JP4348602B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動変速機の変速制御装置に関し、特に、ドライバーのスポーツ走行意図を的確に判断して、自動変速制御用の変速スケジュールを第1変速スケジュールからスポーツ走行用の第2の変速スケジュールへ切換えるようにし、しかも、旋回走行の際に的確な変速段となるように改善した自動変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両に搭載されている自動変速機の変速制御装置は、車速とスロットル開度とをパラメータとして設定された変速パターンに、これら車速とスロットル開度の実測値を当てはめて変速段を決定し、その変速段となるように自動変速機を変速制御する。前記変速パターンとしては、少なくとも、通常走行する際に適切なタイミングでシフトチェンジが行われるように特性付けられた通常走行用変速パターンが備えられている。
【0003】
ところで、アクセル踏込み速度が大きいときに、通常走行用変速パターンの変速ラインを高車速側に切換える技術、また、エンジン負荷変化速度が大きいときに、通常走行用変速パターンの変速ラインを高車速側に切換える技術が周知である。しかし、アクセル踏込み速度やエンジン負荷変化速度等の入力系をパラメータとして変速パターンを切換えるものでは、ドライバーの不用意なアクセル操作でドライバーの意図しないスポーツ走行用変速パターンに切換わる場合がある。
【0004】
一方、車速から微分回路で加速度を求め、その加速度絶対値から積分回路で加速度積分値を求め、一定時間毎に加速度積分値と所定の基準値とを比較し、加速度積分値が所定の基準値以上である場合に山道走行状態と判断し、山道走行に適した変速パターンに切り換える変速制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−28741号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の変速制御装置では、スポーツ走行用の(山道走行に適した)変速パターンに切換えられた状態で車両が旋回走行に入った場合、旋回走行状態(加速度積分値等)は通常走行状態に類似しており、それ故、スポーツ走行用変速パターンが解除されて、通常走行用変速パターンに切換わり易く、通常走行用変速パターンに切換わってしまうと、変速段の不用意なアップシフトが起こって駆動力の抜けが生じて安定した旋回走行を実現できない場合がある。旋回走行中にアップシフトが起こると、旋回走行後の再加速に備えることもできない。
【0007】
本発明の目的は、ドライバーのスポーツ走行意図を的確に判断して、第1変速スケジュールからスポーツ走行用の第2の変速スケジュールへの切換えを的確に行い、更に、旋回走行の際に的確な変速スケジュールを採用し、的確な変速段に切換えて、安定した走行を実現可能にする自動変速機の変速制御装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の自動変速機の変速制御装置は、車両のエンジン負荷と車速に基づいて、予め設定された第1変速スケジュールにより自動変速機を自動的に変速制御すると共に、車両加速度の絶対値を所定期間毎に積分して車両加速度積分値を更新しつつ演算する加速度積分値演算手段を有し、少なくとも前記車両加速度積分値が少なくとも車速をパラメータとして設定された基準値よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更した第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機を変速制御する変速制御装置において、前記車両の旋回走行状態を検出する旋回検出手段を設け、前記車両加速度積分値として、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値を適用すると共に、走行抵抗相当値を演算する走行抵抗演算手段を備え、前記車両加速度積分値と前記基準値の少なくとも一方を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に前記走行抵抗相当値に応じて変更する基準値変更手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
この変速制御装置では、車両のエンジン負荷と車速に基づいて、予め設定された第1変速スケジュールにより自動変速機が自動的に変速制御されるが、加速度積分値演算手段により、車両加速度の絶対値を所定期間毎に積分して車両加速度積分値が更新されつつ演算され、少なくとも車両加速度積分値が少なくとも車速をパラメータとして設定された基準値よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更した第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機が変速制御される。つまり、ドライバーの強い加速操作、減速操作を含め、瞬間的な走行状態ではなく現在の連続的な走行状態を判断するので過敏な誤判断を防止し、的確なスポーツ走行意図判断により第2の変速スケジュールへの切換えが可能になる。
【0010】
そして、車両加速度積分値として、旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値が適用され、旋回走行中は、旋回走行状態になる直前の変速スケジュールが採用されることになる。特に、スポーツ走行用の第2変速スケジュールに切換えられた状態で車両が旋回走行状態になった場合、旋回走行中に、通常走行用の第1変速スケジュールへの切換えを防止して第2変速スケジュールに保持できるため、変速段の不用意なアップシフトが起こって駆動力の抜けが生じるのを防止して、安定した旋回走行を実現でき、また、旋回走行中の不用意なアップシフトを防いで、旋回走行後の再加速に備えることができる。
【0011】
しかも、車両加速度積分値と前記基準値の少なくとも一方を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値に応じて変更し設定するので、登坂・降坂走行の際或いは乗員増加状態での走行の際等、走行抵抗が変動した場合でも、ドライバーの走行意図を精度よく判断可能となり、第1変速スケジュールから第2の変速スケジュールへの切換えをより的確に行うことができて、ドライバーの意図に沿った走行を実現することが可能になる。
【0012】
