以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態1のモータ駆動装置100は、交流電圧源1を電源とし、3相交流出力により3相ブラシレスモータ2を駆動するものである。この交流電圧源1は、単相交流電源20、および該単相交流電源20を入力とする単相整流回路10からなるものであり、以下、単に電圧源ともいう。また、ブラシレスモータは、常に、ブラシレスモータに供給される交流電流の周波数に一致した任意の回転数で駆動されるものである。そして、このモータ駆動装置100は、電圧源1の単相整流回路10に接続され、ブラシレスモータ2に駆動電圧を出力するインバータ回路3と、該インバータ回路3を外部からの指令回転数信号に基づいて制御するインバータ制御部4とを有している。
ここで、単相整流回路10は、直列接続の第1及び第2のダイオード11及び12と、直列接続の第3及び第4のダイオード13及び14とを有している。第1及び第3のダイオード11及び13のカソードは共通接続され、その共通接続点は単相整流回路10の一方の出力ノード1aとなっている。第2及び第4のダイオード12及び14のアノードは共通接続され、その共通接続点は単相整流回路10のもう一方の出力ノード1bとなっている。また、上記第1及び第2のダイオード11及び12の接続点1cに、単相交流電源20の一方の出力端子が接続され、上記第3及び第4のダイオード13及び14の接続点1dに、単相交流電源20のもう一方の出力端子が接続されている。
インバータ回路3は、インバータ制御部4から出力されるドライブ信号Sgに基づいて、電圧源1の出力電圧を3相交流電圧に変換し、3相ブラシレスモータ2に供給するものである。
上記インバータ回路3は、直列接続の第1及び第2のスイッチング素子31及び32と、直列接続の第3及び第4のスイッチング素子33及び34と、直列接続の第5及び第6のスイッチング素子35及び36とを有している。第1,第3,第5のスイッチング素子31,33,35の一端は共通接続され、該共通接続点は上記電圧源1の一方の出力ノード1aに接続されている。第2,第4,第6のスイッチング素子32,34,36の一端は共通接続され、該共通接続点は上記電圧源1のもう一方の出力ノード1bに接続されている。また、上記第1〜第6のスイッチング素子31〜36は、それぞれ逆並列接続の第1〜第6のダイオード41〜46を有している。そして、上記第1及び第2のスイッチング素子31及び32の接続点3aはインバータ回路3の第1の出力ノード、上記第3及び第4のスイッチング素子33及び34の接続点3bはインバータ回路3の第2の出力ノード、上記第5及び第6のスイッチング素子35及び36の接続点3cはインバータ回路3の第3の出力ノードである。上記インバータ回路3の第1〜第3の出力ノード3a〜3cはそれぞれ、ブラシレスモータ2の3相入力の各相の入力ノードに接続されている。ここで上記各スイッチング素子はIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)素子である。但し、上記スイッチング素子は、これに限らず、例えば、パワートランジスタやMOSFETであってもよい。
なお、この実施の形態1では、インバータ回路3は、3相のフルブリッジ構成としているが、該インバータ回路3は、3相交流出力が可能なものならどのようなものでもよい。例えば、上記インバータ回路3は、上記3相交流出力のうちの1相に相当する回路部分を、コンデンサを用いて構成したものでもよい。また、上記インバータ回路3は、各スイッチング素子に対してスナバ回路が付加されたものでもよい。
また、電圧源1は、上記のように、交流電源の出力電圧を整流回路により整流して得られた電圧をそのまま出力するものに限らず、該整流回路の出力電圧が平滑されるよう出力側に小容量のコンデンサを付加した電源でもよい。また、このように変動する電圧を出力する電圧源は、交流電圧を有するものに限らず、インバータ回路の他に負荷が接続されたバッテリー等が考えられる。また、電圧源1には一定の直流電圧を出力する電源を用いることも可能である
インバータ制御部4は、ブラシレスモータ2が、使用者が望む回転数で駆動されるようインバータ回路3を制御するものであり、ロータ位置推定部5とドライブ信号生成部6とから構成されている。
ロータ位置推定部5は、インバータ回路3がブラシレスモータ2に供給する電流Iからロータの位相を推定する。なお、上記ロータの位相を推定する方法は、モータへの供給電流Iからロータの位相を推定する方法に限らず、ブラシレスモータ2の誘起電圧を利用する方法や、ブラシレスモータに取り付けられた位置センサの検出出力に基づいてロータの位相を推定する方法であってもよい。
ドライブ信号生成部6は、ロータ位置推定部5により推定されたロータ位相θと、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0とに基づいて、インバータ回路3へのドライブ信号Sgを、上記推定位相θに応じた位相及び指令回転数ω0に応じた振幅を有する電圧が該インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加されるよう作成し、該ドライブ信号Sgをインバータ回路3へ出力する。ここで、指令回転数ω0は、ブラシレスモータ2に要求される能力に応じて変化するものであるが、指令回転数ω0には、特定回転数にある幅を持たせた一定範囲内の回転数は採用されない。
インバータ回路3では、上記ドライブ信号Sgに基づいて、ブラシレスモータ2に印加する電圧の振幅値は、推定位相θから導かれる実回転数ωと指令回転数ω0の偏差が小さくなり、かつ、インバータ回路3の出力電流の周波数が特定値に固定されないよう調整される。ここで、上記特定値には、上記交流電圧源1の周波数、駆動するブラシレスモータ2の固有周波数、ブラシレスモータ2が接続されている負荷の固有周波数などが考えられる。
また、インバータ回路3の出力電流の周波数が特定値に固定されないよう調整する方法としては、指令回転数ω0として、上記のような回避すべき周波数にある幅を持たせた一定範囲内の周波数を採用しないようにする方法が考えられる。
次に動作について説明する。
このモータ駆動装置100では、インバータ回路3のドライブ信号Sgがインバータ制御部4により作成され、該ドライブ信号Sgがインバータ回路3に入力されると、電圧源1を入力とするインバータ回路3から駆動電圧がブラシレスモータに供給される。つまり、インバータ回路3では、ドライブ信号Sgが各スイッチング素子31〜36にゲート信号として印加され、スイッチング素子31〜36がオンオフ動作する。これにより、インバータ回路3では、電圧源1の出力電圧が3相交流電圧に変換され、該3相交流電圧はブラシレスモータ2に出力される。そして、ブラシレスモータ2は該3相交流電圧により駆動される。
以下、インバータ制御部4の各部5及び6の動作について説明する。
ロータ位置推定部5では、インバータ回路3がブラシレスモータ2に供給する電流Iからロータの位相が推定される。
ドライブ信号生成部6では、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0と、ロータ位置推定部5により得られたロータの推定位相θとに基づいて、インバータ回路3に出力するドライブ信号Sgが生成される。このとき、ドライブ信号生成部6では、ドライブ信号Sgのデューティー比が、推定位相θから導かれる実回転数ωと指令回転数ω0の偏差が小さくなるよう決定され、該決定されたデューティー比に対応する振幅値を有する電圧が、インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される。
つまり、上記ドライブ信号生成部6では、ロータ位置推定部5により得られたロータ推定位相θの微分により実回転数ωが求められ、該実回転数ωと指令回転数ω0との比較が行われる。そして、実回転数ωが指令回転数ω0より小さい場合、ブラシレスモータに供給される電圧の振幅値が増大するようドライブ信号Sgのデューティー比が調整される。一方,実回転数ωが指令回転数ω0より大きい場合、ブラシレスモータに供給される電圧の振幅値が減少するようドライブ信号Sgのデューティー比が調整される。ここで、指令回転数ω0には、特定回転数にある幅を持たせた一定範囲内の回転数は採用されない。なお、実回転数ωが指令回転数ω0と等しい場合、ドライブ信号Sgのデューティー比は変更されない。このデューティー比の調整は、一定周期で繰り返される。これにより、インバータ回路3の出力電流の周波数は特定値に固定されないこととなる。
このように本実施の形態1では、電圧源1の出力電圧を駆動電圧に変換してブラシレスモータ2に出力するインバータ回路3と、該インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値を、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0と、ロータの推定位相θから導かれる実回転数ωとの偏差が小さくなるよう制御するインバータ制御部4とを備え、指令回転数ω0を一定範囲内の回転数とならないようにするので、ブラシレスモータ2の動作が不安定となる回転数での駆動を回避することができ、安定したブラシレスモータ2の駆動制御を実現することができる。これにより、インバータ回路3の入力側で一定周周波数の電圧脈動が生じていても、音や振動が発生したり、モータ駆動電流の高調波成分がインバータ回路の入力側に現われたりするのを回避することができる、IEC高調波規制を満足するモータ駆動装置を得ることができる。
