JP4575555B2 - 動力出力装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力出力装置およびインバータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力出力装置としては、電動機に三相交流を印加するインバータ回路の正極母線と負極母線とに接続されたコンデンサとインバータ回路の正極母線または負極母線と電動機の中性点とに接続された直流電源とを備えるものが提案されている(例えば、特開平10−337047号公報や特開平11−178114号公報など)。この装置では、電動機の各相のコイルとインバータの各相のスイッチング素子とからなる回路を直流電源の電圧を昇圧してコンデンサに電荷を蓄える昇圧チョッパ回路とみなすと共にこの蓄電されたコンデンサを直流電源とみなして電動機を駆動する。電動機の駆動制御とコンデンサへの蓄電制御は、擬似的な三相交流を電動機に印加する際のインバータ回路のスイッチング素子のスイッチング動作によって同時に行なっている。なお、電動機に印加される擬似的な三相交流は、正電圧と負電圧の二つの電圧レベルによるPWM制御によって形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした動力出力装置では、電動機の中性点から流出流入する電流に大きな電流脈動が生じ、電動機の損失が大きくなる場合がある。正電圧と負電圧の二つの電圧レベルによるPWM制御によって形成される擬似的な三相交流は、各相の電圧が同一となるいわゆるゼロ電圧ベクトルを出力する状態が生じる。このゼロ電圧ベクトルを出力すると、電動機の中性点が直流電源によりその電位が固定されているために、電動機の中性点接続線に大きな電流が流れる。ゼロ電圧ベクトルは各相のいずれもが正電圧となる状態といずれもが負電圧となる状態の二つの状態があるから、電動機の中性点接続線に流れる電流の方向はゼロ電圧ベクトルがいずれの状態に基づくかによって異なるものとなる。この結果、電動機の中性点接続線に大きな電流脈動が生じてしまう。
【0004】
本発明の動力出力装置は、電動機の中性点に生じ得る電流脈動を低減することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置は、装置の高効率化を図ることを目的の一つとする。本発明のインバータ装置は、ゼロ電圧ベクトルの出力を低減することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の動力出力装置およびインバータ装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の第1の動力出力装置は、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された第1の電源と、
前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
を備え
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する
ことを要旨とする。
【0007】
この本発明の第1の動力出力装置では、正電圧,負電圧,そしてそれらの中間電圧の3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流とすることにより、各相の電圧がすべて第2の電源の電圧から大きな差のある同一の電圧となるゼロ電圧ベクトルの出現を低減し、電動機の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができる。この結果、電動機の損失を小さく抑えることができる。
【0008】
こうした本発明の第1の動力出力装置において、前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとすることもできる。
【0009】
本発明の第2の動力出力装置は、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
前記インバータ回路の正極母線と前記電動機の中性点とに接続された第1の電源と、
前記インバータ回路の負極母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
を備え
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する
ことを要旨とする。
【0010】
この本発明の第2の動力出力装置では、3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流とすることにより、各相の電圧がすべて第2の電源の電圧から大きな差のある同一の電圧となるゼロ電圧ベクトルの出現を低減し、電動機の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができる。この結果、電動機の損失を小さく抑えることができる。
【0011】
こうした本発明の第2の動力出力装置において、前記第1の電源は前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとしたり、前記第2の電源は前記第1の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとすることもできる。
【0012】
これら本発明の第1または第2の動力出力装置において、前記インバータ回路は、3段階の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を供給する回路であるものとすることもできる。この態様の本発明の第1または第2の動力出力装置において、前記インバータ回路の各相は、正極母線と負極母線とを直列に接続する4個のスイッチング素子と、該4個のスイッチング素子の中間の2個のスイッチング素子を跨いで負極母線から正極母線側を順方向として直列に接続する2個のダイオードと、該2個のダイオードの中間節点に前記3段階の電圧レベルのうちの中間電圧レベルを供給する中間電圧供給手段とを備えるものとすることもできる。
さらにこの態様の本発明の第1または第2の動力出力装置において、前記中間電圧供給手段は、正極母線と負極母線とを直列に接続する2個のコンデンサを備え該2個のコンデンサの中間接点を前記2個のダイオードの中間接点に接続する手段であるものとしたり、前記電動機の中性点を前記2個のダイオードの中間接点に接続する手段であるものとすることもできる。
【0013】
