JP4637698B2 - 偏光板一体型光学補償フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

偏光板一体型光学補償フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、偏光板一体型光学補償フィルムおよび液晶表示装置に関し、特に水平方向に配向した液晶分子に略横方向の電界を印加することにより表示を行う、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードやフリンジフィールド(FFS)モードの液晶表示装置およびこれに用いる偏光板一体型光学補償フィルムに関する。
液晶表示装置としては、二枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性分子がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチングモードやフリンジフィールドモードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示または中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコティック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)や、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献5参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献6参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献7参照)が提案されている。
特開平9−80424号公報 特開平10−54982号公報 特開平11−202323号公報 特開平9−292522号公報 特開平11−133408号公報 特開平11−305217号公報 特開平10−307291号公報
しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。さらに、延伸複屈折ポリマーフィルムで光学補償を行うIPSモード液晶セル用光学補償シートでは、複数のフィルムを用いる必要があり、その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、延伸フィルムの積層には粘着層を用いるため、温湿度変化により粘着層が収縮してフィルム間の剥離や反りといった不良が発生することがあった。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角特性が著しく改善されたIPS型液晶表示装置を提供することを課題とする。また、本発明は、液晶表示装置、特にIPS型液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与する偏光板一体型光学補償フィルムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)少なくとも、第1偏光膜と、第2位相差膜と、第1位相差膜と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルとが該順で配置され、かつ、第2偏光膜を含み、黒表示時に前記液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、前記第1位相差膜の厚み方向のレターデーション値が−10nm〜150nmであり、第1位相差膜の面内レターデーション値が50nm以下であり、第2位相差膜の厚み方向のレターデーション値が0nm〜−100nmであり、第2位相差膜の面内レターデーション値が50nm〜330nmであり、前記第2位相差膜が下記式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10 -24 cm 3 〜30×10 -24 cm 3 である置換基を有し、脂肪酸アシル基と芳香族アシル基とを含む混合酸エステルからなり、アシル基の総置換度PAが1.5〜3.0であり、芳香族アシル基の置換度が0.1〜1.1であるセルロースアシレートフィルムであって、前記芳香族アシル基が、下記一般式(I)で表されることを特徴とするセルロースアシレートフィルムからなり、前記第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向と平行であって、前記第2位相差膜の遅相軸が、前記第1偏光膜の透過軸に実質的に直交である液晶表示装置。
式(1) Δα=αx−(αy+αz)/2
(式(1)中、αx、αyおよびαzは、それぞれ、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzを満足する)
一般式(I)
Figure 0004637698
(一般式(I)中、Xは、一価の置換基を表し、nは、0〜5の整数を表す。)
(2)前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚み方向のレターデーション値が40nm〜−40nmである、(1)に記載の液晶表示装置。
(3)前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚み方向のレターデーション値が20nm〜−20nmである、(1)に記載の液晶表示装置。
(4)前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚みが60μm以下である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
(5)前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜がセルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
(6)前記第2位相差膜が、前記第1偏光膜に隣接している、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
(7)前記液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に、前記第1位相差膜および前記第2位相差膜が、配置されている(1)〜(6)のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
(8)第2位相差膜が延伸処理されたセルロースアシレートフィルムからなる、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
本発明では、少なくとも、第1偏光膜と、第1位相領域と、第2位相領域と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に前記液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション値(Rth値)が−10nm〜150nmであり、第1位相差領域の面内レターデーション(Re値)が50nm以下であり、第2位相差領域のRth値が0nm〜−100nmであり、第2位相差領域のRe値が50nm〜330nmであり、前記第2位相差領域が式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10-24cm 3 〜30×10-24cm 3 である置換基を含むセルロースアシレートフィルムであり、かつ、前記第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向と平行である液晶表示装置とすることにより、正面方向の特性を何ら変更させることなく、斜めの方位角方向から見た場合に2枚の偏光板の吸収軸が90度からずれることから生ずるコントラストの低下、特に45度斜め方向からのコントラストの低下を改善させることが可能になった。
特に、本発明では、分極率異方性Δαが2.5×10-24cm 3 〜30×10-24cm 3 である置換基を含むセルロースアシレートフィルムを第2位相差領域に用いる。該セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートの置換基の種類や水酸基へのアシル置換度の調整や、作製条件の調整により、第2位相差領域に要求される光学特性を一層のみで満たすことができる。従って、該セルロースアシレートフィルムを用いることにより、簡易な構成で視野角特性の改善された液晶表示装置を作製することができる。また、当該フィルムは、偏光膜の保護膜として要求される性能を有するので、偏光膜の表面に形成することで、保護膜として機能させることができ、より簡易な構成で、視野角特性の改善された液晶表示装置を作製することができる。
以下において、本発明の液晶表示装置の一実施形態およびその構成部材について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明における各種の「基」は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。
本明細書において、Re、Rthは各々、波長590nmにおける面内のレターデーションおよび厚み方向のレターデーションを表す。Re値はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth値は前記Re値、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出した。
ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
また、Rth値の符号は面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+20°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値がRe値を超える場合を正とし、Re値を下回る場合を負とする。但し、|Rth/Re|が9以上の試料では、回転自由台座付きの偏光顕微鏡を用いて、面内の進相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した状態で、偏光板の検板を用いて決定できる試料の遅相軸がフィルム平面に平行にある場合を正とし、また遅相軸がフィルムの厚み方向にある場合を負とする。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=590nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板および液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」および「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する保護膜を有する積層体を意味するものとする。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。図2および図3は、本発明の液晶表示装置の一実施形態の模式図である。
