この発明は、潤滑が必要な部位にオイルを供給する変速機の潤滑装置に関するものである。
従来から、車両に搭載される変速機は相対回転する回転部材、例えば、相互に噛合された歯車、プーリとベルト、軸受の内輪および外輪と転動体などが設けられており、これらの回転部材同士の相対回転による発熱、焼き付き、摩耗などを抑制するために、オイルを供給する潤滑装置が設けられている。このような潤滑装置を有する変速機の制御装置が、特許文献1に記載されている。この特許文献1においては、オイルポンプから吐出されたオイルが油路を経由して、プライマリレギュレータバルブの入力ポートに供給される構成となっている。そして、油路の油圧に応じてプライマリレギュレータバルブのスプールが動作して、油路のオイルが逃がしポートから排出されて、油路の油圧が制御される。この油路の圧油が、ベルト式無段変速機のプライマリプーリの油圧室、およびセカンダリプーリの油圧室に供給される構成となっている。
前記逃がしポートのオイルは、セカンダリレギュレータバルブを経由して潤滑系統に供給される構成となっている。一方、油路のオイルを、減圧弁およびセカンダリレギュレータバルブを経由させて潤滑系統に供給する別の油路が設けられている。そして、減圧弁からセカンダリレギュレータバルブに至る油路には、オリフィスが設けられている。このため、プライマリレギュレータバルブの逃がしポートからオイルが排出されない場合でも、オイルポンプから吐出されたオイルの一部を、減圧弁およびセカンダリレギュレータバルブを経由させて潤滑系統に供給することが可能であり、潤滑系統のオイル不足を抑制できるとされている。なお、車両用自動変速機の潤滑装置は、特許文献2にも記載されている。
特開2001−330112号公報
特開平2−176249号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されている潤滑装置では、プライマリレギュレータバルブを経由して潤滑系統にオイルを供給できない場合でも、減圧弁およびオリフィスおよびセカンダリレギュレータバルブを経由させて、オイルを潤滑系統に供給するため、オイルポンプの仕事量が増加する恐れがあった。
この発明は上記課題を解決するためのもので、オイルポンプの仕事量の増加を抑制することのできる変速機の潤滑装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、圧力制御弁を経由して潤滑系統にオイルを供給する第1の供給経路と、前記圧力制御弁がフェールした場合に、前記潤滑系統にオイルを供給することの可能な変速機の潤滑装置において、エンジンにより駆動される第1のオイルポンプと、電動機により駆動される第2のオイルポンプとを有し、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第1の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるとともに、前記第2のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるように、前記第1の供給経路に、第1のオイルポンプおよび第2のオイルポンプおよび第1の逆止弁および第2の逆止弁および圧力制御弁が配置されているとともに、前記圧力制御弁がフェールした場合に、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルの流れ方向で、前記第1の逆止弁よりも上流を流れるオイルを、絞り部および第3の逆止弁を経由させて潤滑系統に供給する第2の供給経路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、圧力制御弁の入力ポートと出力ポートとが連通してその出力ポートから排出されたオイルを潤滑系統に供給する第1の供給経路と、前記圧力制御弁の前記入力ポートと前記出力ポートとが遮断されるフェールが生じた場合に、前記潤滑系統にオイルを供給することの可能な変速機の潤滑装置において、エンジンにより駆動される第1のオイルポンプと、電動機により駆動される第2のオイルポンプとを有し、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第1の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるとともに、前記第2のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるように、前記第1の供給経路に、第1のオイルポンプおよび第2のオイルポンプおよび第1の逆止弁および第2の逆止弁および圧力制御弁が配置されているとともに、前記圧力制御弁の前記入力ポートと前記出力ポートとが遮断されるフェールが生じた場合に、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルの流れ方向で、前記第1の逆止弁よりも上流を流れるオイルを前記潤滑系統に供給し、かつ、そのオイルが経由する第1の絞り部および第3の逆止弁を有する第2の供給経路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記圧力制御弁がフェールしていない場合は、前記第2のオイルポンプから吐出されたオイルが全て前記圧力制御弁を経由して前記潤滑系統に供給されるように、前記第1の供給経路が構成されていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項2の構成に加えて、前記第2のオイルポンプから前記潤滑系統に至る経路に、前記圧力制御弁と並列に第3の供給経路が設けられているとともに、この第3の供給経路には第2の絞り部が設けられており、前記第1のオイルポンプから第1の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量よりも、前記第2のオイルポンプから前記第3の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量の方を少なくなるように、前記第2の絞り部の流通面積の方が前記第1の絞り部の流通面積よりも狭く構成されていることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、オイルポンプから吐出されたオイルが供給される第1の油路と、この第1の油路から潤滑系統に排出されるオイルの流量を制御することにより、前記第1の油路の油圧を制御する圧力制御弁と、前記第1の油路に接続され、かつ、前記圧力制御弁がフェールした場合は、前記第1の油路のオイルを、前記圧力制御弁をバイパスさせて前記潤滑系統に供給する第2の油路とを有する変速機の潤滑装置において、前記第2の油路に、前記第1の油路の油圧が開弁油圧以下である場合に閉じられ、かつ、前記第1の油路の油圧が開弁油圧を越えた場合に開放されるプレッシャーリリーフバルブが設けられていることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記圧力制御弁が開弁される第1の油路の油圧よりも、前記プレッシャーリリーフバルブが開弁される第1の油路の油圧の方が高圧に設定されていることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項5の構成に加えて、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に摩擦係合装置が設けられており、前記第1の油路の圧油により、前記摩擦係合装置のトルク容量が制御されるように構成されているとともに、前記プレッシャーリリーフバルブの開弁油圧は、前記摩擦係合装置を係合させる場合における前記第1の油路の目標油圧よりも高圧に設定されていることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項5の構成に加えて、前記圧力制御弁から排出されたオイルが、下流側油路および下流側圧力制御弁を経由して前記潤滑系統に供給されるように構成され、この下流側圧力制御弁は、前記下流側油路から前記潤滑系統に排出されるオイル量を制御することにより、前記下流側油路の油圧を制御する構成を備えており、前記第2の油路であって、前記プレッシャーリリーフバルブと前記潤滑系統との間に、第2のプレッシャーリリーフバルブが設けられており、前記第2の油路であって、前記プレッシャーリリーフバルブと第2のプレッシャーリリーフバルブとの間と、前記下流側油路とを接続する接続油路が設けられており、前記第2のプレッシャーリリーフバルブは、前記下流側油路の油圧が第2の所定値以下である場合に閉じられ、かつ、第2の所定値を越えた場合に開放される構成であるとともに、駆動力源の動力を車輪に伝達する動力伝達装置が設けられており、前記下流側油路から前記動力伝達装置に供給される圧油により、前記動力伝達経路における動力伝達状態が制御される構成であることを特徴とするものである。
請求項9の発明は、請求項5の構成に加えて、前記圧力制御弁から排出されたオイルが、下流側油路および下流側圧力制御弁を経由して前記潤滑系統に供給されるように構成され、この下流側圧力制御弁は、前記下流側油路から前記潤滑系統に排出されるオイル量を制御することにより、前記下流側油路の油圧を制御する構成を備えており、前記第2の油路であって、前記プレッシャーリリーフバルブと前記圧力制御弁との間と、前記下流側油路とを接続する接続油路が設けられているとともに、駆動力源の動力を車輪に伝達する動力伝達装置が設けられており、前記下流側油路から前記動力伝達装置に供給される圧油により、前記動力伝達経路における動力伝達状態が制御される構成であることを特徴とするものである。
