JP4456836B2 - ポリイミドフィルム及びその製造方法並びにその利用 - Google Patents

ポリイミドフィルム及びその製造方法並びにその利用 Download PDF

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Description

本発明は、様々な電子機器の軽量、小型化に伴い、絶縁材料として多用されるようになってきたポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムの製造方法並びにその利用の代表的な一例とに関するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板(Flexible printed wiring board)やTAB(Tape Automated Bonding)テープに加工されるベースフィルムとして用いられるポリイミドフィルムと、その製造方法・利用一例とに関するものである。
従来、フレキシブルプリント配線板(FPCと略記する)は、そのフレキシビリティを活かし、主にカメラ内部の狭いスペースに折り畳まれて用いられてきた。しかしながら、近年では、FPCは、フレキシブルディスクドライブ(FDD)、ハードディスクドライブ(HDD)、コピー機、プリンタなどの駆動部にも幅広く用いられているため、FPCの摺動屈曲特性を更に向上させることが要求されている。
FPCは樹脂フィルムをベースとしており、この樹脂フィルムはベースフィルムとも称する。このベースフィルムとしては、摺動性および屈曲性を向上させる目的であれば、化学構造的に屈曲性の高いポリイミドからなるポリイミドフィルムを用いればよい。
ここで、上記ポリイミドフィルムとしては、様々な物性を有するものが開発されているが、特に、テープオートメーテッドボンディング方式(TAB方式と略記する)によるFPCの加工工程では、ベースフィルムとして用いられるポリイミドフィルムは、次に示す3つの物性を備えることが要求される。
(1)適度な熱膨張性
一般に屈曲性の高いポリイミドは熱膨張性が高い、すなわち線膨張係数が大きいため、ポリイミドフィルムをベースフィルムとして用いたFPCは反りやカールを生じやすいという欠点を有している。また、逆に線膨張係数が小さいポリイミドを選択して樹脂フィルムを形成し、これをベースフィルムとして用いた場合は、フィルム自体の可撓性が失われるため、ベースフィルムが非常に脆弱となり、得られるFPCの屈曲性までも低下してしまうという欠点が生じる。
ところで、近年、半導体デバイスの多ピン化、小型化、高密度実装に対応できる技術として上記TAB方式が注目されている。TAB方式では、長尺の樹脂フィルムにLSI等の半導体チップを載置するための孔(デバイスホール)を設け、その上に非常に薄い銅箔リードを形成し、この銅箔リードを介してLSI等とプリント配線板などを接続する。このようなTAB方式においては、一般に保護層、接着剤層、及び有機絶縁フィルム層(ベースフィルム層)の3層構造からなるフィルムキャリアテープ(FCテープと略記する)が用いられている。
上記FCテープを加工してTAB方式に用いるTABテープとするが、その加工工程は、一般に、次の8工程からなる。すなわち、1)FCテープにパンチングによりテープ搬送用のスプロケットホールと、半導体チップを載置するためのデバイスホールとを形成する工程、2)保護層を除去し銅箔をラミネートした後、接着剤を硬化する工程(銅箔ラミネーティング工程)、3)レジスト塗布して銅箔をエッチングしレジスト剥離することにより、銅箔を所定のパターン(配置パターン)に形成する工程(配置パターン形成工程)、4)メッキ処理工程、5)インナーリードボンディング工程、6)樹脂封止工程、7)パンチング工程、および8)アウターリードボンディング工程の各工程である。このような加工工程を経て、TABテープにLSI等が実装される。なお、上記2)の工程を経た後に得られる積層体をフレキシブル銅張積層板(FCCLと略記する)と称する。
上記加工工程においては、FCCL又はTABテープの反りやカールが生じる場合があるが、このような反りやカールは、TABテープにLSI等を実装する際の実装不良を起こす最も大きな原因の一つとなる。すなわち、このような反りやカールは、寸法精度を要求されるような工程で様々な不良を引き起こす。具体的には、例えば、3)配置パターン形成工程では、銅箔を配置パターンに形成する際の形成不良を引き起こし、5)インナーリードボンディング工程または6)アウターリードボンディング工程では、半導体チップの接合不良などを引き起こす。また、実際の工程はリールトゥリール(reel-to-reel)で行われるので、TABテープの長手方向には張力がかかる。そのため、テープ長手方向の反りやカールは矯正することができるが、テープ幅方向の反りやカールを矯正することはできない。
このように、TABテープやFPCに用いられるポリイミドフィルムでは、適度な熱膨張性を有していることが好ましいと言え、その線膨張係数は、反りやカールが生じる程大きくなく、また、可撓性が失われる程小さくない範囲内あることが必要である。このような線膨張係数の範囲としては、具体的には、18ppm/℃以上、28ppm/℃以下であることが望ましい。
(2)小さい吸水・吸湿性
ベースフィルムの吸水率が大きい場合、上記2)銅箔ラミネーティング工程の後、ベースフィルムと銅箔とにはさまれた接着剤層に内部応力が蓄積されるという問題が生じる。この内部応力は次のように蓄積される。すなわち、2)銅箔ラミネーティング工程で、接着剤の硬化反応が終了して硬化用加熱炉から取り出された直後はベースフィルムが乾燥しているため、ベースフィルムは、歪なく銅箔と固定されている。ここで、銅箔をラミネートした状態で放置すると、ベースフィルムは時間と共に吸湿膨張する。これに対して、銅箔は吸湿膨張せず、また、フィルムと比較して、剛性が高くフィルムの膨張が原因で寸法変化を起こすこともほとんどない。そのため、ベースフィルムと銅箔とに挟まれた接着剤層に内部応力が蓄積される。
したがって、この状態で3)配置パターン形成工程を行うと、乾燥および吸湿が繰り返されることになるので、エッチングにより銅箔上に配線パターンを形成すると、銅箔が除去された部分の応力が開放されて寸法変化が生じる。それゆえ、配線パターン形成のためにフォトマスクを用いても、このフォトマスク寸法よりも大きなパターンが形成されたり、そりやカールが生じたりする。その結果、半導体デバイスとの接続不良が発生する。このような寸法変化はTAB加工工程における歩留まり低下の原因となっている。
このように、ベースフィルムに対しては、低い吸水・吸湿性が要求される。したがって、TABテープやFPCへの加工において、上記の反りやカールような不都合を生じさせないためには、適度な範囲内の線膨張係数と小さい吸湿膨張係数を有するベースフィルムが必要となる。
(3)大きい弾性率
さらに、ベースフィルムの弾性率が小さい、すなわち腰が弱いと、ベースフィルムが寸法変化を起こす場合もある。これは、リールトゥリールの製造工程では、長手方向に張力がかかるためである。この寸法変化は、加工工程に悪影響を及ぼしたり、反りやカールの原因となったりする。それゆえ、例えば、TABテープに用いられるポリイミドフィルムは、弾性率の大きなものである必要がある。
しかしながら、ベースフィルムの弾性率を大きくすると、線膨張係数が小さくなるという問題が生じる。これは、弾性率および線膨張係数はポリイミドの一次化学構造(繰り返し単位の構造)に大きく依存するためである。すなわち、一般に弾性率が大きくなるようなポリイミドの一次化学構造を選択した場合、線膨張係数が小さくなってしまい、ポリイミドフィルムの可撓性が失われ屈曲性が低下する。
上述したように、FPCをTAB方式により加工する工程では、反りやカールを発生しないためには、(1)熱膨張性と(2)吸水・吸湿性と(3)弾性率という3つの物性の調和がとれたポリイミドフィルムが求められる。
ここで、特許文献1には、酸成分として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて得られるポリイミドからなるポリイミドフィルムが開示されている、このポリイミドフィルムでは、「低めの吸水性、低めの吸湿膨張係数、高めの弾性率」および「低い熱膨張係数」を有している(例えば、同文献の段落番号〔0059〕参照)ことが報告されている。この公報で報告されているポリイミドフィルムは、酸成分としてピロメリット酸二無水物、または3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリンを用い、これら酸成分およびジアミン成分を共重合させたポリイミドを用いて形成されている。
また、特許文献2には、「剛構造の芳香族ジアミン化合物と芳香族テトラカルボン酸類化合物とからなるポリイミドのブロック成分と、柔構造の芳香族ジアミン化合物と少なくとも2種の芳香族テトラカルボン酸類化合物とからなる共重合ポリイミドのランダム成分とが、分子結合してなる共重合ポリイミド」が開示されており、酸成分として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いる例が開示されている(同文献の実施例11参照)。
