JP4496651B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の車両は、走行抵抗低減のためのスラントノーズ化や、車室内居住空間の確保のニーズからエンジンルームが狭くなっており、車両用交流発電機の車載スペースも余裕がなくなってきている。また、燃費向上のためにエンジンの回転数は下げられ、車両用交流発電機の回転数も低くなっている。しかし、その一方で、安全制御機器等の電気負荷が増加しており、発電能力の向上が望まれている。以上のことから、最近では、小型で高出力の車両用交流発電機を安価に提供することが求められている。
【0003】
また、エンドユーザの省エネルギー指向等に伴って小型車の人気が高まっており、小型発電機の要求や、配線の軽量化等の理由による高電圧発電機の要求など、近年ますます多様な仕様の発電機が求められている。
【0004】
従来、車両用交流発電機に一般に求められる固定子巻線は、連続線を固定子鉄心に装着する構造が採用されており、このような固定子巻線を用いて小型化、高出力化、低騒音化等を実現するために種々の改良案が提案されている。
【0005】
例えば、特許公報第2927288号には、固定子巻線のスロット内における占積率を向上させるとともに、スロット外においては回転子との共働により高い冷却性を確保したセグメント技術を用いた車両用交流発電機が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、小型低出力発電機、高電圧発電機あるいは低速回転での発電状態の維持等の多様な要求に対応するためには、一般には固定子巻線の巻数を増やすという手法が用いられる。ところが、上述したセグメント技術を用いた車両用交流発電機では、適当に巻数を増やすと、セグメント数の増加に伴ってセグメント装着後のセグメント成形が複雑になって作業性が悪化したり、出力線等の引出し位置によっては各セグメントを配置する際の作業性が悪化するという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するものとして、デンソー公開技報 整理番号125−040に開示された従来技術がある。この公開技報に開示された車両用交流発電機では、スロット内の導体本数mを変更することなく、m<n+1<m+1の導体本数nの固定子巻線を形成しており、スロット内の導体本数が整数以外になることによる巻線の複雑化等を防止している。しかし、この技術では、セグメントを用いることによって生じる問題点自体を解決しているわけではなかった。すなわち、セグメントを用いた場合には、従来の連続線を用いた場合に比べて高占積率化が可能であるため、導体断面を極力大きくするとともに、生産性向上のためにセグメント数は極力減らす方が望ましい。したがって、1本当たりの導体面積が大きくなる傾向にある。しかし、導体面積を大きくすると、複数のセグメントを接続して複数の巻線を形成し、これら複数の巻線同士を接続する場合の接続部が大きくなって質量が増すとともに、接合のための這い回し部を形成することが困難になる。また、接続部を形成するセグメントを配置すること自体が工程を複雑にする。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、セグメントを用いて固定子を構成した場合の作業性を向上させることができる車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、回転駆動される回転子と、回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装備された固定子巻線とを有する固定子と、固定子巻線の出力線に電気的に接続された整流装置と、整流装置と回転子と固定子とを支持するフレームとを備えている。
固定子巻線は、固定子鉄心の一方の端面側に電気導体の複数のセグメントから成るターン部を配列して形成された第1コイルエンド群(23a)と、固定子鉄心の他方の端面側に電気導体の曲げ部とこの曲げ部の端部の接続部とを配列して形成された第2コイルエンド群(23b)とを有し、位相の異なる6n相(nは自然数)の巻線素線からなる。巻線素線の両端は、第1コイルエンド群または第2コイルエンド群の一部として、ターン部または曲げ部に沿って形成されて、コイルエンド端部に引き出された引出し部を有する。互いに電気角で180度位相が異なる一対の巻線素線を直列接続する第1接続部(2051)を形成するとともに、互いに電気角で30度位相が異なる一対の巻線素線を直列接続する第2接続部(2052)を形成することで、互いに電気角で120度位相が異なる3相の巻線群を形成している。この巻線群は、対応する引出し部同士を接続して中性点を形成するとともに、この中性点と反対側の引出し部によって出力線を形成することによりY結線を形成している。巻線群のそれぞれに対応する第1接続部、第2接続部、中性点、出力線を形成する引出し部を、同相の巻線群について集中配置するとともに、異なる相の巻線群について周方向に沿って分散配置する。第1接続部は、セグメントとは異形の第1異形セグメント(230a及び230b)から成るターン部を有し、複数のセグメントのターン部の一つとして一体的に形成されており、第2接続部は、セグメントならびに第1異形セグメントとは更に異形の第2セグメント(230c)から成るターン部を有し、複数のセグメントのターン部の一つとして一体的に形成されている。