請求項10の発明は、圧力制御弁を経由して潤滑系統にオイルを供給する第1の供給経路と、この第1の供給経路を経由して前記潤滑系統に供給されるオイル量が低下した場合でも、前記潤滑系統にオイルを供給することの可能な変速機の潤滑装置において、エンジンにより駆動される第1のオイルポンプと、電動機により駆動される第2のオイルポンプとを有し、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第1の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるとともに、前記第2のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の逆止弁を経由して前記圧力制御弁に供給されるように、前記第1の供給経路に、第1のオイルポンプおよび第2のオイルポンプおよび第1の逆止弁および第2の逆止弁および圧力制御弁が配置されているとともに、前記第1の供給経路を経由して前記潤滑系統に供給されるオイル量が低下した場合は、前記第1のオイルポンプから吐出されたオイルの流れ方向で、前記第1の逆止弁よりも上流を流れるオイルを、絞り部および第3の逆止弁を経由させて潤滑系統に供給する第2の供給経路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項11の発明は、オイルポンプから吐出されたオイルが供給される第1の油路と、この第1の油路から潤滑系統に供給するオイルの流量を制御することにより、前記第1の油路の油圧を制御する圧力制御弁と、前記第1の油路に接続され、かつ、前記第1の油路の油圧が所定圧以上に上昇した場合は、前記第1の油路のオイルを、前記圧力制御弁をバイパスさせて前記潤滑系統に供給する第2の油路とを有する変速機の潤滑装置において、前記第2の油路に、前記第1の油路の油圧が所定値以下である場合に閉じられ、かつ、所定値を越えた場合に開放されるプレッシャーリリーフバルブが設けられていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、第1のオイルポンプまたは第2のオイルポンプの少なくとも一方から吐出されたオイルを、潤滑系統に供給することが可能である。また、圧力制御弁がフェールして、第1のオイルポンプから吐出されたオイルを、圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給することができなくなった場合は、第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるため、潤滑系統に供給されるオイル量の低下を抑制できる。このため、第2のオイルポンプから、圧力制御弁を迂回して潤滑系統にオイルを供給する経路を廃止するか、もしくはその供給量を可及的に少なくすることが可能である。したがって、エンジンが停止されて第1のオイルポンプが停止された場合において、第2のオイルポンプから潤滑系統に供給されるオイル量を低減することができ、各オイルポンプ全体の仕事量を軽減することが可能である。
請求項2の発明によれば、第1のオイルポンプまたは第2のオイルポンプの少なくとも一方から吐出されたオイルを、潤滑系統に供給することが可能である。また、圧力制御弁の入力ポートと出力ポートとが遮断されるフェールが生じて、第1のオイルポンプから吐出されたオイルを、圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給することができなくなった場合は、第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるため、潤滑系統に供給されるオイル量の低下を抑制できる。このため、第2のオイルポンプから、圧力制御弁を迂回して潤滑系統にオイルを供給する経路を廃止するか、もしくはその供給量を可及的に少なくすることが可能である。したがって、エンジンが停止されて第1のオイルポンプが停止された場合において、第2のオイルポンプから潤滑系統に供給されるオイル量を低減することができ、各オイルポンプ全体の仕事量を軽減することが可能である。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、圧力制御弁がフェールしていない場合は、第2のオイルポンプから吐出されたオイルが、全て圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給されるため、オイルポンプの仕事量を一層低下させることが可能である。
請求項4の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、第1のオイルポンプから第1の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量よりも、第2のオイルポンプから第3の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量の方の方が少ない。したがって、エンジンが停止された場合におけるオイルポンプの仕事量を、確実に低減することが可能である。
請求項5の発明によれば、オイルポンプから第1の油路に供給されたオイルは、圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給されるとともに、圧力制御弁がフェールし、かつ、プレッシャーリリーフバルブが開弁されている場合は、第1の油路のオイルが、第2の油路を経由して潤滑系統に供給される。また、第1の油路の油圧が開弁油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブが閉じられているため、第2の油路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量の増加(オイルの常時供給)を抑制できる。したがって、オイルポンプの仕事量の増加を抑制できる。また、プレッシャーリリーフバルブが閉じられている場合は、第1の油路のオイルが、第2の油路を経由して潤滑系統に供給されることはなく、第1の油路における油圧の立ち上がり応答性が向上する。つまり、オイルポンプの仕事量の低減と、第1の油路における油圧の立ち上がり応答性能の向上とを両立できる。
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、圧力制御弁が開弁される前にプレッシャーリリーフバルブが開弁されることを防止でき、オイルポンプの仕事量の増加を一層確実に抑制できる。
請求項7の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、第1の油路の圧油を摩擦係合装置に供給して、摩擦係合装置を係合させる場合に、第1の油路の油圧が目標油圧以下の段階で、プレッシャーリリーフバルブが開弁されることを抑制できる。したがって、摩擦係合装置の係合応答性を向上することができる。
請求項8の発明によれば、請求項5の発明と同じ効果に加えて、圧力制御弁がフェールした場合は、オイルポンプから吐出されたオイルが、プレッシャーリリーフバルブを経由して下流側油路に供給されるとともに、流体伝動装置に供給される。そして、下流側油路の油圧が低圧である場合は、下流側圧力制御弁は閉弁されるため、下流側油路のオイルは潤滑系統には供給されない。また、下流側油路の油圧が高圧になると、下流側圧力制御弁が開弁されて、下流側油路のオイルが潤滑系統に供給される。ところで、下流側圧力制御弁がフェールして、下流側油路のオイルを、下流側圧力制御弁を経由させて潤滑系統に供給することができなくなり、下流側油路の油圧が所定値を越えた場合に限り、第2のプレッシャーリリーフバルブが開放されて、オイルポンプから吐出されたオイルは、圧力制御弁および下流側圧力制御弁をバイパスして、潤滑系統に供給される。したがって、動力伝達装置に供給される圧油の上昇応答性の低下を抑制することができる。
請求項9の発明によれば、請求項5の発明と同じ効果に加えて、オイルポンプから吐出されたオイルは、圧力制御弁または接続油路を経由して流体伝動装置に供給される。また、第2の油路であって、プレッシャーリリーフバルブよりも上流の油圧が所定油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブが閉弁されるため、オイルがプレッシャーリリーフバルブを経由して潤滑系統に供給されることはない。これに対して、第2の油路であって、プレッシャーリリーフバルブよりも上流の油圧が所定油圧を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブが開弁されるため、オイルがプレッシャーリリーフバルブを経由して潤滑系統に供給される。さらに、プレッシャーリリーフバルブは所定油圧以下では開弁しないため、動力伝達装置に供給される圧油の上昇応答性の低下を抑制することができる。
請求項10の発明によれば、第1のオイルポンプまたは第2のオイルポンプの少なくとも一方から吐出されたオイルを、潤滑系統に供給することが可能である。また、第1のオイルポンプから、圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給されるオイルの流量が減少した場合は、第1のオイルポンプから吐出されたオイルが、第2の供給経路を経由して潤滑系統に供給されるため、潤滑系統に供給されるオイル量の低下を抑制できる。このため、第2のオイルポンプから、圧力制御弁を迂回して潤滑系統にオイルを供給する経路を廃止するか、もしくはその供給量を可及的に少なくすることが可能である。したがって、エンジンが停止されて第1のオイルポンプが停止された場合において、第2のオイルポンプから潤滑系統に供給されるオイル量を低減することができ、各オイルポンプの全体の仕事量を軽減することが可能である。
請求項11の発明によれば、オイルポンプから第1の油路に供給されたオイルは、圧力制御弁を経由して潤滑系統に供給されるとともに、圧力制御弁が正常であっても、第1の油路の油圧が所定値以上に上昇した場合は、プレッシャーリリーフバルブが開放されて、第1の油路のオイルが、第2の油路を経由して潤滑系統に供給される。また、第2の油路に設けられているプレッシャーリリーフバルブは、第1の油路の油圧が所定値以下である場合は閉じられているため、第2の油路を経由して潤滑系統に供給されるオイル量の増加(オイルの常時供給)を抑制できる。したがって、オイルポンプの仕事量の増加を抑制できる。また、プレッシャーリリーフバルブが閉じられている場合は、第1の油路のオイルが、第2の油路を経由して潤滑系統に供給されることはなく、第1の油路における油圧の立ち上がり応答性が向上する。
つぎに、この発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図2は、車両のパワートレーンを示す概念図である。図2に示す車両1は、エンジン2の動力が、流体伝動装置70および前後進切換装置3およびベルト式無段変速機4を経由して車輪5に伝達される構成となっている。流体伝動装置70は、ポンプインペラ71およびタービンランナ72を有しており、ポンプインペラ71とタービンランナ72との間で、作動流体としてのオイルの運動エネルギにより動力伝達がおこなわれる。流体伝動装置70は、トルク増幅機能を有するトルクコンバータ、またはトルク増幅機能がないフルードカップリングのいずれでもよい。
