JP4467121B2 - 芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルムに関し、より詳細には包装資材に適した透明性、機械的強度、低温ヒートシール性を備えた生分解性を有する芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、ある種の脂肪族系ポリエステル樹脂や芳香族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
【0003】
しかし、それらを現在実際に包装材料として使用されているポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等のフィルムと比較すると、ポリ乳酸系延伸フィルムを除いてほとんどの生分解性プラスチックフィルムは、機械的強度や透明性等の点で満足のいくレベル迄には到達していない。
【0004】
一方、プラスチックフィルムを食品や医薬品等の包装材料として利用する時には、被包装物の密封操作のために、フィルムにはヒートシール性が要求される。特に、低いシール温度条件で強固なヒートシールが可能な、いわゆる低温ヒートシール性が要望されている。しかし、現在ほとんどの生分解性プラスチックフィルムからは、良好な透明性と機械的強度を保持し、かつ優れたヒートシール性、特に低温ヒートシール性を有する包装材料の設計を行うことは難しく、そのため広い用途に使われる包装材料としての用途展開には限りがある。
【0005】
一方、従来よりOPPフィルム等のポリオレフィン系延伸フィルムの表面にヒートシール性を付与するために、ポリ塩化ビニリデン系共重合体樹脂やアイオノマー系樹脂のコーティング層を設けたフィルムが知られているが、これらはフィルム基材としてのポリオレフィン系樹脂も、またヒートシール性付与樹脂も共に生分解性を有していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、生分解性を有するフィルムであって、包装材料として必要な優れた透明性と高い機械的強度を有し、かつ優れた低温ヒートシール性を有するフィルムの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、生分解性を有する芳香族ポリエステル樹脂からなり、二軸延伸され、かつヒートセットされてなる配向フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性を有するアクリル系樹脂層が設けられている芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルムに関する。
【0008】
その芳香族ポリエステル樹脂は、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルが好ましく、より具体的には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られたポリエステルが望ましい。
【0009】
ポリエステル樹脂の好ましい組成は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)である。
【0010】
また、アクリル系樹脂は、ヒートシール性を有するアクリルモノマーの重合体であって、それの持つガラス転移点が0〜70℃であることが好ましい。特にメタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体またはメタクリル酸・イソブチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体が望ましい。さらに、その層厚は0.2〜5μmであることが適当である。
【0011】
このような積層フィルムは、フィルム全体として生分解性を有しており、また優れた透明性と機械的強度に加え、低温ヒートシール性を有していることから、広く包装資材として好適に利用することができる。
【0012】
【発明の具体的説明】
本発明に係わる積層フィルムは、特定の芳香族ポリエステル樹脂基材フィルム層とアクリル系樹脂層とが積層されたフィルムである。次に、その積層フィルムの構成について詳細に説明する。
【0013】
芳香族ポリエステル樹脂
本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂は、生分解性を有する樹脂であれば、その組成は特に限定されない。基本的には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとの重縮合によって形成される芳香族ポリエステル樹脂であって、生分解性を付与するためにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分の1種として含むポリエステル樹脂が好ましい。また、そのフィルムに可撓性、生分解性等の性能を付与し、また向上させるために、さらに脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として加えた多成分系のポリエステル樹脂であってもよい。そのような樹脂は、特表平5−507109号公報、特表平6−505040号公報、特表平6−505513号公報等に記載されている。
【0014】
