JP4636422B2 - ポリイソシアネート硬化剤、その製造方法および該硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物 - Google Patents

ポリイソシアネート硬化剤、その製造方法および該硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイソシアネート硬化剤、その製造方法および該硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物に関する。更に詳細には、ポットライフを短くすることなしに、エージング時間を短縮でき、かつ、接着性が良好なポリイソシアネート硬化剤、その製造方法および該硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、包装方法として、その強度、商品保護性、包装時の作業適性、包装による宣伝効果、プラスチック材料の大量、安価な供給による包装コストの低減等の理由から、複合フレキシブルパッケージングが著しく発展してきている。このようなフィルムやシートのラミネートに用いられる接着剤としては、接着性能や耐寒、耐熱性に優れている点、各種プラスチック、金属箔等の基材への適応範囲の広さ等から、一般には、水酸基等の活性水素基を有する主剤とイソシアネート基を有する硬化剤からなる二液型ポリウレタン系接着剤が主流となっている。このようなラミネート接着剤として、特開平5−51574号公報には、ポリエステルポリウレタンポリオール、分子末端にカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂よりなる混合物、オルトリン酸又はそのエステル化合物、及び有機イソシアネート化合物、更に必要であればシランカップリング剤を含有してなる接着剤組成物が挙げられ、有機イソシアネートにはトリレンジイソシアネートのウレタン変性体やイソシアヌレート変性体が使用できる旨の記載がある。
【0003】
しかしながら、ラミネート工程における接着剤層の硬化時間の短縮が求められているにもかかわらず、従来のラミネート接着剤用硬化剤は、主剤と硬化剤の反応性を考慮したものが少ない。すなわち、塗布後の接着剤の硬化反応が非常に遅いため、いわゆるエージングと称する硬化促進工程が必要となっている。具体的にいえば、ラミネート加工したフィルムを35〜60℃の保温室にて3〜5日間程度保管してエージングすることにより接着剤を硬化させることが必要となってくる。この際、エージング条件によって接着剤の硬化の度合いが変ってくるため、ラミネートフィルムの接着強度に影響を及ぼすことがあり、エージングが不十分な場合には、接着剤の硬化不良によるデラミネーション(層剥離)を引き起こすことがある。特に脂肪族ポリウレタン系接着剤では、この硬化反応にかなりの長時間を要する。従って、このようなエージング工程は、ドライラミネーションプロセスにおいて不可欠の工程であり、短納期化への対応を困難としていた。また,エージング用の保温室設置のための設備投資及びその後の保温のためのユーティリティー等の費用が必要であった。
【0004】
エージング時間を短縮するためには、触媒の添加が効果的である。このような技術としては、特開平9−316422号公報記載の技術が挙げられる。しかしながら、特開平9−316422号公報では、単にポリウレタン樹脂(溶液)に触媒を配合したものであるため、エージング時間は短縮されたが、今度は、主剤と硬化剤を配合した後のポットライフ(可使時間)まで短くなってしまうという新たな問題が発生してしまう。ポットライフが短いと、接着剤にロスが出るだけでなく、しばしば固化した接着剤による塗布装置の故障の原因になりやすい。
【0005】
なお、特開昭60−15419号公報には、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体と数平均分子量5,000以下の多価アルコールとを反応させて得られるポリイソシアネート樹脂に関する記載がある。特開平5−51574号公報に記載されている硬化剤としての有機ポリイソシアネートとしては、低分子量イソシアネート化合物、低分子量イソシアネート化合物と水もしくは多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンイソシアネート、低分子量イソシアネート化合物の二量体や三量体、が挙げられている。
【0006】
しかし、特開昭60−15419号公報には、このポリイソシアネート樹脂は、塗料用硬化剤として有用である旨の記載はあるが、ラミネート接着剤の硬化剤として用いることを示唆する記載はない。特開平5−51574号公報には、ジイソシアネートと高分子ポリオールからなる、ウレタン基及びイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを示唆する記載はない。特開平5−51574号公報記載のポリイソシアネート硬化剤では、ポットライフを短くすることなしにエージング時間を短縮するという問題を解決することは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポットライフを短くすることなしにエージング時間を短縮し、かつ、接着性が良好なポリイソシアネート硬化剤、その製造方法および該硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が鋭意検討した結果、特定のポリイソシアネートと特定のポリオールから得られるポリイソシアネート硬化剤が上記目的を達成することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)に示されるものである。
(1)ポリイソシアネート硬化剤とポリウレタン樹脂からなるラミネート用形成性接着剤組成物において、ポリイソシアネート硬化剤が(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物から得られるイソシアヌレート基とウレタン基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを含有することを特徴とする。
