JP4674882B2 - 車両懸架システム用の受動的ライド制御 - Google Patents
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Description
本発明は、一般的に車両懸架システムに関し、特に改良された受動的ライド制御を組み入れた車両懸架システムに関する。
【0002】
自動車両における改良されたライド(乗り心地)制御に対する要望は、「能動的」車両懸架システムの開発を招来している。そのようなシステムは、車両の種々のライド特性を検知するために、電子制御ユニット(ECU)に信号を与えるセンサを典型的に使用する。このセンサは、車両およびその車輪の過剰なロール、ピッチ、4輪バウンスおよびワープ運動を検知する。ECUは、車両懸架システム内で作用している異なるアクチュエータに対する流体ポンプからの高圧力流体の供給を制御することによって、あるいはアクチュエータから流体貯蔵部への高圧力流体の戻りを制御することによって、この運動を能動的に補償することを探求する。(交差車軸節動としても知られる懸架システムのワープモードは、車両車体に関して、一方の対角線上に配置された対の車輪が一緒に、他方の対角線上に配置された対の車輪とは逆向きに、垂直方向に移動するものとして定義される)。上述したライド特性を全て制御しようとする能動的懸架システムは、非常に高価でしかも複雑であるので、商業的に存立可能であることが証明されていない。それ故、車両の過剰なロール運動を能動的に制御することだけを探求する単純な能動的システムもまた、開発されている。同様に、適用ダンピングシステムは、ポンプを必要とすることなく、各車輪でのダンピング率を変化させることによって、ロール、ピッチ、および車体全体のバウンスのような車両の運動に影響を与えることに使用できるので、普及し始めている。
【0003】
しかしながら、全ての既知の能動的懸架システムは、豪華な車両を除けば、そのようなシステムの商業的な受け入れを妨げる多くの問題を有している。そのようなシステムに必要とされる部品の数は、既存の自動車両ではそのようなシステムで利用可能な空間が制限されているので、パッケージングの困難さを招来する。能動的懸架システムの複雑さと、そのシステムのある部品に加わる高いストレスは、進行中の信頼性問題を招来する。さらに、能動的システムは、多数の部品を典型的に必要とする。その中のいくつかは、高い機械的ストレスを扱うことができる特別に製造された部品であり、高い製造コストにつながる。また、高価な高圧力および高速部品がそのようなシステムで典型的に使用され、その結果、通常の懸架システムと比べたときに、能動的システムの方が相対的に高い製造および運用コストとなる。能動的システムのもう1つの欠点は、そのようなシステムの製造実行可能なバージョンに概ね関連した粗悪な応答時間である。このシステム内の流体の流れを制御するために、一般に弁が使用される。流体の流れを可能にしたり、阻止したりするために弁が駆動される前に、常に遅延が存在する。この遅延は、このシステムを制御するアルゴリズムが不十分に規定された場合に引き起こされる他の遅延と共に、能動的懸架システムにとって受け入れできない粗悪な応答時間へと導く。能動的ロール制御システムは、例えば迅速なスラローム試験を受けたときに、典型的に余りにも遅く応答する。この制御システムは、慣性の大きな変化の元で十分な制御を提供することが不可能である。
【0004】
本出願人は、車両の乗り心地に実質的な改良を与える一方で、能動的懸架システムに関連した問題の少なくともいくつかを回避することを探求した多数の異なる車両システムを開発してきた。これらのシステムは、「受動的」であって、動作する上で、センサ、ECUまたは流体ポンプを必要としない。このようなシステムは、オーストラリア特許670034号、694762号、671592号および699388号並びに国際出願PCT/AU97/00870号に記載されており、その詳細は参照によりここに組み入れられる。しかしながら、これらのシステムは、一般に高圧力流体を扱うことに適用される部品に頼っている。
【0005】
車両懸架システムのダンピング機能を改良するために、適用ダンピングシステムが特に開発されている。これらダンピングシステムは、前述したシステムで必要とされるものと比較したときに、比較的低圧の部品だけを必要とするが、実質的にロール剛性を与えない。このダンピングシステムは、一般に電気的に可変または切換可能なオリフィスとプリロードを有する。これらは、単一の設定を全ての条件に適合させる妥協を回避するために、予め規定された条件の範囲内で、より適切なダンパー力を与えるように制御される。
【0006】
米国特許第5486018号および5584498号(ヤマハ)には、相互接続されたダンパーシステムが記載されている。このシステムでは、少なくとも一対の横または縦方向に隣接したダンパー(一般にショックアブソーバとして知られる)のトップチャンバが導管によって接続されている。多数の構成が開示されていて、ある範囲のダンピング効果を提供している。しかしながら、懸架用ロール剛性を与えるように設計された構成はない。
【0007】
米国特許第4606551号(Alfa)には、それぞれが上側および下側チャンバを有する複数のダンパーを備えた構成が記載されている。少なくとも一対の横または縦方向に隣接したダンパーは、一方のダンパーの上側チャンバを他方のダンパーの下側チャンバにそれぞれ接続する導管によって接続されている。多数のダンパー弁が導管を接続するために設けられ、種々のダンピング効果を与えている。電子的制御は必要でなく、またこの構成が懸架用ロール剛性を与えることができる必要もない。
【0008】
上述した適用および相互接続ダンピングシステムのそれぞれは、従来のダンパー構成よりも改良されたダンピング機能を与えるものではあるが、それらは、車両の他のライド特性を与えないか、あるいは最小の制御を与えるだけである。例えば、上述した適用または相互接続ダンピングシステムのいずれもが、ロールダンピングだけであって、車両用にある程度のロール制御を可能にするロール剛性を有しないので、車両用のロール支持を与えない。これらのシステムは、それ故、車両用のロール制御を提供することに使用することができない。
【0009】
従って、本発明の1つの目的は、従来のシステムに関連した問題点の少なくとも1つを回避する一方で、改良されたライド特性を車両用に達成するダンピングおよびロール制御システムを提供することである。
【0010】
この点を心に留めて、本発明の目的は、車両懸架システム用のダンピングおよびロール制御システムを提供することにあり。前記車両は、少なくとも一対の横方向に離れて配置された前輪アセンブリと、少なくとも一対の横方向に離れて配置された後輪アセンブリとを有し、各車輪アセンブリは、1つの車輪と、前記車両の車体に対して概ね垂直方向への前記車輪の移動を可能にするように前記車輪を配置する車輪マウントと、前記車両用の支持の少なくとも実質的な主要部になる車両支持手段とを有するものであって;前記ロール制御システムは、以下のものを含む:
【0011】
各車輪マウントと前記車両の車体との間にそれぞれ配置可能な車輪シリンダであって、前記車輪シリンダ内に支持されたピストンによって第1及び第2のチャンバに分離される内部容量を有する車輪シリンダ;
【0012】
それぞれが流体導管により前記車輪シリンダの間に流体を連通させる第1と第2の流体回路であって、各前記流体回路は、前記車両の一方の側における車輪シリンダの第1のチャンバと前記車両の他方の側における車輪シリンダの第2のチャンバとの間に流体連通を与え、これにより、水平ロール姿勢の回りにロール剛性を与えると同時に実質的にゼロのワープ剛性を与えることによって、車両懸架システムのワープモードから切り離されたロール支持を与えるもの;
【0013】
ロール剛性を与える一つまたは複数の流体アキュムレータを含む各流体回路;
【0014】
各車輪シリンダの少なくとも一つのチャンバへ出入する流体フローレートを制御するダンパー手段;および
