JP4094385B2 - 樹脂組成物、シート及びその成形品 - Google Patents

樹脂組成物、シート及びその成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂組成物およびそれを用いた成形品、シートに関し、該シートは電子部品の包装容器に用いることができる。特に、IC等の電子部品との接触時に摩耗によるカーボンブラック等の脱離を原因とする電子部品の汚染を減少させた電子部品、半導体包装に適するキャリアテープ用導電性シートに好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
ICをはじめとした電子部品やICを用いた電子部品の包装形態としてインジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン、キャリアテープ(エンボスキャリアテープともいう)などが使用されている。これらの包装容器には静電気によるIC等の電子部品の破壊を防止するために表面に導電フィラーを分散させたものが使用されており、該導電フィラーとして安価で均一に安定した表面固有抵抗値を得ることができるカーボンブラックが広く使用されている。
熱可塑性樹脂にカーボンブラックを分散させたシートは(1)機械的強度や成形性が低下し、(2)包装した電子部品とシートの摩耗によりシート表面のカーボンブラックを含有する樹脂が脱離し電子部品を汚染するといった問題点がある。その改良方法として(1)については特開昭57−205145、特開昭62−18261等が、更に(2)を改善する方法には特開平9−7624、特開平9−76425等がある。
しかしながら、電子部品は更に複雑化、精密化、小型化が進み、また電子部品の包装及び実装の高速化も進んでおり、より汚染が生じにくく、機械的強度を向上させた包装材料が望まれている。
そのためにポリカーボネートを用いたシートが提案されている。そのようなものにはWO01/40079A1、WO01/30569A1、特開平8−295001、特開平8−132567、特開平7−21834、特開平5−147147、EP0435044A2、特開昭60−124247、USP4,599,262がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は新規な樹脂組成物およびそれを用いた成形品とシートを提供するものであり、当該シートは電子部品とシートとの摩耗から生じる電子部品の汚染を低減し、良好な成形性を有し且つ包装及び実装の高速化に対応可能な機械的強度を有する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明はポリカーボネート系樹脂、それに対して5〜50重量%のカーボンブラック、45重量%以下の芳香族ポリエステル樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、これを含有してなる成形品およびシートである。基材層と、その少なくとも片面に該樹脂組成物を含有してなる表面層を有するシートは電子部品包装容器、キャリアテープとして好適に用いることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0006】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂、それに対して5〜50重量%のカーボンブラック、45重量%以下の芳香族ポリエステル樹脂を含有してなるものである。また樹脂組成物はポリカーボネート系樹脂、それに対して5〜50重量%のカーボンブラック、45重量%以下の芳香族ポリエステル樹脂及び45重量%以下のABS系樹脂を含有してなるものである。
【0007】
(ポリカーボネート系樹脂)
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート等があげられ、通常エンジニアプラスチックに分類されるもので、一般的なビスフェノールAとホスゲンとの重縮合またはビスフェノールAと炭酸エステルの重縮合により得られるものも用いることができる。市販のものを用いることができる。
【0008】
(芳香族ポリエステル樹脂)
芳香族ポリエステル樹脂とは、テレフタル酸またはそのジアルキルエステルと脂肪族グリコールとの縮重合体またはこれを主体とする共重合体であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好適に用いられる。テレフタル酸またはそのジアルキルエステルと共に少量の他の二塩基酸、多塩基酸またはそのアルキルエステル、例えばテレフタル酸またはそのジアルキルエステルに対して20重量%以下のフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、それらのアルキルエステルを混合しても良い。また、芳香族グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどが用いられる。これら脂肪族グリコール類と共に少量のジオール類または多価アルコール類を添加する事ができる。例えば、脂肪族グリコールに対して20重量%以下のシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、グリセリン、ペンタエリトリトールなどを混合して使用する事ができる。市販のものを用いることができる。
【0009】
(ABS系樹脂)
ABS系樹脂はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンの三成分を主体とした共重合体を主成分とするものをいい、市販のものを用いることができる。例えばジエン系ゴムに芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体の一種類以上の単量体をブロックあるいはグラフト重合して得られた共重合体およびその共重合体とのブレンド物があげられる。ここで述べるジエン系ゴムとはポリブタジエン、ポリイソプレンやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等であり、芳香族ビニル単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等があげられる。シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよび各種ハロゲン置換アクリロニトリル等があげられる。上述の共重合体およびその共重合体とのブレンド物の具体例としてはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体やアクリロニトリル−スチレン二元共重合体にポリブタジエンをポリマーアロイ化したものがあげられる。
【0010】
(ABS系樹脂中のAN量、Bd量)