また、本発明の第1または第2の動力出力装置において、前記スイッチング制御手段は、前記3段階以上の電圧レベルの各電圧レベル間に階層的に各々設けられた複数の搬送波と各相の電圧指令とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段であるものとすることもできる。
この態様の本発明の第1または第2の動力出力装置において、前記スイッチング制御手段は、前記各相の電圧指令が前記複数の搬送波により形成される階層のいずれに属するかに基づいて前記インバータ回路の各相の電圧レベルを設定し、該インバータ回路の各相の電圧レベルが該設定された電圧レベルとなるよう該インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段であるものとすることもできる。
【0014】
本発明の第3の動力出力装置は、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された第1の電源と、
前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
前記多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と前記多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
を備え
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する
ことを要旨とする。
【0015】
この本発明の第3の動力出力装置では、多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいてインバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、各相の電圧がすべて第2の電源の電圧から大きな差のある同一の電圧となるゼロ電圧ベクトルの出現を低減し、電動機の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができる。この結果、電動機の損失を小さく抑えることができる。
【0016】
こうした本発明の第3の動力出力装置において、前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとすることもできる。
【0017】
本発明の第4の動力出力装置は、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
前記インバータ回路の正極母線と前記電動機の中性点とに接続された第1の電源と、
前記インバータ回路の負極母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
前記多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と前記多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
を備え
前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する
ことを要旨とする。
【0018】
この本発明の第4の動力出力装置では、多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいてインバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、各相の電圧が同一となるゼロ電圧ベクトルの出現を低減し、電動機の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができる。この結果、電動機の損失を小さく抑えることができる。
【0019】
こうした本発明の第4の動力出力装置において、前記第1の電源は前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとしたり、前記第2の電源は前記第1の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段であるものとすることもできる。
【0020】
これら本発明の第3または第4の動力出力装置において、前記所定の位相差は、前記電動機の中性点の電流リップルを打ち消す位相差であるものとしたり、360度を前記電動機の相数で割った角度を含む所定範囲の角度であるものとしたり、或いは、360度を前記電動機の相数で割った角度であるものとすることもできる。
【0021】
各種態様を含め本発明の第1ないし第4のいずれかの動力出力装置において、前記電動機は動力の入力により発電可能な発電電動機であり、前記第1の電源および/または前記第2の電源は充放電可能な電源であり、前記電動機を発電機として駆動すると共に該電動機により発電された電力を前記第1の電源および/または前記第2の電源に充電するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する充電制御手段を備えるものとすることもできる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の動力出力装置20は、図示するように、三相交流により回転駆動するモータ22と、直流電力を三相交流電力に変換してモータ22に供給可能なインバータ回路24と、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28とに接続された第1直流電源30と、インバータ回路24の負極母線28とモータ22の中性点とに接続された第2直流電源32と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。
【0029】
モータ22は、例えば外表面に永久磁石が貼り付けられたロータと三相コイルが巻回されたステータとから構成される発電可能な同期発電電動機として構成されている。モータ22の回転軸は実施例の動力出力装置20の出力軸となっており、この回転軸から動力が出力される。なお、実施例のモータ22は発電電動機として構成されているから、モータ22の回転軸に動力を入力すれば、モータ22により発電できるようになっている。
【0030】
インバータ回路24は、12個のトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4と、18個のダイオードDU1〜DU6,DV1〜DV6,DW1〜DW6によって構成されている。インバータ回路24のu相は、4個のトランジスタTU1〜TU4によって正極母線26と負極母線28とを直列に接続しており、トランジスタTU2とトランジスタTU3との接続点には、モータ22の三相コイルのu相が接続されている。トランジスタTU1とトランジスタTU2との接続点とトランジスタTU3とトランジスタTU4との接続点は、負極母線28から正極母線26側を順方向とする2個のダイオードDU5,DU6により直列に接続されており、ダイオードDU5とダイオードDU6の接続点は、モータ22の中性点に接続されている。なお、各トランジスタTU1〜TU4には各々還流用のダイオードDU1〜DU4が取り付けられている。インバータ回路24のv相およびw相は、u相と同様に構成されている。