なお、本実施の形態1では、交流電圧源1は、単相交流電源20と、その出力を整流する単相整流回路10とからなるものであるが、交流電圧源1はこのような構成に限らず、3相交流電源とその出力を整流する3相整流回路とからなるものでもよい。
図1(b)は、このような3相交流電源と3相整流回路からなる、モータ駆動装置の交流電圧源を説明する図である。
図1(b)に示すモータ駆動装置100は、実施の形態1のものと同一のものであり、該モータ駆動装置の交流電圧源(以下、電圧源という。)30を構成する3相交流電源20aは、3つの出力端子を有し、該各出力端子から出力される電圧の位相が120度ずつずれている電源である。
また、上記電圧源30を構成する3相整流回路10aは、直列接続の第1及び第2のダイオード21及び22と、直列接続の第3及び第4のダイオード23及び24と、直列接続の第5及び第6のダイオード25及び26とを有している。第1,第3,第5のダイオード21,23,25のカソードは共通接続され、その共通接続点は3相整流回路10aの一方の出力ノード2aとなっている。第2,第4,第6のダイオード22,24,26のアノードは共通接続され、その共通接続点は3相整流回路10aのもう一方の出力ノード2bとなっている。また、上記第1及び第2のダイオード21及び22の接続点2cに3相交流電源20aの第1の出力端子が接続され、上記第3及び第4のダイオード23及び24の接続点2dに3相交流電源20aの第2の出力端子が接続され、上記第5及び第6のダイオード25及び26の接続点2eに3相交流電源20aの第3の出力端子が接続されている。
そして、上記モータ駆動装置100のインバータ回路3を構成する第1,第3,第5のスイッチング素子31,33,35の共通接続点が、上記3相整流回路10aの一方の出力ノード2aに接続され、該インバータ回路3を構成する第2,第4,第6のスイッチング素子32,34,36の共通接続点が上記3相整流回路10aのもう一方の出力ノード2bに接続されている。
このように、実施の形態1のモータ駆動装置100に電力を供給する電圧源が、単相交流電源20と単相整流回路10からなる電圧源1に代わる、3相交流電源20aと3相整流回路10aからなる電圧源30である場合も、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態1で示した交流電圧源は、上述したような交流電源を用いたものに限らず、バッテリーのような直流電源を用いたものでもよく、この場合も、交流電源を用いた場合と同様の効果が期待できる。
例えば、電気自動車のように、ひとつの直流電源で複数のモータが駆動される場合、大電流を要するメインモータの回転数によってバッテリーの出力する直流電圧は変動し、小電流により駆動されるサブモータは、その直流電圧変動の影響を少なからず受ける。このような場合でも、メインモータの回転数の近く、もしくはその整数倍の回転数でのサブモータの駆動を避けることにより、サブモータの駆動における不安定性を解消することができる。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態2のモータ駆動装置100aは、ブラシレスモータ2を、その回転数が電圧源1の出力電圧の変動周波数fに固定されないよう駆動するものである。また、この実施の形態2では、指令回転数ω0は、ブラシレスモータ2に要求される能力に応じて変化するものであり、実施の形態1のように、指令回転数ω0として一定範囲内の回転数を採用しないといった制限はない。その他の構成は、実施の形態1のモータ駆動装置100と同一であり、この実施の形態2においても、ブラシレスモータは、実施の形態1と同様、常に、ブラシレスモータに供給される交流電流の周波数に一致した任意の回転数で駆動される。
すなわち、この実施の形態2のモータ駆動装置100aは、電圧源1を入力とし、ブラシレスモータに駆動電圧を供給するインバータ回路3と、該インバータ回路3を制御するインバータ制御部4aとから構成されている。ここで、電圧源1及びインバータ回路3は、上記実施の形態1のモータ駆動装置100のものと同一である。
インバータ制御部4aは、ブラシレスモータ2を使用者が望む回転数で駆動されるよう、インバータ回路3にドライブ信号Sgを供給するものであり、ロータ位置推定部5と、ドライブ信号生成部6aと、変動周波数検知部7とから構成されている。
ロータ位置推定部5は、実施の形態1と同様、ブラシレスモータに供給される電流Iからロータ位置を推定するものである。
変動周波数検知部7は、電圧源1の出力電圧に基づいて該出力電圧の変動周波数fを検知し、該変動周波数fを示す周波数信号を出力するものである。具体的には、電圧源出力電圧の変動周波数fは、電圧源1の出力電圧を検出し、該検出電圧の異なる変極点間の時間間隔から、または、検出電圧のある一定値に対するクロスタイミングから、上記変動周波数fを算出することができる。
なお、この実施の形態2では、図2に示すように、変動周波数検知部7が電圧源1の出力電圧からその変動周波数を検出する例を示しているが、交流商用電源の出力を整流して電圧源1の出力電圧として用いるような場合や、電圧源1に接続された他の負荷が消費している電力の周波数がわかっている場合は、あらかじめ、電圧源出力電圧の変動周波数を想定することができるので、電圧源1の出力電圧を検知することなく、その出力電圧の変動周波数fを決定することができる。
ドライブ信号生成部6aは、ロータ位置推定部5により推定されたロータの位相θと、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0と、変動周波数検知部7により検知された電圧源出力電圧の変動周波数fとを入力とし、インバータ回路3を、インバータ回路3からロータの推定位相θに応じた位相及び指令回転数ω0に応じた振幅を有する電圧がブラシレスモータ2に供給されるよう、ドライブ信号Sgにより制御する。
このとき、ブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値は、ロータの推定位相θから導かれる実回転数ω、つまりインバータ回路3の出力電流の周波数と、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0の偏差が小さくなるよう、かつ、インバータ回路3の出力電流の周波数が、電圧源出力電圧の変動周波数fの整数倍に固定されないように調整される。
次に動作について説明する。
このモータ駆動装置100aでは、実施の形態1のモータ駆動装置100と同様、インバータ回路3にて電圧源1の出力電圧が3相交流電圧に変換され、ブラシレスモータ2が該3相交流電圧により駆動される。
このとき、上記インバータ制御部4aでは、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0と、電圧源1の出力電圧と、ブラシレスモータ2に供給される電流Iとに基づいて、上記ドライブ信号Sgであるパルス信号が生成される。
以下、インバータ制御部4aの各部5,6a及び7の動作について説明する。
ロータ位置推定部5では、実施の形態1と同様、インバータ回路3がブラシレスモータ2に供給する電流Iからロータ位置θが推定される。
変動周波数検知部7では、電圧源1の出力電圧に基づいて該出力電圧の変動周波数fが検知される。
ドライブ信号生成部6aでは、外部からの指令信号が示す、ブラシレスモータ2に要求される能力に応じて変化する指令回転数ω0と、ロータ位置推定部5により推定されたロータ位相θと、変動周波数検知部7により検知された変動周波数fとに基づいて、インバータ回路3に出力するドライブ信号Sgが生成される。
このとき、ドライブ信号Sgのデューティー比は、インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値が、上記ロータの推定位相θから導かれる実回転数ωと外部からの指令信号が示す指令回転数ω0との偏差が小さくなるよう、かつ、実回転数ωが上記検知された変動周波数に固定されないよう調整される。つまり、この実施の形態2では、ドライブ信号Sgのデューティー比が、実回転数ωと指令回転数ω0と大小関係に基づいて調整される動作は実施の形態1と同様に行われ、さらに、指令回転数ω0が変動周波数fに一致している状態では、ドライブ信号Sgのデューティー比が、実回転数ωが指令回転数ω0に固定されないよう調整される。
そして、インバータ回路3では、上記ドライブ信号Sgにより、各スイッチング素子のオンオフ制御が行われて、電圧源1の出力電圧が3相交流電圧に変換され、該3相交流電圧がブラシレスモータ2に供給される。
すると、ブラシレスモータ2は、実回転数ωと指令回転数ω0の偏差が小さくなり、かつ、その回転数が上記検出された変動周波数に固定されないよう駆動される。
