JP4551092B2 - 口腔内速崩壊性錠剤 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、口腔内で速やかに崩壊する錠剤に関する。
背景技術
経口投与される医薬の剤形としては、主として顆粒剤、散剤もしくは細粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤、シロップ剤等の液剤等があげられる。ここで、顆粒剤、散剤もしくは細粒剤は、服用する者にザラツキや歯の間に入り込んでしまう不快感を感じさせることも少なくない。錠剤やカプセル剤は、顆粒剤、散剤もしくは細粒剤に比べ、利用者にとって非常に扱い易く、経口医薬品として汎用されているが、食道につかえる等の理由から嚥下力の弱い高齢者や小児にとって、服用しにくい剤形である。かかる固形製剤は、経口投与により消化管内で崩壊、溶解して薬理活性成分を吸収させることを目的としているので、一般的に口腔内での速い崩壊性や溶解性を示さない。一方、シロップ剤は、高齢者や小児にとって服用しやすい剤形であるが、正確な計量が期待しにくいという問題点を有する。
かかる医薬製剤の現状に対して、人口の高齢化や生活環境の変化に伴い、錠剤の特徴である取扱いの便利さを保ちつつも、高齢者や小児等の嚥下力が弱い患者でも容易に服用することができ、また水なしで手軽にいつどこでも随時服用することのできる口腔内崩壊型固形製剤の開発が要望されている。口腔内で速やかに崩壊する錠剤であれば嚥下力の弱い患者でも服用が容易であり、シロップ剤等の液剤とは異なり正確な薬物量を投与することが可能である。さらに、かかる患者以外の一般患者においても、水の用意ができない外出先等でも水なしで服用できることから、口腔内崩壊型固形製剤は患者全般に対して服薬コンプライアンスが向上できる剤形である。
ここで、単に崩壊の速い製剤であれば、薬物処方成分を低圧力で圧縮成形することにより容易に得られるが、このような製剤は製剤強度が低く、製剤の包装工程や流通過程、さらには利用者の服用時における包装からの製剤の取り出し時等において、その形状を保持できず崩壊してしまうことが十分にありえる。従って、口腔内速崩壊性製剤は、優れた口腔内速崩壊性と共に、取扱い上問題のない程度の製剤強度を兼ね備えている必要がある。
しかし、一般に錠剤の溶解性と錠剤の硬度とは互いに二律背反の関係にある。すなわち、錠剤の溶解性を向上させ溶解速度の迅速化を図ることは、錠剤硬度を劣化させることにつながる。しかし、錠剤硬度は、上述のように製造過程での運搬や包装工程、流通過程、利用者の服用時における包装からの錠剤の取り出し時等において重要な要素である。この錠剤硬度が不十分であれば、上記各過程において錠剤が形状を保持できず型崩れを起こしてしまうこととなる。
口腔内で速やかに崩壊し溶解する製剤をつくる技術としては、従来医薬成分を水性溶媒に溶解または懸濁させた後、ブリスターパックの予め成形したポケットに充填し、この溶液を凍結乾燥するかあるいは真空乾燥し水分を除去して製造する方法が提案されている。これらの固形製剤は迅速な溶解性を有するものの十分な機械的強度が得られない、または完成状態での吸湿性が高く通常の取扱いが困難である等の問題を残している。さらに、これら固形製剤の製造方法は、種々の組成物を加熱溶融して充填成形した後で冷却固化する方法、または湿潤状態にて充填成形または加圧成形した後乾燥する方法をとるため、製造に長時間を要する等の問題がある。
また、錠剤の製造方法として最もよく用いられている湿式成形による口腔内崩壊型製剤の製造についての研究も進められている。特開平9−48726号には、薬物を含む粉粒体を加湿により湿潤させ、圧縮成形後乾燥した際に成形物の形状を維持する物質を含有する口腔内速崩壊性製剤が開示され、このような物質として、糖類、糖アルコール、水溶性高分子物質が例示されている。特開平5−271054号には、薬物、糖類、糖類の粒子表面が湿る程度の水分を含む混合物を打錠し、乾燥させる方法が、特開平8−291051号には、薬物、水溶性結合剤、水溶性賦形剤を含む混合物を低圧力で打錠後、加湿し、乾燥させる方法が開示されている。
しかしながら、上述の製造方法は、湿潤した混合物を打錠するため通常の打錠機を用いるのは困難であり、また打錠後、加湿および乾燥しなければならず製造時の工程数が多い等の問題があり、さらに水に不安定な薬物に適用することができないという大きな問題点も有している。
特表平6−502194号(米国特許第5,464,632号)には、被覆された微結晶または被覆もしくは非被覆の微粒子の形状の有効物質と、賦形剤混合物とを含有し、口中で60秒より短い時間で崩壊することを特徴とする急速崩壊性多粒子状錠剤が開示されている。かかる錠剤に崩壊剤を含有させることも記載されているが、その具体的化合物についての記載はない。また、賦形剤としてD−マンニトールを含有させることは記載されていない。
また、特開平11−35450号には、口の中で40秒未満で分解し、被覆された微小結晶の形態の活性成分と賦形剤とを含む改良多粒子錠剤(improved multiparticulate tablet)が開示されている。該錠剤には、賦形剤として、例えばクロスポビドン等の少なくとも一つの分解剤と、例えばマンニトール等のポリオールが平均粒子径100〜500μmの直接圧縮可能な成形物の形態または平均粒子径100μm未満の粉末の形態で、含有されている。
一方、D−マンニトールは安全性、生理活性物質との配合性に優れ、また、吸湿性がなく、ほとんど水分を保持しないことから、特に、水分に感受性が高い生理活性物質を含有する錠剤またはカプセル剤等の製剤化のためには利用価値が高い賦形剤である。反面、D−マンニトールは圧縮成形時の結合性が悪く、しかも金属壁面との摩擦が大きいことから、賦形剤としてD−マンニトールを含有させた場合、圧縮成形時にダイ・フリクション(die friction)やキャッピング(capping)を引き起こし、また錠剤に充分な硬度を付与できず、さらに錠剤機(打錠機)の臼壁面や杵側面の摩耗の原因ともなり、ときには錠剤機の運転が困難にさえなるという問題がある。そのため、賦形剤としてのD−マンニトールの使用は、咀嚼錠等の極めて限られた剤形に限定されているのが現状である。
ここで、D−マンニトールは、X線回析パターンによりα型、β型およびδ型に分類される結晶多形を有する結晶性粉末であることが知られている[Walter−Levy,L.,Acad.Sci.Parist.276 Series C,1779,(1968)]。結晶性粉末の成形性の改善、すなわち圧縮成形時の結合性の向上に関しては、一般に結晶を微粉砕することで結晶の結合点数(粒子間の接触面積)が増大し、これによりその成形性(圧縮成形時の結合性)が向上することが知られている。しかし、D−マンニトールにおいては単に微粉砕することは圧縮成形時の金属壁面との摩擦を助長するばかりでなく、粉立ち、流動性低下といったハンドリング面での問題を引き起こすことになる。
したがって、従来、D−マンニトールを圧縮成形物の賦形剤として使用する場合は単独で使用されることは少なく、成形性のよい他の賦形剤、例えば糖類と配合し、かつ結合剤、フィラー等他の添加剤とともに配合されて用いられる。