【0015】
前記第1と第2の流体回路の間に流体を選択的に連通させる選択手段;
【0016】
前記車両懸架システムのダンピングの実質的にすべてを行う前記ダンピングおよびロール制御システム。
【0017】
本発明のある実施例では、前記車両支持手段は、前記車両用の支持を実質的にすべて行うことができる。
【0018】
したがって、前記ダンピングおよびロール制御システムは、車両サスペンションの緩衝を行い、対応するワープ剛性を招来せずにロール剛性を与えるものである。
【0019】
一つの好ましい実施例においては、各流体回路は、前記車両の一方の側における車輪シリンダの第1のチャンバ相互間に流体連通を与える第1の流体導管;および前記車両の他方の側における車輪シリンダの第2のチャンバ相互間に流体連通を与える第2の流体導管を含み:前記第1及び第2の流体導管は、流体連通している。
【0020】
もう1つの好ましい実施例によると、各流体回路は、前記車両の一方の側における1つの車輪シリンダの第1のチャンバと前記車両の他方の側において対角方向に対向する車輪シリンダの第2のチャンバとの間に、それぞれが流体連通を提供する第1及び第2の対角流体導管を備え、対角方向に対向する一対の車輪シリンダ間の第1の対角流体導管は、対角方向に対向する他の一対の車輪シリンダ間の第2の対角流体導管と流体連通している。
【0021】
異なる他の1つの好ましい実施例によると、各流体回路は、前記前輪アセンブリの車輪シリンダ相互間に流体連通を与える前方流体導管と、前記後輪アセンブリの車輪シリンダ相互間に流体連通を与える後方流体導管とを備え、前記前方および後方導管は、前記車両の一方の側における車輪シリンダの第1のチャンバと前記車両の他方の側における車輪シリンダの第2のチャンバとの間に流体連通を与え、前記前方および後方導管は、流体連通している。
【0022】
他の接続構成もまた予測されることが認められるべきである。同じ原理が4を越える車輪の車両にも適用されうることもまた認められるべきである。例えば、このシステムを6輪の車両に適用するために、追加された左側の車輪シリンダでは、その第1のチャンバは、他の2つの左側の車輪シリンダの第1のチャンバを接続している導管に接続され、またその第2のチャンバは、他の2つの左側の車輪シリンダの第2のチャンバを接続している導管に接続されている。他のシリンダの車両の右側への接続は、第1のチャンバを一緒に、また第2のチャンバを一緒にして、同様に連通させる。
【0023】
前記ダンパー手段は、前記車輪シリンダ上に、又はその中に、導管中に、および/またはマニホルドブロック中に配置される。このマニホルドブロックは、車両の中心に配置され、第1及び第2の導管の間に必要な流体連通を与えて、第1及び第2の流体回路を形成する。前記ダンパー手段は、双方向性のダンパー弁である(例えば、制御された双方向の流れ制限を与える)。ここでは、各車輪シリンダは、第1または第2のチャンバの一方に対して1つのダンパー弁だけを必要とする。この場合、ダンパー弁が、要求されたものと同じ率で流体を供給していない場合は、関連したチャンバは、真空引きを試みる。このことは、流体の気体混和とシステムによるライド制御の潜在的損失につながる。この影響を避けるために、単方向性のダンパー弁を使用し、車輪シリンダのチャンバが流体を排出するときにダンパー弁を通してだけ作用することを確実にし、これによりシリンダチャンバ内での流体の気体混和を防ぐ。この代わりに、前記単方向性のダンパー弁を、逆止め弁と並列に使用することもできる。この代わりに、信頼性のある小型なダンパー弁手段で大きなダンピング力を与えるために、横方向に離れて配置された少なくとも一対の車輪シリンダの第1および第2のチャンバのそれぞれに対して双方向性のダンパー弁を設けることもできる。
【0024】
各流体回路は、各回路の流体容積の変化を許容して、これによりロール弾性を与えるための第1の流体アキュムレータを含む。また、第1及び第2のチャンバ間で有効ピストン面積を異ならせた車輪シリンダが使用される場合(例えば、通常のダンパーシリンダアセンブリのように、一端だけからロッドが延びているピストン)、アキュムレータは、サスペンションのバウンス運動中のロッド容積変化をシステム内で収容可能である必要がある。この場合、ロール中に、アキュムレータは、それがバウンス中に吸収するものより大きな、車輪シリンダの単位変位当たりの流体容積の変化を吸収する。これは、第1のチャンバ側の有効面積と第2のチャンバ側の有効面積の双方が、ロール制御システムのロール運動に対してバウンス運動に対するよりも高い剛性を与えるアキュムレータ中に、流体を移動させるように働いているためである。
【0025】
各流体回路は、ロール弾性を増加するために、少なくとも1つの第2の流体アキュムレータを有することができる。各第2の流体アキュムレータとそれぞれの流体回路との間に、ロール弾性切換弁を配置することができる。車両が直線走行しているときに、この弁は開放状態に保たれて、追加のロール弾性を与えるために、第2のアキュムレータを関連する流体回路と連通させ、これにより乗り心地の快適さを更に改良することを可能にする。車両の旋回が検出されると、ロール弾性切換弁は、コーナリング中のロール剛性に所望の増加を与えるために、閉成される。車両のコーナリングの検出は、ステアリングの変化率、ステアリング角度、横向き加速度および車両速度のような条件に対する入力を使用して、如何なる既知の手法によっても行うことができる。これらのセンサのいずれか又は全ておよび/または引用されていない他のセンサを使用することができる。
【0026】
アキュムレータは、気体または機械的バネ仕掛けのピストン式またはダイアフラム式であり、いずれかまたは双方は、ロッドのシールを通して、また嵌合部からリークによってシステムから失われた流体を補充することによって、システムの保守時間を増加できる利点がある。いかなる流体損失も最小化されるべきであり、それ故システムの動作圧力にかかる影響は無視される。
【0027】
各流体回路内の前記アキュムレータの少なくとも1つは、前記アキュムレータへ出入りする流体のフローレートを制御するためのダンパー手段を備えることができる。(前述したように)バウンスと比較してロール時のアキュムレータへ出入りする流体の高いフローレートに起因して、ロール時のアキュムレータダンパーの効果は、バウンス時よりも大きく、所望の高いロールダンピングをバウンスダンピング比に与える。アキュムレータが減衰されない場合は、ロールダンピングは、通常のダンパーを使用する場合のように、バウンスダンピングによって決定される。
【0028】
アキュムレータのダンピングは、単一車輪入力がアキュムレータダンパーによって大きく減衰されるので、単一車輪入力の粗さに対して有害な影響を有する。直線走行時の快適さを増加するために、アキュムレータダンパー弁の回りにバイパス通路を設け、少なくとも1つのアキュムレータ用のダンパーを流体がバイパスできるようにすることが有利である。このバイパス通路は、この通路を開閉するための弁を有する。旋回中にこの弁は閉成位置にあり、アキュムレータダンパー弁に高いロールダンピングを与える。直線走行時には、この弁は開放され、システムのロールおよび単一車輪入力ダンピング力を減少させる。
【0029】
前記ロール制御システムは、車輪のリバウンド運動時(車輪が車体から落下する)に、前記アキュムレータが機能し、流体を供給することができるようにするための圧力プリチャージを有することができる。このプリチャージは、好ましくは、標準空荷ライド高の車両のロール制御システムに対して約20バールである。
【0030】