このように本実施の形態2では、電圧源1の出力電圧を3相交流電圧に変換してブラシレスモータ2に出力するインバータ回路3と、電圧源1の出力電圧の変動周波数fを検知する検知部7と、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0、推定されたロータ位相θ、及び検知された変動周波数fに基づいて、該インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値を、指令回転数ω0と実回転数ωとの偏差が小さくなるよう、かつインバータ回路3の出力電流の周波数が変動周波数fに固定されないよう制御するインバータ制御部4aとを備えたので、ブラシレスモータ2へ供給する電流と、電圧源出力電圧の変動周波数成分とによるビート現象が発生して不快な音や振動が発生するのを回避することができ、安定したブラシレスモータ2の駆動制御を実現することができる。
なお、上記実施の形態2では、上記ドライブ信号生成部6aは、インバータ回路3のドライブ信号Sgのデューティー比を、指令回転数ω0と実回転数ωとの偏差が小さくなるよう、かつインバータ回路3の出力電流の周波数が電圧源出力電圧の変動周波数fに固定されないよう調整するものであるが、上記ドライブ信号生成部6aでのドライブ信号Sgのデューティー比調整は、インバータ回路3の出力電流の周波数が電圧源出力電圧の変動周波数fの6分の1の整数倍に固定されないよう行ってもよい。
この場合、インバータ回路3の出力電流の周波数が、電圧源出力電圧の変動周波数の6分の1の整数倍に保持されることはなく、電圧源出力電圧の変動周波数のn次の高調波に起因してIEC規制値を超えるような高調波電流が発生するのを回避することができる効果が得られる。
以下この効果について簡単に説明する。
3相ブラシレスモータの駆動中に、電圧源の出力電圧の周波数が変動すると、ブラシレスモータ2に供給する電流の周波数の6倍の周波数成分が、電圧源出力電圧の変動周波数のn次の高調波により変調されて、駆動電流に高調波成分が導入されることとなる。この駆動電流に導入された高調波成分は、電圧源出力電圧のm次高調波成分と等しいことから、元から存在する電圧源出力電圧の変動周波数のm次高調波と重畳されて、IEC規制値を超えるような高調波電流が発生することがある。
上記のように、上記ドライブ信号生成部6aでのドライブ信号Sgのデューティー比調整を、実回転数ω、つまりインバータ回路3の出力電流の周波数が、電圧源出力電圧の変動周波数fの6分の1の整数倍に固定されないよう行うことにより、駆動電流に、電圧源出力電圧のm次高調波成分と等しい成分が導入されないようにすることができ、これにより、IEC規制値を超えるような高調波電流が発生することを回避することができる。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態3のモータ駆動装置100bは、ブラシレスモータ2を、その回転数が常に変動するよう駆動するものである。その他の構成は、実施の形態1と同一であり、この実施の形態3においても、ブラシレスモータは、実施の形態1と同様、常に、ブラシレスモータに供給される交流電流の周波数に一致した任意の回転数で駆動される。
すなわち、このモータ駆動装置100bは、ブラシレスモータに駆動電圧を供給するインバータ回路3と、該インバータ回路3を制御するインバータ制御部4bとから構成されている。ここで、電圧源1及びインバータ回路3は、上記実施の形態1のモータ駆動装置100のものと同一である。
インバータ制御部4bは、ブラシレスモータ2を使用者が望む回転数で駆動されるよう、インバータ回路3にドライブ信号Sgを供給するものであり、ロータ位置推定部5と、ドライブ信号生成部6bと、指令回転数変換部8とから構成されている。
ロータ位置推定部5は、実施の形態1と同様、ブラシレスモータ2に供給される電流Iからロータ位置を推定するものである。
指令回転数変換部8は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を、該指令回転数ω0を基準値として常に変動する指令回転数ω2に変換するものである。具体的な変換方法には、指令回転数ω0の一定量の増加と一定量の減少を、一定の周期で繰り返し行う方法が考えられる。
ドライブ信号生成部6bは、ロータ位置推定部5により推定されたロータの位相θと、指令回転数変換部8が出力する変換された指令回転数ω2とを入力とし、上記推定位相θに応じた位相及び変換された指令回転数ω2に応じた振幅を有する電圧がインバータ回路3からブラシレスモータ2に印加されるよう、インバータ回路3のドライブ信号Sgであるパルス信号を作成し、インバータ回路3に出力するものである。このとき、インバータ回路3へのパルス信号であるドライブ信号Sgのデューティー比は、上記ロータの推定位相θから導かれる実回転数ωと、変換された指令回転数ω2との偏差が小さくなるように調整される。
次に動作について説明する。
このモータ駆動装置100bでは、実施の形態1のモータ駆動装置100と同様、インバータ回路3にて電圧源1の出力電圧が3相交流電圧に変換され、ブラシレスモータ2が該3相交流電圧により駆動される。
このとき、指令回転数変換部8では、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0が、該指令回転数ω0を基準として常に変動する指令回転数ω2に変換される。ロータ位置推定部5では、インバータ回路3からブラシレスモータ2に供給される電流Iからロータ位置θが推定され、ドライブ信号生成部6bでは、変換された指令回転数ω2と推定されたロータ位置θとに基づいて、インバータ回路3のドライブ信号Sgが生成される。つまり、この実施の形態3では、ドライブ信号Sgのデューティー比が、実回転数ωと変換された指令回転数ω2との大小関係に基づいて、実施の形態1と同様に調整され、これにより、インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値が、該変換された指令回転数ω2と推定位相から得られる実回転数ωとの偏差が小さくなるよう制御される。但しこの実施の形態3では、このドライブ信号Sgのデューティー比調整は、変換された指令回転数ω2の変動周期より短い周期で繰り返し行われる。
このように本実施の形態3では、電圧源1の出力電圧を3相交流電圧に変換してブラシレスモータ2に出力するインバータ回路3と、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を、該指令回転数を基準として常に変動する指令回転数ω2に変換する指令回転数変換部8と、インバータ回路3からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値を、該変換された指令回転数ω2と推定位相から得られる実回転数ωとの偏差が小さくなるよう制御するインバータ制御部4bとを備えたので、ブラシレスモータ2の駆動電流の周波数が常に一定の幅で変動することとなり、ブラシレスモータの駆動電流に電圧源出力電圧の変動周波数のn次高調波成分が重畳されて得られる電流の周波数スペクトルを分散することができる。これにより、ブラシレスモータの運転中にIEC規制値を超えるような高調波電流が発生するのを回避することができ、安定したブラシレスモータ2の駆動制御を実現することができる。
なお、上記実施の形態3では、指令回転数変換部8は、指令回転数ω0の一定量の増加及び減少を一定周期で繰り返し行うものとしているが、該指令回転数変換部8は、指令回転数ω0を変化させる変化量、指令回転数ω0を変化させる周期、あるいは指令回転数ω0を変化させる変化量及び周期の両方を、ランダムに変化させてもよい。
この場合、指令回転数変換部8により指令回転数を変化させることに起因して音や振動が発生するのを回避することができる。
また、上記実施の形態3では、ブラシレスモータの駆動周波数を変化させる変化量、および該駆動周波数を変化させる周期を一定としているが、状況に応じて、駆動周波数を変化させる変化量、あるいは該駆動周波数を変化させる周期を変化させてもよい。
図4は、常に変動する指令回転数ω2の変動パターンを具体的に示している。
指令回転数ω2の変動パターンW1は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、振幅値及び周期が一定である三角波状に変化するものである。
指令回転数ω2の変動パターンW2は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、振幅値が一定ではなく、周期が一定である三角波状に変化するものである。
指令回転数ω2の変動パターンW3は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、振幅値及び周期ともに一定ではない矩形波状に変化するものである。
指令回転数ω2の変動パターンW4は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、正弦波状に変化するものである。
指令回転数ω2の変動パターンW5は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、周期不定な正弦波状に変化するものである。
指令回転数ω2の変動パターンW6は、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を基準として、変換された指令回転数ω2が、基準値近傍ほど変化が小さくなる、単調増加と単調減少の繰り返す波形状に変化するものである。