また、前後進切換装置3は、遊星歯車機構および油圧制御式の摩擦係合装置3Aを有している。この摩擦係合装置3Aとしては、クラッチやブレーキなどが用いられて、クラッチやブレーキなどの係合・解放を制御することにより、出力側の回転部材の回転方向を正逆に切り換えることが可能となっている。ベルト式無段変速機4は、プライマリプーリ4Aおよびセカンダリプーリ4Bと、プライマリプーリ4Aおよびセカンダリプーリ4Bに巻き掛けられたベルト4Cとを有している。そして、プライマリプーリ4Aからベルト4Cに加えられる挟圧力と、セカンダリプーリ4Bからベルト4Cに加えられる挟圧力とを制御することにより、プライマリプーリ4Aとセカンダリプーリ4Bとの間における変速比を無段階に制御するとともに、プライマリプーリ4Aとセカンダリプーリ4Bとの間で伝達されるトルクの容量が制御される構成となっている。また、前後進切換装置3およびベルト式無段変速機4および流体伝動装置70を制御する油圧制御装置6が設けられている。この油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路(潤滑装置)の構成例を順次説明する。
油圧回路の実施例1を、図1に基づいて説明する。この実施例1は、請求項1、請求項2、請求項9の発明に対応する実施例である。図1に示された油圧回路7においては、第1のオイルポンプ8および第2のオイルポンプ9が設けられている。第1のオイルポンプ8は、エンジン2の動力により駆動され、第2のオイルポンプ9は、電動機10の動力により駆動される。
まず、第1のオイルポンプ8から吐出されたオイルが、油路11を経由してプライマリレギュレータバルブ12に供給される構成となっている。プライマリレギュレータバルブ12は、入力ポート13および出力ポート14およびフィードバックポート15およびスプール24および弾性部材25を有している。スプール24は所定方向に往復移動可能であり、弾性部材25の付勢力により、スプール24が所定の向きに付勢される。
また、入力ポート13が油路11に接続されている。フィードバックポート15には、油路11の油圧が入力され、フィードバックポート15に入力される油圧に応じて、弾性部材25とは逆向きにスプール24が付勢される。そして、油路11の油圧に応じてスプール24が動作して、油路11から油路16に排出されるオイルの流量および油路11の油圧が調整される構成となっている。また、出力ポート14は、油路16を経由して潤滑系統17に接続されている。潤滑系統17には、前後進切換装置3の遊星歯車機構、各種の回転部材を支持する軸受(図示せず)など、潤滑および冷却が必要な部位が含まれる。
前記油路11には逆止弁18が設けられている、この逆止弁18は、入力ポート19および出力ポート20を有しており、入力ポート19は第1のオイルポンプ8の吐出口に接続され、出力ポート20はプライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13に接続されている。この逆止弁18は、入力ポート19のオイルが出力ポート20に供給されることを許容し、かつ、出力ポート20のオイルが入力ポート19に逆流することを防止する機能を有している。
さらに、油路11であって、第1のオイルポンプ8と逆止弁18との間と、前記油路16とを接続する油路(強制潤滑回路)21が設けられている。つまり、油路21は、油路11およびプライマリレギュレータバルブ12に対して並列に配置されている。また、油路21には絞り部22および逆止弁23が設けられている。逆止弁23は、油路21であって、絞り部22と油路16との間に配置されており、逆止弁23は、第1のオイルポンプ8のオイルが、油路21を経由して油路16に供給されることを許容し、かつ、油路16のオイルが油路21を経由して、油路11に逆流すること、具体的には、第1のオイルポンプ8と逆止弁18との間に逆流することを防止する機能を有している。
一方、油路11であって、逆止弁18とプライマリレギュレータバルブ12との間には油路26が接続されており、油路26は各種の油圧室27に接続されている。油圧室27には、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの挟圧力を制御する油圧室、前後進切換装置3の摩擦係合装置3Aの係合圧を制御する油圧室などが含まれる。図1では、便宜上、1つの油圧室27として示されている。さらに、第2のオイルポンプ9の吐出口と油路26とが、油路28により接続されている。そして、油路28には逆止弁29が設けられている。この逆止弁29は、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルが油路28を経由して油路26に供給されることを許容し、かつ、油路26のオイルが油路28を経由して第2のオイルポンプ9に逆流することを防止する機能を有している。
上記のように構成された油圧回路7においては、第1のオイルポンプ8から油路11にオイルが供給されて、油路11であって、第1のオイルポンプ8と逆止弁18との間の油圧の方が、逆止弁18とプライマリレギュレータバルブ12との間の油圧よりも高圧であれば、逆止弁18が開放されて、第1のオイルポンプ8から吐出されたオイルが、油路11を経由して油路26に供給される。また、第2のオイルポンプ9から油路28にオイルが供給された場合は、油路28であって、第2のオイルポンプ9と逆止弁29との間の油圧の方が、逆止弁29と油路26との間の油圧よりも高圧であれば、逆止弁29が開放される。したがって、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルが、油路26に供給される。
このようにして、第1のオイルポンプ8または第2のオイルポンプ9の少なくとも一方から吐出されたオイルが、油路11,26に供給される。ここで、油路11,26の油圧が所定値以下である場合は、プライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13と出力ポート14とが遮断される。このため、油路11のオイルは油路16には排出されず、油路11,26から油圧室27に供給される圧油の油圧の低下が抑制される。
そして、油路11,26の油圧が所定値以上に上昇した場合は、入力ポート13と出力ポート14とが連通して、油路11のオイルが油路16に排出されるとともに、油路16のオイルが潤滑系統17に供給される。したがって、油路11,26の油圧の上昇が抑制されるとともに、潤滑系統17における部品の焼き付き、摩耗などが抑制される。また、入力ポート13と出力ポート14とが連通している場合に、油路11,26の油圧が低下した場合は、油路11から油路16に排出されるオイルの流量が減少する。このように、プライマリレギュレータバルブ12の機能により、油路11,26の油圧、すなわちライン圧が制御される。
また、第1のオイルポンプ8から油路11に吐出されたオイルの一部は、油路21に供給されるが、逆止弁18が開放されている場合は、絞り部22をオイルが通過する抵抗の方が、逆止弁18をオイルが通過する抵抗よりも大きく、第1のオイルポンプ8から吐出されたオイルの大半は、油路26に供給されるため、油路21から絞り部22を通過して油路16に流れ込むオイル量は少ない。
つぎに、逆止弁18が閉じられる場合について説明する。例えば、プライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13と出力ポート14とが遮断される状態で、スプール24が固定されるフェールが生じた場合は、油路11であって、逆止弁18とプライマリレギュレータバルブ12との間の油圧の方が、油路11であって、逆止弁18と第1のオイルポンプ8との間の油圧よりも高圧になり、逆止弁18が閉じられる。また、プライマリレギュレータバルブ12の機能が正常であっても、油圧室27で必要とされるオイル量よりも、油路26に供給されるオイル量が過剰となり、油路26の油圧が所定油圧まで上昇して、逆止弁18が閉じられる可能性もある。このような理由により、逆止弁18が閉じられた場合は、第1のオイルポンプ8から吐出されたオイルが、油路21に供給されるとともに、油路21のオイルは油路16を経由して潤滑系統17に供給される。したがって、逆止弁18が閉じられた場合でも、第1のオイルポンプ8から吐出されたオイルを、潤滑系統17に強制的に供給することが可能であり、潤滑系統17における潤滑油不足を抑制できる。
ところで、車両1が、エンジン2以外に駆動力源を有していない車両である場合は、エンジン2が停止される(アイドリングストップ)と、第1のオイルポンプ8が停止されて、潤滑系統17へのオイルの供給が停止される。また、エンジン2が停止された場合は、車両1が走行しないのであるから、油圧室27および潤滑系統17にオイルを供給する必要は無いため、電動機10も停止されて、第2のオイルポンプ9からオイルは吐出されなくなる。
これに対して、車両1が、エンジン2の他に、駆動力源として機能する走行用電動機を有するハイブリッド車である場合を説明する。このようなハイブリッド車においては、走行用電動機の動力で車両1が走行し、かつ、エンジン2を停止する制御を実行することが可能である。このような制御は、走行負荷が低負荷であり、かつ、車速要求も低速である場合に実行される。このように走行用電動機で車両1が走行し、エンジン2が停止される場合は、電動機10が駆動されて、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルが油路26,11に供給されるとともに、前述と同様の原理により、油路11のオイルが、油路16を経由して潤滑系統17に供給される。
この場合、電動機10は、走行用電動機であってもよいし、車両1の駆動力源としての機能を有していない電動機、すなわち、第2のオイルポンプ9を駆動するために設けられた専用の電動機のいずれでもよい。なお、第2のオイルポンプ9が駆動され、第1のオイルポンプ8が停止している場合において、プライマリレギュレータバルブ12がフェールして、入力ポート13と出力ポート14とが遮断されて、油路11,26の油圧が上昇し、逆止弁18および逆止弁29が閉じられた場合でも、油路11,26のオイルが、油路21を経由して潤滑系統17に供給されることはない。