特開平9−328544(公開日:1997年12月22日) 特開平9−235373(公開日:1997年9月9日)
しかしながら、上記特許文献1で報告されているポリイミドフィルムは、実際には、(1)熱膨張性と(3)弾性率との調和はとれていても、(2)吸水・吸湿性が悪いという問題を生じている。具体的には、上記公報の実施例に記載されている吸水率は2.62〜3.69%の範囲内であり、吸湿膨張係数は、16.8〜29.8ppmの範囲内と非常に大きくなっている。
また、上記特許文献2においては、得られる「樹脂成形体は、高い弾性率、低い熱膨張性、低い吸収性を併せ持つ」としている。確かに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いた実施例11では、弾性率が4.3GPa(440kg/mm2)、線膨張係数が16.7ppm/℃、吸水率が2.4%となっており、確かに(1)〜(3)の各物性は向上しているものの、上記TAB方式によるFPCの製造に用いるには、後述する比較例8に示すように未だ十分とはいえない。
このように、ポリイミドの酸成分として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて得られるポリイミドフィルムにおいては、従来では、特にTAB方式によるFPC(TABテープ等)に用いる場合、熱による膨張、吸水・吸湿性、弾性率という諸物性を同時に実現できることが好ましいことは知られていた。しかしながら、上記諸物性を評価する場合、(1)線膨張係数、(2)吸湿膨張係数、および(3)弾性率というより具体的なパラメータを用い、これらパラメータがすべて好ましい範囲の値とすることについては知られておらず、さらには、これら(1)〜(3)のパラメータの数値を全て好ましい範囲の値とするように調整することは非常に困難となっている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、特に、TABテープやFPCに用いるベースフィルムとして、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて得られるポリイミドフィルムを用いる場合に、(1)熱膨張性、(2)吸水・吸湿性、および(3)弾性率の調和が十分にとれており、反りやカールの発生をより有効に回避することが可能なポリイミドフィルムと、その製造方法並びにその利用の代表的な一例とを提供することにある。
そこで、本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、特に、(2)吸水・吸湿性を評価するために吸湿膨張係数を用いることで、(1)熱膨張性、(2)吸水・吸湿性、および(3)弾性率という各物性の調和を十分にとることが可能になり、その結果、反りやカールの発生をより有効に回避することが可能なポリイミドフィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。これら(1)〜(3)の各物性の調和のとれたポリイミドフィルムは、代表的な一例としてTABテープに用いられるが、もちろん多様な用途に応用されるFPCにも好適に用いることができるものである。
すなわち、本発明にかかるポリイミドフィルムは、上記の問題を解決するために、主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とから合成されるポリアミド酸を用いて得られるポリイミドフィルムであって、100〜200℃における平均線膨張係数が18〜28ppm、弾性率が4.5GPa以上、吸湿膨張係数が13ppm以下であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いてなる構成である。
本発明にかかるポリイミドフィルムにおいては、全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%としたときに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を、20〜60mol%の範囲内となるように用いることが好ましい。
また、本発明にかかるポリイミドフィルムにおいて用いる酸成分としては、次に示す化合物を用いることが好ましい。すなわち、(I)上記芳香族テトラカルボン酸二無水物成分として、芳香族エステル酸二無水物が用いられることが好ましい。また、(II)上記全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%としたときに、上記芳香族エステル酸二無水物を、10〜60mol%の範囲内となるように用いることが好ましい。さらに、(III)上記芳香族エステル酸二無水物として、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)が用いられることが好ましい。
本発明にかかるポリイミドフィルムにおいて用いるジアミン成分としては、直線性ジアミンと、屈曲性ジアミンとを、それぞれ少なくとも1種類用いることが好ましい。このとき、全芳香族ジアミン成分を100mol%としたときに、上記直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンを、それぞれ、20〜80mol%の範囲内および80〜20mol%の範囲内で用いることが好ましい。(II)上記直線性ジアミンとして、p−フェニレンジアミンが用いられることが好ましい。(III)さらに、上記屈曲性ジアミンとして、4,4’−オキシジアニリンが用いられることが好ましい。
本発明にかかるポリイミドフィルムにおいては、上記直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンは、ポリイミド分子中で、ランダムに分布していることが好ましい。
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法は、少なくとも、a)有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、b)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、c)上記製膜ドープを支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、d)更にゲルフィルムを加熱して、残存するアミド酸をイミド化し、乾燥させる工程、を含み、上記ポリイミドフィルムを製造する構成である。
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法においては、少なくとも、脱水剤とイミド化触媒とを併用することが好ましい。
本発明にかかるポリイミドフィルムの利用の一例としては、上記ポリイミドフィルム上に接着剤層および保護層を設けてなるFCテープ、上記ポリイミドフィルムからなる層と、金属導電層とを少なくとも有するフレキシブルプリント配線板を挙げることができる。
本発明にかかるポリイミドフィルムは、上記のように、100〜200℃における平均線膨張係数が18〜28ppm、弾性率が4.5GPa以上、吸湿膨張係数が13ppm以下であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いてなる。
それゆえ、上記構成によれば、特に、TABテープやFPCに用いるベースフィルムとして、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として得られるポリイミドフィルムを用いる場合に、反りやカールを発生しないような線膨張係数と弾性率を併せ持つとともに、吸湿による寸法変化を原因とする反りやカールも発生しないポリイミドフィルムを提供することが可能となるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。以下、本発明の詳細について、ポリイミドフィルム、その製造方法、その利用(有用性)、具体的な実施例の順で具体的に説明する。
(1)本発明にかかるポリイミドフィルム
<ポリイミドフィルムの物性>
本発明にかかるポリイミドフィルムは、主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸(polyamic acid)をイミド化してポリイミドを用いてなるものである。このうち、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物には、少なくとも3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が含まれており、このようにして得られたポリイミドフィルムは、次に示す3つの条件を満たすものとなっている。