【0010】
本発明によれば、同一相内の第1接続部、第2接続部、中性点、出力線を形成する引出し部が集中配置されているため、これらを実現するために特異な形状となる電気導体を各相毎に集中させることができるとともに、他の電気導体については規則正しく配置することができるため、電気導体の配置や接合等の作業性を向上させることができる。
【0011】
また、上述した第1接続部あるいは第2接続部は、複数のターン部の一つとして一体的に形成されていることが望ましい。第1接続部あるいは第2接続部が電気導体の一部となるため、接合代や接合スペースが不要になり、固定子巻線の小型化が可能になる。また、接続に伴う配線部分も不要になるため、第1接続部あるいは第2接続部の質量が最小限で済み、質量過大による振動電線等を防止することができる。また、これらのターン部を含む電気導体の形状が、他のほとんどの電気導体の形状と類似するため、作業性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、上述した中性点および出力線の少なくとも一部を、対応する引出し部からコイルエンド端部に沿って這い回された這い回し部を含んで形成するとともに、この這い回し部を、絶縁材料からなる接合剤によって、コイルエンド端部に固定することが望ましい。這い回し部を形成することにより、中性点や出力線の寸法ずれを調整することができるため、各部の寸法精度を緩和することができ、これによる作業性の向上が可能になる。また、這い回し部を形成したことによってこの部分の質量が増加するが、この部分をコイルエンド端部に絶縁材で固定することにより、質量増加に伴う振動断線等を防止することができる。
【0014】
また、上述した中性点は整流装置に接続されていることが望ましい。中性点に整流装置に接続することにより、中性点に現れる電圧を出力として取り出すことができるため、出力の向上が可能になる。また、このような接続は、中性点を形成する3本の引出し部の中の1本を延長するだけで可能になるため、余分な這い回し等を行う作業が不要になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す図である。図1に示す車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、フレーム4、整流装置5等を含んで構成されている。
【0017】
固定子2は、固定子鉄心22と、固定子鉄心22に形成された複数のスロット(例えば本実施形態では72個)内に備わった電気導体としての複数の導体セグメントを相互に接合することにより形成された固定子巻線23と、固定子鉄心22と固定子巻線23との間を電気絶縁するインシュレータ24とを含んで構成されている。固定子鉄心22は、薄い鋼板を重ね合わせて構成されている。固定子巻線23の詳細については後述する。
【0018】
回転子3は、シャフト6と一体になって回転するものであり、ランデル型ポールコア7、界磁コイル8、スリップリング9、10、冷却用の斜流ファン11および遠心ファン12等を含んで構成されている。シャフト6は、プーリ20に連結され、車両に搭載された走行用のエンジン(図示せず)によって回転駆動される。
【0019】
ランデル型のポールコア7は、一組のコアを組み合わせることにより構成されている。各コアは、シャフト6に組み付けられた円筒状のボス部71と、ボス部71の一方の軸方向端面から径方向に延びるディスク部72と、ディスク部72の外周部から軸方向に沿ってボス部71側に延びる複数の爪状磁極部73とによって構成されている。各コアは、それぞれの爪状磁極部73を互い違いに向かい合わせるようにして組み付けられる。界磁コイル8は、絶縁紙81を介してポールコア7の爪状磁極部73の内径側に適当な圧縮力をもって当接されている。絶縁紙81は、樹脂を含浸したシートからなり、界磁コイル8を包囲しており、加熱処理によって界磁コイル8を固着するとともに、ポールコア7と界磁コイル8との間の電気絶縁を担っている。
【0020】
プーリ20側に配置されたポールコア7のディスク部72の端面には、冷却用の斜流ファン11が溶接等により固定されている。また、反プーリ20側(スリップリング側)に配置されたポールコア7のディスク部72の端面には、遠心ファン12が溶接等により固定されている。斜流ファン11の投影面積(回転方向に投影したブレードの面積)は、遠心ファン12のブレードの投影面積よりも小さく設定されている。
【0021】
