JP4098654B2 - バルブ駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボール弁やバタフライ弁等のバルブ駆動装置に関し、特に、高いセルフロック機能を有しながら、同時に、装置全体の回転効率の向上を図る等、目的によって様々な態様の設計が可能な、小型且つ低コストのバルブ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築設備や水処理設備の配管路等に設置され、流路の開閉や流量の調整等を行う弁として、ボール弁やバタフライ弁等を用いたバルブが広く知られており、これらのバルブを駆動するための、手動式又は電動式の駆動装置が数多く提案されている。係る駆動装置としては、ウォーム歯車機構を駆動装置に適用したものが最も一般的であるが、ウォーム歯車機構の他にも、省スペース化が可能な偏心差動歯車機構を適用した駆動装置も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
これらのバルブ駆動装置においては、配管路等を流れる流体の量を適切に調整する必要があるため、回転動作時には、弁体の回転円滑性が求められる一方で、回転停止時には、弁体が配管路等を流れる流体から強い負荷を受けるため、弁体の逆方向への回転を防止する機能(逆転防止機能)も必要とされる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−193136号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バルブ駆動装置にウォーム歯車機構を適用した場合には、その構造上、逆方向への回転が制限されるため、高い逆転防止効果(セルフロック機能)が得られるものの、回転動作時(特に、回転起動時)の回転効率が悪く、特にモータによって頻繁に作動されるような用途で使用する場合には、消費電力が大きくなるという問題があった。
【0006】
一方、バルブ駆動装置に偏心差動歯車機構を適用した場合には、ウォーム歯車機構に比べ、回転効率は高いものの、逆方向に回転しやすい構造であるため、弁体に加わる負荷に対して弱いという問題があった。
【0007】
即ち、減速機構を構成する部材の回転抵抗を単純に大きくしたのでは、逆転防止機能の向上は図れるものの、同時に、駆動方向への回転抵抗も増大する結果となり、装置全体の回転効率が悪くなってしまう。一方、減速機構を構成する部材の回転抵抗を低くすることによって、装置全体の回転効率を高くすることが可能であるが、セルフロック機能性と回転円滑性は表裏の関係にあるため、単純に回転抵抗を小さくし、回転効率を高くしたのでは、当然に反駆動方向に回転し易い構造となってしまい、セルフロック機能は低くなってしまう。
【0008】
又、このような逆転防止機能は、バルブ駆動装置には不可欠なものであるが、ブレーキ等を用いて逆転を防止した場合には、装置本体とは別に、逆転防止機能を実現するための特別な機構を必要とするため、装置の大型化やコスト高になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、高いセルフロック機能を有しながら、同時に、装置全体の回転効率の向上を図る等、目的によって様々な態様の設計が可能な、小型且つ低コストのバルブ駆動装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力軸の回転を出力軸に減速して伝達する減速機を備え、該減速機の前記出力軸を弁棒と連結可能とすることにより、該弁棒を介して弁体を駆動可能としたバルブ駆動装置において、前記減速機の減速機構を、前記入力軸と前記出力軸との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車及び内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車機構で構成すると共に、前記外歯歯車に形成された複数の内ピン孔と、該内ピン孔に遊嵌され前記外歯歯車の自転成分を吸収可能な複数の内ピンとの各摺動部の摺動態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部を、動力伝達経路上並列に備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
本発明によれば、バルブ駆動装置に入力される動力を、各摺動部の摺動態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部を介して弁棒及び弁体に伝達することが可能となり、組み合わせる動力伝達部の各々の特性によって、バルブ駆動装置全体の特性を変えることができる。従って、高いセルフロック機能を有しながら、同時に、装置全体の回転効率の向上を図る等、目的によって様々な態様の設計が可能なバルブ駆動装置が提供可能である。ここで、本発明における「動力伝達経路上並列に備えた」とは、共通の部材である入力軸と出力軸との間に、動力の伝達され得る経路を2つ備えていることを意味する。ちなみに、「動力伝達経路上で直列に備える」とは、有る経路を得た後に他の経路を通ることをいう。