【0031】
インバータ回路24の正極母線26と負極母線28は、2個のコンデンサC1,C2により直列に接続されており、コンデンサC1とコンデンサC2の接続点は、接続線34によりモータ22の中性点に接続されている。
【0032】
第1直流電源30と第2直流電源32は、例えばニッケル水素系やリチウムイオン系の二次電池として構成されており、第1直流電源30の端子間電圧V1が第2直流電源32の端子間電圧V2の2倍となるように調整されている。したがって、モータ22の中性点を基準とすれば、正極母線26の電位はV1−V2であり、負極母線28の電位は−V2となる。以下、正極母線26の電圧を1/2VBとし、負極母線28の電圧を−1/2VBとして考えるものとする。
【0033】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM44と、一時的にデータを記憶するRAM46と、入出力ポート(図示せず)とを備える。この電子制御ユニット40には、モータ22の三相コイルのuvwの各相に取り付けられた電流センサ52〜56からの各相の電流やモータ22の中性点に取り付けられた電流センサ58からの中性点電流,モータ22の回転軸に取り付けられた回転角センサ60からのモータ22の回転子の回転角などが入力ポートを介して入力されている。実施例では、各相電流と中性点電流を得るために電流センサ52〜58を備えたが、これらの電流センサ52〜58のうちのいずれか一つは省略可能であり、いずれか一つを異常検出専用として用いるものとしてもよい。電子制御ユニット40からは、インバータ回路24のトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4のスイッチング制御を行なうための制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0034】
次に、こうして構成された実施例の動力出力装置20の動作、特にインバータ回路24によりモータ22に印加される擬似的な三相交流の形成について説明する。実施例の動力出力装置20が備えるインバータ回路24は、次のようにモータ22の各相に3段階の電圧レベルを作用させることができる。図2はトランジスタTU1,TU2をオンとすると共にトランジスタTU3,TU4をオフとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。この状態では、モータ22のu相には正極母線26の電圧(1/2VB)が作用する。図3はトランジスタTU1,TU2をオフとすると共にトランジスタTU3,TU4をオンとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。
この状態では、モータ22のu相には負極母線28の電圧(−1/2VB)が作用する。図4はトランジスタTU1,TU4をオフとすると共にトランジスタTU2,TU3をオンとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。この状態では、モータ22の中性点の電圧(基準電圧ゼロ)が作用する。したがって、図2〜図4に示す3つのスイッチングパターンを用いることにより3段階の電圧レベルをモータ22のu相に作用させることができる。インバータ回路24のv相およびw相はu相と同様に構成されているから、v相およびw相についても同様に3段階の電圧レベルをモータ22のv相およびw相に作用させることができる。
【0035】
図5は、インバータ回路24のトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4のスイッチングにより擬似的な三相交流を得る様子を説明する説明図である。図示するように、120度ずつ位相の異なるuvwの各相指令の各々を2段に階層的な三角搬送波CAR1,CAR2と大きさを比較して各トランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4のオンオフ状態を決定する。次表1にu相の指令値Vu*の状態とトランジスタTU1〜TU4のオンオフ状態とを示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004575555
表1から解るように、u相の指令値Vu*が三角搬送波CAR1より大きいときには、トランジスタTU1,TU2をオンとすると共にトランジスタTU3,TU4をオフとして図2に例示する状態とし、三相コイルのu相に正極母線26の電圧(1/2VB)を作用させる。指令値Vu*が三角搬送波CAR1とCAR2との間のときには、トランジスタTU1,TU4をオフとすると共にトランジスタTU2,TU3をオンとして図4に例示する状態とし、三相コイルのu相にモータ22の中性点の電圧(ゼロ)を作用させる。指令値Vu*が三角搬送波CAR2より小さいときには、トランジスタTU1,TU2をオフとすると共にトランジスタTU3,TU4をオンとして図3に例示する状態とし、三相コイルのu相に負極母線28の電圧(−1/2VB)を作用させる。
【0037】
こうした階層的な三角搬送波CAR1,CAR2と各相指令とに基づいて各トランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4をスイッチングすると、図5の中段の各相(Vu,Vv,Vw)のPWM波形となる。こうした各相のPWMの波形から各相の電圧が同一となるゼロ電圧ベクトルの出力は、図5の最下段に示されるようになる。図6に、正極母線の電圧(1/2VB)と負極母線の電圧(−1/2VB)の2段階の電圧レベルによりPWM制御する従来例の動力出力装置における各相指令と三角搬送波,各相(Vu,Vv,Vw)のPWM波形,ゼロ電圧ベクトルの出力を示す。図5と図6とを比較すると解るように、実施例の動力出力装置20は、3段階の電圧レベルによってPWM制御することにより、2段階の電圧レベルによってPWM制御する従来例の動力出力装置に比して、ゼロ電圧ベクトルの出力頻度を著しく少なくすることができる。したがって、ゼロ電圧ベクトルの出力とモータ22の中性点の電位の固定に基づいて生じるモータ22の中性点における電流脈動を低減することができる。
【0038】