フレーム4は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3がシャフト6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子3のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2が固定されている。フレーム4は、フロントフレーム4Aとリヤフレーム4Bとからなり、これらが複数本の締結ボルト(図示せず)によって締結されて上述した固定子2等の支持が行われる。また、フレーム4は、固定子鉄心22の軸方向端面から突出した固定子巻線23に対向した部分に冷却風の吐出窓41が、軸方向端面に吸入窓42がそれぞれ設けられている。
【0022】
リアフレーム4Bの外側には、整流装置5や電圧制御装置51、ブラシ装置52が取り付けられ、これらを覆うようにリヤカバー53が取り付けられる。
【0023】
整流装置5は、固定子巻線23から延びる出力線が接続されており、固定子巻線23から印加される三相交流電圧を三相全波整流して直流電圧に変換する。整流装置5の詳細な構造については後述する。
【0024】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪状磁極部73が励磁され、固定子巻線23に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置5の出力端子からは所定の直流電力が取り出される。
【0025】
次に、固定子巻線23を構成する電気導体について説明する。図2は、固定子巻線23を構成する導体セグメントの斜視図である。また、図3は図2に示した導体セグメントの組み付け状態を示す斜視図である。図4は、導体セグメントの形成過程を示す図である。
【0026】
固定子鉄心22のスロット25に装備された固定子巻線23は複数の電気導体により構成され、各スロット25には偶数本(本実施形態では4本)の電気導体が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図3に示すように固定子鉄心22の径方向について内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。
【0027】
一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、これらの対をなす電気導体は、固定子鉄心22の軸方向の一方の端面側において連続線を用いることにより、ターン部231c、232cを経由することで接続される。
【0028】
したがって、固定子鉄心22の一方の端面側においては、外中層の電気導体232bと内中層の電気導体232aとをターン部232cを経由して接続する連続線を、外端層の電気導体231bと内端層の電気導体231aとをターン部231cを経由して接続する連続線が内包することとなる。このように、固定子鉄心22の一方の端面側においては、対をなす電気導体の接続部としてのターン部232cが、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体の接続部としてのターン部231cにより囲まれる。外中層の電気導体232bと内中層の電気導体232aとの接続により中層コイルエンドが形成され、外端層の電気導体231bと内端層の電気導体231aとの接続により端層コイルエンドが形成される。
【0029】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体(図示されない231a’)とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、これらの電気導体は固定子鉄心22の軸方向の他方の端面側において接続される。
【0030】
したがって、固定子鉄心22の他方の端面側においては、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとを接続する外側接合部233bと、内端層の電気導体231a’と内中層の電気導体232aとを接続する内側接合部233aとが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとの接続、および内端層の電気導体231a’と内中層の電気導体232aとの接続により、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
【0031】
さらに、図2に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231により提供される。また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる小セグメント232により提供される。基本となるU字状の導体セグメント230は、大セグメント231と小セグメント232によって形成される。各セグメント231、232は、スロット25内に収容されて軸方向に沿って延びる部分を備えるとともに、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる曲げ部としての斜行部231f、231g、232f、232gを備える。これら斜行部によって、固定子鉄心22から軸方向の両端面に突出する第1コイルエンド群23aが形成されており、回転子3の軸方向の両端面に取り付けられた斜流ファン11および遠心ファン12を回転させたときに生じる冷却風の通風路は、主にこれら斜行部の間に形成されている。また、この冷却風の通風路には、固定子巻線23の引出し線(後述する)も配置されている。
