JP4510244B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として携帯無線機で使用されるアンテナ装置に関し、特に、携帯無線機に内蔵され、人体に近接させて使用される場合でも良好な放射特性が得られるアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話等の移動無線機に対する需要が急激に高まっており、小型軽量で薄い無線機が求められている。そのため、従来は、アンテナとして固定式ヘリカルアンテナ、板状逆Fアンテナ等を用い、 小型無線機に使用する場合に邪魔にならない小型で携帯性のよいアンテナ系が実現されている。
【0003】
図19は従来の携帯電話用アンテナとして広く使用されている固定式ヘリカルアンテナの外観図であり、携帯電話本体20上に固定式ヘリカルアンテナエレメント21を配置することで、小型軽量なアンテナ系を実現している。
【0004】
また、図20は従来の携帯電話用の内蔵アンテナとして広く使用されている板状逆Fアンテナの構造図であり、携帯電話本体の中に内蔵可能で無線機地板上に近接して配置可能である。このアンテナは放射エレメント22が無線機地板23に平行に近接して配置され、、放射エレメント22の一部を接地点24に接地し、一部に給電点25から給電することで低背なアンテナを実現し、携帯電話本体からアンテナが飛び出ない携帯電話のデザインを可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図19の固定式ヘリカルアンテナの場合も、図20の板状逆Fアンテナの場合も、アンテナ素子だけでなく無線機地板上にも多くのア−ス電流が流れてしまい、そのため無線機を人体に近接させて使用するときには、手や頭部の影響を受けて利得が大きく劣化してしまうという問題がある。
【0006】
図21は、従来の固定式ヘリカルアンテナの電流分布図である。図21では無線機地板およびアンテナエレメントをワイヤ26で近似し、アンテナに給電した時にワイヤ26上に流れる電流の絶対値分布27を3次元的に表現している。この図からも明らかなようにヘリカルアンテナ上だけでなく無線機地板上にも多くのア−ス電流が流れている様子が分かる。
【0007】
また、図22は、従来の固定式ヘリカルアンテナの放射指向性を表わした特性図であるが、アンテナ上だけではなく無線機地板上にも大きなア−ス電流が流れた結果、θ成分が支配的になっており、結果として人が手に持って無線機を傾けて使用している状態では、基地局からの到来波の偏波と無線機アンテナの偏波が一致せずに受信性能が大きく低下してしまうという不具合が合った。
【0008】
さらにこれらのアンテナは小型化して無線機本体の内部に配置した場合に、周辺部品や無線機地板の影響を受けて狭帯域になるとともに利得が大きく劣化する不具合があった。
【0009】
本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、無線機地板上に流れる電流成分を低減させ、人体に近接させて使用した状態でも利得の低下が少ない平衡系のアンテナを実現すると共に、無線機地板上に近接して実装しても広帯域であり、さらに到来波に応じた放射指向性を形成できる、小型広帯域高利得なアンテナ装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の、携帯無線機本体内に内蔵されるアンテナ装置は、短辺対長辺の比が10以上である長方形のル−プアンテナエレメントを具備し、前記ル−プアンテナエレメントは、第1の周波数における1波長と略同一の外周囲長を有し、前記無線機地板に対して、平行にかつ前記波長に比べて十分小さい間隔で近接して配置され、さらに前記短辺が給電部側に近接するように折り返されている。
【0011】
このため、ル−プアンテナエレメント上に電流分布が集中し、無線機地板上に流れる電流成分を低らすことができ、人体の影響を低減できる。さらにアンテナアレメントを折り返すことで、無線機地板上に極めて近接して配置しているにもかかわらず、広帯域特性を持ちながら小型化することが出来る。
【0012】
また、ル−プアンテナエレメントの短辺の電流分布がゼロになるような構成とすることで、近接平行している電流成分同志で打ち消し合うこと無く高効率に動作可能であり、小型ながら高利得なアンテナ装置を実現することが出来る。
【0013】
また、ル−プアンテナエレメントが平衡給電線に接続されているために、安定してル−プアンテナエレメント上に電流分布を集中させることができる。
【0014】