[液晶表示装置]
図2に示す液晶表示装置は、第1偏光膜8と、第1位相差領域10と、第2位相差領域12と、第1基板14と、液晶層16と、第2基板18と、第2偏光膜21とを有する。第1偏光膜8および第2偏光膜21は、それぞれ保護膜7aと7bおよび20aと20bによって挟持されている。
図2の液晶表示装置では、液晶セルは、第1基板14および第2基板18と、これらに挟持される液晶層16からなる。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板(14・18)の液晶層16に接触する表面には、配向膜(不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させるとともに配向膜上に施されたラビング処理方向(第1基板ラビング方向15・第2基板ラビング方向19)により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御されている。また、基板(14・18)の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図2中不図示)が形成されている。
図1に、液晶素子画素領域1中の液晶分子の配向を模式的に示す。図1は、液晶層16の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板(14・18)の内面に形成された配向膜のラビング方向4、および基板(14・18)の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な画素電極2および表示3とともに示した模式図である。電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態若しくは低印加状態での液晶分子配向方向は5aおよび5bであり、この時に黒表示が得られる。すなわち、5aおよび5bは、黒表示時の液晶化合物のダイレクターを示す。電極(2・3)間に印加されると、電圧に応じて液晶分子は6aおよび6b方向へとその配向方向を変える。通常、この状態で明表示を行なう。すなわち、6aおよび6bは、白表示時の液晶化合物のダイレクターを示す。
再び図2において、第1偏光膜8の透過軸9と、第2偏光膜21の透過軸22は直交して配置されている。第2位相差領域12の遅相軸13が、第1偏光膜8の透過軸9に平行(即ち第1偏光膜8の吸収軸(不図示)に直交)であり、且つ黒表示時の液晶層16中の液晶分子の遅相軸方向17に平行である。
図2に示す液晶表示装置では、第1偏光膜8が二枚の保護膜7aおよび7bに挟持された構成を示しているが、保護膜7bはなくてもよい。また、偏光膜21も二枚の保護膜20aおよび20bに挟持されているが、液晶層16に近い側の保護膜20aはなくてもよい。なお、図2の態様では、第1位相差領域10および第2位相差領域12は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第2位相差領域12が液晶セルにより近くなるように配置する。
本発明の他の実施形態を図3に示す。図3の液晶表示装置は、第2位相差領域12が偏光膜8および第1位相差領域10の間に配置されている。図3の液晶表示装置において、保護膜7bまたは保護膜20aはなくてもよい。図3に示す態様では、第2位相差領域12は、その遅相軸13が、第1偏光膜8の透過軸9に直交(即ち第1偏光膜8の吸収軸(不図示)に平行)であり、且つ黒表示時の液晶層16中の液晶分子の遅相軸方向17に直交である。なお、図3の態様では、第1位相差領域10および第2位相差領域12は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第1位相差領域10が液晶セルにより近くなるように配置する。
図2および図3の態様において、第1位相差領域10は、Rthが−10nm〜150nmであり、Reが50nm以下である。一方、第2位相差領域12は、Rthがー100nm〜0nmであり、Reが50nm〜330nmである。
図2および図3の態様において、第2位相差領域12は分極率異方性が大きい置換基を含むセルロースアシレートを含むフィルム(セルロースアシレートフィルム)からなる。置換基の種類や置換率の制御、Re値やRth値を低減する添加剤の利用、フィルムの作製条件調整により、第2位相差領域として要求される前記光学特性を一層(位相差膜(Z2))のみで示すことができる。詳細については別途記載する。また、かかる位相差膜(Z2)は、偏光膜の保護膜として要求される性能を満足し得るので、図2の態様では、保護膜7bがなくても、偏光膜8と、第1位相差領域10と、第2位相差領域12とを一体的に作製することで、高温湿度下等、過酷な環境下に置かれた場合にも、偏光膜8が劣化して、表示特性が低下するのを軽減することができる。また、図3の態様では、偏光膜8と第2位相差領域12とを一体的に作製することで、保護膜7bがなくても、高温湿度下等、過酷な環境下に置かれた場合にも、偏光膜8が劣化して、表示特性が低下するのを軽減することができる。
なお、図2および図3には、上側偏光板および下側偏光板を備えた透過モードの表示装置の態様を示したが、本発明は一の偏光板のみを備える反射モードの態様であってもよく、かかる場合は、液晶セル内の光路が2倍になることから、最適Δn・dの値は上記の1/2程度の値になる。また、本発明に用いられる液晶セルはIPSモードやFFSモードに限定されることなく、黒表示時に液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であれば、いずれも好適に用いることができる。この例としては強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置、ECB型液晶表示装置がある。
本発明の液晶表示装置は、図1〜図3に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶層と偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、偏光膜の保護膜の表面に反射防止処理やハードコートを施しても良い。また、構成部材に導電性を付与したものを使用してもよい。また、透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置することができる。この場合、バックライトの配置は図2および図3の上側であっても下側であってもよい。また、液晶層とバックライトとの間に、反射型偏光板や拡散板、プリズムシートや導光板を配置することもできる。また、上記した様に、本発明の液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を配置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)や金属粉未射出成形(MIM)のような3端子または2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
以下、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材の好ましい光学特性や部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
[第1位相差領域]
本発明において、第1位相差領域は、後述する第2位相差領域とはRe値およびRth値が異なる領域をいう。このような第1の位相差領域は、一の位相差膜(Z1)から構成されていてもよいし、他の光学フィルムとの積層体であってもよい。
第1位相差領域のRth値が−10nm〜150nmであることが好ましく、30nm〜110nmであることがより好ましく、45〜90nmであることがさらに好ましい。
第1位相差領域のRe値は、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
なお、液晶表示装置が有する偏光膜(2つの偏光膜を有する場合はより近い位置に配置される偏光膜)を保護する保護膜に光学的な異方性がある場合、保護膜と第1位相差領域との合計が、前記範囲の光学特性を示すのも好ましい。
上記光学特性を満足する第1位相差膜領域としては、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、および支持体(好ましくは透明支持体)上に低分子あるいは高分子液晶性化合物を塗布もしくは転写することによって形成された光学異方性層を有する位相差膜などによって形成でき、本発明ではいずれも使用することができる。
上記光学特性を有する複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜は、高分子フィルムを二軸延伸することでも容易に形成できる。また、延伸することなしに流延するだけでこの光学特性を発現するセルロースアシレート類を好適に用いることができる。かかるセルロースアシレートとして、特開2002−90541号公報に記載されているものを用いることができる。高分子フィルムの材料は、一般に合成ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂、セルロースアセテート)が用いられる。
塗布若しくは転写で支持体上に形成した位相差膜として、キラル構造単位を含んだ棒状コレステリック液晶性組成物を、その螺旋軸を基板に略垂直に配向させたのち、固定化したものや、固有複屈折が負のディスコティック液晶性化合物を水平配向(ダイレクターは基板に垂直)させたもの、ポリイミド高分子を基板上に流延固定したものなどを例示することができる。
[第2位相差領域]
本発明における第2位相差領域は、下記式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10-24cm 3 〜30×10-24cm 3 である置換基を有するセルロースアシレートフィルムからなり、レターデーションが下記式(a)および式(b)を満たし、かつ、セルロースアシレートフィルムの長手方向に実質的に直交または平行な遅相軸を有する。
式(1) Δα=αx−(αy+αz)/2
(式(1)中、αx、αyおよびαzは、それぞれ、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzを満足する)
式(a) 50nm ≦ |Re(590)| ≦ 330nm
式(b) −100nm ≦ Rth(590) ≦ 0
