JP4729821B2 - ボールねじ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数のボールを介して軸とナットとを螺合させるボールねじに関し、特に、大定格荷重や低騒音等が要求されるボールねじに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボールねじの剛性や定格荷重を大きくするためには、ナット内で負荷を受けるボールの数を多くする設計にしている。
しかし、一つの循環部材(ボールを無限循環させるための部材)で形成されるボールの列のボール数を多くする設定にすると、負荷のかかる領域でボール同志のせり合いが起こり易く、作動特性が悪くなるという問題点があった。このボール同志のせり合いは作動特性だけでなく、ボールやボール溝の摩耗等にも悪い影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
そのため、従来は、一つの循環部材で構成されたボールの列の閉回路を分割して、図4に示すように、複数の循環部材6でボール2の列をそれぞれ構成する方式としていた。同図において、1は軸、2はボール、3はナットである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の上記ボールねじにおいては、循環部材6を増やすと、騒音の発生する個所が多くなり、全体としての騒音が大きくなってしまうという問題点があった。また、同図に示すように、1つの循環部材6により保持されるボール2の列が軸1の周囲を巻く回数、即ちボール2の列の巻数が2.5巻き、3.5巻き等、0.5で表されるように半巻き刻みにならざるを得ない。このため、同図中、軸1を側面から見た場合の上半分と下半分のボール2の全個数を考えると、上半分では3.0巻き分、下半分では4.5巻き分となって1.5巻き分の差があり、ボール2が入る数に軸1の上半分と下半分とで違いが出ることになる。
【0005】
したがって、このようなボールねじが外部荷重を受けた場合に、各ボール2にかかる負荷がアンバランスになるので、ボール2の剥離や摩耗寿命が短くなると考えられる。また、ボール2の列の閉回路間にボール2の入らない部分ができるため、ナット3の長さが有効に使用されないことになる。加えて、循環部材6が増えることはコストアップにもつながるという問題点もあった。
【0006】
そこで、図5に示すように、ボール2の受ける負荷バランスを改良したものも考えられている。同図のボールねじは、図4に示した3つの循環部材6の内、真中の循環部材6を180°反転させた位置に取り付けたものである。同図中、軸1を側面から見た場合の上半分と下半分のボール2の全個数を考えると、上半分では3.5巻き分、下半分では4.0巻き分で、その差0.5巻き分となり、図4の場合より1.0巻き分差が縮まることになる。このため、ボール2の列の上下のバランスが良くなり、ボールねじの寿命を延ばすことができる。
しかし、循環部材6の数は従来の図4の場合と同じであり、ボール2の列の閉回路間にボール2が入らない部分も増加するため、負荷を受けるボール2の数を図4の場合と同様にすると、今度はナット3の長さが長くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した従来例の有する不都合を改善し、低騒音で、作動特性や負荷バランスが良く、低コスト化が図られた簡単な構成のボールねじを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明では、断面が半円形状の軸溝を螺旋状に形成した軸と、断面が半円形状で前記軸溝に対応するナットボール溝を螺旋状に形成したナットと、前記ナットボール溝と前記軸溝の間に挟持される形で回転自在に嵌め込まれた多数のボールと、該ボールを無限循環させるためのボール循環部材と、から成るボールねじにおいて、前記ナットボール溝は、少なくとも、その一部の有効径が他の部分よりも大きく成形されており、該大きく成形されている部分は前記ボール循環部材とは径方向に対向する半円筒部分のナットボール溝に成形されていることを特徴としている。
【0009】
以上の構成において、ナットに外部からの負荷がかかった時に、その負荷圏のボールに圧力が加わって摩耗しがちになるが、ナットボール溝の有効径が他の部分よりも大きく成形されている部分において、ボールが径方向へ逃げるため、ボールにかかる負荷が低減され、ボール同志のせり合いが緩和される。したがって、ボール同志の摩耗が低減されると共に、作動性も良い状態に保たれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すボールねじの断面図、図2は図1の○で囲んだ部分を軸側からナットの内周面を見た拡大図、図3はボール負荷とナット位置との関係を示す特性線図である。
【0011】
図1において、軸1に螺旋状に形成した、断面が半円形状(ゴシックアーチ形状)の軸溝1aに多数のボール(鋼球)2が嵌め込まれると共に、このボール2に、ナット3側に螺旋状に形成した同じく断面が半円形状(ゴシックアーチ形状)のナットボール溝3aが螺合している。ボール2の列の両端部は、ボール循環部材(リターンチューブ)4の両端部に当接しており、ナット3は一つの循環部材4とボール2の列で構成される閉回路を一つ有している。循環部材4はナット3側に固定されており、軸1とナット3の相対回転によりボールは閉回路中において循環可能で軸1とナット3が相対螺旋回転を行う。
