JP4063987B2 - 製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は製紙用織物に関し、特には抄紙用織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙方法は周知の技術であって、まずパルプ繊維等を含む製紙原料が、ヘッドボックスからエンドレスに形成されて抄紙機のロール間に掛け入れられ走行している抄紙用織物上に供給される。抄紙用織物の原料が供給される側が製紙面、その反対側が走行面である。
供給された原料は抄紙用織物の走行にともなって移動し、移動中に織物の走行面側に設置されたサクションボックスやフォイル等の脱水装置によって、水分が除去され、湿紙が形成される。すなわち抄紙用織物がフィルターとして機能し、パルプ繊維と水を分離するのである。
この抄紙ゾーンで形成された湿紙は、次にプレスゾーンとドライヤーゾーンに移送される。
プレスゾーンでは、湿紙は抄紙用フェルトによって移送され製紙用フェルトとともにプレスロール間でニップ圧によって搾水され、さらに水分が除去される。ドライヤーゾーンでは、湿紙は抄紙用キャンバスによって移送され、乾燥されて紙が製造される。
【0003】
製紙用織物は、合成樹脂モノフイラメント等の経糸、緯糸を用いて織機で製織される。無端状に形成するには周知の織継やピンシーム等によって無端状に形成されるか、袋織り織機により製織の段階で無端状に形成される。
袋織りの場合は織機上と使用時では経糸と緯糸の関係が逆になる。
本明細書にて、経糸とは製紙機械の機械方向すなわち織物の進行方向に伸びている糸であり、緯糸とは製紙機械の機械横断方向すなわち織物の巾方向に伸びている糸である。
【0004】
製紙用織物、特に抄紙用織物に対しては従来より多くの要求がある。
表面平滑性の向上、紙のワイヤーマーク発生防止、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、耐摩耗性、寸法安定性、走行安定性等である。
近年、抄紙スピードの高速化、中性抄造の増加、填料の使用量の増加、製紙会社のコストダウン政策にともない、上記要求に対しての早期解決が強く望まれている。
【0005】
抄紙スピードが高速になると、必然的に脱水スピードが高速になり、脱水力も強力になる。製紙原料は抄紙用織物を介して脱水されるのであるから、水分は抄紙用織物の糸間に形成されている網目を通って除去されるのである。これがろ水空間である。
ところが、製紙原料から除去されるのは水分だけではなく、細かい繊維や填料等も一緒に抜け出てしまい、リテンション(製紙の歩留まり)が低下してしまうのである。また、織物上に残って形成された湿紙も脱水力によって、織物製紙面に押しつけられるため、糸が存在している部分では、糸が湿紙にくい込み、逆に糸が存在しない網目間では湿紙が網目間にくい込んで、湿紙表面上に糸と網目のマークを発生させてしまうのである。
【0006】
また、網目間には繊維がより滞留するために繊維密度が過密になり、繊維密度の粗密も発生する。これがワイヤーマーク、ろ水マークと呼ばれるものである。また、繊維の滞留が発生するとろ水性が低下し過剰な脱水が必要となって悪循環となり、紙の地合、印刷適正等の紙の品質に影響を及ぼす。
また、湿紙のくい込みが大きくなったり、繊維のささり込みが発生すると湿紙をフェルトへ移送する場合の湿紙剥離性が悪くなってしまうという問題も発生してしまう。ワイヤーマークを完全に無くすことは不可能であるが、これを極力小さく目立たなくするために、織物の製紙面を細かくして繊維支持性と平滑性の向上を図らなくてはならない。
脱水スピードが高速になり脱水力が強力になると当然繊維の抜けやワイヤーマークの発生は顕著になるため、さらなる向上が必要となる。
また、繊維は織物走行方向に配向するため、特に緯糸の繊維支持性を向上させることが非常に重要になるのである。
【0007】
また、高速の条件下で良好に脱水するためには優れたろ水性が要求される。優れたろ水性を有すれば、脱水の真空圧を抑えることができ、前述した網目間への繊維のもぐり込みや抜けが少なくなり、ワイヤーマークの発生をなくし、リテンションを向上させることが可能となるのである。
また、抄紙スピードが高速になると、ロール回転部等で織物に含まれている水が飛び散って水しぶきが発生し、その水滴が湿紙に落ちてマークを発生させてしまう問題も起きてくるため、織物の保水性を小さくすることも要求されてくる。
【0008】
一方、中性抄造の増加は耐摩耗性の向上に対する要求をさらに強いものとすることになった。中性抄造は填料として炭酸カルシウムを使用することが多く、走行面の糸を激しく摩耗させるのである。また、抄紙スピードの高速化や繊維の滞留によるろ水性低下にともなう過剰脱水が条件をさらに過酷にする。
耐摩耗性を向上させるためには、織物組織を緯糸摩耗型の組織にしたり、糸の材質を変更したりという対策がとられている。
