JP4628704B2 - リチウム二次電池用正極材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の目的とする正極材は、概ねLiNixZryM1−x−yO2(0.5<x≦0.99;0<y<0.10;MはCo,Mn,Al,B,Ga,In,Fe,Cr,V,Ti,Si,CaおよびMgからなる群より選ばれた少なくとも一種の補助金属)の組成を有するものである。ここで組成について「概ね」とは、補助金属の含有等により、上記組成式からの±5%程度のずれは許容されることを意味するものであり、結果的に上記したように、(0.5±0.025)<x≦0.99; 0<y<(0.10±0.005)となる。
本発明法においては、硝酸ニッケル、硝酸酸化ジルコニウムおよび更に必要に応じて補助金属の硝酸塩の水溶液、必要に応じてアンモニウム塩等の錯化剤水溶液、およびLiOH水溶液を、所望の組成の正極材を与える割合で用意し、これらを混合して中和することにより、Niリッチで且つZrを含む水酸化物を主要成分とする粒子と、Liを含む硝酸塩を主要成分とする水溶液相とからなるスラリーを形成する。
次いで上記スラリーを150〜500℃の高温空気雰囲気中で、噴霧乾燥する。噴霧乾燥は、スプレーノズルを用いて行うこともできるが、得られる正極材の粒度分布幅を狭くするために、回転ディスク型の噴霧乾燥機を用いて行うことが好ましい。噴霧乾燥温度は150〜500℃、特に250〜500℃の範囲の高温で行うことが好ましい。150℃未満では、焼成前の前駆体中に残存する水分が多くなり、焼成中の粒子形状の保持が困難となる。また500℃を超えると、前駆体の熱分解が表面より急速に進むため、得られる正極材が中空構造となり、タップ密度および結果的に得られる電極密度が低下する。
上記高温噴霧乾燥工程を経て、水酸化物相と硝酸塩相との2相を有する粒状体であり、少なくとも水酸化物相中にNiおよびZrを含む、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の前駆体が得られる。複合酸化物前駆体は、平均粒子径(50容量%粒子径、以下同様)が1〜100μmの範囲内であることが好ましい。1μm未満では、焼結が進み、得られる複合酸化物の粉砕性の向上が期待し難い。100μmを超えると製品の収率が低下する。
上記で得られたリチウム遷移金属複合酸化物前駆体を、酸素含有雰囲気中で焼成することにより、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を得る。
上記焼成工程を経て得られる本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、前駆体粒子の焼結性が低減されているとはいえ、焼成工程において若干の焼結を受けるため、前駆体の平均粒子径の1〜100μmよりは大なる1〜100mm程度の平均粒子径を有するが、良好な粉砕性を有するため、軽度の粉砕、すなわち解砕により、容易に且つ高い収率で、好ましい粒子径である目開き53μmのふるい下へと微粒化可能である。このリチウム遷移金属複合酸化物の良好な粉砕性は、後述するハードグローブ粉砕性指数が90〜240、より好ましくは100〜200であることで代表される。ハードグローブ粉砕性指数が90未満では、良好な粉砕性が得られず、正極材に適した53μmのふるい下の粒度が高収率で得られない。他方ハードグローブ粉砕性指数が240を超える複合酸化物は、過剰にもろくかさ高な粉末で、粉砕後に得られる正極材のタップ密度が低く、得られる電極密度も低くならざるを得ない。
上記リチウム遷移金属複合酸化物の解砕によって得られる本発明の粉末正極材は、目開き53μmのふるい下で代表される粒径を有し、平均粒子径としては1〜40μm、特に5〜25μmのものが好ましく用いられる。
以下、本発明を、実施例、比較例により更に具体的に説明する。以下の実施例を含めて、本明細書に記載の物性等は、下記方法による測定値を基準とするものである。
焼成後、粉砕による粉末正極材形成前のリチウム遷移金属複合酸化物試料のハードグローブ粉砕性指数は、JIS−M8801に準じた方法により測定する。すなわち、試料は、乾燥後、必要に応じて試験機によって4.75mm以下に予備粉砕してから1.18mm〜600μmになるように粉砕、ふるい分けを行い、粉砕試験に供する(但し、複合酸化物試料が600μm以上に焼結しない場合には、試料の全量を粉砕試験に供する)。
HGI=13+6.93w
実施例相当品は、試料乳針で軽く解砕後、53μmのふるい下の割合を測定した。比較例相当品については、解砕後、53μmふるい上を更にロッドミルで10分あるいは30分間粉砕し、53μmのふるい下の合計量の全試料に対する割合を収率とした。
正極材および前駆体の金属元素分析は、ICP(高周波プラズマ)発光分析により行った。すなわち、試料25mgを秤量し、王水4ml+純水で100mlに定容化し、完全に溶解する。この溶液を純水で10倍に希釈し、10ppmYの内標準を添加したものを濃度分析用試料とし、高周波プラズマ発光分析装置(堀場製作所製「JY−ICP Ultima」)を用いて測定した。このときの検量線用の標準試料は、MERCK社製「multi-element standard solution IV」を用いた。ICP試料重量と金属元素量との差により酸素量を求めた。
前駆体の平均粒子径は、画像解析法によって行った。すなわち、光学顕微鏡によって前駆体の拡大画像を撮影し、高精細画像解析システム(旭エンジニアリング製「IP−1000PC」)を用いて、この画像と拡大倍率の情報より50容量%粒子径を求めた。このときのサンプル数(粒子数)は150以上300以下とした。
試料94gを導電材(アセチレンブラック)3gと混合した後、この混合物をN−メチルピロリドン(MMP)に結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3gを溶解した液と混練してペーストとした。ついで、このペーストを厚さ50μmのアルミ箔の片面に塗着した後、乾燥し圧延して、さらに直径14mmの円盤状に打ち抜いて、厚さ70μmの電極合剤層を有するコイン型リチウム二次電池の正極板とした。負極板は厚さ0.9mmの金属リチウムをステンレス鋼製ネット上に圧着したものを用い、正極と負極の間にはポリプロピレン製セパレータを配した。電解液は1モルの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)をエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒中に溶かしたものを用いた。これらをコイン型電池用ケース内に配した後、ポリプロピレン製ガスケットを介して密封し、評価用のコイン型電池を作製した。
