JP4433488B2 - カーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本出願人は先に、樹脂材料とカーボンナノ材料との混合を促す技術を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
図9は従来の製造フロー図であり、ST××はステップ番号を示す。
ST101:先ず、樹脂材料及びカーボンナノ材料を所定量準備する。樹脂材料は、粉末や粒状物など表面積が大きな形態の材料が望ましい。
ST102:樹脂材料及びカーボンナノ材料を混合器に入れ、樹脂材料の表面全体が軟化する温度に保ちつつ混合する。
これで、混合物を得ることができる。
樹脂材料111の周囲にカーボンナノ材料112が付着するため、カーボンナノ材料112同士が凝集する虞がなく、結果的にカーボンナノ材料112を均一に樹脂材料に分散させることができる。
そこで、従来の混合技術(加熱混合技術、以下、加熱法という。)に代わる混合技術が求められる。
前記有機溶媒と前記樹脂材料とを混合し、有機溶媒中に樹脂材料を溶解させて樹脂分散溶液を得る樹脂分散工程と、
得られた樹脂分散溶液に、前記カーボンナノ材料を添加し、機械的に撹拌してカーボンナノ・樹脂分散溶液を得る撹拌工程と、
得られたカーボンナノ・樹脂分散溶液に水を添加して、前記有機溶媒を水相へ移行する溶媒水相化工程と、
水相化溶液を乾燥することで、前記有機溶媒を除去し、樹脂で被覆されたカーボンナノ材料を得る乾燥工程と、
得られた被覆されたカーボンナノ材料を射出成形することでカーボンナノ複合樹脂成形品を得る射出成形工程と、からなるカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法である。
そのためには、被覆材としての樹脂材料を液体にする必要がある。液状にするには溶剤が必要であるが、本発明では、毒性と後処理の2点を考慮して、テトラヒドロフランを主成分とする有機溶媒を採用した。
このようなテトラヒドロフランを主成分とする有機溶媒で樹脂材料を液状にし、この溶液にカーボンナノ材料を混ぜる。これで、カーボンナノ材料は樹脂材料で被覆される。後は、水で有機溶媒を除去し、乾燥させれば、樹脂材料で被覆されたカーボンナノ材料を得ることができる。
樹脂材料で被覆されたカーボンナノ材料を用いて射出成形を実施すれば、高強度の成形品を得ることができる。
加えて、請求項1に係る発明は、得られた樹脂で被覆されたカーボンナノ材料を射出成形することでカーボンナノ複合樹脂成形品を得る射出成形工程とを含むカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法である。
樹脂で被覆されたカーボンナノ材料で射出成形したため、カーボンナノ材料の分散性が確保され、高い強度の樹脂成形品を製造することができる。
請求項3に係る発明では、カーボンナノ材料が、樹脂で被覆されたカーボンナノ材料に占める割合は、3〜20質量%とした。3質量%以上であれば、高い強度が得られる。一方、20質量%を超えると、最高引張降伏点に達せずに切れてしまい、明らかに強度が低下していることが判明した。そのため、カーボンナノ材料の添加は3〜20質量%とする。
図1は本発明に係る製造方法の工程を説明する図であり、(a)に示すように、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)を主成分とする有機溶媒10と、この有機溶媒10に溶解する樹脂材料11と、適量のカーボンナノ材料12と、水13とを準備する。
次に、(b)に示すように、樹脂材料11と有機溶媒10とを混合し、有機溶媒10中に樹脂材料11を溶解させて樹脂分散溶液14を得る。混合は、樹脂材料11に有機溶媒10を注ぐ方法と、有機溶媒10の中に樹脂材料11を投入する方法の何れであってもよい。
(f)は、(e)のf部拡大図であり、樹脂で被覆されたカーボンナノ材料19は、カーボンナノ材料12が大量の樹脂材料11で被覆されている。
このようなテトラヒドロフランを主成分とする有機溶媒で樹脂材料を液状にし、この溶液にカーボンナノ材料を混ぜる。これで、カーボンナノ材料は樹脂材料で被覆される。後は、水で有機溶媒を除去し、乾燥させれば、樹脂材料で被覆されたカーボンナノ材料を得ることができる。
本発明に係る実験例を以下に述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
すなわち、PC(ポリカーボネート樹脂)63g〜67.9gを準備し(ST21)、これにTHF溶媒500mlを投入して(ST22)、樹脂分散溶液を得る(ST23)。この樹脂分散溶液にCNF(カーボンナノ材料)2.1g〜7gを投入し(ST24)、60分間機械的撹拌を実施し(ST25)、更に120分間超音波撹拌を実施する(ST26)。
さらなる比較のために、従来の技術(図9)で、成形材料を製造し、この材料で樹脂成形品を製造し、得られた樹脂成形品を引張り試験機に掛けて、引張り強さを計測した。
以上の実施例1〜3及び比較例1〜5の内容及び結果を、次表にまとめた。
実施例3は、実施例1に対して、カーボンナノ材料の添加率を10%とした。得られた樹脂成形品の引張り強さは、72.3MPaであった。
実施例4は、実施例1に対して、カーボンナノ材料の添加率を20%とした。得られた樹脂成形品の引張り強さは、74.8MPaであった。
すなわち、比較例1は、ポリカーボネート66.5g、THF溶媒500ml、カーボンナノ材料3.5gを準備し、図3の要領で処理した。カーボンナノ材料の添加率は5%である。得られた樹脂成形品の引張り強さは、64.7MPaであった。