【0032】
以上の構成を、全てのスロット25の導体セグメント230について繰り返す。そして、反ターン部側のコイルエンド群23bにおいて、外端層の端部231e’と外中層の端部232e、並びに内中層の端部232dと内端層の端部231d’とがそれぞれ溶接、超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等の手段によって接合されて外側接合部233bおよび内側接合部233aが形成され、電気的に接続されている。
【0033】
次に、導体セグメント230の形成過程の詳細について説明する。上述したように導体セグメント230には、大セグメント231と小セグメント232が含まれており、以下の説明では大セグメント231に着目して説明を行うものとする。
【0034】
大セグメント231は、図4に示すように、矩形状の断面を有する銅線からなるU字状の導体231’をA方向に変形させて形成したターン部231cおよび斜行部231fに連なる2つの直線部231a、231bを、固定子鉄心22のスロット25にインシュレータ24を介在させた状態で挿入し、反ターン部側をB方向に折り曲げて斜行部231gを形成した後、その先端部分である端部231d、231eを別に挿入された小セグメント232の端部に接合することにより構成されている。
【0035】
実際には、図3に示すように、反ターン部側の斜行部が形成される前の大セグメント231と小セグメント232を、固定子鉄心22の軸方向端面の同一側にターン部231c、232cが揃うように重ね、大セグメント231はスロット25の奥側に、小セグメント232はスロット25の開口側に位置するように挿入する。これらの大セグメント231と小セグメント232は、平角被覆導線を折り曲げ、プレス等でほぼU字型形状に成形して製作され、ほぼ平行なスロット25の側面に、大セグメント231と小セグメント232のそれぞれの両側面がインシュレータ24を介して当接するように圧入される。その後、図2に示すように、ターン部231c、232cと斜行部231f、232fによって形成される第1のコイルエンド群23aとは反対側に位置する端部231d、232dを互いに隣接するもの同士が反対側に位置するように周方向に折り曲げた後、異層の大セグメント231の端部231dと小セグメント232の端部232d同士が電気導通するように超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等で接合され、その接合された端部231d、232dと斜行部231g、232gによって第2コイルエンド群23bが形成される。
【0036】
次に、固定子巻線23の巻線仕様について詳細に説明する。図5は、固定子巻線23を構成する12相の巻線素線の関係を示す図であり、それぞれの巻線素線の向きが電気角に対応している。また、図6は12相の巻線素線の結線状態を示す図である。図7は、図6に示す結線状態を実現する実際の巻線仕様を示す図である。
【0037】
12相の巻線素線のそれぞれは、上述した導体セグメント230の端部同士を接合して周方向に直列に一巡させることにより構成されている。各巻線素線は、互いに電気角で30°異なる位置に形成されている。それぞれの相巻線をx1、v1、y1、w1、z2、u2、x2、v2、y2、w2、z1、u1とする。また、図5において、それぞれの巻線素線の一方の引出し部(巻始まり部分)をX1、V1、Y1、W1、Z2、U2、X2、V2、Y2、W2、Z1、U1とし、他方の引出し部(巻終わり部分)をX1′、V1′、Y1′、W1′、Z2′、U2′、X2′、V2′、Y2′、W2′、Z1′、U1′とする。
【0038】
図6に示すように、巻線素線x2、巻線素線x1、巻線素線u2、巻線素線u1が直列接続されて第1の巻線群x−uが構成されている。この中で、巻線素線x2と巻線素線x1は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメント(後述する)によって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。また、巻線素線u2と巻線素線u1は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。これらの相間接合線によって第1接続部2051が構成されている。また、巻線素線x1の他方の引出し部X1′と巻線素線u2の一方の引出し部U2とが、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して接続されている。この相間接合線によって第2接続部2052が構成されている。
【0039】
