光ファイバ通信の高速化あるいは大容量化のために、一本の光ファイバ伝送路に複数チャンネル分の光パルス信号をまとめて伝送する、光分割多重技術が検討されている。光分割多重のための手段として、光パルス信号を構成する光パルスの波長によってチャンネルを分離するWDM、光パルス信号を構成する光パルスが占める時間スロットによってチャンネルを分離するOTDM及び符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを分離するOCDMが、それぞれ研究されている。
そこで、まず、図1を参照してWDMとOTDMについて説明する。図1は、送信部100と受信部200とが伝送路である光ファイバ105で結ばれて構成される、光分割多重送受信装置の概略的ブロック構成図である。チャンネル数をnとして表してある。
送信部100は、第1乃至第nチャンネルに対してそれぞれ送信器101、送信器102及び送信器103を具えている。また、これら送信器から出力される第1乃至第nチャンネルの光パルス信号を合波して多重する多重器104を具えている。送信器101、送信器102及び送信器103において、第1乃至第nチャンネルの電気信号110、電気信号111及び電気信号112が、それぞれ光パルス信号120、光パルス信号121及び光パルス信号122に変換される。第1乃至第nチャンネルのそれぞれの送信器から出力される光パルス信号は多重器104で合波されて多重され、光分割多重信号126として出力される。
多重器104から出力される光分割多重信号126は、伝送路である光ファイバ105を伝播して受信部200に伝送される。
受信部200は、第1乃至第nチャンネルに対してそれぞれ受信器107、受信器108及び受信器109を具えている。また、これら受信器に入力される光分割多重信号126を分離する分離器106を具えている。
ここで、まず、図1に示す光分割多重送受信装置が、WDMによる送受信装置であるとして説明する。WDM送受信装置の場合には、チャンネルごとに異なる波長の光がそれぞれのチャンネルの情報の搬送波として割り当てられる。すなわちWDMによる送受信方法及びこの方法を実現する装置においては、搬送波としての光の波長が、チャンネルを識別する識別子としての役割を果たす。
多重器104には、例えば光カプラが利用される。また、分離器106には、例えば光カプラと光波長フィルタとを組み合わせた光学素子、あるいはアレイ導波路回折格子(AWG: Array Waveguide Grating)等の波長分離機能を持つ光学素子が利用される。したがって、分離器106では入力される多波長の光分割多重信号126が、チャンネルごとに割り当てられた波長に分離されて出力される。このため、受信器107、受信器108及び受信器109には、それぞれのチャンネルに割り当てられた波長の光パルス信号が供給される。
次に、OTDMについて説明する。図1に示す光分割多重送受信装置が、OTDMによる送受信装置であるとして説明する。送信器101、送信器102及び送信器103から、RZ(Return to Zero)フォーマットに変調された光パルス信号が出力される。これら第1乃至第nチャンネルの光パルス信号を多重器104で合波する際には、例えば、可変遅延線等を用いて、全てのチャンネルが与えられた時間スロットに光パルスが入るようにタイミングの調整がなされる。
分離器106としては、例えば、多重器104から出力される光分割多重信号126をチャンネルの数分に強度分割する光カプラと、特定の時間スロットのみ光を透過させる光変調器の組み合わせが用いられる。分離器106によってチャンネルごとに分離されて、第1チャンネルには光パルス信号123が、第2チャンネルには光パルス信号124が、第nチャンネルには光パルス信号125が、各チャンネルの受信器107、受信器108及び受信器109に供給される。受信器107、受信器108及び受信器109では、光電変換されて光パルス信号が電気パルス信号に変換されて、各チャンネルの電気パルス信号113、114及び115が受信される。
図2(A)及び(B)を参照して、WDMとOTDMとにおけるそれぞれ波長軸上及び時間軸上での各光パルス信号を構成する光パルスの配置関係を説明する。図2(A)は、WDMについて、波長軸上で各チャンネルが分割されて配置される様子を示す図である。また、図2(B)は、OTDMについて、時間軸上で時間スロットに分割された位置スロットごとに各チャンネルが割り当てられている様子を示す図である。
これら図2(A)及び(B)を参照すると、WDMの場合には波長帯域が、OTDMの場合には時間軸上に分割されて指定される時間スロットが、それぞれチャンネルを割り当てるために使われることが分かる。すなわち、WDMとOTDMは、一チャンネルが波長軸上あるいは時間軸上に分割された、波長あるいは時間スロットという物理的な資源の中の一つを占有させて使用される方式である。
以上説明したことから、OTDMは、光源の波長は本質的に問題とならないことが分かる。しかし、OTDMにおいて、多重するチャンネル数を増やすためには、各チャンネルに割り当てる時間スロットを短くしなければならず、これにともなって光パルス信号を構成する光パルスの時間軸上での半値幅を狭くする必要がある。
一方、WDMにおいては、多重化された光パルス信号からチャンネルごとの光パルス信号に分離することは、波長分離機能を有する受動光部品で実現できる。また、光パルス信号としてRZフォーマットによる光パルス信号でもNRZ(Non-Return to Zero)フォーマット信号でも適用でき、伝送速度(ビットレート)を変更しなくとも多重するチャンネル数を変更できる。また、非同期多重を実現することも可能であるという特長も合わせ持っている。そのため、これまでWDMに関する研究が精力的になされ、現在は実用化されている。
最近、光多重方法として上述したWDM及びOTDMとは別の方法であるOCDMが研究され始めている。このOCDMの特長は、WDM及びOTDMのように一チャンネルを波長軸上あるいは時間軸上に分割された、波長あるいは時間スロットという物理的な資源の中の一つを占有させる必要がない点である。
図3(A)乃至(E)を参照してOCDM装置の一例(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)について、その構成と機能について説明する。図3(A)に示すOCDM装置は、送信部300と受信部400とが伝送路310で結合された構成である。伝送路310は光ファイバである。図3(A)には、説明が煩瑣になるのを避けるために、2チャンネルの送受信を想定した装置を示してある。3チャンネル以上の送受信が可能であるOCDM装置についても、チャンネル数を増やすだけで、同様に実現できることは、以下の説明から明らかである。
送信部300は、第1チャンネルの符号器303、第2チャンネルの符号器304及び合波器307を具えている。第1チャンネルの符号器303は、第1チャンネルの光パルス信号301を符号Code 1で与えられる符号で符号化して第1チャンネルの符号化光パルス信号305として出力する。第2チャンネルの符号器304も同様に、第2チャンネルの光パルス信号302を符号Code 2で与えられる符号で符号化して第2チャンネルの符号化光パルス信号306として出力する。
図3(B)は、第1及び第2チャンネルの光パルス信号の時間波形を示した図である。第1及び第2チャンネルの光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長λ1、λ2及びλ3の光成分を含んでいる。このことを示すために、便宜上、波長λ1、λ2及びλ3を識別する数字1、2及び3を囲む矩形を同一時間上に重ねて示してある。ここでは、異なる3種類の波長を含む光パルスから構成される光パルス信号を想定して説明する。しかし、一般的に光パルスに含まれる波長の種類は3種類に限らず、2種類でもまた、3種類以上含んでいる場合でも、以下の説明は同様に成立する。
光パルスが異なる波長λ1、λ2及びλ3等の光成分を含んでいるとは、この光パルスを波長軸上に分解して配列、すなわち分光した場合に、中心波長がそれぞれλ1、λ2及びλ3等である光パルスに分光されることを意味する。また、複数の光成分を含んで構成されている光パルスを波長分解して得られる、単一光波長光成分からなる光パルスを、以後チップパルスと呼ぶこともある。
以後、異なる波長成分を含む光パルスを、その波長成分の波長を示す識別数字を囲む矩形を同一時間上に重ねて示すものとする。また、第1チャンネルの光パルスと第2チャンネルの光パルスを識別するために、第2チャンネルの光パルスに影をつけて示している。
図3(C)は、第1チャンネルの符号化光パルス信号305及び第2チャンネルの符号化光パルス信号306を、時間軸に対して示している。図3(C)に示すように、例えば、第1チャンネルの符号化光パルス信号305についてみると、第1チャンネルの光パルス信号301を構成する光パルスが符号器303によって、λ1、λ2及びλ3の中心波長を持つ光パルス(チップパルス)に分光されて、かつ時間軸上に時間拡散されて配置されている。第2チャンネルの符号化光パルス信号306についても同様である。ただし、第1チャンネルの符号器に設定されている符号(Code 1)と第2チャンネルの符号器に設定されている符号(Code 2)とは異なる符号であるので、第1及び第2チャンネルの符号化光パルス信号の、時間軸上に配列されるそれぞれのチップパルスが配列される位置は異なっている。
このようにこの図3(A)に示す装置において行なわれる符号化は、光パルスを時間軸上に時間拡散し、かつ光パルスを構成するλ1、λ2及びλ3の中心波長を持つ光パルス(チップパルス)に分光されることによって符号化を行なう方法であるので、時間拡散波長ホッピング符号による符号化と呼ばれる。すなわち、第1及び第2チャンネルの入力光パルス信号301及び302に対して、第1チャンネルの符号器303及び第2チャンネルの符号器304によって、時間拡散波長ホッピング符号による符号化が行なわれる。
図3(D)は、第1チャンネルの符号化光パルス信号305と第2チャンネルの符号化光パルス信号306とが、合波器307で多重された光符号分割多重信号308を示している。合波器307が複数チャンネルの光信号を多重する多重器としての機能を果たす。図3(C)に示された第1チャンネルの符号化光パルス信号305を構成するチップパルス列と第2チャンネルの符号化光パルス信号306を構成するチップパルス列とが同一の時間軸上に重ね合わせられている。ここで、第1チャンネルの符号化光パルス信号を構成するチップパルスと、第2チャンネルの符号化光パルス信号を構成するチップパルスとを識別できるように、後者第2チャンネルのチップパルスには、影を施してある。
光符号分割多重信号308は、伝送路310を伝播して受信部400に送られる。受信部400は、分岐器410、第1チャンネルの復号器413及び第2チャンネルの復号器414を具えている。分岐器410は、光符号分割多重信号308を強度分割して一方を第1チャンネルの復号器413に分岐光符号分割多重信号411として供給し、もう一方を第2チャンネルの復号器414に分岐光符号分割多重信号412として供給する。
第1チャンネルの復号器413は、分岐光符号分割多重信号411を符号Code 1で与えられる符号で復号化して第1チャンネルの光パルス信号415として再生して出力する。第2チャンネルの復号器414も同様に、分岐光符号分割多重信号412を符号Code 2で与えられる符号で復号化して第2チャンネルの光パルス信号416として再生して出力する。それぞれの復号器で再生された光パルス信号を、以後、復号化光パルス信号ということもある。