以上説明した実施例の動力出力装置20によれば、3段階の電圧レベルによってPWM制御することにより、ゼロ電圧ベクトルの出力頻度を著しく少なくすることができる。この結果、ゼロ電圧ベクトルの出力に伴ってモータ22の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができると共にモータ22の損失を抑制することができる。
【0039】
実施例の動力出力装置20では、インバータ回路24の負極母線28とモータ22の中性点とを接続するよう第2直流電源32を取り付けたが、インバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とを接続するよう第2直流電源32を取り付けるものとしてもよい。また、実施例の動力出力装置20では、第2直流電源32の電圧V2の2倍の電圧V1の第1直流電源30をインバータ回路24の正極母線26と負極母線28とを接続するように取り付けたが、図7の変形例の動力出力装置20Bに示すように、第2直流電源32の電圧V2と同一の電圧の第1直流電源30Bをインバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とを接続するよう取り付けるものとしてもよい。変形例の動力出力装置20Bは、電気的に実施例の動力出力装置20と等価だからである。
【0040】
実施例の動力出力装置20では、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28とを接続する第1直流電源30を備えるものとしたが、図8の変形例の動力出力装置20Cに示すように、第1直流電源30に代えてコンデンサ30Cを備えるものとしてもよい。なお、図8に例示する変形例の動力出力装置20Cは、コンデンサ30Cの端子間電圧Vcを検出する電圧センサ62を備えており、この電圧センサ62からの検出信号は入力ポートを介して電子制御ユニット40に入力されている。図9は、モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した変形例の動力出力装置20Cの回路図である。いま、インバータ回路24のu相のトランジスタTU3,TU4をオンとした状態を考えると、この状態では、図中破線矢印で示す短絡回路が形成され、モータ22の三相コイルのu相はリアクトルとして機能する。この状態からトランジスタTU3,TU4のいずれかをオフすると、リアクトルとして機能している三相コイルのu相に蓄えられたエネルギは、図中実線矢印で示す充電回路によりコンデンサ30Cに蓄えられる。その際の電圧は、第2直流電源32の供給電圧より高くすることができる。一方、この回路でコンデンサ30Cの電位を用いて第2直流電源32を充電することもできる。したがって、この回路は、第2直流電源32のエネルギをコンデンサ30Cに昇圧して蓄えると共にコンデンサ30Cの電位を用いて第2直流電源32を充電可能な昇降圧チョッパ回路とみなすことができる。モータ22の三相コイルのvw相も、u相と同様に昇降圧チョッパ回路とみなすことができるから、トランジスタTU3,TU4,TV3,TV4,TW3,TW4をオンオフすることによりコンデンサ30Cを充電したり、コンデンサ30Cの電位を用いて第2直流電源32を充電することができる。
【0041】
こうした充電によりコンデンサ30Cの端子間には電位差が生じるが、その電位差はコンデンサ30Cに蓄えられる電荷の量、即ちリアクトルに流す電流を調節することにより制御することができる。したがって、コンデンサ30Cの端子間電圧Vcを第2直流電源32の電圧V2の2倍にすることもできる。このように、コンデンサ30Cの端子間電圧Vcを第2直流電源32の電圧V2の2倍にすれば、図8に例示する変形例の動力出力装置20Cでは、正極母線26と負極母線28にコンデンサ30Cによる端子間電圧Vcが作用する状態、即ち実施例の動力出力装置20の第1直流電源30に相当する直流電源が接続された状態となり、実施例の動力出力装置20と同様にモータ22を駆動することができる。
【0042】
ここで、モータ22の駆動には、インバータ回路24を構成するトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4の前述のスイッチング制御による擬似的な三相交流を供給すればよく、コンデンサ30Cの電圧は直流成分により行なうことができるから、擬似的な三相交流の電位をプラス側またはマイナス側にオフセットすることによって、直流成分を加えた三相交流をモータ22に供給することができる。この結果、交流成分でモータ22は回転駆動し、直流成分で図9を用いて説明したようにコンデンサ30Cを充電することができる。
【0043】
したがって、変形例の動力出力装置20Cでは、図5における各相指令をプラス側またはマイナス側にオフセットすることにより、実施例の動力出力装置20の各相のPWM制御と同様の制御を行なうことができると共にコンデンサ30Cの端子間電圧Vcを制御することができる。この結果、変形例の動力出力装置20Cでも実施例の動力出力装置20と同様の効果を得ることができる。
【0044】
実施例の動力出力装置20では、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28とを接続する第1直流電源30を備えるものとしたが、図10の変形例の動力出力装置20Dに示すように、第1直流電源30に代えてインバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とを接続するコンデンサ30Dを備えるものとしてもよい。なお、図10に例示する変形例の動力出力装置20Dも、変形例の動力出力装置20Cと同様に、コンデンサ30Dの端子間電圧Vcを検出する電圧センサ62を備えており、この電圧センサ62からの検出信号は入力ポートを介して電子制御ユニット40に入力されている。図11は、モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した変形例の動力出力装置20Dの回路図である。いま、インバータ回路24のu相のトランジスタTU3,TU4をオンとした状態を考えると、この状態では、図中破線矢印で示す短絡回路が形成され、モータ22の三相コイルのu相はリアクトルとして機能する。この状態からトランジスタTU3,TU4のいずれかをオフすると、リアクトルとして機能している三相コイルのu相に蓄えられたエネルギは、図中実線矢印で示す充電回路によりコンデンサ30Dに蓄えられる。したがって、この回路は、第2直流電源32のエネルギをコンデンサ30Dに昇圧して蓄えると共にコンデンサ30Dの電位を用いて第2直流電源32を充電可能なチョッパ回路とみなすことができる。モータ22の三相コイルのvw相も、u相と同様に昇降圧チョッパ回路とみなすことができるから、トランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4をオンオフすることによりコンデンサ30Dを充電したり、コンデンサ30Dの電位を用いて第2直流電源32を充電することができる。