(式(a)および式(b)中、Re(λ)は、波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(λ)は、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
以下、発明の第2位相差領域について詳細に説明する。
本発明において、第2位相差領域は、Rth値が−90nm〜0nmであるのが好ましく、−80nm〜0nmであるのがより好ましい。
また、Re値が90〜300nmであるのが好ましく、130〜280nmであるのがより好ましい。
本発明において、第2位相差領域は、後述するように、分極率異方性が大きい置換基を有するセルロースアシレートフィルムであり、一の位相差膜(Z2)のみから構成されていることが好ましい。
セルロースシレートに分極率異方性が大きい置換基を導入し、かつ他の置換基および置換度を調整することで、膜厚方向に屈折率が最大となる光学補償フィルムが得られる。特に本発明においては、β−グルコース環に置換された分極率異方性が大きい置換基が、延伸処理時にβ−グルコース環主鎖に対して直交し、かつ立体障害等の作用により膜厚方向に屈折率が最大になる方向に配向することが好ましい。その結果フィルム面内においては、延伸軸方向よりも延伸直行方向に遅相軸が発現し、かつフィルム面内の遅相軸方向よりも、膜厚方向の屈折率がさらに大きくなることで、Rth値が負に大きく発現する光学補償フィルムが得られる。さらには、分極率異方性の大きい置換基の置換度、分光吸収のλmaxにより、セルロースアシレートフィルムの屈折率楕円体が変化し、延伸処理と組み合わせることで広範囲に光学性能を制御することが可能となる。
(置換基の末端間距離および分極率異方性)
本発明に用いるセルロースアシレートの置換基の末端間距離および分極率異方性ΔαはGaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社ソフトウェア)を用いて計算した。
末端間距離はB3LYP/6−31G*レベルの計算で構造最適化した後、最も離れた原子間の距離として算出した。
分極率異方性ΔαはB3LYP/6−31G*レベルで最適化された構造を用いて、3LYP/6−311+G**レベルで分極率を計算し、得られた分極率テンソルを対角化した後、対角成分より算出した。
本発明における置換基の末端間距離および分極率異方性の計算においては、セルロースアシレートの構成単位であるβ−グルコース環上の3角水酸基に連結する置換基を、水酸基の酸素原子を含む部分構造にて計算して求めた。
本発明に用いるセルロースアシレートの置換基の分極率異方性Δαは下記数式(1)により定義される。
式(1)
Δα=αx−(αy+αz)/2
(式(1)中、αx、αyおよびαzは、それぞれ、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzを満足する)
分極率異方性は、フィルム延伸時の延伸直交方向への屈折率発現性と関係がある。すなわち、分極率異方性が小さい場合には延伸方向に遅相軸が発現し、大きい場合には延伸直交方向に遅相軸が発現する。本発明のRth値が負の値を有する光学補償フィルムを得る目的においては、Δαは2.5×10-24cm 3 〜30×10-24cm 3 であり、好ましくは4×10-24cm 3 〜25×10-24cm 3 であり、特に好ましくは5×10-24cm 3 〜20×10-24cm 3 である。
本明細書において、特に述べない限り、分極率異方性が大きい置換基とは、Δαが上記範囲内であることを示している。
本発明の第2位相差領域における、好ましいセルロースアシレートは、脂肪酸アシル基と芳香族アシル基とを含む混合酸エステルであることが好ましい。ここで芳香族アシル基としては下記一般式(I)で表される基が好ましい。
一般式(I)
Figure 0004637698
(一般式(I)中、Xは、一価の置換基を表し、nは、0〜5の整数を表す。)
Xは、一価置換基を表し、置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基およびアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2および−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。
また、可能な場合は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。
上記アルキル基は、環状構造または分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基および2−エチルヘキシル基が含まれる。
上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基およびオクチルオキシ基が含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニル基およびナフチル基が含まれる。
上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基およびナフトキシ基が含まれる。
上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。アシル基の例には、ホルミル基、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド基およびベンズアミド基が含まれる。
上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基およびp−トルエンスルホンアミド基が含まれる。
上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル基、フェネチル基およびナフチルメチル基が含まれる。
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基が含まれる。
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、無置換のカルバモイル基およびN−メチルカルバモイル基が含まれる。
上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、スルファモイル基およびN−メチルスルファモイル基が含まれる。
上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基およびイソプロペニル基が含まれる。
上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニル基が含まれる。
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
一般式(I)中、nは、0〜5の整数であり、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることがさらに好ましく、1または2であることが最も好ましい。
次に、本発明のセルロース混合酸エステル中脂肪酸エステル残基において、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基等があげられる。好ましくはアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基であり、特に好ましいのはアセチル基である。本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては例えば前記の一般式(I)のXとして例示したものがあげられる。
さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。一般式(I)で表される芳香族アシル基の具体例は下記に示す通りであるが、その中でも、好ましいのは、No.1、3、5、6、8、13、18、28、より好ましいのはNo.1、3、6、13である。
次に、セルロースの水酸基への芳香族アシル基の置換は、一般的には芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物および混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に好ましいのは芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journal of AppliedPolymer Science、Vol.29、3981−3990(1984)記載)が挙げられる。
本発明の第2位相差領域に用いるセルロース混合酸エステル化合物の製造方法としては、(1)セルロース脂肪酸モノエステルまたはジエステルを一旦製造したのち、残りの水酸基に前記一般式(I)で表される芳香族アシル基を導入する方法、(2)セルロースに直接に、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合酸無水物を反応させる方法、などがあげられる。(1)においては、セルロース脂肪酸エステルまたはジエステルの製造方法自体は周知の方法であるが、これにさらに芳香族アシル基を導入する後段の反応は、該芳香族アシル基の種類によって異なり、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃で、反応時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜300分で行われる。また(2)の混合酸無水物を用いる方法も、反応条件は混合酸無水物の種類によって変わるが、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃、反応時間は、好ましくは30〜300分、より好ましくは60〜200分である。上記のいずれの反応も、反応を無溶媒または溶媒中のいずれで行ってもよいが、好ましくは溶媒を用いて行われる。溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどを用いることができる。
芳香族アシル基の置換度はセルロース脂肪酸モノエステルの場合、残存する水酸基に対して2.0以下、好ましくは0.1〜2.0である。また、セルロース脂肪酸ジエステル(二酢酸セルロース)の場合、残存する水酸基に対して好ましくは1.1以下、より好ましくは0.1〜1.1である。
特に、本発明の第2位相差領域におけるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度PAが1.5〜3.0であり、芳香族アシル基の置換度が0.1〜1.0であることが好ましい。
以下に一般式(I)で表される芳香族アシル基の具体例を示すが、本発明はこれに限定するものではない。
Figure 0004637698
Figure 0004637698
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本発明で用いられるセルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
