JP4539160B2 - 光学素子、光学素子の製造方法及び面光源装置 - Google Patents

光学素子、光学素子の製造方法及び面光源装置 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、液晶ディスプレイなどにおいて、照明光束を曲げたり拡散させるために使用される光学素子及びその製造方法に関し、特に、観察者に対する正面の輝度を上げるために光束の出射方向を特定の角度範囲内に制御する光学素子及びその製造方法に関し、また、この光学素子を用いた面光源装置に関するものである。
従来、液晶デバイスをバックライトシステム(面光源装置)により裏面側より照明するように構成された液晶ディスプレイが提案されている。
このような液晶ディスプレイにおいて使用されるバックライトシステムは、光源からの光束を導く導光板と、この光束の方向を制御する複数枚数の光制御フィルムとを組み合わせて構成されており、液晶デバイスを高い輝度で照明することができる。光制御フィルムは、端面側より入射され導光板によって導かれた光束を、この光制御フィルムの出射面に垂直な方向に効率よく曲げる機能を有している。
このようなバックライトシステムにおいては、高い輝度を維持しつつ、より厚みを薄くし、また、製造の容易化及び製造コストの低廉化を実現するため、より少ない枚数の光制御フィルムによって構成することが望まれている。したがって、可能であれば、1枚で導光板及び光制御フィルムの機能を兼ねることができる光学素子が提案されることが望ましい。
このような光学素子としては、回折格子を応用したものが考えられる。回折格子は、格子面に斜めに入射した入射光を、透過回折、または、反射回折させることにより、格子面、すなわち、光学素子の出射面に対して垂直な方向に曲げることができるため、導光板及び光制御フィルムの機能を兼ねた光学素子として使用することができる。バックライトシステムの導光板として回折格子を用いる試みは、例えば、特許文献1乃至特許文献3に記載されている。これら特許文献においては、入射光を回折格子に対して斜めに入射させ、この光束を格子面に対して垂直な方向に出射させる技術が記載されている。
一方、特許文献4及び特許文献5には、互いに屈折率の異なる2層の透明層の界面に凹凸を形成し、この凹凸を回折格子、または、プリズムシートとして機能させる光学素子が記載されている。この光学素子においては、入射光が2層の透明層間を行き来する間に、出射面に垂直な方向に出射されることが企図されている。
なお、樹脂材料間の屈折率差を大きくする技術としては、特許文献6及び特許文献7に記載されているように、樹脂材料中に金属酸化物微粒子を導入する技術が知られている。また、屈折率の高い透明な樹脂材料を得る技術としては、特許文献8及び特許文献9に記載されているように、樹脂材料中に硫黄を導入する技術も知られている。
特開平09−325218号公報(第1頁〜5頁、図1) 特開2003−270445公報(第1頁〜4頁、図1〜2) 特開2003−57652公報(第1頁〜3頁、図1〜図6、図12〜図13) 特開平09−292530号公報(第1頁〜2頁、代表図) 特開平10−291270号公報(第1頁〜4頁、図7〜図15) 特開2003−4904公報(第1頁〜8頁、図1〜図6) 特開2001−74901公報(第1頁〜18頁、図1〜図8) 特開平6−73131号公報(第1頁〜4頁) 特開平8−325337号公報(第1頁〜4頁)
ところで、特許文献1乃至特許文献3に記載されているような、回折格子を用いた光学素子においては、格子面に対する垂直方向について充分な輝度の照明を行うことは困難であった。すなわち、このような光学素子においては、導光板の裏面部に回折格子を構成する多数の溝が形成されており、この回折格子に入射された入射光は、この回折格子において散乱されてしまうので、格子面に対する垂直方向に出射されるのは、入射光の一部に過ぎないからである。
また、特許文献4及び特許文献5に記載されているような光学素子においては、入射光が各透明層間の界面を行き来するときに散乱されやすく、やはり光学素子の出射面に対する垂直方向について充分な輝度の照明を行うことは困難である。また、このような光学素子においては、2層の透明層間の屈折率差が小さいため、回折格子やプリズムシートの特性が十分に発揮されないこととなっている。
そして、特許文献8及び特許文献9に記載されているように、屈折率を高めるために硫黄を導入した樹脂材料は、特定の波長帯域の光を吸収し色がついてしまうため、屈折率の範囲や合成方法について制約が大きかった。
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、積層された第1及び第2の透明層を有する光学素子であって、端面側より入射される入射光を出射面に対する垂直方向に高効率で出射させることができる光学素子を提供し、また、このような光学素子を用いて光学素子の出射面に対する垂直方向について充分な輝度の照明を行うことができる面光源装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明に係る光学素子は、積層された第1及び第2の透明層を有する光学素子であって、各透明層の屈折率が0.1以上異なることとしている。このように各透明層間の屈折率差を大きくすることにより、製造コストを低廉化しつつ、光学素子の出射面に対する垂直方向について充分な輝度の照明を行うことができる面光源装置を提供することができる。
すなわち、各透明層間の屈折率差を大きくすることにより、回折格子やプリズムシートを光学素子の裏面部ではなく各透明層間の界面に配置しても、端面よりの入射光を光学素子の出射面に対する垂直な方向に充分に曲げることが可能となり、光学素子の裏面部に回折格子等を設ける場合に生ずる散乱を抑えて、光学素子の出射面に対する垂直方向における輝度を高くすることができる。
各透明層間の屈折率差を大きくする手段としては、これら透明層をなす樹脂材料に微粒子や空孔を導入することが挙げられる。
また、光学素子の出射面に対する垂直方向へ光束を曲げる効率を高くするためには、各透明層の屈折率を高くすることが有効である。透明な樹脂材料の屈折率を高め、また、屈折率を制御するためには、屈折率の高い微粒子を樹脂材料中に分散させることが有効である。
しかし、樹脂材料中に微粒子を分散させることについては、微粒子を分散させることが製造上困難であることや、樹脂材料の透過率が下がってしまうこと、また、樹脂材料のヘーズ値(濁度)が大きくなってしまうという問題があった。このような問題は、樹脂材料中に空孔を分散させる場合にも同様に生ずる。
これらの問題については、光を散乱させない程度に粒径の小さな超微粒子を用いて、樹脂材料中に微粒子が凝集しないようにし、また、微粒子自体が光を吸収しないものを用いることにより解決することができる。ところが、このような解決方法を採る場合、微粒子、樹脂材料及び分散剤について、適切な選択を行う必要があり、材料選択の幅は狭くなる。
他方、樹脂材料の屈折率を大きくするためには、樹脂材料の分子の組成として、硫黄、芳香環、あるいは、長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、または、3B族の元素のいずれかを含めることが考えられる。しかし、この場合には、樹脂材料に着色が生ずるという問題があった。
このような問題を解決し、各透明層間の界面に設けた凹凸による光束の充分な曲げや集光、異方性の拡散という機能を実現するためには、界面に設けた凹凸からなる回折格子の構造や、透明層をなす材料そのものの光の吸収や散乱も含めた充分な検討が必要である。