【0045】
こうした充電によりコンデンサ30Dの端子間には電位差が生じるが、その電位差はコンデンサ30Cに蓄えられる電荷の量、即ちリアクトルに流す電流を調節することにより制御することができる。したがって、コンデンサ30Dの端子間電圧Vcを第2直流電源32の電圧V2と同一にすることもできる。このように、コンデンサ30Dの端子間電圧Vcを第2直流電源32の電圧V2と同一にすれば、図11に例示する変形例の動力出力装置20Dでは、正極母線26と負極母線28にコンデンサ30Dと第2直流電源32とからなる電圧V2の2倍の電圧の直流電源が接続された状態、即ち実施例の動力出力装置20の第1直流電源30に相当する直流電源が接続された状態となり、実施例の動力出力装置20と同様にモータ22を駆動することができる。
【0046】
ここで、モータ22の駆動には、インバータ回路24を構成するトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4の前述のスイッチング制御による擬似的な三相交流を供給すればよく、コンデンサ30Dの電圧は直流成分により行なうことができるから、擬似的な三相交流の電位をプラス側またはマイナス側にオフセットすることによって、直流成分を加えた三相交流をモータ22に供給することができる。この結果、交流成分でモータ22は回転駆動し、直流成分で図11を用いて説明したようにコンデンサ30Dを充電することができる。
【0047】
したがって、変形例の動力出力装置20Dでも、変形例の動力出力装置20Cと同様に、図5における各相指令をプラス側またはマイナス側にオフセットすることにより、実施例の動力出力装置20の各相のPWM制御と同様の制御を行なうことができると共にコンデンサ30Dの端子間電圧Vcを制御することができる。この結果、変形例の動力出力装置20Dでも実施例の動力出力装置20と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施例の動力出力装置20やその変形例では、各相のダイオードDU5,DU6、DV5,DV6,DW5,DW6の中間接続点をコンデンサC1,C2の中間接続点と接続すると共に接続線34によりモータ22の中性点に接続したが、コンデンサC1,C2を備えずに各相のダイオードDU5,DU6、DV5,DV6,DW5,DW6の中間接続点を単に接続線34によりモータ22の中性点に接続するものとしたり、各相のダイオードDU5,DU6、DV5,DV6,DW5,DW6の中間接続点を接続線34によりモータ22の中性点に接続せずに単にコンデンサC1,C2の中間接続点に接続するものとしても差し支えない。
【0049】
実施例の動力出力装置20やその変形例では、3段階の電圧レベルによるPWM制御を行なうことによりゼロ電圧ベクトルの出現頻度を少なくしたが、4段階以上の電圧レベルによるPWM制御を行なってゼロ電圧ベクトルの出現頻度を少なくするものとしてもよい。また、実施例の動力出力装置20やその変形例では、三相交流によるモータ22を用いたが、n相交流によるモータを用いるものとしてもよい。この場合でも、3段階あるいは4段階以上の電圧レベルによるPWM制御を行なうことによりゼロ電圧ベクトルの出現頻度を少なくすることができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施例としての動力出力装置120について説明する。図12は、第2実施例の動力出力装置120の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の動力出力装置120は、図示するように、三相交流により回転駆動するモータ122と、直流電力を三相交流電力に変換してモータ122に供給可能なインバータ回路124と、インバータ回路124の正極母線126と負極母線128とに接続された第1直流電源130と、インバータ回路124の負極母線128とモータ122の中性点とに接続された第2直流電源132と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット140とを備える。
【0051】
モータ122は、第1実施例の動力出力装置20のモータ22と同様に、外表面に永久磁石が貼り付けられたロータと三相コイルが巻回されたステータとから構成される発電可能な同期発電電動機として構成されている。
【0052】
インバータ回路124は、6個のトランジスタT1〜T6と6個のダイオードD1〜D6とにより構成されている。6個のトランジスタT1〜T6は、それぞれ正極母線126と負極母線128とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置され、その接続点にモータ122の三相コイル(uvw)の各々が接続されている。したがって、正極母線126と負極母線128とに電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT1〜T6のオン時間の割合を制御すれば、正極母線126の電圧と負極母線128の電圧の2段階の電圧レベルによるPWM制御により、モータ122の三相コイルにより回転磁界を形成し、モータ122を回転駆動することができる。
【0053】
第1直流電源130と第2直流電源132も、第1実施例の動力出力装置20の第1直流電源30や第2直流電源32と同様に、例えばニッケル水素系やリチウムイオン系の二次電池として構成されており、第1直流電源130の端子間電圧V1が第2直流電源132の端子間電圧V2の約2倍となるように調整されている。したがって、モータ122の中性点を基準とすれば、第1実施例の動力出力装置20の場合と同様に、正極母線126の電位はV1−V2であり、負極母線128の電位は−V2となる。以下、正極母線126の電圧を1/2VBとし、負極母線128の電圧を−1/2VBとして考えるものとする。
【0054】
