JP4740531B2 - 骨吸収抑制剤 - Google Patents

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本発明は、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を有効成分とする骨吸収抑制剤に関する。また、本発明は、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を配合した骨吸収抑制用飲食品、医薬又は飼料に関する。
近年、高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患が増加する傾向にある。骨組織においては、絶えず骨形成と骨吸収が営まれており、若い時には骨形成と骨吸収のバランスが保たれているが、加齢に伴い種々の原因でそのバランスが骨吸収に傾く(アンカップリング)。そして、この状態が長期間続くと骨組織が脆くなり、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患を生じることになる。このアンカップリングを防止することができれば、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患を予防することができると考えられている。
従来より、アンカップリングを防止し、各種骨疾患を予防あるいは治療する方法として、(1)食餌によるカルシウム補給、(2)軽い運動、(3)日光浴、(4)薬物治療等が行われている。食餌によるカルシウム補給には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩や卵殻、魚骨粉等の天然カルシウム剤が使用されている。しかし、これらは必ずしも経口摂取に適している素材であるとはいえない。
軽い運動はジョギングや散歩等が良いとされるが、体が弱っている場合は軽い運動も厄介なものであり、まして寝たきりの老人では殆ど運動できない。日光浴は活性型ビタミンDの補給という点では良いとされているが、これだけでは不充分である。薬物投与には、1α−ヒドロキシビタミンD やカルシトニン製剤等が使用されており、骨粗鬆症の治療には有効であるということが知られている。しかし、これらの物質は医薬そのものであり、食品素材としても使用可能なものではない。
一方、本発明者らは、食品素材として使用可能な骨強化作用や骨吸収抑制作用を有する物質を得るために、乳清タンパク質中に存在する骨強化及び骨吸収抑制因子を探索し続けてきた。その結果、逆浸透膜や電気透析等の処理により、乳清タンパク質の水溶性画分から乳清由来の塩を除去したタンパク質及びペプチド混合物に骨強化作用があることを見出した (例えば、特許文献1参照。)。そして、このタンパク質及びペプチド混合物の水溶液をエタノール処理、加熱処理、加塩処理、限外濾過膜処理して得られる画分に骨芽細胞増殖促進作用及び骨強化作用があることを見出した(例えば、特許文献2及び3参照。)また、乳中に微量にしか存在しない塩基性タンパク質に骨芽細胞増殖促進作用、骨強化作用及び骨吸収防止作用があることを見出した (例えば、特許文献4参照。)。
本発明者らは、更に探索を進め、骨吸収抑制作用を有する成分の分離精製を試み、その物質を同定したところ、既知物質であるβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼであることを確認した。そしてこれらの物質を骨吸収抑制剤として利用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
βミクログロブリンは、分子量約11.6kDaのタンパク質であり、主要組織適合複合体(MHC)の構成成分である。血液を始め、全身組織中に広く分布していることが知られており、ヒトやウシでは乳中にも存在していることが報告されている。
βミクログロブリンの骨への作用については、骨代謝回転のマーカーとして、高回転型骨粗鬆症では血中βミクログロブリン濃度が高くなるとの報告がされている(例えば、非特許文献1参照。)。また、培養骨芽細胞MC3T3の増殖を促進したことから、βミクログロブリンは骨形成を促進するとの報告がある(例えば、非特許文献2参照。)。一方、骨吸収作用に関しては、βミクログロブリンが骨からのカルシウム溶出を促進するとの報告がある (例えば、非特許文献3参照。)。しかし、カルシウム溶出を促進する作用と骨吸収を抑制する作用とは異なっており、本発明者らが見出したようなβミクログロブリンが骨吸収を抑制する作用について記載した文献は見られない。
ヒストンは、高等動物の細胞核中に存在する塩基性タンパク質である。高等動物の場合、遺伝子情報をつかさどるDNA(デオキシリボ核酸)は直線距離で約2mの長さがあると言われているが、そのDNAを細胞核中に効率よく収納するために必須なタンパク質である。すなわち、DNAはヒストンに巻き付いた状態で機能的に折り畳まれている。通常、H1、H2A、H2B、H3、H4の5分子種からなり、H2A、H2B、H3、H4各2分子ずつ計8分子で一つの集合体を形成する。その集合体にDNAが巻き付き、クロマチンと呼ばれる単位を形成する。H1はクロマチン同士を接着させる働きを担っている。このようにヒストンとDNAは常にセットであり、重量比でほぼ1:1の割合で核内に存在している。
これまでDNAについては、核酸及びその構成成分として栄養効果に関する報告が数多く行われ、核酸は第6の必須栄養素ではないかとの考え方もある。しかし、それと対をなして存在するヒストンについては、栄養効果を報告した例はない。動物性の食物は基本的に細胞の集合体である。よって食物を摂る以上、ヒストンは動物の種類に関係なく必然的に摂取することになるタンパク質である。しかしヒトの場合、白米や小麦粉、砂糖等のように、精製され、細胞核を含まない食素材を用いた無細胞食品を摂取する場合が極めて多い。ヒストンの骨形成促進又は骨吸収抑制作用だけを期待するならば、細胞の塊である肝臓や白子等の食素材を多く食事に取り入れればよいが、味覚的、また食品加工上の問題が大きく、制約が極めて大きい。