比較例2は、比較例1に対して、カーボンナノ材料の添加率を10%とした。得られた樹脂成形品の引張り強さは、66.0MPaであった。
すなわち、比較例3は、ポリカーボネート66.5g、カーボンナノ材料3.5gを準備し、図9の要領で処理した。カーボンナノ材料の添加率は5%である。得られた樹脂成形品の引張り強さは、64.4MPaであった。
比較例4は、比較例3に対して、カーボンナノ材料の添加率を7.5%とした。得られた樹脂成形品の引張り強さは、65.9MPaであった。
比較例5は、比較例3に対して、カーボンナノ材料の添加率を10%とした。得られた樹脂成形品の引張り強さは、64.7MPaであった。
図4はカーボンナノ材料の添加率と引張り強さの相関を示すグラフであり、実施例1〜4と比較例1〜2と比較例3〜5をプロットしたところ、実施例1〜4は、比較例1〜5より10%程度高い引張り強さが得られた。
一方、撹拌を促すために超音波撹拌を追加した比較例1〜2が、比較例3〜5並であったことから、超音波撹拌を施すと樹脂の劣化が起こり、添加剤が樹脂から抜けやすくなるためと考えられる。
図5は実施例5のためのフロー図であり、PS(ポリスチレン樹脂)66.5gを準備し(ST41)、これにTHF溶媒500mlを投入して(ST42)、樹脂分散溶液を得る(ST43)。この樹脂分散溶液にCNF(カーボンナノ材料)3.5gを投入し(ST44)、60分間機械的撹拌を実施し(ST45)、次に水を投入し(ST46)、THF溶液を水相化した(ST47)。これを濾過し(ST48)、乾燥し(ST49)、塊を得た。この塊を射出成形材料に適する大きさに粉砕し(ST50)、さらに乾燥させる(ST51)。適当な大きさの射出成形材料を射出成形機へ供給し、射出成形を実施する(ST52)。得られた樹脂成形品を引張り試験機に掛けて、引張り強さを計測する(ST53)。
比較例6は、PS(ポリスチレン樹脂)66.5g、カーボンナノ材料3.5gを準備し、図9の要領で処理した。得られた樹脂成形品の引張り強さは、42.4MPaであった。
45MPa/42.4MPa=1.06の計算により、実施例5は比較例6より、6%引張り強さの点で優れていた。
図6は実施例6のためのフロー図であり、PS(ポリスチレン樹脂)75gを準備し(ST61)、これにTHF溶媒800mlを投入して(ST62)、樹脂分散溶液を得る(ST63)。この樹脂分散溶液にPPE(ポリフェニレンエーテル樹脂)20gを投入し(ST64)、さらにCNF(カーボンナノ材料)5gを投入し(ST65)、5日間機械的撹拌を実施し(ST66)、次に水を投入し(ST67)、THF溶液を水相化した(ST68)。これを濾過し(ST69)、乾燥し(ST70)、塊を得た。この塊を射出成形材料に適する大きさに粉砕し(ST71)、さらに乾燥させる(ST72)。適当な大きさの射出成形材料を射出成形機へ供給し、射出成形を実施する(ST73)。得られた樹脂成形品を引張り試験機に掛けて、引張り強さを計測する(ST74)。
比較例7は、PS75g、PPE(ポリフェニレンエーテル樹脂)20g、カーボンナノ材料5gを準備し、図9の要領で処理した。得られた樹脂成形品の引張り強さは、52MPaであった。
56MPa/52MPa=1.077の計算により、実施例6は比較例7より、約8%引張り強さの点で優れていた。
このように、本発明では、THF溶媒に可溶な樹脂材料と、溶媒に溶けない樹脂の組合せであっても強度を高めることができる。
実験番号4では、実験番号2に対して、未黒鉛化カーボンナノ材料の添加率は20%に変更した。得られた樹脂成形品の引張り強さは、81.3MPaであった。
これに対して、実線は、表4に示した実験1から実験4の引張り強さ59.2MPa、76.0MPa、80.0MPa、81.3MPaを結ぶ曲線である。
Claims (4)
- テトラヒドロフランを主成分とする有機溶媒と、この有機溶媒に溶解するポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂材料と、カーボンナノ材料と、水とを準備する工程と、
前記有機溶媒と前記樹脂材料とを混合し、有機溶媒中に樹脂材料を溶解させて樹脂分散溶液を得る樹脂分散工程と、
得られた樹脂分散溶液に、前記カーボンナノ材料を添加し、機械的に撹拌してカーボンナノ・樹脂分散溶液を得る撹拌工程と、
得られたカーボンナノ・樹脂分散溶液に水を添加して、前記有機溶媒を水相へ移行する溶媒水相化工程と、
水相化溶液を乾燥することで、前記有機溶媒を除去し、樹脂で被覆されたカーボンナノ材料を得る乾燥工程と、
得られた被覆されたカーボンナノ材料を射出成形することでカーボンナノ複合樹脂成形品を得る射出成形工程と、からなるカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法。 - 前記乾燥工程では、前記水相化溶液を濾過することで、水相化されている有機溶媒を分離除去し、残留物を乾燥させすることで、前記樹脂で被覆されたカーボンナノ材料を得ることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法。
- 前記カーボンナノ材料が、前記樹脂で被覆されたカーボンナノ材料に占める割合は、3〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法。
- 前記カーボンナノ材料は、黒鉛化処理を施していない未黒鉛カーボンナノ材料であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノ複合樹脂成形品の製造方法。
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