また、ル−プアンテナエレメントに沿って、波長に比べて十分小さい間隔で、1つ以上の無給電エレメントが配置することで広帯域特性を持たせることが出来、広帯域で安定して受信することが出来る。
【0015】
また、無給電エレメントの共振周波数が第1の周波数と異なるように構成することによって、2共振あるいは3共振特性を持たせることが出来、複数の周波数やシステムにおいて安定して受信することが出来る。
【0016】
また、ル−プアンテナエレメントあるいは無給電エレメントの一部もしくは全体を板状に構成することで、さらに帯域が広がり、広帯域で安定して受信することが出来る。
【0017】
また、ル−プアンテナエレメントあるいは無給電エレメントは、樹脂、セラミック又はプリント基板の構造体上に形成することで、堅固で安定したアンテナ系を実現することが出来る。
【0018】
また、ル−プアンテナエレメント上に流れる電流と無線機地板上に流れる高周波電流の比率を変化させることで、使用環境や到来電波の変化に応じて最適な放射指向性を形成でき、高感度なアンテナ系を実現できる。高周波電流の比率を変化させる手段としては、平衡給電線から供給される高周波信号の間に、位相差をもたせる調整手段を設けることや、ル−プアンテナエレメントあるいは無給電エレメントを、給電部に対して非対称な構成とすることで、実現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図18を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明のアンテナ装置の第1の実施の形態を示している。図中、101は無線機地板、102は無線回路、103はル−プアンテナエレメントである。ル−プアンテナエレメント103の一端は無線回路102に接続されており、別の一端は無線機地板101に接地されている。このアンテナ装置は、無線機に内蔵して使用される。
【0021】
図1では、無線機地板101として0.77λ×0.23λ(λは第1の周波数における波長)の大きさの銅板を使用しているが、無線機のプリント基板上にパタ−ンを構成して無線機地板としてもよい。ル−プアンテナエレメント103は、長辺2W+2H−G、短辺Pの長方形を折り返した構成になっており、折り返した後のサイズは横幅W=0.233λ、縦幅P=0.0033λ、高さH=0.067λを持ち、無線機地板101に対して波長に比べて十分小さい間隔S=0.0067λで無線機地板101に平行に近接して配置されている。 線材には線径0.005λの銅線を使用しているが、帯状のパタ−ンで構成しても良い。
【0022】
ル−プアンテナエレメント103の両端部は横幅Wの幅で無線機地板101に対して垂直方向に折り返しており、高さH=0.067λの所でさらに内側に折り返されて、給電部側に近接している。図1では、両端で折り返されたル−プアンテナエレメント103が間隙G=0.067λまで近接しているが、さらにもう一度、給電部側に折り曲げても良い。
【0023】
この折り曲げたル−プアンテナの外周囲長はL=4W+4H−2G+2P=1.07λと約1波長の長さになっている。また、図のル−プアンテナエレメント103を展開した元の長方形の短辺と長辺の比は(2W+2H−G )/P=161.5となっている。
【0024】
図2は、図1のアンテナ装置の動作原理を説明するための図である。給電部から供給される電流は点Aから点Lに向かって流れるが、全外周囲長が約1波長であるため電流分布の節と腹が4分の1波長毎に交互に発生し、節の部分で位相が反転する。図2では、長方形の短辺であるC−D、I−J部分が節に相当するため電流分布がほぼゼロに等しくなり、L−AとF−Gの部分が腹に相当するため電流分布がほぼ最大となる。また位相関係はD−IとJ−Cで逆相になるため、近接平行している各経路では全て逆相同振幅となっている。このため近接平行している電流成分同志で打ち消し合うこと無く、高効率に動作可能である。
【0025】
なお、C−D、I−J部分が節に相当する条件としては長方形の短辺の長さが長辺の長さに比べて小さい条件が必要であり、短辺対長辺の比が10以上になるように構成することで、こうした電流分布を実現している。
【0026】
また、A−BとE−Fの部分及びG−HとK−Lの部分では互いに逆相同振幅の電流分布になっている為に、遠方界で見た時にはこの部分の放射電界成分は打ち消しあってゼロになる。しかしながらB−C、D−E、H−I、J−Kの部分とL−A、F−Gの部分では逆相であっても振幅の分布が異なり、特にL−A、F−Gの中央部分の電流成分が大きいために、この部分は有効に放射性分として動作する。