請求項2の自動変速機の変速制御装置は、請求項1の発明において、前記所定期間は数秒の期間に設定され、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は加速度積分値演算手段による演算を中断し、旋回走行状態が検出されなくなった時に加速度積分値演算手段による演算を再開することを特徴とするものである。前記所定期間は数秒の期間に設定されているので、ドライバーの強い加速操作、減速操作を含め、瞬間的な走行状態ではなく現在の連続的な走行状態を判断して過敏な誤判断を防止し、的確なスポーツ走行意図判断により第2の変速スケジュールへの切換えが可能になる。旋回走行中には加速度積分値演算手段による演算を中断し、旋回走行後から加速度積分値演算手段による演算を再開させ、車両加速度積分値と基準値の比較判断等を再開させることができる。
【0013】
請求項3の自動変速機の変速制御装置は、請求項1又は2の発明において、前記第2スケジュールに切換えられており且つ所定の変速段にある状態では、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間、車速が各変速段に応じて設定された所定車速よりも小さい場合には、変速段のアップシフトを禁止することを特徴とするものである。それ故、旋回走行中の不用意な駆動力の抜けがないように変速段のアップシフトを防止することができ、旋回走行後の再加速に備えることができる。
【0014】
請求項4の自動変速機の変速制御装置は、請求項1又は2の発明において、前記旋回状態検出手段は、車両の左右両輪の車輪速度を検出し、これら車輪速度の割合が所定割合以上の場合に旋回走行状態であると判断することを特徴とするものである。このような簡単な方法で的確に旋回状態を検出することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態は、車両のエンジン負荷と車速に基づいて、予め設定された通常走行用の第1変速スケジュールにより自動変速機を自動的に変速制御すると共に、所定条件を充足した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更したスポーツ走行用の第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機を変速制御する変速制御装置である。
【0016】
図1に示すように、車両において、左右の前輪1,2が従動輪であり、左右の後輪3,4が駆動輪である。エンジン5の出力トルクは、エンジン出力軸5aからトルクコンバーター6と変速ギヤ機構7とを有する自動変速機8を経て、ドライブシャフト9から、差動装置10及び左右の駆動軸11,12を介して左右の後輪3,4に伝達される。エンジン5の吸気系にはスロットル弁13が設けられ、アクセルペダル14を踏み込むことにより、スロットル弁13の開度が調節され、エンジン5内への吸入空気量が可変制御されてエンジン出力がコントロールされる。本実施形態の自動変速機8は4段変速機が適用されている。
【0017】
ドライブシャフト9の回転数(出力回転数Vo)を検出する出力回転数検出センサ20、左前輪1の回転数(前輪左回転数FLV)を検出する前輪左回転数検出センサ21、右前輪2の回転数(前輪右回転数FRV)を検出する前輪右回転数検出センサ22、アクセル(スロットル弁13)の開度(アクセル開度TVO)を検出するアクセル開度検出センサ23、ブレーキ(図示略)の作動を検出するブレーキ作動検出センサ24、エンジン出力軸5aの回転数(エンジン回転数NE)を検出するエンジン回転数検出センサ25、トルクコンバーター6のタービン軸6aの回転数(タービン回転数NT)を検出するタービン回転数検出センサ26が設けられ、これらセンサ20〜26が電気的に接続されたコントロールユニット30が設けられている。
【0018】
このコントロールユニット30が、センサ20〜26から入力される各種信号に基づいて、図2〜図4のフローチャートで示すプログラムを実行し、自動変速機8の変速段を切り換える場合に、自動変速機8に変速信号を出力して自動変速機8を制御する。尚、センサ20〜26とコントロールユニット30が自動変速機を変速制御する変速制御装置に相当する。
【0019】
次に、コントロールユニット30が実行する処理について、図2〜図4のフローチャート(フローチャート中のSi(i=1、2、3・・・)は各ステップを示す)、及び図5〜図10に基づいて説明する。先ず、通常走行用の第1スケジュールとスポーツ走行用の第2スケジュールについて説明する。例えば、第1スケジュールは6本の変速ラインL1-2 ,L2-3 ,L3-4 ,L2-1 ,L3-2 ,L4-3 を含む図9のマップで表され、第2スケジュールは6本の変速ラインL1-2 ,L2-3a,L3-4a,L2-1 ,L3-2 ,L4-3 を含む図10のマップで表される。
【0020】
尚、変速ラインL1-2 は変速段1から2への切換ライン、変速ラインL2-3 ,L2-3aは変速段2から3への切換ライン、変速ラインL3-4 ,L3-4aは変速段2から3への切換ライン、変速ラインL2-1 は変速段2から1への切換ライン、変速ラインL3-2 は変速段3から2への切換ライン、変速ラインL4-3 は変速段4から3への切換ラインである。
【0021】
第1,第2スケジュールは、車速Vとアクセル開度TVOとをパラメータとして設定されたスケジュールであり、第2スケジュールは、第1変速スケジュールの少なくとも一部の領域(例えば、高アクセル開度以外の大部分)の変速ラインL2,L3を高車速側に変更してL2a,L3aにしたものである。尚、第1変速スケジュールのL3-2 ,4-3 も高車速側に変更したものにしてもよい。
【0022】
コントロールユニット30が実行する処理は、図2に示すように、先ず、各センサ20〜26から入力される信号から、出力回転数Vo、前輪左回転数FLV、前輪右回転数FRV、アクセル開度TVO、ブレーキ作動信号BRK(有無)、エンジン回転数NE、タービン回転数NTが読み込まれ(S1)、次に、車速VとエンジントルクTQEが算出される(S2)。
【0023】
車速Vは、自動変速機8の出力回転数Voから、差動装置10のギヤ比及び後輪3,4のタイヤ周長等をもとに算出してもよいし、トルクコンバーター6のタービン回転数NTから、変速ギヤ機構7のギヤ比及び差動装置10のギヤ比及び後輪3,4のタイヤ周長等をもとに算出してもよい。また、エンジントルクTQEは、エンジン回転数NEとアクセル開度TVO(充填効率、点火進角)から算出される。