【0010】
(2)ポリイソシアネート硬化剤の製造方法が、(イ):(a)芳香族ジイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、ウレタン変性ポリイソシアネートを得る工程、(ロ):(イ)で得られたポリイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程を含むことを特徴とする。
【0011】
(3)ポリイソシアネート硬化剤の製造方法が、(ハ):(a)芳香族ジイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを得る工程、(ニ):(ハ)で得られたポリイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程を含むことを特徴とする。
【0012】
(4)ポリイソシアネート硬化剤の製造方法が、(ホ):(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物の存在下で、ウレタン化反応とイソシアヌレート化反応を併行して行う工程を含むことを特徴とする。
【0013】
(5)ポリウレタン樹脂が、ポリエステル系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明に使用する原料について説明する。
【0015】
本発明に使用される(a)芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、(a)のウレタン変性体(但し、ポリオールは後述する(b)以外)、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー変性体、トリマー変性体、ダイマー・トリマー変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられ、これらは単体又は2種類以上の混合物として用いられる。
【0016】
本発明で好ましい(a)芳香族ジイソシアネートは、主剤との反応性、硬化剤の生産性、接着性等を考慮すると、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート単品又は任意の混合物であり、特に好ましくは2,4−トリレンジイソシアネート単品である。
【0017】
本発明では、必要に応じて(a)以外の有機ポリイソシアネートを併用することができ、例えば、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート、(a)以外のポリイソシアネートのウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー変性体、トリマー変性体、ダイマー・トリマー変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる(b)ジオール化合物は、数平均分子量500〜2,000、好ましくは500〜1,800であり、1分子中に水酸基を実質的に2個有する化合物である。このようなジオール化合物としては、ポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートエステルジオール、ポリカーボネートエーテルジオール、ポリオレフィンジオール等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
(b)ジオール化合物の数平均分子量が下限未満の場合は、接着剤の接着性が低下しやすい。また、上限を越える場合は、接着時間が長くなりやすい。
【0020】
なお、「水酸基を実質的に2個有する」とは、1分子中に水酸基をほぼ2個有するということである。例えばポリエステルの場合、厳密には、末端の一部はカルボキシル基となっているが、通常、カルボキシル基は水酸基のモル数の1%以下程度となっており、実質上、完全ジオール化合物と見なして差し支えない。
【0021】
(b)が有する水酸基が、実質的には2個を越える場合は、ポリイソシアネート硬化剤の製造中にゲル化する場合がある。1個未満の場合は、ラミネート接着剤の物性が低下する場合がある。
【0022】
ポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオールとしては、公知のコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の低分子ジオール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ジアミン類と低分子ジオール類との混合物、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類(但し、1分子に有する水酸基とアミノ基の和は2)の1種以上又は低分子アミノアルコールと低分子ジオール類との混合物、との脱水縮合反応で得られるものが挙げられる。また、低分子ジオール、低分子ジアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルジオールが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートジオールとしては、前述のポリエステルジオールの合成に用いられる低分子ジオールと、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等、分子中にカーボネート基を1個有する低分子化合物との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
【0024】
ポリエーテルジオールとしては、前述のポリエステルジオールに用いられる低分子ジオール、低分子ジアミン、低分子アミノアルコール(但し、1分子に有する水酸基とアミノ基の和は2)を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリ(オキシエチレン)ジオール、ポリ(オキシプロピレン)ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール等、及びこれらを共重合したポリエーテルジオール、更に、前述のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールを開始剤としたポリエステルエーテルジオールが挙げられる。