この方法において、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖β1→4−グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフィルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
重合度の高い(分子量の大きい)セルロースエステルを得るためには、エステル化反応工程における最高温度を50℃以下に調節することが重要である。最高温度は、好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは37〜47℃に調節する。反応温度が35℃以上であれば、エステル化反応が円滑に進行するので好ましい。反応温度が50℃以下であれば、セルロースエステルの重合度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。
エステル化反応の後、温度上昇を抑制しながら反応を停止すると、さらに重合度の低下を抑制でき、高い重合度のセルロースエステルを合成できる。すなわち、反応終了後に反応停止剤(例えば、水、酢酸)を添加すると、エステル化反応に関与しなかった過剰の酸無水物は、加水分解して対応する有機酸を副成する。この加水分解反応は激しい発熱を伴い、反応装置内の温度が上昇する。反応停止剤の添加速度が大きすぎることがなければ、反応装置の冷却能力を超えて急激に発熱して、セルロース主鎖の加水分解反応が著しく進行し、得られるセルロースエステルの重合度が低下するなどの問題が生じることはない。また、エステル化の反応中に触媒の一部はセルロースと結合しており、その大部分は反応停止剤の添加中にセルロースから解離する。このとき反応停止剤の添加速度が大きすぎなければ、触媒が解離するために充分な反応時間が確保され、触媒の一部がセルロースに結合した状態で残るなどの問題は生じにくい。強酸の触媒が一部結合しているセルロースエステルは安定性が非常に悪く、製品の乾燥時の熱などで容易に分解して重合度が低下する。これらの理由により、エステル化反応の後、好ましくは4分以上、さらに好ましくは4〜30分の時間をかけて反応停止剤を添加して、反応を停止することが望ましい。なお、反応停止剤の添加時間が30分以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題が生じないのでより好ましい。
反応停止剤としては、一般に酸無水物を分解する水やアルコールが用いられている。ただし、本発明では、各種有機溶媒への溶解性が低いトリエステルを析出させないために、水と有機酸との混合物が、反応停止剤として好ましく用いられる。以上のような条件でエステル化反応を実施すると、質量平均重合度が500以上である高分子量セルロースエステルを容易に合成することができる。
レターデーション発現剤
本発明に使用するセルロースアシレートフィルムはレターデーション発現剤(特に、Reを発現させるためのもの)を加えてもよい。レターデーション発現剤としては、例えば、特開2002−296421号公報または特開2002−363343号公報に記載されている化合物を用いることができる。レターデーション発現剤の含量は、セルロースアシレートフィルムの重量(固形分)の、0.01〜30重%であることが好ましく、0.1%〜25重量%がさらに好ましく、0.1〜20重量%が最も好ましい。
レターデーション低下剤
本発明で採用するセルロースアシレートフィルムは所望の厚み方向のレターデーション(特に、Rth)を実現するために、レターデーション低下剤(特に、Rth低下剤)を用いてもよい。レターデーション低下剤としては、例えば、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報、または、特開2005−113113号公報に記載されている化合物を用いることができる。レターデーション低下剤の含量は、セルロースアシレートフィルムの重量(固形分)の、0.01〜30重%であることが好ましい。
波長分散調整剤
本発明で採用するセルロースアシレートフィルムは波長分散調整剤を添加してもよい。波長分散剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で表される化合物が本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(101)
1−Q2−OH
(一般式(101)中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環を表し、Q2は芳香族環を表す。)
1は含窒素方向芳香族へテロ環を表し、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンゾセレナゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ナフトチアゾール環、ナフトオキサゾール環、アザベンズイミダゾール環、プリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、トリアザインデン環、テトラザインデン環等が挙げられ、さらに好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環が好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾール環である。
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環はさらに置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環してさらに環を形成してもよい。
2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは、炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、さらに好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。さらに好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
2で表される芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2はさらに置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えば、イミダゾリル環、ピリジル環、キノリル環、フリル環、ピペリジル環、モルホリノ環、ベンゾオキサゾリル環、ベンズイミダゾリル環、ベンズチアゾリル環などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(101)で表される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
Figure 0004637698
(一般式(101−A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9の置換基としては前述の置換基Tが好ましい。またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1およびR3としてより好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、よりさらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
2およびR4としてより好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、よりさらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
5およびR8としてより好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、よりさらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
6およびR7としてより好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、よりさらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(101―A)で表される化合物のうち、より好ましい化合物は、下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
Figure 0004637698
(一般式(101−B)中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 0004637698
Figure 0004637698
以上例示したベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに本発明のセルロースアシレートフィルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
ベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で表される化合物が好ましく用いられる。
一般式(102)
Figure 0004637698
(一般式(102)中、Q21およびQ22はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X0はNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。)
21またはQ22で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。
21またはQ22で表される芳香族炭化水素環として好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、さらに好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)さらに好ましくはベンゼン環である。
21またはQ22で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子の少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
21またはQ22で表される芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。
21またはQ22さらに置換基を有してもよく、上述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
0はNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては上述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、X0として好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基はさらに置換してもよい。)、または酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
一般式(102)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
Figure 0004637698
(一般式(102−A)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
21、R23、R24、R25、R26、R28およびR29はとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基、ヒドロキシ基、であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、ヒドロキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。
22として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
27として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、水素原子である。
一般式(102)で表される化合物中、好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
Figure 0004637698
(一般式(102−B)中、R10は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。)
10は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数5〜12のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
一般式(102)で表される化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 0004637698
Figure 0004637698
Figure 0004637698
また本発明に用いられる波長分散調整剤ののうち、シアノ基を含む化合物としては一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
Figure 0004637698
(一般式(103)中、Q31およびQ32はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方はシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)
31またはQ32で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、さらに好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)さらに好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
31またはQ32で表される芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
31およびQ32はさらに置換基を有してもよく、上述の置換基Tが好ましい。
1およびX2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方はシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X1およびX2はで表される置換基はさらに他の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)で表される化合物中、好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
一般式(103−A)
Figure 0004637698
(一般式(103−A)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39およびR30はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(103)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。)
31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39およびR30はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
31、R32、R34、R35、R36、R37、R39およびR30として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
33およびR38として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103−A)で表される化合物中、より好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
一般式(103−B)
Figure 0004637698
(一般式(103−B)中、R3およびR8は、一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子または置換基を表す。)
3は、水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合はさらに他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103−B)で表される化合物中、より好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
一般式(103−C)
Figure 0004637698
(一般式(103−C)中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R331は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
331はR3およびR8が両方水素の場合には、好ましくは炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
331はR3およびR8が水素以外の場合には、好ましくは一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
一般式(103)で表される化合物は、Jounal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 0004637698
Figure 0004637698
Figure 0004637698
本発明に使用するセルロースアシレートフィルムは、押出し法、溶液流延法等の種々の方法を利用して作製することができる。フィルム状に成形した後、所定の光学特性を得るために、さらに延伸処理を施すことが望ましい。溶液流延法を利用して前記フィルムを作製する場合は、ドープ中に、可塑剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜20質量%)、改質剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜20質量%)、紫外線吸収剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.001〜10質量%)、平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.001〜5質量%)、フッ素系界面活性剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.001〜2質量%)、剥離剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して(好ましい添加量はセルロースエステルに対して(0.0001〜2質量%)、劣化防止剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.0001〜2質量%)、赤外線吸収剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜5質量%)等の添加剤を含有させてもよい。その他、フィルムの作製方法については、発明公開技法(公開技法2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)等に詳細が記載されていて、本発明に適用することができる。
得られたセルロースアシレートフィルムには、適宜、表面処理を行うことにより、セルロースアシレート層と他の層との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、ケン化処理(酸ケン化処理、アルカリケン化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリケン化処理が好ましい。
なお、前述した様に、分極率異方性Δαが大きい置換基を含むセルロースアシレートを含むフィルムのみで前記第2位相差領域に要求される光学特性を満たすこともできるが、本発明には、前記第2位相差領域が、他の複屈折性フィルムや他の位相差膜を含む態様も含まれる。
[保護膜]
本発明の偏光板は、偏光膜の片面または両面に保護膜を設けてもよい。
本発明における偏光膜用の保護膜としては、可視光領域に吸収が無く、光透過率が80%以上であり、複屈折性に基づくレターデーションが小さいものが好ましい。
具体的には、保護膜のうち、液晶層に近い側の保護膜の、面内のレターデーション値(Re)は、0〜30nmが好ましく、0〜15nmがより好ましく、0〜5nmが最も好ましい。さらに、保護膜のうち、液晶層に近い側の保護膜の、厚み方向のレターデーション値(Rth)は、−40nm〜40nmが好ましく、−20nm〜20nmがより好ましく、−10nm〜10nmが最も好ましい。保護膜は、上記のような特性を有するフィルムであれば特に定めることなく好適に用いることができるが、偏光膜の耐久性の観点からはセルロースアシレートおよびノルボルネン系のフィルムがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムのRthを小さくする方法として、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報に記載の方法等を採用できる。また、セルロースアシレートフィルムの厚みを小さくすることによっても、Rthを小さくすることができる。