このように、図1に示された油圧回路7においては、プライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13と出力ポート14とが連通した場合に限り、電動機10により駆動される第2のオイルポンプ9から吐出されるオイルが、潤滑系統17に供給される構成となっており、第2のオイルポンプ9のオイルが、プライマリレギュレータバルブ12を経由することなく、潤滑系統17に供給される油路(迂回油路)を設けずに済む。言い換えれば、第2のオイルポンプ9から吐出されるオイルの消費流量を低減することが可能である。したがって、第2のオイルポンプ9の仕事量の増加を抑制することが可能であるとともに、第2のオイルポンプ9の体格(吐出容量)の小型化、および電動機10の定格の小型化、さらには低回点数化を図ることができる。
さらには、第2のオイルポンプ9および電動機10の高効率化を図ることができかつ、低コスト化を図ることができる。また、プライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13と出力ポート14とが連通した場合に限り、第2のオイルポンプ9から吐出されるオイルが、潤滑系統17に供給されるため、第1のオイルポンプ8を停止し、かつ、第2のオイルポンプ9のオイルで油路11,26の油圧を確保する場合に、油路11,26の油圧の上昇応答性を高めることが可能である。さらには、エンジン2の動力で発電をおこなうとともに、発生した電力が、蓄電装置およびインバータを経由して電動機10に供給される構成である場合は、電動機10の負荷が低減されることにより、電動機10に供給する電力および電気系統の負担を低減することができ、かつ、エンジン2の燃費の低下をも抑制することが可能である。
つぎに、油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の他の実施例を、図3に基づいて説明する。この実施例2は、請求項1、請求項3、請求項9の発明に対応する実施例である。この実施例3の油圧回路7の構成において、実施例1の油圧回路7の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してその説明を省略する。この実施例2においては、油路28と油路16とを接続する油路30が設けられている。具体的には、油路28であって、第2のオイルポンプ9と逆止弁29との間と、油路16とが、実線で示す油路(強制潤滑回路)30により接続されている。つまり、油路30は、油路11,26およびプライマリレギュレータバルブ12に対して並列に配置されている。また、油路30には、絞り部31および逆止弁32が設けられている。具体的には、油路30であって、絞り部31と油路16との間に、逆止弁32が設けられている。また、絞り部31の流通面積は、絞り部22の流通面積よりも狭く設定されている。さらに、逆止弁32は、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルが、油路28および油路30を経由して油路16に供給されることを許容し、かつ、油路16のオイルが油路30を経由して油路28に逆流することを防止する機能を有している。
この実施例2において、実施例1と同じ構成については、実施例1と同じ作用効果を得られる。また、実施例2において、油路26の油圧が上昇して逆止弁29が閉じられた場合は、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルは、油路30および油路16を経由して、潤滑系統17に供給される。つまり、第2のオイルポンプ9から吐出されたオイルが、プライマリレギュレータバルブ12を経由することなく、言い換えれば、プライマリレギュレータバルブ12を迂回して、潤滑系統17に供給される。さらに、実施例2においては、絞り部31の流通面積は、絞り部22の流通面積よりも狭く設定されている。このため、第1のオイルポンプ8から吐出されて油路21を経由し、潤滑系統17に供給されるオイル量よりも、第2のオイルポンプ9から吐出されて油路30を経由し、潤滑系統17に供給されるオイル量の方が少なくなる。したがって、第2のオイルポンプ9の仕事量を低減することができ、実施例1と同様の効果を得られる。
また、実施例2においては、車両1が高速走行する場合は、潤滑系統17における必要潤滑油量が多くなり、車両1が低速走行する場合は、潤滑系統17における必要潤滑油量が少なくなる。したがって、車両1が高速走行する場合は、第1のオイルポンプ8を駆動させ、かつ、第2のオイルポンプ9を停止させる制御を実行する一方、車両1が低速走行する場合は、第2のオイルポンプ9を駆動させ、かつ、第1のオイルポンプ8を停止させる制御を実行することにより、潤滑系統17における必要潤滑油量と、潤滑系統17に供給される実際の潤滑油量とを適合させることが可能である。
なお、実施例2において、油路28であって、逆止弁29と油路26との間と、油路16とを、二点鎖線で示すように油路30で接続することも可能である。この場合は、第1のオイルポンプ8から油路26に供給されたオイルを、油路30を経由させて潤滑系統17に供給することが可能である。
ここで、実施例1および実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、プライマリレギュレータバルブ12が、この発明の圧力制御弁に相当し、油路11,16,26,28が、この発明の第1の供給経路に相当し、油路21が、この発明の第2の供給経路に相当し、逆止弁18が、この発明の第1の逆止弁に相当し、逆止弁29が、この発明の第2の逆止弁に相当し、絞り部22が、この発明の第1の絞り部に相当する。また、実施例1の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、出力ポート13が、この発明の出力ポートに相当する。さらに、実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、逆止弁23が、この発明の第3の逆止弁に相当し、油路30が、この発明の第3の供給経路に相当し、絞り部31が、この発明の第2の絞り部に相当する。
つぎに、油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の他の実施例を図4に基づいて説明する。この実施例3は、請求項4、請求項5、請求項10の発明に対応する実施例である。この図4の構成において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してその説明を省略する。なお、この実施例3においては、オイルポンプが1個であるため、第1のオイルポンプ8を、便宜上「オイルポンプ8」と記す。まず、プライマリレギュレータバルブ12の出力ポート14には油路16が接続されており、油路16には油路33を経由して潤滑系統17が接続されている。この油路33には絞り部34が設けられている。
さらに油路16は潤滑圧コントロールバルブ35に接続されている。潤滑圧コントロールバルブ35は、入力ポート36および出力ポート37およびフィードバックポート38およびスプール39および弾性部材40を有している。スプール39は所定方向に往復移動可能であり、弾性部材40の付勢力により、スプール39が所定の向きに付勢される。そして、油路16と入力ポート36とが接続され、出力ポート37には油路41が接続されている。潤滑圧コントロールバルブ35は、油路16の油圧が所定油圧以下である場合は、入力ポート36と出力ポート37とが遮断され、油路16の油圧が所定油圧を越えた場合に、フィードバックポート38の油圧に応じた付勢力でスプール39が弾性部材40の付勢力に抗して動作し、入力ポート36と出力ポート37とが連通される。このように、スプール39の動作に応じて、油路16から油路41に排出されるオイルの流量および油路16の油圧が調整される。
一方、前記油路11と油路16とを接続し、かつ、プライマリレギュレータバルブ12をバイパスするように、油路42,43およびプレッシャーリリーフバルブ44が設けられている。具体的には、油路42と油路11とが接続され、油路43と油路16とが接続されている。そして、油路42と油路43との間にプレッシャーリリーフバルブ44が介在されている。つまり、プライマリレギュレータバルブ12とプレッシャーリリーフバルブ44とが並列に配置されている。プレッシャーリリーフバルブ44は、ポート45を形成する弁座46と、ポート45を開閉する弁体47と、弁体47を弁座46に近づける向きに付勢する弾性部材48とを有している。プレッシャーリリーフバルブ44は、油路11,42の油圧が開弁油圧以下である場合に、ポート45が閉じられるとともに、油路11,42の油圧が開弁油圧を越えた場合に、弁体47が弾性部材48の付勢力に抗して動作し、ポート45が開放される構成となっている。このプレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧は、プライマリレギュレータバルブ12の開弁油圧よりも高圧に設定されている。
さらに、プレッシャーリリーフバルブ44の他にプレッシャーリリーフバルブ49が設けられている。このプレッシャーリリーフバルブ49は、油路43と油路54との間に設けられている。プレッシャーリリーフバルブ49は、ポート50を形成する弁座51と、ポート50を開閉する弁体52と、弁体52を弁座51に近づける向きに付勢する弾性部材53とを有している。このプレッシャーリリーフバルブ49は、油路43の油圧が所定油圧以下である場合に、ポート50が閉じられるとともに、油路43の油圧が所定油圧を越えた場合に、弁体52が弾性部材53の付勢力に抗して動作し、ポート50が開放される構成となっている。このプレッシャーリリーフバルブ49が開放される油圧、すなわち、開弁油圧は、潤滑油コントロールバルブ35の開弁油圧よりも高圧に設定されている。
つぎに、図4に示された油圧回路7の機能を説明する。オイルポンプ8から吐出されたオイルは、油路11および油路26を経由して油圧室27に供給されるとともに、プライマリレギュレータバルブ12の入力ポート13に供給される。プライマリレギュレータバルブ12が正常である場合は、実施例1で説明した原理と同様の原理により、油路11から油路16に排出されるオイル量が制御されて、油路11,26の油圧が調圧される。油路16に供給されたオイルは、油路33を経由して潤滑系統17に供給される。