図3(E)は、光符号分割多重信号308が受信部400に具えられた分岐器410によって第1及び第2チャンネルごとに強度分割されて、第1チャンネルの復号器413及び第2チャンネルの復号器414で復号化された復号化光パルス信号を、第1及び第2チャンネルに対して示したものである。
まず、第1チャンネルの復号化光パルス信号415について説明する。図3(E)の第1チャンネルの時間軸に対する光強度を表す図面では、第2チャンネルの光パルス信号から由来するチップパルスは波長を識別する数字を囲む影をつけた矩形で示されており、第1チャンネルの光パルス信号から由来するチップパルスは波長を識別する数字を囲む矩形に影が付けられていない。
第1チャンネルの光パルス信号から由来するチップパルスはCode 1で与えられる符号で符号化されて生成されたチップパルスであるので、同じCode 1で与えられる符号で復号化すれば、符号化時に与えられた時間遅延を丁度相殺して時間軸上で同一位置を占めるように、各チップパルスは配置される。すなわち、自己相関波形として、元の光パルス信号が再生される。
図3(E)の第1チャンネルの時間軸に対する光強度を表す図面を見ると、1、2及び3の数字を囲む影が付けられていない矩形が同一時間に重なっている。それに対して1、2及び3の数字を囲む影が付けられた矩形は、時間軸上の異なる位置に分散して配置された、相互層間波形として現れている。1、2及び3の数字を囲む影が付けられた矩形は、第2チャンネル由来のチップパルスであり、Code 2で符号化された符号化光パルス信号を構成するチップパルスである。すなわち、第2チャンネル由来のチップパルスからなる、符号化光パルス信号成分は、符号化と復号化とが異なる符号で実行されたために、符号化時に与えられた時間遅延が復号化時に相殺されず、再び時間拡散された相互層間波形として構成されている。
図3(E)の第2チャンネルの時間軸に対する光強度を表す図面においては、上述と逆の関係になっている。すなわち、第2チャンネル由来のチップパルスが自己相関波形を形成しており、第1チャンネル由来のチップパルスが相互相関波形を形成している。これは、第2チャンネルに対しては、Code 2で与えられる符号で符号化され、Code 2で与えられる符号で復号化される構成となっているためである。
強度分割された光符号分割多重信号412については、Code 2で与えられる符号で復号化されるので、光符号分割多重信号412に含まれるCode 1で与えられる符号で符号化された第1チャンネル由来のチップパルスは、符号化時に与えられた時間遅延が復号化時に相殺されず、再び時間拡散された相互相関波形として構成されている。一方、光符号分割多重信号412に含まれるCode 2で与えられる符号で符号化された第2チャンネル由来のチップパルスは、符号化時に与えられた時間遅延が復号化時に相殺され、自己相関波形として構成されている。
以上説明したように、第1チャンネルの復号化光パルス信号415及び第2チャンネルの復号化光パルス信号416は、それぞれ自己相関波形と相互相関波形との和として成り立っている。図3(E)に示すように、自己相関波形と相互相関波形とではそのピーク強度が異なる(自己相関波形のピークの方が大きい)ので、波形のピーク値を、予め設定しておいた閾値との大小を判定する、いわゆる閾値判定を行うことによって、相互相関波形成分を除去すれば、自己相関波形成分のみが取り出せる。各チャンネルにおいて、それぞれ自己相関波形成分を抽出できれば、その自己相関波形は、再生されたそれぞれの光パルス信号であるので、この光パルス信号を電気信号に変換すれば、送信された情報を受け取ることができる。
符号化及び復号化の方法には、上述の時間拡散波長ホッピングによる方法の他に、単一波長の光を用いた光パルス信号を符号化する方法もある。この方式では、光パルス信号を構成する光パルスを、チップパルスに分解して夫々のチップパルスに位相差を与えて時間軸上に配列することによって符号化が行なわれる(例えば、非特許文献2参照。)。このような符号化は、時間拡散による符号化と呼ばれることもある。
符号化及び復号化を実現する手段の一例として、スーパーストラクチャファイバグレーティング(SSFBG: Super Structure Fiber Bragg Grating)が知られている。図4(A)及び(B)を参照して、FBGによる光符号器の構造及びその動作について説明する。図4(A)では、SSFBGが形成された光ファイバのコアの屈折率分布構造及び屈折率の変化の様子を、それぞれ上図、と下図とに分けて示してある。図4(A)の上図に示すように、入力される光パルスは図の左側からSSFBGに入力され、生成されたチップパルス列も左側から出力される。図4(A)に示すSSFBGは単位FBG G1、単位FBG G2及び単位FBG G3が直列に配列されていることから、このSSFBGには符号長3の符号が設定されていることになる。以後、単位FBGが複数直列に配置されて構成されたSSFBGを単にFBGということもある。
単位FBG G1、単位FBG G2及び単位FBG G3の屈折率変調周期(「格子ピッチ」と呼ぶこともある。)は、図4(A)の下図で示すように、それぞれΛ1、Λ2及びΛ3である。一般に、屈折率変調周期Λとブラッグ反射波長λとの間には、λ=2nΛの関係がある。ここで、nはFBGの平均屈折率である。すなわち、単位FBGの格子ピッチΛを定めることにより、この単位FBGのブラッグ反射波長λが決定される。
ここで、一つの光ファイバに異なる格子ピッチをもつ複数の単位FBGを直列に配置すると、各単位FBGから格子ピッチに対応する波長の光(以後「ブラッグ反射光」ということもある。)が得られる。それぞれの単位FBGから反射されるブラッグ反射光は、その単位FBGが配置されている箇所に応じてそれぞれ異なる時間遅延をもって反射される。このことを利用するのが、FBGによる時間拡散波長ホッピングによる符号化である。
図4(B)を参照して、FBGによる光符号器の構成例を説明する。図4(B)に示す光符号器は、FBG 352と光サーキュレータ350を具えて構成される。符号化される光パルスは入力光として図4(B)の左側の入力ポート348から光サーキュレータ350を介してFBG 352に入力される。FBG 352は、単位FBG G1、単位FBG G2及び単位FBG 3を具えているので、それぞれの単位FBGから反射される異なる波長のブラッグ反射光が反射される。これらのブラッグ反射光は、光サーキュレータ350を介して図4(B)の右側の入力ポート354から、符号化光パルスとして出力される。
時間拡散波長ホッピングによる符号化を実現できる光符号器としては、上述のFBG以外にもAWG(Array Waveguide Grating)と光遅延線を組み合わせて構成された手段も知られている(例えば、非特許文献3参照)。
受信側において復号化された光パルス信号から自己相関波形成分と相互相関波形成分とを分離して、自己相関波形成分取り出す手法として、上述した閾値判定を利用する方法の他に、時間ゲートによる方法がある。時間ゲートによる方法とは、相互相関波形成分を自己相関波形と重ならないように時間調整をして、自己相関波形が通過する時間帯のみ信号を通過させる時間ゲート手段を用いる方法である。
時間ゲート手段として、電界吸収型光変調器(EA変調器:Electro-absorption Modulator)を利用する時間ゲートによる方法が知られている(例えば、非特許文献4参照)。すなわち、EA変調器の透過率を自己相関波形が通過する時間帯だけ大きくし、相互相関波形成分が通過する時間帯では小さく制御することで、時間ゲートを実現させる。このEA変調器の透過率の制御は、クロック信号が使われる。
また、時間ゲート手段として、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)を利用する時間ゲートによる方法が知られている(例えば、非特許文献5参照)。この方法は、まず、モード同期半導体レーザを用いて復号化された信号の一部から光クロックを抽出する。その後、復号化された信号と光クロックとをSOAに入力し、SOAにおいて光クロックに同期させて四光波混合効果を発現させる。そして、光クロックに同期して発現する四光波混合効果によってSOA がON状態となる時間帯と重なる光パルスのみがSOAを透過できるようにすることで、時間ゲート手段が実現されている。
以上説明したように、OCDMは一つのチャンネルが物理的資源(波長帯域や時間スロット)の一つを占有させる必要が必ずしもないという特徴がある。これに対して、WDMによれば、チャンネルごとに異なる波長帯域を割り当てる必要がある。また、OTDMによれば、時間軸上でチャンネルごとに異なる時間スロットを割り当てる必要がある。
また、OCDMは、受信側で符号化されて送られてきた符号化光パルス信号を復号化するためには、符号化される際に使われた符号を知らなければならない。そのため送信する光パルス信号を符号化するために使った符号を公開しない限り、この符号を知らない第三者が復号化することは不可能である。この点が、WDMやOTDMによる光通信と比較してOCDMによる光通信の安全性が高い理由となっている。
更に、OCDMの特長として、チャンネル数の増減に柔軟に対処できる点がある。例えば、WDMによれば、限られた通信波長帯域内でチャンネル数を増やすには、各チャンネルに割り当てられる波長帯域幅を狭くして、全チャンネルに対して割り当てる波長帯域を再設定しなければならない。また、同様にOTDMによれば、限られた通信速度の範囲内でチャンネル数を増やすには、各チャンネルに割り当てられる時間スロットの幅を狭くして、全チャンネルに対して割り当てる時間スロットを再設定しなければならない。WDMあるいはOTDMのいずれによって光通信を実現するにしても、使われる光通信装置を構成する光源、波長分離器等の変更が必要となる。
これに対して、OCDMでは、復号化された光パルス信号から相互相関波形成分を除去して自己相関波形を抽出できる程度に、相互相関波形成分のピーク値と自己相関波形のピーク値の比の大きさが確保できれば、符号の種類を追加するだけでチャンネルの追加が行なえる。すなわち、光通信装置の、追加する以外のチャンネルに対する構成部分を変更することなく、新たに追加するチャンネルに対応する新たな符号を設定した符号部と復号部とを追加するだけで新たなチャンネルの追加を実現できる。
N. Wada, et al., "Error-free transmission of 2-channel×2.5 Gbit/s time-spread/wavelength-hop OCDM using fiber Bragg grating with supercontinuum light source", ECOC'99 (1999).
特開2000-209186号公報
P. C. Teh, et al. "Photon. Technol. Lett., vol. 14, No. 2, pp. 227-229, Feb. (2002).
S. Yegnanarayanan, et al., "An incoherent wavelength hopping/time spreading code-division multiple access system", ECOC'99 (1999).
湊 直樹 他、信学技法OCS2003-24, pp. 49-54, 2003年5月.