変換された指令回転数ω2を上記のような変動パターンで変化するものとすることで、ブラシレスモータの駆動周波数を変化させることにより生じる音や振動を抑えつつ、ブラシレスモータ2の動作が安定になるという当初の効果を実現することができる。なお、駆動周波数の変化の仕方は図4に示す6通りのパターンに限るものではない。
さらに、常に変動する指令回転数ω2の変動範囲は、可聴音を発生する振動を防ぐために、可聴域である20Hz以下となるように設定することによって更なる静音化の効果が得られる。また、同様に駆動周波数の変化量も可聴域である20Hz以下の値に設定することによって更なる静音化の効果が得られる。
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態4のモータ駆動装置100cは、単相の交流電圧源9を入力とし、3相交流出力によりブラシレスモータ2を任意の回転数で駆動するものであり、この実施の形態4においても、ブラシレスモータは、常に、ブラシレスモータに供給される交流電流の周波数に一致した任意の回転数で駆動される。
このモータ駆動装置100cは、単相の交流電圧源9から出力される交流電圧を3相交流電圧に変換してブラシレスモータ2に出力するサイクロコンバータ回路50と、該サイクロコンバータ回路50を外部からの回転数指令信号に基づいて制御するサイクロコンバータ制御部60とを有している。
上記サイクロコンバータ回路50は、直列接続の第1及び第2の開閉スイッチ51及び52と、直列接続の第3及び第4の開閉スイッチ53及び54と、直列接続の第5及び第6の開閉スイッチ55及び56とを有している。第1,第3,第5の開閉スイッチ51,53,55の一端は共通接続され、該共通接続点は上記交流電圧源9の一方の出力ノード9aに接続されている。第2,第4,第6の開閉スイッチ52,54,56の一端は共通接続され、該共通接続点は上記交流電圧源9のもう一方の出力ノード9bに接続されている。そして、上記第1及び第2の開閉スイッチ51及び52の接続点50aはサイクロコンバータ回路50の第1の出力ノード、上記第3及び第4の開閉スイッチ53及び54の接続点50bはサイクロコンバータ回路50の第2の出力ノード、上記第5及び第6の開閉スイッチ55及び56の接続点50cはサイクロコンバータ回路50の第3の出力ノードである。上記サイクロコンバータ回路50の第1〜第3の出力ノード50a〜50cはそれぞれ、ブラシレスモータ2の3相入力の各相の入力ノードに接続されている。なお、この実施の形態4では、電圧源と電力変換回路として、単相の交流電圧源とそれに対応したサイクロコンバータ回路を示しているが、電圧源は3相交流電圧源、電力変換回路は該3相交流電圧源に対応したサイクロコンバータ回路であってもよい。
サイクロコンバータ制御部60は、ブラシレスモータ2が、使用者が望む回転数で駆動されるようサイクロコンバータ回路50を制御するものであり、ロータ位置推定部5とドライブ信号生成部6cとから構成されている。
ロータ位置推定部5は、上記実施の形態1と同様、ブラシレスモータに供給される電流Iからロータ位置を推定するものである。
ドライブ信号生成部6cは、ロータ位置推定部5により推定されたロータ位相θと、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0とに基づいて、サイクロコンバータ回路50へのドライブ信号Sgを、該サイクロコンバータ回路50から、上記推定位相θに応じた位相及び指令回転数ω0に応じた振幅を有する電圧がブラシレスモータ2に印加されるよう作成し、該ドライブ信号Sgをサイクロコンバータ回路50に出力する。
このとき、サイクロコンバータ回路50では、ブラシレスモータ2に印加する電圧の振幅値は、推定位相θから導かれる実回転数ωと指令信号が示す指令回転数ω0との偏差が小さくなり、かつ、サイクロコンバータ回路50の出力電流の周波数が特定値に固定されないよう調整される。ここで、上記特定値には、交流電圧源の周波数、駆動するブラシレスモータ2の固有周波数、あるいはブラシレスモータ2が接続されている負荷の固有周波数などが考えられる。
また、サイクロコンバータ回路50の出力電流の周波数が特定値に固定されないよう調整する方法としては、指令回転数ω0として、上記のような回避すべき周波数にある幅を持たせた一定範囲内の周波数を採用しないようにする方法が考えられる。
次に動作について説明する。
このモータ駆動装置100cでは、サイクロコンバータ回路50のドライブ信号Sgがサイクロコンバータ制御部60により作成され、該ドライブ信号Sgがサイクロコンバータ回路50に入力される。すると、該サイクロコンバータ回路50では、各スイッチ51〜56がドライブ信号Sgにより開閉する。これにより、サイクロコンバータ回路50では、単相の交流電圧源9の出力電圧が3相交流電圧に変換され、該3相交流電圧はブラシレスモータ2に出力される。そして、ブラシレスモータ2は該3相交流電圧により駆動される。
以下、サイクロコンバータ制御部60の各部5及び6cの動作について説明する。
ロータ位置推定部5では、サイクロコンバータ回路50がブラシレスモータ2に供給する電流Iからロータの位相が推定される。
ドライブ信号生成部6cでは、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0と、ロータ位置推定部5により推定されたロータ位相θとに基づいて、サイクロコンバータ回路50へのドライブ信号Sgが生成される。ここで、上記指令回転数ω0は、特定回転数にある幅を持たせた一定範囲以外の回転数とされる。また、パルス信号であるドライブ信号Sgのデューティー比は、ロータの推定位相θから導かれる実回転数ωと指令回転数ω0の偏差が小さくなるよう決定され、該決定されたデューティー比に応じた振幅値を有する電圧が、該サイクロコンバータ回路50からブラシレスモータ2に印加される。これにより、サイクロコンバータ回路50の出力電流の周波数は特定値に固定されないこととなる。
なお、上記ドライブ信号生成部6cでドライブ信号を作成する動作は、実施の形態1のドライブ信号生成部6でドライブ信号を作成する動作と同一である。
このように本実施の形態4では、単相交流電圧源9の出力電圧を3相交流電圧に変換してブラシレスモータ2に出力するサイクロコンバータ回路50と、該サイクロコンバータ回路50からブラシレスモータ2に印加される電圧の振幅値を、外部からの指令信号により設定される指令回転数ω0と、推定位相θから導かれる実回転数ωとの偏差が小さくなるよう制御するサイクロコンバータ制御部60とを備え、上記指令回転数ω0を一定範囲内の回転数とならないようにするので、ブラシレスモータ2の動作が不安定となる回転数での駆動を回避することができ、安定したブラシレスモータ2の駆動制御を実現することができる。これにより、サイクロコンバータ回路50の入力側で一定周周波数の電圧変動が生じていても、音や振動が発生したり、モータ駆動電流の高調波成分がサイクロコンバータ回路の入力側に現われたりするのを回避することができる、IEC高調波規制を満足するモータ駆動装置を得ることができる。
なお、本実施の形態4では、サイクロコンバータ制御部60は、実施の形態1のインバータ制御部4と同様、一定範囲内の値を取らない指令回転数ω0と、ブラシレスモータの駆動電流Iから推定されたロータの推定位相θとに基づいて、ブラシレスモータに駆動電圧を供給するサイクロコンバータ回路50を制御するものであるが、サイクロコンバータ制御部60はこれに限るものではない。
例えば、上記サイクロコンバータ制御部60は、実施の形態2のように、交流電圧源1の出力電圧の周波数を検知する周波数検知部を有し、ブラシレスモータの駆動電圧の周波数が、上記検出した交流電圧源の出力電圧の周波数の整数倍、あるいは、該検出した交流電圧源の出力電圧の周波数の1/6の整数倍に固定されないよう、サイクロコンバータ回路を制御するものであってもよい。この場合、実施の形態2と同様、ブラシレスモータ2の駆動電流と電圧源出力電圧の変動周波数成分とによりビート現象が発生して不快な音や振動が発生したり、IEC規制値を超える高調波電流が発生したりするのを回避することができるという効果が得られる。
また、上記サイクロコンバータ制御部60は、実施の形態3のように、外部からの指令信号が示す指令回転数ω0を、該指令回転数ω0を基準値として常に変動する指令周波数ω2に変換する指令回転数変換部8を有し、変換された指令周波数ω2とロータの推定位相θとに基づいて、サイクロコンバータ回路50の出力電圧の振幅値を、該変換された指令周波数ω2と実回転数ωとの偏差が小さくなるよう制御するものであってもよい。
この場合、実施の形態3と同様、ブラシレスモータ2の駆動電流に電圧源出力電圧の変動周波数のn次の高調波成分が重畳されて生ずる電流の周波数スペクトルを分散させて、IEC規制値を超えるような高調波電流が発生することを回避することができる効果が得られる。
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態5のモータ駆動装置100dは、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3の入力側に、ブラシレスモータ2からの回生電流を充電する小容量のコンデンサ15を付加したものであり、該コンデンサ15は上記電圧源1の一方の出力端子1aと他方の出力端子1bとの間に接続されている。