本発明において、第1偏光膜用および/または第2偏光膜用保護膜としてのセルロースシレートフィルムの厚みは、10〜60μmであるのが好ましく、20〜45μmであることがさらに好ましい。
[偏光板一体型光学補償フィルム]
本発明は、偏光膜と光学補償機能を有する第2位相差領域(位相差膜(Z2))が一体化されて作製された、より好ましくは、偏光膜と、光学補償機能を有する第1位相差領域および第2位相差領域が一体化されて作製された、偏光板一体型補償フィルムに関する。
本発明の偏光板一体型光学補償フィルムを用いることで、より簡易な構成で、液晶表示装置の視野角特性を改善できる。また、本発明の偏光板一体型光学補償フィルムは、ロールツーロールで長尺状に作製し、その後所望の大きさに裁断して、液晶表示装置に組み込むことができるので、簡易な工程で作製可能であり、液晶表示装置の生産性の改善にも寄与する。
本発明の偏光板一体型光学補償フィルムの一実施形態は、偏光膜と、位相差膜(Z2)とを有し、
偏光膜は、該偏光膜の長手方向に平行な吸収軸を有し、位相差膜(Z2)は、分極率異方性大きい置換基を有するセルロースアシレートフィルムからなり、レターデーションが上述した式(a)および式(b)を満たし、かつ、該位相差膜(Z2)の長手方向に実質的に直交または平行な遅相軸を有する。
さらに好ましくは、偏光膜と第2位相差領域(位相差膜(Z2))との間に、第1位相差領域(例えば、位相差膜(Z1))を有する。
本実施形態の偏光板一体型光学補償フィルムは、偏光膜としての機能のみならず、前記第1位相差領域および第2位相差領域としての光学特性を満足する位相差層をそれぞれ有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フィルムは、偏光膜と位相差膜(Z2)との光学的軸合わせが容易であり、例えば、ロールツーロールで長尺状に作製され、所定の大きさに裁断された後、液晶表示装置(例えば、上述の図2の構成の液晶表示装置)に用いられる。
本発明の偏光板一体型光学補償フィルムの他の好ましい実施形態は、偏光膜と、第2位相差領域(位相差膜(Z2))と、第1位相差領域(例えば、位相差膜(Z1))とを、この順序で有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フィルムは、偏光膜としての機能のみならず、前記第1位相差領域および第2位相差領域としての光学特性を満足する位相差層をそれぞれ有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フィルムは、偏光膜と第2位相差領域との光学的軸合わせが容易であり、例えば、ロールツーロールで長尺状に作製され、所定の大きさに裁断された後、液晶表示装置(例えば、上述の図3の構成の液晶表示装置)に用いられる。
なお、本発明の偏光板一体型光学補償フィルムは、偏光膜の上記位相差膜が形成されている側と反対の表面に、偏光膜用保護膜を有していてもよい。また、偏光膜と上記位相差膜との間にも、偏光膜偏光膜用の保護膜を有していてもよいが、かかる場合は、該保護膜の複屈折性に基づくレターデーションは小さいのが好ましく、面内のレターデーションReおよび厚み方向のレターデーションRthは、いずれも0nmに近い程好ましい。好ましくは、0±5nmである。特に、Rth値を40nm以下とすることにより、よりコントラストの向上を実現することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
<IPSモード液晶セルの作製>
一枚のガラス基板上に、図1に示す様に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中、画素電極2および表示電極3)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図1中に示す方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ:d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<強誘電性液晶セルの作製>
ITO電極付ガラス基板上ポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。この基板を2枚製作し、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を1.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.15および自発分極(Ps)が12nCcm-2である強誘電性液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は280nmであった。
<第2位相差領域の作製(位相差膜(Z2))の作製>
(セルロースアシレート溶液の調製)
表1に記載の組成物を耐圧性のミキシングタンクに投入して攪拌し、セルロースアシレート溶液を調製した。得られた溶液は絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過して所望のセルロースアシレート溶液を得た。
表1中、単位は質量部で示している。また、TPPはトリフェニルフォスフェートを、BDPはビフェニルジフェニルフォスフェートを、それぞれ示している。さらに、芳香族アシル基の番号は、上記一般式(I)で表される基の例示化合物として挙げた番号である。PAは、アシル基の総置換度を示している。
Figure 0004637698
(添加剤溶液の調整)
別の耐圧性のミキシングタンクに表2に記載の化合物を投入して攪拌し、添加剤溶液を調製した。得られた溶液はポールフィルター(30μm)を用いて濾過して所望の添加剤溶液を得た。
表2中、単位は、質量部で示している。
Figure 0004637698
レターデーション低下剤(X)
Figure 0004637698
Figure 0004637698
(セルロースアシレートフィルムの作製)
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通してバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは20m/分とした。流延部から50cm手前で、流延して回転してきた自己支持性のあるセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取った。
剥ぎ取ったフィルムの端部をテンターのクリップで挟み、幅方向に延伸した。テンターゾーンの給気温度は140℃とし、所定の延伸倍率で延伸処理を行なった。
延伸処理したフィルムをテンターから離脱し、端部を切り取ったあと、乾燥処理を行なった。乾燥温度は所定の光学性能を実現するように120℃〜140℃の間で調製した。このようにして得られたフィルムを表3に示した。
(光学性能評価)
得られたフィルムから40×50mmの大きさのサンプルを切り出し、自動複屈折計KOBRA21ADHを用いて測定した。遅相軸の検出は上記のレターデーション値の測定の際に得られる配向角から決定した。結果を表3に示した。表3中、軸方向TDは横方向を、MDは縦方向を示している。また、各主成分の使用量は質量部で示している。
Figure 0004637698
<第1位相差領域1の作製>
(位相差膜(Z1)の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、下記の組成を有するセルロースアセテート溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液の組成
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(DX)16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液487質量部にレターデーション上昇剤溶液7質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。
レターデーション上昇剤(DX)
Figure 0004637698
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、60℃の温風で1分間乾燥し、フィルムをバンドから剥ぎ取った。次にフィルムを140℃の乾燥風で10分間乾燥し、厚さ80μmのセルロースアセテートフィルム1を製作した。
このフィルムの光学特性は自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することにより求めたところ、Re=8nm、Rth=82nmであった。
(保護膜の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、下記の組成を有するセルロースアセテート溶液Aを調製した。
Figure 0004637698
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子(AELOSIL R972、日本アエロジル(株)製)20質量部と、メタノール80質量部とを30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット材溶液Aを作製した。
Figure 0004637698
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Aを調整した。レターデーション低下剤および波長分散調整剤は下記の化合物を用いた。
Figure 0004637698
波長分散調整剤(X)
Figure 0004637698
前記セルロースアシレート溶液Aを94.6質量部、マット材溶液Aを1.3質量部、添加剤溶液Aを4.1質量部を、それぞれろ過後に混合した組成物溶液を、流延部、テンター部、乾燥部から構成されるバンド流延機を用いて流延した。前記組成物溶液中、レターデーション低下剤(X)および波長分散調整剤(X)のセルロースアシレートに対する質量比は11.7%および1.2%であった。
バンド上で流延したフィルムを剥離した後、テンターで両端を保持しながら乾燥させた。残留溶剤量が約20%のところでテンターから離脱させ、クリップ跡のある両端を切り落とした後、複数のロールからなる乾燥部で100〜135℃の温度範囲で乾燥させて巻き取った。このようにして得た保護膜の膜厚は80μmであった。
このフィルムの光学特性は自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することにより求めたところ、Re(590)=0nm、Rth(590)=−1nmであった。