【0012】
なお、本発明では、具体的にどのようにして各摺動部の摺動態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。
【0013】
従って、例えば、前記各摺動部の摺動態様の差異を、該各摺動部に摺動促進部材を配置するか否かの区別によって具現してもよい。
【0014】
又、前記各摺動部の摺動態様の差異を、該各摺動部に摺動促進部材を配置すると共に、該摺動促進部材の種類を変えることによって具現してもよく、例えば、摺動促進部材として、前記内ピンに挿嵌され、且つ自身の外周面の全面において前記内ピン孔に内接可能な第1内ローラと、前記内ピンに挿嵌され、自身の内周面と同軸の外周面を持ち、且つ該外周面の一部において前記内ピン孔に内接可能な第2内ローラとを備えると共に、前記各摺動部に前記第1内ローラ又は前記第2内ローラを配置すれば、前記各摺動部の摺動態様の差異を具現することが可能となる。
【0015】
更に、前記第1内ローラと前記第2内ローラの材質を変えることによっても、前記摺動部の摺動態様の差異を具現することが可能となる。
【0016】
なお、複数の前記内ピンに対して、前記第1内ローラ又は前記第2内ローラを選択的に挿脱可能とすれば、配置する第1、第2内ローラの割合によって、バルブ駆動装置全体の特性を変えることができ、使用用途に応じた様々な態様の設計が可能となると共に、その設計変更も容易となる。例えば、複数の前記内ピンに対して、前記第1内ローラ又は前記第2内ローラの一方のみを挿嵌することによって、前記動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部の一方のみを介して動力伝達を可能としてもよい。
【0017】
又、前記出力軸の回転を保持する固定手段を備えれば、該出力軸に連結される弁体の回転を保持することができ、例えば、弁体の回転を維持した状態で前記第1内ローラや第2内ローラを交換可能で、バルブ駆動装置の特性を使用用途に応じて変更可能となる。
【0018】
なお、前記入力軸の回転方向を前記弁体の回転方向と同一にすれば、バルブ駆動装置の操作ハンドル等の回転方向と、弁体の回転方向が一致するため、バルブ駆動装置の操作性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の例に係るバルブ駆動装置300の側断面図である。
【0021】
バルブ駆動装置300は、ハンドル(バルブ駆動機構)310と、上部及び下部ケーシング312、314からなるケーシング316内に収容された減速機340と、を備えている。このバルブ駆動装置300は、減速機340の出力軸306に弁棒350を連結することにより、該弁棒350に設けられた弁体(図示略)をハンドル310によって回転駆動可能である。
【0022】
前記ハンドル310は、前記減速機340の入力軸302に連結されており、該ハンドル310を軸心L1を中心に回転することによって、入力軸302を回転駆動可能である。なお、該入力軸302の上部先端には、弁体の開度を示す開度指針318が取り付けられており、上方から弁体の開度を確認しながら、開度調整することが可能となっている。
【0023】
前記減速機340は、入力軸302と、キャリア304と、出力軸306と、内接噛合遊星歯車機構100と、を備えている。該減速機340は、入力軸302から入力される動力を、前記内接噛合遊星歯車機構100及び出力軸306を介して、弁棒350に伝達可能である。
【0024】
前記入力軸302は、中空部302aを有するホローシャフトからなると共に、出力軸306と同軸に配置され、弁棒350と同じ軸心L1を中心として回転可能である。
【0025】
前記キャリア304は、上部ケーシング312によって固定状態に維持されており、該キャリア304には、後述する内ピン346が一体的に設けられている。
【0026】
前記出力軸306は、前記入力軸302と同様に、中空部306aを有するホローシャフトからなり、該入力軸302と同じ軸心L1を中心に回転可能である。
【0027】
又、これら入力軸302及び出力軸306の間には、内接噛合遊星歯車機構100が配置されている。
【0028】
図2は、図1中におけるII−II線に沿う断面図であり、内接噛合遊星歯車機構100の断面を示したものである。
【0029】
図1、図2に示すように、内接噛合遊星歯車機構100は、僅少の歯数差を有する外歯歯車102及び内歯歯車104と、偏心体106と、ころ軸受110とを備えている。
【0030】
該偏心体106は、入力軸302の軸心L1に対して偏心した外周を有しており、入力軸302の外周に設けられている。
【0031】
前記内歯歯車104は、出力軸306の内周面に複数形成された円弧溝306aに円筒状の外ピン104aが嵌合した構造で、これら外ピン104aが内歯を形成している。