補体は、血清中にあり、抗原抗体複合物と反応して活性化され、複雑な反応を起こしながら生理活性を発揮する酵素様物質である。現在、C1からC9までの九つの成分が知られている。Complement component 3はC3にあたるもので補体第3成分と呼ばれ、補体成分の中でもっとも含有量が多い。その構造は分子量10.5万のα鎖と分子量7.5万のβ鎖が2箇所のS-S結合で架橋された糖たんぱく質である。この分子量18万のC3は、C3転換酵素によって、α鎖の一部が分解されてできた分子量9,000のC3aと、2箇所のS-S結合を含む残りの分子量17万のC3bに分かれる。C3aは肥満細胞を刺激してヒスタミン放出を促進する等、炎症反応を惹起する代表的なアナフィラトキシンの一つとして知られている。C3bはさらにC3転換酵素により分解され、その一部が抗原抗体複合物と共有結合する。血液中のマクロファージ等の食細胞は細胞表面にC3bレセプターを有しているため、結果的にこの反応は食細胞による異物の貪食を亢進する。
このように補体第3成分(C3)は免疫反応に深く関与する物質であるが、自己組織である骨組織を分解していく機能を有する破骨細胞に対しては、逆にその活性を抑制する役割を果たすことが本発明によって明らかとなった。
単球走化性タンパク質-1(Monocyte chemotactic protein-1或いはMonocyte Chemoattractant protein-1、MCP-1)は単球や血管内皮、グリオーマ細胞株等が産生する単球走化性因子である。RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)とともに代表的なC-Cケモカインファミリーの一つで、分子量は8,000〜18,000、76アミノ酸からなる。主として単球に走化性を示し、好中球やリンパ球には作用しない。
リゾチーム(Lysozyme)は細菌細胞壁のムコペプチド等に存在するN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンの間のβ-1→4結合を加水分解する酵素であり、動植物界に広く分布している。基質特異性や分子量から4つのグループに分けられる。
リボヌクレアーゼ(Ribonuclease)は核酸の一種であるリボ核酸(RNA)に作用して、モノヌクレオチド或いはオリゴヌクレオチドを生じる酵素の総称である。
上述のように、βミクログロブリンは骨形成を促進するとの報告があるが、βミクログロブリン以外のヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼについては、いずれについても骨形成を促進する文献はおろか、骨吸収を抑制する働きについて記載した文献は見られない。
特開平4-183371号公報 特開平5-176715号公報 特開平5-320066号公報 特開平8-151331号公報 ジェイ・エム・クェサダ(J.M.Quesada)外6名、「高年女性の高骨リモデリングのマーカーとしての血清β2ミクログロブリン」、メカニズムス・オブ・エージング・アンド・ディベロプメント、(米国)1998年、102号、p.293-298 イー・バリント(E.Balint)外2名、「β2ミクログロブリンが誘発する骨からのミネラル溶出におけるインターロイキン6の役割」、キドニー・インターナショナル、(米国)、2000年、57号、p. 1599-1607 ジェイ・ピーターセン(J.Petersen)外 1名、「β2ミクログロブリンの骨吸収におけるインビボ効果」、アメリカン・ジャーナル・オブ・キドニー・ディズィーズ、(米国)、1994年、23号、p. 726-730
本発明は、食品素材としても使用可能な、長期的に経口摂取することができ、安全な物質であって、骨吸収抑制作用を有する、骨吸収抑制剤を得ることを課題とする。また、本発明は、骨吸収抑制用飲食品、医薬品又は飼料を得ることを課題とする。
本発明者らは、これらの問題点を鑑み、広く食品素材に含まれている骨強化作用を示す物質について、鋭意、探索を進め、骨芽細胞増殖促進作用、骨強化作用及び骨吸収防止作用を有するタンパク質について、骨成長促進作用及び骨吸収防止作用を有する成分の分離精製を試み、その物質を同定したところ、既知物質であるβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼであることを確認した。そして、これらの物質を骨吸収抑制剤として利用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を有効成分とする骨吸収抑制剤に関する。
また、本発明は、β2ミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を配合した骨吸収抑制用医薬に関する。

本発明のβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を有効成分とする骨吸収抑制剤は、これを経口投与することにより、骨粗鬆症等の各種骨疾患の予防や改善に有用である。また、これらの有効成分を飲食品、医薬、飼料等に配合すると、骨吸収を抑制して骨粗鬆症等の各種骨疾患を予防し、改善する効果を奏する。
