JP4063400B2 - D−アミノアシラーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なD-アミノアシラーゼおよびその製造方法、並びに該アミノアシラーゼを用いたD-アミノ酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素は高い触媒機能をもつだけでなく、基質特異性、反応特異性とともに、立体特異性を示す。酵素の立体特異性は、いくつかの例外はあるものの、ほとんど絶対的といえる。
【0003】
近年における研究の精密化に伴い、医薬品、農薬、飼料、香料などの分野で光学活性体を扱うことの重要性が増している。これは光学異性体が生理活性をまったく異にする場合があるためで、たとえば、サリドマイドは、D(R)体には催奇性をもたないが、L(S)体には強い催奇形成があり、ラセミ体を実用に供したことが薬害事件を引き起こす原因となった。さらに、対掌体の一方が有効な生理活性を示す場合、もう一方の異性体が単に全く活性を示さないだけでなく、有効な対掌体に対して競合阻害をもたらす結果、ラセミ体の生物活性が有効な対掌体に対して1/2以下に激減してしまうこともある。従って、光学的に純粋な対掌体をいかにして入手(合成または分割)するかは、産業上重要な課題となっている。この目的に対して、ラセミ体を合成した上で、それを効果的に光学分割する手法が広く用いられており、副生成物や多量の廃液を生じない酵素法による光学分割が注目されている。
【0004】
一般にL-アミノ酸は、調味料や食品・飼料の添加物、医薬用輸液などに広く、かつ多量に用いられておりその利用価値は非常に高い。L-アミノ酸は主に微生物を用いた直接発酵法により生産されているが、N-アシル-DL-アミノ酸をL-アミノアシラーゼによって加水分解し、L-アミノ酸を生産する光学分割法も知られており、発酵法では製造が困難なL-アミノ酸の工業的生産に古くから利用されている。このL-アミノアシラーゼは動物、植物、微生物に広く分布しており、今日までに様々な生物に由来するL-アミノアシラーゼが精製され、酵素化学的性質が明らかにされている。また、生体内では多くのタンパク質のN-末端アミノ酸はN-アセチル化されていると考えられている。L-アミノアシラーゼはタンパク質の分解によって生じたN-アセチル-アミノ酸をアミノ酸に再生する機能をもつと考えられている。また、L-アミノアシラ−ゼの中でもN-アシル-L-グルタミン酸に作用するアシラーゼはアルギニンの生合成に関与していると考えられている(Fruh,H.,Leisinger,T.:J.Gen.,125,pp1(1981))。
【0005】
一方、D-アミノ酸は非タンパク性アミノ酸であるため長い間興味の対象外であった。天然では、D-アミノ酸の存在は小さな環状ペプチドまたは細菌細胞壁のペプチドグリカン、ペプチド系抗生物質に限られていた。しかしながら、神経ペプチドの構成成分、歯のエナメル質、目の水晶体や脳のタンパク質中に結合型として存在することが明らかにされ、D-アミノ酸の生理的意義の解明、酵素法によるD-アミノ酸の合成法などが研究されている。
【0006】
DL-アミノ酸の分割は、現在、物理化学的、化学的、酵素的方法で行われているが酵素的方法が最も簡便であり、酵素法の一つにL-アミノアシラーゼを固定化したバイオリアクターを用いてN-アセチル-DL-メチオニンから、L-メチオニンを連続生産する方法が工業化されている。D-アミノ酸を生産する方法の一つにヒダントイナーゼを用いる方法がある。この方法はアルデヒド類似物から安価に合成されるD,L-5位置換ヒダントインを出発物質として、D-特異的なヒダントイナーゼによるD-カルバミル誘導体化、それに続くD-アミノ酸カルバミラーゼによる2段階の酵素的方法で行われている。また、この方法とは別にD-アミノアシラーゼを用いて、このN-アセチル-DL-アミノ酸を加水分解し、D-アミノ酸を生産する方法も知られている(Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89(1980)、Tsai,Y.C.,Lin,C.S.,Tseng,T.H.,Lee,H.and Wang,Y.J.Enzyme Microb.Technol.,14,pp384(1992))。このようにD-アミノアシラーゼはD-アミノ酸の生産において重要ではあるが、その生理学的意義や構造的機能などはいまだ解明されていない。
【0007】
D-アミノアシラーゼは、1952年にkamedaらが土壌から分離したシュードモナス(Pseudomonas)sp.KT83に存在することが初めて報告された(Kameda,Y.,Toyoura,H.,Kimura,Y.and Yasuda,Y.:Nature,170,pp888(1952))。この酵素はD-型のフェニルアラニンやチロシン、アラニンのN-ベンゾイル誘導体を加水分解した。その後は、シュードモナス(Pseudomonas)属( Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y.:J.Antibiot.,43,pp550(1980) 、Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y.:J.Antibiot.,43,pp556(1980)、Kameda,Y.,Hase,T.,Kanatomo,S.and Kita,Y.:Chem.Pharm.Bull.,26,pp2698(1978)、Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y.:J.Antibiot.,43,pp543(1980))、ストレプトマイセス(Streptomyces)属( Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,42,pplO7(1978)、Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89 (1980) )、アルカリジェネス(Alcaligenes)属(Tsai,Y.C.,Tseng,C.P.,Hsiao,K.M.and