電子制御ユニット140も、第1実施例の動力出力装置20の電子制御ユニット40と同様に、CPU142を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM144と、一時的にデータを記憶するRAM146と、入出力ポート(図示せず)とを備える。この電子制御ユニット140には、モータ122の三相コイルのuvwの各相に取り付けられた電流センサ152〜156からの各相の電流やモータ122の中性点に取り付けられた電流センサ158からの中性点電流,モータ122の回転軸に取り付けられた回転角センサ160からのモータ122の回転子の回転角,モータ122の動作に関する指令値などが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット140からは、インバータ回路124のトランジスタT1〜T6のスイッチング制御を行なうための制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0055】
次に、こうして構成された第2実施例の動力出力装置120の動作、特にインバータ回路124によりモータ122に印加される擬似的な三相交流の形成について説明する。図13は、第2実施例の動力出力装置120の電子制御ユニット140によるPWM制御の際に用いる各相変調波と各相搬送波とを例示する説明図である。図示するように、u相搬送波とv相搬送波とw相搬送波は、いずれも三角波であり、120度ずつ位相が異なるものとなっている。u相変調波とv相変調波とw相変調波は、いずれも各相指令に基づいて形成される。各相は、位相が異なるものの同様であるから、u相について説明する。u相変調波がu相搬送波より大きいときには、トランジスタT1をオンとすると共にトランジスタT2をオフとしてモータ122の三相コイルのu相に正極母線126の電圧(1/2VB)を作用させる。一方、u相変調波がu相搬送波より小さいときには、トランジスタT1をオフとすると共にトランジスタT2をオンとしてモータ122の三相コイルのu相に負極母線128の電圧(−1/2VB)を作用させる。こうしたスイッチング制御を行なうことにより、図6に示すように、従来例の動力出力装置と同様に2段階の電圧レベルによるPWM制御を行なうことができる。v相,w相についても同様に各相変調波と各相搬送波とによるPWM制御の波形が得られるが、各相搬送波を120度ずつ位相を異なるものにすることにより、図6の各相(Vu,Vv,Vw)の波形とはならず、ゼロ電圧ベクトルの出現頻度が少ないものとなる。
【0056】
図14は、図13の各相変調波と各相搬送波とに基づいてスイッチングした際に各相とモータ122の中性点に流れる電流を示す説明図である。図示するように、各相電流は120度の位相をもった擬似的な三相交流電流となっており、モータ122の中性点の電流は、小さな振幅でゼロ近傍に落ち着いている。
【0057】
以上説明した第2実施例の動力出力装置120によれば、120度ずつ位相の異なる各相搬送波と各相指令に基づく各相変調波とに基づいてインバータ回路24の各相のトランジスタをスイッチングすることによりゼロ電圧ベクトルの出現頻度を低減することができる。この結果、ゼロ電圧ベクトルの出力に伴ってモータ122の中性点に生じ得る電流脈動を低減することができると共にモータ122の損失を抑制することができる。
【0058】
第2実施例の動力出力装置120では、インバータ回路124の負極母線128とモータ122の中性点とを接続するよう第2直流電源132を取り付けたが、インバータ回路124の正極母線126とモータ122の中性点とを接続するよう第2直流電源132を取り付けるものとしてもよい。また、第2実施例の動力出力装置120では、第2直流電源132の電圧V2の2倍の電圧V1の第1直流電源130をインバータ回路124の正極母線126と負極母線128とを接続するように取り付けたが、図15の変形例の動力出力装置120Bに示すように、第2直流電源132の電圧V2と同一の電圧の第1直流電源130Bをインバータ回路124の正極母線126とモータ122の中性点とを接続するよう取り付けるものとしてもよい。変形例の動力出力装置120Bは、電気的に実施例の動力出力装置120と等価だからである。
【0059】
第2実施例の動力出力装置120では、インバータ回路124の正極母線126と負極母線128とを接続する第1直流電源130を備えるものとしたが、図16の変形例の動力出力装置120Cに示すように、第1直流電源130に代えてコンデンサ130Cを備えるものとしてもよい。なお、図16に例示する変形例の動力出力装置120Cは、コンデンサ130Cの端子間電圧Vcを検出する電圧センサ162を備えており、この電圧センサ162からの検出信号は入力ポートを介して電子制御ユニット140に入力されている。図17は、モータ122の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した変形例の動力出力装置120Cの回路図である。この回路図は、図9に例示した回路図においてトランジスタTU1,TU2を一つのトランジスタT1に置き換えると共にトランジスタTU3,TU4を一つのトランジスタT2に置き換えた構成となっている。したがって、図17に示す回路は、図9に例示した回路と同様に、第2直流電源132のエネルギをコンデンサ130Cに昇圧して蓄えると共にコンデンサ130Cの電位を用いて第2直流電源132を充電可能な昇降圧チョッパ回路とみなすことができる。モータ122の三相コイルのvw相も、u相と同様に昇降圧チョッパ回路とみなすことができるから、トランジスタT2,T4,T6をオンオフすることによりコンデンサ130Cを充電したり、コンデンサ130Cの電位を用いて第2直流電源132を充電することができる。そして、コンデンサ130Cの端子間電圧Vcの制御とモータ122の駆動制御は、変形例の動力出力装置20Cの際に説明したように、擬似的な三相交流の電位をプラス側またはマイナス側にオフセットすることによって同時に行なうことができる。
【0060】
したがって、変形例の動力出力装置120Cでは、図13における各相変調波をプラス側またはマイナス側にオフセットすることにより、第2実施例の動力出力装置120の各相のPWM制御と同様の制御を行なうことができると共にコンデンサ130Cの端子間電圧Vcを制御することができる。この結果、変形例の動力出力装置120Cでも第2実施例の動力出力装置120と同様の効果を得ることができる。
【0061】