D−マンニトールの成形性を改良する方法として、特開昭61−85330号には、D−マンニトールを噴霧乾燥することを特徴とする直打用賦形剤の製造方法が、特開平10−36291号には、圧縮成形性に優れた賦形剤として約1m/g以上の比表面積を有するD−マンニトールを含有する固形組成物が開示されている。しかし、これらの製造方法においては、D−マンニトールの調製方法は煩雑であり、製造コストが高い。また、錠剤を製造する際、粉粒体の流動性が十分ではないことによる錠剤重量の変動に基づく有効成分の含量の均一性の低下や有効成分との混合性が十分ではないことによる錠剤中の有効成分の均一性の低下が懸念される。
WO97/47287には、平均粒子径が30μm以下のD−マンニトールを含む糖アルコールを含有する錠剤が開示されている。
しかし、特に薬理活性成分として水溶性薬物を使用した場合に、さらに製剤の口腔内崩壊時間を短縮することが求められている。
発明の開示
本発明の目的は、口腔内で水なしでも速やかに崩壊し、また製造および流通過程や病院もしくは患者が取り扱う過程で型崩れ等の問題を発生しない実用的な錠剤硬度を保有した口腔内速崩壊性錠剤およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討の結果、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体に、D−マンニトールおよび崩壊剤を含有させることにより、優れた崩壊性と実用的な錠剤硬度を有した口腔内速崩壊性錠剤を得ることができることを見出した。
また、本発明者らは、かかる口腔内速崩壊性錠剤の製造方法についても検討を重ねた結果、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤を混合して圧縮成形材料を調製し、これを圧縮成形するだけで、実用上問題のない錠剤硬度でかつ口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩壊性錠剤を得ることができることを見出した。
特に、滑沢剤を含まない圧縮成形材料を、杵表面および臼壁に予め滑沢剤を塗布した圧縮成形機を用いて圧縮成形する方法(外部滑沢打錠法とよぶ)によれば、さらに錠剤の口腔内崩壊時間を短縮することができることを見出した。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(76)に関する。
(1)水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤を含有する口腔内速崩壊性錠剤。
(2)吸着剤が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)請求の記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(3)崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(4)D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である請求の前記(1)〜(3)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(5)水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/ml以上である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(6)水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである請求の前記(1)〜(4)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(7)滑沢剤を含有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(8)滑沢剤が錠剤の表面にのみ含有されている前記(7)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(9)滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(7)または前記(8)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(10)矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する前記(1)〜(9)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(11)粉粒体中の水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比が1:10〜10:1である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(12)粉粒体の錠剤中配合率が、1〜50重量%である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(13)D−マンニトールの錠剤中配合率が、20〜99重量%である前記(1)〜(12)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(14)崩壊剤の錠剤中配合率が、0.5〜30重量%である前記(1)〜(13)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(15)錠剤硬度が、20N以上である前記(1)〜(14)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(16)口腔内の崩壊時間が、30秒以下である前記(1)〜(15)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(17)水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤を混合して圧縮成形材料を調製し、
これを圧縮成形することを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
(18)吸着剤が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(17)記載の製造方法。
(19)崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(17)または(18)記載の製造方法。
(20)D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である前記(17)〜(19)のいずれかに記載の製造方法。
(21)水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/ml以上である前記(17)〜(20)のいずれかに記載の製造方法。
(22)水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである前記(17)〜(20)のいずれかに記載の製造方法。
(23)圧縮成形材料に滑沢剤を含有する前記(17)〜(22)のいずれかに記載の製造方法。
(24)圧縮成形が、杵表面および臼表面に予め滑沢剤が塗布されている圧縮成形機を用いて行われる前記(17)〜(23)のいずれかに記載の製造方法。
(25)滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(23)または(24)のいずれかに記載の製造方法。