【0025】
ポリオレフィンジオールとしては、1分子中に水酸基を実質的に2個有する、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0026】
本発明で好ましいジオール化合物は、接着性等を考慮すると、側鎖アルキル基を有するものである。このようなジオール化合物は、側鎖を有する低分子ジオールとジカルボン酸から得られるポリエステルジオール、側鎖を有する低分子ジオールとエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるポリカーボネートジオール、2官能の活性水素基含有化合物に炭素数3以上のアルキレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルジオール等が挙げられる。特に好ましいジオール化合物は、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルジオール、ポリ(オキシプロピレン)ジオールである。
【0027】
その他、接着性の向上、主剤との相溶性の改良等のため、必要に応じて(b)以外の活性水素基含有化合物、例えば前述の低分子ジオールそのもの、低分子ジアミン、低分子アミノアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール、これらを用いたポリオール、数平均分子量2,000超のポリオール等を併用することができる。
【0028】
本発明のポリイソシアネート硬化剤のイソシアヌレート基含有量は、固形分換算で5〜25質量%が好ましく、更には7〜23質量%がより好ましい。イソシアヌレート基含有量が少なすぎる場合、接着剤の硬化速度が遅くなり、ひいてはエージングが長くなりやすい。また、多すぎる場合は、ポリイソシアネート硬化剤の粘度が大きくなり、作業性が低下しやすい。
【0029】
本発明のポリイソシアネート硬化剤のイソシアネート含量は、固形分換算で5〜15質量%が好ましく、更には7〜13質量%がより好ましい。イソシアネート含量が小さすぎる場合は、接着強度が不十分となりやすい。イソシアネート含量が大きすぎる場合は、接着剤の柔軟性が低下したり、接着剤の硬化速度が遅くなりやすい。
【0030】
本発明のポリイソシアネート硬化剤において、(b)の含有量は、固形分換算で10〜90質量%が好ましく、更には15〜85質量%がより好ましい。(b)の含有量がこの範囲外の場合は、接着強度が低下しやすくなる。
【0031】
本発明のポリイソシアネート硬化剤には、必要に応じて、各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては例えば、顔料、染料、溶剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、防かび剤、抗菌剤、防腐剤、触媒、充填剤等が挙げられる。配合方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられる。
【0032】
次に、本発明の製造手順について述べる。本発明のポリイソシアネート硬化剤の製造手順は以下に示す工程を含むものである。
【0033】
A法)(イ):(a)芳香族ジイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、ウレタン変性ポリイソシアネートを得る工程。(ロ):(イ)で得られたポリイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程。
【0034】
B法)(ハ):(a)芳香族ジイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを得る工程。(ニ):(ハ)で得られたポリイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程。
【0035】
C法)(ホ):(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物の存在下で、ウレタン化反応とイソシアヌレート化反応を併行して行う工程。
【0036】
まず、A法について述べる。A法は、(イ)ウレタン化反応工程後、(ロ)イソシアヌレート化反応工程に進む方法である。
【0037】
(イ)ウレタン化反応工程は、(a)芳香族ジイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させる工程である。この際、公知のウレタン化触媒を用いることができるが、本発明においては特に用いることなく反応は進行する。これは、ウレタン化反応時には、活性水素基よりイソシアネート基が過剰に存在し、かつ、このイソシアネート基は、芳香族環に直結しているため反応性が高いためである。なお、ウレタン化の反応温度は0〜120℃、好ましくは20〜100℃である。
【0038】
その後、(ロ)イソシアヌレート化反応工程に進む。(b)イソシアヌレート化反応工程は、(イ)で得られたポリイソシアネートにイソシアヌレート化触媒を添加して行う。
【0039】
このイソシアヌレート化触媒としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド、酢酸テトラメチルアンモニウム塩、酢酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機弱酸塩、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のトリアルキルヒドロキシキルアンモニウムハイドロオキサイド、酢酸トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、酢酸トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、酢酸トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、酢酸トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム塩等の有機弱酸塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の金属塩等、公知の物は全て使用可能である。