本発明者らは、微粒子、または、空孔を多く含む透明層の厚さを薄くすれば、この透明層の透過率を上げるとともに、ヘーズ値を下げることができるという知見に基づき、微粒子、または、空孔を多く含む透明層の厚さを薄くしても入射光を充分に制御できるような光学設計を行った。
また、微粒子、または、空孔を多く含む透明層の厚さを薄くする手段の一つとして、溝の浅い凹凸でも光制御が可能なホログラムを用いることを提案している。そのうえ、ホログラムにより可視光が分光されることによって生ずる虹を低減し、色むらや輝度むらを抑えることも提案している。
このような手法は、屈折率の大きな透明層をなす材料として、分子の組成として硫黄や芳香環を含む樹脂材料や、あるいは、長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、または、3B族の元素のいずれかを含む有機金属ポリマを用いる場合にも適用することができ、透過率を高めることができる。
すなわち、本発明に係る光学素子は、以下の特徴を有するものである。
〔特徴1〕
屈折率が0.1以上異なり積層された第1及び第2の透明層を有し、第1及び第2の透明層の界面は、この界面に対する入射光の進行方向を制御するための微細な凹凸状となされており、この微細な凹凸が光を異方拡散させる特性を有し、第1及び第2の透明層のうちの屈折率の大きな第1の透明層の厚さは、0.1μm以上10μm以下であり、微細な凹凸は、直線状の突条が平行に配列された格子状に形成され、深さが2.8μm〜8μmであり、平均周期が4μm〜7μmであり、該凹凸の凸部分の断面形状が三角形、または、台形であり、該断面形状における対向する斜面部のなす角度が40°以上65°以下であり、第2透明層の界面と対向する面は空気層に面し、第2透明層の端面から光を入射し、界面の法線に対して60±15°で入射するようにしたときに、界面を透過した光のうち50%以上が界面に対して垂直な方向の±15°の範囲に出射されることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕を有する光学素子において、第1の透明層をなす材料は、硫黄を含む樹脂材料、芳香環を含む樹脂材料、または、長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族の元素のいずれかを含む有機金属ポリマ材料であることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕、または、〔特徴〕を有する光学素子において、第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、可視光帯域の入射光を分光させない特性となっていることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕のいずれか一を有する光学素子において、第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、ホログラムであることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕のいずれか一を有する光学素子において、第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、入射光の進行方向を曲げる特性を有していることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕記載のいずれか一を有する光学素子において、第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、入射光を集光させる特性を有していることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕記載のいずれか一を有する光学素子において、第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、界面に対して斜めに入射した入射光の少なくとも一部を、界面に垂直な方向に曲げることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層をなす材料は、アクリル樹脂材料を含んでいることを特徴とするものである。
〔特徴
〔特徴1〕乃至〔特徴〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層をなす材料は、ウレタンアクリレート樹脂材料を含んでいることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層をなす材料は、紫外線及び/又は熱によって硬化された樹脂材料を含んでいることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層をなす材料は、カップリング剤、または、分散剤と、微粒子と、樹脂材料とを混合したものであることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層は、板状、または、フィルム状に形成されていることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層の界面に略々平行な方向にこの界面に入射した入射光が、この界面において、界面に対して略々垂直な方向に曲げられることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴2〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、第1の透明層は、界面における凹凸の深さが、この第1の透明層の厚さの半分以上となっていることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、第1及び/又は第2の透明層の表面部に、光束を拡散させる拡散体が配置されていることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、片面側に、光束を反射する反射板が配置されていることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、第1及び/又は第2の透明層の表面部に、無反射構造、または、無反射膜が形成されていることを特徴とするものである。
〔特徴1
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子において、各透明層のうち、屈折率が小さい透明層は、射出成形により形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る光学素子の製造方法は、以下の特徴を有するものである。
〔特徴19
〔特徴2〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、第1の透明層となる透明基材の微細な凹凸が形成された面と平面状の型との間に微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を挟み、紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて第2の透明層とすることを特徴とするものである。
〔特徴2
〔特徴2〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、第1の透明層となる透明基材の微細な凹凸が形成された面上に微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料がコートされた透明フィルムを押し当て、紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて第2の透明層とすることを特徴とするものである。