破骨細胞は造血幹細胞から発生して海綿骨表面に存在し、骨を溶解する細胞である。破骨細胞が骨基質を溶解し(骨吸収)、その後、骨芽細胞が骨基質を合成することによって、骨の形成や成長(モデリング)、代謝(リモデリング)が起こると考えられている。本発明は、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼによって、破骨細胞による骨吸収が顕著に抑制されることを見出したものである。
βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼに見出された骨吸収抑制作用を用いることによって、骨代謝を骨形成優位のバランスへ傾けることが期待できる。よって本発明は、骨吸収抑制作用を有する骨吸収抑制剤、飲食品、医薬又は飼料を提供するものである
本発明において有効成分として使用するβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼはいずれもウシ、水牛、ヒト、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ等の乳中にも微量に存在しており、乳から分離抽出が可能である。乳成分としては、生乳、脱脂乳、又はホエーから分離したタンパク質画分、あるいは生乳から分離した乳中の細胞画分が利用できる。βミクログロブリン、補体第3成分、及び単球走化性タンパク質1は健康な家畜の血液から調製することもできる。ヒストンを抽出する素材としては、乳成分のほかに、穀物胚芽、白子等を利用することができる。穀物胚芽は小麦胚芽、米胚芽等が利用できる。白子はサケ、マス、タラ、ニシン、イカ、ホタテ貝等の魚介類から採取されたものを用いれば良いが、特に、サケ、マス、タラ等の漁獲量の多い魚類の白子を用いることが、資源の有効利用の面から好ましいといえる。
βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼはいずれも市販されており、この市販品を用いることも可能である。また、遺伝子工学的に作製したリコンビナント品を用いても良い。
さらに、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼを、トリプシン、パンクレアチン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、カリクレイン、カテプシン、サーモライシン、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素により分解したものを用いても良い。
乳からの調製については、例えば、新鮮な牛乳をイオン交換樹脂に接触させてβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼを含む画分を吸着させ、塩化ナトリウムの濃度を徐々に高めて溶出した後、ゲル濾過クロマトグラフィーによりβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼをそれぞれ得ることができる。
血液からの調製については、クエン酸血漿をクエン酸バリウムと反応させ、不溶性バリウムに吸着したβミクログロブリン、補体第3成分、及び単球走化性タンパク質1の沈殿をそれぞれ回収する。さらにイオン交換クロマトグラフィーにより純度を高めることができる。
本発明の骨吸収抑制剤は、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を有効成分とする。また、このβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼのいずれか1種以上を、牛乳、乳飲料、コーヒー飲料、ジュース、ゼリー、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品に配合しても良いし、錠剤や粉末等の医薬としても良い。さらに、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、卵殻、牛乳由来のカルシウム等の吸収性が良好なカルシウム剤を併用し、骨代謝を骨形成優位のバランスへ傾けることにより、骨強化作用を一層高めることもできる。
本発明の骨吸収抑制剤の投与量は、有効成分、年齢、治療効果及び病態等により異なるが、成人の場合、1日当たり 1ng〜1gを数回に分けて経口的に摂取すれば良い。このように、本発明の骨吸収抑制剤を摂取することにより、骨粗鬆症等の各種骨疾患を予防することができる。なお、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼ及びその酵素分解物は、元来、血漿や乳由来の成分であり、ラットにおける急性毒性は認められなかった。また、これらの有効成分を飼料に含有させて、家畜や家禽等の骨吸収を抑制させることもできる。
以下に実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
既知の方法(Hoshi F., D. Nagai, S. Higuchi, T. Noso, A. Takahashi, S. Kawamura, Veterinary Immunology and Immunopathology, 53, 29-38, 1996. Purification of bovine beta2-microglobulin from colostrums and its complete amino acid sequence)に従い、ウシ初乳よりβミクログロブリンを調製した。