ピストンの一端から一方のチャンバだけを通して突出したロッドを有する車輪シリンダ設計を使用することが好ましいこともある。これは、単純で安価なシリンダ設計を可能にするが、第1及び第2のチャンバの不均等な有効ピストン面積に作用するどのようなシステムプリチャージ圧力も、ネットのシリンダ力を生ずる。この力は、ある程度の車体の支持を与えるが、ロール制御システムによって支持される車両負荷の比率は、通常は非常に小さく、また従来のプリチャージ式ダンパーシリンダアセンブリによって与えられる支持の度合いと同様である。正確な量は、シリンダロッドおよび孔の寸法、システムプリチャージ圧力、およびシリンダ対車輪ハブレバー比によって決定される。
【0031】
例えば、車輪が車体に対して上方へ移動して、各車輪の第1のチャンバが圧縮され、また第1のチャンバ側のピストンの有効面積が第2のチャンバ側のピストンの有効面積よりも広い場合、これによって、ある程度の車体の支持が与えられる。
【0032】
非線形機能のアキュムレータ(即ち、圧縮時に増加された剛性を有し、またリバウンド時に減少された剛性を有する水気圧併用式アキュムレータ)が使用される場合、そしてロール制御システムがある程度の車両支持を与え(上記で概略説明したように)、さらに横向き加速度に起因して車両がロールする場合、アキュムレータ中の流体の合計体積は全般的に減少して、ロール制御システム中の流体体積を増加させ、そして車両の高さを全般的に増加させる(「ロールジャッキング」として知られる)。ロール制御システムによって与えられる車両支持の度合いは、ロールジャッキングの度合いに影響する。
【0033】
ロールジャッキング効果の反対物を生成して、車両の平均高さがコーナリング中に低くされるようにすることが望ましい。この効果は、車輪が車体に対して上方へ移動して、各車輪シリンダの第1のチャンバが圧縮されている場合に生成される。このとき、第2のチャンバ側のピストンの有効面積は、第1のチャンバ側のピストンの有効面積よりも広く、これにより、ある程度の追加の負荷を車両支持手段に与え、車両を地面に向けて押し下げようとする。
【0034】
好ましくは、車両支持を与える安価なシリンダ設計による(上述した)単純な構成が使用される。第1のアキュムレータ中の弾性手段は、1以上の機械的スプリングを有し、この結果、通常の静止位置から圧縮方向へのスプリング率は、通常の静止位置からリバウンド方向へのスプリング率よりも低くなり、これにより、従来の水気併用式アキュムレータとは逆の効果を与え、そしてコーナリング中の車両の平均高さを低くする。追加的または代替的に、アキュムレータのリバウンドダンピング率を、圧縮ダンピング率よりも高くして、初期コーナリング(ターンイン)中のステアリング入力に対して、同様の車両低下効果と良好な応答を与えることができる。実際には、逆止め弁が圧縮方向に未制限の流れを許容しながら、リバウンドダンピングだけがアキュムレータに対して与えられることもある。
【0035】
理想的には、前記ロール制御システムは、車両の垂直支持を与えるべきではない。従って、本発明のもう1つの好ましい代替構成では、各シリンダの第1及び第2のチャンバの有効ピストン面積は等しく、これにより、ロール制御システムは、実質的にゼロの車両負荷を支持する。ロール制御システムによって与えられる車両支持負荷の量は、車輪シリンダを使用して、システムに固有のロールジャッキングの量を制御する主要因の1つである。この車輪シリンダは、第1及び第2のチャンバの有効ピストン面積が等しく、それ故に車両支持を与えないが、ロール制御システムにゼロのロールジャッキングを与えるものである。
【0036】
しかしながら、いくつかの応用では、その両端から延びたピストンロッドを有するシリンダの使用は、上方に延びるピストンロッド用にクリアランスを与える必要性の故に、パッケージングの困難さにつながる。従って、もう1つの好ましい構成によると、ピストンロッドは、ピストンの一端から延びる。このピストンロッドは、ダンピング及びロール制御システムによって与えられる車両支持を最小化することが物理的に可能な限り小さな直径である。もう1つの可能な構成では、ピストンの一端から中空ピストンロッドが延び、そして内部ロッドが、前記車輪シリンダの内部容量内に支持される。内部ロッドは、前記中空のピストンロッド内に少なくとも部分的に収容され、中空ピストンロッドは、ピストンと共に、内部ロッドに対して移動する。この構成は、対向するピストン面の面積差を最小化し、ダンピング及びロール制御システムによって与えられる車両支持を最小化することに使用できる。
【0037】
好ましい代替構成によると、車輪シリンダの中空ピストンロッド構成は、車両用の垂直支持機能を提供することにも適用できる。車輪シリンダ中に支持されたピストンは、上側および下側チャンバを提供することができる。内部ロッドは、中空ピストンロッド中に支持されたときに、ロッドチャンバを規定する。このロッドチャンバは、ロール制御システムの流体回路の一部として使用することができる。従って、内部ロッドの周辺端部の面積は、下側チャンバに面するピストンの面積と、少なくとも実質的に同一である。この代わりに、ロッドチャンバ面積よりも大きな下側チャンバ面積を使用して、水気併用式アキュムレータが使用されるシステムでは、ロール運動を増加しながら、ロール時の車両を低くできることが好ましい。
【0038】
上側チャンバは、車両用の弾性支持を与えるためのバウンスチャンバを与えるようにシールされ得る。ロッドチャンバは、孔が形成され、そして、下側チャンバと共に、ロール制御システムの流体回路のそれぞれの部分を形成する。
【0039】
ロール制御システムに対するロール運動分布は、前輪シリンダの有効ピストン面積と後輪シリンダの有効ピストン面積との比によって決定される点が明記されるべきである。理想的には、殆どの応用において、各車輪シリンダは、第1のチャンバ側と第2のチャンバ側の間に、一定の有効ピストン面積比を有すべきである。
【0040】
ピストンロッドがピストンの1面からだけ延びているシリンダを使用する1つの利点は、シリンダによって与えられる支持の度合いが、車両の支持高さを変更することによって、変化される点である。車両が低くされると、ロール制御システムよって与えられる支持が増加して、より高いロール剛性へと導く。これは、ロール制御システムに導入されたピストンロッドの増加された体積の影響である。
【0041】
少なくとも一対の横方向に離れて配置された車輪アセンブリに対する支持手段は、各車輪アセンブリに対して独立した第1の支持手段を有し、これにより、懸架システムにロール剛性を追加することに貢献することができる。車両支持手段とロール制御システムの双方は、一緒になって、この構成における車両に対してロール剛性を与えることができる。
【0042】
追加的または代替的に、少なくとも一対の横方向に離れて配置された車輪アセンブリに対する支持手段は、各車輪間が相互接続された第2の支持手段を有し、これにより、懸架システムに対し実質的にゼロのロール剛性を与えることに貢献することができる。この及び他の、ロール支持をさほどあるいは全く与えることがない車両支持構成と、支持構成の組み合わせは、既に言及された本出願人の国際出願PCT/AU97/00870号に記載されている。そのような構成では、ダンピング及びロール制御システムは、車両用のロール制御の全てを実質的に与えることができる。さらには、支持手段が実質的にゼロのロール剛性を有する場合、ダンピング及びロール制御システムは、車両用のロール制御の全てを実質的に与えることができる。この場合、支持手段またはロール制御システムのいずれかは、有意なワープ剛性を与える。このことは、車両の車輪アセンブリの実質的に自由なワープ運動を可能にし、単一の車輪入力に対する快適な反応を改善し、オフロード状況のような平坦でない地形を通過するときの低速または非動的ワープ運動中に実質的に一定な車輪負荷(従って、改良された牽引性)を与えることを可能にする。
【0043】
本発明によれば、前記第1及び第2の流体回路は、流体がそれらの間を移送され得るように流体連通されている。この目的のためには、少なくとも1つのブリッジ通路が第1及び第2の流体回路を相互接続して、前記の流体連通を提供する。このブリッジ通路は、ブリッジ導管によって与えることができる。この代わりに、このブリッジ通路は、第1及び第2の回路の導管が接続されるコネクタ本体内に設けることができる。少なくとも1つの流れ制御弁が、ブリッジ通路を通過する流れを制御するために与えられる。