好適な芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族グリコールを主成分にし、それにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を副成分として加え、それらの成分間で重縮合反応を進行させて得られたポリエステルである。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などを例示することができ、またそれらのジアルキルエステルのようにエステル形成能を有する誘導体を使用することもできる。それらの内ではテレフタル酸またはジメチルテレフタレートの使用が好ましい。また、前記したジカルボン酸を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコール類を例示することができ、またそれらのオリゴマー、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに高分子量のポリアルキレングリコール等のポリアルキレングリコール類も使用することができる。また、前記したグリコール類を2種類以上組み合わせて使用してもよい。ジエチレングリコール等のオリゴマーは、ポリエステル樹脂の機械的物性、加水分解性あるいは生分解性を適度に調整する効果を有していることから、アルキレングリコール類とポリアルキレングリコール類とを併用して用いることが好ましい。それらの中で、エチレングリコールとジエチレングリコールとの併用が望ましい。
【0017】
スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸のベンゼン環にスルホン酸金属塩基(−SO3M)が置換基として結合した化合物である。金属(M)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、あるいはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属である。好ましい例として、5−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−フタル酸の金属塩を挙げることができる。この成分は、芳香族ポリエステル樹脂に加水分解性や生分解性を付与させる目的で加えられるが、特に5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム塩がその効果が高いので好ましい。なお、前記の芳香族ジカルボン酸は、アルキルエステルになっていてもよく、例えばジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の形で使用することができる。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸等を例示することができ、また脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、カプロラクトン等を例示することができる。この脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、芳香族ポリエステル樹脂のガラス転移点温度を下げ、好適には70℃以下に下げ、あるいは樹脂の加水分解性や生分解性を向上させる目的で共重合成分の1種として加えられるものである。
【0019】
前記した成分間の重縮合反応は、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム等の触媒の存在下に200℃以上の高温かつ減圧下で行うことにより、分子鎖に沿ってランダムにそれらの成分に由来する単位が分布した線状ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0020】
重縮合したポリエステル樹脂中の各成分に由来する単位の含有量は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50、好ましくは40〜49モル%、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
【0021】
好適な芳香族ポリエステル樹脂では、テレフタル酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、エチレングリコール成分に由来する単位が15〜48、好ましくは20〜45モル%、ジエチレングリコール成分に由来する単位が1〜29、好ましくは4〜20モル%、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
【0022】
本発明で用いる芳香族ポリエステル樹脂は、その重量平均分子量が、10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、そのメルトフローレートは、ASTM D−1238に準拠し、220℃、2160g荷重下で測定した値が、0.1〜100(g/10分)であることが好ましい。分子量およびメルトフローレートが前記の範囲内にあると、押出成形に適した溶融粘度を示し、また積層フィルム基材層としての十分な機械的強度を有する。
【0023】
フィルム成形に先立ち、ポリエステル樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の高分子材料、可塑剤、滑剤、無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料等を添加することができる。
【0024】
アクリル系樹脂
本発明に使用されるアクリル系樹脂は、ヒートシール性を有する樹脂であって、アクリルモノマー、すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれたモノマーの重合体であって、それは単独重合体であっても、あるいは共重合体であってもよい。共重合体の場合には、アクリルモノマー間の2成分または3成分以上の重合体の他に、他の不飽和カルボン酸あるいはその誘導体を共に共重合した重合体であってもよい。
【0025】