【0032】
前記外歯歯車102は、外周にトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯を有しており、前記内歯歯車104の外ピン104aと内接噛合している。又、該外歯歯車102は、該外歯歯車102と偏心体106の間に設けられたころ軸受110を介して偏心体106に嵌合され、該偏心体106の回転に伴って揺動回転可能である。更に、外歯歯車102には内ピン孔102aが複数個(この例では8個)形成され、内ピン346が各内ピン孔102aにそれぞれ遊嵌されている。
【0033】
なお、図1に示すように該内ピン346の一端346a(図中上側)は、前記キャリア304によって片持ち支持されている。
【0034】
又、内ピン346と内ピン孔102aとの各摺動部150,250には、摺動促進部材として第1内ローラ152又は第2内ローラ252が配置されている。なお、この例では、第1内ローラ152は、2箇所の第1摺動部150に、又、第2内ローラ252は、6箇所の第2摺動部250にそれぞれ配置されている。
【0035】
該第1内ローラ152は、内ピン346に対して偏心した外周面152aを持つ略円筒形状の部材からなり、該外周面152aの全面において内ピン孔102aと内接した状態で内ピン346に挿嵌されている。又、該第1内ローラ152は、後述する第2内ローラ252に比べ弾性係数の低い材料で製作されており、この例では、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックが材料として用いられている。
【0036】
一方、前記第2内ローラ252は、自身の内周面252aと同軸の外周面252bを持つ略円筒形状の部材からなり、該外周面252bの一部において内ピン孔102aと内接した状態で内ピン346に挿嵌されている。又、該第2内ローラ252は、第1内ローラ152に比べ弾性係数の高い材料で製作されており、この例では、軸受鋼が材料として用いられている。
【0037】
この結果、このバルブ駆動装置300は、一見一系統の動力伝達経路しか有していないように見えるものの、実は、入力軸302→偏心体106→外歯歯車102→第1摺動部150→内ピン308→出力軸306という第1の動力伝達経路と、入力軸302→偏心体106→外歯歯車102→第2摺動部250→内ピン308→出力軸306という第2の動力伝達経路を並列に備えている(後述)。
【0038】
又、第1摺動部150における内ピン346と第1内ローラ152との隙間S11と、該第1内ローラ152と内ピン孔102aとの隙間S12は、第2摺動部250における内ピン346と第2内ローラ252との隙間S21と、該第2内ローラ252と内ピン孔102aとの隙間S22よりもそれぞれ小さく設計されている(S11<S21,S12<S22)。なお、必ずしも全ての隙間の大小関係はこうである必要がなく和(S11+S12<S21+S22)がそうなっていれば良い。
【0039】
即ち、入力軸302及び出力軸306に対する第1摺動部150のバックラッシ量は、第2摺動部250のバックラッシ量よりも小さくなっている。
【0040】
なお、バルブ駆動装置300の側面(図2中上側)には、出力軸306の回転を保持するための固定手段である固定ボルト310が、この例では2本設けられている。もちろん、固定ボルト310以外の固定手段を用いてもよい。
【0041】
次に、図1に戻って、本発明の実施形態の例に係るバルブ駆動装置300の作用について説明する。
【0042】
ハンドル310を回転すると、入力軸302が軸心L1を中心として回転し、該入力軸302に設けた偏心体106が偏心回転する。この偏心体106の回転により、その偏心した外周に装架された外歯歯車102も入力軸302の周りで揺動回転を行おうとするが、キャリア304によってその自転が拘束されているため、外歯歯車102は、内歯歯車104に内接しながら、揺動のみを行うことになる。
【0043】
この外歯歯車102の揺動により、該外歯歯車102の1回の揺動毎(入力軸302の1回転毎)に内歯歯車104が外歯歯車102との歯数差に相当する分だけ回転し、該内歯歯車104の回転が出力軸306へと伝達され、減速が実現される。
【0044】
なお、本発明の実施形態の例に係るバルブ駆動装置300の減速機340においては、キャリア304を固定状態に維持した上で、内歯歯車104及び出力軸306を回転することにより、入力軸302の回転方向と出力軸306の回転方向を一致させている。その結果、ハンドル310の回転方向と弁体の回転方向を同一とすることができ、感覚的に操作しやすく、操作性の向上が実現されている。
【0045】
最終的に、出力軸306へ伝達された動力により、該出力軸306と連結された弁棒350を介し、弁体が回転駆動される。
【0046】