【0044】
1つまたは複数のアキュムレータが、オプションで、ブリッジ通路用に設けられる。流れ制御弁とアキュムレータは、前記ブリッジ導管上に設けられる。もう1つの可能な構成によると、制御弁および/またはアキュムレータは、コネクタ本体上に支持される。全てのダンパー弁とアキュムレータが、共通に前記コネクタ本体上に予め配置されて、車両内のシステムのパッケージングを簡略化することも可能である。
【0045】
流れ制御弁は、例えばロール制御システムへの要求が少ないときに、開放される。流れ制御弁が開放されると、これは、システムの「短絡」へと導き、その結果、各シリンダの第1及び第2のチャンバは、直接連通することが可能になる。流れ制御弁の制御された開放による第1及び第2の流体回路の制御された相互接続は、車両の搭乗者に対して改良された快適さを与える多数の以下に示す動作上の利点となる。
【0046】
a)このダンピングおよびロール制御システムは、ロール剛性を与えない。ロール剛性は、車両支持手段によってのみ与えられる。
b)このダンピングおよびロール制御システムは、車両のロール分割にもはや影響を与えない。ロール分割は、車両支持手段によってのみ与えられる。車両支持手段によって与えられたロール分割が、約40〜50%の間にある場合、これは(低ロール剛性と組み合わせて)、「ヘッドトス」につながる車両運動を低減するように作用する。
c)車輪ダンパー弁によって与えられる抵抗を除けば、各シリンダのチャンバ相互間を流れる流体に対する抵抗が少ないので、単一車輪剛性が低減される。
【0047】
d)アキュムレータダンパー弁は、バイパスされるので、ダンピング及びロール制御システムのダンピング機能に影響を与えない。また、ロールダンピングは、バウンスダンピングと同じである。
e)単一車輪ダンピングは(同じ理由のために)、バウンスダンピングと同じである。
f)バウンスダンピングは、しかしながら、流れ制御弁が開放されても、不変のままである。
【0048】
流れ制御弁の動作は、車両の横向き加速度、速度およびステアリング率等の動作パラメータに基づき、電子制御ユニットによって制御される。
【0049】
第1及び第2の流体回路を相互接続するために、複数のブリッジ通路が設けられることもまた可能である。各ブリッジ通路には、前記流れ制御弁が設けられる。
【0050】
車輪シリンダが一体型の流れ制御弁および/またはその中の車輪ダンパー弁を備えることも可能である。車輪シリンダのピストンは、流れ制御弁および/または車輪ダンパー弁を備え、第1及び第2のチャンバ間の流体の流れを制御することもできる。
【0051】
流れ制御弁を有するブリッジ通路の、またはビルトインされた流れ制御弁を有する車輪シリンダの複数の使用は、車輪シリンダの第1及び第2のチャンバ間の流体の流れを促進する。このことは、システムを通して流れる流体に起因する慣性力の低減へとつながり、車両の車輪に対する高周波入力および急峻なエッジ入力の改良された隔離を生じさせる。ロール制御システム内の慣性力の効果は、以下で引き続き詳細に説明される。
【0052】
ダンピングおよびロール制御システムが実質的にゼロのロール剛性を与えるように切り換えられるときに、全ての車輪に対するゼロロール剛性支持手段の使用が存立可能となる。しかしながら、ゼロロール剛性支持手段は、ある程度のロール剛性を与える独立した支持手段との組み合わせでも使用できる。従って、少なくとも一対の横方向に離れて配置された車輪に対する支持手段は、関連した車輪アセンブリ上の負荷の少なくとも一部を支持するための第1の支持手段を有することができる。この第1の支持手段は、それぞれの車輪に対して独立した弾性を与え、これによりロール剛性を与える。
【0053】
加えて、少なくとも一対の横方向に離れて配置された車輪に対する支持手段は、関連した車輪アセンブリ上の負荷の少なくとも一部を支持するための第2の支持手段を有することができる。この第2の支持手段は、それぞれの車輪に対して組み合わされた弾性を与え、これにより実質的にゼロのロール剛性を与える。
【0054】
ダンピング及びロール制御システムによって必要とされる程度のダンピングを与えるために、導管サイズは選択される点が理解されるべきである。応用において必要とされる乗り心地の快適さのレベルに依存し、動作温度の範囲を通して粘性に起因する流体慣性、流体摩擦等の種々の要因に基づいて、導管サイズは選択される。
【0055】
車両支持手段は、車両に対する垂直支持の全てではないが殆どを与えることが好ましい。しかしながら、ダンピング及びロール制御システムは、ダンピング及びロール制御システム内の動作流体圧力が、能動的ロール制御システムおよび本出願人の先の懸架システムと比較したときに、相対的に低くなるように、車両に対する垂直支持をさほどあるいは全く与えないことが好ましい。理論的には、ロール制御システムが車両に対する垂直支持を全く与えない場合、動作圧力は大気圧だけとなる。即ち、このシステムは、プリチャージ圧力を全く有しない。
【0056】
本発明に係る懸架システムのダンピング及びロール制御システムは、それ故に低圧力部品を使用することができる。車輪シリンダは、標準的な車両ダンパーおよびシーリング技術を使用して構築することができる。このことは、高圧力システムと比べたときに、実質的に製造コストの削減につながる。また、部品間の「静止摩擦」のような高圧力システムに関連する快適さおよびNVH問題は、低圧力システムでは最小化される。静止摩擦のレベルは、従来のダンパーシリンダアセンブリに存在するものと同じである。
【0057】
このようなダンピング及びロール制御システムは、既存の車両懸架システム内に設置することができる。このようなシステムで使用されるダンパーは、本発明に係るロール制御システムの車輪シリンダとして使用されるために、置き換えられるか適用される。車両を支持する通常のスチール製または気圧式のスプリングのような既存の車両支持手段は、保持される。この代わりに、車両支持手段は、前述したように、さほどあるいは全くロール支持を与えない支持手段に置き換えられる。このことが可能であるのは、ダンピング及びロール制御システムがまた車両懸架システム用のロール剛性を与えるからである。
【0058】
本発明の異なる形態によると、車両懸架システム用ロールダンピング及びロール制御システムのダンピング制御方法が提供されるもので、このダンピングおよびロール制御システムは、以下を含む:
【0059】
前記車両の車輪アセンブリに配置可能な車輪シリンダであって、車輪シリンダ内に支持されたピストンによって第1及び第2のチャンバに分離される内部容量を有する各車輪シリンダ;および
【0060】
流体導管によって前記車輪シリンダ間に流体を連通させる第1及び第2の流体回路であって、前記車両の一方の側における車輪シリンダの第1のチャンバと前記車両の他方の側における車輪シリンダの第2のチャンバとの間に流体連通を与え、これにより、水平ロール姿勢の回りにロール剛性を与えると同時に実質的にゼロのワープ剛性を与えることによって、車両懸架システムのワープモードから切り離されたロール支持を与える各流体回路;
【0061】
各車輪シリンダの少なくとも一つのチャンバに出入する流体フローレートを制御するダンパー手段;
【0062】
前記方法は、前記ダンピング及びロールシステムが比較的低いロール剛性とロールダンピングを与えるように要求されるとき、前記第1と第2の流体回路に流体を連通させる前記選択手段を開き;そして
【0063】
前記ダンピング及びロールシステムが比較的高いロール剛性とロールダンピングを与えるように要求されるとき、前記第1と第2の流体回路に流体を連通させないよう前記選択手段を閉じることを含む方法。
【0064】
前記流体の流れは、前記ダンピング及びロール制御システムに対して単一の車輪入力または2つの車輪並列バンプ入力があるときに、前記流体導管の実質部分からバイパスされる。したがって制御システムのダンピングにかかるラインダンピングおよび流体慣性効果は、そのような車輪入力で最小化される。