試料9.4gを導電材(アセチレンブラック)0.3gと混合した後、この混合物をN−メチルピロリドン(MMP)に結着剤(ポリフッ化ビニリデン)0.3gを溶解した液と混練してペーストとした。ついで、このペーストを厚さ50μmのアルミ箔の片面に塗着した後、乾燥し、圧延して、さらに直径14mmの円盤状に打ち抜いて、コイン型リチウム二次電池の正極板とした。負極板は、メソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル(株)製「MCMB25−28」)9.1gとカーボンファイバー(昭和電工(株)製「VGCF」)0.2gとを混合した後、この混合物をN−メチルピロリドン(MMP)に結着剤(ポリフッ化ビニリデン)0.7gを溶解した液と混練してペーストとした。ついで、このペーストを厚さ20μmの銅箔の片面に塗着した後、乾燥し、圧延して、さらに円盤状に打ち抜いて厚さ100μmの電極合剤層を形成したものを用いた。正極と負極の間にはポリプロピレン製セパレータを配した。電解液は1.5モルの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)をエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒中に溶かしたものを用いた。これらをコイン型電池用ケース内に配した後、ポリプロピレン製ガスケットを介して密封し、評価用のコイン型電池を作製した。
Li1.0Ni0.879Zr0.095Al0.025O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物正極材を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.883Zr0.0025Co0.09Al0.025O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.870Zr0.005Co0.09Al0.035O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.870Zr0.0100Co0.085Al0.035O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.900Zr0.0150Co0.085O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.870Zr0.0250Co0.08Al0.025O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.868Zr0.0025Mn0.05Co0.08O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.866Zr0.0040Mn0.05Co0.08O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.865Zr0.0050Co0.08Mn0.05O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてLi1.05Ni0.863Zr0.0075Co0.08Mn0.05O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
実施例1と同様にしてZrを含まないLi1.05Ni0.88Co0.095Al0.025O2の組成のリチウムニッケル複合酸化物前駆体を製造した。
Claims (9)
- LiNixZryM1−x−yO2((0.5±0.025)<x≦0.99; 0<y<(0.10±0.005);MはCo,Mn,Al,B,Ga,In,Fe,Cr,V,Ti,Si,Ca,およびMgからなる群より選ばれた少なくとも一種の補助金属)の組成を有し、且つハードグローブ粉砕性指数が90〜240であることを特徴とするリチウム二次電池正極活物質用リチウム遷移金属複合酸化物。
- 金属元素中のZrのモル濃度が0.025〜2.5%(y/2=0.00025〜0.025)である請求項1に記載の複合酸化物。
- 水酸化物相と硝酸塩相との2相を有する粒状体であり、少なくとも水酸化物相中にZrを含む請求項1に記載のリチウム二次電池正極活物質用リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体。
- 平均粒子径が1〜100μmである請求項3に記載の複合酸化物前駆体。
- 硝酸ニッケル、硝酸酸化ジルコニウム(硝酸ジルコニル)および必要に応じて更にCo,Mn,Al,B,Ga,In,Fe,Cr,V,Ti,Si,CaおよびMgからなる群より選ばれた補助金属の硝酸塩の水溶液と、水酸化リチウム水溶液とを混合することにより、水酸化物を主要成分とする粒子と、硝酸塩を主要成分とする水溶液相とからなるスラリーを形成し、該スラリーを150〜500℃の高温で噴霧乾燥することにより粒状体を得ることを特徴とする請求項3または4に記載のリチウム遷移金属複合酸化物前駆体の製造方法。
- 請求項3または4に記載の遷移金属複合酸化物前駆体を酸素含有雰囲気中で焼成することを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム二次電池正極活物質用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
- 焼成工程が200〜600℃での予備焼成工程と、600〜950℃での本焼成工程とを含む請求項6に記載の製造方法。
- 請求項1または2に記載のリチウム遷移金属複合酸化物を解砕してなるリチウム二次電池用粉末正極材。
- 請求項8に記載の粉末正極材を用いたリチウム二次電池。
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