Chen,L.Y.,Appl.Environ.Microbiol.,54,pp984(1988)、Yang,Y.B.,Hsiao,K.M.,Li,H.,Yano,Y.,Tsugita,A.end Tsai,Y.C.:Biosci.Biotech. Biochem.,56,ppl392(1992)、Yang,Y.B.,Lin,C.S.,Tseng,C.P.,Wang,Y.J.and Tsai,Y.C.:Appl.Environ.Microbiol.,57,pp2767(1991)、Tsai,Y.C.,Lin,C.S.,Tseng,T.H.,Lee,H.and Wang,Microb.Technol.,14,pp384(1992)、Moriguchi,M.and Ideta,K.:Appl.Environ.Microbiol.,54,pp2767(1988)、Sakai,K.,Imamura,K.,Sonoda,Y.,Kido,H.and Moriguchi,M.:FEBS,289,pp44(1991)、Sakai,K.,Obata,T.,Ideta,K.and Moriguchi,M.:J.Ferment.Bioeng.,71,pp79(1991)、Sakai,K.,Oshima,K.and Moriguchi,M.:Appl.Environ.Microbiol.57,pp2540(1991)、Moriguchi,M.,Sakai,K.,Katsuno,Y.,Maki,T.and Wakayama,M.Biosci.Biotech.Biochem.,57,ppll45(1993))、Wakayama,M.,Ashika,T.,Miyamoto,Y.,Yoshikawa,T.,Sonoda,Y.,Sakai,K.end Moriguchi,M.:J.Biochem.118 pp204(1995))、Moriguchi,M.,Sakai,K.,Miyamoto,Y.and Wakayama,M.:Biosci.Biotech.Biochem.,57,ppl149(1993))由来のD-アミノアシラーゼが報告されている。
【0008】
また、TsaiらやMoriguchiらは、アルカリジェネス(Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌由来のD-アミノアシラーゼの性質を明らかにし、さらに酵素タンパクのアミノ酸配列や遺伝子の配列も明らかにしている。Moriguchiらは、アルカリジェネス (Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌が、誘導物質をかえることによって三種のD-アミノアシラーゼ類を見だしている(Wakayama,M.,Katsuno,Y.,Hayashi,S.,Miyamoto,Y.,Sakai,K.and Moriguchi,M.:Biosci.Biotech.Biochem.,59,pp2115(1995))。
【0009】
さらに、Moriguchiらはアルカリジェネス(Alcaligenes)属のこれらのD-アミノアシラ−ゼ類の遺伝子配列を決定し、バシルス・ステレオサーモフィラス(Bacillus stereothermophilus)や人、ブタに由来するL-アミノアシラーゼと比較している。その結果、これらのD-アミノアシラーゼ類はL-アミノアシラーゼとは類似性が低いことを報告している(Wakayama,M.,Katsuno,Y.,Hayashi,S.,Miyamoto,Y.,Sakai,K.and Moriguchi,M.:Biosci.Biotech.Biochem.,59,pp2115(1995))。
【0010】
一方、放線菌ではSugieら(Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,42,pplO7(1978)、Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89(1980))がストレプトマイセス(Streptomyces)属にD-アミノアシラーゼを見いだし報告しているが、酵素は未精製であり十分にその性質は解明されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規なD-アミノアシラーゼおよびその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、該D-アミノアシラーゼを利用したD-アミノ酸の製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、種々の精製方法を組み合わせることにより、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物から新規な性質を有するD-アミノアシラーゼを精製することに成功した。さらに本発明者等は、精製したD-アミノアシラーゼが工業的なD-アミノ酸の製造に有用であることを見いだした。
【0013】
すなわち、本発明は、新規なD-アミノアシラーゼおよびその製造方法、並びに該D-アミノアシラーゼを利用したD-アミノ酸の製造方法に関し、より具体的には、
(1) 下記の理化学的性質を有するD-アミノアシラーゼ、
(a) 作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約36000ダルトンを示す。
(C) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、 N-アセチル-D-バリン、 N-アセチル-D-トリプトファン、 N-アセチル-D-アスパラギン、 N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しない。
(d) 温度安定性:pH7.5で30分間熱処理した場合、40℃では比較的安定であり50℃以上では失活する。
(e) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約35℃において作用が至適である。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約8.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+またはCa2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+、Hg2+、またはZn2+で活性が阻害される。