【0065】
所定の車輪入力で、流体の流れ全体が、流体導管からバイパスされることも考えられる。このことは、例えば前述したように車輪シリンダ内に制御弁を与えることによって達成される。
【0066】
単方向性および双方向性ダンパー弁のようなダンパー手段を設け、これにバイパスされた流体の流れを通過させることもでき、これらのダンパー手段は、この動作モード中に明らかに制御システムのダンピングを制御する。
【0067】
発明の好ましい実施例を描いた添付の図面を参照して本発明を更に説明することが便利である。この発明の他の実施例は可能であり、そして結果的に添付の図面の特殊性は、発明の先行した説明の一般性に取って代わるものと理解されるべきではない。
【0068】
先ず、図1を参照すると、車両の前輪アセンブリ2と後輪アセンブリ3が示されている。この車両の車体は、明瞭にするために示されていない。各前輪アセンブリ2は、それぞれの車輪4を配置することに貢献する叉骨様形態の車輪マウント5を有する(第2の叉骨は使用されるが、明瞭にするために省略されている。他のタイプの車輪配置リンクも使用されうる)。後輪アセンブリ3は、各車輪4がその上に搭載される共通の堅固な車軸6を有する。車両を支持するための車両支持手段17a,17bは、前方叉骨5に固定され、また後輪車軸6に隣接するように図示され、そして独立したトーションバー22と、導管21によって相互接続された一対のエアスプリング23を有している。トーションバーとして示された前方車両支持手段17aの独立した形状は、ロール剛性を与える。また、後方車両支持手段17bの相互接続された形状は、流体が導管21を介してエアスプリング23相互間を流れることができるので、実際にはロール剛性を与えない。既知の独立した支持手段または低ロール剛性の支持手段、または異なる組み合わせ支持手段のような代替の車両支持手段もまた使用できる。例えば、独立したコイルスプリングによって、車両全体が支持されうる。この代わりに、車両の一方又は双方の端部において、独立したコイルスプリングと相互接続されたエアスプリングとの組み合わせを使用することによっても、車両は支持されうる。独立した、または組み合わされた、またはゼロロール剛性の支持手段は、どのようなのであっても、車両の前方及び後方に使用できる。本出願人の国際出願PCT/AU97/00870号には、多くの変形例が図示および説明され、そして参照によりここに組み入れられる。
【0069】
ダンピング及びロール制御システム1は、前輪および後輪アセンブリ2,3を相互接続しており、また各前輪アセンブリ2および後輪アセンブリ3に対してそれぞれ設けられた車輪シリンダ8と、一対の流体導管7とを備えている。
【0070】
ダンピング及びロール制御システム1の構成は、図2を参照することによってより簡単に理解される。この構成の、また後続の構成の(ダンピング及びロール制御システム1の可能な代替構成は、以下で説明され、図5に示される)。対応する部分は、説明を明瞭にするために、同じ参照番号によって示される点に留意されるべきである。各車輪シリンダ8は、内部容量50を有し、これはピストン53によって上側チャンバ51と下側チャンバ52に分離される。図2及び3に示された車輪シリンダ8では、ピストンロッド54,55がピストン53の両端から延びている。各流体回路7は、縦方向に隣接する一対の車輪シリンダ8の上側チャンバ51相互間を接続する上側導管9と、縦方向に隣接する対向した対の車輪シリンダ8の下側チャンバ52相互間を接続する下側導管10とを更に備えている。図1に最も良く示されているように、各流体回路7は、下側導管10を上側導管9に接続する交差導管11を更に備えている。2つの交差導管11は、それら自身がブリッジ経路20によって接続されている。
【0071】
車輪ダンパー弁18は、下側導管10上に設けることができる。各車輪シリンダ8の下側チャンバ52に対して、それぞれ車輪ダンパー弁18が設けられる。車輪ダンパー弁15もまた、上側導管9上に設けることができる。各車輪シリンダ8の上側チャンバ51に対して、それぞれ車輪ダンパー弁15が設けられる。
【0072】
アキュムレータ16もまた、各流体回路7に設けられる。図1及び2に示す構成では、各アキュムレータ16は、下側導管10と交差導管11との間の接合部に設けられている。アキュムレータダンパー弁19は、各アキュムレータ16の口部に設けられている。
【0073】
流れ制御弁26は、ブリッジ経路20上に設けられ、ブリッジ経路20を通過する流体の流れを制御する。この流れ制御弁26は、電子制御ユニット(ECU)27によって制御される。ECU27は、弁26を異なる動作パラメータの関数として制御する。図2は、車両のステアリングホイール40上に配置されたステアリング入力センサ35や、横向き加速度センサ36および速度センサ37からの信号を受信しているECU27を示している。
【0074】
図2に示される車輪シリンダ8は、ピストン53の両側から延びるピストンロッド54,55を有するので、そのような車輪シリンダ8は、車両に対する支持を全く与えない。この支持は実質的に、図2でコイルスプリングとして模式的に示されている車両支持手段17a,17bによって全体的に与えられる。
【0075】
図3は、図2の車輪シリンダ8とそれに関連した車輪ダンパー弁15,18の詳細図である。図3に模式的に示されている下側車輪ダンパー弁18は、下側チャンバ52からの流体の流れに制限を与える一方で、その下側チャンバ52への比較的妨害されていない流体の流れは許容する。比較すると、これもまた図3に模式的に示されている上側ダンパー弁15は、上側チャンバ51からの流体の流れを制限する一方で、その上側チャンバ51への流体には比較的妨害されていない流れを与える。この構成は、上側および下側チャンバ51,52および上側および下側導管9,10内で正の圧力が維持されることを可能にし、これにより、その中に真空が形成されることを防止する。これは、ダンピング及びロール制御システム1を適正に動作させなくする流体の気体混和を生じる。この「スルーロッド」シリンダ設計用の「ジンバル」式マウントの一部が49で示されている。
【0076】
図4は、本発明による車輪シリンダ8の可能な代替構成を示している。この車輪シリンダ8は、車輪シリンダ8の内部容量50の内部を通して延びる「ダミー」ロッド61を有している。このダミーロッド61は、ピストン60上にそれ自身が支持された中空ロッド62内にスライド可能に収容されている。ピストン60と中空ロッド62は、それ故、ダミーロッド61上をスライドできる。この構成は、ピストン60の上面60aと下面60bとの間の面積差を最小化する。この構成による車輪シリンダ8は、それ故、車両に対する最小の支持を与えることになる。
【0077】
図4に示された車輪シリンダはまた、車両用の支持機能、並びに図5に示すようなロール制御用の支持機能を提供することにも適用できる。ダミーロッド61は、中空ロッド62内に配置されたときに、ロッドチャンバ63を規定する。ダミーロッド61は、その周辺端部に領域61aを有する。ダミーロッド61の直径、従って端部領域61aは、ピストンの下面60bの面積がダミーロッド61の端部領域61aと少なくとも実質的に同じなるように、寸法決めすることができる。上側チャンバ51をシールし、且つ孔通路64に沿ってロッドチャンバ63に孔を開けることによって、車輪シリンダはまた車両用の支持として機能することが可能になる。この孔通路64は、ロール制御システムの一部となるように、ダミーロッド61を貫通して設けられたものである。シールされた上側チャンバ51は、この構成では、バウンスチャンバとして作用し、コイルスプリングのような他の支持手段の必要性が不要となるように、車両用の弾性支持を与える。下側チャンバ52とロッドチャンバ63は、それぞれロール制御システムの流体導管の一部を形成することができる。
【0078】