【0027】
図2では給電部を平衡給電型として示しているが、片側接地で片側給電の不平衡給電型であっても接地点と給電点が近接し、ル−プアンテナエレメントを対称に構成していれば同様の電流分布で動作するために、接地点から無線機地板に誘起される電流を低減できる。
【0028】
図3は、図1の構成のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図であり、(a)はスミスチャ−ト、(b)の縦軸はVSWR、横軸は周波数を表わしている。一般的に地板に近接したル−プアンテナは狭帯域であるが、この構成のル−プアンテナの場合には共振周波数が所望の受信周波数である2110MHZ〜2170MHZでVSWR<2.5が確保されており、広帯域であることがわかる。
【0029】
図4は、図1の構成のアンテナ装置の放射指向性を示す特性図である。 図4(a)、(b)、(c)の放射指向性パタ−ンにおいて、実線は電界のθ成分(Eθ)、点線は電界のφ成分(Eφ)である。図4に示す座標系において−X軸方向に電界のφ成分が放射され、通話状態で人体と反対方向により多くの電磁波が放射する指向性パタ−ンとなっており、人体による電磁波の吸収が低減できる。図22に示した従来のヘリカルアンテナの放射指向性ではいずれの方向でもθ成分が支配的であり、傾けた時に基地局の偏波と合わなくなってしまうのに比べ、図 4(b)においてはY−Z面で60度傾けて使用した通話状態時ではθ成分が垂直偏波に近くなるため、基地局からの到来波の主偏波であるところの垂直偏波を受信しやすくなり、実電波環境での受信性能が向上する。
【0030】
図5は、第1の実施の形態のアンテナ装置の電流分布図である。図5では無線機地板およびアンテナエレメントをワイヤ10で近似し、アンテナに給電した時にワイヤ10上に流れる電流の絶対値分布11を3次元的に表現している。ル−プアンテナエレメント103上に平衡電流が流れているため、無線機地板上には大きなア−ス電流が流れていないことが分かる。この電流分布の様子は図21に示した従来の固定式ヘリカルアンテナの電流分布と比較しても、無線機地板上に流れる電流が非常に少ない様子が分かる。図21のように無線機地板上の電流が多いと、地板もアンテナの一部として動作してしまう為、人が手に持った時に電流分布が大きく変化し、アンテナインピ−ダンスの変化や放射効率の低下を招いてしまうが、図5のように無線機地板上の電流を少なくすることでこうした人体の影響を低減することができる。また、無線機地板上の電流は無線機を人体頭部に近接させた時の局所吸収電力(SAR)の発生原因になるが、本発明のアンテナ装置はSARの低減も図れる。
【0031】
図6は、ル−プアンテナエレメント103の複数の構成例を模式的に表わしたものである。図6(a)は、図1に示したル−プアンテナエレメント103と同様に無線機地板101に平行にル−プ開口面を持ち、両端部を給電部に向かって2回折り曲げた構成であり、折り返すことで広帯域特性を持ちながら小型化することが出来る。図6(b)は、無線機地板101に垂直にル−プ開口面を持ち、両端部を無線機地板101に対して給電部に向かって2回折り曲げた構成であり、広帯域特性を持ちながら幅方向で薄型化することが出来る。図6(c)は、ル−プアンテナエレメント103の各折り曲げ部分を滑らかに折り曲げた構成であり、電流がスム−ズに流れる為に効率低下を抑える事が出来る。 なお、滑らかに折り曲げる部位はいずれの場所であっても良い。図6(d)は、ル−プアンテナエレメント103の先端部でさらに給電部に向かって折り曲げ、両端部を計3回折り曲げた構成であり、さらに小型化することが出来る。図6(e)は、ル−プアンテナエレメント103を1回目の折り曲げの後にクランク状に折り曲げ、両端部を計3回折り曲げた構成であり、さらに小型化することが出来る。図6(f)は、ル−プアンテナエレメント103を板状に構成したものであり、板状に構成することで、さらに帯域が広がり、広帯域で安定して受信することが出来る。なお、板状に構成する部分は一部であっても良い。図6(g)は、ル−プアンテナエレメント103を、樹脂やセラミックやプリント基板などの構造体107の上にパタ−ン化して構成したものであり、構造上堅固であるとともに高精度に安定して制作可能である。さらに無線機地板101をプリント基板で構成すれば表面実装によって簡便に組み立てることができる。
【0032】