アクリル酸およびメタクリル酸誘導体の例としては、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルがあり、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート等を挙げることができる。またアルキルエステル以外の誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。必要に応じて共重合される不飽和カルボン酸としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等を例示することができる。
【0026】
好ましいアクリル系樹脂の例としては、
(a)アルキルアクリレートとアルキルメタクリレートとの共重合体、
(b)メタクリル酸またはアクリル酸と、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとの共重合体、
(c)メタクリル酸またはアクリル酸、アルキルアクリレート、およびアルキルメタクリレートとの三成分共重合体
等を挙げることができる。
【0027】
さらに好ましいアクリル系樹脂の具体例としては、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体、メタクリル酸・イソブチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体等を挙げることができる。これらのアクリル系樹脂は、一般にラジカル重合によって製造することができ、前記したモノマー類の存在下に乳化重合法、懸濁重合法、または溶液重合法等の方法を適用することができる。
【0028】
そのアクリル系樹脂を構成する前記各成分の割合は、特に制限されるものではなく、必要な物性、例えば十分な機械的強度、ヒートシール温度、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、生分解性を勘案してモノマー成分構成が決められ、また分子量の調整を行えばよい。
【0029】
本発明で用いるアクリル系樹脂は、そのガラス転移点温度が、0〜70℃、好ましくは10〜60℃の範囲にあると、低温でかつ広い温度領域でヒートシール性が十分に発揮され、また耐ブロッキング性も良好であるために望ましい。そのようなアクリル系樹脂を用いた積層フィルムは、包装作業を容易にし、かつ被包装物をきちんと保護でき、また後述する実施例に示したように土壌中での劣化分解が容易に進行する。
【0030】
なお、本発明ではヒートシール性を損なわない範囲内で、アクリル系樹脂に他の材料、例えばカルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の滑剤、シリカ、珪藻土、珪酸カルシウム、ベントナイト、粘土等の無機微粒子で代表されるアンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、その他の添加剤を適宜添加することができる。
【0031】
積層フィルム
本発明に係わる積層フィルムは、特定の芳香族ポリエステル樹脂延伸フィルムの少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層を設け、透明性、機械的強度、ヒートシール性等に優れたフィルムである。
【0032】
基材層としての芳香族ポリエステル樹脂延伸フィルムは、まず前記ポリエステル樹脂のキャストフィルムを成形し、次いで延伸配向処理を施すことによって製造することができる。このキャストフィルムは、ポリエステル樹脂を一軸または二軸の押出機に供給し、樹脂の融点以上の温度で溶融し、T−ダイ等を通してシート状ないしフィルム状に押出し、その後急冷して引き取ることによって得られる。
【0033】
一旦成形したキャストフィルムは、引き続き一軸または二軸方向に延伸することによって、フィルム分子を配向させることができる。延伸操作は、キャストフィルムを、樹脂のガラス転移点以上かつ結晶化温度以下の温度範囲で、一軸延伸法、或いは延伸ロールとテンター式横延伸機を用いる逐次二軸延伸法、または同時二軸延伸法で行われる。
【0034】
延伸条件としては、芳香族ポリエステル樹脂の組成や未延伸シートの熱履歴によっても異なるが、例えば、延伸温度40〜100℃、延伸倍率1.5〜6.0倍で行われる。延伸操作の後、好ましくはフィルムを再度熱処理してフィルムにヒートセットを施すが、熱処理温度は樹脂の結晶化温度以上かつ融点以下の温度範囲でなされる。
【0035】
このようにして製造されたフィルムは、一軸方向または二軸方向に配向されており、無延伸フィルムの持つ脆さが改良されている。そして、ポリプロピレン延伸フィルム、ポリスチレン延伸フィルム、ポリエチレンテレフタレート延伸フィルムに近似の優れた物性を有している。特に二軸配向されていると、高い機械的強度を示すので、包装材料として好適である。
【0036】
また、ヒートセット処理を施すと、ポリマーの分子構造が安定化して結晶化度が増大し、フィルムの機械的強度を一層向上させることができる。フィルムの厚さは、5〜300μm、好ましくは10〜200μmの範囲にあることが、積層フィルムの基材層として必要な機械的強度、透明性、生分解性の適度なバランスを得る上で望ましい。
【0037】
なお、ポリエステル樹脂フィルム面にアクリル系樹脂被膜を積層するに先立ち、両層間の密着・接着強度を高める目的で、ポリエステル樹脂フィルム面にコロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理等の表面活性化処理、あるいはアンカー処理剤を用いたアンカーコーティング処理を施しておくことが望ましい。
【0038】
アクリル系樹脂層は、前記芳香族ポリエステル樹脂配向フィルムの片面あるいは両面に形成されており、その厚さは、基材層の持つ物性を損なうことなく必要なヒートシール強度を付与できる程度にできるだけ薄層であることが好ましく、用いるアクリル系樹脂の種類あるいは積層フィルムの用途によって調整される。通常、0.2〜5μm(塗布量に換算して、0.2〜5g/m2)、好ましくは0.3〜3μm(塗布量に換算して、0.3〜3g/m2)の範囲にあることが望ましい。この薄い被膜層は、それだけの厚さで十分なヒートシール強度が得られると共に、コーティング層にクラック等の形成を避けることができ、また基材層になっている芳香族ポリエステル樹脂フィルムの持つ優れた透明性や機械的強度をそのまま維持することができる。