<偏光板一体型光学補償フィルム1の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=2nm、Rth=45nm、厚さ80μm)を、もう一方の面に、ケン化処理した第1位相差領域1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第2位相差領域1を、接着剤を用いて、第1位相差領域1の上に連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム1を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域1の遅相軸はフィルム長手方向に対して直交していた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム1の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板1を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
<偏光板一体型光学補償フィルム2の作製>
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、もう一方の面に、ケン化処理した第1位相差領域1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第2位相差領域2を、接着剤を用いて、第1位相差領域1の上に連続して貼り合わせ、長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム2を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域2の遅相軸はフィルム長手方向に対して直交していた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム2の任意の部分から同様に裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板2を20枚得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム3の作製>
上述と同様にして得た長尺状の偏光膜の両面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第2位相差領域3の2枚を、接着剤を用いて、この上に連続して貼り合わせて長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム3を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域3の遅相軸はフィルム長手方向に対して直交していた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム3の任意の部分から同様に裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板3を10枚得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム4の作製>
上述と同様にして得た長尺状の偏光膜の一方の面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、もう一方の面にケン化処理した第2位相差領域4を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域1を、接着剤を用いて、第2位相差領域4の上に連続して貼り合わせて長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム4を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域4の遅相軸はフィルム長手方向に対して平行になっていた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム4の任意の部分から同様に裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板4を10枚得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム5の作製>
上述と同様にして得た長尺状の偏光膜の一方の面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、もう一方の面にケン化処理した第2位相差領域5を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域1を、接着剤を用いて、第2位相差領域5の上に連続して貼り合わせて長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム5を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域5の遅相軸はフィルム長手方向に対して平行になっていた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム5の任意の部分から同様に裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板5を10枚得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム6の作製>
上述と同様にして得た長尺状の偏光膜の一方の面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、もう一方の面にケン化処理した第2位相差領域6を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述のフジタックTD80UF(第一位相差領域に相当する)を、接着剤を用いて、第2位相差領域6の上に連続して貼り合わせて長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム6を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、第2位相差領域6の遅相軸はフィルム長手方向に対して平行になっていた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム6の任意の部分から同様に裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板6を20枚得た。
<偏光板Aの作製>
同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして前記製作の厚さ60μmの保護膜1を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Aを形成した。
<偏光板Bの作製>
同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックT40UZ、富士写真フイルム(株)製、Re=1nm、Rth=35nm、厚さ40μm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の両面に貼り付け偏光板Bを形成した。
[実施例1]
<液晶表示装置1の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム1をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交にして(偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向と平行であるようにして)、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に20cm×20cmの大きさで、一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように裁断した市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)を偏光板一体型光学補償フィルム1とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置1を作製した。
上記液晶表示装置1を10台作製し、白表示と黒表示を行い、その正面方向の輝度の比をコントラスト比として求めた。位相差板を含まず、偏光板のみを貼り合せた液晶表示装置のコントラスト比に対して、90%以下であるものを不良品とした。10台の液晶表示装置1のうちの不良品の発生台数は0台であった。
さらに作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。測定はまず、暗室内に設置されたシャーカステン上に、偏光板を貼り合わせない状態で上記IPSモード液晶セルを置き、液晶セルのラビング方向を基準として左方向に45度の方位で、且つ液晶セル法線方向から方向60°の方向に1m離れたところに設置された輝度計で輝度1を測定した。
次いで、上記と同じシャーカステン上に上記液晶表示装置1を同様に配置して、暗表示の状態で同様に輝度2を測定し、これを輝度1に対する100分率で表したものを漏れ光とした。測定した漏れ光の、良品10台の平均値は0.17%であった。
[実施例2]
<液晶表示装置2の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム2をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、上記で製作した偏光板Bを偏光板一体型光学補償フィルム2とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置2を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置2のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.12%であった。
[実施例3]
<液晶表示装置3の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム2をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、上記で製作した偏光板Aを偏光板一体型光学補償フィルム2とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置3を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置3のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.04%であった。
[実施例4]