【0040】
イソシアヌレート化触媒の添加量は、反応系に対して10〜10,000ppmの範囲から選択される。触媒の添加方法としては、一括仕込みの他に、分割添加等が挙げられる。分割添加の場合、各触媒仕込量は、同量でもよいし、異なっていてもよい。なお、イソシアヌレート化反応の反応温度は0〜120℃、好ましくは20〜100℃である。
【0041】
イソシアネート含量が目標値に達したところで、イソシアヌレート化反応の停止剤を添加して、反応を停止させる。この停止剤としては、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸、スルファミン酸基等を有する有機酸及びこれらのエステル類、アシルハライド等公知の物が使用できる。
【0042】
停止剤の添加量は、イソアヌレート化触媒に対して0.5〜2倍モル、更には0.8〜1.8倍モルが好ましい。停止剤の添加量が少なすぎる場合は、イソシアヌレート化反応が停止せず、ポリイソシアネート硬化剤のイソシアネート含量の低下や、ゲル化を起こす可能性がある。また、多すぎる場合はポリイソシアネート硬化剤の濁りや接着強度の低下を引き起こす可能性がある。
【0043】
続いて、B法について述べる。B法は、(ハ)イソシアヌレート化反応工程後、(ニ)ウレタン化反応工程に進む方法である。
【0044】
(ハ)イソシアヌレート化反応工程は、(a)芳香族ジイソシアネートにイソシアヌレート化触媒を添加して行う。
【0045】
このイソシアヌレート化触媒の種類及び添加量、停止剤の添加時機及び添加量については、前述の(ロ)と同様である。
【0046】
その後、(ニ)ウレタン化反応工程に進む。(ニ)ウレタン化反応工程は、(ハ)で得られたポリイソシアネートに、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を仕込んで反応させる工程である。
【0047】
このウレタン化反応も公知のウレタン化触媒を用いることができるが、本発明では特に用いなくてもよい。また、ウレタン化反応時におけるイソシアネート基と活性水素基のモル比は、前述の(イ)の場合と同様である。
【0048】
C法は、(ホ)ウレタン化反応とイソシアヌレート化反応を同時に行う工程を含む方法である。
【0049】
C法は、(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を仕込んだ後、イソシアヌレート化触媒を添加することで行う。ウレタン化反応は、A法、B法のところで述べたように、ウレタン化触媒は特に存在しなくても進むので、イソシアヌレート化反応とウレタン化反応が同時に進行することになる。
【0050】
このイソシアヌレート化触媒の種類及び添加量、停止剤の添加時機及び添加量については、前述の(ロ)と同様である。
【0051】
A法、B法、C法において、原料の(a)芳香族ジイソシアネートと(b)ジオール化合物との根本的な仕込みモル比は、(a)/(b)=2/1〜100/1、好ましくは3/1〜50/1である。(b)が多すぎる場合は、硬化剤の粘度が大きくなりすぎやすい。また、(b)が少なすぎる場合は、接着剤の接着性が低下しやすい。
【0052】
なお、A法、B法、C法とも、有機溶剤を仕込んでから、イソシアヌレート化反応を行うのが好ましい。これは、イソシヌレート化反応は、生成物が三次元化して溶剤に溶解しにくくなっているためである。この有機溶剤としては、イソシアネート基と不活性であればよく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、フルフラール等の非プロトン性極性溶剤の単品又は2種以上の混合物が挙げられる。なお、固形分は、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。固形分が低すぎる場合は、反応時間が長くなりやすい。固形分が高すぎる場合は、生成物が固化しやすくなり、作業性が低下する。本発明においては、ラミネート後の残留溶剤の少ないエステル系溶剤、特に酢酸エステル系溶剤が好ましい。
【0053】
このようにして得られたポリイソシアネート硬化剤における遊離(未反応)のジイソシアネート含有量は、1質量%以下が好ましい。遊離のジイソシアネート含有量が多すぎる場合は、臭気のため作業環境が低下する場合がある。
【0054】
A法、B法、C法とも、反応後、又は反応前に各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、前述のものが挙げられる。配合方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられる。
【0055】
本発明の硬化剤の使用方法は、主剤用の活性水素基含有樹脂に、前述の硬化剤を配合してから、被着体に塗布して用いる。この主剤に用いられる樹脂としては、他種類の被着体との接着性が良好であり、耐久性にも優れるポリウレタン樹脂が好ましい。
【0056】
また、ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の有機溶剤の溶液タイプが好ましい。このポリウレタン樹脂は、ラミネート時において塗布のしやすさや接着強度等を考慮すると、塗布直前の時点で数平均分子量は1,000〜100,000、固形分は5〜80質量%、粘度は25℃で10,000mPa・s以下が好ましい。
【0057】
主剤と硬化剤の配合比は、系中の活性水素基とイソシアネート基のモル比換算で活性水素基/イソシアネート基=90:10〜10:90の範囲が好ましい。
【0058】