この実施の形態5のモータ駆動装置100dのその他の構成は、実施の形態1のモータ駆動装置100と同一である。
ここで、上記コンデンサ15の容量は、モータ回生電流による装置の損傷が回避される程度の容量にすればよい。例えば、モータ駆動装置が、家庭用の空気調和機に使用される圧縮機のモータを制御するものである場合は、上記コンデンサ15の容量は、1μF〜50μF程度でよい。この値は、ブラシレスモータのインダクタンスの容量、インバータ回路の入力電圧に対して許容される最大変動量、及びブラシレスモータに流す電流の最大値から求められる最小の限界値である。
つまり、ブラシレスモータに最大電流が流れているときに該モータが保持しているエネルギーは、インダクタンスの容量から求められる。そして、そのエネルギーがモータ回生電流としてコンデンサに与えられたときに発生するコンデンサの端子電圧の上昇をどの程度まで許容できるかに基づいて、上記コンデンサの容量が決定される。
次に動作について説明する。
この実施の形態5のモータ駆動装置100dでは、インバータ回路3,インバータ制御部4は、実施の形態1のものと同様に動作するので、以下では、実施の形態1と異なる動作について説明する。
ブラシレスモータ2の停止時やインバータ回路3のスイッチング動作が停止した時には、ブラシレスモータ2に流れている電流がインバータ回路3の入力側に回生される。その回生電流が大きいと、インバータ回路3の入力側電圧が過大電圧となって、モータ駆動装置が損傷する場合が発生する。
この実施の形態5のモータ駆動装置100dでは、図6に示すようにインバータ回路3の入力側にコンデンサ15が付加されているので、ブラシレスモータ2の停止時などには、該モータ2からの回生電流が上記コンデンサ15に充電されることとなり、上記回生電流によるインバータ回路3の入力側電圧の上昇を抑えることができる。
これにより、モータ停止時などに発生するモータ回生電流によりモータ駆動装置が損傷を受けるのを防止することができ、より安全なモータ制御装置を実現することができる。
このように本実施の形態5では、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3を、ブラシレスモータ2からの回生電流を充電するコンデンサ15を有するものとしたので、実施の形態1と同様にブラシレスモータの安定した駆動制御を実現できるだけでなく、ブラシレスモータ2の停止時やインバータ回路3のスイッチング動作が停止した時に発生するインバータ回路の入力電圧の上昇を抑えることができ、インバータ回路の構成素子等の破壊を防ぐことができる。
なお、上記実施の形態5では、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3の入力側にブラシレスモータからの回生電流を充電するコンデンサを付加したものを示したが、このようなコンデンサを付加したモータ駆動装置は、実施の形態1のものに限らず、実施の形態2ないし4のいずれのモータ駆動装置であってもよい。
(実施の形態6)
図7は、本発明の実施の形態6によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態6のモータ駆動装置100eは、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3と、電圧源1との間にインダクタ16を挿入したものであり、該インダクタ16は、電圧源1とインバータ回路3との間に直列に接続されている。
そして、この実施の形態6のモータ駆動装置100eのその他の構成は、実施の形態1のモータ駆動装置100と同一である。
ここで、上記インダクタ16のインダクタンスは、インバータ回路3のスイッチング動作に伴って発生するスイッチング電流ノイズを除去し、電圧源1の出力電流の波形が歪まない程度の値にすればよい。例えば、モータ駆動装置が、家庭用の空気調和機に使用される圧縮機のモータを駆動するものである場合は、インダクタ16のインダクタンスは、0.1mHから1.0mH程度でよい。この値は、インバータ回路3でのキャリア周波数に依存し、キャリア成分の高調波が抑制できるように決定される。
次に動作について説明する。
この実施の形態6のモータ駆動装置100eでは、インバータ回路3及びインバータ制御部4は、実施の形態1のものと同様に動作するので、以下では、実施の形態1と異なる動作について説明する。
電圧源1の出力電流は、インバータ回路3のスイッチング動作の影響を受け、スイッチング電流がノイズとして重畳される。
この実施の形態6のモータ駆動装置100eでは、図7に示すように、電圧源1とインバータ回路3との間に挿入されたインダクタ16により、インバータ回路3で発生したノイズが遮断されることとなって、電圧源1の出力電流に重畳されるスイッチングノイズが低減される。これにより電圧源1の出力電流の波形が歪むのが抑制され、入力電流の力率が改善される。
このように本実施の形態6では、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3の入力と電圧源1との間に、上記インバータ回路3で発生したノイズを遮断するインダクタ16を挿入したので、実施の形態1と同様にブラシレスモータの安定した駆動制御を実現できるだけでなく、電圧源1の出力に重畳されるスイッチングノイズを低減することができ、これにより入力電流の力率を高め、電流波形を改善することができる効果がある。
なお、上記実施の形態6では、実施の形態1のモータ駆動装置100のインバータ回路3と電圧源1との間に、インバータ回路3で発生したノイズを遮断するインダクタ16を挿入したものを示したが、このようなインダクタを有するモータ駆動装置は、実施の形態1のものに限らず、実施の形態2ないし4のいずれのモータ駆動装置であってもよい。
また、上記実施の形態5では、モータ駆動装置は、インバータ回路3の入力側にコンデンサ15を付加したもの、上記実施の形態6では、モータ駆動装置は、インバータ回路3と、電圧源1との間にインダクタ16を挿入したものとしているが、モータ駆動装置は、上記コンデンサとインダクタの両方を備えたものであってもよい。
この場合は、インダクタとコンデンサとからなる直列接続回路が形成されるため、共振現象が発生することがある。この共振周波数は一般的に知られるように1/2π√(LC)であり、インダクタのインダクタンスとコンデンサの容量とで決まる。従って、共振周波数が、電源に対する高調波規制の対象となる周波数よりも高くなるよう、インダクタのインダクタンスとコンデンサの容量とを決定すれば、より発生ノイズの少ないモータ制御装置を提供することができる。
(実施の形態7)
図8は本発明の実施の形態7による空気調和機を説明するブロック図である。
この実施の形態7の空気調和機250は、室内機255及び室外機256を有し、冷暖房を行う空気調和機である。
この空気調和機250は、冷媒を室内機255と室外機256の間で循環させる圧縮機250aと、電圧源1を入力とし、該圧縮機250aのモータを駆動するモータ駆動装置250bとを有している。ここで、電圧源1,圧縮機250aのモータ,及びモータ駆動装置250bはそれぞれ、上記実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2,及びモータ駆動装置100と同一のものである。
また、上記空気調和機250は、冷媒循環経路を形成する四方弁254,絞り装置253,室内側熱交換器251及び室外側熱交換器252を有している。ここで、室内側熱交換器251は上記室内機255を構成しており、絞り装置253,室外側熱交換器252,圧縮機250a,四方弁254及びモータ駆動装置250bは上記室外機256を構成している。
上記室内側熱交換器251は、熱交換の能力を上げるための送風機251aと、該熱交換器251の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ251bとを有している。上記室外側熱交換器252は、熱交換の能力を上げるための送風機252aと、該熱交換器252の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ252bとを有している。
そして、この実施の形態7では、上記室内側熱交換器251と室外側熱交換器252との間の冷媒経路には、圧縮機250a及び四方弁254が配置されている。つまりこの空気調和機250は、冷媒が矢印Aの方向に流れ、室外側熱交換器252を通過した冷媒が圧縮機250aに吸入され、該圧縮機250aから吐出された冷媒が室内側熱交換器251へ供給される状態と、冷媒が矢印Bの方向に流れ、室内側熱交換器251を通過した冷媒が圧縮機250aに吸入され、圧縮機250aから吐出された冷媒が室外側熱交換器252へ供給される状態とが、上記四方弁254により切り替えられるものである。