(26)圧縮成形材料に矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する前記(17)〜(25)のいずれかに記載の製造方法。
(27)粉粒体中の水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比を1:10〜10:1とする前記(17)〜(26)のいずれかに記載の製造方法。
(28)粉粒体の錠剤中配合率を、1〜50重量%とする前記(17)〜(27)のいずれかに記載の製造方法。
(29)D−マンニトールの錠剤中配合率を、20〜99重量%とする前記(17)〜(28)のいずれかに記載の製造方法。
(30)崩壊剤の錠剤中配合率を、0.5〜30重量%とする前記(17)〜(29)のいずれかに記載の製造方法。
(31)水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤を含有する圧縮成形材料を調製し、これを圧縮成形して得られる口腔内速崩壊性錠剤。
(32)吸着剤が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(31)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(33)崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(31)または(32)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(34)D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である前記(31)〜(33)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(35)水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/ml以上である前記(31)〜(34)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(36)水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである前記(31)〜(34)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(37)圧縮成形材料に滑沢剤を含有する前記(31)〜(36)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(38)圧縮成形が、杵表面および臼表面に予め滑沢剤が塗布されている圧縮成形機を用いて行われる前記(31)〜(37)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(39)滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(37)または(38)項記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(40)圧縮成形材料に矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する前記(31)〜(39)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(41)粉粒体中の水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比が1:10〜10:1である前記(31)〜(40)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(42)粉粒体の錠剤中配合率が、1〜50重量%である前記(31)〜(41)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(43)D−マンニトールの錠剤中配合率が、20〜99重量%である前記(31)〜(42)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(44)崩壊剤の錠剤中配合率が0.5〜30重量%である前記(31)〜(43)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(45)錠剤硬度が、20N以上である前記(31)〜(44)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(46)口腔内の崩壊時間が、30秒以下である前記(31)〜(45)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(47)水溶性薬理活性成分と吸着剤とD−マンニトールと崩壊剤とを含む混合物を造粒して圧縮成形材料を調製する工程、および
該圧縮成形材料を圧縮成形する工程を含むことを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
(48)吸着剤が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(47)記載の製造方法。
(49)崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(47)または(48)記載の製造方法。
(50)D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である前記(47)〜(49)のいずれかに記載の製造方法。
(51)水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/ml以上である前記(47)〜(50)のいずれかに記載の製造方法。
(52)水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである前記(47)〜(50)のいずれかに記載の製造方法。
(53)圧縮成形材料に滑沢剤を含有する前記(47)〜(52)のいずれかに記載の製造方法。
(54)圧縮成形が、杵表面および臼表面に予め滑沢剤が塗布されている圧縮成形機を用いて行われる前記(47)〜(53)のいずれかに記載の製造方法。
(55)滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(53)または(54)記載の製造方法。
(56)圧縮成形材料に矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する前記(47)〜(55)のいずれかに記載の製造方法。
(57)圧縮成形材料中の水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比を1:10〜10:1とする前記(47)〜(56)のいずれかに記載の製造方法。
(58)水溶性薬理活性成分と吸着剤の錠剤中配合率を、1〜50重量%とする前記(47)〜(57)のいずれかに記載の製造方法。
(59)D−マンニトールの錠剤中配合率を、20〜99重量%とする前記(47)〜(58)のいずれかに記載の製造方法。
(60)崩壊剤の錠剤中配合率を、0.5〜30重量%とする前記(47)〜(59)のいずれかに記載の製造方法。
(61)水溶性薬理活性成分、吸着剤、D−マンニトールおよび崩壊剤を含有する口腔内速崩壊性錠剤。