本発明のポリイソシアネート硬化剤を配合した接着剤の塗布装置としては、エアレススプレー機、エアスプレー機、浸漬、ロール塗布機、刷毛等公知のものが挙げられる。
【0059】
本発明のポリイソシアネート硬化剤を配合した接着剤の貼り合わせ条件は、10〜180℃で0.1〜1MPaが好ましく、特に20〜150℃で0.2〜0.8MPaが好ましい。
【0060】
本発明のポリイソシアネート硬化剤を配合したラミネート用形成性接着剤組成物を用いたラミネートフィルムの製造において、用いられるフィルムは特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、アルミ箔や銅箔等の金属箔、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのケン化物、セロファン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、紙等が挙げられる。また、これらの延伸処理物や、コロナ放電処理や各種コート処理等の表面処理を施したものも好適に使用できる。
【0061】
また、本発明のポリイソシアネート硬化剤を配合したラミネート用形成性接着剤組成物は、2層のフィルム間だけではなく、3層又はそれ以上の多層のフィルム間の接着剤として好適に用いることができる。
【0062】
本発明のポリイソシアネート硬化剤を配合したラミネート用形成性接着剤組成物のラミネート後のエージング条件は、20〜70℃で5時間以上、好ましくは、25〜50℃で10時間以上である。なお、従来のラミネート接着剤におけるエージングは、48時間以上要していた。
【0063】
【実施例】
本発明について、実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例において、「%」は全て「質量%」を意味する。
【0064】
〔ポリイソシアネート硬化剤の製造〕合成例1〜8に用いられる原料の略記号は以下の通り。
TDI(1):2,4−トリレンジイソシアネート
TDI(2):2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシ
アネート=80/20(質量比)の混合物
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
ジオールA :1,2−プロパンジオールにプロピレンオキサイドを付加させた
ポリエーテルジオール
数平均分子量=500
ジオールB :1,2−プロパンジオールにプロピレンオキサイドを付加させた
ポリエーテルジオール
数平均分子量=1,000
ジオールC :1,2−プロパンジオールにプロピレンオキサイドを付加させた
ポリエーテルジオール
数平均分子量=1,500
ジオールD :3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られ
るポリエステルジオール
数平均分子量=1,000
ジオールE :3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られ
るポリエステルジオール
数平均分子量=3,000
モノオールA:メタノールにエチレンオキサイドを付加させたポリエーテルモノ
オール
数平均分子量=400
【0065】
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた、容量:1Lの反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを140g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。赤外吸収(IR)分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は9.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は10.7%となった。次いで、ジオールAを37.8g仕込み75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A1を得た。NCO−A1をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A1のイソシアネート含量は5.7%であり、よってイソシアヌレート基含有量は9.3%となった。固形分は50.0%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.2%であった。
【0066】
合成例2
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを175g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。IR分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は7.6%であり、よってイソシアヌレート基含有量は9.9%となった。次いで、ジオールBを73.9g仕込み75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A2を得た。NCO−A2をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A2のイソシアネート含量は4.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は7.8%となった。固形分は49.9%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.3%であった。
【0067】
合成例3