【0024】
次に、S3において、車速Vから車両加速度DV←f1(d/dt V) が演算され、前輪左回転数FLVと前輪右回転数FRVから左右前輪速度割合VS←|FLV−FRV|/(FLV+FRV)×2×100が演算され、アクセル開度TVOからアクセル開度変化速度DTVO←f2(d/dt TVO) が演算される。尚、S3が加速度演算手段に相当する。
【0025】
次に、S4において、エンジントルクTQEから(エンジントルクTQにトルクコンバーター6のトルク比とギヤ比を乗じて)車両駆動力F3←f3(TVO) が演算され、車両加速度DVと車両重量Wとを用いて(乗算し)加速抵抗F4←f4(DV,W)が演算され、車速Vから他の抵抗F5←f5(V)が演算され、車両駆動力F3から加速抵抗F4と他の抵抗F5を減算して走行抵抗値GRADE←F3−F4−F5が演算される。尚、S4が駆動力演算手段と加速抵抗演算手段と走行抵抗演算手段に相当する。
【0026】
前記車両重量Wは乗員・積載重量増加分を含まない標準車両重量であり、車両重量が標準車両重量であり平坦地走行状態のときには、走行抵抗値GRADEは略0になる。また、他の抵抗F5には空気抵抗やころがり抵抗等が含まれている。走行抵抗値GRADEは特許請求の範囲に記載の走行抵抗相当値にあたる。尚、走行抵抗相当値として車両駆動力F3から加速抵抗F4を減算した値を適用してもよい。
【0027】
次に、S5において、左右前輪速度割合VSと車速Vをパラメータとして設定された所定割合G1(V)とが比較され、VS>G1(V)でないと判断された場合に直進走行状態が検出され、VS>G1(V)であると判断された場合に旋回走行状態が検出される。S3とS5が旋回検出手段に相当する。
【0028】
直進走行状態(VS≦G1(V))のとき(S5;No)、S6において、コーナーフラグCFに0がセットされ、車両加速度DVの絶対値|DV|を所定期間(数秒の期間であり、例えば、3秒間又は5秒間)積分して車両加速度積分値IDV←∫|DV|dtが演算(積算)される。こうして、車両加速度DVの絶対値|DV|を所定期間毎に積分して車両加速度積分値IDVが更新されつつ演算される。S6が加速度積分値演算手段に相当する。
【0029】
ここで、S6で演算された前回の車両加速度積分値IDV[I-1] は記憶保持されるもとする。そして、旋回走行状態(VS>G1(V))のとき(S5;Yes )、S7において、コーナーフラグCFに1がセットされ、前記車両加速度積分値IDVとして前回の車両加速度積分値IDV[I-1] が設定される。こうして、前記車両加速度積分値IDVとして、S5により旋回走行状態が検出されている間は、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値ID[I-1] が適用される。
【0030】
つまり、S5により旋回走行状態が検出されている間は、S6による演算が中断され、旋回走行状態が検出されなくなった時に、S6による演算が再開される。ここで、S6による演算の再開は積分開始時期をリセットして行い、新たに所定期間(数秒の期間であり、たとえば、3秒間又は5秒間)の車両加速度DVの絶対値|DV|を積分して車両加速度積分値IDVを演算するようにしてもよい。但し、演算中断時からの続きで演算を開始するようにしてもよい。
【0031】
次に、ブレーキが作動してブレーキ信号BRKが読み込まれた場合に、ブレーキフラグBFに1がセットされるものとして、S8において、ブレーキフラグBF=1であるか否か判定される。そして、BF=1であると判定された場合(S8;Yes )、S9において、S11における減速度積分値演算用の減速度DBVが車両加速度DVの絶対値|DV|として算出され、また、BF=1でないと判定された場合(S8;No)、S9aにおいて、減速度DBVに0が設定される。
【0032】
次に、図3に示すように、S10において、コーナーフラグCF=0であるか否か判定され、CF=0であると判定された場合(S10;Yes )、即ち直進走行状態のときには、S11において、S9で算出された車両制動時の車両減速度DBVを所定期間(数秒の期間であり、例えば、3秒間又は5秒間)積分して車両減速度積分値IDBV←∫|DBV|dtが演算される。S11が減速度積分値演算手段に相当する。ここで、S3で演算された前回の加速度DV[I-1] は記憶保持されるもとする。そして、CF=0でないと判定された場合(S10;No)、即ち旋回走行状態のときには、S12において、前記車両加速度積分値IDVとして前回の車両加速度DV[I-1] が設定される。
【0033】
次に、S13において、現在の変速段GEARが最低変速段(1)でないか、車速Vが所定の第1車速V1(例えば、50Km/h)よりも大きいか判定され、GEAR≠1and V>V1であると判定された場合(S13;Yes )、S14において、判定許可フラグXPJに1がセットされ、S17の判定処理へと移行する。一方、GEAR≠1and V>V1でないと判定された場合(S13;No)、つまり、変速段GEARが最低変速段(1)であるか、車速Vが第1車速V1以下かであるかの何れか一方でも成立していれば、S15が実行される。
【0034】
そして、S15において、変速段GEARが最低変速段(1)であるか、車速Vが第1車速V1よりも小さな所定の第2車速V2(例えば、20Km/h)以下であるか判定され、GEAR=1orV≦V2であると判定された場合(S15;Yes )、S16において、判定許可フラグXPJに0がセットされてS17の判定処理へと移行し、GEAR=1orV≦V2でないと判定された場合(S15;No)、つまり、GEARが最低変速段以外の変速段(2〜4の何れか)であり、且つ、車速Vが第2設定値V2よりも大であれば、現在の判定許可フラグXPJが保持されてS17の判定処理へと移行する。
【0035】
さて、S17においては、判定許可フラグXPJが1であるか否か判定され、XPJ=1である場合には(S17;Yes )、S18へ移行し、第1,第2比較判定手段に相当するS18と第3比較判定手段に相当するS35とS37による比較判断が許可され、XPJ=1でない場合には(S17;No)、S18,S35,S37による比較判断が禁止される。また、S26へ移行し、S26においてパワーフラグPFに0がセットされる。こうして、自動変速機8の変速段が最低変速段の場合には、S18,S35,S37による比較判断を禁止可能にし、S18,S35,S37による比較判断を、車速Vが所定の第1車速V1以上になった後、その第1車速V1よりも小さな所定の第2車速V2以下になるまで許可するようにしている。