本発明の実施形態の例におけるバルブ駆動装置300では、バルブ駆動装置300に入力される動力を、各摺動部、すなわち、第1、第2摺動部150,250の摺動態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部を介して弁棒350に伝達することが可能となり、組み合わせる動力伝達部の各々の特性によって、バルブ駆動装置300全体の特性を変えることができる。
【0047】
具体的には、前記バルブ駆動装置300では、摺動促進部材として、内ピン346に挿嵌され、且つ自身の外周面152aの全面において前記内ピン孔102aに内接可能な第1内ローラ152と、内ピン346に挿嵌され、自身の内周面252aと同軸の外周面252bを持ち、且つ該外周面252bの一部において前記内ピン孔102aに内接可能な第2内ローラ252とを備えると共に、第1摺動部150に第1内ローラ152を、又、第2摺動部250に第2内ローラ252をそれぞれ配置することによって、該第1、第2摺動部150、250の摺動態様に差異を設けている。
【0048】
即ち、第1摺動部150の第1内ローラ152は、自身の外周面152aの全面において内ピン孔102aと内接しているため、摺動抵抗が大きく、動力の伝達容量が小さくなるものの、内歯歯車104と外歯歯車102の噛合い位置が規制され、又、第1内ローラ152と内ピン孔102aの接触面積が大きく安定した摺動が可能であるため、駆動時の騒音や振動を大幅に低減することが可能である。一方、第2摺動部250の第2内ローラ252は、自身の外周面252bの一部においてのみ内ピン孔102aと内接しており、第2内ローラ252と内ピン孔102aの接触面積が小さいため、第1摺動部150に比べ、摺動抵抗が小さく(回転効率が高く)、伝達容量の増大が可能となる。
【0049】
又、第1内ローラ152は、第2内ローラ252に比べ弾性係数の低い材料で製作されており、第1内ローラ152と第2内ローラ252の材質を変えることによっても、第1、第2摺動部150、250の摺動態様に差異が設けられている。
【0050】
このように第1内ローラ152と第2内ローラ252の材質に差異を設けているため、弾性係数の低い第1内ローラ152が配置された第1摺動部150は、全体的に伝達トルクに対する変形量が大きい(剛性が低い)のに対して、弾性係数の高い第2内ローラ252が配置された第2摺動部250は、全体的に伝達トルクに対する変形量が小さい(剛性が高い)。
【0051】
更に、第1摺動部150における内ピン346と第1内ローラ152との隙間S11と、該第1内ローラ152と内ピン孔102aとの隙間S12を、第2摺動部250における内ピン346と第2内ローラ252との隙間S21と、該第2内ローラ252と内ピン孔102aとの隙間S22よりもそれぞれ小さく設計することによって、第1摺動部150と第2摺動部250のバックラッシ量に差異を設けている。
【0052】
このように第1、第2摺動部150,250のバックラッシ量に差異を設けているため、第1摺動部150は、入力軸302の動き(トルクの変動)に対しても、又、出力軸306の動き(トルクの変動)に対する反応が早いという特性を有するのに対して、第2摺動部250は、当該バックラッシ量が大きく、入力軸302及び出力軸306の双方の動き(トルクの変動)に対して反応が遅いという特性を有する。
【0053】
つまり、バルブ駆動装置300は、摺動抵抗が大きいが騒音や振動が少なく、剛性が低く、バックラッシ量の小さい第1摺動部150と、摺動抵抗が小さく、剛性が高く(伝達容量が大きく)、バックラッシ量の大きい第2摺動部250という動力伝達特性を相異ならせた2つの動力伝達部を動力伝達経路上に並列に備えていることになる。即ち、バルブ駆動装置300に入力される動力は、起動当初は、入力軸302→偏心体106→外歯歯車102→第1摺動部150→内ピン308→出力軸306という第1の動力伝達経路を介して弁棒350及び弁体に動力が伝達され、その後は、入力軸302→偏心体106→外歯歯車102→第2摺動部250→内ピン308→出力軸306という第2の動力伝達経路を介して弁棒350及び弁体に伝達される。
【0054】
より具体的に説明すると、まずバルブ駆動装置300の起動直後には、入力軸302に対するバックラッシ量の小さい第1摺動部150が早く反応するため、主として第1の動力伝達経路によって動力の伝達が行われる。そして、作用するトルクが未だ小さい起動直後においては、この第1摺動部150を経由する第1の動力伝達経路が動力伝達を行う。これにより、低騒音、低振動での動力伝達が可能である。
【0055】
一方、該第1摺動部150は第2摺動部250に比べ剛性が低いため、起動後、作用するトルクが立ち上がって来た時や、加速時、中・重負荷時においては、その反力を支えきれなくなる。即ち、このような状態では、より剛性の高い第2摺動部250を経由する第2の動力伝達経路の方が主として動力の伝達を行うことになる。この結果、伝達容量の増大が可能である。しかも、第2摺動部250は、第1摺動部100に比べ回転効率が高い(摺動抵抗が小さい)ため、バルブ駆動装置300全体の回転効率の向上を図ることができ、熱負荷も軽減できる。
【0056】