また、上記絞り装置253は、循環する冷媒の流量を絞る絞り作用と、冷媒の流量を自動調整する弁の作用とをあわせ持つものである。つまり、絞り装置253は、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器から蒸発器へ送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、蒸発器に必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
なお、上記室内側熱交換器251は暖房運転では凝縮器として、冷房運転では蒸発器として動作するものであり、上記室外側熱交換器252は、暖房運転では蒸発器として、冷房運転では凝縮器として動作するものである。凝縮器では、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスは、送り込まれる空気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。これは、冷媒が大気中に熱を放熱して液化することと等しい。また、蒸発器には絞り装置253で低温低圧となった液冷媒が流れ込む。この状態で蒸発器に部屋の空気が送り込まれると、液冷媒は空気から大量の熱を奪って蒸発し、低温低圧のガス冷媒に変化する。蒸発器にて大量の熱を奪われた空気は空調機の吹きだし口から冷風となって放出される。
そして、この空気調和機250では、空気調和機の運転状態、つまり空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいてブラシレスモータの指令回転数が設定され、モータ駆動装置250bは、実施の形態1と同様、該設定された指令回転数に基づいて圧縮機250aのブラシレスモータの回転数を制御する。
次に動作について説明する。
この実施の形態7の空気調和機250では、モータ駆動装置250bから圧縮機250aに駆動電圧が印加されると、冷媒循環経路内で冷媒が循環し、室内機255の熱交換器251及び室外機256の熱交換器252にて熱交換が行われる。つまり、上記空気調和機250では、冷媒の循環閉路に封入された冷媒を圧縮機250aにより循環させることにより、冷媒の循環閉路内に周知のヒートポンプサイクルが形成される。これにより、室内の暖房あるいは冷房が行われる。
例えば、空気調和機250の暖房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁254は、冷媒が矢印Aで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器251は凝縮器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により熱を放出する。これにより室内が暖められる。
逆に、空気調和機250の冷房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁254は、冷媒が矢印Bで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器251は蒸発器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により周辺空気の熱を吸収する。これにより室内が冷やされる。
ここで、空気調和機250では、空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいて指令回転数が決定され、実施の形態1と同様、該指令回転数に基づいて、モータ駆動装置250bにより、圧縮機250aのブラシレスモータの回転数が制御される。これにより、空気調和機250では、快適な冷暖房が行われる。
このように本実施の形態7の空気調和機250では、圧縮機250aの動力源としてブラシレスモータを用い、該ブラシレスモータに供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータを不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータの駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、空気調和機250の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態8)
図9は本発明の実施の形態8による冷蔵庫を説明するブロック図である。
この実施の形態8の冷蔵庫260は、圧縮機260a,モータ駆動装置260b,凝縮器261,冷蔵室蒸発器262,及び絞り装置263から構成されている。
ここで、圧縮機260a,凝縮器261,絞り装置263,及び冷蔵室蒸発器262は、冷媒循環経路を形成するものであり、モータ駆動装置260bは、電圧源1を入力とし、上記圧縮機260aの駆動源であるブラシレスモータを駆動するものである。なお、上記電圧源1、圧縮機260aのブラシレスモータ及びモータ駆動装置260bはそれぞれ、上記実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2及びモータ駆動装置100と同一のものである。
絞り装置263は、上記実施の形態7の空気調和機250の絞り装置253と同様、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器261から送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、冷蔵室蒸発器262に、必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
凝縮器261は、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。該凝縮器261に送り込まれた冷媒ガスは、外気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。
冷蔵室蒸発器262は、低温の冷媒液を蒸発させて冷蔵庫内の冷却を行うものである。この冷蔵室蒸発器262は、熱交換の効率を上げるための送風機262aと、庫内の温度を検出する温度センサ262bとを有している。
そして、この冷蔵庫260では冷蔵庫の運転状態、つまり冷蔵庫に対して設定された目標温度、及び冷蔵庫内の温度に基づいて指令回転数が設定され、モータ駆動装置260bは、実施の形態1と同様、該設定された指令回転数に基づいて、圧縮機260aのブラシレスモータの回転数を制御する。
次に動作について説明する。
この実施の形態8の冷蔵庫260では、モータ駆動装置260bから圧縮機260aのブラシレスモータに駆動電圧が印加されると、圧縮機260aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Cの方向に循環し、凝縮器261及び冷蔵室蒸発器262にて熱交換が行われる。これにより、冷蔵庫内が冷却される。
つまり、凝縮器261で液状となった冷媒は、絞り装置263にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、冷蔵室蒸発器262へ低温の液冷媒が送り込まれると、冷蔵室蒸発器262では、低温の冷媒液が蒸発して、冷蔵庫内の冷却が行われる。このとき、冷蔵室蒸発器262には、送風機262aにより強制的に冷蔵室内の空気が送り込まれており、冷蔵室蒸発器262では、効率よく熱交換が行われる。
また、この実施の形態8の冷蔵庫260では、該冷蔵庫260に対して設定された目標温度及び冷蔵庫内の室温に応じて指令回転数が設定され、該モータ駆動装置260bは、実施の形態1と同様、該設定された指令回転数ω0に基づいて圧縮機260aのブラシレスモータの回転数を制御する。これにより、冷蔵庫260では、冷蔵庫内の温度が目標温度に維持される。
このように本実施の形態8の冷蔵庫260では、圧縮機260aの動力源としてブラシレスモータを用い、該ブラシレスモータに供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータを不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータの駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、冷蔵庫260の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態9)
図10は本発明の実施の形態9による電気洗濯機を説明するブロック図である。
この実施の形態9の電気洗濯機270は、洗濯機外枠271を有し、該洗濯機外枠271内には外槽273が吊り棒272により吊り下げられている。該外槽273内には、回転自在に洗濯兼脱水槽274が配設され、該洗濯兼脱水槽274の底部には、攪拌翼275が回転自在に取り付けられている。
上記洗濯機外枠271内の、外槽273下側のスペースには、洗濯兼脱水槽274及び攪拌翼275を回転させるブラシレスモータ276が配置され、また、洗濯機外枠271には、外部の電圧源1を入力とし、上記ブラシレスモータ276を駆動するモータ駆動装置277が取り付けられている。
ここで、上記電圧源1,ブラシレスモータ276,及びモータ駆動装置277はそれぞれ、実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2,及びモータ駆動装置100と同一の構成を有するものであり、上記モータ駆動装置277には、電気洗濯機270の動作を制御するマイクロコンピュータ(図示せず;以下、マイコンと称す)から、ユーザの操作に応じた指令回転数を示す指令信号が入力される。