【0036】
さて、判定許可フラグXPJが1の場合(S17;Yes )、S18において、車両加速度積分値IDVと、車速Vと走行抵抗値GRADEとをパラメータとして設定された第1基準値K1とが比較判断され、また、車両加速度DVと、車速Vと走行抵抗値GRADEとをパラメータとして設定された第2基準値K2とが比較判断される。S18が第1,第2比較判断手段に相当する。
【0037】
第1基準値K1については、図5のK1特性マップに基づいて設定されるが、このK1特性マップには3本のK1特性ラインk1a、k1b、k1cが予め設定され、その中から走行抵抗値GRADEに応じて採用される1本のK1特性ラインに車速Vを当てはめて第1基準値K1が求められる。走行抵抗値GRADEが小よりも大の方が、第1基準値K1は小さくなる。
【0038】
このように、走行抵抗(走行抵抗値GRADE)が小さくなると第1基準値K1は大きくなり、走行抵抗が大きくなると第1基準値K1は小さくなり、つまりは、第1基準値K1を、車両の走行抵抗の変動を排除する側に、走行抵抗値GRADEに応じて変更するようにしている。尚、S18ではこの第1基準値K1の演算設定も行われ、このS18が第1変更手段に相当する。
【0039】
第2基準値K2については、図6のK2特性マップに基づいて設定されるが、このK2特性マップには3本のK2特性ラインk2a、k2b、k2cが予め設定され、その中から走行抵抗値GRADEに応じて採用される1本のK2特性ラインに車速Vを当てはめて第2基準値K2が求められる。走行抵抗値GRADEが小よりも大の方が、第2基準値K2は小さくなる。
【0040】
このように、走行抵抗(走行抵抗値GRADE)が小さくなると第2基準値K2は大きくなり、走行抵抗が大きくなると第2基準値K2は小さくなり、つまりは、第2基準値K2を、車両の走行抵抗の変動を排除する側に、走行抵抗値GRADEに応じて変更するようにしている。尚、S18ではこの第2基準値K2の演算設定も行われ、このS18が第2変更手段に相当する。
【0041】
そして、S18において、IDV>K1orDV>K2であると比較判断された場合(S18;Yes )、S19において、パワーフラグPFに1がセットされ、図4のS27の判定(Yes )を経て、S28において、自動変速機8を変速制御するために第1変速スケジュールを用いている場合には、その第1変速スケジュールが第2スケジュールに切換えられる。即ち、第1変速スケジュールを第2スケジュールに切換えるために充足させる所定条件は、S18により車両加速度積分値IDVが第1基準値K1よりも大と比較判定した場合と、S18により車両加速度DVが第2基準値K2よりも大と比較判定した場合とを含んでいる。
【0042】
一方、S18において、IDV>K1orDV>K2でないと比較判断された場合(S18;No)、次に、S20において、車両加速度積分値IDVと、車速Vと走行抵抗値GRADEとをパラメータとして設定された第4基準値K4(<第1基準値K1)とが比較判断される。S20が第4比較判断手段に相当する。
【0043】
第4基準値K4については、図8のK4特性マップに基づいて設定されるが、このK4特性マップには3本のK4特性ラインk4a、k4b、k4cが予め設定され、その中から走行抵抗値GRADEに応じて採用される1本のK4特性ラインに車速Vを当てはめて第4基準値K4が求められる。走行抵抗値GRADEが小よりも大の方が、第4基準値K4は小さくなる。
【0044】
そして、S20において、IDV<K4であると比較判断された場合(S20;Yes )、第2変速スケジュールに切換えられている状態では、S21において、パワーフラグPFに0がセットされ、これにより、図4のS27の判定(No)を経て、S29において、第2変速スケジュールが第1スケジュールに切換えられて、第2変速スケジュールよる変速制御が解除される。
【0045】
一方、S20において、IDV<K4でないと比較判断された場合(S20;No)、S22において、車両加速度DVの絶対値|DV|と所定の設定値DV1、アクセル開度(即ち、エンジン負荷)変化速度DTVOの絶対値|DTVO|と所定の設定値DTVO1、アクセル開度TVOと所定の設定値TVO1及びTVO2(但し、TVO1<TVO2)とが比較判断され、|DV|<DV1and |DTVO|<DTVO1and TVO>TVO1and TVO<TVO2である場合はS24へ移行し、そうでない場合は、S23へ移行する。
【0046】
S22でNo判定の場合、S23において、タイマTIMEに、エンジン回転数NEと変速段GEARをパラメータとして決まる所定時間T1(NE,GEAR)が設定され、S22でYes 判定の場合、S24において、タイマTIMEが(TIME−1)ディクリメントされる。そして、S23で設定された所定時間T1の間、S22とS24が連続的に実行された場合、S25において、タイマTIMEが0となるためYes 判定され、第2変速スケジュールに切換えられている状態では、S26において、パワーフラグPFに0が設定され、図4のS27による判定(No)を経て、S29において、第2変速スケジュールが第1変速スケジュールに切換えられる。
【0047】
このように、第2変速スケジュールに切換えられた状態では、エンジン負荷(アクセル開度TVO)が所定の低負荷領域(TVO1<TVO<TVO2)にある状態において、車両加速度DVの絶対値|DV|及びエンジン負荷変化速度(アクセル開度変化速度DTVO)の絶対値|DTVO|が共に所定の設定値DV1,DTVO1未満にある状態が所定時間T1連続した場合に第2変速スケジュールによる変速制御を解除するようにしている。
【0048】
さて、図4に示すように、S27において、パワーフラグPFが1の場合(S27;Yes )、S28において、第2変速スケジュールになっている場合には第1変速スケジュールに切換えて、アクセル開度TVOと車速Vに基づいて、第2変速スケジュールで目標変速段GEARXが決定され、また、パワーフラグPFが0の場合(S27;No)、S29において、第2変速スケジュールになっている場合には第1変速スケジュールに切換えて、アクセル開度TVOと車速Vに基づいて、第1変速スケジュールで目標変速段GEARXが決定される。
【0049】