条件(1):100℃から200℃における平均線膨張係数が18〜28ppm/℃の範囲内である。
条件(2):弾性率が4.5GPa以上である。
条件(3):吸湿膨張係数が13ppm以下である。
上記ポリイミドフィルムは、条件(1)を満たすことにより、FPCやTABテープとして用いられた場合に、反りやカールの発生が防止される。これにより、屈曲性が高いとともに、線膨張係数も反りやカールを生じない範囲にあるポリイミドフィルムの提供が可能となる。なお、上記ポリイミドフィルムの100℃から200℃における平均線膨張係数のより好ましい範囲は、18ppm〜25ppm/℃の範囲内であり、さらに好ましい範囲は、20〜25ppm/℃の範囲内である。
また、上記ポリイミドフィルムは、条件(2)を満たすことにより、リールトゥリールの製造工程における寸法変化、ひいては、FPCやTABテープの反りやカールの発生が防止される。なお、上記ポリイミドフィルムの弾性率のより好ましい範囲は4.5GPa〜8.0GPaの範囲内であり、さらに好ましい範囲は5.0GPa〜7.5GPaの範囲内である。
さらに、上記ポリイミドフィルムは、条件(3)を満たすことにより、吸湿膨張による、銅箔との間の内部応力による寸法変化が防止される。なお、上記ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数のより好ましい範囲は12ppm以下であり、さらに好ましい範囲は11ppm以下である。
本発明にかかるポリイミドフィルムは、上記3つの条件を満たすことにより、反りやカールを発生しないような熱膨張性と弾性率とを併せ持つとともに、吸水・吸湿性を低下させることが可能となり、吸湿による寸法変化を原因とする反りやカールも発生しないポリイミドフィルムを提供することが可能となる。
<ポリイミドの合成に用いられるモノマー成分>
本発明にかかるポリイミドフィルムは、主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸をイミド化することにより得られるポリイミドを用いる。すなわち、本発明で用いられるポリイミドは、前駆体のポリアミド酸を重合(合成)した後に、これをイミド化することにより得ることができる。
ここで、上記「主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸」とは、ポリアミド酸の原料である酸成分のうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有比率が最も大きく、ジアミン成分のうち、芳香族ジアミンの含有比率が最も大きい場合を指すものとする。
換言すれば、本発明においては、前駆体であるポリアミド酸の重合には、酸成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物を含み、ジアミン成分として芳香族ジアミンを含んでおり、これら成分が最も多く用いられていればよく、その他の酸成分やジアミン成分が用いられてもよい。
以下、ポリアミド酸の原料(モノマー成分)である酸成分およびジアミン成分について具体的に説明する。
<酸成分(酸二無水物成分)>
本発明にかかるポリイミドフィルムでは、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料のうち、酸成分として、少なくとも3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が用いられる。この3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物は、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の範疇に含まれるものである。
ポリアミド酸を重合する場合に、酸成分として上記3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いる場合の具体的な量(使用量)は特に限定されるものではないが、全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%とした場合に、20〜60mol%の範囲内で用いられることが好ましく、25〜60mol%の範囲内で用いられることがより好ましく、25〜55mol%のであることがさらに好ましい。換言すれば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の使用量の上限は、好ましくは60mol%以下であり、より好ましくは55mol%以下である。また、下限は、好ましくは20mol%以上であり、より好ましくは25mol%以上である。
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の使用量がこの範囲内であることにより、好適に線膨張係数と弾性率の調和をとることが可能となり、この範囲の上限以下であることにより、吸湿膨張係数を小さくすることが可能となる。
また、本発明で用いられる上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、上記3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物に加えて、さらに、芳香族エステル酸二無水物が用いられることが好ましい。ここで言う「芳香族エステル酸二無水物」とは、構造中にエステルを含む芳香族テトラカルボン酸酸二無水物を指すものとする。
上記芳香族エステル酸二無水物としては、特に限定されるものではないが、具体的な一例として、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等を挙げることができる。
上記芳香族エステル酸二無水物の使用量は、特に限定されるものではないが、全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%とした場合に、10〜60mol%の範囲内であることが好ましく、20〜55mol%の範囲内であることがより好ましく、25〜50mol%の範囲内であることがさらに好ましい。換言すれば、芳香族エステル酸二無水物の使用量の上限は、好ましくは60mol%以下であり、より好ましくは55mol%以下であり、より好ましくは50mol%以下である。また、下限は、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは20mol%以上であり、さらに好ましくは25mol%以上である。
上記芳香族エステル酸二無水物の使用量がこの範囲を下回らないことにより、弾性率および吸湿膨張係数の改善効果が大きく、この範囲を上回らないことによりしなやかなフィルムを得ることが可能となる。
本発明では、上述した芳香族エステル酸二無水物の中でも、特に、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)を好ましく用いることができる。これにより、機械的強度、吸湿膨張係数の改善および熱的挙動の観点から好適なポリイミドが得られる。
このp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)の使用量も特に限定されるものではないが、全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%とした場合に、10〜60mol%の範囲内であることが好ましく、20〜55mol%の範囲内であることがより好ましく、25〜50mol%の範囲内であることがさらに好ましい。換言すれば、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)の使用量の上限は、好ましくは60mol%以下であり、より好ましくは55mol%以下であり、より好ましくは50mol%以下である。また、下限は、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは20mol%以上であり、さらに好ましくは25mol%以上である。
さらに、本発明で用いられる上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、上記3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、あるいは、上記3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び上記芳香族エステル酸二無水物に加えて、他の芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。ここで言う「他の芳香族テトラカルボン酸二無水物」とは、上記3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び上記芳香族エステル酸二無水物に該当しない芳香族テトラカルボン酸酸二無水物を指すものとする。