そして、本発明に係る面光源装置は、以下の特徴を有するものである。
〔特徴2
〔特徴1〕乃至〔特徴1〕のいずれか一を有する光学素子と、光学素子の端面から光束を入射させる光源手段とを備えたことを特徴とするものである。
本発明に係る光学素子は、屈折率が0.1以上異なり積層された第1及び第2の透明層を有し、第1及び第2の透明層の界面は、この界面に対する入射光の進行方向を制御するための微細な凹凸状となされており、この微細な凹凸が光を異方拡散させる特性を有し、第1及び第2の透明層のうちの屈折率の大きな第1の透明層の厚さは、0.1μm以上10μm以下であり、微細な凹凸は、直線状の突条が平行に配列された格子状に形成され、深さが2.8μm〜8μmであり、平均周期が4μm〜7μmであり、該凹凸の凸部分の断面形状が三角形、または、台形であり、該断面形状における対向する斜面部のなす角度が40°以上65°以下であり、第2透明層の界面と対向する面は空気層に面し、第2透明層の端面から光を入射し、界面の法線に対して60±15°で入射するようにしたときに、界面を透過した光のうち50%以上が界面に対して垂直な方向の±15°の範囲に出射されることから、端面側より入射される入射光を出射面に対する垂直方向に高効率で出射させることができる。
そして、本発明に係る光学素子は、面光源装置において、導光板の機能及び拡散や集光などの機能を兼ねた素子として利用することができる。導光板としては、液晶ディスプレイにおけるバックライトシステム(面光源装置)用のみならず、フロントライトシステム用においても利用可能であり、その形態も、一枚板の導光板に限定されず、中空導光板にも利用可能である。
すなわち、本発明は、積層された第1及び第2の透明層を有する光学素子であって、端面側より入射される入射光を出射面に対する垂直方向に高効率で出射させることができる光学素子を提供し、また、このような光学素子を用いて光学素子の出射面に対する垂直方向について充分な輝度の照明を行うことができ、製造コストの低廉化が可能な面光源装置を提供することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
〔光学素子の実施の形態〕
図1は、本発明に係る光学素子の構成を示す断面図である。
本発明に係る光学素子は、図1に示すように、積層された第1及び第2の透明層1,2を有して構成される。なお、この光学素子において、各透明層1,2は、板状、または、フィルム状に形成することができる。各透明層1,2が板状、または、フィルム状であることにより、光学素子の厚さを薄くすることができる。
そして、これら各透明層1,2は、屈折率が互いに0.1以上異なる材料によって形成されている。各透明層1,2をなす材料の屈折率差は、0.1乃至1.5程度が好ましい。この屈折率差は、さらに好ましくは、0.15乃至0.5であり、さらに好ましくは、0.2乃至0.3である。
各透明層1,2をなす材料の屈折率差が大きすぎると、これら透明層1,2の界面3での反射が起こりやすくなり、用途によっては、透過率を高くするのが難しくなり、一方、屈折率差が小さすぎると、入射光を制御するのが難しくなる。
そして、第1及び第2の透明層1,2のうちの屈折率の大きな第1の透明層1の厚さは、0.1μm以上300μm以下となされている。第1の透明層1の厚さは、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、50μm以下、また、さらに好ましくは、10μm以下である。
屈折率の大きな第1の透明層1の厚さを薄くすることにより、この第1の透明層1の透過率を上げることができる。
屈折率が小さい第2の透明層2の厚さは、好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、100μm以上、また、さらに好ましくは、250μm以上である。この第2の透明層2の厚さを厚くした方が、熱変形が起こり難くなる。
そして、第1及び第2の透明層1,2の界面3は、第2の透明層2より界面3に対する入射光の進行方向を制御するための微細な凹凸状となされている。
第1の透明層1の全体の厚さを薄くし、かつ、透過率を上げるために、微細な凹凸の深さは、好ましくは、20μm以下、さらに好ましくは、10μm以下であり、さらに好ましくは、7μm以下である。
なお、20μmという深さの凹凸は、幾何光学の範疇であるプリズムシートの深さとしては最小値である。これより小さい深さの凹凸とすると、ホログラムの回折効果が生じてくる。10μmという深さの凹凸は、ホログラム回折格子の深さの最大値である。これより大きい深さの凹凸とすると、回折効果が顕著に減少することとなる。
入射光を十分に制御するには、凹凸の深さは、0.4μm以上が好ましい。さらに好ましくは、凹凸の深さは、4μm以上である。凹凸の深さを0.4μm以下とした場合には、回折効果が著しく減少してしまう。
そして、屈折率が大きい第1の透明層1は、1mm以上の面積を有する連続した透明層であることが好ましく、1cm以上の面積を有する連続した透明層であることが、さらに好ましい。この透明層が不連続であると、面光源装置に用いたときに、輝度むらの原因になりやすいからである。
各透明層1,2をなす材料の光学特性は、厚さを10μmとした場合に、光透過率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上である。これら材料のヘーズ値(濁度)は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは8%以下である。透過率が高く、ヘーズ値が小さい方が、面光源装置に用いたときに、照明輝度を高くすることができるからである。
また、各透明層1,2をなす材料は、色づきをなくすために、無色透明であるほうが好ましい。各透明層1,2をなす材料は、CIE1931XYZ表色系において、(x−0.33)と(y−0.33)の絶対値が共に0.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.05以下である。
屈折率が小さい第2の透明層2の屈折率は、1.4から1.6の範囲が望ましい。この第2の透明層2の屈折率が高すぎると、第1の透明層1との屈折率差を確保することが難しくなり、また、屈折率が低すぎると、材料選定の範囲が限られてしまうからである。
各透明層1,2の界面3での互いの密着性を上げるとともに、光学素子の反りを低減するためには、これら透明層1,2をなす各材料の熱膨張係数の差は、0.5×10−4以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1×10−4以下である。または、3層以上の構造とし、外側となる2層をなす材料の熱膨張係数の差を小さくするか、外側となる2層をなす材料として熱膨張係数が等しい材料を用いることととしてもよい。また、これら透明層1,2をなす各材料の分子構造の主鎖骨格は、実質的に同じであることが好ましい。
そして、この光学素子においては、第1の透明層1は、屈折率を高くするため、微粒子、または、空孔を含み、第2の透明層2は、微粒子、または、空孔を第1の透明層1よりも少なく含み、あるいは、微粒子、または、空孔を全く含まないこととしてもよい。
各透明層1,2に含まれる微粒子、または、空孔の径は、0.05μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは 0.03μm以下であり、さらに好ましくは 0.001μm乃至0.01μmである。この微粒子、または、空孔の径を小さくした方が各透明層1,2の透過率を上げることができ、また、界面の凹凸形状を設計通りに作成することが容易となる。