(62)吸着剤が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(61)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(63)崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(61)または(62)項記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(64)D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である前記(61)〜(63)項のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(65)水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/ml以上である前記(61)〜(64)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(66)水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである前記(61)〜(64)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(67)滑沢剤を含有する前記(61)〜(66)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(68)滑沢剤が錠剤の表面にのみ含有されている前記(67)記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(69)滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(67)または(68)項記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(70)矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する前記(61)〜(69)項のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(71)水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比が1:10〜10:1である前記(61)〜(70)項のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(72)水溶性薬理活性成分と吸着剤の錠剤中配合率が、1〜50重量%である前記(61)〜(71)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(73)D−マンニトールの錠剤中配合率が、20〜99重量%である前記(61)〜(72)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(74)崩壊剤の錠剤中配合率が、0.5〜30重量%である前記(61)〜(73)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(75)錠剤硬度が、20N以上である前記(61)〜(74)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(76)口腔内の崩壊時間が、30秒以下である前記(61)〜(75)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性錠剤。
本発明において水溶性薬理活性成分としては、水溶性の薬理活性成分であれば特に制限はないが、例えば水への溶解度が1mg/ml以上であるものが好ましく、10mg/ml以上であるものがより好ましく、100mg/ml以上であるものが特に好ましい。
ここで、薬理活性成分の溶解度は、日本薬局方13通則の項23に記載の方法、具体的には粉末を水に入れ、20±5℃で5分毎に強く30秒間振り混ぜたときの30分以内に溶ける度合いを測定することにより測定することができる。
薬理活性成分としては、例えば、解熱薬、鎮痛薬、消炎剤、解熱鎮痛消炎薬、精神神経用薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、中枢神経作用薬、胃腸薬、抗潰瘍剤、制酸剤等の消化性潰瘍薬、睡眠鎮静薬、脳代謝改善薬、鎮咳薬、去痰薬、鎮暈治療薬、乗物酔い治療薬、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、気管支喘息治療薬、強心薬、抗不整脈薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、利胆薬、高血圧治療薬、高脂血症治療薬、糖尿病治療薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、冠血管拡張薬または末梢血管拡張薬等の血管拡張薬、脳血管障害治療薬、抗生物質、アルツハイマー治療薬および痛風治療薬等から選ばれる1種または2種以上の成分があげられる。
水への溶解度が100mg/ml以上の薬理活性成分としては、例えば、
プラバスタチンナトリウム、セリバスタチンナトリウムのような高脂血症治療薬、
ロキソプロフェンナトリウムのような解熱鎮痛消炎薬、
塩酸フルラゼパムのような睡眠鎮静薬、
バルプロ酸ナトリウムのような抗てんかん薬、
塩酸アマタジンのような抗パーキンソン病薬、
塩酸イミプランのような精神神経用薬、
塩酸エチレフリンのような強心薬、
塩酸オクスプレノール、塩酸メキシレチンのような抗不整脈薬、
塩酸ジルチアゼムのような血管拡張薬、
クエン酸ペントキシンベリンのような鎮咳薬、
L−塩酸メチルシステインのような去痰薬、
塩酸ピレンゼピンのような消化性潰瘍薬
等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤中の該水溶性薬理活性成分は、水溶性であれば薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(例えば炭酸、重炭酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等)、有機塩基化合物(例えば、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)との塩等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤中の吸着剤としては、例えばケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸およびその誘導体等があげられる。中でもケイ酸カルシウムが好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤中のD−マンニトールとしては、例えば一般に市販されているものが用いられ、噴霧乾燥法等により処理したD−マンニトールを用いてもよい。これらD−マンニトールは、全部またはその一部が一次粒子の状態で存在するのが好ましく、粉砕機や篩分機等によって、目的とする一次粒子の平均粒子径および比表面積となるように調製することが好ましい。一次粒子の平均粒子径の範囲としては、10〜300μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。D−マンニトールの一次粒子の比表面積の範囲としては、1.0m/g以下が好ましく、1.0〜2.1×10−6/gがより好ましく、0.4〜0.02m/gがさらに好ましい。