K. Kitayama et al., IEICE Trans. Fundamentals, vol. E82-A, No. 12 pp. 2616-2626, Dec. (1999).
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を示し、この発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
以下に示す図においては、光ファイバ等の光パルス信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。またこれら太線および細線に付された番号は、経路そのものを指示するほか、それぞれの経路を伝播する光パルス信号あるいは電気信号を意味する場合もある。
<第1実施例>
図5を参照して、第1実施例の光分割多重送受信方法及びこの方法を実現するための装置について説明する。この光分割多重送受信装置は、光符号分割多重信号生成部510及び光波長分割多重信号生成部530を並列に具える送信部500と、光符号分割多重信号抽出部610及び光波長分割多重信号抽出部630を並列に具える受信部600とを具える。
以後の説明において、光符号分割多重信号生成部をOCDM信号生成部、光波長分割多重信号生成部をWDM信号生成部、光符号分割多重信号抽出部をOCDM信号抽出部及び光波長分割多重信号抽出部をWDM信号抽出部と略記することもある。
光符号分割多重信号生成ステップは、OCDM信号生成部510において実行される。すなわち、OCDM信号生成部510では、チャンネルごとに相異なる時間拡散波長ホッピング符号が用いられて光パルス信号が符号化されて符号化光パルス信号が生成される符号化ステップがまず実行される。続いてこの符号化光パルス信号の時間波形を変形させて変形符号化光パルス信号が生成される時間波形変形ステップが実行される。
また、光波長分割多重信号生成ステップは、WDM信号生成部530によって実現される。WDM信号生成部530では、チャンネルごとに相異なる波長が割り当てられて光波長分割多重信号が生成される。
光符号分割多重信号生成ステップを実行するOCDM信号生成部510と、光波長分割多重信号生成ステップを実行するWDM信号生成部530とは、図5に示すように並列されて具えられている。
図5では、OCDM信号生成部510及びWDM信号生成部530に対してそれぞれ1チャンネル分だけを示し、他のチャンネルを省略してある。すなわち、一般には、OCDM信号生成部510はOCDMチャンネルの数だけ並列して配置され、WDM信号生成部530はWDMチャンネルの数だけ並列して配置される。OCDMチャンネルの数だけ並列して配置されるOCDM信号生成部510は符号器に設定される符号が異なるのみで、他の構成要素は同一である。ただし、波長分散器516の波長分散特性は、各チャンネル同一としても、チャンネルごとに異なってもかまわない。また、WDMチャンネルの数だけ並列して配置されるWDM信号生成部530は、各チャンネル同一の構成要素で構成される。
以下の説明においては、便宜上OCDMチャンネルを2チャンネル、WDMチャンネルを4チャンネルとして説明する場合もある。しかし、チャンネル数にかかわらず、以下の説明は成立することは明らかである。
送信部500は、また、変形符号化光パルス信号と光波長分割多重信号とを合波して光分割多重信号を生成する合波器540を含んでいる。一方、受信部600では、受信された光分割多重信号を、光符号分割多重受信信号と光波長分割多重受信信号とに分割する分波器605を含んでいる。
光符号分割多重信号抽出ステップは、OCDM信号抽出部610において実行される。OCDM信号抽出部610の復号器612においては、光符号分割多重受信信号に対して、チャンネルごとに時間拡散波長ホッピング符号と同一の符号を用いて復号化され、復号化光符号分割多重受信信号が生成される。復号化光符号分割多重受信信号に含まれる変形光パルス信号成分は、逆波長分散器614によって復元されて再生光パルス信号が生成される。再生光パルス信号は、第1閾値判定部618によって送信信号である光パルス信号の自己相関波形成分のみが抽出される。
OCDM信号生成部510が具える波長分散器516と、また、OCDM信号抽出部610が具える逆波長分散器614とは、その絶対値が等しく正負の符号が逆の分散値を有している。すなわち、時間波形変形ステップが波長分散器516によって行われ、時間波形復元ステップは逆波長分散器614によって行われる。また、OCDM信号抽出部610は、再生光パルス信号から自己相関波形成分のみを抽出するための第1閾値判定部618を含んでいる。
光波長分割多重信号抽出ステップは、WDM信号抽出部630において実行される。WDM信号抽出部630では、このWDM信号抽出部が具える第2閾値判定部634で、光波長分割多重受信信号からチャンネルごとの光波長分割多重信号が抽出される。
図5を参照してOCDMチャンネル及びWDMチャンネルの構成を詳しく説明する。まず、送信部500におけるOCDMチャンネルのOCDM信号生成部510の構成を説明する。OCDM信号生成部510は、複数のOCDMチャンネルが並列されて設置されている。そのうち、第1 OCDMチャンネルを代表して説明する。その他のOCDMチャンネルも同様の構造であるのでその説明を省略する。
OCDM信号生成部510は、強度変調器512、符号器514、波長分散器516及びパワー調整器520を具えて構成される。チャンネルごとに異なるのは、符号器に設定されている符号である。この符号の相違によって各チャンネルが識別されるので、OCDMは符号を識別子とする光多重送受信方法である。
まず、OCDM信号生成部510の構成要素である強度変調器512に、光パルス列509が入力される。この光パルス列509を構成する光パルスは、後述するように、波長λ1、λ2、λ3及びλ4の光を含んでいる。光パルスが波長λ1、λ2、λ3及びλ4の光を含んでいるとは、中心波長がそれぞれλ1、λ2、λ3及びλ4である光パルスが同一時間軸上に重ね合わさって存在する状態を意味する。
強度変調器512は、第1 OCDMチャンネルの送信情報である、2値デジタル電気信号をRZフォーマットされた光パルス信号に変換する機能を有している。強度変調器512としては、例えば、EA変調器を利用することができる。強度変調器512に入力された光パルス列509は、第1 OCDMチャンネルの送信情報が反映された光パルス信号513として出力される。
以後、光パルス信号との表現は、光パルス列を光変調して、電気パルス信号を光パルス信号に変換して得られる、2値デジタル電気信号を反映した光パルスの列を意味する場合のみに使用するものとする。一方、光パルス列との表現は、時間軸上で規則正しい一定の間隔(時間スロット)で並ぶ光パルスの総体を指すものとして用いる。
光パルス信号513は、符号器514に入力されて、時間拡散波長ホッピング符号化されて符号化光パルス信号515として出力される。すなわち、符号器514によって符号化ステップが実現される。符号器514には第1 OCDMチャンネルを識別するための符号が設定されており、この符号は、後述する受信部600における復号器612に設定されている符号と同一である。時間拡散波長ホッピング符号化については、既に説明したので、同様の説明を繰り返さない。
符号器あるいは復号器としては上述したFBGが利用できる。具体的には、図4を参照して説明した光符号器が符号器あるいは復号器として利用できる。また、符号器あるいは復号器としてはFBGの他に、トランスバーサル型フィルタ構成の素子等も利用できるが、以後の説明ではFBGを利用して構成される符号器及び復号器を前提にして説明する。いずれにしても、上述したように符号器あるいは復号器としては図4に示すような光サーキュレータを利用して構成される光符号器を利用する場合、この光サーキュレータに接続が容易なFBGは非常に便利である。
符号化光パルス信号515は、波長分散器516に入力されてその時間波形が変形されて変形符号化光パルス信号517として出力される。すなわち波長分散器516によって時間波形変形ステップが実行される。波長分散器としては、分散補償光ファイバあるいは屈折率周期構造がチャーピングされたファイバブラッググレーティング等、市販されている波長分散デバイスを利用することができる。
ここで、図6(A)乃至(C)を参照して、光パルス信号を構成する光パルスに対する波長分散及び逆波長分散について説明する。図6(A)乃至(C)の各図の上段は光パルスの時間軸に対する波形を、下段は光パルスの波長軸に対する波形を示している。すなわち、下段は光パルスの波長スペクトルを示している。図6(A)乃至(C)の各図とも、実線で示す波形は光電場ベクトルの強度を表し、破線は時間軸に対する光電場ベクトルの強度波形の包絡線を示している。
図6(A)は波長分散器に入力される前の光パルスを示している。図6(B)は正常分散特性をもつ波長分散器を通過した後の光パルスを示している。波長スペクトルの強度及び半値幅は変化していないが、時間波形の半値幅は広がっている。ここで、時間波形の半値幅とは、時間軸に対する光電場ベクトルの強度波形の包絡線の半値幅をいう。時間軸に対する光電場ベクトルの強度波形の包絡線の上半分と下半分の形状に対する半値幅はそれぞれ等しいので、この半値幅を時間波形の半値幅というものとする。
時間波形の半値幅が広がる理由は、波長分散器を構成している正常分散特性を持つ波長分散媒質中を光パルスが通過する際に、光パルスを構成する光の長波長成分ほどその伝播速度が大きいためである。すなわち、波長分散器を構成している波長分散媒質中を光パルスが通過中に、光の長波長成分ほどその位相が進む結果、光パルスが時間軸上で広がるためである。ここで、波長分散媒質とは、例えば、波長分散器として利用される、分散補償光ファイバのコアあるいは屈折率周期構造がチャーピングされたファイバブラッググレーティングが形成されているコア等をいう。
図6(C)は異常分散特性をもつ波長分散器を通過した後の光パルスを示している。この場合も、図6(B)に示す光パルス同様、光パルスの時間波形の半値幅が広がる。その理由は、図6(B)とは逆に、異常分散特性を持つ波長分散媒質中を光パルスが通過する際に、光パルスを構成する光の短波長成分ほどその位相速度が大きいためである。
ここで、波長が長くなるほど位相速度が速くなる現象を正常分散と呼び、波長が長くなるほど遅くなる現象を異常分散と呼ぶ。また、単位波長差をもつ光同士の位相速度差をその媒質の分散値という。そして、正常分散の分散値を正の値、異常分散の分散値を負の値としてそれぞれ表す。
この発明の光分割多重送受信方法及びこの方法を実現する装置の特徴は次の点にある。すなわち、この特徴は、波長分散器516によって実行される時間波形変形ステップで、符号化光パルス信号の時間波形を変形させて変形符号化光パルス信号が生成され、逆波長分散器614によって実行される時間波形復元ステップで、変形符号化光パルス信号を復元して符号化光パルス信号波形と相似の復元符号化光パルス信号が生成されることである。従って、波長分散器516の分散値と逆波長分散器614の分散値とは、その絶対値が等しく符号が逆であることが必要である。
また、変形符号化光パルス信号517はパワー調整器520に入力され、そのパワーを調整されて変形符号化光パルス信号521として出力される。このパワー調整器520は、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号の強度を揃えるために、設置される。変形符号化光パルス信号の強度がOCDMチャンネルごとに互いに大きく異なると、受信部600の復号器で復号化された復号化光パルス信号に含まれる相互相関波形成分が自己相関波形成分と同じ程度あるいは、それ以上になってしまう可能性がある。このようなことが起こると、第1閾値判定部において、自己相関波形成分のみを抽出することができなくなる可能性がある。
以上説明したように、この発明の特徴は、送信ステップにおいて、符号器514によって実行される光符号分割多重信号生成ステップ、及び波長分散器516によって実行される時間波形変形ステップを含んでいる点にある。
次に、送信部500におけるWDMチャンネルのWDM信号生成部530の構成を、図5を参照して説明する。WDM信号生成部530は、複数のWDMチャンネルが並列されて設置されている。ここでも上述したOCDM信号生成部510の構成を説明した時と同様に、第1 WDMチャンネルを代表して説明する。その他のWDMチャンネルも同様の構造であるのでその説明を省略する。