上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、特に限定されるものではないが、具体的な一例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物のうちでも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がより好ましく用いられる。
上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用量は、特に限定されるものではないが、全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%とした場合に、50mol%以下であることが好ましく、45mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることがさらに好ましい。換言すれば、他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用量の上限は、好ましくは50mol%以下であり、より好ましくは45mol%以下であり、より好ましくは40mol%以下である。なお、下限は特に限定されるものではなく、0mol%以上であればよい。
上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物量の使用量がこの範囲内であることにより、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および/または芳香族エステル酸二無水物を用いることによる、ポリイミドフィルムの改質効果を大きくすることができる。
また、本発明では、得られるポリイミドフィルムに要求される物性等に応じて、上記酸成分として、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物(他の酸二無水物)が用いられてもよい。この他の酸二無水物の使用量も特に限定されるものではない。
<ジアミン成分>
本発明にかかるポリイミドフィルムでは、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料のうち、ジアミン成分として、少なくとも芳香族ジアミンが用いられる。
上記芳香族ジアミンとしては、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミンおよびその核置換化合物、ベンジジンおよびその核置換化合物、4,4’−オキシジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、2,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
本発明では、上記芳香族ジアミン成分には、直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンの少なくとも一方が含まれていることが好ましい。
ここで、上記「直線性ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、プロパギル基、ヘキサフルオロプロパギル基、カルボニル基、スルホン基、スルフィド基などのような屈曲基を主鎖中に含まず、2個のアミノ基の窒素原子とそれらが結合している炭素原子が一直線に並ぶ構造をもつジアミン化合物を指す。
上記直線性ジアミンの具体的な例としては、p−フェニレンジアミンおよびその核置換化合物、ベンジジンおよびその核置換化合物等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記直線性ジアミンは1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でもp−フェニレンジアミンを用いることがより好ましい。これにより、加工性、取り扱い性、特性調和の面から優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
また、上記「屈曲性ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、プロパギル基、ヘキサフルオロプロパギル基、カルボニル基、スルホン基、スルフィド基などの屈曲基を主鎖中に含むジアミン、または、屈曲基を含まない場合は、2個のアミノ基の窒素原子とそれらと結合する炭素原子が一直線に並ばない構造をもつジアミン化合物を指す。
上記屈曲性ジアミンの具体的な例としては、4,4’−オキシジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、2,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記屈曲性ジアミンは1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、4,4’−オキシジアニリンを用いることが好ましい。これにより、諸物性の調和に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
上記芳香族ジアミンのうち、直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンの使用量は特に限定されるものではないが、全芳香族ジアミン成分を100mol%としたときに、直線性ジアミンは20〜80mol%の範囲内で用いられることが好ましく、30〜70mol%の範囲内で用いられることがより好ましく、35〜65mol%の範囲内で用いられることがさらに好ましい。
同様に、全芳香族ジアミン成分を100mol%としたときに、屈曲性ジアミンは20〜80mol%の範囲内で用いられることが好ましく、30mol%〜70mol%の範囲内で用いられることがより好ましく、35〜65mol%の範囲内で用いられることがさらに好ましい。
換言すれば、直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンの使用量の上限は、それぞれ、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下であり、より好ましくは65mol%以下である。また、下限は、好ましくは20mol%以上であり、より好ましくは30mol%以上であり、さらに好ましくは35mol%以上である。また、直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンの使用量を対比させれば、全芳香族ジアミン成分を100mol%としたときに、それぞれ、20〜80mol%の範囲内および80〜20mol%の範囲内で用いられることが好ましく、30〜70mol%の範囲内および70〜30mol%の範囲内で用いられることがより好ましく、35〜65mol%の範囲内および65〜35mol%の範囲内で用いられることがさらに好ましい。
直線性ジアミンの使用量と屈曲性ジアミンの使用量が上記範囲内であることにより、弾性率と線膨張係数の調和が保たれ、フレキシブル銅張積層板またはTABテープの反り特性を改善することが容易となる。
上記直線性ジアミンと上記屈曲性ジアミンの、上記ポリイミド分子(ポリアミド酸分子)中での分布は特に限定されるものではないが、ランダムに分布していることが好ましい。これにより、高い弾性率と大きい線膨張係数とを両立させることが容易となる。
また、本発明では、得られるポリイミドフィルムに要求される物性等に応じて、上記ジアミン成分として、芳香族ジアミン以外のジアミン(他のジアミン)が用いられてもよい。この他のジアミンの使用量も特に限定されるものではない。
(2)本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法について以下に説明する。
上記ポリアミド酸の重合(合成)方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。有機溶媒中に酸成分およびジアミン成分をほぼ等モル量(実質的に等モルの量)となるように有機溶媒中に溶解させて、反応させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒溶液(以下、ポリアミド酸溶液と称する)を調製すればよい。
反応させるときの条件は特に限定されるものではないが、反応温度としては、−20℃〜90℃の範囲内が好ましく、反応時間としては、30分〜24時間程度の範囲内が好ましい。また、反応時の雰囲気としては、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気であることがより好ましい。
上記ポリアミド酸の重合では、酸成分およびジアミン成分を反応させる手法にの違いから複数種類の重合方法を用いることができる。具体的には、例えば、以下の1)から5)に示すような重合方法を好適に用いることができる。