ABS系樹脂中のアクリロニトリルとスチレンの比率はその合計量に100に対しアクリロニトリル15重量%以上が好ましい。更にジエン系ゴムの含有量はアクリロニトリルとスチレンの合計量100重量部に対し30重量部%以下が好ましい。アクリロニトリルの比率が15重量%以下であったり、ジエン系ゴムの含有量が30重量部%を越えるとポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下してしまい本発明の樹脂組成物から得られるシートの表面状態が悪化するとともに衝撃強度が低下する。
【0011】
(ABS系樹脂の添加量)
ABS系樹脂の添加量はポリカーボネート系樹脂に対して45重量%以下である。ABS系樹脂は少量であっても軟化温度を低下せるが、好ましく1〜45重量%、更に好ましくは3〜45重量%を添加するとよい。45重量%を越えると衝撃強度が低下する。
【0012】
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等であり、好ましくは比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるもの、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが望ましい。樹脂組成物のカーボンブラックの添加量はポリカーボネート系樹脂に対して5〜50重量%が好ましい。5重量%未満では静電気による電子部品の破壊を防止するために十分な表面固有抵抗値が得られない。50重量%を超えると流動性が低下しシートの基材層に表面層とし積層することが困難になるとともに得られるシートの機械的強度も低下してしまう。
【0013】
(樹脂組成物中の第三成分)
樹脂組成物には他の樹脂成分、例えば、熱可塑性樹脂等や、滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤を添加することが可能である。
【0014】
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物は原料全部又は一部を押出機、バンバリーミキサー等の公知の方法を用いて混練、ペレット化することにより得ることができる。混練等に際しては、原料を一括して混練することも可能であるし、また例えばポリカーボネート系樹脂の半分とカーボンブラックを混練し、その混練物に残りの原料を加えて混練するといった様に段階的に混練することも可能である。
【0015】
(シートの構成)
樹脂組成物は成形品として用いることができ、特に電子部品と接する側に表面層として設けたシートは電子部品包装用の導電性シートとして、また電子部品包装体やキャリアテープに好適に用いることができる。このシートは表面層のみの単層のシートのみならず複層化することも可能である。表面層/基材層、あるいは表面層/基材層/表面層は好ましい複層シートの構成である。表面層と基材層の間には更に別の層を設けることもできる。
【0016】
(導電性)
表面層の表面固有抵抗値は10〜1010Ωであることが好ましく、この範囲から外れると静電気による電子部品の破壊を抑制することが困難となる。
【0017】
(基材層)
基材層には熱可塑性樹脂を使用することができる。特にABS系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂を含有してなる基材層が好ましい。ここで含有してなるとはABS系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂のみからなる場合のみならず、本発明の目的を害さない範囲でそれらを主成分とし他の成分をも含有する場合を含む。
【0018】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂とはスチレンを主成分として重合してなる樹脂であり、例えば一般用のポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂およびこれらの混合物等がある。スチレンとブタジエンの共重合体、ブロック共重合体も用いることができる。
【0019】
(組成)
基材層にはABS系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂を使用するのが好ましい。また、更に基材層に対して1〜50重量%の範囲でポリカーボネート系樹脂を添加することも可能である。ポリカーボネート系樹脂を添加することにより更に機械的強度の向上が可能となるが安価なシートを得る為には50重量%以下の範囲に留めるのが好ましい。
【0020】
(CBの添加)
基材層にはカーボンブラックを流動性を損なわない程度に少量添加することが可能であり、カーボンブラックの添加により更に機械的強度の向上が図られるとともにシートを包装容器に成形した際にシート厚みが薄くなり成形品のコーナー部等が透けてしまうといった問題点を解決することが可能となる。
基材層中に含有するカーボンブラックには特に限定はなく、基材樹脂中に均一に分散できるものが好ましい。
基材層中のカーボンブラックの添加量としては上述の如く流動性を損なわない範囲であれば良く好ましくは基材層に対して0.1〜10重量%である。
【0021】
(第三成分)
基材層にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂やエチレン、プロピレンの共重合体(例えばエチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂等)などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の他の樹脂成分を添加することも可能であり、必要に応じて滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤を添加することが可能である。
【0022】
(シートの製造)
シートは押出機、カレンダー成形等を用いた公知の方法によってうることができる。シートの基材層に樹脂組成物の表面層を積層する方法としては、それぞれを別々の押出機によりシートもしくはフィルム状に成形した後、熱ラミネート法、ドライラミネート法、押出ラミネート法等により段階的に積層することも可能であるし、予め成形したシートの基材層の上に押出コーティング等の法により表面層を積層することも可能であるが、より安価に製造するにはマルチマニホールドダイやフィードブロックを用いた多層共押出法により一括して積層シートを得ることが好ましい。
【0023】
(シートの肉厚)