このようにル−プアンテナエレメント103の周囲長を約1波長の長さとすることで無線機地板101上を流れるア−ス電流を低減できる。またアンテナを無線機地板101に近接させることにより、無線機を薄型形状に成形できると共に、無線機のプリント基板上にアンテナを実装することも可能になるとともに地板方向の放射成分を低減できる。さらに一般的に金属板に近接させたル−プアンテナでは低インピ−ダンスかつ狭帯域になるが、ル−プアンテナエレメント103の先端部分を折り曲げて無線機地板101から遠ざける構造とすることで広帯域化が図れる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明のアンテナ装置の第2の実施の形態を示している。このアンテナ装置は、ル−プアンテナエレメント103に平衡給電することで安定してル−プアンテナエレメント上に電流分布を集中させるようにしたものである。図7に示すように、ル−プアンテナエレメント103への給電を無線回路102からバラン105および平衡給電線104を経由して平衡系で行なっており、その他の構成は第1の実施の形態と変わりがない。
【0034】
バラン105は、無線回路102が不平衡系の給電線に接続されている場合に、不平衡と平衡系とを仲介するために置かれており、無線回路102の出力が元々平衡系で構成されている場合には、バラン105を経由しないで、無線回路102とル−プアンテナエレメント103とを給電線104で直接接続することができる。図中のバラン105は、1対4のインピ−ダンス変換器を使用しており、無線回路102の出力インピ−ダンスが50オ−ムであるのに対し、平衡給電線104およびル−プアンテナエレメント103の入力インピ−ダンスは200オ−ムとなっている。200オ−ムのル−プアンテナを1対4のインピ−ダンス変換をすることにより、より広帯域に動作する。また、ル−プアンテナエレメント103に平衡給電することにより、安定に平衡動作させることができる。
【0035】
図8は、図7の構成のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図であり、(a)はスミスチャ−ト、(b)の縦軸はVSWR、横軸は周波数を表わしている。図中のインピ−ダンスはバラン105を使用した場合であるために200オ−ムで正規化して表わしている。図3のインピ−ダンス特性に比べてさらに広帯域であることがわかる。このアンテナ装置の放射指向性、電流分布等の基本特性は第1の実施の形態と変わりがない。
【0036】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明のアンテナ装置の第3の実施の形態を示している。このアンテナ装置は、さらに無給電エレメント106を1つ以上設けることにより、さらなる広帯域化を図ったものである。図9に示すように、ル−プアンテナエレメント103に沿って、波長に比べて十分小さい間隔で無給電エレメント106を配置しており、その他の構成は第2の実施の形態と変わりがない。
【0037】
無給電エレメント106は、横幅W'=0.233λ、縦幅P'=0.0132λを持ち、波長に比べて十分小さい間隔S'=0.0067λで、無線機地板101に近接してほぼ平行するように配置されている。無給電エレメント106の両端部は、無線機地板101に対して垂直方向に折り返しており、高さH1'=0.067λの部分でさらに内側に折り返されている。図9では両端で折り返されたル−プアンテナエレメント103が間隙G'=0.067λまで近接し、さらにもう1度内側にH2'=0.033λだけ折り曲げている。この折り曲げた無給電エレメント106の全長は、L'=2W'+2H1'−G'+2H2'=0.599λで、第1の周波数に対しては0.6波長の長さになっているが、複共振させる第2の周波数に対してはほぼ0.5波長に相当する長さとなっている。
【0038】
このように無給電エレメント106は、ル−プアンテナエレメント103の第1の周波数と異なる第2の周波数に相当する自己共振特性を持っており、ル−プアンテナエレメント103と近接させる事により電磁的に結合し、アンテナ装置を複数の帯域で動作可能とする。
【0039】
無給電エレメント106の配置する場所として、ル−プアンテナエレメント103の電流が最大となる中心付近に無給電エレメント106の中心が来るようにすると結合度が最大になる。
【0040】
図9では、無給電エレメント106をル−プアンテナエレメント103に対して距離DI'=0.0132λだけ離して平行に配置しているが、距離や位置関係に応じて電磁的な結合度を調整できるため、広帯域特性あるいは複共振特性を任意に作り出すことが可能である。
【0041】
