JP4504629B2 - 樹脂微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真球度が高く、粒子径の揃った樹脂微粒子を容易に得ることができる樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂微粒子は、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤をはじめ、クロマトグラフィー用充填剤や免疫診断試薬用担体等の用途に広く利用されている。とりわけ近年では、液晶パネル用のスペーサーや導電性微粒子の基材粒子等のIT分野での用途も拡大している。このような液晶パネル用のスペーサーや導電性微粒子の基材粒子等のIT分野等に用いる樹脂微粒子には、球形でかつ粒子径分布の狭いことが求められている。
【0003】
従来、樹脂微粒子を作製する方法としては、粉砕機等を用いて物理的に粉砕する方法が用いられていた。この方法によれば、多くの樹脂について極めて低コストかつ容易に樹脂微粒子を得ることができる。しかしながら、この方法では、得られる樹脂微粒子の形状は不定形であり、粒子径も大きく、粒子径分布の狭いものを得るには分級等の作業を必要とし、更に得られた樹脂微粒子の強度も弱くなる傾向があるという問題点があった。
【0004】
これに対して、乳化重合、分散重合、シード重合、懸濁重合等の重合方法により樹脂微粒子を作製する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、予め所望の大きさの液滴を含むモノマー分散液を作製し、次いでこの分散液を重合槽に導入して通常の攪拌下に重合を行うことによって、得られる樹脂微粒子の粒子径や粒度分布を制御する方法が提案されている。この方法によれば、球形であり、かつ、粒子径分布の狭い樹脂微粒子を作製することができる。しかしながら、これらの方法は、これらの重合方法で重合できる樹脂についてしか適用できないことに加え、目的とする粒子径の樹脂微粒子を作製するには重合条件等を極めて厳格に調整する必要があるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−131603号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、真球度が高く、粒子径の揃った樹脂微粒子を容易に得ることができる樹脂微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂と、常温常圧では前記樹脂を溶解しない流体との混合物を加熱及び/又は加圧して、前記流体の少なくとも一成分を超臨界状態又は亜臨界状態にする工程1と、前記流体を降温して解圧する工程2とを有する樹脂微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂と、常温常圧では該樹脂を溶解しない流体との混合物を加熱及び/又は加圧して流体の少なくとも一成分を超臨界状態又は亜臨界状態にし、その後降温して解圧することにより、真球度が高く粒子径の揃った樹脂微粒子が流体中に懸濁した樹脂微粒子懸濁液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
超臨界状態又は亜臨界状態にある流体は気体の有する拡散性と液体の有する溶解性とを併せ持つ。従って、常温常圧では樹脂に対して貧溶媒であっても超臨界状態又は亜臨界状態にすることにより良溶媒となり、樹脂を溶解、分散することができる。その後、降温、解圧すれば、再び流体は貧溶媒となることから、溶解していた樹脂が析出する。超臨界状態又は亜臨界状態にある流体中では樹脂は極めて高い分散状態にあったことから、析出してくる樹脂は極めて小さく、また、その表面張力によってほぼ完全な球形になるものと考えられる。
【0009】
なお、本明細書において、超臨界流体とは、臨界圧力(以下、Pcともいう)以上、かつ臨界温度(以下、Tcともいう)以上の条件の流体を意味する。また、亜臨界流体とは、超臨界状態以外の状態であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.5<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.5<P/Pcかつ0.5<T/Tc<1.0の条件の流体を意味する。上記亜臨界流体の好ましい圧力、温度の範囲は、0.6<P/Pc<1.0かつ0.6<T/Tc、又は、0.6<P/Pcかつ0.6<T/Tc<1.0である。ただし、流体が水である場合には、亜臨界流体となる温度、圧力の範囲は、0.5<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.5<P/Pcかつ0.5<T/Tc<1.0である。なお、ここで温度は摂氏を表すが、Tc又はTのいずれかが摂氏ではマイナスである場合には、上記亜臨界状態を表す式はこの限りではない。
【0010】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、まず、樹脂と常温常圧では該樹脂が熔解しない流体とを混合する。
本発明の樹脂微粒子の製造方法を適用できる樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;脂環式炭化水素樹脂;熱可塑性ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリエステルイミド樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。