各透明層1,2に含まれる微粒子の組成としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化セリウム、チタン酸バリウムなどの金属酸化物のほか、窒化珪素、炭化珪素などの珪素化合物が挙げられる。これらのなかで、各透明層1,2の透過率を高くすることができ、着色を生じさせない酸化錫や酸化亜鉛、酸化ジルコニウムが好ましい。
なお、酸化チタンを用いる場合には、酸化チタン粒子の光触媒特性を落として樹脂材料の劣化を防止するために、マンガンやコバルトとの合金にするか、あるいは、シリカやアルミナで覆ってカプセル化する必要がある。
透明な材料において光学的に一様な屈折率を維持するためには、微粒子や空孔の体積分率は、0.2%(V/V)以上95%以下が好ましく、より好ましくは、7%(V/V)以上90%以下である。微粒子や空孔の体積分率を大きくした方が、透明材料における屈折率の変化を大きくすることができる。しかし、微粒子や空孔の体積分率が大きすぎると、透過率が落ちたり、弾性が減少する可能性がある。
第1の透明層1の形態の一例を示すと、厚さが10±2μm、界面3における凹凸の深さが5±2μm、含んでいる微粒子と樹脂材料との屈折率差が0.6±0.2、微粒子の粒径が0.01±0.005μm、微粒子の体積分率が40%(V/V)である。
第2の透明層2をなす材料の組成は、透明な樹脂材料やガラスが好ましい。透明でなければ透過率が高くならないからである。
また、この光学素子においては、第1の透明層1をなす材料は、硫黄を含む樹脂材料、芳香環を含む樹脂材料、または、長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族の元素のいずれかを含む有機金属ポリマ材料であることとしてもよい。
この場合、硫黄の含有量は、好ましくは、10wt%以上、さらに好ましくは、20wt%以上、さらに好ましくは、50wt%以上である。芳香環の含有量は、好ましくは、20wt%以上、さらに好ましくは、40wt%以上である。なお、芳香環を含む高屈折率材料として代表的なものは、ポリカーボネート(Polycarbonate)である。
長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、または、3B族の元素の含有量の総和は、好ましくは、10wt%以上、さらに好ましくは、20wt%以上である。なお、4A族の元素を含む有機金属ポリマとして代表的なものは、チタノセンポリマである。
ここで、硫黄、芳香族、金属の含有量が多いほど、第1の透明層1の屈折率は高くなりやすく、第2の透明層2との屈折率差を大きくできるので、界面に形成された凹凸による光の制御が容易になる。
そして、この光学素子においては、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、可視光帯域の入射光を分光させない特性となっていることが望ましい。
可視光帯域の光は、赤色光、青色光及び緑色光を含む場合には、白色光となる。可視光帯域の光について分光が生じないようにするためには、赤色光の波長を633nm、青色光の波長を442nm、緑色光の波長を532nmで代表させたとき、それぞれの最強の回折光の回折角度θoについて、差異の最大値が6°以下であることが好ましく、さらにに好ましくは、3°以下であり、さらに好ましくは、2°以下である。回折角度θoの差異が小さい方が色むらが出にくくなる。なお、このとき、各透明層1,2の界面に対する入射光の入射角θiは、実際に使用される条件下で、最も入射光の強度が強い入射角として考える。
図2は、本発明に係る光学素子の界面3に対する入射光の入射角θi、出射光の出射角θo、凹凸の周期d及び透明層の厚さtを示す断面図である。
入射光Riの入射角θiは、図2に示すように、一般には、60°から90°の範囲内にある。各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、平均周期や、周期的か非周期的かによって、好ましい形状が異なる。格子状で、かつ、周期的な凹凸である場合には、平均周期が20μmを超えていればよい。一般に、格子状の凹凸の平均周期が0.5μm以上20μm以下である場合には、回折効果が生じ、可視光帯域の光について分光が生ずることとなる。
しかし、平均周期が0.5μm以上20μm以下で格子状の凹凸であっても、格子形状によっては、分光を抑えることができる。例えば、格子形状を非周期的にすれば、波長ごとの回折角が平均化されるので、分光を抑えることができる。なお、このような格子形状については、特願2003−426906公報(第1頁〜第4頁、図5〜図13)に記載されている。
各透明層1,2の界面3における格子状の微細な凹凸が、部分的にも全体としても、非周期的である場合には、平均周期が2μm以上あることが好ましく、さらに好ましい平均周期は、4μm以上である。
また、この光学素子においては、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、ホログラムであることとしてもよい。この微細な凹凸を、回折格子やフレネルレンズなど、ホログラム(ホログラム光学素子)として構成することにより、幾何光学的なプリズムやレンズとして構成する場合よりも、凹凸の深さを小さくすることができ、透明層の厚さを薄くすることができる。
そして、この光学素子においては、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、入射光Riの進行方向を曲げる特性を有している。この微細な凹凸において入射光Riを効率よく曲げるためには、この微細な凹凸における第1の透明層1側への凸部分の断面形状が、三角形、または、台形であることが好ましい。また、第1の透明層1側への凸部分の断面形状は、二等辺三角形のように両側に対して対称形状であるよりも、非対称形状であることが好ましい。
図3は、本発明に係る光学素子における各透明層1,2の界面3の微細な凹凸の断面形状を示す断面図である。
微細な凹凸における第1の透明層1側への凸部分の断面形状は、具体的には、図3に示すように、第1の透明層1側への凸部分の一側面の傾斜面の光学素子の出射面に対する投影幅をaとし、凸部分の他側面の傾斜面の光学素子の出射面に対する投影幅をbとしたとき、〔a/b〕が、0以上0.4以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0以上0.2以下である。
ただし、この凹凸を金型から転写して作成する場合には、〔a/b〕は、0.1以上であることが好ましい。
なお、図3においては、第1の透明層1側への凸部分の一側面の傾斜面が界面の法線に対してなす角度をα、凸部分の他側面の傾斜面が界面の法線に対してなす角度をβとして示している。前述の投影幅の比〔a/b〕は、これら角度α,βの正弦の比〔sinα/sinβ〕に等しい。
また、この光学素子において、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸には、入射光Riを集光させる特性を持たせることもできる。例えば、この光学素子への入射光Riが点光源から発せられた拡散光束である場合には、界面3における微細な凹凸が入射光Riを集光させる特性を有していることにより、この光学素子からの出射光を平行光束に近い光束とすることができる。
界面3における微細な凹凸において入射光Riを集光させるためには、この微細な凹凸のそれぞれを同心円状の円弧状に形成し、フレネルレンズを構成するものとすればよい。この場合には、微細な凹凸がなす円弧の曲率中心に点光源を配置することにより、この光学素子からの出射光を平行光束に近い光束とすることができる。