さらに、潤滑圧コントロールバルブ35の機能を説明する。まず、油路16の油圧が、潤滑圧コントロールバルブ35の開弁油圧以下である場合は、潤滑圧コントロールバルブ35の入力ポート36と出力ポート37とが遮断される。このため、油路16のオイルは油路41には排出されず、油路16,33における油圧の低下が抑制される。これに対して、油路16,33の油圧が、潤滑圧コントロールバルブ35の開弁油圧を越えた場合は、入力ポート36と出力ポート37とが連通して、油路16のオイルが油路41に排出されて、油路16,33の油圧の上昇が抑制される。また、潤滑圧コントロールバルブ35が開弁されている場合に、油路16,33の油圧が低下した場合は、油路16から油路41に排出されるオイルの流量が減少する。このように、潤滑系統17に供給されるオイルの油圧は、潤滑圧コントロールバルブ35により制御される。
つぎに、プライマリレギュレータバルブ12がフェールした場合、具体的には、閉弁状態でスプール24がスティックするフェールが発生した場合について説明する。この場合は、油路11のオイルが油路16に排出されなくなるため、油路11,26の油圧が上昇する。なお、油圧室27で消費されるオイル量、およびプライマリレギュレータバルブ12から油路16に排出されるオイル量よりも、オイルポンプ8から油路11に吐出されるオイル量の方が多い場合は、プライマリレギュレータバルブ12が正常であっても、油圧室11,26の油圧が上昇する可能性がある。
このように、油路11,26の油圧が上昇した場合、油路11,26の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ44が閉弁されているため、油路11のオイルは油路43には排出されない。これに対して、油路11,26の油圧がプレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧を越えた場合は、弁体47が弾性部材48の付勢力に抗して動作し、ポート45が開放される。その結果、油路11のオイルがポート45を経由して油路43に排出され、油路11,26の油圧の更なる上昇が抑制される。そして、油路43に排出されたオイルは、油路16,33を経由して潤滑系統17に供給される。なお、プレッシャーリリーフバルブ44が開弁している場合において、油路42の油圧がプレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧以下に低下した場合は、弾性部材48の付勢力により弁体47が動作して、プレッシャーリリーフバルブ44が閉弁される。また、プレッシャーリリーフバルブ44が閉弁している場合に、油路43の油圧の方が油路42の油圧よりも高圧となった場合でも、プレッシャーリリーフバルブ44は開弁せず、油路43のオイルが油路42に逆流することはない。
さらに、潤滑圧コントロールバルブ35がフェールした場合、具体的には、閉弁状態でスプール39がスティックするフェールが発生した場合について説明する。この場合は、油路16のオイルが油路41に排出されなくなるため、油路16,33の油圧が上昇する。なお、潤滑系統17で消費されるオイル量、および潤滑圧コントロールバルブ35から油路41に排出されるオイル量よりも、プライマリレギュレータバルブ12から油路16に排出されるオイル量の方が多い場合は、潤滑圧コントロールバルブ35が正常であっても、油路16,33,43の油圧が上昇する可能性がある。
このようにして、油路43の油圧が上昇した場合、油路43の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ49が閉弁されているため、油路43のオイルは油路54には排出されない。これに対して、油路43の油圧がプレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧を越えた場合は、弁体52が弾性部材53の付勢力に抗して動作し、ポート50が開放される。その結果、油路43のオイルがポート50を経由して油路54に排出され、油路16,43の油圧の更なる上昇が抑制される。なお、プレッシャーリリーフバルブ49が開弁している場合において、油路43の油圧がプレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧以下に低下した場合は、弾性部材53の付勢力により弁体52が動作して、プレッシャーリリーフバルブ49が閉弁する。
以上説明したように、実施例3においては、油路11,42の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧以下である場合は、油路11のオイルは油路43には排出されない。したがって、オイルポンプ8から吐出されたオイルのうち、潤滑系統17に供給されるオイルの流量の増加を可及的に抑制することが可能であり、実施例1と同様の効果を得られる。また、プレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧は、プライマリレギュレータバルブ12の開弁油圧よりも高圧に設定されている。このため、プライマリレギュレータバルブ12が正常であれば、プライマリレギュレータバルブ12が開弁する前に、プライマリレギュレータバルブ44が開弁されることはなく、油路11,26の油圧の上昇応答性の低下を抑制できる。
ここで、オイルポンプ8の駆動が開始されてからの経過時間と、油路11,26の油圧、すなわちライン圧との関係の一例を、図5の線図に基づいて説明する。この実施例3に相当する油圧特性は実線で示され、比較例の油圧特性は破線で示されている。実施例3では、オイルポンプ8から吐出されたオイルが油路11,26に充満した時点、すなわち、時刻t1から、ライン圧が零メガパスカルを越える油圧となるとともに、時間の経過にともないライン圧は上昇する傾向となる。そして、プライマリレギュレータバルブ12が正常であれば、プライマリレギュレータバルブ12によるライン圧の調圧機能により、時刻t3以降はライン圧が略一定の所定圧に維持される。
つぎに、比較例について説明する。この比較例は、図4に示すプレッシャーリリーフバルブ44に代えて絞り部(図示せず)が設けられている油圧回路の油圧特性である。この絞り部は、常時開弁状態にあり、閉弁されることはない。つまり、絞り部の入力側と出力側との圧力差により、入力側から出力側にオイルが供給される。この比較例の場合は、オイルポンプから吐出されたオイルが絞り部に到達すると、オイルの一部が絞り部を経由して排出されるため、油路内にオイルが充満するまでの時間が、実施例3よりも遅くなる。このため、例えば、時刻t1よりも遅い時刻t2以降に、ライン圧が零メガパスカルを越える油圧となる。
また、比較例においても、時間の経過にともないライン圧が上昇する特性を示す。ここで、実施例3におけるライン圧の上昇勾配よりも、比較例におけるライン圧の上昇勾配の方が緩やかとなっている。その理由は、実施例3では、プライマリレギュレータバルブ12が開弁されない限り、油路11のオイルは油路16に排出されないのに対して、比較例では、ライン圧が上昇する過程でも、油路のオイルの一部が絞り部を経由して排出されるからである。そして、時刻t3よりも遅い時刻t4以降、比較例におけるライン圧が所定圧に制御される。この図5に示すように、ライン圧の上昇特性、すなわち、立ち上がり特性は、実施例3の方が比較例よりも優れていることが分かる。
ここで、実施例3の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、油路11が、この発明の第1の油路に相当し、油路42,43が、この発明の第2の油路に相当し、プレッシャーリリーフバルブ44が、この発明のプレッシャーリリーフバルブに相当する。また、プライマリレギュレータバルブ12の開弁油圧が、この発明の「圧力制御弁が開弁される第1の油路の油圧」に相当し、プレッシャーリリーフバルブ44の開弁油圧が、この発明の「プレッシャーリリーフバルブが開弁される第1の油路の油圧」に相当する。なお、実施例3におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1,2の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
前記油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の他の実施例を、図6に基づいて説明する。この実施例4は、請求項4および請求項6および請求項10の発明に対応する実施例である。図6の構成において、図1および図4の構成と同じ構成については、図1および図4と同じ符号を付してその説明を省略する。この実施例4においては、実施例3のプレッシャーリリーフバルブ44に代えて、プレッシャーリリーフバルブ55が設けられている。このプレッシャーリリーフバルブ55は、ポート65を形成する絞り部56と、ポート65を開閉する弁体57と、弁体57を絞り部56に近づける向きに付勢する弾性部材58とを有している。プレッシャーリリーフバルブ55は、油路11,42の油圧が開弁油圧以下である場合に、ポート65が閉じられるとともに、油路11,42の油圧が開弁油圧を越えた場合に、弁体57が弾性部材58の付勢力に抗して動作し、ポート65が開放される構成となっている。
さらに、油路42には、プレッシャーリリーフバルブ59を経由して油路60が接続されている。プレッシャーリリーフバルブ59は、ポート61を形成する弁座62と、ポート61を開閉する弁体63と、弁体63を弁座62に近づける向きに付勢する弾性部材64とを有している。プレッシャーリリーフバルブ59は、油路11,42の油圧が開弁油圧以下である場合に、ポート61が閉じられるとともに、油路11,42の油圧が開弁油圧を越えた場合に、弁体63が弾性部材64の付勢力に抗して動作し、ポート61が開放される構成となっている。
ここで、プライマリレギュレータバルブ12の開弁油圧P1と、プレッシャーリリーフバルブ59の開弁油圧P2と、プレッシャーリリーフバルブ55の開弁油圧P3と、目標油圧P4との対応関係は、
P2>P1>P3>P4
に設定されている。ここで、目標油圧P4とは、摩擦係合装置3Aを係合させる場合における油圧室27の目標油圧に対応する油路11の油圧である。また、各開弁油圧は、油路11,42の油圧を意味している。なお、プレッシャーリリーフバルブ55のポート65の流通面積は、図4におけるプレッシャーリリーフバルブ44のポート45の流通面積よりも狭く設定されている。
この実施例4においては、オイルポンプ8から油路11,26にオイルが供給されて、油路11,26の油圧が上昇する。また、摩擦係合装置3Aの係合圧を高める条件が成立した場合は、油路26から油圧室27に供給される圧油の油圧により、摩擦係合装置3Aのトルク容量が高められる。ここで、油路11,42の油圧が開弁油圧P3以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ55,59およびプライマリレギュレータバルブ12が全て閉弁されている。したがって、油路11,42のオイルは、潤滑系統17には供給されない。