また、図9のアンテナ装置では、バラン105を用いた平衡給電線104によって給電しているが、不平衡給電であってもアンテナ上に平衡な電流分布が構成されていれば、同様な効果が得られる。
【0042】
図10は、図9の構成のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図であり、(a)はスミスチャ−ト、(b)の縦軸はVSWR、横軸は周波数を表わしている。図中のインピ−ダンスはバラン105を使用した場合であるために200オ−ムで正規化して表わしている。このアンテナ装置では、第1の周波数帯域である2110MHZ〜2170MHZ、および第2の周波数帯域である1920MHZ〜1980MHZのいずれにおいてもVSWR<2.5が確保されており、複数の帯域で動作している様子がわかる。
【0043】
図11は、無給電エレメント106の構成例を示したものである。図11(a)は、無給電エレメント106をワイヤ−状の導体で構成し、無線機地板101に対して垂直および平行に2回折り曲げた構成であり、無給電エレメント106をル−プアンテナエレメント103と同様な方向に折り返すことで電磁的な結合度を保ちながら小型化することが出来る。 図11(b)は、図11(a)の無給電エレメント106をさらに内側に折り曲げ、両端部を計3回折り曲げた構成であり、図11(a)以上に小型化することが出来る。図11(c)は、無給電エレメント106の各折り曲げ部分を滑らかに折り曲げた構成であり、電流がスム−ズに流れる為に効率低下を抑える事が出来る。 なお、滑らかに折り曲げる部位はいずれの場所であっても良い。図11(d)から図11(f)は、図11(a)および図11(b)に示した無給電エレメント106を板状に構成したものであり、板状に構成することでさらに帯域が広がり、広帯域で安定して受信することが出来る。
【0044】
また、これら無給電エレメント106は、図6(g)に示した樹脂やセラミックやプリント基板などの構造体107の上にル−プアンテナエレメント103と一体化してパタ−ン化すれば堅固に制作できるとともに、ル−プアンテナエレメント103と無給電エレメント106との位置関係を高精度に保つことが出来る為に、安定して制作できる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図12は、本発明のアンテナ装置の第4の実施の形態を示している。このアンテナ装置は、平衡給電線から供給される起電圧の間に位相差をもたせたことで、ル−プアンテナエレメント103および無線機地板101上に流れる電流を変化させ、使用環境や到来電波に合わせた放射指向性を形成できるようにしたものである。図12に示すように、平衡給電線104とバラン105の間に位相回路108を配置しており、その他の構成は第2の実施の形態と変わりがない。
【0046】
位相回路108はル−プアンテナエレメント103へ給電する平衡線路間の起電圧の位相差を変化させたものであり、固定値あるいは調整回路を設けることにより、ル−プアンテナエレメント103上の電流分布を平衡からずらす機能を持つ。この位相回路108はバラン105の中に設けても良く、予め所望の周波数で任意の位相差をもたせたバランを使用することで同様な効果を得られる。
【0047】
図13は、図12の構成のアンテナ装置の放射指向性を示す特性図である。図13(a)、(b)、(c)の放射指向性パタ−ンにおいて、実線は電界のθ成分(Eθ)、点線は電界のφ成分(Eφ)である。図13は、位相回路108を動作させた場合の放射指向性パタ−ンであり、図4とは明らかに異なる指向性に変化しており、むしろ図22に示す従来のヘリカルアンテナの放射指向性に近い放射指向性パタ−ンとなっている。これは位相回路108の位相差を多くして、平衡状態から不平衡状態に近づけていくにつれて無線機地板101上にア−ス電流が流れるようになるため、不平衡系アンテナとして動作するためである。
【0048】
このように位相回路108を調整することにより、使用環境や到来電波に応じて、平衡状態と不平衡状態を切り替える、あるいはその間の状態を持つことが可能になり、1つのアンテナ系で複数の放射指向性パタ−ンを形成することが出来る。そのため本発明のアンテナ装置の放射指向性を変化できる機能を利用したダイバ−シチ受信方式や、指向性制御受信方式を行なうことで、高感度なアンテナ系を実現できる。
【0049】