ここで、該平均粒子径は、50%粒子径を意味し、累積百分率グラフにおける50%のときの粒子径を表す。その測定方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定法があげられ、具体例としてレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910型(堀場製作所製)を用いる方法があげられる。該比表面積は、BET(Brunauer−Emmett and Teller’s)方式を用いて測定することができ、具体的には、例えば堀場製作所のSA−9603型測定器を用いて測定することができる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤に含まれる崩壊剤としては、例えばクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース等があげられる。その中でもクロスポビドンが好ましい。クロスポビドンは、1−ビニル−2−ピロリドンの架橋重合物であればいずれでもよく、通常分子量1,000,000以上のクロスポビドンが用いられる。該クロスポビドンは公知の方法で製造することができ、また例えばコリドンCL(BASFジャパン社製)、ポリプラスドンXL(ISPジャパン社製)等の市販品を用いてもよい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤において、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体中の水溶性薬理活性成分と吸着剤の配合比(水溶性薬理活性成分の重量:吸着剤の重量)は特に制限がないが、例えば1:10〜10:1であるのが好ましく、1:5〜5:1であるのがより好ましく、1:2〜2:1であるのが特に好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤において、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体の錠剤中配合率(錠剤全重量に対する水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体の配合重量割合)は特に制限がないが、例えば1〜50重量%であるのが好ましく、1〜40重量%であるのがより好ましく、1〜30重量%であるのが特に好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤において、D−マンニトールの配合率(錠剤全重量に対するD−マンニトールの配合重量割合)は特に制限がないが、例えば20〜99重量%であるのが好ましく、40〜99重量%であるのがより好ましく、60〜99重量%であるのが特に好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤において、崩壊剤の配合率(錠剤全重量に対する崩壊剤の配合重量割合)は特に制限がないが、0.5〜30重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのがより好ましく、1〜10重量%であるのが特に好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤における水溶性薬理活性成分と吸着剤を含有する混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤の配合割合(配合比)は、その水溶性薬理活性成分の溶解度、粒度、水への濡れ性等の物性、吸着剤、崩壊剤の種類等により適宜選択することができる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤には、滑沢剤を含有させることが好ましい。滑沢剤は特に限定されないが、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等を用いるのが好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤に対する滑沢剤の添加重量割合は、0.001〜2重量%であるのが好ましく、0.01〜1重量%であるのがより好ましく、0.05〜0.5重量%であるのが特に好ましい。
該滑沢剤は本発明の口腔内速崩壊性錠剤の内部に含有されていてもよいが、後述する外部滑沢打錠法により、該錠剤の表面にのみ滑沢剤が含有されている方が好ましい。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、所望により、矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群より選択される1種もしくは2種以上の添加剤成分を含有していてもよい。添加剤の錠剤全体に対する添加重量割合としては、5重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。
矯味剤または甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、ステビア、グリチルリチン二カリウム等があげられる。
香料としては、例えばL−メントール、レモン、オレンジ、ストロベリー、ミント等があげられる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用青色2号等の食用色素、食用レーキ色素等があげられる。
安定化剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、クエン酸等があげられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム等があげられる。
抗酸化剤としては、アスコルビン酸、トコフェロール等があげられる。
溶解補助剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール400等の界面活性剤等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤においては、添加する添加剤には特に制限がないが、水に触れたときに高い粘性を示す、D−マンニトール以外の糖類および結合剤を含有しない錠剤が好ましい。D−マンニトール以外の糖類および結合剤を含有させないことにより、得られる口腔内速崩壊性錠剤の口腔内における崩壊性が向上する傾向がある。
ここで、D−マンニトール以外の糖類としては、例えば、白糖、ブトウ糖、麦芽糖、果糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール等があげられる。また、結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、プルラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、実用的な錠剤硬度を有し、しかも口腔内で水なしでも速やかに崩壊することができる。
ここで、「実用的な錠剤硬度」とは錠剤成分、錠剤形状等により異なるが、20N以上、好ましくは30N以上の硬度である。なお、錠剤硬度は、公知の錠剤硬度計、例えば富山化学株式会社製 TH−303型を用いて容易に測定することができる。