図6a〜6jは、異なる車輪入力及び車両運動の間にダンピング及びロール制御システム1を通る流体の流れを模式的に示している。符号Dで示された矢印は、この矢印に最も隣接した車輪シリンダ8への車輪入力の大きさと方向を表している。残りの矢印は、ダンピング及びロール制御システム内を流れる流体の方向と大きさを表している。以下の図の全てにおいて、車両の前方は、各図の左上隅に配置されている。
【0079】
[単一車輪入力]
図6a〜6cは、単一車輪入力に応答した流体の流れを示している。車輪シリンダ8は、ピストン70を有し、このピストン70の底面から単一ピストンロッド71が延びているように示されている点に留意されるべきである。このような車輪シリンダ8は、ピストン70の上側および下側ピストン面の面積差に起因して、車両に対して僅かな程度の支持しか与えない。この車輪シリンダ8によって与えられる支持の度合いは、しかしながら、ピストンロッド71が物理的に可能な限り狭い直径を有することによって最小化される。
【0080】
図6aおよび6bは、流れ制御弁26がブリッジ経路20中で閉成されているときの流体の流れを示している。図6aでは、車輪入力Dが左後輪シリンダ8に与えられている。この結果、ピストン70はその中で上向きに移動して、車輪シリンダ8の上側チャンバ72の容積を減少させる。流体は圧縮されないので、ある程度の流体は上側導管9に沿ってアキュムレータ16へ移送される。左後輪シリンダ8の下側チャンバ52内の容積の増加によって、流体はダンピング及びロール制御システム1の他の部分から引き込まれなくてはならない。従って、流体は、車両右側の上側導管9上に配置されているアキュムレータ16から引き込まれる。それ故、他の車輪シリンダ8から引き込まれたり、そこへ向かう流体はなく、従って、他の車輪シリンダ8のピストンロッド71の移動はない。左後輪シリンダ8に関連した下側車輪ダンパー弁18とアキュムレータダンパー弁19が車両運動のダンピングを制御するものであることに留意すべきである。
【0081】
図6bは、左前輪シリンダ8への単一車輪入力Dの影響を示している。図6aと比較すると、より大きな大きさの流体の流れがダンピング及びロール制御システム1内に起こっている。左前輪シリンダ8の上側チャンバ72から押し出された流体は、車両左側のアキュムレータ16へ向かっている。さらに、車両右側のアキュムレータ16からの流体は、左前輪シリンダ8の下側チャンバ73へ向けて引き抜かれている。繰り返すが、残りの車輪シリンダ8のピストンロッド71の移動は全くない。この状況で、アキュムレータへ出入りする流れの大きさは、単一車輪入力が後輪シリンダ8の1つに入るときよりも有意に大きい。車両運動のダンピングは、それ故、アキュムレータによって大きく制御される。
【0082】
図6cでは、流体流れ弁26は開放されていて、ブリッジ経路20を通る流れを許容している。この弁26は、ダンピング及びロール制御システム1に要求を与える車両が運動をしていないときに開放される。左前輪シリンダ8へ同じ車輪入力Dが入ると、流体は、単純にその上側チャンバ72から上側導管9に沿い、交差導管11、ブリッジ経路20、他の交差導管11、下側導管10を通過して、左前輪シリンダ8の下側チャンバ73へ戻るように配送される。換言すれば、流体は、各流体回路7上のアキュムレータ16へ出入りする流体の流れをさほどまたは全く伴わずに、車輪シリンダ8の上側チャンバ72から下側チャンバ73へ流れる。このダンピングは、それ故、左前輪シリンダ8に関連した下側車輪ダンパー弁18によって完全に制御される。この状況での単一車輪ダンピングは、それ故、このシステムのバウンスダンピングと同じである。
【0083】
[2輪バウンス]
図6dおよび6eは、2輪バウンス体験時のダンピング及びロール制御システム1中の流体の流れを示している。両図において、流れ制御弁26は、閉成されたままである。図6dは、2つの後輪シリンダ8に加わる車輪入力Dを示している。後輪シリンダ8のそれぞれの上側チャンバ72の容積が減少すると、流体は、上側導管9を通し、交差導管11に沿って、隣接する後輪シリンダ8の下側チャンバ73まで押し出される。前輪シリンダ8またはアキュムレータ16へ出入りする流体の流れはない。また、ダンピングは、前記シリンダ8のそれぞれの下側車輪ダンパー弁18によって制御される。
【0084】
図6eでは、2つの前輪シリンダ8に加わる車輪入力Dを示している。これは、前輪シリンダ8の上側チャンバ72から隣接する前輪シリンダ8の下側チャンバ73に至る流体の流れに対応する流体の流れを生ずる。繰り返すが、ダンピングは、前記シリンダ8のそれぞれの下側車輪ダンパー弁18によって制御され、アキュムレータ16への流体の流れはさほどまたは全くない。
【0085】
[4輪バウンス]
図6fは、流れ制御弁26が閉成されたままの状態で、車輪入力Dが4輪シリンダ8の全てに加わる時の右制御システム1中の流体の流れを示している。車両の一方の側の車輪シリンダ8の上側チャンバ72から移動した流体は、交差導管11および下側導管10を通して、車両の他方の側の車輪シリンダ8の下側チャンバ73まで移動される。アキュムレータ16へ出入りする流れはさほどまたは全くなく、ダンピングは、下側車輪ダンパー弁18によって制御される。
【0086】
[ロール]
図6gおよび6hは、図6gでは閉成され、図6hでは開放されている流れ制御弁26を示している。車両のロール運動は、車両の左側の車輪シリンダ8に対して上向きの方向に車輪入力Dを与え、また車両の右側の車輪シリンダ8に対しては下向きの方向に車輪入力Dを与える。流体の流れの次の結果は、実質的な量の流体が一方の流体回路7のアキュムレータ16から引き抜かれなければならず、同時に他方の流体回路7のアキュムレータが実質的な量の流体を収容しなければならないことである。アキュムレータ16とそれに関連したダンパー弁19は、それ故、流れ制御弁26が閉成されているときに、ダンピング及びロール制御システム1の実質的な効果を有する。
【0087】
比較すると、図6hでは、流れ制御弁26が開放されているので、流体の流れは「短絡」される。その結果、流体は、各車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ72,73の間を単純に移送される。この場合、アキュムレータ16のそれぞれから引き抜かれたり、そこに供給される流体はさほどあるいは全くない。この構成では、アキュムレータ16はダンピング及びロール制御システム1のロール剛性の影響を全く有しない。
【0088】
[節動]
図6iおよび6jは、車両の車輪が関節運動をしている間のダンピング及びロール制御システム1内の流体の流れを示している。図6iは、流れ制御弁26が閉成されているときの流体の流れを示している。図6jは、流れ制御弁26が開放されているときの流体の流れを示している。
【0089】
図6iを参照すると、車輪の関節運動に起因する車輪入力Dは、流体回路7相互間の流体の移送を伴わない単純な流体の移送を、各流体回路7内の各対の車輪シリンダ8の上側チャンバ72と下側チャンバ73との間で生じさせている。比較すると、図6jでは、流れ制御弁26の開放が再び流体の流れの「短絡」を生じさせている。この結果、各車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ72,73間の流体の移送が単純に生じている。
【0090】
相互接続された流体シリンダの構成を有するどのような懸架システムでも(本発明のように)、4つのカテゴリーに分類できる力を作ることによって入力に応答する。第1は、システム中の流体および/または機械的スプリング(およびホースの拡張のような他の弾性源)の圧縮または巻き上げによって作られるスプリング力である。このスプリング力は、1以上の流体シリンダの移動量の関数である。スプリング力の効果は、低周波数では最も注目に値する。
【0091】