同様に、巻線素線y1、巻線素線y2、巻線素線v1、巻線素線v2が直列接続されて第2の巻線群y−vが構成されている。この中で、巻線素線y1と巻線素線y2は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。また、巻線素線v1と巻線素線v2は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。これらの相間接合線によって第1接続部2051が構成されている。また、巻線素線y2の他方の引出し部Y2′と巻線素線v1の一方の引出し部V1とが、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して接続されている。この相間接合部によって第2接続部2052が構成されている。
【0040】
巻線素線z1、巻線素線z2、巻線素線w2、巻線素線w1が直列接続されて第3の巻線群z−wが構成されている。この中で、巻線素線z1と巻線素線z2は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。また、巻線素線w2と巻線素線w1は、互いに電気角が180°ずれており、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して逆相の状態で接続される。これらの相間接合線によって第1接続部2051が構成されている。また、巻線素線z2の他方の引出し部Z2′と巻線素線w2の一方の引出し部W2とが、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線を介して接続されている。この相間接合部によって第2接続部2052が構成されている。
【0041】
これら第1〜第3の巻線群は、互いに電気角が120°異なっており、3つの引出し部U1′、V2′、W1′を接続して中性点と形成するとともに、他の3つの引出し部X2、Y1、Z1によって出力線を形成することにより、Y結線が形成されている。
【0042】
図8は、各巻線素線の引出し部と相間接合線を実現するために用いられる異型セグメントを示す斜視図である。図8において、スロット25から引き出された括弧付きの数字は、図7の巻線仕様図におけるスロット番号を示している。なお、以下では、第1の巻線群x−uに着目して説明するが、他の巻線群についても同様である。
【0043】
60番目のスロット25の外中層の電気導体から延びる引出し部X1と54番目のスロット25の内端層の電気導体から延びる引出し部X2′とが、図8に示すように、異型セグメント230aによって接続されている。同様に、59番目のスロット25の外端層の電気導体から延びる引出し部U1と53番目のスロット25の内中層の電気導体から延びる引出し部U2′とが、図8に示すように、異型セグメント230bによって接続されている。これらの異型セグメント230a、230bのそれぞれによって第1接続部2051が構成されている。なお、本実施形態では、第1接合部2051を1つの異型セグメント230aあるいは230bで構成したが、ターン部を有しない導体セグメントを用いて別々に引き出した後にそれらの端部同士を接合するようにしてもよい。
【0044】
また、59番目のスロット25の外中層の電気導体から延びる引出し部U2と54番目のスロット25の内中層の電気導体から延びる引出し部X1′とが、図8に示すように、異型セグメント230cによって接続されている。この異型セグメント230cによって第2接続部2052が構成されている。
【0045】
また、60番目のスロット25の外端層の電気導体から延びる引出し部X2は、ターン部を有しない異型セグメント230dを用いて引き出される。同様に、53番目の内端層の電気導体から延びる引出し部U1′は、ターン部を有しない異型セグメント230eを用いて引き出される。
【0046】
図9は、各巻線素線の引出し部の引出位置を示す図である。また、図10は引出し部をコイルエンド端部に沿って這い回した状態を示す図である。図11は、固定子2の部分的な側面図であり、一部の接続部と引出し部の軸方向の配置状態を示す図である。
【0047】
図9に示すように、第1の巻線群x−uの両端の引出し部X2、U1′と、第2の巻線群y−vの両端の引出し部Y1、V2′と、第3の巻線群z−wの両端の引出し部Z1、W1′は、互いに周方向に離間して配置されている。このため、図10に示すように、各巻線群の中性点側の3つの引出し部U1′、V2′、W1′を周方向に引き延ばすことにより、容易に這い回し部207を形成することができる。この這い回し部207は、絶縁材によってコイルエンド端部に固定することが好ましい。
【0048】
また、図11に示すように、これら3つの引出し部U1′、V2′、W1′の一つ(例えば引出し部V2′)をそのままリヤ側に延長することにより、整流装置5に備わった中性点ダイオード(図示せず)に接続される出力線208を形成することができる。また、その他の3つの引出し部X2、Y1、Z1は、そのままリヤ側に引き延ばすことにより、整流装置5に接続される出力線209として使用される。