【0009】
一般的に使用中の織物の耐摩耗性の向上と姿勢安定性の維持の点からは、織物の緯糸に耐摩耗作用を受け持たせることが好ましい。経糸が摩耗すると当然のことではあるが、引張強度が低下して織物の寸法が伸び、さらに摩耗して経糸が摩耗切断すると織物自体が切断してしまって使用寿命が尽きてしまうからである。また、耐摩耗性の優れているポリアミドモノフイラメントを緯糸に使用することも試みらているが、この試みは織物の構造自体を改善するものではなく、単に使用する材料の性質を利用するだけであって、画期的効果は得られず、反面ポリアミドモノフイラメントを用いた織物は姿勢安定性が悪いという欠点があった。また、走行面の緯糸に太い糸を使用する事も試みられたが、経糸と緯糸のバランスが崩れ、クリンプ性が悪化してワイヤーマーク発生の原因となる等の欠点があり実用上問題があった。
【0010】
紙のワイヤーマークの発生を防止するためには経糸および緯糸の本数密度を増やし、繊維の支持性を向上させることが考えられるが、そのためには経糸、緯糸の線径を細くする必要がある。
しかし、現在一般的に使用されている周知の経糸1重緯糸2重織物では線径を細くすると耐摩耗性、剛性、姿勢安定性が低下してしまう。
このように、製紙用織物は、耐摩耗性や剛性を向上させようと線径を太くすると表面性が損なわれ、紙にワイヤーマークが発生してしまうし、逆に表面性を向上させようと線径を細くして本数密度を増やすと耐摩耗性や剛性が低下してしまうというように、いわば相反する問題を抱えていた。
【0011】
上述の問題を解決するために製紙面側と走行面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一体化させた織物での試みもなされている。すなわち、製紙面側織物には線径の小さい経糸、緯糸を使用して緻密な製紙面を形成し、走行面側織物には線径の大きい経糸、緯糸を使用して耐摩耗性の大きい走行面を形成するのである。
しかしながら、これも必ずしも満足いくものではなかった。なぜならば接結糸と製紙面側の糸とが交差する接結部において、接結糸が製紙面側織物を走行面側に引き込むために製紙面側織物表面に凹みが発生し、実際に紙を抄いた時にこの凹みのマークを紙に転写するようにワイヤーマークとして発生させてしまうのである。
【0012】
また、この凹みを極力少なくするために、接結糸の線径を小さくしたり接結糸の本数を少なくすると、接結力が弱くなってしまうため、接結糸が製紙面側織物と走行面側織物の間で揉まれて内部摩耗が起こり、さらに接結力が弱くなって製紙面側織物と走行面側織物の間に隙間が発生したり分離してしまうという問題が発生し、すぐに使用寿命が尽きてしまった。
ところで、効果的に繊維の支持性を向上させ、紙にワイヤーマークを発生させずに、良質な紙を抄造するためには、好適には緯糸で繊維を支持することが重要である。
なぜならば、一般的にヘッドボックスから抄紙用織物上に供給されるパルプ繊維は機械方向、すなわち経糸方向に配向するからである。経糸間の凹みを緯糸で分断して繊維を支持してやることにより、繊維が経糸間に滞留するのを防止するのである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みて、製紙面側と走行面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一体化させた織物であっても接結糸と製紙面側の糸との交差部において、製紙面側織物表面に凹みが発生せず、表面平滑性が良好で緯糸の繊維支持性を向上させた製紙用織物を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1.製紙面側経糸と製紙面側緯糸とからなる製紙面側織物と、走行面側経糸と走行面側緯糸とからなる走行面側織物と、製紙面側緯糸間に配置した補助緯糸とからなる製紙用2層織物において、製紙面側織物が、製紙面側緯糸が連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後1本の製紙面側経糸の下側を通る組織を繰り返す崩し綾織り組織であり、補助緯糸が、製紙面側緯糸間で、かつ隣接する2本の製紙面側経糸が隣接する2本の製紙面側緯糸間で1本の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の上側から次の製紙面側緯糸の下側に向かい、他の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の下側から次の製紙面側緯糸の上側に向かい互いに交差して拡げられる製紙面側緯糸間に2本で組を形成して配置され、組を形成する個々の補助緯糸は交互に製紙面に現れて連続する2本以上の製紙面側経糸の上側を通過し、製紙面側に現れていない部分では走行面側に下がって走行面側経糸と織り合わされて製紙面側織物と走行面側織物を連結することを特徴とする製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。