1)芳香族ジアミンを有機溶媒中に溶解し、この芳香族ジアミンと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法。
上記ポリアミド酸溶液の調製に用いられる有機溶媒、すなわちポリアミド酸の重合に用いられる重合用溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であれば特に限定されるものではない。具体的な一例としては、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができ、この中でも、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドをより好ましく用いることができる。これら有機溶媒は、通常、単独で用いるが、必要に応じて2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
また、上記ポリアミド酸溶液の組成については特に限定されるものではないが、有機溶媒中にポリアミド酸が5〜35重量%の範囲内で溶解されていることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。かかる範囲内であることにより、適当な分子量と溶液粘度を得ることが可能となる。
上記ポリイミドフィルムには、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加してもよい。フィラーとしては、特に限定されるものではないが、好ましい具体例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母等が挙げられる。
また、上記フィラーの粒子径は、改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって変動し得るものであり、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜75μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜50μmの範囲内であることがさらに好ましく、0.1〜25μmの範囲内であることが特に好ましい。粒子径がこの範囲内であれば、ポリイミドフィルムにおいて改質効果が現れやすく、この範囲を上回らなければ、ポリイミドフィルムにおいて良好な表面性、機械的特性を得ることができる。
また、上記フィラーの添加部数についても、改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などによって変動し得るものであり、特に限定されるものではない。一般的には、フィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜90重量部の範囲内であることがより好ましく、0.02〜80重量部の範囲内であることがさらに好ましい。フィラー添加量がこの範囲を下回らなければ、フィラーによる改質効果が現れやすく、この範囲を上回らなければポリイミドフィルムの良好な機械的特性が保たれる。
フィラーの添加の方法は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、重合前または重合中に重合反応液に添加する方法、ポリアミド酸の重合完了後3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法、フィラーを含む分散液を用意しこれをポリアミド酸溶液に混合する方法等が挙げられる。
中でも、フィラーを含む分散液を用意しこれをポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法を用いることが好ましい。これにより、フィラーによる製造ラインの汚染を最も少なくすることができる。上記フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために、分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いてもよい。
本発明では、上記ポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。イミド化の方法としては、熱イミド化法と、化学イミド化法を挙げることができるが、化学イミド化法を用いることがより好ましい。これにより、熱的寸法安定性や機械的強度に優れるポリイミドフィルムを得ることができる。
次に本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法の好ましい一例を挙げ説明するが、もちろん本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法は、a)有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、b)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、c)上記製膜ドープを支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、d)更にゲルフィルムを加熱して、残存するアミド酸をイミド化し、乾燥させる工程、の4工程を少なくとも含むことが好ましい。
上記製造方法において、脱水剤と、好ましくはイミド化触媒とを含む硬化剤を併用することもできる。
本発明の好ましい一形態を例にとり、硬化剤を併用した化学イミド化法によるポリイミドフィルムの製造工程を説明する。
化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第3級アミン類等に代表されるイミド化触媒とをいずれかの工程で作用させる方法である。
化学イミド化法に熱イミド化法を併用してもよい。加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る。
a)有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリアミド酸溶液を得、
b)脱水剤およびイミド化触媒を低温でポリアミド酸溶液中に混合した製膜ドープをガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上にフィルム状にキャストし、
c)支持体上で80℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃の温度領域で加熱することで脱水剤及びイミド化触媒を活性化することによって部分的に硬化及び/または乾燥した後支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有し、式1
(A−B)×100/B・・・・式1
式1中、A、Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量
B:ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量
から算出される揮発分含量は5〜500%の範囲、好ましくは5〜100%、より好ましくは10〜80%、最も好ましくは30〜60%の範囲にある。
この範囲のフィルムを用いることが好適であり、外れると機械的強度の低下等を引き起こすことがある。
d)前記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、残存添加剤および触媒を除去し、そして残ったアミド酸を完全にイミド化して、本発明のポリイミドフィルムが得られる。
この時、最終的に400〜580℃の温度で5〜400秒間加熱するのが好ましい。この温度より高い及び/または時間が長いと、フィルムの熱劣化が起こり問題が生じる。逆にこの温度より低い及び/または時間が短いと所定の効果が発現しないことがある。
得られるポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、特に、TABテープやFPCのベースフィルムとして用いる場合には、フィルムの厚みは10〜125μmの範囲内であることが好ましく、20〜100μmの範囲内であることがより好ましく、25〜90μmの範囲内であることがさらに好ましく、40〜80μmの範囲内であることが特に好ましい。
このようにして得られる、本発明にかかるポリイミドフィルムは、前述したように、100℃から200℃における平均線膨張係数が18〜28ppm/℃の範囲内であり、弾性率が4.5GPa以上、吸湿膨張係数が13ppm以下であるという条件を満たすものである。
(3)本発明の用途(本発明の有用性)