図14は、位相回路108の構成例を示したものである。図14(a)は、位相回路にマイクロストリップ線路109を使用し、PINダイオ−ド110をONした時には平衡状態、OFFした時には不平衡状態にすることが可能であり、2つの放射指向性を切替え可能である。図14(b)は、位相回路にキャパシタ110を使用し、PINダイオ−ド110をONした時には不平衡状態、OFFした時には平衡状態にすることが可能である。また、図14(b)においてPINダイオ−ド110の代わりにバリキャップダイオ−ドを使用してもよく、このことで位相差連続的に変化させることが可能となり、連続的に放射指向性を切替え可能である。
【0050】
(第5の実施の形態)
図15は、本発明のアンテナ装置の第5の実施の形態を示している。このアンテナ装置は、ル−プアンテナエレメントあるいは無給電エレメントを、給電部に対して非対称な構成とし、意図的に無線機地板101上の電流成分を多くしたものである。図15に示すように、ル−プアンテナエレメント103の開口面の片側を先端部分からT=0.03λだけ塞いでおり、その他の構成は第3の実施の形態と変わりがない。
【0051】
これにより、ル−プアンテナエレメント103によって共振している第1の周波数帯では、無線機地板101上に不平衡電流が流れ、放射指向性パタ−ンにこの電流による成分が増加する。しかしながら無給電エレメント106は給電点に対して対称に配置されている為、無給電エレメント106によって共振している第2の周波数帯においては平衡動作であるため無線機地板101上には電流が流れず、放射指向性パタ−ンは第1の実施の形態と変わりがない。ル−プアンテナエレメント103を非対称に構成する手段としては開口面の一部を塞ぐ他にも、給電部から折り返し端までの左右の長さを変える、給電部の位置を中心からずらす、部分的に幅Pや高さHを変える、開口面の一部をダイオ−ドなどでショ−トするなどの手段が考えられ、いずれも同様な効果が得られる。また、無給電エレメント106を非対称に構成する手段としてはル−プアンテナエレメント103との位置関係を非対称にする、左右の長さを変える、等の手段が考えられ、この場合には無給電エレメント106によって生じる第2の周波数帯で不平衡動作し、放射指向性パタ−ンが変化する。
【0052】
図16は、図15の構成のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図であり、(a)はスミスチャ−ト、(b)の縦軸はVSWR、横軸は周波数を表わしている。図10のインピ−ダンス特性図と比較して若干狭帯域になっているものの、第2の周波数帯域である1920MHZ〜1980MHZおよび第1の周波数帯域である2110MHZ〜2170MHZのいずれにおいてもVSWR<2.5が確保されており、複数の帯域で動作している様子が分かる。
【0053】
図17及び図18は、図16の構成のアンテナ装置の放射指向性を示す特性図である。図17は、第1の周波数帯域の放射指向性パタ−ン、図18は、第2の周波数帯域の放射指向性パタ−ンを示している。図18(a2)(b2)(c2)においては、図4に示した第1の実施の形態のアンテナ装置の放射指向性と同じく、アンテナ装置が平衡動作した場合の放射指向性パタ−ンとなっているが、図17(c1)のX−Z面ではθ成分(Eθ)が増加しており、やや不平衡動作している様子が分かる。図17(c1)のX−Z面でθ成分(Eθ)が増加した分、φ成分(Eφ)は減少しており、ル−プアンテナエレメント103および無給電エレメント106上の電流が減少してこうした指向性になったことが分かる。このようにアンテナ装置の一部を非対称な構造とすることで、平衡系アンテナと不平衡系アンテナを共存でき、使用環境や到来電波の変化や使用周波数帯の違いに応じて最適な放射指向性を形成できるため、高感度なアンテナ系を実現できる。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のアンテナ装置は、内蔵された無線機の地板上に流れる電流成分を低らすことで、無線機を人体に近接して使用する場合の利得の低下を抑えることができる。また、折り返し構造や無給電エレメントを配置したことにより一般的に狭帯域な平衡系アンテナを広帯域で使用できるようになる。さらに平衡系と不平衡系を切り替える機能を付加することにより、電波環境や使用環境に応じた放射指向性パタ−ンを構成できる。
【0055】
このため人体による特性劣化が少なく、広帯域な無線通信システムでも使用可能な、小型高利得広帯域アンテナ装置が実現でき、高品位で安定した移動通信を可能とする効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンテナ装置の第1の実施の形態を示す図
【図2】図1のアンテナ装置の動作原理を説明する図
【図3】図1のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図