WDM信号生成部530は、波長分波器532、強度変調器534及びパワー調整器538を具えて構成される。まず、WDM信号生成部530の構成要素である波長分波器532に光パルス列529が入力される。光パルス列529は、ここでもOCDMチャンネルの場合と同様に、波長λ1、λ2、λ3及びλ4の光を含んでいるものとする。波長分波器532によって、各WDMチャンネルに異なる波長の光パルスが分配される。例えば、第1 WDMチャンネルに対しては、波長λ1の光パルス531が分配される。すなわちこの波長の相違によって各WDMチャンネルが識別されるので、WDMは符号を識別子とする光多重送受信方法である。波長分波器532及び後述する波長分波器632としては、例えば、AWG等が利用できる。
強度変調器534は、第1 WDMチャンネルの送信情報である2値デジタル電気信号をRZフォーマットされた光パルス信号に変換する機能を有している。強度変調器534は、第1 OCDMチャンネルの強度変調器512と同様であるので、同様の説明を繰り返さない。強度変調器534に入力された光パルス531は、第1 WDMチャンネルの送信情報が反映された光パルス信号535として出力される。光パルス信号535の波長はλ1である。
光パルス信号535は、パワー調整器538に入力され、そのパワーを調整されて光パルス信号539として出力される。このパワー調整器538もOCDM信号生成部510に具えられているパワー調整器520と同様の目的で設置されるものである。
以上説明したように、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と、各WDMチャンネルの光パルス信号とが、合波器540で合波されて光分割多重信号541とされて光ファイバで構成される伝送路550を伝播して、受信部600に送られる。ここでは、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号は、第1 OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号521を含め2チャンネル分を意味し、第1及び第2 OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号を合波して生成される変形符号化光パルス信号である。また、各WDMチャンネルの光パルス信号は、第1 WDMチャンネルの光パルス信号539を含め4チャンネル分を意味し、第1乃至第4 WDMチャンネルの光パルス信号を合波して生成される光波長分割多重信号である。すなわち、合波器540で合波ステップが実行される。
次に、受信部600の構成及びその機能を説明する。受信部600は、分波器605、OCDM信号抽出部610及びWDM信号抽出部630を具え、OCDM信号抽出部610とWDM信号抽出部630とが並列されて構成される。まず、OCDMチャンネルのOCDM信号抽出部610の構成を説明する。OCDM信号抽出部610は、複数のOCDMチャンネルが並列されて設置されている。ここでも、上記OCDM信号生成部510の説明と同様に、第1 OCDMチャンネルを代表して説明する。
OCDM信号抽出部610は、復号器612、逆波長分散器614、第1閾値判定部618及び受信器620を具えて構成される。チャンネルごとに異なるのは、復号器に設定されている符号である。送信部500の各チャンネルに設置されている符号器と、受信部600の各チャンネルに設置される復号器とには、対応するチャンネルごとにそれぞれ等しい符号が設定される。
分波器605に光分割多重信号541が入力され、光符号分割多重受信信号(以後、「OCDM受信信号」と略記することもある。)と、光波長分割多重受信信号(以後、「WDM受信信号」と略記することもある。)と、に分割される。光分割多重信号541が、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各WDMチャンネルの光波長分割多重信号とが合波器540で合波されて生成された信号であるから、この光分割多重信号541を分波器605によって強度分割されて得られるOCDM受信信号及びWDM受信信号のいずれも、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各WDMチャンネルの光波長分割多重信号とを等しく含む信号である。
OCDM信号抽出部610に供給されるOCDM受信信号のうち第1 OCDMチャンネルに分配されるOCDM受信信号606は、復号器612に入力されて、復号化光符号分割多重受信信号(以後、「復号化OCDM受信信号」と略記することもある。)613として復号化されて出力される。復号化OCDM受信信号613は、逆波長分散器614に入力されて、復号化OCDM受信信号613に含まれている変形符号化光パルス信号成分が復元されて再生光パルス信号615として出力される。すなわち、逆波長分散器614において、時間波形復元ステップが実行される。
ここで、復号化OCDM受信信号613には、変形符号化光パルス信号成分以外の成分も含まれているが、この変形符号化光パルス信号成分以外の成分は、第1 OCDMチャンネルにおいてこれ以降のステップにおいて雑音として処理される。したがって、逆波長分散器614から出力される有効な信号は、再生光パルス信号615であることになる。復号化OCDM受信信号613、変形符号化光パルス信号成分等についての詳細な説明は、後述する。
再生光パルス信号615は、第1閾値判定部618に入力されて、第1閾値判定ステップが実行されることによって、第1 OCDMチャンネルの送信情報が反映された光パルス信号513の自己相関波形成分619のみが出力される。自己相関波形成分619は、受信器620に入力されて、光パルス信号である自己相関波形成分619が電気パルス信号に変換(O/E変換)されて、第1 OCDMチャンネルの受信情報として受信部600において取得される。すなわち、送信部500から送信された第1 OCDMチャンネルの送信情報が、受信部600において第1OCDMチャンネルの受信情報として受信される。
一方、WDM信号抽出部630に供給されるWDM受信信号631について説明する。ここでも、上記WDM信号生成部530の説明と同様に、第1 WDMチャンネルを代表して説明する。WDM信号抽出部630に供給されるWDM受信信号631は、波長分波器632に入力されて、各WDMチャンネルに対応する波長の光信号として分波されて、各チャンネルの第2閾値判定部634に供給される。このうち第1 WDMチャンネルの第2閾値判定部634に供給される波長λ1の光波長分割信号633は、第2閾値判定ステップが実行されて、第1 WDMチャンネルのWDM信号635が抽出され、受信器636に入力されて電気パルス信号に変換(O/E変換)されて、第1 WDMチャンネルの受信情報として受信される。すなわち、送信部500から送信された第1WDMチャンネルの送信情報が、受信部600において第1WDMチャンネルの受信情報として受信される。
ここでも、OCDMチャンネルの場合と同様に、第2閾値判定部634に供給される波長λ1の光波長分割信号633には、OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分も含まれているが、このOCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分は、第1 WDMチャンネルにおいてこれ以降のステップにおいて雑音として処理される。このOCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分等についての詳細な説明も後述する。
図7乃至図10を参照して、第1実施例の光分割多重送受信装置における、光信号の伝送形態について説明する。ここでは、図5を参照して説明した光分割多重送受信装置をモデルにして光信号の伝送形態を説明する。図7乃至図10は、WDMチャンネル4チャンネル分の光パルス信号及びOCDMチャンネル2チャンネル分の光パルス信号の時間波形を示した図であり、横軸は時間軸を示している。WDMチャンネルの第1乃至第4チャンネル(第1 WDMチャンネル乃至第4 WDMチャンネル)をそれぞれチャンネルW1乃至チャンネルW4として示してあり、OCDMチャンネルの第1及び第2チャンネル(第1 OCDMチャンネル及び第2 OCDMチャンネル)をそれぞれチャンネルC1及びチャンネルC2として示してある。
また、図8乃至図10において縦方向に平行な破線の間隔は時間スロットを示している。すなわちこの破線の間隔に光パルスあるいはチップパルスが1つ分配される。ここでは、WDMチャンネルを4チャンネル、OCDMチャンネルを2チャンネルとして説明するが、チャンネル数はこれに限らず、幾つであっても以下の説明は同様に成立する。
図7乃至図10においても、図3(B)乃至(E)と同様に、OCDMチャンネルの光パルス信号を構成する光パルスは、λ1、λ2、λ3及びλ4の波長を含んで構成され、WDMチャンネルの光パルス信号は、それぞれのチャンネルがλ1、λ2、λ3及びλ4の波長の単独の波長で構成されている。このことを示すために、便宜上、波長λ1、λ2、λ3及びλ4を識別する数字1、2、3及び4を囲む矩形を同一時間上に重ねて示してある。ここでは、異なる4種類の波長を含む光パルスから構成される光パルス信号を想定して説明する。しかし、一般的に光パルスに含まれる波長の種類は4種類に限らず、幾つであっても以下の説明は同様に成立する。
また、図3(B)乃至(E)と同様に、異なる波長成分を含む光パルスを、その波長成分の波長を示す識別数字を囲む矩形を同一時間上に重ねて示すものとする。そして、図7乃至図10においては、WDMチャンネルの光パルスとOCDMチャンネルとの各チャンネルの光パルス信号として、1つの光パルスが、同一の時間スロットを占めているものとして描いてある。
実際は、光パルス列が光変調されて、電気パルス信号が光パルス信号に変換されて得られた2値デジタル電気信号を反映した光パルスの列が光パルス信号である。しかし、単一の光パルスの伝送形態が判明すれば、光パルス信号を構成する全ての光パルスに対して同様の伝送形態がとられるのであるから、光パルス信号の伝送形態を説明するためには、1つの光パルスが同一の時間スロットを占めている場合を説明すれば十分である。以後の図7乃至図10を参照しての説明においては、この1つの光パルスを光パルス信号ということもある。
図7は、図5に示す送信部500における、OCDMチャンネルの強度変調器(チャンネルC1については強度変調器512)及びWDMチャンネルの強度変調器(チャンネルW1については、強度変調器534)から出力される光パルス信号を示している。例えば、チャンネルC1の光パルス信号は光パルス信号513、チャンネルW1の光パルス信号は光パルス信号535である。
図8は、チャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号が符号化された後の、チャンネルW1乃至チャンネルW4の光パルス信号とチャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号との時間軸上での位置関係を示している。チャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号については、波長分散器を通過する前と後とにおける光パルス信号の形状、すなわち、符号化光パルス信号及び変形符号化光パルス信号を示している。チャンネルC1及びチャンネルC2に対して「(波長分散器通過前)」と記載された図が符号化光パルス信号を示し、「(波長分散器通過後)」と記載された図が変形符号化光パルス信号を示している。例えば、チャンネルC1の符号化光パルス信号及び変形符号化光パルス信号は、それぞれ、図5に示す符号化光パルス信号515及び変形符号化光パルス信号517である。
図8に示すように、符号化光パルス信号は、符号器によってチップパルスに分割されている。チャンネルC1とチャンネルC2のチップパルスの配列関係が異なるのは、これらのチップパルスの時間軸上での配列関係が、それぞれのチャンネルの符号器に設定されている符号によって決まるからである。すなわち、このチップパルスの配列関係の相違がチャンネルC1とチャンネルC2とを区別するための識別子となっている。
また、変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの時間軸上での幅が広がって、時間スロットの幅を超えている。これが、波長分散器によるチップパルスの時間波形を変形する効果である。すなわち、時間波形変形ステップが実行された効果である。