また、「速やかな崩壊」とは口腔内で水を服用しなくても唾液により実用上問題のない時間で崩壊することを意味する。この実用上問題のない崩壊時間とは個人差があるが30秒以内が好ましい。ここで、崩壊時間は健康な成人の口腔内の唾液で口腔内崩壊性錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定することにより得られる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、水なしで服用することに限定したものではなく、水を用いれば唾液の少ない患者でも容易に服用することができることから従来の錠剤より明らかに服用しやすい錠剤である。すなわち、本発明の口腔内速崩壊性錠剤の服用方法としては、例えば(a)口に含みそのまま飲み込まず、少量の水または水なしで口腔内の唾液で溶解または崩壊させて服用する方法、(b)水とともにそのまま飲み込んで服用する方法、(c)錠剤を水で溶解もしくは崩壊させた後、服用する方法等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、上述のように水なしで服用することができることから、(i)水なしで服用する必要が多い場合、(ii)錠剤を飲み込むことが困難な患者が服用する場合、(iii)通常の錠剤なら喉に詰まらせてしまう恐れのある高齢者や子供が服用する場合等に、特に好ましく用いられる。(i)〜(iii)の場合の薬物の例としては、解熱薬、鎮痛薬、消炎剤、抗不安薬、鎮咳薬、去痰薬、鎮暈治療薬、乗物酔い治療薬、高血圧治療薬、高脂血症治療薬、糖尿病治療薬、気管支喘息治療薬、脳血管障害治療薬等の治療薬(疾患によっては予防薬として使用されるものもある)等があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、直接打錠法または間接打錠法等の製剤分野における慣用の方法により製造される。例えば、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトール、崩壊剤および所望により滑沢剤や他の添加剤を混合し、圧縮成形する方法等があげられる。
該「混合」は、例えばバーチカルグラニュレーターVG10(パウレック社製)、万能練合機、流動層造粒機、V型混合機、タンブラー混合機等の装置を用いて行われる。「圧縮成形」は、単発錠剤機、ロータリー式打錠機等の公知の打錠機を用いて行われる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤に用いる水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体を製造する方法としては、特に制限はないが、例えば1)水溶性薬理活性成分と吸着剤とを混合し、水性媒体を加え造粒し、乾燥する方法、2)水性媒体に溶解もしくは分散した水溶性薬理活性成分を吸着剤に加え造粒し、その後乾燥を行う方法等の湿式造粒方法等があげられる。なお、水溶性薬理活性成分と吸着剤に他の添加剤を添加することもできる。他の添加剤としては、本発明の口腔内速崩壊性錠剤中に添加されるD−マンニトール、崩壊剤の一部、前述の滑沢剤、矯味剤、甘味剤、香料、流動化剤、安定化剤、抗酸化剤、溶解補助剤等があげられる。
水性媒体としては、精製水、メタノール、エタノール、アセトン、これらの混合液等があげられ、その混合比は適宜選択できる。中でも、精製水が好ましい。上記粉粒体に対し造粒するための水性媒体の添加量は、5〜30重量%であるのが好ましい。
上述した水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤を含有する口腔内速崩壊性錠剤の調製方法については特に限定されないが、例えば全成分もしくは一部の成分から流動層造粒、転動流動層造粒、攪拌造粒(好ましくは、岡田精工製NSK−250型高速攪拌造粒機またはパウレック社製VG−25型高速攪拌造粒機を使用)、押出造粒(好ましくは、不二パウダル製DGL−1型を使用)等の湿式造粒により圧縮成形材料を調製する工程を含む方法等があげられる。
例えば、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体に、D−マンニトール、崩壊剤等を加え混合し、再度、前記と同様の水性媒体を用いて造粒し、乾燥後、得られた粉粒体に他の添加剤を加え圧縮成形する方法があげられる。
また、D−マンニトール、崩壊剤等を含有する粉粒体と、前述した水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体とを混合し直接圧縮成形する方法もあげられる。
また、
(1)水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して粉粒体(水溶性薬理活性成分・吸着剤含有造粒物)を得る工程、
(2)D−マンニトールを造粒して粉粒体(D−マンニトール造粒物)を得る工程、
(3)該水溶性薬理活性成分・吸着剤含有造粒物と該D−マンニトール造粒物と崩壊剤を混合して圧縮成形材料を調製する工程、および
(4)該圧縮成形材料を圧縮成形する工程を含むことを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法等があげられる。
さらに、水溶性薬理活性成分、吸着剤、D−マンニトールおよび崩壊剤を混合・造粒する製造方法として、
(1)水溶性薬理活性成分と吸着剤とD−マンニトールと崩壊剤とを含む混合物を造粒して圧縮成形材料を調製する工程、および
(2)該圧縮成形材料を圧縮成形する工程を含むことを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法等があげられる。
これら造粒物の粒度や比表面積は打錠に差し支えない流動性があれば特に限定されず任意に設定することができる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤に滑沢剤を含有させる場合は、例えば水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトールおよび崩壊剤からなる粉粒体にさらに滑沢剤を加えて混合すればよい。また、滑沢剤以外の前述のその他の添加剤(例えば香料、安定剤等)を該粉粒体に加えて混合してもよい。
造粒物を乾燥する方法は特に限定されないが、公知の乾燥機、例えば通風箱型乾燥機(好ましくは、日本乾燥機TE−98型)を用い、40〜80℃で約30〜90分かけて乾燥するという方法、または流動層乾燥機(好ましくは、フロイント産業製FLO−5型)を用い、70〜90℃で、約5〜30分かけて乾燥するという方法が好ましい。
また、流動層造粒乾燥機(好ましくは、フロイント産業社製FLO−2型)を用いて、造粒と得られた造粒物の乾燥を一度に行うこともできる。