第2実施例の動力出力装置120では、インバータ回路124の正極母線126と負極母線128とを接続する第1直流電源130を備えるものとしたが、図18の変形例の動力出力装置120Dに示すように、第1直流電源130に代えてインバータ回路124の正極母線126とモータ122の中性点とを接続するコンデンサ130Dを備えるものとしてもよい。なお、図18に例示する変形例の動力出力装置120Dは、コンデンサ130Dの端子間電圧Vcを検出する電圧センサ162を備えており、この電圧センサ162からの検出信号は入力ポートを介して電子制御ユニット140に入力されている。図19は、モータ122の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した変形例の動力出力装置120Dの回路図である。この回路図は、図11に例示した回路図においてトランジスタTU1,TU2を一つのトランジスタT1に置き換えると共にトランジスタTU3,TU4を一つのトランジスタT2に置き換えた構成となっている。したがって、図19に示す回路は、図11に例示した回路と同様に、第2直流電源132のエネルギをコンデンサ130Dに蓄えると共にコンデンサ130Dの電位を用いて第2直流電源132を充電可能なチョッパ回路とみなすことができる。モータ122の三相コイルのvw相も、u相と同様に昇降圧チョッパ回路とみなすことができるから、トランジスタT1〜T6をオンオフすることによりコンデンサ130Dを充電したり、コンデンサ130Dの電位を用いて第2直流電源132を充電することができる。そして、コンデンサ130Dの端子間電圧Vcの制御とモータ122の駆動制御は、変形例の動力出力装置20Dの際に説明したように、擬似的な三相交流の電位をプラス側またはマイナス側にオフセットすることによって同時に行なうことができる。
【0062】
したがって、変形例の動力出力装置120Dでは、図13における各相変調波をプラス側またはマイナス側にオフセットすることにより、第2実施例の動力出力装置120の各相のPWM制御と同様の制御を行なうことができると共にコンデンサ130Dの端子間電圧Vcを制御することができる。この結果、変形例の動力出力装置120Dでも第2実施例の動力出力装置120と同様の効果を得ることができる。
【0063】
第2実施例の動力出力装置120やその変形例では、各相搬送波の位相を120度ずつ異なるものとしたが、n相のモータを用いる場合には、360/n度ずつ異なるものとすればよい。また、各相搬送波の位相は、電流脈動の許容範囲内であればよいから、120度あるいは360/n度を含む許容範囲内の角度であればよい。更に、ゼロ電圧ベクトルの出現頻度が少なくすることができるものであれば、各相搬送波の位相は何度であってもよい。
【0064】
第1実施例の動力出力装置20や第2実施例の動力出力装置120およびその変形例では、モータ22,122として三相交流の矩形波電圧駆動する同期発電電動機を用いたが、多相交流の矩形波電圧駆動する如何なるタイプの電動機を用いるものとしてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である動力出力装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】トランジスタTU1,TU2をオンとすると共にトランジスタTU3,TU4をオフとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。
【図3】トランジスタTU1,TU2をオフとすると共にトランジスタTU3,TU4をオンとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。
【図4】トランジスタTU1,TU4をオフとすると共にトランジスタTU2,TU3をオンとした状態のu相に着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。
【図5】インバータ回路24のトランジスタTU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4のスイッチングにより擬似的な三相交流を得る様子を説明する説明図である。
【図6】従来例の動力出力装置における各相指令と三角搬送波,各相(Vu,Vv,Vw)のPWM波形,ゼロ電圧ベクトルの出力を示す説明図である。
【図7】変形例の動力出力装置20Bの構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例の動力出力装置20Cの構成の概略を示す構成図である。
【図9】モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置20Cの回路図である。
【図10】変形例の動力出力装置20Dの構成の概略を示す構成図である。
【図11】モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置20Dの回路図である。
【図12】第2実施例の動力出力装置120の構成の概略を示す構成図である。
【図13】第2実施例の動力出力装置120の電子制御ユニット140によるPWM制御の際に用いる各相変調波と各相搬送波とを例示する説明図である。
【図14】図13の各相変調波と各相搬送波とに基づいてスイッチングした際に各相とモータ122の中性点に流れる電流を示す説明図である。
【図15】変形例の動力出力装置120Bの構成の概略を示す構成図である。
【図16】変形例の動力出力装置120Cの構成の概略を示す構成図である。
【図17】モータ122の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置120Cの回路図である。
【図18】変形例の動力出力装置120Dの構成の概略を示す構成図である。
【図19】モータ122の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置120Dの回路図である。
【符号の説明】
20,20B,20C,20D,120,120B,120C,120D 動力出力装置、22,122 モータ、24,124 インバータ回路、26,126 正極母線、28,128 負極母線、30,30B,130,130B 第1直流電源、30C,30D,130C,130D コンデンサ、32,132 第2直流電源、34 接続線、40,140 電子制御ユニット、42,142 CPU、44,144 ROM、46,146 RAM、52〜58,152〜158 電流センサ、60,160 回転角センサ、62,162 電圧センサ、T1〜T6,TU1〜TU4,TV1〜TV4,TW1〜TW4 トランジスタ、D1〜D6、DU1〜DU6,DV1〜DV6,DW1〜DW6 ダイオード、C1,C2 コンデンサ。

Claims (20)

  1. 多相交流により回転駆動する電動機と、
    複数のスイッチング素子のスイッチング操作により3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
    前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された第1の電源と、
    前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
    を備え