図8において、チャンネルW1乃至チャンネルW4の光パルス信号の強度を等しく描いてあるが、実際には各チャンネルの強度変調器の特性の相違等でこの強度は多少異なる。また、チャンネルC1及びチャンネルC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの強度も、各チャンネルの符号器や波長分散器の特性の相違等から、多少異なる。
図9は、図5に示すように、光波長分割多重信号と変形符号化光パルス信号とが合波器540で合波されて生成された光分割多重信号541の時間波形を示す図である。光波長分割多重信号は、パワー調整器でチャンネルW1乃至チャンネルW4の光パルス信号を構成する光パルスの強度を等しく調整される。また、チャネルC1及びC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの強度も、パワー調整器で等しく調整される。
光分割多重信号541は、光波長分割多重信号と変形符号化光パルス信号とが合波されて生成された信号であるから、丁度図8に示すチャンネルW1乃至チャンネルW4の光パルス信号と、チャンネルC1及びチャンネルC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスとのそれぞれの時間波形を重ね合わせたものとなっている。
図10は、図5に示す波長分波器632から出力される光波長分割信号の時間波形、及びチャンネルC1及びチャンネルC2の復号化OCDM受信信号及び再生光パルス信号の時間波形を示している。チャンネルC1及びチャンネルC2については、逆波長分散器614を通過する前と後とにおける光パルス信号の時間波形、すなわち、復号化OCDM受信信号及び再生光パルス信号の時間波形を示している。再生光パルス信号はOCDMチャンネルの各チャンネルの第1閾値判定部618に供給されて雑音が除去される。
チャンネルC1及びチャンネルC2に対して「(逆波長分散器通過前)」と記載された図が復号化OCDM受信信号を示し、「(逆波長分散器通過後)」と記載された図が再生光パルス信号を示している。例えば、チャンネルC1の復号化OCDM受信信号及び再生光パルス信号は、それぞれ、図5に示す復号化OCDM受信信号613及び再生光パルス信号615である。
図10においては、各チャンネルにおいて再生された光パルス信号に影を付けて示してある。すなわち、この影を付けて示された光パルスが、各チャンネルの受信信号である。この外の光パルス成分(影が付けられていない成分)は、雑音として、OCDMチャンネルにおいては第1閾値判定部において除去され、WDMチャンネルにおいては第2閾値判定部において除去される。
上述したように、光分割多重信号541は、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各WDMチャンネルの光波長分割多重信号とが合波器540で合波されて生成された信号である。従って、この光分割多重信号541を分波器605によって強度分割されて得られるOCDM受信信号及びWDM受信信号のいずれもが、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各WDMチャンネルの光パルス信号とを等しく含んでいる。このことを、図10を参照して説明する。
図10において、チャンネルW1乃至チャンネルW4については、第2閾値判定部に供給される光信号の時間波形を示している。すなわち、チャンネルW1を取り上げて説明すると、光波長分割信号633の時間波形を示している。光波長分割信号633には、上述したように、OCDMチャンネルに由来する光信号が、合波器540、伝送路550、分波器605及び波長分波器632を介して混入している。
チャンネルW1に混入しているOCDMチャンネルに由来する光信号は、波長分散器によって波長分散を受けているので、その時間幅が広がっている。すなわちチャンネルW1に混入しているOCDMチャンネルに由来する光信号は、時間スロットの幅以上に広がった光パルスとして「1」という識別番号を付して図10に示されている。
このように、OCDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さくなり、OCDMチャンネルに由来する光信号成分を含むチャンネルW1の光波長分割信号633は、第2閾値判定部634によって雑音として除去される。そして、第2閾値判定部634からはチャンネルW1のWDM信号635が抽出される。上述したことは、チャンネルW2乃至W4についても同様である。
図10において、チャンネルC1及びチャンネルC2については、逆波長分散器に入力する前の復号化OCDM受信信号と逆波長分散器を通過後、すなわち逆波長分散器から出力された再生光パルス信号の時間波形を示している。
まず、チャンネルC1を例にして説明する。チャンネルC1のOCDM受信信号は、復号器612に入力されて、復号化OCDM受信信号613として復号化されて出力される。復号化OCDM受信信号613は、逆波長分散器614に入力されて、復号化OCDM受信信号613に含まれている変形光パルス信号成分が復元されて再生光パルス信号615として出力される。すなわち、逆波長分散器614において、時間波形復元ステップが実行される。このことを、図10を参照して説明する。
図10において、「チャンネルC1(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図は、復号器612から出力された復号化OCDM受信信号613の時間波形を示す図である。
チャンネルC1に分配されるOCDM受信信号606には、上述したように、WDMチャンネルに由来する光信号が、合波器540、伝送路550及び分波器605を介して混入している。そしてOCDM受信信号606に含まれるWDMチャンネルに由来する光信号成分は、送信部500において波長分散器を通過していない。しかしOCDM受信信号606は、復号器612に入力されて復号化され、復号化OCDM受信信号613として出力される。
言い換えると、OCDM受信信号606は、WDMチャンネルに由来する光パルス成分とOCDMチャンネルに由来する光パルス成分とが併せられて生成された光信号であるので、復号器612においては、WDMチャンネルに由来する光パルス成分とOCDMチャンネルに由来する光パルス成分とのいずれについても同様に復号化される。すなわち、OCDMチャンネルに由来する光パルス成分は復号化されるが、WDMチャンネルに由来する光パルス成分に対しては復号器612で事実上の符号化が行われる。
このため、図10において「チャンネルC1(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図に示すように、WDMチャンネルに由来する光パルス成分は時間軸の方向にチップパルスとして広がっている。具体的には、このチップパルスは1乃至4で示す数値を囲うようにして示されている正方形の矩形がWDMチャンネルに由来する光パルス成分である。また、横方向に同様に広がって描かれている1乃至4で示す数値が外側に付されている矩形は、チャンネルC2に由来する光パルス成分を示す。
チャンネルC2に由来する光パルス成分は、このように時間軸上でそのチップパルスが拡散されて存在している。しかしチャンネルC1に由来する光パルス成分は、影を付して示してあるように、時間軸上で重なって存在している。これは、チャンネルC1に由来する光パルス成分は、チャンネルC1の符号器と同一の符号が設定されている復号器612によって復号されたために時間軸上で重なって存在するように復号化されたためである。一方チャンネルC2に由来する光パルス成分は、チャンネルC2の符号器で符号化されているので、チャンネルC2の符号器に設定されている符号とは異なる符号が設定されている復号器612では復号化されないため、そのチップパルスは時間軸上で分散して存在している。
一方、図10において「チャンネルC2(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図は、チャンネルC2の復号器から出力された復号化OCDM受信信号の時間波形を示す図である。この図では、上述とは逆にチャンネルC2に由来する光パルス成分が復号化されている。理由は上述したチャンネルC1の場合と同様である。
しかしチャンネルC1及びチャンネルC2のいずれの場合にも、復号化された光パルス信号の時間幅は広がったままである。すなわち、送信部500において波長分散器で符号化光パルス信号の時間波形が変形されたままの状態である。従って、復号化OCDM受信信号を逆波長分散器に入力して、時間波形が変形されたままの状態である復号化された光パルス信号の時間幅を、時間波形が変形される前の状態まで狭める必要がある。
そこで、図10において、次に逆波長分散器から出力される再生光パルス信号の時間波形に付いて、チャンネルC1及びチャンネルC2に対し、それぞれ「チャンネルC1(逆波長分散器通過後)」及び「チャンネルC2(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている。
図10において「チャンネルC1(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている図に示すように、影を付して示すチャンネルC1に由来する光パルス成分の時間幅は、時間波形が変形される前の状態まで狭まっている。同様に「チャンネルC2(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている図に示すように、影を付して示すチャンネルC2に由来する光パルス成分の時間幅は、時間波形が変形される前の状態まで狭まっている。すなわち、送信されたチャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号の自己相関波形(図中で影を付してある。)がそれぞれ生成されている。
このように、チャンネルC1において、WDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さい。また、チャンネルC2に由来する光信号もその時間幅は広がっている。従って、チャンネルC1の光信号615のうち、WDMチャンネルに由来する光信号成分及びチャンネルC2に由来する光信号成分は、第1閾値判定部618によって雑音として除去される。そして、第1閾値判定部618からはチャンネルC1のOCDM信号619が抽出される。
チャンネルC2においても同様に、WDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さい。また、チャンネルC1に由来する光信号もその時間幅は広がっている。従って、チャンネルC1の光信号のうち、WDMチャンネルに由来する光信号成分及びチャンネルC1に由来する光信号成分は、チャンネルC2の第1閾値判定部によって雑音として除去される。そして、チャンネルC2の第1閾値判定部からはチャンネルC2のOCDM信号が抽出される。
ここで、第1及び第2閾値判定部の構成例について説明する。後述する第2実施例においても、ここで説明する構成の第1及び第2閾値判定部を利用できる。
第1及び第2閾値判定部を、非線形光ファイバループを用いて構成することができる。第1番目の例として、この例を説明する。
非線形光ファイバループの構成及びその動作原理については、文献(Govind P.Agrawal著:「Nonlinear Fiber Optics」、第2版アカデミックプレス、1989年出版)に説明されている。また、非線形光ファイバループを用いて閾値処理をした例が文献(Ju Han Lee et al., "Reduction of Interchannel Interference Noise in a Two-Channel Grating-Based OCDMA System Using a Nonlinear Optical Loop Mirror", IEEE, Photonics Technology Letters, Vol. 13, No. 5, May 2001, pp. 529-531)に開示されている。いずれにしても、非線形光ファイバループを構成する光ファイバで発生する非線形光学効果によって、非線形光ファイバループを右回りに伝播する光と左回りに伝播する光との位相差が、この非線形光ファイバループに入力される信号の強度に依存することが利用されている。
非線形光ファイバループに入力される光は、方向性光結合器によって非線形光ファイバループを右回りに伝播する光と左回りに伝播する光とに分岐される。この分岐比を1対1からずらせて設定することによって、非線形光ファイバループを右回りに伝播する光と左回りに伝播する光との位相差を、入力光の強度に非線形に依存させることができる。これによって、非線形光ファイバループに入力される光が強い場合には、非線形光ファイバループから透過光として出力させ、反対に弱い時には反射光として出力させることができる。