すなわち、10 lのウシ初乳より遠心分離法により脱脂乳を得、1 N塩酸でpHを4に調整し、凝集したカゼインを遠心分離で沈殿させた。20 gのカゼインを5 mMリン酸ナトリウム緩衝液(PBS:pH 8.3)1 lに溶解し、同緩衝液で平衡化したジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース(DE-52:ワットマン社製)カラムに吸着させた。平衡化緩衝液で洗浄し、得られた画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析し、12 kDaのタンパク質を含む画分を、限外濾過により濃縮し、5 mMPBS(pH 8.3)に対して4℃で一晩透析した。濃縮液を5mM PBS(pH 8.3)で平衡化したセファデックスG−75カラムからなるゲル濾過クロマトグラフィーに通した。12 kDaのタンパク質を含む画分を限外濾過で濃縮し、10 mM酢酸アンモニウム溶液に対して透析した。これを凍結乾燥して本発明の有効成分であるβミクログロブリン12 mgを得た。このβミクログロブリン12 mgを乳糖120 mgと混合し、顆粒状に成型して本発明の骨吸収抑制剤を得た。
なお、ヒストン、補体第3成分、単球走化製タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼについても、上記βミクログロブリンと同様の方法によりウシ初乳より調製することが可能である。
外皮を除去したサケの白子(核酸6%含有)1 kgを水で洗浄した後、脱水し、さらに水3lを加えてホモゲナイザーでホモジネートを調製した。このホモジネートに 0.05 N水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを6に調整し、パパイン 20 gを加えて35℃で2時間撹拌しながらタンパク質を分解した後、80℃で30分間保持して酵素を失活させて分解を終了した。分解終了後、遠心分離により沈殿を除去し、得られた上清に対し 2.5倍量の95%エタノールを加えてDNAを沈殿させた。そして、含水エタノールを濾過して除去した後、凍結乾燥して、DNA粉末からなる本発明の骨吸収抑制剤65 gを得た。なお、この骨吸収抑制剤1 g中にはヒストン425 mgが含まれていた。
試験例1
βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼについて骨吸収抑制作用を調べた。試験に供した各有効成分はいずれも市販の物を用いた。試験に供した各有効成分の由来及び各有効成分の最終濃度は表1記載の通りである。
生後10〜20日齢のICR系マウスの長管骨を摘出し、軟組織を除去した後、5 %牛胎児血清を含むα-MEM(Flow Laboratories社製)溶液中で骨を機械的に細切し、破骨細胞を含む全骨髄細胞を得た。この破骨細胞を含む全骨髄細胞を約2×10細胞になるように象牙片の上に撒き込み、5 %牛胎児血清を含むα-MEM溶液でスポットした。2時間後、βミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼを、表1記載のそれぞれの最終濃度となるように、5 %牛胎児血清を含むα-MEM溶液を加え、5日間培養し、既存の破骨細胞の骨吸収抑制活性を調べた。
骨吸収抑制作用の評価は、培養後、象牙片上の細胞を剥がしてヘマトキシリン染色し、PIASLA-555により画像解析して骨吸収窩(ピット) の数を測定した(瀬野悍二ら,研究テーマ別動物培養細胞マニュアル,pp.199-200, 1993)。すなわち、ピット数が少ないということは、破骨細胞の活性が低下して骨吸収活性が抑制されたことを意味している。また、ピットアッセイで骨吸収抑制効果が示された物質は、動物実験でも骨吸収の抑制効果が示されており(Tobaら、Bone, vol.27, p.403-408, 2000)、一般的にピットアッセイは骨吸収抑制効果を調べる上で適した実験系である。対照として、有効成分無添加のものを用い、有効成分無添加のものの骨吸収活性を 100%としたときのそれぞれの骨吸収活性 (%) で表した。その結果を表1に示す。

本発明の有効成分であるβミクログロブリン、ヒストン、補体第3成分、単球走化性タンパク質1、リゾチーム、及びリボヌクレアーゼを添加したものはいずれも、有効成分無添加のものに比べ骨吸収活性が抑制されており、顕著な骨吸収抑制作用を有することが判った。
表2に示した配合で原料を混合した後、容器に充填し、加熱殺菌して、骨吸収抑制用飲料を製造した。
表3に示した配合で原料を混合した後、加圧成型して、骨吸収抑制用錠剤を製造した。
表4に示した配合で原料を混合し、ドウを作成して成型した後、焙焼して、骨吸収抑制用ビスケットを製造した。
表5に示した配合で原料を混合した後、容器に充填し、加熱殺菌して、骨吸収抑制用ゼリーを製造した。
表6に示した配合で原料を混合した後、85℃で乳化して、骨吸収抑制用プロセスチーズを製造した。
12重量%還元脱脂乳を90℃で20分間加熱殺菌した後、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及びストレップトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) をそれぞれ接種し、2種類のスターターカルチャーを得て両者を等量混合した。そして、表7に示した配合で原料を混合した後、発酵させて、骨吸収抑制用ヨーグルトを製造した。
表8に示した配合で原料を混合し、骨吸収抑制用乳児用調製粉乳を製造した。
表9に示した配合で原料を混合して、骨吸収抑制用イヌ飼育用飼料(ドッグフード)を製造した。

Claims (3)

  1. リボヌクレアーゼを有効成分とする骨吸収抑制剤。
  2. 1日当たり1ng〜1g投与することを特徴とする請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  3. 請求項1又は2に記載の骨吸収抑制剤を配合した骨吸収抑制用医薬。
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