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを214g仕込み、均一に攪拌した。ジオールCを113.5g仕込み、75℃で3時間反応させた。IR分析により、イソシアネート基とウレタン基の存在は確認されたが、水酸基は確認されなかった。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は9.8%であった。次いで、ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止して、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A3を得た。NCO−A3をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A3のイソシアネート含量は3.7%であり、よってイソシアヌレート基含有量は6.1%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.3%であった。
【0068】
合成例4
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを176g仕込み、均一に攪拌した。ジオールDを73.9g、ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間、イソシアヌレート化反応及びウレタン化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止して、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A4を得た。NCO−A4をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A4のイソシアネート含量は4.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は7.8%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.4%であった。
【0069】
合成例5
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを172g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。IR分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は7.6%であり、よってイソシアヌレート基含有量は10.1%となった。次いで、ジオールBを61.6g、モノオールAを10.0g仕込み、75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A5を得た。NCO−A5をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A5のイソシアネート含量は4.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は8.0%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.3%であった。
【0070】
合成例6
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(2)を100g、酢酸エチルを176g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。IR分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は7.5%であり、よってイソシアヌレート基含有量は9.8%となった。次いで、ジオールBを73.9g仕込み、75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A6を得た。NCO−A6をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A6のイソシアネート含量は4.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は7.8%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.4%であった。
【0071】
合成例7
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを199g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。IR分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は8.0%であり、よってイソシアヌレート基含有量は8.2%となった。次いで、ジオールBを98.8g仕込み、75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−A7を得た。NCO−A7をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−A7のイソシアネート含量は3.9%であり、よってイソシアヌレート基含有量は6.1%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.2%であった。
【0072】
合成例8
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを106g仕込み、均一に攪拌した。ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。IR分析により、イソシアネート基とイソシアヌレート基の存在が確認された。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は10.7%であり、よってイソシアヌレート基含有量は12.7%となった。次いで、1,2−プロピレングリコールを5.8g仕込み、75℃で3時間反応させて、ポリイソシアネート硬化剤NCO−B1を得た。NCO−B1をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−B1のイソシアネート含量は7.4%であり、よってイソシアヌレート基含有量は12.3%となった。固形分は50.1%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.2%であった。