このようなフレネルレンズを構成する凹凸形状は、電子線描画装置を用いて作製することができる。
なお、フレネルレンズについては、例えば、「ビクトール・ソイファー(Victor Soifer),ビクトール・コトラール(Victor Kotlyar)とレオニード・ドスコロヴィッチ(Leonid Doskolovich)著:"アイテラティブ メソッド フォー ディフラクティブ オプティカル エレメンツ コンピュテーション(Iterative Methods for Diffractive Optical Elements Computation)",(米国),テイラー アンド フランシス(Taylor & Francis)、1997年、p .1 〜p .10」に記載されている。
また、この光学素子において、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸には、光を異方拡散させる特性を持たせることができる。この微細な凹凸において入射光Riを異方拡散させるためには、この微細な凹凸における第1の透明層1側への凸部分の界面に対して垂直な方向から見た形状が、90°回転させたときに重ならない形状である必要がある。そのような形状としては、楕円形や菱形形状を挙げることができる。菱形形状をなす凹凸は、機械加工によって形成することができる。また、楕円形状をなす凹凸は、露光及び現像の工程を経ることによって形成することができる。
このようにして作成した微細な凹凸を有する光学素子は、例えば、特開2000−39515公報(第1頁〜4頁、代表図)に記載されているような、光拡散板として使用することができる。
そして、この光学素子において、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、この界面3に対して斜めに入射した入射光Riの少なくとも一部を、界面3に垂直な方向に曲げるものであることが好ましい。
他方、この光学素子を、液晶ディスプレイのバックライトシステム(面光源装置)における導光板として使用する場合には、面状に発光する面光源から赤緑青の3原色を含む白色可視光が出射されるようにする必要がある。このバックライトシステムにおいては、装置の薄型化に対する要求などにより、図2に示すように、第2の透明層2から界面3に対する入射光Riの入射角θi、すなわち、界面3の法線に対して入射光Riがなす角度は、60°±15°の範囲になることが多い。このとき、この光学素子においては、界面3における微細な凹凸の効果により、入射光Riを界面3に対して略々垂直な方向に曲げて出射することができる。
なお、図1に示すように、入射光Riの一部は、界面3を透過せずにこの界面3により反射されるが、この反射光は、全反射されることが好ましい。全反射されたほうが光学設計が容易となり、高輝度のバックライトシステムを構成することができる。また、入射光Riを、界面3により垂直な方向に曲げたり集光したりするためには、界面3を複数層として複数の界面における凹凸を通過させることとしてもよいし、プリズム等の光学素子を通過させることとしてもよい。
この光学素子への入射光Riは、図1に示すように、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸において、透過、または、反射され、あるいは、拡散、または、屈曲される。界面における反射光については、この界面に再入射し、再度、透過や反射を繰り返すようにすることもできる。そして、微細な凹凸の形状は、前述したように、光路を曲げられた透過光が集光するように設計することも、異方性の拡散をするように設計することもできる。
また、この光学素子は、各透明層1,2の界面に略々平行な方向にこの界面に入射した入射光Riが、この界面において、界面に対して略々垂直な方向に曲げられるように構成することができる。すなわち、図1に示すように、各透明層1,2の界面3に略々平行な方向から入射した入射光Riは、この光学素子の裏面部において内面反射された後、一部が、界面3を透過する。このとき、界面3を透過した光のうちの50%以上が、出射角θoが±15°の範囲内に出射光Roとして出射されれば、入射光Riは、界面3に対して略々垂直な方向に曲げられたといえる。
この光学素子においては、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸は、直線状の突条が平行に配列された格子状に形成することができ、この場合には、図3においてdで示す格子の平均周期dを2μm乃至50μmとすることが好ましく、より好ましくは、2μm乃至30μmであり、さらに好ましくは、2μm以上12μm以下であり、さらに好ましくは、4μm以上7μm以下である。
微細な凹凸がなす格子の平均周期dが大きいと、別の光学素子との干渉が生じてモアレ縞が目立ってしまう虞れがある。
微細な凹凸がなす格子の深さhは、好ましくは、1.4μm以上13μm以下であり、より好ましくは、2.8μm以上8μm以下である。
そして、第1の透明層1は、界面3における凹凸の深さhが、この第1の透明層1の厚さの半分以上となっていることが好ましい。すなわち、図3に示すように、この第1の透明層1の厚さtのうち入射光Riの屈曲や異方性拡散に直接に寄与するのは、凹凸の部分であるので、この凹凸の深さhを前述した値よりも減らすのは難しい。そこで、第1の透明層1の厚さtに対する凹凸の深さhの占める割合を増加させることにより、第1の透明層1の厚さtを小さくすることができ、この第1の透明層1の透過率を上げることができる。
また、前述したように、微細な凹凸における第1の透明層1側への凸部分の断面形状を三角形、または、台形とした場合には、図3においてθで示す互いに隣接する凸部分の対向する斜面部のなす角度θが40°以上65°以下となっていることが好ましい。
この光学素子において、各透明層1,2の界面3における微細な凹凸の最適な形状及び並び(格子の形状)は、入射光Riの入射角θiに基づいて決定することができる。すなわち、微細な凹凸における第1の透明層1側への凸部分の一側面及び他側面の角度α,β、これらの投影幅a,b、また、凸部分の断面形状が台形である場合の上底部の幅cをパラメータとして、光学計算を行うことにより、微細な凹凸の最適な形状及び並びを求めることができる。
この光学計算において使用する波長は、青色、緑色及び赤色として、480nm、550nm、620nmを代表値として用いればよい。微細な凹凸が周期的な回折格子を構成しているのであれば、厳密結合解析 (RCWA)を使って設計することができる。また、微細な凹凸がホログラムであって非周期的な回折格子を構成しているのであれば、キルヒホッフの回折積分法や、有限差分時間領域法(FDTD法)を用いて計算することができる。
なお、これらの計算プログラムは一般的に使用されており、例えば、FDTD法用プログラムとしては、電磁波解析ソフトウェア「Poynting」(商品名:富士通株式会社製)や、「OptiFDTD 時間領域光伝搬ソルバー 」(商品名:サイバネットシステム株式会社製)などがある。
これらの方法により計算すると、微細な凹凸において互いに隣接する第1の透明層1側への凸部分の対向する斜面部のなす角度θの最適値は、入射光の入射角θiが略々65°のとき、各斜面部の投影幅a,bについて〔a<b〕であるとき、以下の式で示される値となる。
61.7°×U+30°<θ<61.7°×U+40°
ここで、Uは、〔U=a/(a+b)〕なる値である。
そして、この光学素子においては、各透明層1,2をなす材料は、ポリカーボネイト(Polycarbonate)など、アクリル樹脂材料を含んだ材料とすることができる。アクリル樹脂材料は、光透過率が高く、光学材料として優れている。使用するアクリル樹脂材料の透過率は、1mm厚の膜について、界面におけるフレネル損失を含んで80%以上が好ましく、さらに好ましくは、88%以上である。