又、弁体から出力軸306に対して逆方向の回転負荷が加えられた場合には、出力軸306に対するバックラッシ量の小さい第1摺動部150が早く反応して主として逆方向への負荷を受けることになるが、該第1摺動部150の摺動抵抗が大きいため、バルブ駆動装置300は装置全体として高いセルフロック機能性を有する。なお、出力軸306側から掛かるトルクは通常の運転時のトルクに較べれば小さいため、剛性の低い第1摺動部150のみで十分反力を提供できる。
【0057】
従って、弁体が配管路等を流れる流体によって強い負荷を受けた場合であっても、高いセルフロック機能によって弁体が反駆動方向に回転するのを防止することが可能となる上に、弁体の開閉操作時には、高い回転円滑性によって弁体を高効率で動かすことができ、操作性の向上が可能となる。しかも、逆転防止機構としてブレーキ等の特別な機構を必要としないため、バルブ駆動装置300の小型化や低コストが可能となる。
【0058】
上記実施形態の例においては、8箇所の摺動部の内2箇所を第1摺動部150、残りの6箇所を第2摺動部250で構成し、第1摺動部150の特性であるセルフロック機能性に対して、第2摺動部250の特性である伝達容量の増大、回転効率の向上等をやや重視した設計としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
即ち、図3の(A)〜(D)に示すように、各摺動部(この例では8箇所)に配置する第1、第2内ローラ152、252の割合を変えることによって、使用用途に応じた様々な態様の設計が可能となる。なお、これら第1、第2内ローラ152、252の内径は同一寸法に設計されており、複数の内ピン308に対して第1、第2内ローラ152、252を選択的に挿脱可能であるため、使用用途に応じた設計変更が容易となっている。又、出力軸306の回転を保持する固定ボルト310が設けられているため、該固定ボルト310によって弁体の回転を維持しつつ、バルブ駆動装置300の特性を変更することができる。
【0060】
図3の(A)は、複数の内ピン346全てに第2内ローラ252のみを挿嵌することによって、動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部の一方、即ち、第2摺動部250のみを介して動力伝達を可能としたものである。又、図3中の(B)は、第1内ローラ152に対して第2内ローラ252をより多く配置したものである。
【0061】
更に、図3の(C)は、第1内ローラ152及び第2内ローラ252を同数(この例では4個)配置したものであり、図3の(D)は、複数の内ピン346全てに第1内ローラ152のみを挿嵌したものである。
【0062】
図3の(A)、(B)のように、第2内ローラ252を多く配置し、第2摺動部250の有する特性を重視した設計とすれば、図3の(C)、(D)よりも伝達容量の増大、回転効率の向上が可能である。従って、手動式のバルブ駆動装置の場合には、バルブ駆動の操作力が軽減され、操作性の向上が可能であると共に、電動式のバルブ駆動装置の場合には、該駆動装置を駆動するモータ等の小型化や消費電力の削減等が可能となる。
【0063】
又、図3の(C)のように、第1、第2摺動部150、250双方の有する特性をそれぞれ重視した設計とすれば、図3の(A)、(B)よりも高いセルフロック機能を有しながら、同時に、図3の(D)よりも装置全体の伝達容量の増大、回転効率の向上を図ることが可能となる。
【0064】
更に、図3の(D)のように、動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部の一方、即ち、第1摺動部150のみを介して動力伝達を可能とし、第1摺動部150の有する特性を特に重視した設計とすれば、図3の(A)〜(C)に比べ、バルブ駆動装置300に、より高いセルフロック機能を持たせることが可能となる。
【0065】
このように第1、第2内ローラ152、252を選択的に挿脱可能としているため、配管路等を流れる流体の圧力や流速がバルブ駆動装置300の設置後に変更された場合や、弁体を操作する作業者や操作時の作業環境が変わった場合でも、セルフロック機能性や回転円滑性を状況に応じて変更可能で、その変更も容易である。
【0066】
なお、本発明では、具体的にどのようにして内ピン346と内ピン孔102aの各摺動部の摺動態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。従って、例えば、各摺動部の摺動態様の差異を、該各摺動部に摺動促進部材を配置するか否かの区別によって具現してもよい。
【0067】