次に、S30において、パワーフラグPFが1であるか、今回の目標変速段GEARX[I] が現在(前回決定された)の変速段GEAR[I-1] よりも大きいか、現在のGEAR[I-1] が2段であるか、コーナーフラグCFが1であるか(即ち、旋回走行中であるか)、車速Vが変速段(2段)に応じて設定された第1所定車速V1a(例えば、V1a=90Km/h)よりも小さいか判定される。PF=1and GEARX[I-1] >GEAR[I-1] and GEAR[I-1] =2and CF=1and V<V1aである場合(S30;Yes )。S31において、自動変速機8の変速段がシフトアップせずに2段に保持される。
【0050】
S30でNo判定の場合、次に、S32において、パワーフラグPFが1であるか、今回の目標変速段GEARX[I] が現在の(前回決定された)変速段GEAR[I-1] よりも大きいか、現在のGEAR[I-1] が3段であるか、コーナーフラグCFが1であるか、車速Vが変速段(3段)に応じて設定された第2所定車速V2b(例えば、V2a=150Km/h)よりも小さいか判定される。PF=1and GEARX[I] >GEAR[I-1]andGEAR[I-1] =3and CF=1and V<V2aである場合(S32;Yes )。S33において、自動変速機8の変速段がシフトアップせずに3段に保持される。
【0051】
このように、第2スケジュールに切換えられており且つ所定の変速段(2段,3段)にある状態では、S5により旋回走行状態が検出されている間(即ち、コーナフラグCFが1に設定されている間)、車速Vが各変速段(2段,3段)に応じて設定された所定車速(第1所定車速V1a,第2所定車速V2a)よりも小さい場合には、変速段のアップシフトを禁止するようにしている。
【0052】
S32でNo判定の場合、S34において、判定許可フラグXPJが0であるか否か判定され、XPJ=0の場合(S34;Yes )、S35において、目標変速段GEARXが3段又は4段であるか、目標変速段GEARXが現在の(前回決定された)変速段GEAR[I-1] であるか、コーナーフラグCFが0であるか(即ち、直進走行中であるか)、車速Vが第3所定車速V3a(例えば、V3a=40Km/h)よりも小さいか判定され、S11で求めた車両減速度積分値IDBVと車速Vと走行抵抗GRADEとをパラメータとして設定された第3基準値K3Aとが比較判断される。S35が第3比較判定手段に相当する。
【0053】
第3基準値K3Aについては、図7のK3A特性マップに基づいて設定されるが、このK3A特性マップには3本のK3A特性ラインk3a、k3b、k3cが予め設定され、その中から走行抵抗値GRADEに応じて採用される1本のK3A特性ラインに車速Vを当てはめて第3基準値K3Aが求められる。走行抵抗値GRADEが小よりも大の方が、第3基準値K3Aは小さくなる。
【0054】
このように、走行抵抗(走行抵抗値GRADE)が小さくなると第3基準値K3Aは大きくなり、走行抵抗が大きくなると第3基準値K3Aは小さくなり、つまりは、第3基準値K3Aを、車両の走行抵抗の変動を排除する側に、走行抵抗値GRADEに応じて変更するようにしている。尚、S35ではこの第3基準値K3Aの演算設定も行われ、このS35が第3変更手段に相当する。
【0055】
そして、S35において、(GEARX=3or4)and GEARX=GEAR[I-1] and CF=0and V<V3aand IDBV>K3A(V,GEAR)である場合(S35;Yes )、S36において、変速段が2段になるように自動変速機8が制御され、パワーフラグに1がセットされ、例えば、旋回走行直前に上記条件が満たされた場合に変速段が2段になってその後の加速に備えることができる。
【0056】
S35でNo判定の場合、S37において、目標変速段GEARXが4段であるか、目標変速段GEARXが現在の(前回決定の)変速段GEAR[I-1] であるか、コーナーフラグCFが0であるか、車速Vが第4所定車速V4a(例えば、V4a=70Km/h)よりも小さいか判定され、S11で求めた車両減速度積分値IDBVと車速Vと走行抵抗GRADEとをパラメータとして設定された第3基準値K3Bとが比較判断される。S37が第3比較判定手段に相当する。
【0057】
第3基準値K3Bについては、第3基準値K3Aと同様に、図7のK3B特性マップに基づいて設定されるが、第3基準値K3B<第3基準値K3Aとなる。このK3B特性マップには3本のK3B特性ラインk3a、k3b、k3cが予め設定され、その中から走行抵抗値GRADEに応じて採用される1本のK3B特性ラインに車速Vを当てはめて第3基準値K3Bが求められる。走行抵抗値GRADEが小よりも大の方が、第3基準値K3Bは小さくなる。
【0058】
このように、走行抵抗(走行抵抗値GRADE)が小さくなると第3基準値K3Bは大きくなり、走行抵抗が大きくなると第3基準値K3Bは小さくなり、つまりは、第3基準値K3Bを、車両の走行抵抗の変動を排除する側に、走行抵抗値GRADEに応じて変更するようにしている。尚、S37ではこの第3基準値K3Bの演算設定も行われ、このS37が第3変更手段に相当する。
【0059】
そして、S37において、GEARX=4and GEARX=GEAR[I-1]andCF=0and V<V4aand IDBV>K3B(V,GEAR)である場合(S37;Yes )、S38において、変速段が3段になるように自動変速機8が制御されて、例えば、旋回走行直前に上記条件が満たされた場合に変速段が3段になってその後の加速に備えることができ、パワーフラグに1がセットされ、リターンする。一方、S34とS35とS37でNo判定の場合、S39において、現在切り換えられている変速スケジュールに基づいて、変速段が目標変速段GEARXになるように自動変速機8が制御され、リターンする。
【0060】
以上のように、この自動変速機の変速制御装置によれば、S6において、車両加速度DVの絶対値|DV|を例えば3秒間や5秒間等の所定期間毎に積分して車両加速度積分値IDVを更新しつつ演算し、S4において、車両駆動力F3から加速抵抗F4と他の抵抗F5を減算して走行抵抗値GRADEを演算し、S18において、車両加速度積分値IDVと、車速Vと走行抵抗値GRADEとをパラメータとして設定された第1基準値K1とを比較判断し、車両加速度積分値IDVが第1基準値K1よりも大と比較判断した場合、第1変速スケジュールを第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機8を変速制御する。つまり、ドライバーの強い加速操作、減速操作を含め、瞬間的な走行状態ではなく現在の連続的な走行状態を判断するので過敏な誤判断を防止し、的確なスポーツ走行意図判断により第2の変速スケジュールへの切換えが可能になる。