また、この光学素子においては、各透明層1,2をなす材料は、ウレタンアクリレート樹脂材料を含んだ材料とすることもできる。ウレタンアクリレート樹脂材料は、紫外線硬化型樹脂材料として、光透過率が高く、硬化特性もよい。また、この樹脂材料としては、他の共重合体を含んだものとしてもよい。
アクリル共重合体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルの共重合体、さらには、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、チオフェノールなどの(メタ)アクリレート化物の共重合体が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステルの1種以上と、これと共重合可能な、官能基としてカルボキシル基を持つアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、官能基としてグリシジル基を持つビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、及び、官能基として水酸基を持つヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートから選ばれるモノマ−の1種以上との共重合体などが挙げられる。
すなわち、この光学素子においては、各透明層1,2をなす材料は、紫外線及び熱のいずれか、または、両方によって硬化された樹脂材料を含んだ材料とすることができる。各透明層1,2の材料として紫外線硬化や熱硬化が可能な樹脂材料を用いることにより、この光学素子を量産性に優れたものとすることができる。ロールや金型からの転写をするためには、これら未硬化の樹脂の粘度は、10dPa・s以上、100dPa・s以下が好ましい。
さらに、この光学素子においては、各透明層1,2をなす材料は、カップリング剤、または、分散剤と、微粒子と、樹脂材料とを混ぜたものとすることができる。各透明層1,2の材料として、カップリング剤や分散剤を含んだものを使用することにより、微粒子の凝集を防止し、透明度の高い光学素子を得ることができる。
カップリング剤としては、イソシアネートシラン、エポキシシラン、アニリノシラン、メチルシラン、フェニルシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、メルカプトシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレートなどを用いることが好ましく、これらカップリング剤を用いることにより、微粒子の分散性を向上させることができる。
これらカップリング剤の使用方法については、特に制限はなく、例えば、予め無機充填剤に処理をしてから使用してもよく、また、他の素材の配合時に、インテグラルブレンド法によって使用してもよい。
また、分散剤としては、例えば、「Disperbyk-111」、「Disperbyk-110」、「Disperbyk-116」(ビッグケミー・ジャパン社製)などを挙げることができる。
微粒子を含む樹脂材料を作成するには、固体粉末を溶液に混合する場合と、粒子が合成された時点で溶液中に分散されているようにする場合の2通りが考えられる。微粒子が固体粉末である場合には、遊星ビーズミルを用いたボールミリング法、圧力と高温をかける方法、せん断による方法などによって混合することにより、樹脂材料と微粒子とを分散させることができる。微粒子が溶液中に分散されている場合には、スターラーによる攪拌や、超音波を用いることによって分散させることができる。
そして、この光学素子は、複数枚数を積層させて(厚み方向に重ねて)使用してもよい。
図4は、本発明に係る光学素子を複数枚重ねた状態を示す斜視図である。
図4に示すように、複数の光学素子を重ねて使用する場合において、入射光Riは、一の光学素子の端面から入射させてもよいし、各光学素子の間に入射させてもよい。
また、各光学素子における各透明層1,2の界面3における微細な凹凸が回折格子を構成している場合には、これら回折格子は、格子方向を互いに平行とされて配置されてもよく、また、格子方向を互いに垂直とされて(すなわち、碁盤目状を形成して)配置されてもよい。また、これら回折格子は、入射光の入射方向に対して、格子方向を平行とされて配置されてもよく、また、格子方向を垂直とされて配置されてもよく、あるいは、格子方向を斜め方向とされて配置されてもよい。
また、この光学素子は、第1及び第2の透明層1,2の少なくとも一方の出射面に、光束を拡散させる拡散体を配置することとしてもよい。
図5は、本発明に係る光学素子において、表面に拡散体4を設けた状態を示す断面図である。
この拡散体4は、例えば、図5に示すように、光学素子の表面に形成された凹凸形状として設けることができる。この拡散体4は、図5に示すように、第1の透明層1の表面において第1の透明層1に対して一体的に形成してもよく、または、第1の透明層1の表面から離れて別体の部材として設けてもよい。
光束を拡散させる拡散体の種類としては、回折効果を積極的に利用するホログラム拡散体と、幾何光学的な効果を利用するスリガラス拡散体とがある。ホログラム拡散体は、拡散範囲を制御できるとともに、指定された範囲内により一様に光を拡散させることができるので、スリガラス拡散体よりも好ましい。すなわち、拡散体としては、定められた拡散範囲に稠密に光を拡散できるホログラム拡散体が好ましい。
なお、ホログラム拡散体については、例えば、特開2002−71959公報(第1頁〜第6頁、図1〜図3)に記載されている。
また、この光学素子は、第1及び第2の透明層1,2の少なくとも一方の出射面に、無反射構造、または、無反射膜を形成することが好ましい。無反射構造としては、0.1μm以上、0.5μm以下の周期を持ち、凸部の深さと幅について0.7以上、2以下のアスペクト比をもつ〔特徴10〕に記載の構造に略相似の構造が好ましい。さらに、保守を容易にするためには、表面の凹部を無反射構造の素材と屈折率が0.1以上異なる材料で埋めて表面を平滑化しておくことが好ましい。このような無反射構造の作製方法としては、露光及びエッチングの工程を経て作成する方法が好ましい。露光方法としては、レーザを用いた干渉露光のほか、電子線直接描画装置による電子線描画法を用いることができる。
一方、無反射膜は、例えば、特開2001−350015公報(第1頁〜第4頁、図1〜図5)に記載されているように、蒸着や交互積層法を用いて作製することができる。
これら無反射構造、または、無反射膜によって、光学素子の表面を無反射の状態とすることにより、この光学素子と空気との界面における光透過率を上げることができ、この光学素子を薄く平らなレンズや平らなプリズムなどとして構成する場合に特に有用である。
また、この光学素子において、第2の透明層2は、射出成形により形成することができる。第2の透明層2を射出成形により形成することとすれば、射出成形時において微細な凹凸を形成することができるので、この光学素子の生産性を高くすることができる。
〔面光源装置の実施の形態〕
前述したような本発明に係る光学素子と、この光学素子の端面から光束を入射させる光源手段とを組み合わせることにより、面光源装置を構成することができる。この場合においては、この光学素子の片面側に、光束を反射する反射板を配置して使用してもよい。
図6は、本発明に係る面光源装置であって、光学素子の片面側に反射板を配置した状態を示す断面図である。