【0039】
アクリル系樹脂層は、薄くかつ均一な被膜を形成するために、コーティング法の採用が適している。アクリル系樹脂は、通常水溶液または水分散液の状態で製造されることが多いので、そのままの状態でコーティングすることが好都合であり、特にエマルジョンでの直接コーティングが望ましい。所望によりアルコール等の有機溶剤や柔軟剤等をコーティング液に適宜添加することができる。コーティング液中のアクリル系樹脂の濃度は、5〜40重量%が好ましい。
【0040】
コーティングの方法は、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等のいずれの方法をも採用することができ、特にロールコーティング法は高速度で均一被膜を成形する方法として適している。コーティング工程の後、フィルムは乾燥工程へと移されるが、水分が蒸発し、透明な被膜層が効率よく形成される雰囲気になっていればその乾燥方法および条件に特に制限はない。例えば、熱風乾燥機を用い、乾燥温度は60〜150℃、乾燥時間は5秒〜5分程度が適当である。
【0041】
アクリル系樹脂のコーティング工程と前記した芳香族ポリエステル樹脂フィルムの延伸工程とは、いずれを優先して行っても目的とする積層フィルムを得ることができる。芳香族ポリエステル樹脂フィルムを一軸ないし二軸に延伸した後にアクリル系樹脂をコーティングする順序をとると、芳香族ポリエステル樹脂フィルムの延伸条件を自由に設定できるメリットがある。逆に、アクルル系樹脂をコーティングしてから延伸操作を施す順序をとると、コーティング装置を小型化できるメリットがある。逐次二軸延伸の場合には、前記芳香族ポリエステル樹脂の縦延伸フィルムを一旦成形し、その後にアクリル系樹脂をコーティングし、最後にフィルムを横延伸する方法も採用することができる。
【0042】
このようにして製造した積層フィルムは、その用途に応じて、アクリル系樹脂層とは反対側の表面に、例えばガスバリヤー性を有する生分解性プラスチック樹脂層や生分解性天然物層を設けてもよい。その際には、アンカー処理剤や接着剤を介して接合することができる。また、印刷層を設けてもよい。
【0043】
【実施例】
次に本発明を実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、得られたフィルムの物性評価は、次の試験方法で行った。
(a) 引張弾性率:
JIS K7127に準拠して行った。
(b) 引張強度(破断点応力、破断点伸び):
JIS K7127に準拠して行った。
(c) 衝撃強度:
フィルムインパクト法で行った。
1/2インチ円錐を用い、アクリル系樹脂コーティング面と反対側面より測定した。
【0044】
(d) ヘイズ:
JIS K6714に準拠して行った。
アクリル系樹脂コーティング面とは反対側面より測定した。
(e) ヒートシール強度:
熱傾斜シーラーを用い、シール温度を90〜130℃の間で20℃間隔に設定し、圧力0.1MPa、時間0.5秒の条件でフィルムのアクリル系樹脂コーティング面同士の貼合せを行った。
その後、サンプル幅を30mmにカットし、引張速度300mm/分の条件でT型に剥離させ、その強度を測定してこれをヒートシール強度とした。
(f) 土壌分解性:
フィルムを土壌中に5ケ月間放置し、フィルムの状態を観察した。
【0045】
(実施例1)
撹拌機、窒素取り入れ口および蒸留カラムが備わった大型反応槽の中に、所定量のテレフタル酸ジメチル、ジメチル5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム、ヒドロキシ酢酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールを加え、触媒として三酸化アンチモン、酢酸マンガン、酢酸ナトリウムを用いて縮重合反応を行った。
【0046】
得られた共重合体の組成は、テレフタル酸45モル%、エチレングリコール37モル%、ジエチレングリコール9モル%、5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム1モル%、ヒドロキシ酢酸8モル%であった。また、その共重合体樹脂の密度は1.35(g/cm3)、融点は200℃、メルトフローレート(220℃、2160g荷重)は15(g/10分)であった。
【0047】
この樹脂をオーブン中で予備乾燥してから押出機(60mmφ、シリンダー設定温度220℃)中へ供給して溶融し、押出機先端に設けたTダイからフィルム状に押出した。その後、キャストロールで30℃に急冷し、最終的に厚さ200μmのシートを作成した。次に、逐次二軸延伸装置を用いてこのシートをまず60℃で3倍縦延伸し、次いで70℃で4倍横延伸し、引き続き180℃で5秒間熱処理(ヒートセット)を行った。さらに、フィルム片面にコロナ放電処理を施して、厚さ20μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0048】
次に、メチルメタクリレート50重量%、イソブチルアクリレート47重量%、およびメタクリル酸3重量%の組成からなるアクリル系共重合体樹脂100重量部に、カルナバワックスを5重量部配合した水分散体(固形分濃度:20重量%)を準備した。前記の芳香族ポリエステル樹脂配向フィルムのコロナ放電処理面側に、アクリル系樹脂水分散体をメイヤーバーを用いてコーティングした。その後、70℃で20秒間熱風乾燥炉内で水を蒸発させ、厚さ約1μm(塗布量:1g/m2)の乾燥被膜を形成させた。この積層フィルムの物性を調べ、その結果を表1に示した。
【0049】
(比較例1)