【0061】
しかも、S18において、第1基準値K1を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更し設定するので、登坂・降坂走行の際或いは乗員増加状態での走行の際等、走行抵抗が変動した場合でも、ドライバーのスポーツ走行意図を精度よく判断可能となり、第1変速スケジュールからスポーツ走行用の第2の変速スケジュールへの切換えをより的確に行うことができて、ドライバーの意図に沿った走行を実現することが可能になる。
【0062】
また、S18において、車両加速度DVと、車速Vと走行抵抗相当値GRADEとをパラメータとして設定された第2基準値K2とを比較判断し、車両加速度DVが第2基準値K2よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールを第2の変速スケジュールに切換える。つまり、第2の変速スケジュールへ切換える条件として、車両加速度積分値IDVが第1基準値K1よりも大という条件でカバーできない条件;車両加速度DVが第2基準値K2よりも大という条件を補い、この車両加速度DVと第2基準値K2の少なくとも一方を、車両の走行抵抗の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更するので、より的確にドライバーのスポーツ走行意図を判断可能になる。
【0063】
また、S11において、車両の制動時の車両減速度DBVを所定期間積分して車両減速度積分値IDBVを演算し、S35とS37において、車両減速度積分値IDBVと、車速Vと走行抵抗相当値GRADEとをパラメータとして設定された第3基準値K3A,K3Bとを比較判断し、車両減速度積分値IDBVが第3基準値K3A,K3Bよりも大と比較判断した場合を含む所定条件を充足した場合、第1変速スケジュールを第2の変速スケジュールに切換える。
【0064】
つまり、第2の変速スケジュールへ切換える条件として、車両加速度積分値IDVが第1基準値K1よりも大、車両加速度DVが第2基準値K2よりも大という条件でカバーできない条件;車両減速度積分値IDBVが第3基準値K3Aよりも大という条件と車両減速度積分値IDBVが第3基準値K3Bよりも大という条件を補い、S35とS37において、第3基準値K3AとK3Bを、車両の走行抵抗の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更し設定するので、より的確にドライバーのスポーツ走行意図を判断可能になる。
【0065】
S18,S35、S37の比較判断を、S13において、車速Vが所定の第1車速V1以上になった後、S15において、その第1車速V1よりも小さな所定の第2車速V2以下になるまで、判定許可フラグXJPをたてて許可するので、車両発進時から車速Vが第1車速速V1以上(巡行車速)までの通常走行の際に、スポーツ走行意図となる誤判断を防止して、第2変速スケジュールへの切換えを防止でき、第1車速V1以上になった後は、その第1車速V1よりも小さな所定の第2車速V2以下になるまで、S18,S35,S37の比較判断を許可して、前記所定条件を充足した場合には、第1変速スケジュールを第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機が変速制御される。
【0066】
S13において、自動変速機8の変速段GEARが最低変速段(1)の場合には、判定許可フラグXJPを0にして、S18,S35,S37による比較判断を禁止可能にするので、車両発進時等に自動変速機8の変速段が最低変速段になっている場合には、スポーツ走行意図となる誤判断を防止して、第2変速スケジュールへの切換えを防止可能になり、自動変速機8の変速段が最低変速段以外の変速段になった場合、前記所定条件を充足した場合には、第1変速スケジュールを第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機が変速制御される。
【0067】
S20において、加速度積分値IDVと、車速Vと走行抵抗相当値GRADEとをパラメータとして設定された第4基準値K4とを比較判断し、第2変速スケジュールに切換えられている状態では、加速度積分値IDVが第4基準値K4よりも小と比較判断した場合に第2変速スケジュールによる変速制御を解除するので、通常走行に戻ったことを迅速に判断し、第2変速スケジュールによる変速制御を解除し、第1変速スケジュールに切換えて、燃費の向上と静粛性の確保を図ることができる
【0068】
S22〜S25において、第2変速スケジュールに切換えられた状態では、エンジン負荷(アクセル開度TVO)が所定の低負荷領域(TVO1とTVO2の間)にある状態において、車両加速度DVの絶対値|DV|及びエンジン負荷変化速度(アクセル開度変化速度DTVO)の絶対値|DTVO|が共に所定の設定値DV1,DTVO1未満にある状態が所定時間T1連続した場合に第2変速スケジュールによる変速制御を解除するので、通常走行に戻ったことを迅速に判断し、第2変速スケジュールによる変速制御を解除し、第1変速スケジュールに切換えて、燃費の向上と静粛性の確保を図ることができる。
【0069】
S3、S5において、車両の旋回走行状態を検出し、車両加速度積分値IDVとして、旋回走行状態が検出されている間は、S7において、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値IDV[I-1] を適用し、S18におて、その車両加速度積分値IDV(=IDV[I-1] )が、車速Vと走行抵抗相当値GRADEとをパラメータとして設定された第1基準値K1よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更した第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機を変速制御する。
【0070】
つまり、旋回走行中は、旋回走行状態になる直前の変速スケジュールが採用されることになる。特に、スポーツ走行用の第2変速スケジュールに切換えられた状態で車両が旋回走行状態になった場合、旋回走行中に、通常走行用の第1変速スケジュールへの切換えを防止して第2変速スケジュールに保持できるため、変速段の不用意なアップシフトが起こって駆動力の抜けが生じるのを防止して、安定した旋回走行を実現でき、また、旋回走行中の不用意なアップシフトを防いで、旋回走行後の再加速に備えることができる。