この面光源装置においては、図6に示すように、前述した光学素子の第2の透明層2の端面部から、図示しない光源装置より入射光が入射される。そして、観察者から見て光学素子の裏側に反射板5を配置することにより、各透明層1,2の界面3において反射され光学素子の裏面側に出射されてしまった光束Rbを、再び光学素子の正面側に出射される光束として再利用することができる。
この面光源装置は、例えば、液晶表示デバイス6などの被照明物が、光学素子に隣接して、反射板5の反対側に設置されて使用される。
図7は、本発明に係る面光源装置であって、光学素子と反射板5との間に液晶表示デバイス5を配置した状態を示す断面図である。
この面光源装置は、図7に示すように、液晶表示デバイス6を、反射板5と光学素子との間に設置して用いてもよい。この場合には、液晶表示デバイス6及び反射板5は、光学素子の第1の透明層1の側に配置し、この光学素子からの出射光Roが、液晶表示デバイス6を透過して反射板5に達するようにする。この出射光Roは、再び液晶表示デバイス6を透過し、さらに、光学素子を透過して、拡散板7を透して、観察者に到達する。
本発明に係る光学素子の製造方法は、前述した本発明に係る光学素子を製造する方法である。この製造方法においては、まず、第1の透明層1となる透明基材の微細な凹凸が形成された面と平面状の型との間に、微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を挟む。そして、紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて、第2の透明層2とするものである。
ここで、平面状の型としては、ロール、または、平板からなる金型が好ましい。
または、本発明に係る光学素子の製造方法においては、まず、第1の透明層1となる透明基材の微細な凹凸が形成された面上に、微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料がコートされた透明フィルムを押し当てる。そして、紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて第2の透明層2とするものである。
ここで、紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料がにおける気泡やバリの発生を防ぐには、シート状の透明フィルムの上に、Tgが100°C以下の未硬化の紫外線硬化型樹脂材料をコートし、熱をかけながら透明基材に押し当てた後、紫外線によって硬化させる方法が好ましい。
以下、本発明に係る光学素子の製造方法の実施例について説明する。
図8は、本発明に係る光学素子の製造方法を説明する側面図である。
この光学素子の製造方法においては、まず、第1の透明層を形成する。
図8に示すように、この製造方法において使用する製造装置10においては、金型ロール11に、紫外線硬化型樹脂材料12を供給する供給ヘッド13が対向して配置されており、金型ロール11の回転方向下流には、メータリングロール14、ニップロール15、紫外線照射装置16、離型ロール17が、この順序で設けられている。
金型ロール11の周面には、格子形状が形成されており、紫外線硬化型樹脂材料12の表面に格子形状を転写するようになっている。
金型ロール11上の格子形状の形成は、ダイヤモンドバイトを用いて、精密加工機により溝加工を施すことにより行った。格子形状をなす溝の断面形状は三角形であり、前述の図3に示したa、b、c、α、βが、それぞれ、0.956μm、3.824μm、0μm、10.3°、36.0°となるように形成した。この金型ロール11は、真鍮により製作し、ダイヤモンドバイトによる溝加工後、速やかにクロム無電解メッキを行い、表面の酸化を防止し、光沢及び機械強度の保護を行った。
紫外線硬化型樹脂材料12としては、本実施例においては、「サンラットR201」(商品名:三洋化成工業株式会社製)を用いた。
製造時には、紫外線硬化型樹脂材料12を、樹脂材料タンク18から、圧力制御装置19及び供給ヘッド13を介して、金型ロール11に供給する。紫外線硬化型樹脂材料12の供給に際しては、紫外線硬化型樹脂材料12の供給圧力を圧力センサで検知しながら、圧力制御装置19で制御し、金型ロール11に塗布する圧力を調整した。
金型ロール11に塗布された紫外線硬化型樹脂材料12は、メータリングロール14により、膜厚を一定に調節される。メータリングロール14の近傍には、ドクターブレード20が設けられている。このドクターブレード20は、メータリングロール14に付着した樹脂材料を掻き取り、金型ロール11に塗布された紫外線硬化型樹脂材料12の均斉度を安定化させる。
メータリングロール14の下流にあるニップロール15と、金型ロール11との間には、透明ベースフィルム(透光フィルム)21を供給する。そして、この透明ベースフィルム21をニップロール15と金型ロール11とで挟み込むことにより、紫外線硬化型樹脂材料12に透明ベースフィルム21を密着させる。
紫外線硬化型樹脂材料12と透明ベースフィルム21とが密着した状態で、紫外線照射装置16に到達すると、紫外線照射装置16から発せられた紫外線により、紫外線硬化型樹脂材料12が硬化するとともに、透明ベースフィルム21に接着する。
このようにして紫外線硬化型樹脂材料12と透明ベースフィルム21とが一体化された第1の透明層となるフィルムシート22は、離型ロール17により、金型ロール11から剥離される。このようにして、長尺のフィルムシート22を連続的に得ることができる。
なお、本実施例における透明ベースフィルム21としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いたが、これに限らず、ポリカーボネートやアクリル樹脂材料、熱可塑性ウレタン等を用いることができる。
また、紫外線硬化型樹脂材料12としては、アクリル変性エポキシやアクリル変性ウレタン等の他の材料を選定することが可能である。
紫外線照射装置16の光源は、メタルハライドランプ(最大8Kw)を用い、フィルムシート22の送り速度は、3m/分とした。フィルムシート22の送り速度は、紫外線硬化型樹脂材料12の硬化特性、透明ベースフィルム21の光吸収特性により変化するが、さらに出力(ワット数)の高いメタルハライドランプを用いることにより、より速めることが可能である。
次に、第2の透明層を形成する。
すなわち、金型ロール11を、表面に何も加工されていない鏡面金型ロールに置き換える。また、紫外線硬化型樹脂材料12を、超微粒子無機酸化物を分散した第2の透明層となるコーティング材料に置き換える。この実施例では、酸化錫微粒子とアクリル系紫外線硬化型樹脂材料との混合物である「ES−3」(商品名:大日本塗料株式会社製)を用いた。
さらに、透明ベースフィルム21を前述の過程で得た第1の透明層となるフィルムシート22に置き換え、このフィルムシート22の微細な凹凸のある面に対して、前述と同様にして、コーティング材料の塗工を行った。
このようにして製造したフィルムシートを所定の寸法に裁断することにより、図1に示したような、光学素子が製造された。
なお、本発明に係る光学素子は、射出成形や、熱プレス工法によっても作製することができる。
本発明に係る光学素子の構成を示す断面図である。 本発明に係る光学素子における入射光の入射角θi、出射光の出射角θo、凹凸の周期d及び透明層の厚さtを示す断面図である。 本発明に係る光学素子における各透明層の界面の微細な凹凸の断面形状を示す断面図である。 本発明に係る光学素子を複数枚重ねた状態を示す斜視図である。 本発明に係る光学素子において、表面に拡散体を設けた状態を示す断面図である。 本発明に係る面光源装置であって、光学素子の片面側に反射板を配置した状態を示す断面図である。 本発明に係る面光源装置であって、光学素子と反射板との間に液晶表示デバイスを配置した状態を示す断面図である。 本発明に係る光学素子の製造方法を説明する側面図である。