また、例えば、エポキシ樹脂、硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、メラニン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等の硬化性樹脂等も用いることができる。
【0011】
本発明の樹脂微粒子の製造方法において樹脂微粒子を製造するにあたっては、上記樹脂の形状としては比表面積(単位体積あたりの表面積)を大きくした方が好ましい。比表面積を大きくすることで流体と樹脂との接触を高効率で行うことができ、処理時間を短縮できる。処理時間を短縮することで、エネルギー効率を高め、かつ、樹脂の分解や劣化を抑制することができる。比表面積を大きくする方法としては特に限定されないが、例えば、直径1〜5mm程度の粉体状の樹脂を用いる方法、予め1mm以下のフィルムに成形された樹脂を用いる方法等が挙げられる。
【0012】
上記流体としては、常温常圧では上記樹脂を溶解しないものであれば特に限定されないが、水やアルコール等の有機媒体等の常温常圧で液体であるものであってもよいし、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の常温常圧で気体であるものであってもよいし、また、これらの混合流体であってもよい。ただし、常温常圧では液体であるものを少なくとも1種含有することが好ましい。上記流体が常温常圧で気体であるもののみからなる場合には、流体中に樹脂を溶解させるために極めて高い圧力や温度を要する場合がある。
なお、上記流体として混合流体を用いる場合には、混合流体を構成する流体の少なくとも1成分が超臨界状態又は亜臨界状態になればよい。
【0013】
上記常温常圧で液体である流体としては水及び/又はアルコールが好ましい。水は使いやすい媒体であるうえ、安価であるので経済的であり、環境に与える影響の点でも好ましい。また、メタノール等のアルコールも、同様の理由により好ましい。更に、2級アルコールであるイソプロパノールを用いれば、加水分解性樹脂の加水分解を抑制することができる。
また、常温常圧で樹脂を溶解しない限りにおいて、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ブテン等の飽和、不飽和、直鎖、分岐、環状飽和炭化水素;トルエン、ベンゼン、スチレン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶剤;アセトン、イソブチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤;イソ吉草酸、酢酸等のカルボン酸系化合物;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;ヘキサメチレンジアミン等のアミン系有機溶剤;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル系有機溶剤;ジメチルスルホキシド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等も用いることができる。これらの有機溶媒は、ハロゲン化等によりその一部又は全部が変性されていても構わない。
【0014】
上記樹脂と流体とは、上述の条件を満たす範囲で最適な組み合わせを選択する。例えば、樹脂がポリエチレンテレフタレートである場合には、液体流体としてはメタノールが好適であり、樹脂がポリメタクリル酸メチルである場合には、液体流体としては水が好適であり、樹脂がポリオレフィン樹脂である場合には、液体流体としては水とアルコールとの混合流体が好適である。
【0015】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、上記樹脂と流体との混合物を加熱及び/又は加圧して上記流体を超臨界状態又は亜臨界流体にする。上記流体が混合流体である場合には、少なくとも一成分が超臨界状態又は亜臨界流体になればよい。例えば、水は約374℃以上の温度かつ約22MPa以上の圧力により、メタノールは約240℃以上の温度かつ約8MPa以上の圧力により超臨界状態になることが知られている。
なお、上記混合物を耐圧容器に密封すれば、加熱することにより容易に超臨界状態又は亜臨界状態を達成することができる。上記耐熱容器としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、オートクレーブ等を用いることができる。
【0016】
超臨界状態又は亜臨界状態は極めて活性の高い環境であり、化学反応が非常に促進されることから、長時間樹脂を超臨界状態に置くとエステル化、アセタール化等の反応が起こったり、分解反応が起こったりすることがある。従って、超臨界状態又は亜臨界状態に置く時間は樹脂が反応しない程度の短い時間内とすることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートとメタノールとの組み合わせでは、250℃5分以内とすることが好ましい。
【0017】
また、超臨界状態又は亜臨界状態において上記樹脂と流体との混合物を攪拌することが好ましい。攪拌し剪断力を与えることにより上記樹脂が流体中により均一に拡散し、得られる樹脂微粒子の粒子径をより均一にするとこができる。
上記攪拌の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、オートクレーブ用の撹拌モーターを用いる方法や、予め超臨界状態又は亜臨界状態においても安定な硬質球(例えば、鋼鉄製ボール等)を少なくとも1つ耐圧容器中に入れておき超臨界状態又は亜臨界状態で耐圧容器を振とうさせる方法等が挙げられる。
【0018】