2.個々の補助緯糸が連続する4本の製紙面側経糸の上側を通過し、2本1組で全ての製紙面側経糸の上側を通過する組織を形成する1項記載の製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。
3.走行面側経糸が,2本平行に同組織で配置された畝織り組織で、かつ平織組織である1または2項記載の製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。」に関するものである。
【0015】
本発明の製紙用織物の製紙面側織物は、製紙面側緯糸が連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後1本の製紙面側経糸の下側を通る組織の繰り返しである崩し綾織り組織である。
製紙面側緯糸が、連続する製紙面側経糸3本分のロングクリンプを形成するため、緯糸の繊維支持性が非常に良好であり、崩し綾織りであるために斜紋が連続せず、ワイヤーマークが目立たない。
製紙面側織物を上記組織とすると、隣接する2本の製紙面側経糸が隣接する2本の製紙面側緯糸間で1本の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の上側から次の製紙面側緯糸の下側に向かい、他の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の下側から次の製紙面側緯糸の上側に向かって互いに交差する部分が1つの緯糸間隔ごとに形成され、その部分が交差する製紙面側経糸によって拡げられて製紙面側緯糸間が広くなってしまうのであるが、本発明ではその位置に補助緯糸を2本1組で配置し、広くなった製紙面側緯糸間を補い均一な製紙面を形成するのである。
【0016】
また、上記交差部分は製紙面側緯糸が製紙面側経糸によって製紙面側から織り込まれる部分が斜めに連続して大きな凹みが発生する部分ともなるが、本発明では補助緯糸を凹みを補うように製紙面側経糸の上に配置し、平滑性を向上させるとともに、緯糸の繊維支持性を向上させたのである。
本来、製紙面側緯糸と同一平面を形成すべき製紙面側経糸のかわりに補助緯糸で製紙面の同一平面を形成しているのである。
また、補助緯糸にも連続する製紙面側経糸2本以上のクリンプを形成させたため、緯糸の繊維支持性を効率よく発揮させることが可能となったのである。実質上緯糸方向の糸のみで製紙面を形成するのである。
さらに、本発明では組を形成する個々の補助緯糸が交互に製紙面に現れ、製紙面側に現れていない部分では走行面側に下がって走行面側経糸と織り合わされて製紙面側織物と走行面側織物を連結するように形成した。
【0017】
すなわち、本発明の補助緯糸は補助緯糸本来の機能と接結糸の機能を合わせもっているのである。このように補助緯糸の組を形成することによって、実質上製紙面側に連続する補助緯糸を配置させることが可能となる。
すなわち2本1組の補助緯糸で製紙面側に補助緯糸1本分の組織を形成することにより、まるで1本の補助緯糸が配置されているようにすることができる。
個々の補助緯糸を連続する製紙面側経糸4本分のクリンプを形成させると、2本1組の補助緯糸で全ての製紙面側経糸の上側を通過する組織を形成させることができ、緯糸の繊維支持性を最も効率よく発揮させることができる。
【0018】
前述したように、従来の製紙用2層織物は、接結糸が製紙面側織物を走行面側に引き込むために製紙面側織物表面に凹みが発生し、実際に紙を抄いた時にこの凹みのマークを紙に転写するようにワイヤーマークとして発生させてしまう問題を解決できなかった。
従来の製紙用2層織物の接結糸は、製紙面側織物の本来糸が存在しない位置に点々と現れて製紙面を引き込んで、凹みを発生させるという悪影響を及ぼしていたのだが、本発明では補助緯糸と接結糸が同じ糸であって、補助緯糸が製紙面側に現れて補助緯糸の機能を果たしている位置が接結部となっており、本来糸が存在すべき位置が接結部となるため、従来の接結糸のような悪影響は及ぼさないのである。
【0019】
本発明では製紙面側織物と走行面側織物を連結する力が強いということも1つの特徴である。本発明では接結糸が2本1組で存在することになるため、従来の1本の場合と比較して接結力が強くなるのである。
また、従来は1本の製紙面側経糸と織り合わされていたのに対し、本発明では複数の製紙面側経糸と織り合わされて引き込んでいるためなおさら強くなるのである。
接結力が強くなると、前述したような接結糸が製紙面側織物と走行面側織物の間で揉まれて内部摩耗が発生することがなくなって織物間に隙間が発生したり、分離してしまうという問題が発生しない。
【0020】
組を形成する個々の補助緯糸を、互いに経糸数本分ずらして配置した同組織の補助緯糸とすると、個々の補助緯糸が製紙面側織物を引き込む力が等しくなるので製紙面の平滑性が良好となって好ましい。