雑音として除去される光成分は、その強度が弱いので、非線形光ファイバループから反射光として出力される。また、光信号成分は、その強度が強いので、非線形光ファイバループから透過光として出力される。このことを利用して透過光として得られる光信号成分のみを、非線形光ファイバループの透過光出力ポートから取り出すことができる。すなわち、非線形光ファイバループに入力される光に対して閾値処理を実行できる。
また、第1及び第2閾値判定部を、可飽和吸収体を用いて構成することができる。第2番目の例として、この例を説明する。
可飽和吸収体を用いて構成される閾値判定素子の構成及びその動作原理については、文献(特開2003-248251号公報)に詳細に説明されている。この文献によれば、可飽和吸収体としてカーボンナノチューブが利用される。カーボンナノチューブは、光強度の2乗に比例してその吸収率が減少するという非線形光学特性を有していることが知られている。この性質を利用すれば、上述の非線形光ファイバループを利用した閾値判定素子と同様の動作を実現できる。
すなわち、可飽和吸収体に入力される光強度が強い場合には、可飽和吸収体は透明体となり、透過光を出力する。一方、可飽和吸収体に入力される光強度が弱い場合には、可飽和吸収体は不透明となり入力光が遮断される。
雑音として除去される光成分は、その強度が弱いので、可飽和吸収体で反射される。また、光信号成分は、その強度が強いので、可飽和吸収体を透過し、透過光として出力される。このことを利用して透過光として得られる光信号成分のみを、可飽和吸収体を利用して形成された閾値判定素子の透過光出力ポートから取り出すことができる。すなわち、可飽和吸収体に入力される光に対して閾値処理を実行できる。
<第2実施例>
図11を参照して、第2実施例の光分割多重送受信方法及びこの方法を実現するための装置について説明する。この光分割多重送受信装置は、光符号分割多重信号生成部710及び光時分割多重信号生成部730を並列に具える送信部700と、光符号分割多重信号抽出部810及び光時分割多重信号抽出部830を並列に具える受信部800とを具える。
以後の説明において、光時分割多重信号生成部をOTDM信号生成部、光時分割多重信号抽出部をOTDM信号抽出部と略記することもある。
OCDM信号生成部710の構成は、図5に示すOCDM信号生成部510と同一である。すなわち、強度変調器712と強度変調器512、符号器714と符号器514、波長分散器716と波長分散器516、及びパワー調整器720とパワー調整器520とそれぞれ対応する。従ってこのOCDM信号生成部710において、時間波形変形ステップが実行され変形符号化光パルス信号が生成されるまでのステップについての説明は省略する。
光時分割多重信号生成ステップは、OTDM信号生成部730によって実現される。OTDM信号生成部730では、チャンネルごとに相異なる時間スロットが割り当てられて光時分割多重信号が生成される。
光符号分割多重信号生成ステップを実行するOCDM信号生成部710と、光時分割多重信号生成ステップを実行するOTDM信号生成部730とは、図11に示すように並列されて具えられている。
図11においても、図5と同様にOCDM信号生成部710及びOTDM信号生成部730に対してそれぞれ1チャンネル分だけを示し、他のチャンネルを省略してある。OCDMチャンネルの数だけ並列して配置されるOCDM信号生成部710は符号器に設定される符号が異なるのみで、他の構成要素は同一である。ただし、波長分散器716の波長分散特性は、各チャンネル同一としても、チャンネルごとに異なってもかまわない。また、OTDMチャンネルの数だけ並列して配置されるOTDM信号生成部730は、各OTDMチャンネルの信号が光時分割多重信号合成部738に入力されるまでの構成は各チャンネル同一である。
以下の説明においては、便宜上OCDMチャンネル及びOTDMチャンネルをそれぞれ2チャンネルとして説明する場合もある。しかし、チャンネル数にかかわらず、以下の説明は成立することは明らかである。
送信部700は、また、変形符号化光パルス信号と光時分割多重信号とを合波して光分割多重信号を生成する合波器740を含んでいる。一方、受信部800では、受信された光分割多重信号を、光符号分割多重受信信号と光時分割多重受信信号とに分割する分波器805を含んでいる。
光符号分割多重信号抽出ステップは、図5を参照して説明した第1実施例の光分割多重送受信装置におけるOCDM信号抽出部610において実行されるステップと同じである。従って、その詳細な説明は省略する。
OCDM信号抽出部810の復号器812では、光符号分割多重受信信号から復号化光符号分割多重受信信号が生成される。復号化光符号分割多重受信信号に含まれる変形光パルス信号成分からは、逆波長分散器814によって再生光パルス信号が生成される。再生光パルス信号からは、第1閾値判定部818によって送信信号である光パルス信号の自己相関波形成分のみが抽出される。また、時間波形変形ステップは波長分散器716によって行われ、時間波形復元ステップは逆波長分散器814によって行われる。
光時分割多重信号抽出ステップは、OTDM信号抽出部830において実行される。OTDM信号抽出部830では、このOTDM信号抽出部が具える第2閾値判定部834で、光波長分割多重受信信号からチャンネルごとの光時分割多重信号が抽出される。
送信部700におけるOCDMチャンネルのOCDM信号生成部710の構成は、第1発明の光分割多重送受信装置のOCDM信号生成部510の構成と同一であるので、その構成及び動作の説明を省略する。
また、この実施例の光分割多重送受信方法及びこの方法を実現する装置の特徴である、波長分散器716及び逆波長分散器814の構成及びその機能も、波長分散器516及び逆波長分散器614と同様であるので、その説明を省略する。第2実施例の光分割多重送受信方法及びこの方法を実現する装置の特徴は、送信ステップにおいて、符号器714によって実行される符号化ステップ、及び波長分散器716によって実行される時間波形変形ステップを含んでいる点にある。
次に、送信部700におけるOTDMチャンネルのOTDM信号生成部730の構成を、図11を参照して説明する。OTDM信号生成部730は、複数のOTDMチャンネルが並列されて設置されている。ここでは、第1 OTDMチャンネルを代表して説明する。その他のOTDMチャンネルも同様の構造であるのでその説明を省略する。
OTM信号生成部730は、強度変調器732、パワー調整器734及び光時分割多重信号合成部738を具えて構成される。まず、OTDM信号生成部730の構成要素である強度変調器732に光パルス列729が入力される。光パルス列729は、ここでもOCDMチャンネルの場合と同様に、波長λ1、λ2、λ3及びλ4の光を含んでいるものとする。
強度変調器732は、第1 OTDMチャンネルの送信情報である2値デジタル電気信号をRZフォーマットされた光パルス信号に変換する機能を有している。強度変調器732に入力された光パルス列729は、第1 OTDMチャンネルの送信情報が反映された光パルス信号731として出力される。光パルス信号731は、波長λ1、λ2、λ3及びλ4の光を含んでいる。すなわち、光パルス信号731を構成する光パルスは、分光した場合に、中心波長がそれぞれλ1、λ2及びλ3等である光パルスに分光される。
光パルス信号731は、パワー調整器734に入力され、そのパワーを調整されて光パルス信号735として出力され、光時分割多重信号合成部738に入力される。このパワー調整器734もOCDM信号生成部710に具えられているパワー調整器720と同様の目的で設置されるものである。
このパワー調整器734は、各OTDMチャンネルの光パルス信号の強度を揃えるために、設置される。光パルス信号の強度がOTDMチャンネルごとに互いに大きく異なると、受信部800の第2閾値判定部において、各OTDMチャンネルの光時分割多重信号みを抽出することができなくなる可能性がある。
光時分割多重信号合成部738においては、各OTDMチャンネルの光パルス信号がチャンネルごとに割り当てられた時間スロットに収まるように時間遅延を付加されて合成される。このようにして合成された光時分割多重信号が、光時分割多重信号合成部738で生成されて出力される。
以上説明したように、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と、各OTDMチャンネルの光パルス信号を合成して生成された光時分割多重信号739とが、合波器740で合波されて光分割多重信号741とされて光ファイバで構成される伝送路750を伝播して、受信部800に送られる。ここでは、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号は、第1 OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号721を含め2チャンネル分を意味し、第1及び第2 OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号を合波して生成される変形符号化光パルス信号である。
次に、受信部800の構成及びその機能を説明する。受信部800は、分波器805、OCDM信号抽出部810及びOTDM信号抽出部830を具え、OCDM信号抽出部810とOTDM信号抽出部830とが並列されて構成される。
OCDM信号抽出部810の構成は、図5に示すOCDM信号生成部610と同一である。すなわち、復号器812と復号器612、逆波長分散器814と逆波長分散器614、第1閾値判定部818と第1閾値判定部618、及び受信器820と受信器620とがそれぞれ対応する。従ってこのOCDM信号抽出部810において、光符号分割多重信号抽出ステップが実行されて、各OCDMチャンネルの光パルス信号が再生されるまでのステップについての説明は省略する。
分波器805に光分割多重信号741が入力され、OCDM受信信号806と、OTDM受信信号831とに分割される。光分割多重信号741は、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と、各OTDMチャンネルの光パルス信号を合成して生成された光時分割多重信号とが合波器740で合波されて生成された信号であるから、この光分割多重信号741を分波器805によって強度分割されて得られるOCDM受信信号及びOTDM受信信号のいずれも、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各OTDMチャンネルの光時分割多重信号とを等しく含む信号である。
OCDM信号抽出部810に供給されるOCDM受信信号のうち第1 OCDMチャンネルに分配されるOCDM受信信号806は、復号器812に入力されて、復号化OCDM受信信号813として復号化されて出力される。復号化OCDM受信信号813は、逆波長分散器814に入力されて、復号化OCDM受信信号813に含まれている変形符号化光パルス信号成分が復元されて再生光パルス信号815として出力される。すなわち、逆波長分散器814において、時間波形復元ステップが実行される。
ここで、復号化OCDM受信信号813には、変形符号化光パルス信号成分以外の成分も含まれているが、この変形符号化光パルス信号成分以外の成分は、第1 OCDMチャンネルにおいてこれ以降のステップにおいて雑音として処理される。したがって、逆波長分散器814から出力される有効な信号は、再生光パルス信号815であることになる。復号化OCDM受信信号813、変形符号化光パルス信号成分等についての詳細な説明は、後述する。
再生光パルス信号815は、第1閾値判定部818に入力されて、第1閾値判定ステップが実行されることによって、第1 OCDMチャンネルの送信情報が反映された光パルス信号713の自己相関波形成分819のみが出力される。自己相関波形成分819は、受信器820に入力されて、光パルス信号である自己相関波形成分819が電気パルス信号に変換(O/E変換)されて、第1 OCDMチャンネルの受信情報として受信部800において取得される。すなわち、送信部700から送信された第1 OCDMチャンネルの送信情報が、受信部800において第1OCDMチャンネルの受信情報として受信される。