符号の説明
1 第1の透明層
2 第2の透明層
3 界面
4 拡散体
5 反射板
6 液晶パネル
10 製造装置
11 金型ロール
12 紫外線硬化型樹脂材料
13 供給ヘッド
14 メータリングロール
15 ニップロール
16 紫外線照射装置
17 離型ロール
18 樹脂材料タンク
19 圧力制御装置
20 ドクターブレード
21 透明ベースフィルム
22 フィルムシート
Ri 入射光
Ro 出射光

Claims (21)

  1. 屈折率が0.1以上異なり、積層された第1及び第2の透明層を有し、
    前記第1及び第2の透明層の界面は、この界面に対する入射光の進行方向を制御するための微細な凹凸状となされており、この微細な凹凸が光を異方拡散させる特性を有し、
    前記第1及び第2の透明層のうちの屈折率の大きな第1の透明層の厚さは、0.1μm以上10μm以下であり、
    前記微細な凹凸は、直線状の突条が平行に配列された格子状に形成され、深さが2.8μm〜8μmであり、平均周期が4μm〜7μmであり、該凹凸の凸部分の断面形状が三角形、または、台形であり、該断面形状における対向する斜面部のなす角度が40°以上65°以下であり、第2透明層の界面と対向する面は空気層に面し、第2透明層の端面から光を入射し、界面の法線に対して60±15°で入射するようにしたときに、界面を透過した光のうち50%以上が界面に対して垂直な方向の±15°の範囲に出射され
    ことを特徴とする光学素子。
  2. 前記第1の透明層をなす材料は、硫黄を含む樹脂材料、芳香環を含む樹脂材料、または、長周期型の元素の周期表における3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族の元素のいずれかを含む有機金属ポリマ材料である
    ことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
  3. 前記第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、可視光帯域の入射光を分光させない特性となっている
    ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の光学素子。
  4. 前記第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、ホログラムである
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光学素子。
  5. 前記第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、入射光の進行方向を曲げる特性を有している
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の光学素子。
  6. 前記第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、入射光を集光させる特性を有している
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のいずれか一に記載の光学素子。
  7. 前記第1及び第2の透明層の界面における微細な凹凸は、前記界面に対して斜めに入射した入射光の少なくとも一部を、前記界面に垂直な方向に曲げる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のいずれか一に記載の光学素子。
  8. 前記各透明層をなす材料は、アクリル樹脂材料を含んでいる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の光学素子。
  9. 前記各透明層をなす材料は、ウレタンアクリレート樹脂材料を含んでいる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の光学素子。
  10. 前記各透明層をなす材料は、紫外線及び/又は熱によって硬化された樹脂材料を含んでいる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載の光学素子。
  11. 前記各透明層をなす材料は、カップリング剤、または、分散剤と、微粒子と、樹脂材料とを混合したものである
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一に記載の光学素子。
  12. 前記各透明層は、板状、または、フィルム状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一に記載の光学素子。
  13. 前記各透明層の界面に略々平行な方向にこの界面に入射した入射光が、この界面において、界面に対して略々垂直な方向に曲げられる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一に記載の光学素子。
  14. 前記第1の透明層は、前記界面における凹凸の深さが、この第1の透明層の厚さの半分以上となっている
    ことを特徴とする請求項2乃至請求項13のいずれか一に記載の光学素子。
  15. 前記第1及び/又は第2の透明層の表面部に、光束を拡散させる拡散体が配置されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一に記載の光学素子。
  16. 片面側に、光束を反射する反射板が配置されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一に記載の光学素子。
  17. 前記第1及び/又は第2の透明層の表面部に、無反射構造、または、無反射膜が形成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一に記載の光学素子。
  18. 前記第2の透明層は、射出成形により形成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一に記載の光学素子。
  19. 請求項2乃至請求項17のいずれか一に記載の光学素子を製造する方法であって、
    前記第1の透明層となる透明基材の微細な凹凸が形成された面と、平面状の型との間に、微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を挟み、
    前記紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて第2の透明層とする
    ことを特徴とする光学素子の製造方法。
  20. 請求項2乃至請求項19のいずれか一に記載の光学素子を製造する方法であって、
    前記第1の透明層となる透明基材の微細な凹凸が形成された面上に、微粒子、または、空孔を含む紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料がコートされた透明フィルムを押し当て、
    前記紫外線硬化型樹脂材料、または、熱硬化型樹脂材料を硬化させて第2の透明層とする
    ことを特徴とする光学素子の製造方法。
  21. 請求項12乃至請求項18のいずれか一に記載の光学素子と、
    前記光学素子の端面から光束を入射させる光源手段と
    を備えたことを特徴とする面光源装置。
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