また、補助緯糸を製紙面側で補助緯糸として機能している部分での繰り返し単位(補助緯糸を1本で形成した場合の繰り返し単位)ごとに引き込むように形成すると、製紙面側緯糸の繰返し単位ごとに引き込むことと同じことになり、製紙面を最小単位である繰返し単位ごとに同条件で引き込むことができるので、さらに製紙面全体を均一に平滑に形成できて好ましい。
【0021】
例えば、個々の補助緯糸の繰り返し単位を製紙面側緯糸の繰り返し単位(補助緯糸を1本で形成した場合の補助緯糸の繰り返し単位と同じ)の2倍とし、個々の補助緯糸が製紙面側に製紙面側緯糸の繰り返し単位1つ分の組織を形成し、2本の補助緯糸が協働して製紙面側に製紙面側緯糸の繰り返し単位2つ分の補助緯糸組織を形成するように構成するのである。
【0022】
走行面側織物については、特には限定されないが耐摩耗性が良好な緯糸摩耗型の組織が好適である。
ただし、ティッシュ製造用等の場合のように網厚が薄いことが要求される場合には平織り組織を採用するのが好ましい。経糸を複数本同組織でそろえて配置する畝織り組織としても良い。
従来ティッシュ製造用の抄紙用織物は、網厚が薄く高いろ水性を有するという利点を生かして一重織り構造の織物が使用されてきた。 しかし、近年の生産能力の高い抄紙機の益々増大する機械的負荷に対応できなくなりつつあり、剛性の高い抄紙用織物が望まれている。また、普通紙よりもより経糸方向に繊維が配向し、繊維長も長いために緯糸の繊維支持性が非常に重要となる。
そこで、従来の一重織り構造の織物を単に上層織物として利用した二層構造の織物や地糸接結タイプの二層構造の織物が試みられているが、接結力不足による内部摩耗や層間剥離の問題、地糸接結糸部分の表面性悪化の問題があって満足できる結果は得られていない。
【0023】
また、従来の二層織物は製紙面側緯糸本数を増加させて緯糸方向の繊維支持性を向上させるために製紙面側織物には綾織り組織を採用するしかなかく、斜紋がきつくなってワイヤーマークが目立つ問題や斜め方向の剛性が左右で異なり織物が菱形に変形する傾向にあるという問題があった。崩し綾織り組織では組織上緯糸を多く打ち込むことができず所望の緯糸本数が得られないのである。
本発明は、上述したとおり接結力及び表面性についても問題なく、補助緯糸を配置しているために製紙面側織物として斜紋が連続せずワイヤーマークが目立たない崩し綾織り組織を採用しても十分な緯糸方向の繊維支持性を確保でき、走行面側織物の構造を網厚の薄い構造とするとティッシュ製造用の抄紙用織物として特に好適である。
尚、製紙面側織物に対する糸本数の密度も特に限定されず、走行面側経糸や走行面側緯糸を製紙面側の1/2や2/3等の密度にしても良い。
【0024】
本発明に使用される糸としては、製紙用織物に望まれる特性によって自由に選択でき特に限定されない。例えばモノフイラメントの他、マルチフイラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、モール糸、あるいはこれらをより合わせる等して組み合わた糸等が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の矩形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できるまた、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリふっかビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、綿、ウール、金属等が使用できる。勿論、共重合体やこれらの材質に目的に応じて色々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。
【0025】
一般的には、製紙面側経糸、走行面側経糸、製紙面側緯糸には剛性があり、寸法安定性が優れているポリエステルモノフイラメントを用いるのが好ましい。また、補助緯糸は、線径が小さく耐シャワー性、耐フィブリル化性、前述した内部摩耗に対する耐摩耗性を要求されるためナイロンモノフイラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される走行面側緯糸にはポリエステルモノフイラメントとナイロンモノフイラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1,2は、本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。
完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。