本発明にかかるポリイミドフィルムは、その物性に応じた様々な用途に用いることができるが、特に、FPCや、TABテープ等に用いるFC(フィルムキャリア)テープに好適に用いることができる。本発明にかかるFCテープは、本発明にかかるポリイミドフィルム上に接着剤層を設け、接着剤層の上に保護層を設けて3層構造としたテープをいう。接着剤層の材質としては、例えばエポキシ系樹脂、ナイロン変性エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、フェノール変性エポキシ系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。また、保護層の材質としても、例えばPET、EVA等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
また、本発明にかかるFPCやTABフィルムは、本発明にかかるポリイミドフィルムの少なくとも片面に、接着剤層を介して/又は介さずに金属導電層が形成されているものであれば特に限定されるものではない。換言すれば、本発明にかかるFPCやTABテープにおいては、上記ポリイミドフィルムからなる層と、金属導電層とを少なくとも有する構成であればよく、ポリイミドフィルムからなる層と金属導電層との間に接着剤層を有していても良い。また、ポリイミドフィルムからなる層(ベースフィルム)の片面のみに金属導電層が積層されていてもよいし、両面に金属導電層が積層されていてもよい。
したがって、本発明には、ポリイミドフィルム/金属導電層からなる2層構造の積層体、金属導電層/ポリイミドフィルム/金属導電層からなる3層構造の積層体、ポリイミドフィルム/接着剤層/金属導電層からなる3層構造の積層体、金属導電層/接着剤層/ポリイミドフィルム/接着剤層/金属導電層からなる5層構造の積層体等が含まれることになる。
上記接着剤層の材質としては、例えばエポキシ系樹脂、ナイロン変性エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、フェノール変性エポキシ系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。また上記金属導電層に用いられる金属としては、例えば、銅等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
また、本発明にかかるポリイミドフィルムを用いて、接着剤を介して銅箔をラミネートした、FPCやTABテープを作成した場合、接着剤を完全硬化させ、かつ23℃、相対湿度60%の環境下で100時間調湿した後の反り量は、接着剤面を内側にした反りをプラス、接着剤面を外側にした反りをマイナスとして、次のようになる。銅をエッチングしない状態では、反り量は、好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0mm以下、特に好ましくは−0.5mm以下である。また、銅箔をエッチングにより完全に除去した状態では、反り量は好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以下、特に好ましくは2.0mm以下である。銅箔付き及び銅箔をエッチングにより完全に除去した状態の反り量がこれらの範囲を同時に満たすときに、加工および実装工程における反り由来の不具合点を解消することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例又は比較例で得られたポリイミドフィルムの弾性率の測定はASTM D882に準じて行った。また、得られたポリイミドフィルムの線膨張係数、吸湿膨張係数は次のようにして測定した。
〔線膨張係数の測定〕
100℃から200℃の平均線膨張係数の測定は、セイコー電子(株)社製TMA120Cを用いて行った。サンプルサイズは幅3mm、長さ10mmとした。3gの荷重をかけ、10℃/minで10℃〜400℃まで一旦昇温させた後、10℃まで冷却した。さらに10℃/minで昇温させて、2回目の昇温時の100℃及び200℃における熱膨張率から平均値として計算した。
〔吸湿膨張係数の測定〕
測定するフィルムを、50℃、相対湿度30%の環境試験機に24時間放置し、フィルム寸法(L1)を測定した。次にそのフィルムを50℃、相対湿度80%の環境試験機に24時間放置し、フィルム寸法(L2)を測定し、吸湿膨張係数を下記式より算出した。
吸湿膨張係数(ppm)=(L1−L2)÷L1÷(80−30)×106
また、得られたポリイミドフィルムから、次のようにTABテープを作成し、反りを測定した。
〔TABテープの作成〕
ポリアミド樹脂(日本リルサン社製プラタボンドM1276)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート828)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂10重量部、トルエン/イソプロピルアルコール1/1混合溶液150重量部を混合した溶液に、ジアミノジフェニルスルホン/ジシアンジアミド4/1 20%メチルセロソルブ溶液45重量部を混合した接着剤溶液を調製した。
25μm厚みのPETフィルム上に上記接着剤を、乾燥後11μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥した。得られたBステージ接着剤付きPETフィルムを26mm幅にスリットした。
35mm幅のポリイミドフィルムの中央部に、上記のBステージ接着剤付きPETフィルムを張り合わせ、90℃で1kg/cm2の圧力で圧着した。PETフィルムを剥がし、PETフィルムを剥がしたポリイミドフィルムの面に、銅箔(三井金属製、VLP18μm厚み)を、ロールラミネート法で張り合わせた(エッチング無しTABテープ)。張り合わせの温度は120℃、圧力は2kg/cm2である。
上記銅張あわせ品を、60℃で3時間、80℃で3時間、120℃で3時間、140℃で3時間、160℃で4時間のステップで加熱後徐冷して接着剤の硬化を行った。得られたテープを「銅付きテープ」とした。
接着剤の硬化後、銅箔をエッチングにより完全に除去した。得られたテープを「銅フルエッチングテープ」とした。
〔反り量の測定〕
反り量の値は、上記の手順で作成したTABテープを、長さ40mm×幅35mm角に切り出して測定した。試験片を、相対湿度60%、温度23℃の部屋に72時間放置したのち、平面上に静置し、4隅のうき上がり高さを測定した。反り量の値は、4点のデータの平均値で示した。
〔実施例1〕
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)407.5gに、4,4’−オキシジアニリン(ODA)21.98gと、p−フェニレンジアミン(PDA)7.91gとを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)29.47gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にp-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)(TMHQ)25.15gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)7.98gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度3000ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。なお、表1および後述する表3においては、モノマー組成は、モノマーを添加した順序にしたがって、最上段から下方の段に向かって記載されている。
このポリアミド酸溶液100gに無水酢酸11.4g、イソキノリン4.8gおよびDMF33.8gからなる硬化剤を混合し、攪拌した。得られた溶液を、遠心分離により脱泡した後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。得られたアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を90℃で600秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを120℃、250℃、350℃、450℃で各180秒間加熱した後、400℃の遠赤外線オーブンでさらに180秒間加熱処理した。このようにして得られた厚み50μmのポリイミドフィルムを用い、上記方法に従ってTABテープを作成した。
得られたポリイミドフィルムの弾性率、平均線膨張係数、吸湿膨張係数、及びTABテープの反り量を「銅付きテープ」と「銅フルエッチングテープ」について測定した。測定の結果を表2に示す。
〔実施例2〕