一方、OTDM信号抽出部830に供給されるOTDM受信信号831について説明する。ここでも、上記OTDM信号生成部730の説明と同様に、第1 OTDMチャンネルを代表して説明する。OTDM信号抽出部830に供給されるOTDM受信信号831は、光時分割多重信号分割部832に入力されて、各OTDMチャンネルに対応する光時分割信号に分離されて、各チャンネルの第2閾値判定部に供給される。このうち第1 OTDMチャンネルの第2閾値判定部834に供給される光時分割信号833は、第2閾値判定ステップが実行されて、第1 OTDMチャンネルのOTDM信号835が抽出され、受信器836に入力される。すなわち、送信部700から送信された第1OTDMチャンネルの送信情報が、受信部800において第1OTDMチャンネルの受信情報として受信される。
ここでも、OCDMチャンネルの場合と同様に、第2閾値判定部834に供給される光時分割信号833には、OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分も含まれているが、このOCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分は、第1 OTDMチャンネルにおいてこれ以降のステップにおいて雑音として処理される。このOCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分等についての詳細な説明も後述する。
図12乃至図18を参照して、第2実施例の光分割多重送受信装置における、光信号の伝送形態について説明する。ここでは、図11を参照して説明した光分割多重送受信装置をモデルにして光信号の伝送形態を説明する。図12乃至図18は、OTDMチャンネル2チャンネル分の光パルス信号及びOCDMチャンネル2チャンネル分の光パルス信号の時間波形を示した図であり、横軸は時間軸を示している。OTDMチャンネルの第1及び第2チャンネル(第1 OTDMチャンネル及び第2 OTDMチャンネル)をそれぞれチャンネルT1及びチャンネルT2として示してあり、OCDMチャンネルの第1及び第2チャンネル(第1 OCDMチャンネル及び第2 OCDMチャンネル)をそれぞれチャンネルC1及びチャンネルC2として示してある。
また、図13乃至図18において縦方向に平行な破線の間隔は時間スロットを示している。すなわちこの破線で挟まれた時間領域に光パルスあるいはチップパルスが1つ分配される。ここでは、OTDMチャンネルを2チャンネル、OCDMチャンネルを2チャンネルとして説明するが、チャンネル数はこれに限らず、幾つであっても以下の説明は同様に成立する。
図12乃至図18において、OCDMチャンネルの光パルス信号及びOTDMチャンネルの光パルス信号を構成する光パルスは、λ1、λ2、λ3及びλ4の波長を含んで構成されている。このことを示すために、便宜上、波長λ1、λ2、λ3及びλ4を識別する数字1、2、3及び4を囲む矩形を同一時間上に重ねて示してある。ここでは、異なる4種類の波長を含む光パルスから構成される光パルス信号を想定して説明する。しかし、一般的に光パルスに含まれる波長の種類は4種類に限らず、以下の説明は幾つであっても同様に成立する。光パルスに含まれる波長の種類は、符号器に設定される符号長によって適切な数を選択する。一般に、符号長がn(nは自然数)である符号を設定してある符号器及び復号器を利用する場合には、光パルスに含まれる波長の種類をn種類とするのが好都合である。
また、異なる波長成分を含む光パルスを、その波長成分を示す識別数字を囲む矩形を同一時間上に重ねて示すものとする。そして、図12乃至図18においては、図7乃至図10と同様に、OTDMチャンネルとOCDMチャンネルとの各チャンネルの光パルス信号として、1つの光パルスが、同一の時間スロットを占めているものとして描いてある。以後の図12乃至図18を参照しての説明においては、第1実施例の光分割多重送受信装置の説明と同様に、この1つの光パルスを光パルス信号ということもある。
図12は、図11に示す送信部700における、OCDMチャンネルの強度変調器(チャンネルC1については強度変調器712)及びOTDMチャンネルの強度変調器(チャンネルT1については、強度変調器732)から出力される光パルス信号を示している。例えば、チャンネルC1の光パルス信号は光パルス信号713、チャンネルT1の光パルス信号は光パルス信号731である。
図13は、チャンネルT1及びチャンネルT2の光パルス信号とチャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号との時間軸上での位置関係を示している。チャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号については、波長分散器を通過する前と後とにおける光パルス信号の形状、すなわち、符号化光パルス信号及び変形符号化光パルス信号を示している。チャンネルC1及びチャンネルC2に対して「(波長分散器通過前)」と記載された図が符号化光パルス信号を示し、「(波長分散器通過後)」と記載された図が変形符号化光パルス信号を示している。例えば、チャンネルC1の符号化光パルス信号及び変形符号化光パルス信号は、それぞれ、図11に示す符号化光パルス信号715及び変形符号化光パルス信号717である。
図13に示すように、符号化光パルス信号は、符号器によってチップパルスに分割されている。チャンネルC1とチャンネルC2のチップパルスの配列関係が異なるのは、これらのチップパルスの時間軸上での配列関係は、それぞれのチャンネルの符号器に設定されている符号によって決まるからである。すなわち、このチップパルスの配列関係の相違がチャンネルC1とチャンネルC2とを区別するための識別子となっている。
また、変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの時間軸上での幅が広がって、時間スロットの幅を超えている。これが、波長分散器によるチップパルスの時間波形を変形する効果である。すなわち、時間波形変形ステップが実行された効果である。
図13において、チャンネルT1及びチャンネルT2の光パルス信号の強度を等しく描いてあるが、実際には各チャンネルの強度変調器の特性の相違等でこの強度は多少異なる。また、チャンネルC1及びチャンネルC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの強度も、各チャンネルの符号器や波長分散器の特性の相違等から、多少異なる。
図14は、図11に示すように、光時分割多重信号と変形符号化光パルス信号とが合波器740で合波されて生成された光分割多重信号741の時間波形を示す図である。光分割多重信号は、パワー調整器でチャンネルT1及びチャンネルT2の光パルス信号を構成する光パルスの強度が等しく調整された上で合成される。また、チャネルC1及びC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスの強度も、パワー調整器で等しく調整された上で合成される。
光分割多重信号741は、光時分割多重信号と変形符号化光パルス信号とが合波されて生成された信号であるから、丁度図13に示すチャンネルT1及びチャンネルT2の光パルス信号と、チャンネルC1及びチャンネルC2の変形符号化光パルス信号を構成するチップパルスとのそれぞれの時間波形を重ね合わせたものとなっている。
図15は、図11に示す分波器805によって光分割多重信号741が分岐されて生成されたOTDM受信信号806が光時分割多重信号分割部832に入力されOTDMチャンネルごとに強度分割されて得られた光パルス信号の時間波形を示している。図15では、太い縦の破線によってOTDMチャンネルの1ビット分に分配される時間スロットを示している。すなわち、太い縦の破線によって挟まれる時間間隔がOTDMチャンネルの1ビット分に分配される時間スロットを示している。また、細い縦の破線は、チップパルス1つ分が分配される時間スロットである。すなわち、細い縦の破線によって挟まれる時間間隔が、チップパルス1つ分が分配される時間スロットを示している。
以後、1ビット分に分配される時間スロットをビットスロット、チップパルス1つ分が分配される時間スロットをチップスロットと区別して表現することもある。
また、ここでは、まず紛らわしさを避けるために、1ビットスロットの範囲内だけに限定して光パルスあるいはチップパルスの存在を表記してある。実際には、隣接するビットスロットにも光パルスあるいはチップパルスが存在するので、それらを考慮して時間波形を描くべきである。後述するように、隣接したビットスロットに存在する光パルスあるいはチップパルスを考慮した場合の時間波形を図16に示すことにする。そこで、図15を(その1)としてあり、図16を(その2)としてある。
図15において、チャンネルT1に分配される時間波形を示す図(図15の上図)ではチャンネルT1のOTDM信号を示す光パルスに対して影を付けて示してあ、また、チャンネルT2に分配される時間波形を示す図(図15の下図)ではチャンネルT2のOTDM信号を示す光パルスに対して影を付けて示してある。
また、時間軸上でその半値幅が広がっている、チャンネルT1及びチャンネルT2のOTDM信号を示す光パルス以外のチップパルスは、OCDMチャンネルに由来するチップパルス成分である。図15に示すように、OCDMチャンネルに由来するチップパルス成分の時間幅が広がっている理由は、光符号分割多重信号生成部710に設定される波長分散器によって波長分散されたためである。
図16は、上述したように、OTDMチャンネルごとに強度分割されて得られた光パルス信号の時間波形を、隣接したビットスロットに存在する光パルスあるいはチップパルスを考慮して示した図である。上段に示す図がチャンネルT1に分配される時間波形を示し、下段に示す図がチャンネルT2に分配される時間波形を示している。
図15との相違点は、例えば、ビットスロットを画する時間軸の境目において、隣接のビットスロットの成分が入り込んでいる点である。例えば、チャンネルT1の影を付して示してあるチャンネルT1のOTDM信号を示す光パルスの一番下の部分に波長λ3のチップパルス成分が入り込んでいる。これは、図15において、ビットスロットを画する時間軸の境目を占めす右側の太い破線を跨いで存在する波長λ3のチップパルスの一部が、図16に示すチャンネルT1のOTDM信号を示す光パルスの一番下の部分に入り込んでいる波長λ3のチップパルス成分に対応する。図16に示す時間波形が、実際に光サンプリングオシロスコープ等で観測されるアイパターンである。
図16に示すように、1ビットスロットに、チャンネルT1の光パルスとチャンネルT2の光パルスとが共存している。そこで、チャンネルT1においては、チャンネルT2の光パルスをカットし、チャンネルT2においては、チャンネルT1の光パルスをカットしなければならない。これを行うのが時間ゲートステップである。この時間ゲートステップは、従来知られているように、OTDM受信信号831等から抽出されるクロック信号を用いることによって行われる。この時間ゲートステップは、従来知られている手法を用いれば実行できるので、その説明を省略する。
上述した時間ゲートステップを実行して、チャンネルT1に対しては上段の図で影を付してある光パルスが選択され、チャンネルT2に対しては下段の図で影を付してある光パルスが選択される。
しかし、時間軸に対して広がって存在しているチップパルス成分が、両方のチャンネルとも除去することができない。そこで、例えばチャンネルT1においては、第2閾値判定部834で、第2閾値判定ステップを実行する。そうすると、時間幅の広がっているチップパルス成分は、影を付して示してある光パルス信号よりその強度が小さいので、第2閾値判定部834で除去されて、チャンネルT1のOTDM信号835が抽出される。すなわち、送信部700から送信されたチャンネルT1の送信情報が、受信部800においてチャンネルT1の受信情報として受信される。すなわち、時間幅の広がっているチップパルス成分であるOCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号成分は、チャンネルT1において雑音として処理される。
チャンネルT1のOTDM信号835は、受信器836に入力されて、電気パルス信号に変換(O/E変換)されて、チャンネルT1の受信情報として受信部800において取得される。すなわち、送信部700から送信されたチャンネルT1の送信情報が、受信部800においてチャンネルT1の受信情報として受信される。
チャンネルT2においても同様に第2閾値判定ステップを実行することによって第2閾値判定部で除去されて、チャンネルT2のOTDM信号が抽出され受信部800においてチャンネルT2の受信情報として受信される。チャンネルT2のOTDM信号も同様にO/E変換されて、チャンネルT2の受信情報として受信部800において、送信部700から送信されたチャンネルT2の送信情報が受信される。