意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1,2,3,で示し、緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1′,2′,3′,で示す。
また、×印は製紙面側経糸が製紙面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印は走行面側経糸が走行面側緯糸の下側に位置していることを示し、▲黒四角▼印は補助緯糸が製紙面側経糸の上側に位置していることを示し、□印は補助緯糸が走行面側経糸の下側に位置していることを示す。
【0027】
製紙面側と走行面側の経糸、緯糸は上下に重なって配置されている。本実施例では本数密度が同じであるため製紙面側の経糸、緯糸の真下に走行面側の経糸、緯糸が配置されている。
尚、意匠図では糸が上下に正確に重なって製紙面側の経糸、緯糸の真下に走行面側の経糸、緯糸が配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わないものである。
【0028】
実施例1
図1が本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
図1の意匠図において、1,2,3,4,5,6,7,8が経糸であり製紙面側経糸と走行面側経糸が上下に配置されている。
1′,4′,5′,8′,9′,12′,13′,16′が緯糸であって製紙面側緯糸が上側に配置され走行面側緯糸が半分の密度で製紙面側緯糸1′,5′,9′,13′の下側に配置されている。
2′,3′,6′,7′,10′,11′,14′,15′が補助緯糸であり、2′と3′、6′と7′、10′と11′、14′と15′がそれぞれ組を形成している。
意匠図より本実施例は、製紙面側織物、走行面側織物とあわせて16シャフトの織物であることが分かる。
【0029】
まず製紙面側織物をみてみると、製紙面側緯糸は1本の製紙面側経糸の下側を通り、次いで3本の製紙面側経糸の上側を通り、次いで1本の製紙面側経糸の下側を通り、次いで3本の製紙面側経糸の上側を通っており、連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後1本の製紙面側経糸の下側を通過する組織が2回繰り返されていることがわかり、製紙面側経糸も連続する3本の製紙面側緯糸の下側を通った後1本の製紙面側緯糸の上側を通過する組織が2回繰り返されていることがわかる。また、製紙面側経糸のシフトが製紙面側経糸1から製紙面側経糸2は製紙面側緯糸1本分下側へシフトし、製紙面側経糸3から製紙面側経糸4は製紙面側緯糸1本分上側へシフトしており、崩し綾織りであることがわかる。
意匠図では4シャフト崩し綾織りの製紙面側織物の完全組織が2つ縦横に並んで合計4つ配置されて形成されているのである。
【0030】
次に補助緯糸をみてみると、例えば6′、7′は製紙面側緯糸5′と8′の間で、かつ隣接する2本の製紙面側経糸1、2が前記隣接する2本の製紙面側緯糸間で1本の製紙面側経糸2が最初の製紙面側緯糸5′の上側から次の製紙面側緯糸8′の下側に向かい、他の製紙面側経糸1が最初の製紙面側緯糸5′の下側から次の製紙面側緯糸8′の上側に向かい互いに交差して拡げられる部分に配置されていることがわかる。
そして個々の補助緯糸6′は製紙面側経糸8、1、2、3の上側に配置され製紙面側経糸4本分のクリンプを形成しており、また、補助緯糸6′と組を形成してる補助緯糸7′は製紙面側経糸4、5、6、7の上側に配置され製紙面側経糸4本分のクリンプを形成している。
そして、組を形成する補助緯糸6′、7′が協働して全ての製紙面側経糸の上側にクリンプを形成し実質上補助緯糸1本分の組織を形成しているのである。
【0031】
そして、これらの補助緯糸が配置されている部分は製紙面側緯糸5′のクリンプ間の凹んでいる製紙面側緯糸5′が製紙面側経糸2と6の下側を通過する部分と製紙面側緯糸8′のクリンプ間の凹んでいる製紙面側緯糸8′が製紙面側経糸1と5の下側を通過する部分とが斜めに連続して大きく凹んでいる部分であるため、凹みを埋めて製紙面を平滑にしていることが良く理解できる。
また、補助緯糸6′は走行面側経糸5、6の下側を、補助緯糸7′は走行面側経糸1、2の下側を通ることによって製紙面側織物と走行面側織物を連結しており、接結糸として機能しているのである。
また、補助緯糸6′、7′ともに4本の製紙面側経糸の上側を通ってクリンプを形成し、2本の走行面側経糸の下側を通っており、互いに経糸4本分ずらして配置した同組織の補助緯糸であることがわかる。
【0032】
また、補助緯糸6′、7′が協働して形成している製紙面側の実質上1本分の補助緯糸組織は、製紙面側経糸4本分のクリンプを製紙面側経糸0本置きに形成する組織ということもでき、製紙面側経糸4本分で繰返し単位を形成しており、繰返し単位の長さが製紙面側織物(製紙面側織物だけでみた場合)の繰返し単位と同じであることがわかる。