第2の力のカテゴリーは、車輪シリンダ運動が初期化されたとき、あるいは運動の方向が反転されたときに起こる静止摩擦力である。静止摩擦力は「スティクション」力または「ブレークアウト摩擦」力とも呼ばれ、ロッドシールおよびピストンシールとそれぞれのロッド表面および孔表面との間の摩擦に起因している。
【0092】
第3の力のカテゴリーは、速度の関数であるダンピング力である。一次的には、ダンピング力は、ダンパー弁15,18,19中のオリフィス、くさび、スプリングによって調整される。総システムダンピングの1つの成分は、一般に「ラインダンピング」、即ちシステム中の車輪シリンダを相互接続する導管に沿った流体の流れによって与えられる。車輪シリンダおよび流体導管の断面積と、流体導管の長さは、与えられたラインダンピングのレベルが、上述したモードのサスペンションの運動に起因して可能な異なる流れに対して受け入れ可能に低いレベルであることを確実にするように設計されるべきである。
【0093】
第4の力のカテゴリーは、システムを通る流体の加速度に一次的には起因する慣性力である。従って、慣性力は、高周波数では最も注目すべきものとなり、そして高周波数入力および急峻なエッジの入力の隔離を低減させ、車体振動および雑音を生じさせる。長さL、面積Alのラインに接続されたピストン面積がApのシリンダと、密度ρの圧縮不能な流体とからなる理論的なシステムを考える。このシリンダピストンは、加速度αを加えられている。この結果生ずる力Fは、ライン中に流体の慣性によって、以下のようになる。
【0094】
F=(AP 2/A1)×L×ρ×α
【0095】
慣性力は、流体密度(一般に水力学的流体に対して固定される)、ライン長、ライン面積に敏感であり、更にピストン面積に非常に敏感であることが判る。ライン長の減少とライン面積の増加は、流体の慣性効果を減少させる。実際には、ライン長を減少させる方が、流体導管の直径を増加させることによって、ライン面積を増加させるよりも便利である。後者の変化は、車両の下では、流体導管を設置するために利用可能な限られた空間のために、パッケージングの困難さを招来する。流体慣性効果を減少させる他の利益のある変化は、車輪から流体シリンダへの機械的利点(即ちレバー比)を増加させることである。これは、より高いピーク圧力と、より低い流体加速度へと導く。
【0096】
高周波数入力によって影響されそうなモードは、単一車輪入力および2輪並列バンプ入力である。図1〜6jに示したロール制御システムのレイアウトでは、2輪並列バンプ入力に対して、流体は、前方左上チャンバ51から前方右下チャンバ52へ移動し、また前方右上チャンバ51から前方左下チャンバ52へ移動する必要がある。アキュムレータ16に流入する少ない流れもある(図6dおよび6eを参照)。
【0097】
単一車輪入力に対して、流体は、シリンダチャンバから直接アキュムレータに移動する必要がある(図6a〜6cを参照)。
【0098】
流体制御弁26が開放されていると、2輪並列バンプ入力流は、不変のままである。単一車輪入力に対して、流体は、流体制御弁26を通過するが、アキュムレータ16へはさほど流れない。
【0099】
上述したロール制御システムのレイアウトにおける上記の状況では、流体は合理的な長さで合理的な直径のラインを下向きに移動しなければならない。このことは、有意な慣性効果を与える。
【0100】
システムがロール支持を与え、また適切なロール運動分布を与えなければならないので、前方シリンダは一般に後方シリンダよりも大きな直径である。ピストン面積に対する感度に起因して、前方シリンダは後方シリンダよりも流体慣性効果を示しやすい。
【0101】
ピストン面積は、動作圧力に必要とされる最大値によって更に固定される。
【0102】
ロール制御システムの他の可能な構成が図7に示されている。流体回路7のレイアウトは、前方シリンダ8の一方から他方へ最短ルートを与え、これによりライン長、従って流体慣性効果を減少させるために、変化させられている。
【0103】
特に、前輪シリンダ8の隣接する各対の上側チャンバ51は、それぞれの流体導管70によって、隣接する前輪シリンダ8の下側チャンバ52に接続されている。これらの流体導管70は、縦方向の流体導管71によって、後輪シリンダの対応する流体導管70に接続され、システムの一対の流体導管を与えている。単一車輪および2輪バウンスの間に、各対の前輪シリンダ8の上側と下側のチャンバ51および52の間、および/または各対の後輪シリンダ8の上側と下側のチャンバ51および52の間を、多くの流体が移送される。
【0104】
比較的少量の流体だけが、慣性効果がより多く生成されやすい縦方向の流体導管71内を通過する。流れ制御弁26の開口は、前述したように、流体回路間の短絡を生じさせ、この結果、流体が車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ51および52の間を流される。
【0105】
前述したように、前輪シリンダでは慣性効果がより多く生成されやすいので、アキュムレータは、前輪シリンダのチャンバ51および52を接続する流体導管70のそれぞれに与えられる。アキュムレータ16は、流れ制御弁26が閉成されているときに、単一車輪入力から生ずる大きな流体の流れを収容するように働く。
【0106】
図8は、図7に示された構成の変形例を示している。アキュムレータ16は、後輪シリンダのチャンバ51および52を接続する流体導管70のそれぞれに与えられている。
【0107】
後方流体導管70に追加されたアキュムレータ16は、流体が概ね縦方向の流体導管70を通過することを可能にして、少ない有効ライン長と低減された慣性効果を生じさせる。
【0108】
図9に示されたロール制御システムの好ましい実施例は、単一ブリッジ経路20と流れ制御弁26が各車輪シリンダ8に対するそれぞれのブリッジ経路20と流れ制御弁26に置き換えられている点を除いて、図1および2に示された構成と同様である。このことは、各車輪シリンダ8に対する流体の流れが、独立して短絡され、車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ51および52の間を、比較的直接的に流れることを可能にする。
【0109】
各シリンダ8毎に配置された4つの分離されたブリッジ経路20と流れ制御弁を与えることによって、このシステムの直接短絡が可能になる。大半の流れは、流れ制御弁26が開放されているときに、全ての入力に対して合理的な短いライン長を通して、各シリンダ8の回りを直接バイパスされる。このことは、流体慣性効果に有意な減少を与える。ダンピングは、しかしながら、車輪ダンパー15,18がこの流体ループ内にあるために、依然として維持される。4つの閉成された流れ制御弁26を伴う動作は、しかしながら、如何なる流体慣性の改良をも提供しない。
【0110】
流れ制御弁26は、必要とされるダンピング制御のレベルに依存して、デジタル型(オン、オフだけ)、多位置型または比例型であり得る。
【0111】
図10a〜10cは、一緒に、図1に示された実施例と同様のロール制御システムのもう1つの好ましい実施例を描いているが、ここではブリッジ経路20とロール制御弁26は省略されている(図10c参照)。各シリンダ8は、しかしながら、車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ51および52間の流体の直接的流れを可能にする流体流れ制御アセンブリを含むことに適用されている。
【0112】