次に、得られた造粒物に所望により例えば香料、安定剤等の滑沢剤以外の前述の添加剤を添加し圧縮成形材料を調製する。その後、該圧縮成形材料を圧縮成形することにより、本発明の口腔内速崩壊性錠剤が得られる。圧縮成形は、公知の打錠機、好ましくは単発錠剤機、ロータリー式打錠機、油圧プレス機等を用いて行うことができる。圧縮成形時の圧力は、3〜30kN、好ましくは5〜20kNである。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤の製造方法の他の好ましい態様としては、水溶性薬理活性成分と吸着剤を含む混合物を造粒して得られる粉粒体、D−マンニトール、崩壊剤、所望により滑沢剤や前述の他の添加剤を公知の混合機、例えばV型混合機、タンブラー混合機等用いて混合して得られる混合物を直接打錠することによって製造する方法があげられる。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤の製造においては、上述のように滑沢剤を他の成分と一緒に錠剤内部に含有させてもよいが、滑沢剤を他の成分と混合することなく、圧縮成形機の杵表面および臼壁面に予め塗布し、圧縮成形材料を圧縮成形する(外部滑沢打錠法)のが好ましい。こうすることにより、錠剤の硬度を上げることまたは崩壊時間を短くすることができるという利点がある。なお、滑沢剤を杵臼に塗布する方法には特に制限がない。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤の重量および形状には、特に制限がない。例えば、製剤の形態としては、円形状であってもよいし、普通R面、糖衣R面、スミカク平面、スミマル平面、二段R面等の面形を有する各種異形状であってもよい。また、該錠剤は、割線を入れた分割錠として用いてもよい。また、2層以上の多層錠剤であってもよい。
特に、本発明の口腔内速崩壊性錠剤は小型であるのが好ましく、また錠剤の重量および/または形状により硬度および口腔内崩壊時間を制御することもできる。本発明の口腔内速崩壊性錠剤としては、例えば、80〜250mgの重量で6〜9mmの錠剤径のものが好適である。
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、ヒトはもちろん、他の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、サル、ヒト等)に対しても、経口的に安全に投与することができる。本発明の口腔内速崩壊性錠剤の投与量は、例えば水溶性薬理成分、投与対象、疾患の種類等により異なるが、その薬理成分としての投与量が有効量となる範囲から適宜選択すればよい。また、本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、1日1回または複数回、好ましくは2〜4回程度に分けて投与することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例および試験例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
なお、PVSは、プラバスタチンナトリウムを表す。
比較例1
PVS200g、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)1992gおよびクロスポビドン148gを高速攪拌造粒機(パウレック社製、VG−25型)に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥を行い、得られた乾燥物について20号金網で整粒を行った。その整粒物1170gにアスパルテーム18g、ステアリン酸マグネシウム12gおよびミント香料1gを加え混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製)を用いて、錠剤重量120mg、打錠圧700kgの条件で打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。
実施例1
PVS500gとケイ酸カルシウム(「フローライトRE」エーザイ社製)240gを高速攪拌造粒機に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥し、20号金網で整粒した。別に、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)2000gを高速攪拌造粒機に仕込み精製水を加え造粒した。その後、流動層乾燥し、20号金網で整粒した。
PVS/ケイ酸カルシウム含有顆粒148g、D−マンニトール顆粒948g、クロスポビドン74g、アスパルテーム18g、ステアリン酸マグネシウム12gおよびミント香料1gを混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製)を用いて、錠剤重量120mg、打錠圧700kgの条件で打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。
実施例2
PVS500gとケイ酸カルシウム(「フローライトRE」エーザイ社製)240gを高速攪拌造粒機に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥し、20号金網で整粒した。別に、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)2000gを高速攪拌造粒機に仕込み精製水を加え造粒した。その後、流動層乾燥し、20号金網で整粒した。
PVS/ケイ酸カルシウム含有顆粒148g、D−マンニトール顆粒960gおよびクロスポビドン74gを混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着し、さらに脈動波による滑沢剤噴霧装置を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製、滑沢剤噴霧装置付設)を用いて、杵表面および臼壁にステアリン酸マグネシウムをあらかじめ塗布してから打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。成形条件は錠剤重量120mg、打錠圧700kgであった。
実施例3
ケイ酸カルシウムの代わりに軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製「アドソリダー101」)を用いる以外は、実施例2と同様にして錠剤を得た。
実施例4
PVS200g、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)1896g、ケイ酸カルシウム96gおよびクロスポビドン148gを高速攪拌造粒機(パウレック社製、VG−25型)に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥を行い、得られた乾燥物について20号金網で整粒を行った。その整粒物1170gにアスパルテーム18g、ステアリン酸マグネシウム12gおよびミント香料1g加え混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製)を用いて、錠剤重量120mg、打錠圧700kgの条件で打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。
実施例5
ケイ酸カルシウム(「フローライトRE」エーザイ社製)500gを高速攪拌造粒機に仕込み、PVS500gを精製水1000gに溶解した液を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥し、20号金網で整粒した。別に、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)2000gを高速攪拌造粒機に仕込み精製水を加え造粒した。その後、流動層乾燥し、20号金網で整粒した。