従って、個々の補助緯糸が等しい力で、製紙面側織物の繰返し単位ごとに引き込むことになるため、製紙面を最小単位ごとに同条件で引き込むことととなり、製紙面全体を均一に平滑に形成できる。
【0033】
次に走行面側織物をみてみると、走行面側経糸1と2、3と4、5と6、7と8が同組織でそろえて配置した畝織りの平織り組織であることがわかる。網厚を薄くすることが可能であり、特にティッシュ製造用の抄紙用織物として好適である。実際の織物では製紙面側経糸1、2の間の下側に走行面側経糸1、2が密着して配置される。
畝織り構造とすることの利点としては、2本分の断面積を有する1本の太い経糸を配置した場合と比較し、断面扁平の糸を使用した場合と同じことになるため網厚を薄くでき、緯糸摩耗型に形成される点がある。
【0034】
実施例2
図2が本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
本実施例は、上層織物の組織、下層織物の組織の配置は実施例1と同じである。糸と符号の関係も同じであって、補助緯糸の組織が異なるだけである。
実施例1では、補助緯糸が製紙面側に上層経糸4本分のクリンプを形成させていたのに対し、本実施例の補助緯糸は製紙面側に上層経糸2本分のクリンプを形成させたのである。
例えば補助緯糸6′、7′を互いに交差している製紙面側経糸1と2、5と6の上側の最も凹む部分に配置したのである。
前述の実施例1と比較し本実施例の場合は組を形成する個々の補助緯糸が互いに交差する部分が、同じ網目(同じ経糸の間)ではなく経糸2本分間隔が空いており、かつ上層経糸のクリンプの下部で製紙面側に現れてない部分のため、製紙面側に現れてクリンプを形成する部分が、互いに多少越境し合って上層緯糸間の中央部に位置しやすくなり、上層緯糸間のほぼ中央位置に1本の補助緯糸が配置されることになる。従って、均一な繊維支持性、水空間が得られるという利点がある。
実施例1のパターンと実施例2のパターンのどちらを採用するかは、製紙用織物に要求される特性に応じて自由に選択できる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の製紙用2層織物は前述のように上層と下層とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成し、両層の織物を一体化させた織物であっても、上層織物表面が平滑で、かつ緯糸、補助緯糸の繊維支持性が非常に良好で、ワイヤーマークが無い平滑な紙を製造することができ、接結力が強く、高速の抄紙スピードにも対応できるという優れた効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
【図2】本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
【符号の説明】
1,2,3,4,5,6,7,8 経糸
1′,4′,5′,8′,9′,12′,13′,16 緯糸
2′,3′,6′,7′,10′,11′,14′,15′ 補助緯糸
Claims (3)
- 製紙面側経糸と製紙面側緯糸とからなる製紙面側織物と、走行面側経糸と走行面側緯糸とからなる走行面側織物と、製紙面側緯糸間に配置した補助緯糸とからなる製紙用2層織物において、製紙面側織物が、製紙面側緯糸が連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後1本の製紙面側経糸の下側を通る組織を繰り返す崩し綾織り組織であり、補助緯糸が、製紙面側緯糸間で、かつ隣接する2本の製紙面側経糸が隣接する2本の製紙面側緯糸間で1本の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の上側から次の製紙面側緯糸の下側に向かい、他の製紙面側経糸が最初の製紙面側緯糸の下側から次の製紙面側緯糸の上側に向かい互いに交差して拡げられる製紙面側緯糸間に2本で組を形成して配置され、組を形成する個々の補助緯糸は交互に製紙面に現れて連続する2本以上の製紙面側経糸の上側を通過し、製紙面側に現れていない部分では走行面側に下がって走行面側経糸と織り合わされて製紙面側織物と走行面側織物を連結することを特徴とする製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。
- 個々の補助緯糸が連続する4本の製紙面側経糸の上側を通過し、2本1組で全ての製紙面側経糸の上側を通過する組織を形成する請求項1記載の製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。
- 走行面側経糸が2本平行に同組織で配置された畝織り組織で、かつ平織組織である請求項1または2記載の製紙面側織物に補助緯糸を配置した製紙用2層織物。
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