DMF407.5gにODA17.90gと、PDA9.67gとを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA28.81gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ24.59gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにBTDA11.52gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度2800ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。また、表1中でBTDAのmol%が50および20となっているのは、最初に加えたBPDAと後から加えたBPDAの量を示している。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例3〕
DMF407.5gにODA17.90g、PDA9.67gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA38.61gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ24.59gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにBTDA1.73gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度310000ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。また、表1中でBTDAのmol%が50および20となっているのは、最初に加えたBPDAと後から加えたBPDAの量を示している。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例4〕
DMF407.5gにODA19.86g、PDA8.77gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA29.04gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ28.92gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA5.90gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度2900ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例5〕
DMF407.5gにODA18.66g、PDA10.07gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA30.02gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ25.62gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA8.13gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度3200ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例6〕
DMF407.5gにODA22.92g、PDA8.25gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA18.44gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ26.23gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA16.65gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度3000ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例7〕
DMF407.5gにODA25.13g、PDA7.31gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA12.44gを徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ26.55gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA21.06gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度3000ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔実施例8〕
DMF407.5gにODA18.86g、PDA10.19gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水(BPDA)11.09gを徐々に添加し、1時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA18.22gを徐々に添加して1時間撹拌後、TMHQ25.91gを添加して1時間撹拌、さらにPMDA8.22gを添加して23℃における溶液粘度2700ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表1に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表2に示す。
〔比較例1〕
DMF407.5gにODA21.48g、PDA11.06gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BPDA31.56gを徐々に添加し、2時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA14.04gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにBTDA13.83gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度2800ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例2〕
DMF407.5gにODA19.20g、PDA10.37gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BPDA28.21gを徐々に添加し、2時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ26.36gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA8.36gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度2800ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例3〕
DMF407.5gにODA19.92gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、PMDA16.49gを徐々に添加し、1時間撹拌してPMDAを完全に溶解させた。この溶液にPDA10.76gを溶解させた後、17.57gのBPDAを徐々に添加して2時間攪拌し、BPDAを完全に溶解させた。さらに、TMHQ26.45gを徐々に添加して1時間撹拌し、さらにPMDA1.30gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度3100ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。また、表3中でPMDAのmol%が50および20となっているのは、最初に加えたPMDAと後から加えたBPDAの量を示している。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例4〕
DMF407.5gにODA30.21g、PDA5.15gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、TMHQ26.39gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA30.75gを添加して1時間撹拌して23℃における溶液粘度2900ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例5〕
DMF407.5gにODA44.27gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、PMDA48.23gを徐々に添加し、2時間撹拌してPMDAを完全に溶解させて23℃における溶液粘度2800ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例6〕