車輪シリンダのピストン80は、そこに挿入された制御弁81を有する(図10bおよび10c参照)。この制御弁81は、車輪シリンダ8の上側および下側チャンバ51および52間に流体連通を与えるピストン通路82を通過する流体の率を制御する。ロータリ弁81が示されているが、どのような設計形態でも適用可能である。このロータリ弁81は、ピストンロッド84を貫通する軸83によって、開放位置(図10b)と閉成位置(図10c)の間を回転可能である。上側および下側チャンバ51,52間の流体の流れは、弁81が開放されているときに、許容される。各シリンダの上側および下側チャンバを直接接続するこの弁81は、短い流体経路を提供する。繰り返すが、流体慣性効果は有意に低減される。インラインダンパー85は、ピストン通路82を通過する流体の流れを低減するために必要とされる。これにより、車輪の移動を減衰する。流体導管内のダンパーは、効果的にバイパスされている。弁81は、快適さのモードで必要とされるダンピング制御のレベルに依存して、デジタル型(オン、オフだけ)、多位置型または比例型であり得る。弁81は、完全に閉成されたときに、シールしなければならない。この弁の構造は、複数の孔が設けられ、軸83に取り付けられた円盤のように、図示されたものとは異なってもよい。ピストンは、そのピストンのいずれかの面の孔の上に単一のスチール製くさびを有して、ダンピング制御するものでもよい。円盤の孔は、可変流れ面積、従ってある程度の可変ダンピング制御を提供するために、テーパ付きスロットの形態でも良い。
【0113】
図11は、図7に示されたシステムの流体導管のレイアウトを利用するものの、更に各車輪シリンダ用にそれぞれの流れ制御弁26を備えたロール制御システムの好ましい実施例を示している。
【0114】
このレイアウトは、流れ制御弁26が閉成されているときでも流体慣性効果を最小化し、そして流れ制御弁26が開放されているときには流体慣性効果の更なる減少を与える。しかしながら、この代わりに、流れ制御弁26は、図10bおよび10cに示すように、ピストン80に内部にあってもよいことが理解されるべきである。
【0115】
図12に示された好ましい実施例は、図11に示された構成と同じであるが、図8に示された構成と同様の理由で、後方アキュムレータ16が追加されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車両の車輪アセンブリ上に搭載された本発明に係るロール制御システムの第1の好ましい実施例の部分的模式図である。
【図2】 本発明に係るロール制御システムの第2の好ましい実施例の模式図である。
【図3】 本発明に係る車輪シリンダおよび車輪ダンパー弁構成の1つの好ましい実施例の詳細図である。
【図4】 本発明に係る車輪シリンダおよび車輪ダンパー弁の他の好ましい実施例の模式図である。
【図5】 本発明に係る車輪シリンダおよび車輪ダンパー弁の異なる好ましい実施例の模式図である。
【図6a−6j】 車両に対する異なる車輪入力下での本発明に係るダンピング及びロール制御システム内の流体の流れを示す模式図である。
【図7】 本発明に係るロール制御システムの第3の可能な構成の模式図である。
【図8】 本発明に係るロール制御システムの第4の可能な構成の模式図である。
【図9】 本発明に係るロール制御システムの第5の可能な構成の模式図である。
【図10】 本発明に係るロール制御システムの第6の可能な構成の模式図である。
【図10bおよび10c】 図10aに示された構成に対する内部流れ制御弁およびダンパー弁を有する車輪シリンダピストンの模式的断面図である。
【図11】 本発明に係るロール制御システムの第7の可能な構成の模式図である。
【図12】 本発明に係るロール制御システムの第8の可能な構成の模式図である。
Claims (10)
- 車両懸架システム用の受動的ロールダンピングおよびロール制御システムであって、前記車両は、少なくとも一対の横方向に離れて配置された前輪アセンブリと、少なくとも一対の横方向に離れて配置された後輪アセンブリとを有し、各車輪アセンブリは、1つの車輪と、前記車両の車体に対して概ね垂直方向への前記車輪の動きを可能にするように前記車輪を配置する車輪マウントとを含み、そして前記車両用の支持の少なくとも主要部を実質的に提供するための車両支持手段を有し、前記受動的ロールダンピングおよびロール制御システムは以下を含む;
各車輪マウントと前記車両の車体との間にそれぞれ配置可能な前左、前右、後左、及び後右の車輪シリンダであって、各車輪シリンダは、該車輪シリンダ内に支持されたピストンによって第1及び第2のチャンバに分離される内部空間を有するものであり;
流体導管によって前記車輪シリンダ間に流体連通を提供する第1及び第2の流体回路であって、
前記第1流体回路は、車両の左右方向の一側における前後の車輪シリンダの第1チャンバ間を流体連通させていると共に、該一側における第1チャンバと、前記左右方向の他側における前後の車輪シリンダの各第2チャンバとを流体連通させ、
前記第2流体回路は、前記他側における前後の車輪シリンダの第1チャンバ間を流体連通させていると共に、該他側における第1チャンバと、前記一側における前後の車輪シリンダの各第2チャンバとを流体連通させ、
これにより、水平ロール姿勢の回りにロール剛性を与えると同時に実質的にゼロのワープ剛性を与えることによって、車両懸架システムのワープモードから切り離されたロール支持を与えるものであり;
前記第1及び第2の流体回路の夫々はロール剛性に寄与する一つまたは複数の流体アキュムレータを含み;
該アキュムレータの夫々は、アキュムレータに出入りする流体のフローレートを低下させるアキュムレータダンパー弁を有しており、
前記受動的ロールダンピングおよびロール制御システムはさらに、各車輪シリンダの第1チャンバと第2チャンバの夫々に対して、前記車輪シリンダの夫々の第1チャンバ又は第2チャンバから直接に流出する場合にのみ流体のフローレートを低下させる単方向性ダンパー弁を有する車輪ダンパー手段を有し;
それらにより、車両懸架システムの実質的にすべてのダンピング作用が行われるものである。 - 前記車両支持手段は、前記車両用の支持の全てを実質的に提供する請求項1の受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 前記単方向性ダンパー弁は、不還弁と並列で使用される請求項1による受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- バイパス通路が前記各アキュムレータのための前記アキュムレータダンパー弁を流体が迂回するように前記第1と第2の流体回路の少なくとも一方に設けられていて、前記バイパス通路は、前記バイパス通路を開閉するバルブを含んでいる請求項1乃至3の何れか1つによる受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 前記ロール制御システムには、圧力があらかじめかかっている請求項1乃至4のいずれか一つによる受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 前記第1と第2の流体回路の間に流体を選択的に連通させる選択手段をさらに備える請求項1乃至5のいずれか一つによる受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 前記選択手段は、前記第1と第2の流体回路を連結する少なくとも一つのブリッジ通路および前記ブリッジ通路を通る流体を制御するフローコントロールバルブを含む請求項6による受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 前記ブリッジ通路にアキュムレータをさらに含む請求項7による受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- それぞれのブリッジ通路とフローコントロールバルブが、各車輪シリンダに対して設けられている請求項7または8による受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
- 各車輪シリンダの前記ピストンは、インテグラル・フローコントロールバルブおよびダンパーバルブを含み、前記第1と第2のチャンバの間の流れを制御する請求項1乃至9のいずれか一つによる受動的ロールダンピングおよびロール制御システム。
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