PVS/ケイ酸カルシウム含有顆粒200g、D−マンニトール顆粒908g、クロスポビドン74g、アスパルテーム18gおよびミント香料1gを混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着し、さらに脈動波による滑沢剤噴霧装置を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製、滑沢剤噴霧装置付設)を用いて、杵表面および臼壁にステアリン酸マグネシウムをあらかじめ塗布してから打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。成形条件は錠剤重量120mg、打錠圧700kgであった。
実施例6
PVS500gとケイ酸カルシウム(「フローライトRE」エーザイ社製)240gを高速攪拌造粒機に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥し、20号金網で整粒した。別に、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径30μm、比表面積0.40m/g)2000gを高速攪拌造粒機に仕込み精製水を加え造粒した。その後、流動層乾燥し、20号金網で整粒した。
PVS/ケイ酸カルシウム含有顆粒148g、D−マンニトール顆粒960gおよびクロスポビドン74gを混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着し、さらに脈動波による滑沢剤噴霧装置を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製、滑沢剤噴霧装置付設)を用いて、杵表面および臼壁にステアリン酸マグネシウムをあらかじめ塗布してから打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。成形条件は錠剤重量120mg、打錠圧700kgであった。
実施例7
PVS500gとケイ酸カルシウム(「フローライトRE」エーザイ社製)1000gを高速攪拌造粒機に仕込み5分間混合後、精製水を加え造粒した。その後、吸気温度80℃の条件で流動層乾燥し、20号金網で整粒した。別に、D−マンニトール(日研化成製、平均粒子径50μm、比表面積0.17m/g)2000gを高速攪拌造粒機に仕込み精製水を加え造粒した。その後、流動層乾燥し、20号金網で整粒した。
PVS/ケイ酸カルシウム含有顆粒300g、D−マンニトール顆粒820gおよびクロスポビドン80gを混合し打錠用顆粒とした。7mmφ平型の杵を装着し、さらに脈動波による滑沢剤噴霧装置を装着したロータリー型打錠機(HATA−AP15型、畑鉄工所製、滑沢剤噴霧装置付設)を用いて、杵表面および臼壁にステアリン酸マグネシウムをあらかじめ塗布してから打錠用顆粒を圧縮成形し錠剤を得た。成形条件は錠剤重量120mg、打錠圧700kgであった。
試験例1
比較例1および実施例1〜7で得られた錠剤の口腔内崩壊時間および硬度を測定した。
口腔内崩壊時間については、健康な成人5名が、1錠を口腔内に含み、唾液のみで錠剤が崩壊するまでの時間を測定し、平均値を算出した。また錠剤硬度については、5錠をとり、1錠毎、錠剤硬度計(富山化学株式会社製 TH−303型)で錠剤硬度を測定し、平均値を算出した。第1表にその結果を示す。
Figure 0004551092
本発明の錠剤は、硬度が20N以上であり、口腔内崩壊時間は30秒以下であった。
産業上の利用可能性
本発明により、口腔内で水なしで速やかに崩壊し、また製造および流通過程や病院もしくは患者が取り扱う過程で型崩れ等の問題を発生しない実用的な錠剤硬度を保有した口腔内速崩壊性錠剤を提供することができる。かかる口腔内速崩壊性錠剤は、老人や小児等の嚥下力が弱い患者でも容易に正確な薬物量を服用することができ、一般患者においても、水の用意ができない外出先等でも水なしで服用できることから、患者全般に対して服薬コンプライアンスが向上できるという利点を有している。

Claims (12)

  1. 水溶性薬理活性成分と、ケイ酸カルシウムおよび軽質無水ケイ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着剤とを含み、該水溶性薬理活性成分と該吸着剤の配合比が1:10〜10:1である混合物を造粒および乾燥して得られる粉粒体に、60〜99重量%の配合率でD−マンニトールおよび0.5〜30重量%の配合率で崩壊剤を混合して圧縮成形材料を調製する工程、ならびに該圧縮成形材料を圧縮成形することを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
  2. 水溶性薬理活性成分と、ケイ酸カルシウムおよび軽質無水ケイ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着剤とD−マンニトールと崩壊剤とを含み、該水溶性薬理活性成分と該吸着剤の配合比が1:10〜10:1であり、該D−マンニトールの配合率が、60〜99重量%であり、該崩壊剤の配合率が0.5〜30重量%である混合物を造粒および乾燥して圧縮成形材料を調製する工程、および該圧縮成形材料を圧縮成形する工程を含むことを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
  3. 崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の製造方法。
  4. D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の平均粒子径が10〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. D−マンニトールの全部または一部が一次粒子の状態で存在し、該一次粒子の比表面積が、1.0m/g以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 水溶性薬理活性成分の水への溶解度が、1mg/mL以上である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 水溶性薬理活性成分が、プラバスタチンナトリウムである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 圧縮成形材料に滑沢剤を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 圧縮成形が、杵表面および臼表面に予め滑沢剤が塗布されている圧縮成形機を用いて行われる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8または9記載の製造方法。
  11. 圧縮成形材料に矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定化剤、流動化剤、抗酸化剤および溶解補助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 錠剤硬度を、20N以上となるように圧縮成形することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
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