、ε−カプロラクトンからなる繰返し単位の成分割合が4mol%であった。該共重合体P7は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが185℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g、相対結晶化度Xrが25%、対数粘度数[η]が2.2dl/gであった。該共重合体P7を用いることの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが4%であった(実施例7)。
【0069】
グリコリドを80g、ラクチドを22g、重合時間を10時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP8とする。該共重合体P8は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が93mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が7mol%であった。該共重合体P8は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが206℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが−36.5J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが51.6J/g、相対結晶化度Xrが78%、対数粘度数[η]が1.0dl/gであった。該共重合体P8を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが2%であった(比較例1)。
【0070】
グリコリドを90g、ラクチドを10g、重合時間を15時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP9とする。該共重合体P9は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が97mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が3mol%であった。該共重合体P9は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが218℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが−58.2J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが55.5J/g、相対結晶化度Xrが100%、対数粘度数[η]が1.9dl/gであった。該共重合体P9を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を試みたが、延伸前溶融成形シートのヘーズが23.8%であったため延伸操作を行わず、加熱収縮率ΔLの測定も行わなかった(比較例2)。
【0071】
グリコリドを100g、ラクチドを使用せず、重合時間を5時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸単独重合体をP10とする。該共重合体P10は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が100mol%であった。該重合体P10は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが222℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが−69.6J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが72.6J/g、相対結晶化度Xrが100%、対数粘度数[η]が0.8dl/gであった。該重合体P10を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を試みたが、非晶の延伸前溶融成形シートを得ることが困難であった。該重合体P10を使用して前述の延伸前溶融成形シートの作製方法と同様にし得られた結晶化しているシートは、脆弱で割れ易く延伸は困難であった。従って、加熱収縮率ΔLの測定も行えなかった(比較例3)。
【0072】
グリコリドを55g、ラクチドを46gとすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体をP11とする。該共重合体P11は、グリコリドからなる繰返し単位の成分割合が75mol%、ラクチドからなる繰返し単位の成分割合が25mol%であった。該共重合体P11は、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが現れず、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g、相対結晶化度Xrが0%、対数粘度数[η]が2.5dl/gであった。該共重合体P11を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られた熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが5%であった(比較例4)。
これらグリコール酸系共重合体、及びグリコール酸単独重合体のP1〜11について、前述のDSC、相対結晶化度、対数粘度数、加熱収縮率の測定結果を表1、及び表2にまとめる。
【0073】
【表1】
Figure 0004790920
【0074】
【表2】
Figure 0004790920
【0075】
上記グリコール酸系共重合体、及びグリコール酸単独重合体のP2〜11について、上記実施例1と同様に得られた延伸フィルムをサンプルとして評価を行った。これらの評価結果を表3、及び表4にまとめる。
【0076】
【表3】
Figure 0004790920
【0077】
【表4】
Figure 0004790920
【0078】
表3によると、DSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが175℃以上205℃以下、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g以上20J/g未満、相対結晶化度Xrが3%以上50%以下、対数粘度数[η]が1.5dl/gであるグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムは、生分解性樹脂よりなり、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れた包装材用途に好適な延伸フィルムであることが判る(実施例1〜7)。なかでも、グリコール酸系共重合体のDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが185℃以上200℃以下、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが0J/g以上18J/g以下である場合には、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムは耐熱性と透明性の両特性が著しく優れ、包装材用途に特に好適であることが判る(実施例1〜3)。
【0079】