所定の時間超臨界状態又は亜臨界状態を保った後には、上記流体を速やかに降温して解圧することが好ましい。上述のように超臨界状態又は亜臨界状態中に樹脂を長時間おくと、樹脂が反応してしまうことがある。所定の時間が経過した後には密封状態のまま急冷して常温常圧に戻すことにより、樹脂の反応を防止することができる。急冷する方法としては特に限定されず、例えば、上記耐圧容器を空冷又は水冷する方法等が挙げられる。
以上の工程により、樹脂微粒子の懸濁液が得られる。得られた懸濁液中の樹脂微粒子は、ほぼ完全な球状であり、また、粒子径分布も極めて狭いものである。
【0019】
上記樹脂微粒子懸濁液から樹脂微粒子を回収する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。ただし、樹脂と流体との組み合わせによっては得られる樹脂微粒子懸濁液にべたつき感があることがあり、この場合には、樹脂微粒子を回収する際に樹脂微粒子同士が合着しないようにする必要がある。例えば、上記樹脂微粒子懸濁液を落下させながら、空中で熱風又は遠赤外線等の熱源を用いて熱乾燥させる方法や、いったん非極性溶媒で洗浄した後、乾燥する方法等が好適である。図1に上記樹脂微粒子懸濁液を落下させながら、空中で熱乾燥させる装置の1例を示した。
【0020】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、樹脂と常温常圧では該樹脂を溶解しない流体との混合物を加熱及び/又は加圧して流体の少なくとも一成分を超臨界状態又は亜臨界状態にし、その後降温して解圧することにより、ほぼ完全に球状で、かつ、粒子径分布の狭い樹脂微粒子の懸濁液を得ることができる。また、本発明では密封した耐圧容器を用いることにより、一連の工程を温度のみをコントロールすることで行うことができる。
更に、製造条件を整えれば、樹脂の熱分解がほとんど起こることはないことから、高分子量の樹脂を原料として用いれば、ほぼそのままの高分子量の樹脂微粒子を得ることができる。また、原料樹脂の分子量にバラツキがある場合であっても、超臨界状態又は亜臨界状態にするまでの過程で流体に溶解した比較的低分子量の樹脂を除く操作を行えば、高分子量でかつ分子量分布の狭い樹脂微粒子を得ることもできる。
本発明の樹脂微粒子の製造方法によれは、ほとんどの樹脂について極めて容易に粒子径の揃った球形の樹脂微粒子を得ることができる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
内容積10mLの耐圧容器にメタノール4gと直径約3mmのペレット状のポリエチレンテレフタレート0.2gを入れ密封した。なお、耐熱容器中には予めSUS製のボールを1個入れておいた。耐圧容器を振動させて、メタノールとポリエチレンテレフタレートとを混合した後、オイルバス中で250℃になるまで加熱し、メタノールを超臨界状態にした。この状態で耐圧容器を振動させ、5分後に急冷して常温常圧に戻した。
これにより、メタノール中にポリエチレンテレフタレートの微粒子が懸濁した樹脂微粒子懸濁液が得られた。
得られた樹脂微粒子懸濁液中の樹脂微粒子を観察したところ、ほぼ完全に球形であり、平均粒子径は8.6μmであった。図2に得られた樹脂微粒子の粒子径の分布を示した。
【0023】
(実施例2)
内容積10mLの耐圧容器に水4gと直径約3mmのペレット状のポリメタクリル酸メチル0.2gを入れ密封した。なお、耐厚容器中には予めSUS製のボールを1個入れておいた。耐圧容器を振動させて、水とポリメタクリル酸メチルとを混合した後、サンドバス中で400℃になるまで加熱し、水を超臨界状態にした。5分後に急冷して常温常圧に戻した。
これにより、水中にポリメタクリル酸メチルの微粒子が懸濁した樹脂微粒子懸濁液が得られた。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、真球度が高く、粒子径の揃った樹脂微粒子を容易に得ることができる樹脂微粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂微粒子懸濁液を落下させながら、空中で熱乾燥させる装置の1例を示す模式図である。
【図2】実施例1で得られた樹脂微粒子の粒子径の分布を示す図である。
Claims (3)
- 樹脂と、常温常圧では前記樹脂を溶解しない流体との混合物を加熱及び/又は加圧して、前記流体の少なくとも一成分を超臨界状態又は亜臨界状態にし、上記樹脂と流体との混合物を攪拌する工程1と、
前記流体を降温して解圧する工程2とを有する樹脂微粒子の製造方法であって、
前記流体は常温常圧で液体であるものを少なくとも1種含有し、
前記工程2において、急冷して常温常圧に戻すことにより、前記樹脂を前記常温常圧で液体である流体中に懸濁させる
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。 - 樹脂と、常温常圧では前記樹脂を溶解しない流体との混合物を耐圧容器に密封し、前記耐圧容器を加熱することにより前記流体の少なくとも一成分を超臨界状態又は亜臨界状態にし、上記樹脂と流体との混合物を攪拌する工程1と、
前記耐圧容器を急冷して解圧する工程2とを有する樹脂微粒子の製造方法であって、
前記流体は常温常圧で液体であるものを少なくとも1種含有し、
前記工程2において、前記耐圧容器を密封状態のまま急冷して常温常圧に戻すことにより、前記樹脂を前記常温常圧で液体である流体中に懸濁させる
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。 - 流体は、水及び/又はアルコールを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂微粒子の製造方法。
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