ついで、油路11,42の油圧が開弁油圧P3を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ55が開弁されるとともに、油路42の油圧の方が、油路43の油圧よりも高圧であれば、油路42のオイルが油路43,16を経由して潤滑系統17に供給される。なお、プレッシャーリリーフバルブ55が開弁されている場合に、油路11,42の油圧が開弁油圧P3以下になった場合は、プレッシャーリリーフバルブ55が閉弁されて、油路11,42から油路43にはオイルが排出されなくなる。
そして、油路11の油圧が更に上昇して、油路11の油圧が開弁油圧P1を越えた場合は、プライマリレギュレータバルブ12が開弁されて、油路11のオイルがプライマリレギュレータバルブ12を経由して油路16に排出される。また、プライマリレギュレータバルブ12が開弁されている場合に、油路11の油圧が開弁油圧P1以下に低下した場合は、プライマリレギュレータバルブ12が閉弁される。つまり、実施例1と同様の原理により、油路11の油圧が調圧される。なお、この時点では、プレッシャーリリーフバルブ59は閉弁されている。
ところで、実施例1で説明したように、プライマリレギュレータバルブ12がフェールして、油路11,42の油圧が更に上昇し、かつ、その油圧が開弁油圧P2を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ59が開弁される。その結果、油路11,42のオイルが、油路60に排出されて、油路11,42の油圧の上昇が抑制される。。また、プレッシャーリリーフバルブ59が開弁されている場合に、油路42の油圧が開弁油圧P2以下になった場合は、プレッシャーリリーフバルブ59が閉弁されて、油路42のオイルは油路60に排出されなくなる。
この実施例4における油路11の油圧、すなわちライン圧と、オイルポンプ8の駆動が開始されてからの経過時間との対応関係の一例を、図7に示す。この実施例4に相当する油圧特性は実線で示され、比較例の油圧特性は破線で示されている。実施例4では、オイルポンプ8から吐出されたオイルが油路11,26に充満した時点、すなわち、時刻t1から、ライン圧が零メガパスカルを越える油圧となるとともに、時間の経過にともないライン圧は上昇する傾向となる。この間、プレッシャーリリーフバルブ55が閉弁されている。
そして、時刻t3で、ライン圧が開弁油圧P3を越えると、ライン圧の上昇勾配は、時刻t3以前におけるライン圧の上昇勾配よりも緩やかとなる。その後、ライン圧が更に上昇して、そのライン圧が時刻t4で開弁油圧P1付近になると、プライマリレギュレータバルブ12が開弁・閉弁して、ライン圧が開弁油圧P1付近に維持される。
つぎに、比較例について説明する。この比較例は、図6に示すプレッシャーリリーフバルブ55に代えて絞り部(図示せず)が設けられている油圧回路の油圧特性である。この絞り部は、常時開弁状態にあり、閉弁されることはない。つまり、絞り部の入力側と出力側との圧力差により、入力側から出力側にオイルが供給される。この比較例の場合は、オイルポンプから吐出されたオイルが絞り部に到達すると、オイルの一部が絞り部を経由して排出されるため、油路内にオイルが充満するまでの時間が、実施例4よりも遅くなる。このため、例えば、時刻t1よりも遅い時刻t2以降に、ライン圧が零メガパスカルを越える油圧となる。
また、比較例においても、時間の経過にともないライン圧が上昇する特性を示す。ここで、実施例4におけるライン圧の上昇勾配よりも、比較例におけるライン圧の上昇勾配の方が緩やかとなっている。その理由は、実施例4では、プレッシャーリリーフバルブ55が開弁されない限り、油路11,42のオイルは油路43に排出されないのに対して、比較例では、ライン圧が上昇する過程でも、油路のオイルの一部が絞り部を経由して排出されるからである。そして、時刻t4よりも遅い時刻t5以降、比較例におけるライン圧が油圧P1に制御される。なお、実施例4において、時刻t3から時刻t4の間におけるライン圧の上昇勾配は、比較例におけるライン圧の上昇勾配と同じとなる。この図7に示すように、ライン圧の上昇特性、すなわち、立ち上がり特性は、実施例4の方が比較例よりも優れていることが分かる。
このように、実施例4においては、油路11,42の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ55の開弁油圧以下である場合は、油路11,42のオイルが、プレッシャーリリーフバルブ55を経由して油路43に排出されることはない。したがって、オイルポンプ8の仕事量の増加を抑制でき、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、プレッシャーリリーフバルブ55の開弁油圧P3は、目標油圧P4よりも高圧に設定されている。したがって、油路11,26の油圧の上昇応答性を向上し、かつ、摩擦係合装置3Aの係合応答性を向上することができる。
ここで、図2および図6に示す構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、エンジン2が、この発明の駆動力源に相当する。また、プレッシャーリリーフバルブ55の開弁油圧P3が、この発明の「プレッシャーリリーフバルブの開弁油圧」に相当する。実施例4のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1および実施例3の構成と、この発明の構成との対応係と同じである。
さらに、油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の構成例を、図8に基づいて説明する。この実施例5は、請求項4および請求項7および請求項10の発明に対応する実施例である。なお、図8の構成において、図1および図4と同じ構成については、図1および図4と同じ符号を付してその構成の説明を省略する。この実施例5においては、油路16のオイルが油路73を経由して流体伝動装置70に供給される構成となっている。また、油路16から流体伝動装置70に供給される圧油の油圧を制御するトルクコンバータ圧制御弁74が設けられている。
このトルクコンバータ圧制御弁74は、入力ポート75および出力ポート76およびフィードバックポート77およびスプール78および弾性部材79を有している。スプール78は所定方向に往復移動可能であり、弾性部材79の付勢力により、スプール78が所定の向きに付勢される。入力ポート75には油路16が接続され、出力ポート76には油路80を経由して潤滑系統17が接続されている。トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧は、プレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧よりも低圧に設定されている。
さらに、油路54と油路80とを接続する油路81が設けられており、油路81には逆止弁82が設けられている。この逆止弁82は、油路54のオイルが油路80に流れることを許容し、油路80のオイルが油路54に逆流することを防止する機能を有している。このように、油路43,81およびプレッシャーリリーフバルブ49は、トルクコンバータ圧制御弁74をバイパスするように、油路16と油路80とを接続している。なお、プレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧は、トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧よりも高圧に設定されている。より具体的には、プレッシャーリリーフバルブ49の開弁油圧は、流体伝動装置70に供給される圧油の目標油圧の最低圧よりも高圧に設定されている。
さらに、油路54であって、油路81との接続部分よりも下流には絞り部83が設けられている。この絞り部83の流路面積は、逆止弁82の開放状態における流路面積よりも広く設定されている。さらにまた、油路42と油路16とを接続する油路84が設けられているとともに、油路84には逆止弁85が設けられている。この逆止弁85は、油路42のオイルが油路16に流れることを許容し、油路16のオイルが油路42に逆流することを防止する機能を有している。なお、逆止弁85の開弁状態における流通面積は、プレッシャーリリーフバルブ44のポート45の流通面積よりも狭く設定されている。このように、油路84は、プライマリレギュレータバルブ12をバイパスするように、油路11と油路16とを接続している。
つぎに、図8に示す油圧回路7の作用を説明する。オイルポンプ8から吐出されたオイルが油路11に供給されるとともに、実施例4と同様にして、プライマリレギュレータバルブ12の機能により、油路16に排出されるオイル量が調整される。油路16に排出されたオイルは、油路73を経由して流体伝動装置70に供給される。また、油路11に供給されたオイルは、油路42を経由して油路84に供給され、油路16の油圧よりも油路84の油圧の方が高圧である場合は、逆止弁85が開放されて、油路42のオイルが油路84を経由して油路16に供給される。これに対して、油路16の油圧よりも油路84の油圧の方が低圧である場合は、逆止弁85が閉じられるため、油路42のオイルが油路16に供給されることはない。つまり、逆止弁85が開放されている場合は、前記プライマリレギュレータバルブ12が開弁されている場合、または閉弁されている場合のいずれにおいても、油路84を経由して油路16にオイルを供給することが可能である。
また、実施例4の場合と同様に、油路11,42の油圧が所定油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ44は閉弁されており、油路42のオイルはプレッシャーリリーフバルブ44の下流に排出されることはない。これに対して、実施例4の場合と同様にして、油路11,42の油圧が所定油圧を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ44が開弁して、油路42のオイルが油路43を経由して油路16に供給される。