図17は、光符号分割多重信号抽出部810における復号器から出力される復号化光符号分割多重信号の時間波形を示している。図17では、最上段にチャンネルC1の逆波長分散器814に入力される復号化OCDM受信信号813の時間波形、第2段目にチャンネルC1同様に、チャンネルC2の逆波長分散器に入力される復号化OCDM受信信号の時間波形をそれぞれ示す。また、図17の上から第3段目にチャンネルC1の逆波長分散器814から出力される再生光パルス信号815の時間波形、第4段目にチャンネルC1同様に、チャンネルC2の逆波長分散器から出力される再生光パルス信号の時間波形をそれぞれ示す。再生光パルス信号はOCDMチャンネルの各チャンネルの第1閾値判定部に供給されて雑音が除去される。
図17においては、各チャンネルにおいて再生された光パルス信号に影を付けて示してある。図17の第3段目及び第4段目に影を付けて示された光パルスが、各チャンネルの再生光パルス信号に含まれる自己相互相関波形成分である。この外の光パルス成分(影が付けられていない成分)は、雑音として、第1閾値判定部において除去される。
図17においても、図15と同様に、太い縦の破線によってOCDMチャンネルの1ビット分に分配される時間スロットを示している。また、細い縦の破線は、チップパルス1つ分が分配される時間スロットを示している。
上述したように、光分割多重信号741は、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各OTDMチャンネルの光パルス信号とが合波器740で合波されて生成された信号である。従って、この光分割多重信号741を分波器805によって強度分割されて得られるOCDM受信信号及びOTDM受信信号のいずれもが、各OCDMチャンネルの変形符号化光パルス信号と各OTDMチャンネルの光パルス信号とを等しく含んでいる。このことを、図15及び図17を参照して説明する。
図15において、チャンネルT1及びチャンネルT2については、第2閾値判定部に供給される光信号の時間波形を示している。すなわち、チャンネルT1を取り上げて説明すると、光時分割信号833の時間波形を示している。光時分割信号833には、上述したように、OCDMチャンネルに由来する光信号が、合波器740、伝送路750、分波器805及び光時分割多重信号分割部832を介して混入している。
チャンネルT1に混入しているOCDMチャンネルに由来する光信号は、波長分散器によって波長分散を受けているので、その時間幅が広がっている。すなわちチャンネルT1に混入しているOCDMチャンネルに由来する光信号は、時間スロットの幅以上に広がった光パルスとして図15に示されている。
このように、OCDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さくなり、OCDMチャンネルに由来する光信号成分を含むチャンネルT1の光時分割信号833は、第2閾値判定部834によって雑音として除去される。そして、第2閾値判定部834からはチャンネルT1のOTDM信号835が抽出される。上述したことは、チャンネルT2についても同様である。
図17において、チャンネルC1及びチャンネルC2については、逆波長分散器に入力する前の復号化OCDM受信信号と、逆波長分散器から出力された逆波長分散器を通過後の光パルス信号である再生光パルス信号の時間波形を示している。
まず、チャンネルC1を例にして説明する。チャンネルC1のOCDM受信信号は、復号器812に入力されて、復号化OCDM受信信号813として復号化されて出力される。復号化OCDM受信信号813は、逆波長分散器814に入力されて、復号化OCDM受信信号813に含まれている変形符号化光パルス信号成分が復元されて再生光パルス信号815として出力される。すなわち、逆波長分散器814において、時間波形復元ステップが実行される。このことを、図17を参照して説明する。
図17において、「チャンネルC1(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図は、復号器812から出力された復号化OCDM受信信号813の時間波形を示す図である。
チャンネルC1に分配されるOCDM受信信号806には、上述したように、OTDMチャンネルに由来する光信号が、合波器740、伝送路750及び分波器805を介して混入している。そしてOCDM受信信号806に含まれるOTDMチャンネルに由来する光信号成分は、送信部700において波長分散器を通過していない。しかしOCDM受信信号806は、復号器812に入力されて復号化され、復号化OCDM受信信号813として出力される。
言い換えると、OCDM受信信号806は、OTDMチャンネルに由来する光パルス成分とOCDMチャンネルに由来する光パルス成分とが併せられて生成された光信号であるので、復号器812においては、OTDMチャンネルに由来する光パルス成分とOCDMチャンネルに由来する光パルス成分とのいずれについても同様に復号化される。すなわち、OCDMチャンネルに由来する光パルス成分は復号化されるが、OTDMチャンネルに由来する光パルス成分に対しては復号器812で事実上の符号化が行われる。
このため、図17において「チャンネルC1(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図に示すように、OTDMチャンネルに由来する光パルス成分は時間軸上にチップパルスとして拡散されて存在している。このチップパルスは、具体的には1乃至4で示す数値を囲うようにして示されている正方形がOTDMチャンネルに由来する光パルス成分である。また、横方向に同様に広がって描かれている1乃至4で示す数値が外側に付されている矩形は、チャンネルC2に由来する光パルス成分を示す。
チャンネルC2に由来する光パルス成分は、このように時間軸上でそのチップパルスが拡散されて存在している。しかしチャンネルC1に由来する光パルス成分は、影を付して示してあるように、時間軸上で重なって存在している。これは、チャンネルC1に由来する光パルス成分は、チャンネルC1の符号器と同一の符号が設定されている復号器812によって復号されたために時間軸上で重なって存在するように復号化されたためである。一方チャンネルC2に由来する光パルス成分は、チャンネルC2の符号器で符号化されているので、チャンネルC2の符号器に設定されている符号とは異なる符号が設定されている復号器812では復号化されないため、そのチップパルスは時間軸上で分散して存在している。
一方、図17において「チャンネルC2(逆波長分散器通過前)」と記載されて示されている図は、チャンネルC2の復号器から出力された復号化OCDM受信信号の時間波形を示す図である。この図では、上述とは逆にチャンネルC2に由来する光パルス成分が復号化されている。理由は上述したチャンネルC1の場合と同様である。
しかしチャンネルC1及びチャンネルC2のいずれの場合にも、復号化された光パルス信号の時間幅は広がったままである。すなわち、送信部700において波長分散器で符号化光パルス信号の時間波形が変形されたままの状態である。従って、復号化OCDM受信信号を逆波長分散器に入力して、時間波形が変形されたままの状態である復号化された光パルス信号の時間幅を、時間波形が変形される前の状態まで狭める必要がある。
そこで、次に逆波長分散器から出力される再生光パルス信号の時間波形について見てみることにする。再生光パルス信号の時間波形は、図17において、チャンネルC1及びチャンネルC2に対して、それぞれ「チャンネルC1(逆波長分散器通過後)」及び「チャンネルC2(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている。
図17において「チャンネルC1(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている図に示すように、影を付して示すチャンネルC1に由来する光パルス成分の時間幅は、時間波形が変形される前の状態まで狭まっている。同様に「チャンネルC2(逆波長分散器通過後)」と記載されて示されている図に示すように、影を付して示すチャンネルC2に由来する光パルス成分の時間幅は、時間波形が変形される前の状態まで狭まっている。すなわち、送信されたチャンネルC1及びチャンネルC2の光パルス信号の自己相関波形(図中で影を付してある。)がそれぞれ生成されている。
このように、チャンネルC1において、OTDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さい。また、チャンネルC2に由来する光信号もその時間幅は広がっている。従って、チャンネルC1の光信号815のうちOTDMチャンネルに関係する光信号成分及びチャンネルC2に関係する光信号成分は、第1閾値判定部818によって雑音として除去される。そして、第1閾値判定部818からはチャンネルC1のOCDM信号819が抽出される。
チャンネルC2においても同様に、OTDMチャンネルに由来する光信号は、その時間幅が広がっていることによって、そのピーク値が小さい。また、チャンネルC1に由来する光信号もその時間幅は広がっている。従って、チャンネルC2の光信号のうちOTDMチャンネルに関係する光信号成分及びチャンネルC1に関係する光信号成分は、チャンネルC2の第1閾値判定部によって雑音として除去される。そして、チャンネルC2の第1閾値判定部からはチャンネルC2のOCDM信号が抽出される。
図17においても、図15と同様に、太い縦の破線によってOTDMチャンネルの1ビット分に分配される時間スロットを示している。すなわち、太い縦の破線によって挟まれる時間間隔がOTDMチャンネルの1ビット分に分配される時間スロットを示している。また、細い縦の破線は、チップパルス1つ分が分配される時間スロットである。すなわち、細い縦の破線によって挟まれる時間間隔が、チップパルス1つ分が分配される時間スロットを示している。また、ここでも同様に、1ビットスロットの範囲内だけに限定して光パルスあるいはチップパルスの存在を表記してある。隣接したビットスロットに存在する光パルスあるいはチップパルスを考慮した場合の時間波形を図18に示す。そこで、図17を(その1)としてあり、図18を(その2)としてある。
図17において、チャンネルC1に分配される時間波形を示す図(図17の最上段の図及び第3段目の図)ではチャンネルC1のOCDM信号を示す光パルスに対して影を付けて示してあ、また、チャンネルC2に分配される時間波形を示す図(図17の第2段目の図及び第4段目の図)ではチャンネルC2のOCDM信号を示す光パルスに対して影を付けて示してある。
図18は、上述したように、OCDMチャンネルごとに強度分割されて得られた光パルス信号の時間波形を、隣接したビットスロットに存在する光パルスあるいはチップパルスを考慮して示している。図17との相違点は、例えば、ビットスロットを画する時間軸の境目において、隣接のビットスロットの成分が入り込んでいる点である。
例えば、図17において、チャンネルC1の影を付して示してあるチャンネルC1のOCDM信号(時間幅が広がっている。)を示す光パルスの一部が、ビットスロットを画する時間軸の境目を跨いで描かれている。図18においては、この次の時間スロットにはみ出して描かれている部分が波長λ3のチップパルスの上に積み重ねられて描かれている。すなわち、図17において、ビットスロットを画する時間軸の境目を示す右側の太い破線を跨いで存在するチャンネルC1のOCDM信号の一部が、図18に示す波長λ3のチップパルス成分の上に積み重ねて描かれている。波長λ3のチップパルスの上に積み重ねられて描かれている、このチャンネルC1のOCDM信号を示す光パルスの一部が、隣接のビットスロットの成分が入り込んでいる成分である。
図18に示す時間波形が、実際に光サンプリングオシロスコープ等で観測されるアイパターンである。
チャンネルC1のOCDM信号819は、受信器820に入力されて、O/E変換されて、チャンネルC1の受信情報として受信部800において取得される。すなわち、送信部700から送信されたチャンネルC1の送信情報が、受信部800においてチャンネルC1の受信情報として受信される。
チャンネルC2のOCDM信号が抽出され受信部800においてチャンネルC2の受信情報として受信される。チャンネルC2のOCDM信号も同様にO/E変換されて、チャンネルC2の受信情報として受信部800において、送信部700から送信されたチャンネルC2の送信情報が受信される。