次に動作について説明する。
この実施の形態9の電気洗濯機270では、ユーザが所定の操作を行うと、マイコンから、モータ駆動装置277に指令信号が入力され、モータ駆動装置277からブラシレスモータ276に駆動電圧が印加される。すると、ブラシレスモータ276の駆動により、攪拌翼275あるいは洗濯兼脱水槽274が回転して、洗濯兼脱水槽274内の衣服等などの洗濯や脱水が行われる。
このとき、この実施の形態9の電気洗濯機270では、マイコンからの指令信号が示す指令回転数に基づいて、実施の形態1と同様、モータ駆動装置277によりブラシレスモータの回転数が制御される。これにより、電気洗濯機270では、洗濯物の量や汚れに応じた動作が行われる。
このように本実施の形態9の電気洗濯機270では、動力源としてブラシレスモータ276を用い、該ブラシレスモータ276に供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータ276を不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータ276の駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、電気洗濯機270の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態10)
図11は本発明の実施の形態10による送風機を説明するブロック図である。
この実施の形態10の送風機280は、ファン281と、該ファン281を回転駆動するブラシレスモータ282と、電圧源1を入力とし、上記ブラシレスモータ282を駆動するモータ駆動装置283とを有している。
ここで、上記電圧源1,上記ブラシレスモータ282,及びモータ駆動装置283はそれぞれ、実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2及びモータ駆動装置100と同一の構成を有するものであり、上記モータ駆動装置283には、送風機280の動作を制御するマイコンから、ユーザの操作に応じた指令回転数を示す指令信号が入力される。
次に動作について説明する。
この実施の形態10の送風機280では、ユーザが所定の操作を行うと、マイコンから、モータ駆動装置283に指令信号が入力され、モータ駆動装置283からブラシレスモータ282に駆動電圧が印加される。すると、ブラシレスモータ282の駆動によりファン281が回転し、送風が行われる。
このとき、この実施の形態10の送風機280では、マイコンからの指令信号に基づいて、実施の形態1と同様、モータ駆動装置283によりブラシレスモータ282の出力が制御される。これにより、送風機280では、送風量や風の強さの調整が行われる。
このように本実施の形態10の送風機280では、動力源としてブラシレスモータ282を用い、該ブラシレスモータ282に供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータ282を不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータ282の駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、送風機280の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態11)
図12は本発明の実施の形態11による電気掃除機を説明するブロック図である。
この実施の形態11の電気掃除機290は、底面に吸引口が形成された床用吸込具297と、空気を吸引する掃除機本体290aと、一端が床用吸込具297に、その他端が掃除機本体に接続された吸塵ホース296とを有している。
上記掃除機本体290aは、前面の一部に吸塵ホース296の他端が開口した集塵室295と、該集塵室295の背面側に配置された電動送風機291とから構成されている。
電動送風機291は、該集塵室295の背面に対向するよう配置されたファン292と、該ファンを回転させるブラシレスモータ293と、電圧源1を入力とし、該ブラシレスモータ293を駆動するモータ駆動装置294とから構成され、ファン292の回転により上記空気の吸引が行われるよう送風を行うものである。
ここで、上記電圧源1,ブラシレスモータ293,及びモータ駆動装置294はそれぞれ、実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2,及びモータ駆動装置100と同一のものであり、上記モータ駆動装置294には、電気掃除機290の動作を制御するマイコンから、ユーザの操作に応じた指令回転数を示す指令信号が入力される。
次に動作について説明する。
この実施の形態11の電気掃除機290では、ユーザが所定の操作を行うと、マイコンから、モータ駆動装置294に指令信号が入力され、モータ駆動装置294からブラシレスモータ293に駆動電圧が印加される。すると、ブラシレスモータ293の駆動によりファン292が回転し、掃除機本体290a内で吸引力が発生する。この掃除機本体290aで発生した吸引力はホース296を介して床用吸込具297の底面に設けた吸引口(図示せず)に作用し、床用吸込具297の吸引口から被掃除面の塵埃が吸引され、掃除機本体290aの集塵室295に集塵される。
このとき、この実施の形態11の電気掃除機290では、マイコンからの指令信号に基づいて、実施の形態1と同様、モータ駆動装置294によりブラシレスモータ293の回転数が制御される。これにより、電気掃除機290では、吸引力の強さの調整が行われる。
このように本実施の形態11の電気掃除機290では、動力源としてブラシレスモータ293を用い、該ブラシレスモータ293に供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータを不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータの駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、電気掃除機290の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態12)
図13は本発明の実施の形態12による電気乾燥機を説明するブロック図である。
この実施の形態12の電気乾燥機360は、圧縮機360a,モータ駆動装置360b,凝縮器361,蒸発器362,及び絞り装置363から構成されている。
ここで、圧縮機360a,凝縮器361,絞り装置363,及び蒸発器362は、冷媒循環経路を形成するものであり、モータ駆動装置360bは、電圧源1を入力とし、上記圧縮機360aの駆動源であるブラシレスモータを駆動するものである。なお、上記電圧源1、圧縮機360aのブラシレスモータ及びモータ駆動装置360bはそれぞれ、上記実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2及びモータ駆動装置100と同一のものである。
絞り装置363は、上記実施の形態7の空気調和機250の絞り装置253と同様、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器361から送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、蒸発器362に、必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
凝縮器361は、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。該凝縮器361に送り込まれた冷媒ガスは、外気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。
蒸発器362は、低温の冷媒液を蒸発させて乾燥機内の除湿を行うものである。この蒸発器362は、除湿の効率を上げるための送風機362aと、室内の温度を検出する温度センサ362bとを有している。
そして、この電気乾燥機360では電気乾燥機の運転状態、つまり電気乾燥機に対して設定された除湿度、及び乾燥機内の湿度に基づいて指令回転数が設定され、モータ駆動装置360bは、実施の形態1と同様、該設定された指令回転数に基づいて、圧縮機360aのブラシレスモータの回転数を制御する。
次に動作について説明する。
この実施の形態12の電気乾燥機360では、モータ駆動装置360bから圧縮機360aのブラシレスモータに駆動電圧が印加されると、圧縮機360aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Eの方向に循環し、凝縮器361及び蒸発器362にて熱交換が行われる。これにより、乾燥機内の除湿が行われる。