上記のようにして、オイルポンプ8から吐出されたオイルが、プライマリレギュレータバルブ12またはプレッシャーリリーフバルブ44を経由して流体伝動装置70に供給される。つぎに、油路16から流体伝動装置70に供給されるオイルの油圧制御について説明する。トルクコンバータ圧制御弁74のフィードバックポート77には、油路16の油圧が入力され、フィードバックポート77に入力される油圧に応じて、弾性部材79とは逆向きにスプール78が付勢される。そして、油路16の油圧に応じてスプール78が動作し、油路16から油路80に排出されるオイルの流量および油路16の油圧が調整される。このようにして油路80に排出されたオイルが潤滑系統17に供給される。上記のように、プライマリレギュレータバルブ12または油路84の少なくとも一方を経由したオイルが油路16に供給され、流体伝動装置70に供給される油圧がトルクコンバータ圧制御弁74により制御される。
ところで、油路16,43の油圧が所定油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ49が閉弁されている。このため、油路16,43のオイルは油路54には排出されない。これに対して、トルクコンバータ圧制御弁74がフェールして、入力ポート75と出力ポート76とが全閉となった場合、または、その他の理由により、油路16,43の油圧が所定油圧を越えると、プレッシャーリリーフバルブ49が開弁されて、油路16,43のオイルが油路54に排出される。この油路54のオイルの一部は、絞り部83を経由して排出されるとともに、油路54のオイルの一部は、油路81,80を経由して潤滑系統17に供給される。このようにして、油路16,43の油圧が過剰に上昇することが抑制される。
このように、実施例5の油圧回路7において、実施例1および実施例4と同じ構成部分については、実施例1および実施例4と同じ効果を得られる。また、プレッシャーリリーフバルブ44は、油路11,42の油圧が所定油圧を越えない限り開弁しないため、プレッシャーリリーフバルブ44を経由して潤滑系統17に供給されるオイル量の増加を抑制できる。したがって、オイルポンプ8の仕事量の増加を抑制することが可能であり、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、油路16の油圧の上昇過程において、トルクコンバータ圧制御弁74が正常であれば、油路16の油圧が、トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧よりも低圧の段階で、プレッシャーリリーフバルブ49が開弁することはない。したがって、油路16から流体伝動装置70に供給される圧油の油圧の上昇応答性能の低下を抑制することができる。
ここで、実施例5の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、油路16,42,43,54,80,81が、この発明の第2の油路に相当し、プレッシャーリリーフバルブ44が、この発明のプレッシャーリリーフバルブに相当し、油路16が、この発明の下流側油路に相当し、トルクコンバータ圧制御弁74が、この発明の下流側圧力制御弁に相当し、プレッシャーリリーフバルブ49が、この発明における第2のプレッシャーリリーフバルブに相当し、油路43が、この発明の接続油路に相当し、流体伝動装置70が、この発明における動力伝達装置に相当し、流体伝動装置70のトルク容量が、この発明の動力伝達装置の動力伝達状態に相当し、油路16の油圧であって、トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧よりも高い油圧が、この発明の第2の所定値に相当する。実施例5のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、前述した実施例と、この発明の構成との対応関係と同じである。
つぎに、油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の他の実施例を、図9に基づいて説明する。この実施例6は、請求項4および請求項7および請求項10に対応する実施例である。なお、図9の構成において、図1および図4および図8と同じ構成については、図1および図4および図8と同じ符号を付してその構成の説明を省略する。この実施例6においては、油路81には前述した逆止弁82は設けられていない。また、実施例6においては、前述した絞り部83に代えてプレッシャーリリーフバルブ86が設けられている。さらに、プレッシャーリリーフバルブ86の排出側には油路87が接続されている。このプレッシャーリリーフバルブ86は、油路54,81の油圧が所定油圧以下である場合に閉弁されるとともに、油路54,81の油圧が所定油圧を越えた場合に開弁される構成となっている。
この実施例6において、実施例1および実施例3および実施例5と同じ構成部分については、実施例1および実施例3および実施例5と同じ作用効果を得られる。また、油路54,81の油圧が所定油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ86は閉弁されており、油路54,81のオイルは油路87には排出されない。これに対して、油路54,81の油圧が所定油圧を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ86が開弁されて、油路54,81のオイルが油路87に排出されて、油路54,81の油圧が更に上昇することが抑制される。
ここで、実施例5および実施例6の油圧回路7におけるトルクコンバータ圧の制御特性の一例を、図10に基づいて説明する。この図10は、オイルポンプ8の駆動が開始されてからの経過時間と、油路73の油圧、すなわちトルクコンバータ圧との関係の一例を示す線図である。この実施例5,6に相当する油圧特性は実線で示され、比較例の油圧特性は破線で示されている。実施例5,6では、オイルポンプ8から吐出されたオイルが油路16,43,73などに充満した時点、すなわち、時刻t1から、トルクコンバータ圧が零メガパスカルを越える油圧となるとともに、時間の経過にともないトルクコンバータ圧は上昇する傾向となる。そして、トルクコンバータ圧制御弁74が正常であれば、トルクコンバータ圧制御弁74の調圧機能により、時刻t3以降はトルクコンバータ圧が略一定の所定圧に維持される。
つぎに、比較例について説明する。この比較例は、図9,10に示す油路84であって、逆止弁85よりも上流のオイルが絞り部(図示せず)を経由し、かつ、プレッシャーリリーフバルブを経由することなく潤滑系統にオイルを排出する構成の油路が設けられている油圧回路の油圧特性である。この絞り部は、常時開弁状態にあり、閉弁されることはない。つまり、絞り部の入力側と出力側との圧力差により、入力側から出力側にオイルが供給される。この比較例の場合は、オイルポンプから吐出されたオイルが絞り部に到達すると、オイルの一部が絞り部を経由して排出されるため、油路16,43,73内にオイルが充満するまでの時間が、実施例5,6よりも遅くなる。このため、例えば、時刻t1よりも遅い時刻t2以降に、トルクコンバータ圧が零メガパスカルを越える油圧となる。
また、比較例においても、時間の経過にともないトルクコンバータ圧が上昇する特性を示す。ここで、実施例5,6におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配よりも、比較例におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配の方が緩やかとなっている。その理由は、実施例5,6では、トルクコンバータ圧制御弁74が開弁されない限り、油路16のオイルは油路80に排出されないのに対して、比較例では、トルクコンバータ圧が上昇する過程でも、油路84のオイルの一部が絞り部を経由して油路80に排出されるからである。そして、時刻t3よりも遅い時刻t4以降、比較例におけるトルクコンバータ圧が所定圧に制御される。この図10に示すように、トルクコンバータ圧の上昇特性、すなわち、立ち上がり特性は、実施例5,6の方が比較例よりも優れていることが分かる。なお、実施例6の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例5で説明した対応関係と同じである。
さらに、油圧制御装置6の一部を構成する油圧回路7の他の実施例を、図11に基づいて説明する。この実施例7は、請求項4および請求項8および請求項10の発明に対応する実施例である。なお、図11の構成において、図1および図4および図8の構成と同じ構成については、図1および図4および図8の構成と同じ符号を付して、その構成の説明を省略する。まず、プレッシャーリリーフバルブ44の下流側はオイルパン(図示せず)に接続されている。また、油路84であって、逆止弁85と油路42との間には、絞り部88が設けられている。さらに、油路84であって、絞り部88と逆止弁85との間と、油路80とを接続する油路89が設けられており、油路89にはプレッシャーリリーフバルブ90が設けられている。
このプレッシャーリリーフバルブ90は、ポート91を形成する絞り部92と、ポート91を開閉する弁体93と、弁体93を絞り部92に近づける向きに付勢する弾性部材94とを有している。プレッシャーリリーフバルブ90は、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90よりも上流の油圧が開弁油圧以下である場合に、ポート91が閉じられるとともに、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90よりも上流の油圧が開弁油圧を越えた場合に、弁体93が弾性部材94の付勢力に抗して動作し、ポート91が開放される構成となっている。
さらにまた、油路16とオイルパンとを接続する油路95が形成されており、油路95にはプレッシャーリリーフバルブ96が設けられている。ここで、プレッシャーリリーフバルブ90の開弁油圧よりも、トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧の方が高圧に設定され、プレッシャーリリーフバルブ96の開弁油圧の方が、トルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧よりも高圧に設定されている。より具体的には、プレッシャーリリーフバルブ90の開弁油圧は、流体伝動装置70に供給される圧油の目標油圧の最低圧よりも高圧に設定されている。