これらに対し、表4によると、グリコール酸系共重合体、或いはグリコール酸単独重合体のDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが205℃より高く、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/gではなく、2回目の昇温過程での融解熱ΔHmが20J/g以上であり、相対結晶化度Xrが50%より高い場合には、該重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムは、耐熱性やガスバリア性は優れているものの、透明性や機械的強度が著しく劣ったり、延伸加工が困難であったりして包装材用途には適さないことが判る(比較例1〜3)。特に、前述した1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcが0J/gではない場合には、例え対数粘度数[η]が1.5dl/g以上であっても、結晶性が高い為に延伸前溶融成形シートの作製時に結晶化し、該シートのヘーズが23.8%となり延伸加工することが出来なかった(比較例2)。
【0080】
また、対数粘度数[η]が0.80dl/gと低く、且つ結晶性が非常に高いグリコール酸単独重合体P10では、非晶の延伸前溶融成形シートを得ることが困難であった。該単独重合体P10を使用して上記方法と同様にし得られた結晶化しているシートは、脆弱で割れ易く延伸加工することが出来ず、延伸フィルムの透明性、ガスバリア性、耐熱性の評価は行えなかった(比較例3)。
一方、グリコール酸系共重合体のDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tmが175℃より低い場合、詳しくは該融点Tmを175℃より低くなるであろう共重合成分割合のグリコール酸系共重合体の場合には、著しく結晶性が低い為に150℃で加熱しても結晶化せず、該共重合体を主体とする熱可塑性樹脂よりなる延伸フィルムは、透明性は優れているものの、耐熱性が著しく劣り、包装材用途には適さないことが判る(比較例4)。
【0081】
【実施例8〜9、及び比較例5〜6】
次ぎに挙げる実験は、延伸フィルムの100℃10分間における加熱収縮率について着目した実験である。従って、原料とするグリコール酸系共重合体は上記実施例1と同じ樹脂記号P1の共重合体を使用し、延伸前溶融成形シートの作製、及び延伸フィルムの作製における延伸操作も上記実施例1と同じ方法で行っている。
【0082】
熱処理の条件を150℃30秒間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、熱処理した延伸フィルムを得た。該熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが1%であった(実施例8)。
熱処理の条件を90℃3分間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、熱処理した延伸フィルムを得た。該熱処理した延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが4%であった(実施例9)。
【0083】
熱処理の操作を行わないことの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、熱処理していない延伸フィルムを得た。該熱処理していない延伸フィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが64%であった(比較例5)。
原料とするグリコール酸系共重合体は上記実施例1と同じ樹脂記号P1の共重合体を使用し、非晶シートの厚みが約30μmとなるように金型を使用することの他は前述した延伸前溶融成形シートの作製と同じ操作を行い溶融成形フィルムを得た。該溶融成形フィルムを用いて、前述した延伸フィルムの作製における熱処理と同じ操作、即ち金枠に固定して120℃に設定した熱風循環恒温槽中で1分間熱処理を行って厚み30μmの熱処理した延伸していないフィルムを得た。該熱処理した延伸していないフィルムは、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが0%であった(比較例6)。
【0084】
これらの熱処理した延伸フィルム(実施例8〜9)、熱処理していない延伸フィルム(比較例5)、及び熱処理した延伸していないフィルム(比較例6)について、前述の透明性、機械的強度、ガスバリア性、耐熱性の評価を行った。これら、及び実施例1のフィルムの100℃10分間における加熱収縮率と透明性、機械的強度、ガスバリア性、耐熱性の評価結果を表5にまとめる。
【0085】
【表5】
Figure 0004790920
【0086】
表5によると、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが0.5〜45%である延伸フィルムは、生分解性樹脂よりなり、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れた包装材用途に好適な延伸フィルムであることが判る(実施例1、及び8〜9)。
これらに対し、延伸後に熱処理を行わず100℃10分間における加熱収縮率ΔLが45%より高い延伸フィルムは、透明性は優れているが、耐熱性が劣るものとなった(比較例5)。一方、延伸を行わずに熱処理を施した100℃10分における加熱収縮率ΔLが0.5%より低いフィルムは、耐熱性は優れているが、透明性が著しく劣り、更に機械的強度も若干低いものとなった(比較例6)。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、特定範囲の結晶性を有するグリコール酸系共重合体を用い、且つ100℃10分間における加熱収縮率を規定することにより、生分解性を有し、且つガスバリア性、耐熱性、透明性、機械的強度に優れ、容易に製造することが可能である、包装材用途に好適な延伸フィルム、及び延伸シートを提供することができる。

Claims (3)

  1. グリコール酸系共重合体の非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度または冷却速度を10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121およびK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm(℃)、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc(J/g)、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm(J/g)が下式(1)〜(3)を満たし、且つ下式(4)で表される相対結晶化度Xrが3%以上50%以下、対数粘度数[η]が1.5dl/g以上であるグリコール酸系共重合体を主体とする熱可塑性樹脂組成物よりなり、100℃10分間における加熱収縮率ΔLが0.5〜45%であることを特徴とする包装材用延伸成形体。
    式(1)175≦Tm≦205
    式(2)ΔHc=0
    式(3)0≦ΔHm<18.0
    式(4)Xr=[(ρb−ρa)/(ρc−ρa)]×(ρc/ρb)×100
    但し、ρa:非晶試験片の密度(g/cm3
    ρb:150℃で5分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
    ρc:150℃で100分間加熱した結晶化物の密度(g/cm3
  2. グリコール酸系共重合体が、グリコリドとグリコリド以外の単量体を用いて開環重合し得られる共重合体であって、グリコリドよりなる繰返し単位の成分割合が78〜90mol%と、グリコリド以外の単量体よりなる繰返し単位の成分割合が22〜10mol%であることを特徴とする請求項1記載の包装材用延伸成形体。
  3. 開環重合し得られるグリコール酸系共重合体が、該共重合体を構成する単量体のうちグリコリドの他の単量体が脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の環状二量体、又はラクトン類から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の包装材用延伸成形体
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