<液晶表示装置4の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム3をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、上記で製作した偏光板Aを偏光板一体型光学補償フィルム3とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置4を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置4のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
[実施例5]
<液晶表示装置5の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム4をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)を偏光板一体型光学補償フィルム4とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置5を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置5のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.10%であった。
[実施例6]
<液晶表示装置6の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム5をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、上記で製作した偏光板Aを偏光板一体型光学補償フィルム5とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置6を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置6のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
[実施例7]
<液晶表示装置7の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム6をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、上記で製作した偏光板Aを偏光板一体型光学補償フィルム6とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置7を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置7のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
[実施例8]
<液晶表示装置8の作製>
作製した強誘電性液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム6をその吸収軸が液晶セルに直流電圧を印加した場合の液晶の配向方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、製作した偏光板Aを偏光板一体型光学補償フィルム6とクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置7を作製した。このように作製した10台の液晶表示装置7のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
[比較例1]
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の両面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を貼合して、20cm×20cmの大きさに10枚裁断した。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。さらにロール状の第2位相差領域3の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの位相差板23Aを10枚得た。なお、裁断は一方の辺が第2位相差領域3の遅相軸と平行になるように行った。位相差板23Aの遅相軸と偏光板の吸収軸が直交になるようにして位相差板と偏光板を貼り合せ、偏光板一体型光学補償フィルム7とし、これを10枚作製した。
<液晶表示装置9の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルム7をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記で作製した偏光板Aをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置9を作製した。
上記液晶表示装置9を10台作製し、実施例4と同様にして調べた不良品の発生台数は3台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品7台の平均値は0.09%であった。この結果から、一旦長尺状の偏光板一体型光学補償フィルムとし、その後、裁断して作製したほうが、偏光板と位相差版とを各々裁断した後、積層して作製するよりも、不良品の発生が極めて少ないことがわかった。
[比較例2]
<液晶表示装置10の作製>
同様に作製したIPSモード液晶セルの両方に、20cm×20cmの大きさで、一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように裁断した市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)をクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置10を作製した。 上記液晶表示装置10を10台作製し、実施例1と同様にして調べた不良品の発生台数は0台であった。さらに、実施例1と同様な方法で漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.55%であった。
本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略図である。
符号の説明
1 液晶素子画素領域
2 画素電極
3 表示電極
4 ラビング方向
5a、5b 黒表示時の液晶化合物のダイレクター
6a、6b 白表示時の液晶化合物のダイレクター
7a,7b 第1偏光膜用保護膜
8 第1偏光膜
9 第1偏光膜の偏光透過軸
10 第1位相差領域
12 第2位相差領域
13 第2位相差領域の遅相軸
14 第1基板
15 第1基板ラビング方向
16 液晶層
17 液晶分子の遅相軸方向
18 第2基板
19 第2基板ラビング方向
20a、20b 第2偏光膜用保護膜
21 第2偏光膜
22 第2偏光膜偏光透過軸

Claims (8)

  1. 少なくとも、第1偏光膜と、第2位相差膜と、第1位相差膜と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルとが該順で配置され、かつ、第2偏光膜を含み、黒表示時に前記液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
    前記第1位相差膜の厚み方向のレターデーション値が−10nm〜150nmであり、第1位相差膜の面内レターデーション値が50nm以下であり、第2位相差膜の厚み方向のレターデーション値が0nm〜−100nmであり、第2位相差膜の面内レターデーション値が50nm〜330nmであり、
    前記第2位相差膜下記式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10 -24 cm 3 〜30×10 -24 cm 3 である置換基を有し、脂肪酸アシル基と芳香族アシル基とを含む混合酸エステルからなり、アシル基の総置換度PAが1.5〜3.0であり、芳香族アシル基の置換度が0.1〜1.1であるセルロースアシレートフィルムであって、前記芳香族アシル基が、下記一般式(I)で表されることを特徴とするセルロースアシレートフィルムからなり、前記第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向と平行であって、前記第2位相差膜の遅相軸が、前記第1偏光膜の透過軸に実質的に直交である液晶表示装置。
    式(1) Δα=αx−(αy+αz)/2
    (式(1)中、αx、αyおよびαzは、それぞれ、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzを満足する)
    一般式(I)
    Figure 0004637698
    (一般式(I)中、Xは、一価の置換基を表し、nは、0〜5の整数を表す。)
  2. 前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚み方向のレターデーション値が40nm〜−40nmである、請求項に記載の液晶表示装置。
  3. 前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚み方向のレターデーション値が20nm〜−20nmである、請求項に記載の液晶表示装置。
  4. 前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜の厚みが60μm以下である、請求項のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記第1偏光膜および/または前記第2偏光膜の、少なくとも前記液晶層に近い側の片面に、保護膜が設けられており、該保護膜がセルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムである請求項のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  6. 記第2位相差膜が、前記第1偏光膜に隣接している、請求項のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  7. 前記液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に、前記第1位相差膜および前記第2位相差膜が、配置されている請求項のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  8. 第2位相差膜が延伸処理されたセルロースアシレートフィルムからなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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