【0073】
合成例9
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを329g仕込み、均一に攪拌した。ジオールEを227.1g仕込み、75℃で3時間反応させた。IR分析により、イソシアネート基とウレタン基の存在は確認されたが、水酸基は確認されなかった。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は7.4%であった。次いで、ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止して、ポリイソシアネート硬化剤NCO−B2を得た。NCO−B2をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−B2のイソシアネート含量は2.4%であり、よってイソシアヌレート基含有量は4.0%となった。固形分は50.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.4%であった。
【0074】
合成例10
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、HDIを200g、ジオールBを98.8g仕込み、75℃で3時間反応させた。IR分析により、イソシアネート基とウレタン基の存在は確認されたが、水酸基は確認されなかった。このポリイソシアネートのイソシアネート含量は30.7%であった。次いで、カプリン酸カリウムを0.22g、フェノールを0.03g仕込み、50℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.3g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止した。このときのイソシアネート含量は、26.1%であった。その後、120℃、13kPaの条件で薄膜蒸留して、遊離のHDIを除去して、ポリイソシアネート硬化剤NCO−B3を得た。収率は55%であった。NCO−B3をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基の存在は確認されたが水酸基は確認されなかった。NCO−B3のイソシアネート含量は5.2%であり、よってイソシアヌレート基含有量は9.7%となった。固形分は100.0%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.4%であった。
【0075】
合成例11
合成例1と同様な反応器の内部を窒素に置換した後、TDI(1)を100g、酢酸エチルを101g仕込み、均一に攪拌した。次いで、ナフテン酸マグネシウムを0.5g仕込み、75℃にて5時間イソシアヌレート化反応させた。その後、リン酸を0.05g仕込み、60℃で1時間攪拌してイソシアヌレート化反応を停止して、ポリイソシアネート硬化剤NCO−B4を得た。NCO−B4をIR分析したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基の存在は確認された。NCO−B4のイソシアネート含量は8.5%であり、よってイソシアヌレート基含有量は15.5%となった。固形分は49.9%であった。また、GPC分析により、遊離のジイソシアネートの含有量は0.3%であった。
【0076】
〔主剤用樹脂の合成〕主剤用樹脂の原料
ジオールG:エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=1/1、セバシン
酸/イソフタル酸=1/1(各モル比)から得られたポリエステル
ルジオール
数平均分子量=2,000
ジオールH:2,2−ジメチロールブタン酸にε−カプロラクトンを付加させた
ジオール
数平均分子量=500
MDI:4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
DOTDL:ジオクチルチンジラウレート(ウレタン化触媒)
【0077】
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた、容量:1Lの反応器の内部を窒素に置換した後、ジオールGを350g、ジオールHを75g、酢酸エチルを215g仕込み、均一に攪拌した。次いで、MDIを75g、DOTDLを0.1g仕込み、75℃にて反応させた。IR分析で、イソシアネート基が確認されなくなったところで、酢酸エチルを285g仕込み、均一に攪拌してPU−1を得た。固形分は50.0%であった。
【0078】
〔接着剤評価〕
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示す配合で、ラミネート接着剤AD−1〜13を調製し、各種試験を実施した。実施例1〜7の結果を表1に、比較例1〜6の結果を表2示す。
【0079】
軟化点測定
配合したラミネート接着剤を離型紙上に、厚さ:ドライで約100μmになるようにキャストし、25℃で2時間静置した後、80℃の熱風乾燥機に5分入れ、取り出してから35℃で16時間静置してフィルムを作成した。このフィルムをJISK6301の2号形ダンベル状に打ち抜き、試験片とした。この試験片に荷重:49kPaをかけて、昇温速度:10℃/分で軟化点を測定した。軟化点は、試験片が急激に伸びる時点の温度又は切れた時点の温度とした。
【0080】
粘度増加率測定
接着剤を配合してからサンプルビンに入れて、これを25℃の恒温水槽に保存してから1時間後に、B型粘度計で粘度を測定した。これを初期粘度とする。その後更に24時間25℃の恒温水槽で保存してから、B型粘度計で粘度を測定した。この24時間経時後の粘度の、初期粘度に対する増加率(%、下記式参照)で評価した。
◎:粘度増加率10%未満
○:粘度増加率10〜30%
△:粘度増加率30〜100%
×:粘度増加率100%超又はゲル化
【0081】
【数1】
【0082】
ラミネート試験