【0071】
S3、S5で旋回走行状態が検出されている間はS6における車両加速度積分値の演算を中断させ、旋回走行状態が検出されなくなった時に加速度積分値の演算を再開させて、車両加速度積分値IDVの演算と、その車両加速度積分値IDVと基準値K4との比較判断等を再開させることができる。
【0072】
第2スケジュールに切換えられており且つ所定の変速段(2又は3)にある状態では、S3、S5で旋回走行状態が検出されている間、S30又はS32において、車速Vが各変速段(2又は3)に応じて設定された所定車速(第1所定車速V1a又は第2所定車速V2a)よりも小さい場合、S33又はS36において、変速段(2又は3)のアップシフトを禁止するので、旋回走行中の不用意な駆動力の抜けがないように変速段(2又は3)のアップシフトを防止することができ、旋回走行後の再加速に備えることができる。
【0073】
旋回走行状態の検出については、車両の左右両輪1,2の車輪速度FLV,FRVを検出し、S3において、これら車輪速度FLV,FRVの割合VS←|FLV−FRV|/(FLV+FRV)×2×100が所定割合G1以上の場合に旋回走行状態であると判断するので、このような簡単な方法で的確に旋回状態を検出することができる。
【0074】
次に、別実施形態について説明する。但し、前記実施形態と同じものには同一符号を付して説明を省略する。
この別実施形態においては、コントロールユニット30が、図2〜図4のフローチャートにおいて、S18の代わりに図11(a)のS18aとS18bを有し、S37の代わりに図12(a)のS37aとS37bを有するフローチャートに示すプログラムを実行する。
【0075】
コントロールユニット30が実行する処理においては、S17において、判定許可フラグXJPが1の場合(S17;Yes )、図11(a)に示すように、S18aにおいて、車両加速度積分値IDVがIDVR(←IDV+α)に補正変更され、車両加速度DVがDVR(←DV+β)に補正変更され、S18bにおいて、車両加速度積分値IDVRと車速Vをパラメータとして設定された第1基準値M1とが比較判断され、車両加速度DVRと車速Vをパラメータとして設定された第2基準値M2とが比較判断される。
【0076】
そして、S18bにおいて、車両加速度積分値IDVRが第1基準値M1よりも大と比較判断された場合、又は、車両加速度DVRが第2基準値M2よりも大と比較判断された場合(S18b;Yes )、所定条件が充足されて、S19において、パワーフラグPFに1がセットされ、S28において、図9の第1変速スケジュールが図10の第2の変速スケジュールに切換えられる。
【0077】
第1基準値M1については、図11(b)のM1特性マップに基づいて設定されるが、このM1特性マップにはM1特性ラインが予め設定され、そのM1特性ラインに車速Vを当てはめて第1基準値M1が求められる。ここで、S18aにおいて、車両加速度積分値IDVについては、車両走行抵抗値GRADEが大きい場合には大きくなるように変更され、車両走行抵抗値GRADEが小さい場合には小さくなるように変更され、つまりは、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更される。
【0078】
第2基準値M2については、図11(c)のM2特性マップに基づいて設定されるが、このM2特性マップにはM2特性ラインが予め設定され、そのM2特性ラインに車速Vを当てはめて第2基準値M2が求められる。ここで、S18aにおいて、車両加速度DVについては、車両走行抵抗値GRADEが大きい場合には大きくなるように変更され、車両走行抵抗値GRADEが小さい場合には小さくなるように変更され、つまりは、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更される。
【0079】
また、S36において、判定許可フラグXJPが1の場合(S36;Yes )、図12(a)に示すように、S37aにおいて、車両減速度積分値IDBVがIDBVR(←IDBV+γ)に補正変更され、S37bにおいて、S37において、目標変速段GEARXが4段であるか、目標変速段GEARXが現在の(前回決定された)変速段GEAR[I-1] であるか、コーナーフラグCFが0であるか、車速Vが第4所定車速よりも小さいか判定され、車両減速度積分値IDBVRと車速Vをパラメータとして設定された第3基準値M3とが比較判断される。
【0080】
そして、S37bにおいてYes 判定された場合、S38において、パワーフラグPFに1がセットされ、次回S28において、図9の第1変速スケジュールが図10の第2の変速スケジュールに切換えられる。
【0081】
第3基準値M3については、図12(b)のM3特性マップに基づいて設定されるが、このM3特性マップにはM3特性ラインが予め設定され、そのM3特性ラインに車速Vを当てはめて第3基準値M3が求められる。ここで、S37aにおいて、車両減速度積分値IDBVについては、車両走行抵抗値GRADEが大きい場合には大きくなるように変更され、車両走行抵抗値GRADEが小さい場合には小さくなるように変更され、つまりは、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値GRADEに応じて変更される。
【0082】
この別実施形態において、前記実施形態と同様の作用・効果を奏する。尚、車両加速度積分値と第1基準値の両方を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に前記走行抵抗相当値に応じて変更してもよいし、車両加速度と第2基準値の両方を、車両の走行抵抗の影響を排除する側に前記走行抵抗相当値に応じて変更してもよい。また、車両減速度積分値と第3基準値の両方を車両の走行抵抗の影響を排除する側に前記走行抵抗相当値に応じて変更してもよい。
【0083】
尚、本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【0084】
【発明の効果】
請求項1の自動変速機の変速制御装置によれば、加速度積分値演算手段により、車両加速度の絶対値を所定期間毎に積分して車両加速度積分値が更新されつつ演算され、少なくとも車両加速度積分値が少なくとも車速をパラメータとして設定された基準値よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更した第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機を変速制御する。つまり、ドライバーの強い加速操作、減速操作を含め、瞬間的な走行状態ではなく現在の連続的な走行状態を判断するので過敏な誤判断を防止し、的確なスポーツ走行意図判断により第2の変速スケジュールへの切換えが可能になる。