又、上記実施形態においては、内ピン346に挿嵌され、且つ自身の外周面152aの全面において内ピン孔102aに内接可能な第1内ローラ152と、前記内ピン346に挿嵌され、自身の内周面252aと同軸の外周面252bを持ち、且つ該外周面252bの一部において前記内ピン孔102aに内接可能な第2内ローラ252によって各摺動部150,250の差異を具現したが、本発明はこれに限定されるものではない。従って、各摺動部に摺動促進部材を配置する場合には、該摺動促進部材の種類を変えることによって各摺動部の摺動態様の差異を具現したものであればよく、例えば、摺動部の摺動態様の差異を、該摺動部において現に摺動している素材同士の摩擦係数を変えることによって具現してもよい。
【0068】
上記実施形態においては、第1内ローラ152の材料としてポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックを適用する一方で、第2内ローラ252の材料として軸受鋼を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1内ローラ152にアルミ等の材料を適用してもよい。
【0069】
又、上記実施形態においては、バルブ駆動機構を手動式のハンドル310としたが、本発明はこれに限定されず、電動式の駆動機構を適用しても良く、又、ハンドル310の形状等は図示したものには限定されない。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、高いセルフロック機能を有しながら、同時に、装置全体の回転効率の向上を図る等、目的によって様々な態様の設計が可能な、小型且つ低コストのバルブ駆動装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の例に係るバルブ駆動装置の側断面図
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図
【図3】本発明の実施形態の他の例に係るバルブ駆動装置における内接噛合遊星歯車機構の断面図
【符号の説明】
100・・・内接噛合遊星歯車機構
102…外歯歯車
102a・・・内ピン孔
104…内歯歯車
106…偏心体
110…ころ軸受
150、250・・・第1、第2摺動部
152、252・・・第1、第2内ローラ
300…バルブ駆動装置
302…入力軸
304…キャリア
306…出力軸
310…ハンドル
312、314…ケーシング
318…開度指針
340…減速機
346…内ピン
350…弁棒

Claims (6)

  1. 入力軸の回転を出力軸に減速して伝達する減速機を備え、該減速機の前記出力軸を弁棒と連結可能とすることにより、該弁棒を介して弁体を駆動可能としたバルブ駆動装置において、
    前記減速機の減速機構を、前記入力軸と前記出力軸との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車及び内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車機構で構成すると共に、
    前記外歯歯車に形成された複数の内ピン孔と、該内ピン孔に遊嵌され前記外歯歯車の自転成分を吸収可能な複数の内ピンとの各摺動部の摺動態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達部を、動力伝達経路上並列に備えた
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
  2. 請求項1において、
    前記各摺動部の摺動態様の差異を、該各摺動部に摺動促進部材を配置するか否かの区別によって具現する
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
  3. 請求項1において、
    前記各摺動部の摺動態様の差異を、該各摺動部に摺動促進部材を配置すると共に、該摺動促進部材の種類を変えることによって具現する
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
  4. 請求項3において、
    前記摺動促進部材として、前記内ピンに挿嵌され、且つ自身の外周面の全面において前記内ピン孔に内接可能な第1内ローラと、前記内ピンに挿嵌され、自身の内周面と同軸の外周面を持ち、且つ該外周面の一部において前記内ピン孔に内接可能な第2内ローラと、を備えると共に、
    前記各摺動部に前記第1内ローラ又は前記第2内ローラを配置することによって、前記各摺動部の摺動態様の差異を具現すること
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
  5. 請求項4において、
    前記第1内ローラと前記第2内ローラの材質を変えることによって、前記摺動部の摺動態様の差異を具現すること
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
  6. 請求項4又は5において、
    複数の前記内ピンに対して、前記第1内ローラ又は前記第2内ローラを選択的に挿脱可能とした
    ことを特徴とするバルブ駆動装置。
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