【0049】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1では、3つの巻線群のそれぞれに含まれる第1接続部、第2接続部、中性点、出力線を形成する引出し部が、同一相については集中配置され、異相間では分散配置されているため、これらを実現するために必要な異型セグメント230a〜230eを各相毎に集中させることができるとともに、他の導体セグメント230については規則正しく配置することができる。したがって、各セグメントの配置や接合等の作業性を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、フレーム4の第1コイルエンド群の外径端における内高を内径端における内高よりも小さいか同じに設定するとともに、中性点およびこれにつながる這い回し部207が引出し部X2、Y1、Z1によって形成される出力線よりも内径側に形成されていることが望ましい。中性点を形成する部分は、元々コイルエンド群とフレーム4との隙間が小さくないため、中性点を形成するために特にフレーム4を大きくする必要がなく、フレーム4を含めた固定子巻線23周辺の構造を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す図である。
【図2】固定子巻線を構成する導体セグメントの斜視図である。
【図3】図2に示した導体セグメントの組み付け状態を示す斜視図である。
【図4】導体セグメントの形成過程を示す図である。
【図5】固定子巻線を構成する12相の巻線素線の関係を示す図である。
【図6】12相の巻線素線の結線状態を示す図である。
【図7】図6に示す結線状態を実現する実際の巻線仕様を示す図である。
【図8】各巻線素線の引出し部と相間接合線を実現するために用いられる異型セグメントを示す斜視図である。
【図9】各巻線素線の引出し部の引出位置を示す図である。
【図10】引出し部をコイルエンド端部に沿って這い回した状態を示す図である。
【図11】固定子の部分的な側面図であり、一部の接続部と引出し部の軸方向の配置状態を示す図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
4 フレーム
5 整流装置
23 固定子巻線
207 這い回し部
208、209 出力線
2051 第1接続部
2052 第2接続部

Claims (3)

  1. 回転駆動される回転子と、前記回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装備された固定子巻線とを有する固定子と、前記固定子巻線の出力線に電気的に接続された整流装置と、前記整流装置と前記回転子と前記固定子とを支持するフレームとを備える車両用交流発電機において、
    前記固定子巻線は、前記固定子鉄心の一方の端面側に電気導体の複数のセグメントから成るターン部を配列して形成された第1コイルエンド群(23a)と、前記固定子鉄心の他方の端面側に前記電気導体の曲げ部とこの曲げ部の端部の接続部とを配列して形成された第2コイルエンド群(23b)とを有し、位相の異なる6n相(nは自然数)の巻線素線からなり、
    前記巻線素線の両端は、前記第1コイルエンド群または前記第2コイルエンド群の一部として、前記ターン部または前記曲げ部に沿って形成されて、コイルエンド端部に引き出された引出し部を有し、
    互いに電気角で180度位相が異なる一対の前記巻線素線を直列接続する第1接続部(2051)を形成するとともに、互いに電気角で30度位相が異なる一対の前記巻線素線を直列接続する第2接続部(2052)を形成することで、互いに電気角で120度位相が異なる3相の巻線群を形成し、
    前記巻線群は、対応する前記引出し部同士を接続して中性点を形成するとともに、この中性点と反対側の前記引出し部によって前記出力線を形成することによりY結線を形成し、
    前記巻線群のそれぞれに対応する前記第1接続部、前記第2接続部、前記中性点、前記出力線を形成する前記引出し部を、同相の前記巻線群について集中配置するとともに、異なる相の前記巻線群について周方向に沿って分散配置され、
    前記第1接続部は、前記セグメントとは異形の第1異形セグメント(230a及び230b)から成るターン部を有し、複数の前記セグメントの前記ターン部の一つとして一体的に形成されており、
    前記第2接続部は、前記セグメントならびに前記第1異形セグメントとは更に異形の第2セグメント(230c)から成るターン部を有し、複数の前記セグメントの前記ターン部の一つとして一体的に形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 請求項1において、
    前記中性点および前記出力線の少なくとも一部は、対応する前記引出し部から前記コイルエンド端部に沿って這い回された這い回し部を含んで形成されており、
    前記這い回し部は、絶縁材料からなる接合剤によって、前記コイルエンド端部に固定されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  3. 請求項1または2において、
    前記中性点が前記整流装置に接続されていることを特徴とする車両用交流発電機。
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