実施例1で製造した厚み20μmの芳香族ポリエステル樹脂2軸延伸フィルムを、アクリル系樹脂等のコーティングを一切施すことなくそのまま用いて、実施例1と同様の物性測定を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004467121
【0051】
【発明の効果】
本発明に係わる積層フィルムは、優れた生分解性を有しているので使用後に容易にその形状が崩壊し、自然環境の保護に寄与することができる。
また、このフィルムは、優れた透明性、高い機械的強度、および可撓性を備えていることから包装資材として適しており、さらに低温かつ広い温度領域でヒートシール性を保有していることから、幅広い用途、例えば袋や容器等の製造に使われる包装用フィルムに適切であって、ことに自動包装機械用資材として好適である。
【0052】
従って、本発明に係わる積層フィルムは、ガム、キャラメル、チョコレート等の菓子箱のオーバーラップ包装、カセットテープのオーバーラップ包装、菓子類の個包装等をはじめとして、このフィルムの持つ低温ヒートシール性、自動包装性、高速包装性等の特性を活かして、各種食品、非食品の包装に好適に使用することができる。

Claims (15)

  1. 生分解性を有する芳香族ポリエステル樹脂からなり、二軸延伸され、かつヒートセットされてなる配向フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性を有するアクリル系樹脂層が設けられていることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  2. 前記の芳香族ポリエステル樹脂が、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  3. 前記の芳香族ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸の成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  4. 前記の芳香族ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  5. 前記の芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸であることを特徴とする請求項3または4に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  6. 前記の脂肪族グリコールが、アルキレングリコールとポリアルキレングリコールとからなることを特徴とする請求項3または4に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  7. 前記のスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸が、5−スルホ−イソフタル酸金属塩、4−スルホ−イソフタル酸金属塩、および4−スルホ−フタル酸金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  8. 前記の脂肪族カルボン酸が、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびグルタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸であることを特徴とする請求項に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  9. 前記の脂肪族ヒドロキシカルボン酸が、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、カプロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  10. 前記の芳香族ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  11. 前記の芳香族ポリエステル樹脂が、テレフタル酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、エチレングリコール成分に由来する単位が15〜48モル%、ジエチレングリコール成分に由来する単位が1〜29モル%、5−スルホ−イソフタル酸アルカリ金属塩成分に由来する単位が0.1〜5モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  12. 前記のアクリル系樹脂は、そのガラス転移点が0〜70℃であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  13. 前記のアクリル系樹脂が、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレート、およびアルキルメタクリレートからなる群から選ばれたモノマー間の共重合体であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  14. 前記のアクリル系樹脂が、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体またはメタクリル酸・イソブチルアクリレート・メチルメタクリレート三元共重合体であることを特徴とする請求項13に記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
  15. 前記のアクリル系樹脂層は、その厚さが0.2〜5μmであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム。
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