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する動力出力装置。
  2. 前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項1記載の動力出力装置。
  3. 多相交流により回転駆動する電動機と、
    複数のスイッチング素子のスイッチング操作により3段階以上の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
    前記インバータ回路の正極母線と前記電動機の中性点とに接続された第1の電源と、
    前記インバータ回路の負極母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
    を備え
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する動力出力装置。
  4. 前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項3記載の動力出力装置。
  5. 前記第2の電源は、前記第1の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項3記載の動力出力装置。
  6. 前記インバータ回路は、3段階の電圧レベルによる擬似的な多相交流電力を供給する回路である請求項1ないし5いずれか記載の動力出力装置。
  7. 前記インバータ回路の各相は、正極母線と負極母線とを直列に接続する4個のスイッチング素子と、該4個のスイッチング素子の中間の2個のスイッチング素子を跨いで負極母線から正極母線側を順方向として直列に接続する2個のダイオードと、該2個のダイオードの中間点に前記3段階の電圧レベルのうちの中間電圧レベルを供給する中間電圧供給手段とを備える請求項6記載の動力出力装置。
  8. 前記中間電圧供給手段は、正極母線と負極母線とを直列に接続する2個のコンデンサを備え、該2個のコンデンサの中間接点を前記2個のダイオードの中間接点に接続する手段である請求項7記載の動力出力装置。
  9. 前記中間電圧供給手段は、前記電動機の中性点を前記2個のダイオードの中間接点に接続する手段である請求項7または8記載の動力出力装置。
  10. 前記スイッチング制御手段は、前記3段階以上の電圧レベルの各電圧レベル間に階層的に各々設けられた複数の搬送波と各相の電圧指令とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段である請求項1ないし9いずれか記載の動力出力装置。
  11. 前記スイッチング制御手段は、前記各相の電圧指令が前記複数の搬送波により形成される階層のいずれに属するかに基づいて前記インバータ回路の各相の電圧レベルを設定し、該インバータ回路の各相の電圧レベルが該設定された電圧レベルとなるよう該インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段である請求項10記載の動力出力装置。
  12. 多相交流により回転駆動する電動機と、
    複数のスイッチング素子のスイッチング操作により擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
    前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された第1の電源と、
    前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
    前記多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と前記多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
    を備え
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する動力出力装置。
  13. 前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項12記載の動力出力装置。
  14. 多相交流により回転駆動する電動機と、
    複数のスイッチング素子のスイッチング操作により擬似的な多相交流電力を前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
    前記インバータ回路の正極母線と前記電動機の中性点とに接続された第1の電源と、
    前記インバータ回路の負極母線と前記電動機の中性点とに接続された第2の電源と、
    前記多相交流の各相の電圧指令に基づく各相変調波と前記多相交流の各相に対応し所定の位相差を有する各相搬送波とに基づいて前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御手段と
    を備え
    前記インバータ回路の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することで、前記インバータ回路と電動機のコイルをチョッパ回路として動作させ、前記第1電源と前記第2電源との間での電力の移動を制御する動力出力装置。
  15. 前記第1の電源は、前記第2の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項14記載の動力出力装置。
  16. 前記第2の電源は、前記第1の電源からの電力を用いて充電される充放電可能な蓄電手段である請求項14記載の動力出力装置。
  17. 前記所定の位相差は、前記電動機の中性点の電流リップルを打ち消す位相差である請求項12ないし16いずれか記載の動力出力装置。
  18. 前記所定の位相差は、360度を前記電動機の相数で割った角度を含む所定範囲の角度である請求項12ないし16いずれか記載の動力出力装置。
  19. 前記所定の位相差は、360度を前記電動機の相数で割った角度である請求項12ないし16いずれか記載の動力出力装置。
  20. 請求項1ないし19いずれか記載の動力出力装置であって、前記電動機は、動力の入力により発電可能な発電電動機であり、前記第1の電源および/または前記第2の電源は、充放電可能な電源であり、前記電動機を発電機として駆動すると共に該電動機により発電された電力を前記第1の電源および/または前記第2の電源に充電するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する充電制御手段を備える動力出力装置。
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