【0085】
しかも、車両加速度積分値として、旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値が適用されるので、旋回走行中は旋回走行状態になる直前の変速スケジュールが採用されることになる。特に、スポーツ走行用の第2変速スケジュールに切換えられた状態で車両が旋回走行状態になった場合、旋回走行中に、通常走行用の第1変速スケジュールへの切換えを防止して第2変速スケジュールに保持できるため、変速段の不用意なアップシフトが起こって駆動力の抜けが生じるのを防止して、安定した旋回走行を実現でき、また、旋回走行中の不用意なアップシフトを防いで、旋回走行後の再加速に備えることができる。更に、車両加速度積分値と基準値の少なくとも一方を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に走行抵抗相当値に応じて変更し設定するので、登坂・降坂走行の際或いは乗員増加状態での走行の際等、走行抵抗が変動した場合でも、ドライバーのスポーツ走行意図を精度よく判断可能となり、第1変速スケジュールからスポーツ走行用の第2の変速スケジュールへの切換えをより的確に行うことができて、ドライバーの意図に沿った走行を実現することが可能になる。
【0086】
請求項2の自動変速機の変速制御装置によれば、前記所定期間は数秒の期間に設定されているので、ドライバーの強い加速操作、減速操作を含め、瞬間的な走行状態ではなく現在の連続的な走行状態を判断して過敏な誤判断を防止し、的確なスポーツ走行意図判断により第2の変速スケジュールへの切換えが可能になる。旋回走行中には加速度積分値演算手段による演算を中断し、旋回走行後から加速度積分値演算手段による演算を再開させ、車両加速度積分値と基準値の比較判断等を再開させることができる。
【0087】
請求項3の自動変速機の変速制御装置によれば、第2スケジュールに切換えられており且つ所定の変速段にある状態では、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間、車速が各変速段に応じて設定された所定車速よりも小さい場合には、変速段のアップシフトを禁止するので、旋回走行中の不用意な駆動力の抜けがないように変速段のアップシフトを防止することができ、旋回走行後の再加速に備えることができる。
【0088】
請求項4の自動変速機の変速制御装置によれば、旋回状態検出手段は、車両の左右両輪の車輪速度を検出し、これら車輪速度の割合が所定割合以上の場合に旋回走行状態であると判断するので、このような簡単な方法で的確に旋回状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御システム図である。
【図2】変速制御のフローチャート(1/3)である。
【図3】変速制御のフローチャート(2/3)である。
【図4】変速制御のフローチャート(3/3)である。
【図5】第1特性マップの概念図である。
【図6】第2特性マップの概念図である。
【図7】第3特性マップの概念図である。
【図8】第4特性マップの概念図である。
【図9】第1変速スケジュールにおける変速マップの概念図である。
【図10】第1変速スケジュールにおける変速マップの概念図である。
【図11】(a)は別実施形態に係るフローチャートの要部であり、(b)は第1特性マップの概念図であり、(c)は第2特性マップの概念図である。
【図12】(a)は別実施形態に係るフローチャートの要部であり、(b)は第3特性マップの概念図である。
【符号の説明】
1,2 前輪
3,4 後輪
5 エンジン
6 トルクコンバーター
7 変速ギヤ機構
8 自動変速機
20〜26 センサ類
30 コントロールユニット
Claims (4)
- 車両のエンジン負荷と車速に基づいて、予め設定された第1変速スケジュールにより自動変速機を自動的に変速制御すると共に、車両加速度の絶対値を所定期間毎に積分して車両加速度積分値を更新しつつ演算する加速度積分値演算手段を有し、少なくとも前記車両加速度積分値が少なくとも車速をパラメータとして設定された基準値よりも大と比較判断した場合に、第1変速スケジュールをその少なくとも一部の領域の変速ラインを高車速側に変更した第2の変速スケジュールに切換えて自動変速機を変速制御する変速制御装置において、
前記車両の旋回走行状態を検出する旋回検出手段を設け、
前記車両加速度積分値として、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は、旋回走行状態が検出される直前の車両加速度積分値を適用すると共に、
走行抵抗相当値を演算する走行抵抗演算手段を備え、
前記車両加速度積分値と前記基準値の少なくとも一方を、車両の走行抵抗の変動の影響を排除する側に前記走行抵抗相当値に応じて変更する基準値変更手段と、を備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 前記所定期間は数秒の期間に設定され、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間は加速度積分値演算手段による演算を中断し、旋回走行状態が検出されなくなった時に加速度積分値演算手段による演算を再開することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置。
- 前記第2スケジュールに切換えられており且つ所定の変速段にある状態では、前記旋回検出手段により旋回走行状態が検出されている間、車速が各変速段に応じて設定された所定車速よりも小さい場合には、変速段のアップシフトを禁止することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の変速制御装置。
- 前記旋回状態検出手段は、車両の左右両輪の車輪速度を検出し、これら車輪速度の割合が所定割合以上の場合に旋回走行状態であると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の変速制御装置。
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