ラミネート接着剤、コロナ処理ナイロン(NY)フィルム、コロナ処理低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムをドライラミネータにセットした。接着剤をグラビアロールでNYフィルムのコロナ処理面に塗布する。接着剤塗布量はドライで3.5g/m2 である。接着剤を塗布されたNYフィルムは、80℃の熱風乾燥機内を通過し、ニップロールにてLLDPEのコロナ処理面と接着される。ニップ条件は、100℃、0.3MPaである。その後、35℃で16時間養生してラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムを15mm幅にカットして、T型剥離試験を行った。剥離条件は、引張速度:300mm/分、測定雰囲気:25℃、50%RHである。また、得られたラミネートフィルムを25cm×30cmの長方形にカットし、NY面を外側にして、220℃、0.3MPa、1秒の条件で、1つの短辺以外の三方をヒートシールして袋を作り、この中に市販の家庭用弱アルカリ性衣料用液体合成洗剤(商品名:アタック(登録商標)、花王製)を入れ、未シールの辺を220℃、0.3MPa、1秒の条件でヒートシールした。これを50℃、2週間保存した後、外観観察、及びラミネートフィルムを15mm幅にカットして、T型剥離試験を行った。剥離条件は、引張速度:300mm/分、測定雰囲気:25℃、50%RHである。
【0083】
使用したフィルム
NYフィルム :東洋紡製 N−1102(厚さ:15μm)
LLDPEフィルム:東セロ製 TUX−FCD(厚さ:130μm)
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1、2において、
C−L:コロネート(登録商標)L
日本ポリウレタン工業製TDIアダクトタイプのポリイソシアネート
イソシアネート含量=13.2%、固形分=75%、酢酸エチル溶液
TEA:トリエチルアミン
PEe:LLDPEフィルム伸び
デラミ:デラミネーション(一部剥離)発生
【0087】
表1から示されるように、実施例1〜7のポリイソシアネート硬化剤は、主剤/硬化剤配合後でも粘度増加率が小さく、ポットライフが十分なものであった。一方、軟化点は高かったので、フィルム作成条件(25℃×2時間+80℃×5分+35℃×16時間)下において、架橋反応は十分進行したものと考えられる。更に実際のラミネート接着においては、16時間という短いエージング時間(従来のエージング時間の1/3以下)で十分な接着性能を発揮した。
【0088】
表2から、比較例1、2の硬化剤は、軟化点が高いことから、架橋反応は十分進行したものと考えられる。しかし、ポリオールの分子量が適当でないために接着性能が低いものとなった。また、ポリオールを用いていない比較例4も比較例1、2と同様な傾向であった。比較例3、5では、軟化点が低いことから、前述のフィルム作成条件では架橋反応が十分進行していないと考えられる。また、接着強度は良好であるが、真に硬化していないため耐洗剤性が不十分であった。比較例6は、比較例5の硬化剤と触媒を併用したものであるが、反応性は改善されたが、ポットライフまで短くなり、実際の接着剤塗布工程を考慮すると使用は困難である。
【0089】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のポリイソシアネート硬化剤およびポリイソシアネート硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物は、ポットライフを短くすることなしに、エージング時間の短縮を図ることができる。本発明により、ラミネートフィルムの生産効率が著しく向上する。また、本発明のポリイソシアネート硬化剤およびポリイソシアネート硬化剤を用いたラミネート用形成性接着剤組成物は、ラミネート接着剤だけではなく、通常の二液タイプの接着剤、塗料、磁気記録媒体、コーティング剤、プライマー、印刷インキ、シーリング材等に適用できる。

Claims (5)

  1. ポリイソシアネート硬化剤とポリウレタン樹脂からなるラミネート用形成性接着剤組成物であって、ポリイソシアネート硬化剤が(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物から得られるイソシアヌレート基とウレタン基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを含有することを特徴とするラミネート用形成性接着剤組成物。
  2. (イ):(a)芳香族ジイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、ウレタン変性ポリイソシアネートを得る工程、(ロ):(イ)で得られたポリイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリイソシアネート硬化剤の製造方法
  3. (ハ):(a)芳香族ジイソシアネートをイソシアヌレート化して、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを得る工程、(ニ):(ハ)で得られたポリイソシアネートと、(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物を反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリイソシアネート硬化剤の製造方法
  4. (ホ):(a)芳香族ジイソシアネートと(b)数平均分子量500〜2,000のジオール化合物の存在下で、ウレタン化反応とイソシアヌレート化反応を併行して行う工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリイソシアネート硬化剤の製造方法
  5. ポリウレタン樹脂が、ポリエステル系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1記載のラミネート用形成性接着剤組成物。
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