【0012】
ナット3のナットボール溝3aの一部(○で囲んだ部分)は、図2にも示すように、その断面の半円形状のボール中心径(軸1とナット3のボール溝1a、3a,間に入っているボール2の中心が描く円の径寸法)が他の部分よりやや大きく(例えば10μm)されており、その結果ナットの半円形状溝の幅R1よりやや大きいR2(R1<R2)に成形された大径部5とされている。この大径部5を大きくする度合いについては、ナットに外部負荷がかかった時にもボール2に負荷がかからない程度の大きさであって、大き過ぎないように適度に設定する。そして、この大径部5の螺旋溝に沿った長さはボール2個分から螺旋溝の半巻分でよい。
【0013】
この構成において、ナット3に外部からの負荷がかかった時に、各ボール2に圧力が加わってボール同士のせり合いのため摩耗しがちになるが、図2に示すように、ナットボール溝3aの大径部5において、ボール2が径方向および幅方向へ逃げるため、ボール2にかかる負荷が低減され、ボール2同志のせり合いが緩和される。したがって、ボールねじに外部負荷がかかった時でも、作動特性を良い状態に保つことができ、ボール2同志の摩耗を低減することができる。
【0014】
また、図1中、軸1を側面から見た場合の上半分と下半分のボール2の全個数を考えると、上半分が4.5巻き分、下半分は大径部5部分の長さがボール2個分も有れば良いので、下半分もほぼ4.5巻き分で、上下差が無くなり、円周方向にバランス良く負荷ボール2を配置することができるので、各ボール2にかかる負荷はバランスの取れたものとなる。
【0015】
図4に示したように、循環部材6が片側に配置された従来のボールねじと、この実施形態のように、負荷ボール2のバランスが取れたものについて、ボール2が受ける負荷と軸1に対するナット3の位置との関係を図3に示している。同図において、細い実線Aが従来の負荷ボール2のアンバランスなもの、太い実線Bが本発明のように負荷ボール2のバランスがとれたもので、ナット3の位置に対する負荷の変動の度合いが負荷バランスの善し悪しを表している。本発明Bの方が従来Aに比べて、1リード当たりの負荷のバラツキ、ナット3全体としての負荷のバラツキが何れも大幅に小さくなっており、負荷バランスが良くなっているのが分かる。
【0016】
この実施形態において、循環部材4は一つであるため、低騒音化を実現することができる。また、上記大径部5は、一個所に限らず、複数個所に設けても良く、設ける数は負荷バランスとボール2の数から決定する。大径部5を設ける位置は、負荷を受けるボール2のバランスがとれるように設定する。例えば、負荷域をn個所に設定すれば、大径部5を円周方向にバランスを考慮し、(n−1)個所に配置すれば良い。大径部5を複数個所にすることで、一負荷圏内に入るボール数を任意に設定することができるため、作動性の向上につながる。
【0017】
また、この実施形態では、ナットボール溝3aの有効径を大きくするという方法を採ったが、これに限らず、ナットボール溝3aの幅だけを大きくする(深さは変わらない)という方法でも、同様の効果を期待できる。
【0018】
尚、この実施形態では、チューブ式ボールねじについて説明したが、エンドキャップ式、あるいはガイドプレート式ボールねじ等、他の循環部材を用いた方式であっても同様の効果を期待することができる。又、ボール同志のせり合いを防止するために、ボール間に挿入して使用されている保持ピース(樹脂製の保持器)と併用することも可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ナットのナットボール溝は、少なくとも、その一部の有効径が他の部分よりも大きく成形されているので、ボールねじに外部負荷がかかった時でも、ボールにかかる負荷が低減され、ボール同志のせり合いが緩和される。したがって、ボール同志の摩耗を低減することができ、作動性を良好な状態に保つことができる。
また、ボール保持部材を従来に比べて減らすことができるので、これを設置するためのナット側の加工も少なくなり、低コスト化、及び低騒音化を図ることができる。
さらに、軸の円周方向にバランス良く負荷ボールを配置できるので、ナットの長さを有効に使用することができると共に、ボールねじの使用寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すボールねじの断面図。
【図2】図1の○で囲んだ部分を軸側からナットの内周面を見た拡大図。
【図3】ボール負荷とナット位置との関係を示す特性線図。
【図4】従来のボールねじを示す断面図。
【図5】負荷バランスを改良した従来のボールねじを示す断面図。
【符号の説明】
1 軸
1a 軸溝
2 ボール
3 ナット
3a ボールナット溝
4 循環部材
5 大径部

Claims (1)

  1. 断面が半円形状の軸溝を螺旋状に形成した軸と、断面が半円形状で前記軸溝に対応するナットボール溝を螺旋状に形成したナットと、
    前記ナットボール溝と前記軸溝の間に挟持される形で回転自在に嵌め込まれた多数のボールと、該ボールを無限循環させるためのボール循環部材とから成るボールねじにおいて、
    前記ナットボール溝は、少なくとも、その一部の有効径が他の部分よりも大きく成形されており、
    該大きく成形されている部分は前記ボール循環部材とは径方向に対向する半円筒部分のナットボール溝に成形されていることを特徴とするボールねじ。
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