つまり、凝縮器361で液状となった冷媒は、絞り装置363にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、蒸発器362へ低温の液冷媒が送り込まれると、蒸発器362では、低温の冷媒液が蒸発して、乾燥機内の除湿が行われる。具体的には、乾燥機内の湿り空気がその露点温度以下まで冷却され、水分が凝縮水として除去された空気が再加熱(再熱)される。このとき、蒸発器362には、送風機362aにより強制的に室内の空気が送り込まれており、蒸発器362では、効率よく熱交換が行われて除湿される。
また、この実施の形態12の電気乾燥機360では、該電気乾燥機360に対して設定された除湿度及び乾燥機内の湿度に応じて指令回転数が設定され、該モータ駆動装置360bは、実施の形態1と同様、該設定された指令回転数ω0に基づいて圧縮機360aのブラシレスモータの回転数を制御する。これにより、電気乾燥機360では、乾燥機内の湿度が目標湿度に維持される。
このように本実施の形態12の電気乾燥機360では、圧縮機360aの動力源としてブラシレスモータを用い、該ブラシレスモータに供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータを不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータの駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、電気乾燥機360の安定な運転を実現することができる。
(実施の形態13)
図14は本発明の実施の形態13によるヒートポンプ給湯器を説明するブロック図である。
この実施の形態13のヒートポンプ給湯器380は、供給された水を加熱して温水を排出する冷凍サイクル装置381aと、冷凍サイクル装置381aから排出された温水を貯める貯湯槽381bと、これらを連結する水配管386a,386b,387a,及び387bとを有している。
上記冷凍サイクル装置381aは、冷媒循環経路を形成する圧縮機380a,空気熱交換器382,絞り装置383,及び水熱交換器385を有するとともに、電圧源1を入力とし、該圧縮機380aのモータを駆動するモータ駆動装置380bを有している。
ここで、上記電圧源1,圧縮機380aのブラシレスモータ,及びモータ駆動装置380bは、それぞれ実施の形態1の電圧源1,ブラシレスモータ2,及びモータ駆動装置100と同一のものである。
絞り装置383は、上記実施の形態7の空気調和機250の絞り装置253と同様、水熱交換器385から空気熱交換器382へ送り出された液冷媒の流量を絞って、該液冷媒を膨張させるものである。
水熱交換器385は、冷凍サイクル装置381aに供給された水を加熱する凝縮器であり、加熱された水の温度を検出する温度センサ385aを有している。空気熱交換器382は、周辺雰囲気から熱を吸収する蒸発器であり、熱交換の能力を上げるための送風機382aと、該周辺温度を検出する温度センサ382bとを有している。
なお、図中、384は、上記冷媒を、圧縮機380a,水熱交換器385,絞り装置383,及び空気熱交換器382により形成される冷媒循環経路に沿って循環させる冷媒配管である。該冷媒配管384には、圧縮機380aから吐出された冷媒を、水熱交換器385及び絞り装置383をバイパスして空気熱交換器382に供給する除霜バイパス管384aが接続されており、該バイパス管384aの一部には除霜バイパス弁384bが設けられている。
上記貯湯槽381bは、水あるいは温水を貯める貯湯タンク388を有している。該貯湯タンク388の受水口388c1には、該貯湯タンク388内へ水を外部から供給する給水配管388cが接続され、上記貯湯タンク388の湯出口388d1には、該貯湯タンク388から浴槽へ湯を供給する浴槽給湯管388dが接続されている。また、上記貯湯タンク388の水出入口388aには、該タンク388に貯められた湯を外部に供給する給湯管389が接続されている。
上記貯湯タンク388と冷凍サイクル装置381aの水熱交換器385とは、水配管386a,386b,387a,及び387bにより接続されており、貯湯タンク388と水熱交換器385との間には水の循環路が形成されている。
ここで、水配管386bは、水を貯湯タンク388から水熱交換器385へ供給する配管であり、その一端は、貯湯タンク388の水出口388bに接続され、その他端は、ジョイント部分387b1を介して、水熱交換器385の入水側配管387bに接続されている。また、この水配管386bの一端側には、貯湯タンク388内の水あるいは温水を排出するための排水弁388b1が取り付けられている。上記水配管386aは、水を水熱交換器385から貯湯タンク388へ戻す配管であり、その一端は、貯湯タンク388の水出入口388aに接続され、その他端は、ジョイント部分387a1を介して水熱交換器385の排出側配管387aに接続されている。
そして、水熱交換器385の入水側配管387bの一部には、上記水循環路内で水を循環させるポンプ387が設けられている。
さらに、この給湯器380では、給湯器の運転状態、つまり給湯器に対して設定された温水の目標温度、貯湯層381bから冷凍サイクル装置381aの水熱交換器385aに供給される水の温度、及び外気温に基づいて、ブラシレスモータの指令回転数が決定され、モータ駆動装置380bは、指令回転数に基づいて圧縮機380aのブラシレスモータに要求されるモータ出力を決定する。
次に動作について説明する。
圧縮機380aのブラシレスモータにモータ駆動装置380bから駆動電圧が印加され、圧縮機380aが駆動すると、圧縮機380aにより圧縮された高温冷媒は、矢印Eが示す方向に循環し、つまり冷媒配管384を通り、水熱交換器385に供給される。また、水循環路のポンプ387が駆動すると、貯湯タンク388から水が水熱交換器385に供給される。
すると、水熱交換器385では、冷媒と貯湯タンク388から供給された水との間で熱交換が行われ、熱が冷媒から水へ移動する。つまり供給された水が加熱され、加熱された水は、貯湯タンク388へ供給される。このとき、加熱された水の温度は凝縮温度センサ385aにて監視されている。
また、水熱交換器385では、冷媒は上記熱交換により凝縮し、凝縮した液冷媒は、その流量が絞り装置383により絞られることにより膨張し、空気熱交換器382に送り込まれる。この給湯器380では、該空気熱交換器382は、蒸発器として働く。つまり、該空気熱交換器382は、送風機382bにより送り込まれた外気から熱を吸収し、低温の冷媒液を蒸発させる。このとき、上記空気熱交換器382の周辺雰囲気の温度は温度センサ382bにより監視されている。
また、冷凍サイクル装置381aでは、空気熱交換器382に霜がついた場合は、除霜バイパス弁384bが開き、高温の冷媒が除霜バイパス管384aを介して空気熱交換器382に供給される。これにより空気熱交換器382の除霜が行われる。
一方、貯湯槽381bには、冷凍サイクル装置381aの水熱交換器385から温水が配管387a及び386aを介して供給され、供給された温水が貯湯タンク388に貯められる。貯湯タンク388内の温水は、必要に応じて、給湯管389を通して外部に供給される。特に、浴槽へ給湯する場合は、貯湯タンク内の温水は浴槽用給湯管388dを通して浴槽に供給される。
また、貯湯タンク388内の水あるいは温水の貯蓄量が一定量以下となった場合には、外部から給水管388cを介して水が補給される。
そして、この実施の形態13の給湯器380では、モータ駆動装置380bにより、該給湯器380に対して設定された温水の目標温度、水熱交換器385に供給される水の温度、及び外気温に基づいてブラシレスモータの指令回転数が決定され、実施の形態1と同様、該指令回転数に基づいて、モータ駆動装置380bにより圧縮機380aのブラシレスモータの回転数が制御される。これにより、給湯器380では、目標温度の温水の供給が行われる。
このように本実施の形態13のヒートポンプ給湯器380では、圧縮機380aの動力源としてブラシレスモータを用い、該ブラシレスモータに供給する駆動電圧の振幅値を、実施の形態1と同様、ブラシレスモータの指令回転数とその実回転数との偏差が小さくなり、かつブラシレスモータに供給する駆動電流の周波数が一定範囲内の値とならないよう調整するので、入力側の交流電源の変動周波数に対してブラシレスモータの駆動周波数が調整されることとなり、ブラシレスモータを不安定とする回転数での動作を回避するとともに、ブラシレスモータの駆動電流によって入力電源側に現れる高調波成分を低減することができる。これにより、安定したブラシレスモータの駆動を、さらには、IEC高調波規制を満足する、ヒートポンプ給湯器380の安定な運転を実現することができる。
なお、上記実施の形態7から13では、動力源であるブラシレスモータを駆動するモータ駆動装置は、実施の形態1のモータ駆動装置と同一のものとしているが、実施の形態7ないし13の機器のモータ駆動装置は、実施の形態2ないし6のいずれかのモータ駆動装置と同一のものであってもよい。
また、上記実施の形態7〜13では、本発明のモータ駆動装置を用いた電気機器として、空気調和機、冷蔵室蒸発器、電気洗濯機、送風機、電気掃除機、電気乾燥機、及びヒートポンプ給湯器を挙げたが、本発明のモータ駆動装置は、上記実施の形態7〜13のものに限らず、ブラシレスモータを動力源とする、IEC規制の対象となる電気機器であればどのような電気機器であっても適用可能である。