DMF407.5gに、ODA24.87g、PDA13.43gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、PMDA54.19gを徐々に添加し、2時間撹拌してPMDAを完全に溶解させて23℃における溶液粘度2900ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例7〕
DMF489gにODA26.19g、PDA14.14gを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、BTDA42.14gを徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにPMDA28.53gを徐々に添加し、2時間撹拌してPMDAを完全に溶解させて23℃における溶液粘度3000ポイズ、固形分濃度18.5wt%のポリアミド酸溶液を得た。なお、このときに添加したモノマー成分のmol%を表3に示す。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルム及びTABテープを得た。ポリイミドフィルム及びTABテープの特性を表4に示す。
〔比較例8〕
上述した特許文献2に開示されている、酸成分として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いる実施例11と同様のモノマー組成でポリアミド酸を得た。各モノマーの添加重量は、PPD5.93g;PMDA11.64g;ODA32.97g;BTDA17.68g;PMDA24.28gであった。
このポリアミド酸溶液を用いた以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリイミドフィルムを得、吸湿膨張係数を測定したところ、18ppmであり、非常に大きな値となった。このことから、上記特許文献2に開示されている技術では、吸湿膨張係数を小さくすることは実現できていない。
Figure 0004456836
Figure 0004456836
表2に示すように、実施例1〜8で製造され、評価されたポリイミドフィルムは、100℃から200℃における平均線膨張係数が18ppm/℃以上、28ppm/℃以下であり、弾性率が4.5GPa以上、吸湿膨張係数が13ppm以下であり、本発明にかかるポリイミドフィルムとして、優れた物性を示した。また、「銅付きテープ」における反り量は、全ての実施例で−0.5mm以下であり、「フルエッチテープ」における反り量も、全ての実施例で2.0mm以下であり、加工及び実装工程における反り由来の不具合点を解消できることが示された。
Figure 0004456836
Figure 0004456836
これに対して、表4に示すように、比較例1〜7で製造され、評価されたポリイミドフィルムは、100℃から200℃における平均線膨張係数、弾性率、吸湿膨張係数のいずれかが上記(1)〜(3)の条件を満たさず、本発明にかかるポリイミドフィルムに比べて明らかに物性が劣っていた。
本発明にかかるポリイミドフィルムは、以上のように、主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸を用いて得られるポリイミドフィルムであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が含まれるとともに、100℃から200℃における平均線膨張係数が18ppm/℃以上、28ppm/℃以下であり、弾性率が4.5GPa以上であるとともに、吸湿膨張係数が13ppm以下であるものである。
それゆえ、反りやカールを発生しないような線膨張係数と弾性率を併せ持つとともに、吸湿による寸法変化を原因とする反りやカールも発生しないポリイミドフィルムを提供することが可能となる。それゆえ、様々な電子機器において用いられるFPCやTABテープへの加工工程において、実装不良の原因となる反りやカールの発生を防止できる。
したがって、本発明は、ポリイミドフィルムを製造する化学産業や樹脂産業だけでなく、FPCやTABテープ等を利用した電子部品産業、さらには、電子部品を利用した電気電子機器産業にも好適に利用することができる。

Claims (12)

  1. 主として芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とから合成されるポリアミド酸を用いて得られるポリイミドフィルムであって、
    100〜200℃における平均線膨張係数が18〜28ppm、弾性率が4.5GPa以上、吸湿膨張係数が13ppm以下であり、
    芳香族テトラカルボン酸二無水物として、
    i)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び、芳香族エステル酸二無水物
    又は、
    ii)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び、芳香族エステル酸二無水物に加えて、ピロメリット酸二無水物、及び/又は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
    用いてなるポリイミドフィルムであって、
    全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%としたときに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を、20〜60mol%の範囲内となるように用いることを特徴とするポリイミドフィルム。
  2. 全芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100mol%としたときに、上記芳香族エステル酸二無水物を、10〜60mol%の範囲内となるように用いることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 上記芳香族エステル酸二無水物として、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)が用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
  4. 上記芳香族ジアミン成分として、直線性ジアミンと、屈曲性ジアミンとを、それぞれ少なくとも1種類用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  5. 全芳香族ジアミン成分を100mol%としたときに、上記直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンを、それぞれ、20〜80mol%の範囲内および80〜20mol%の範囲内で用いることを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルム。
  6. 上記直線性ジアミンとして、p−フェニレンジアミンが用いられることを特徴とする請求項4または5に記載のポリイミドフィルム。
  7. 上記屈曲性ジアミンとして、4,4’−オキシジアニリンが用いられることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  8. 上記直線性ジアミンおよび屈曲性ジアミンは、ポリイミド分子中で、ランダムに分布していることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  9. 少なくとも、
    a)有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、
    b)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
    c)上記製膜ドープを支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
    d)更にゲルフィルムを加熱して、残存するアミド酸をイミド化し、乾燥させる工程、
    を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  10. 少なくとも、脱水剤とイミド化触媒とを併用することを特徴とする請求項9に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  11. 請求項1〜8の何れかに記載のポリイミドフィルム上に接着剤層および保護層を設けてなることを特徴とするフィルムキャリアテープ。
  12. 請求項1〜8の何れかに記載のポリイミドフィルムからなる層と、金属導電層とを少なくとも有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
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