シートの全体の肉厚は0.1〜3.0mmである。複層のシートにおいては表面層は全体の肉厚にしめる層の肉厚が2〜80%であることが好ましい。全体の肉厚が0.1mm未満ではシートを成形して得られる包装容器としての強度が不足し、3.0mmを超えると圧空成形、真空成形、熱版成形等の成形が困難となる。また複層シートにおいて表面層の肉厚が2%未満ではシートを成形して得られる包装容器の表面固有抵抗値が著しく高くなり十分な静電気抑制効果が得られず、80%を超えると圧空成形、真空成形、熱版成形等の成形性が低下してしまう。
【0024】
(用途)
本発明のシートはICをはじめとした電子部品やICを用いた電子部品の包装材料としてインジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン、キャリアテープなどに使用することができ、特にキャリアテープに好適に使用される。キャリアテープに電子部品を収納しカバーテープで蓋をした電子部品包装体として電子部品を保管、輸送することができ、その間の振動によっても、シートと電子部品が磨耗して電子部品が汚染されるのが防止される。
【0025】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
ポリカーボネート系樹脂(パンライト L−1225、帝人化成社)、それに対してカーボンブラック(ケッチェンブラックEC、ライオンAKZO社)12重量%及び芳香族ポリエステル樹脂(PET 9921、イーストマン・コダック社)20重量%をφ50mmベント式2軸押出機によって予め混練、ペレット化し樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物と基材層用樹脂としてABS系樹脂(テクノABS YT−346、テクノポリマー社)を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mm幅のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、樹脂組成物層の肉厚が両側30μmとなるような3層シートを得た。
【0026】
実施例2
樹脂組成物はポリカーボネート系樹脂(パンライト L−1225、帝人化成社)、カーボンブラックとしてアセチレンブラック(デンカブラック粒状、電気化学工業社)20重量%、芳香族ポリエステル樹脂(PETG 6763 、イーストマン・コダック社)20重量%及びABS系樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業社)10重量%をφ50mmベント式2軸押出機によって予め混練、ペレット化し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物と基材層用樹脂としてABS系樹脂(テクノABS YT−346、テクノポリマー社)にポリカーボネート系樹脂(パンライト L−1225、帝人化成社)を5重量%添加した混合物を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)と2台のφ40mm押出機(L/D=26)及び650mm幅の3種3層用マルチマニホールドダイを用い全体の肉厚が300μm、樹脂組成物の表面層の肉厚が両側30μmとなるような3層シートを得た。
【0027】
比較例1
樹脂組成物はポリカーボネート系樹脂(パンライト L−1225、帝人化成社)と、それに対してカーボンブラック(ケッチェンブラックEC、ライオンAKZO社)12重量%をφ50mmベント式2軸押出機によって予め混練、ペレット化し樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして全体の肉厚が300μmのシートを得た。
以上の作製したシートに対して次に示す評価を行った。結果を表に示す。
【0028】
(評価方法)
表面固有抵抗値
三菱油化社製ロレスターMCPテスターを用いて、端子間を10mmとし、シートを巾方向に等間隔に10箇所、表裏各2列計40箇所の表面抵抗値を測定し、対数平均値を表面固有抵抗値とした。
引張特性
JIS−K−7127に準拠して、4号試験片を使用しインストロン型引張試験機により10mm/minの引張速度で引張試験を行った。
耐折強度
JIS−P−8116に準拠して測定を行った。
カーボン脱離性評価
製膜したシートを振動台に固定し、その上に19mm×25mmの枠を設置しその中にQFP14mm×20mm−64pinのICを納入し、ストローク30mmで毎分480往復の速度で80万回平面方向に振動させた後、ICのリード部への付着物の有無を判定した。付着物がほとんどない状態を◎、少ない場合を○、付着物の多い場合を×とした。
成形性
得られたシートを24mm幅にスリット加工を施した後EGD社製加熱圧空成形機にてAo=12、Bo=16、Ko=5.5のエンボスキャリアテープ用金型を使用し金型温度60℃、ヒーター温度260℃及び280℃にて成形試験を実施し、良好な成形品が得られた物を◎、良好な成形品が得られなかった物を×とした。
【0029】
【表1】
Figure 0004094385
【0030】
【発明の効果】
ポリカーボネート系樹脂にカーボンブラックを含有する樹脂組成物において芳香族ポリエステル樹脂を添加することにより電子部品とシートとの摩耗から生じる電子部品の汚染を低減し、良好な成形性を有し且つ包装及び実装の高速化に対応可能な機械的強度を有する樹脂組成物を得ることが可能となる。

Claims (7)

  1. 基材層がABS系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂含有し、更にポリカーボネート系樹脂を基材層に対して1〜50重量%を含有する樹脂組成物からなり、その少なくとも片面にポリカーボネート系樹脂、それに対して5〜50重量%のカーボンブラック、45重量%以下の芳香族ポリエステル樹脂及び45重量%以下のABS系樹脂を含有する樹脂組成物を用いた表面層を有するシート。
  2. 基材層に更にカーボンブラックを基材層に対して0.1〜10重量%を含有してなる請求項1に記載のシート。
  3. 表面層の表面固有抵抗値が10〜1010Ωである請求項1又は請求項2に記載のシート。
  4. マルチマニホールドダイもしくはフィードブロックを用いた共押出法により製造してなる請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のシート。
  5. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のシートを用いた電子部品包装容器。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のシートを用いたキャリアテープ。
  7. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のシートを用いた電子部品包装体。
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