【図4】図1のアンテナ装置の放射指向性を示す特性図
【図5】図1のアンテナ装置の電流分布図
【図6】ル−プアンテナエレメントの構成例
【図7】本発明のアンテナ装置の第2の実施の形態を示す図
【図8】図7のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図
【図9】本発明のアンテナ装置の第3の実施の形態を示す図
【図10】図9のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図
【図11】無給電エレメントの構成例
【図12】本発明のアンテナ装置の第4の実施の形態を示す図
【図13】図12のアンテナ装置の放射指向性を示す特性図
【図14】位相回路の構成例
【図15】本発明のアンテナ装置の第5の実施の形態を示す図
【図16】図15のアンテナ装置のインピ−ダンス特性図
【図17】図15のアンテナ装置の第1の周波数帯域における放射指向性を示す特性図
【図18】図15のアンテナ装置の第2の周波数帯域における放射指向性を示す特性図
【図19】従来の固定式ヘリカルアンテナを備える無線機の斜視図
【図20】従来の板状逆Fアンテナを示す構成図。
【図21】従来の固定式ヘリカルアンテナの電流分布図
【図22】従来の固定式ヘリカルアンテナの放射指向性を示す特性図
【符号の説明】
101・・・無線機地板
102・・・無線回路
103・・・ル−プアンテナエレメント
104・・・平衡給電線
105・・・バラン
106・・・無給電エレメント
107・・・構造体
108・・・位相回路
109・・・マイクロストリップ線路
110・・・PINダイオ−ド
111・・・キャパシタ

Claims (9)

  1. 携帯無線機本体内に内蔵されるアンテナ装置であって、
    短辺対長辺の比が10以上である長方形のループアンテナエレメントを具備し、
    前記ループアンテナエレメントは、第1の周波数における1波長と略同一の外周囲長を有し、無線機地板の略端部に配置され、前記無線機地板に対して、平行に、かつ、少なくとも前記第1の周波数における0.0067波長の間隔で配置され、
    前記ループアンテナエレメントの両端部は、前記無線機地板に対して、垂直方向に折り返され、少なくとも前記第1の周波数における0.067波長のところで、さらに前記短辺が給電部側に近接するように折り返されており、
    前記ループアンテナエレメントのうち、前記無線機地板に平行に近接して配置された部分の電流分布がほぼ最大であり、前記短辺部分の電流分布がほぼゼロであることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 請求項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメントが平衡給電線に接続されているアンテナ装置。
  3. 請求項1または2のいずれか1項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメントに沿って、前記波長に比べて十分小さい間隔で、1つ以上の無給電エレメントが配置されているアンテナ装置。
  4. 請求項記載のアンテナ装置であって、
    前記無給電エレメントの共振周波数が前記第1の周波数と異なるアンテナ装置。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメントあるいは前記無給電エレメントの一部もしくは全体が板状であるアンテナ装置。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメントあるいは前記無給電エレメントは、樹脂、セラミック又はプリント基板の構造体上に形成されるアンテナ装置。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメント上に流れる電流と前記無線機地板上に流れる高周波電流の比率を変化させる機能を有するアンテナ装置。
  8. 請求項記載のアンテナ装置であって、
    前記アンテナエレメントは、平衡給電線に接続され、
    前記平衡給電線と前記アンテナエレメントの間に、位相差をもたせる調整手段を有するアンテナ装置。
  9. 請求項記載のアンテナ装置であって、
    前記ループアンテナエレメントあるいは前記無給電エレメントは、前記給電部に対して非対称であるアンテナ装置。
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