つぎに、図11に示す油圧回路7の作用を説明する。図11の構成において、、図1および図4および図8の構成と同じ構成については、図1および図4および図8の構成と同じ作用が生じる。図11においては、オイルポンプ8から吐出されたオイルが、油路11および油路42を経由して油路84に供給されると、絞り部88を通過したオイルが逆止弁85に供給される。ここで、油路84であって、逆止弁85の上流の油圧よりも、油路16の油圧の方が高圧である場合は、逆止弁85が閉弁されて、油路84のオイルは油路16には供給されない。これに対して、油路84であって、逆止弁85の上流の油圧の方が、油路16の油圧よりも高圧である場合は、逆止弁85が開弁されて、油路84のオイルは油路16に供給される。このように、実施例7においては、油路84またはプライマリレギュレータバルブ12の少なくとも一方を経由したオイルが、油路16に供給される。
ところで、油路84のオイルの一部は、油路89にも供給されている。ここで、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90よりも上流の油圧が所定油圧以下である場合は、プレッシャーリリーフバルブ90は閉弁されている。したがって、油路84のオイルがプレッシャーリリーフバルブ90を経由して油路80に供給されることはない。これに対して、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90の上流の油圧が所定油圧を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ90が開弁されて、油路84のオイルの一部が、油路89を経由して油路80に供給され、油路80のオイルが潤滑系統17に供給される。また、この時点ではトルクコンバータ圧制御弁74は閉弁されている。なお、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90の上流の油圧が所定油圧以下に低下した場合は、プレッシャーリリーフバルブ90が閉弁される。さらに、油路16の油圧が上昇して、トルクコンバータ圧制御弁74が開弁された場合は、油路16のオイルの一部が、トルクコンバータ圧制御弁74を経由して油路80に供給され、油路16の油圧の上昇が抑制される。
ところで、トルクコンバータ圧制御弁74がフェールして、入力ポート75と出力ポート76とが遮断されて油路16の油圧が所定油圧を越えた場合、または、トルクコンバータ圧制御弁74が正常であるにもかかわらず、流体伝動装置70で必要なオイル量よりも、油路16に供給されるオイル量の方が多くなり、油路16の油圧が所定油圧を越えた場合は、プレッシャーリリーフバルブ96が開弁されて、油路16のオイルがオイルパンに排出される。したがって、油路16の油圧が更に上昇することが抑制される。なお、油路16の油圧がプレッシャーリリーフバルブ96の開弁油圧以下になった場合は、プレッシャーリリーフバルブ96が閉弁される。
以上のように、実施例7においては、油路89であって、プレッシャーリリーフバルブ90よりも上流の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ90の開弁油圧を越えた場合に限り、プレッシャーリリーフバルブ90が開弁されて、油路84のオイルが油路89を経由して油路80に供給され、ついで、潤滑系統17に供給される。このように、油路89を経由して潤滑系統17に供給されるオイル量が増加することを抑制でき、オイルポンプ8の仕事量が増加することを抑制できる。したがって、実施例1と同様の効果を得ることが可能である。また、流体伝動装置70に供給される圧油の油圧を上昇させる場合に、プレッシャーリリーフバルブ90が閉弁されている場合は、流体伝動装置70に供給される圧油の上昇応答性が向上する。
この実施例7における油路16の油圧、つまり、トルクコンバータ圧と、オイルポンプ8の駆動が開始されてからの経過時間との対応関係の一例を、図12に示す。この実施例7に相当する油圧特性は実線で示され、比較例の油圧特性は破線で示されている。実施例7では、オイルポンプ8から吐出されたオイルが油路16,73に充満した時点、すなわち、時刻t1から、トルクコンバータ圧が零メガパスカルを越える油圧となるとともに、時間の経過にともないトルクコンバータ圧は上昇する傾向となる。この間、プレッシャーリリーフバルブ90が閉弁されている。
そして、時刻t3で、トルクコンバータ圧が油圧P3を越えると、プレッシャーリリーフバルブ90が開弁されると、トルクコンバータ圧の上昇勾配は、時刻t3以前におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配よりも緩やかとなる。その後、油路16,73の油圧がトルクコンバータ圧制御弁74の開弁油圧付近になると、トルクコンバータ圧制御弁74が開弁・閉弁して、トルクコンバータ圧が略一定に制御される。
つぎに、比較例について説明する。この比較例は、図11に示すプレッシャーリリーフバルブ90に代えて、絞り部(図示せず)が設けられている油圧回路の油圧特性である。この絞り部は、常時開弁状態にあり、閉弁されることはない。つまり、絞り部の入力側と出力側との圧力差により、入力側から出力側にオイルが供給される。この比較例の場合は、オイルポンプから吐出されたオイルが油路89に到達すると、オイルの一部が絞り部を経由して、常時、潤滑系統17に供給されるため、油路16,73内にオイルが充満するまでの時間が、実施例7よりも遅くなる。このため、例えば、時刻t1よりも遅い時刻t2以降に、トルクコンバータ圧が零メガパスカルを越える油圧となる。
また、比較例においても、時間の経過にともないトルクコンバータ圧が上昇する特性を示す。ここで、実施例7におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配よりも、比較例におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配の方が緩やかになる。その理由は、実施例7では、油路16の油圧が、プレッシャーリリーフバルブ90の開弁油圧以下である場合は、油路89を経由してオイルが潤滑系統17に供給されることはないが、比較例では、トルクコンバータ圧が上昇する過程でも、油路84のオイルの一部が絞り部を経由して潤滑系統に供給されるからである。そして、時刻t4よりも遅い時刻t5以降、比較例におけるトルクコンバータ圧が油圧P1に制御される。なお、実施例7において、時刻t3から時刻t4の間におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配は、比較例におけるトルクコンバータ圧の上昇勾配と同じとなる。この図12に示すように、トルクコンバータ圧の上昇特性、すなわち、立ち上がり特性は、実施例7の方が比較例よりも優れていることが分かる。
ここで、実施例7の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、油路42,84,89が、この発明の第2の油路に相当し、プレッシャーリリーフバルブ90が、この発明のプレッシャーリリーフバルブに相当し、油路84が、この発明の接続油路に相当する。なお、実施例7のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、前述した実施例と、この発明の構成との対応関係と同じである。
なお、各実施例において、絞り部は、オリフィスまたはチョークのいずれでもよい。また、各実施例において、エンジンの動力が伝達される車輪と、走行用電動機の動力が伝達される車輪とが同じである構成のパワートレーン、または異なる構成のパワートレーンのいずれでもよい。また、各実施例において、圧力制御弁で調圧される圧油が供給される油圧室は、変速機の一部を構成する摩擦係合装置の係合圧を制御する油圧室であってもよい。また、実施例5,6,7は、油路16から、セカンダリプーリ4Bの油圧室(図示せず)にオイルが供給される構成となっている油圧回路にも、適用可能である。この場合、実施例5,6,7で述べた「トルクコンバータ圧制御弁」を、「セカンダリ圧制御弁」と読み替え、「トルクコンバータ圧」を「セカンダリ圧」と読み替えればよい。更に、この場合は、セカンダリプーリ4Bにおけるベルト4Cの巻き掛け半径、ベルト式無段変速機4の変速比、ベルト式無段変速機4のトルク容量、セカンダリプーリ4Bからベルト4Cに加えられる挟圧力などが、この発明における「動力伝達装置の動力伝達状態」に相当する。図5,図7,図12の各図において、異なる図で同じ時刻を用いても、それらの時刻同士に対応関係はない。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例1を示す概念図である。
この発明の変速機の油圧制御装置を有する車両のパワートレーンを示す概念図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例2を示す概念図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例3を示す概念図である。
実施例3における油圧の立ち上がり特性と、比較例における油圧の立ち上がり特性とを比較した一例を示す線図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例4を示す概念図である。
実施例4における油圧の立ち上がり特性と、比較例における油圧の立ち上がり特性とを比較した一例を示す線図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例5を示す概念図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例6を示す概念図である。
実施例5,6における油圧の立ち上がり特性と、比較例における油圧の立ち上がり特性とを比較した一例を示す線図である。
この発明の変速機の油圧制御装置に用いられる油圧回路の実施例7を示す概念図である。
実施例7における油圧の立ち上がり特性と、比較例における油圧の立ち上がり特性とを比較した一例を示す線図である。
符号の説明
2…エンジン、 3A…摩擦係合装置、 5…車輪、 8…第1のオイルポンプ(オイルポンプ)、 9…第2のオイルポンプ、 10…電動機、 11,16,21,28,26,30,42,43,80,81,84,89…油路、 12…プライマリレギュレータバルブ、 17…潤滑系統、 18,23,29…逆止弁、 22,31…絞り部、 44,55,49,90…プレッシャーリリーフバルブ、 70…流体伝動装置、 74…トルクコンバータ圧制御弁。