(2) アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物に由来する、(1)に記載のD-アミノアシラーゼ、
(3) アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物を培養し、下記の理化学的性質を有する酵素を得ることを特徴とする、(1)に記載のD-アミノアシラーゼの製造方法、
(a) 作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約36000ダルトンを示す。
(C) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、 N-アセチル-D-バリン、 N-アセチル-D-トリプトファン、 N-アセチル-D-アスパラギン、 N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しない。
(d) 温度安定性:pH7.5で30分間熱処理した場合、40℃では比較的安定であり50℃以上では失活する。
(e) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約35℃において作用が至適である。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約8.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+またはCa2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+、Hg2+、またはZn2+で活性が阻害される。
(4) (1)に記載のD-アミノアシラーゼをN-アセチル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法、
(5) N-アセチル-DL-アミノ酸がN-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニン、またはN-アセチル-DL-ロイシンである、(4)に記載の方法、
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、新規なD-アミノアシラーゼに関する。本発明のD-アミノアシラーゼは、(a) 作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる、(b)分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約36000ダルトンを示す、(C) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、 N-アセチル-D-バリン、 N-アセチル-D-トリプトファン、 N-アセチル-D-アスパラギン、 N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しない、(d) 温度安定性:pH7.5で30分間熱処理した場合、40℃では比較的安定であり50℃以上では失活する、(e) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約35℃において作用が至適である、(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約8.0において作用が至適である、(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+またはCa2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+、Hg2+、またはZn2+で活性が阻害される、という特性を有する。
【0015】
本発明のD-アミノアシラーゼとしては、このような特性を有するものであればその由来に特に制限はなく、例えば、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物に由来のD-アミノアシラーゼが挙げられる。本発明のD-アミノアシラーゼは、例えば、実施例に記載の活性測定方法および精製法に従って調製することが可能である。
【0016】
本発明のD-アミノアシラーゼは、上記のように、種々のN-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じるという性質を有するため、D-アミノ酸を工業的に製造するために有効である。例えば、本発明のD-アミノアシラーゼをN-アセチル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を製造できる。適用可能なN-アセチル-DL-アミノ酸としては、例えば、N-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニン、N-アセチル-DL-ロイシンが挙げられる。
【0017】
反応の基質であるN-アセチル-DL-アミノ酸の濃度に特に制限はないが、通常0.1〜30%程度の濃度が用いられる。使用するD-アミノアシラーゼの量は大量に使用すれば反応が速く進む場合が多いが、通常は1U〜1000U/ml程度用いられる。反応温度は5〜50℃、反応pHは4〜10で行われる。酵素はポリアクリルアミド等で固定化した方が安定する場合が多い。反応時間はD-アミノアシラーゼの量と基質量で決まるが、通常は10〜100時間で終了する場合が多い。
【0018】
反応液から反応により生じたD-アミノ酸の回収は、例えば、濃縮、等電点沈殿などによる直接結晶法やイオン交換樹脂処理、膜分離などの公知の方法により行うことができる。例えば N-アセチル-DL-トリプトファンを基質にして D-トリプトファンを生成した場合、反応液からD-トリプトファンを採取するには、反応液を強酸性陽イオン交換樹脂に通し、 D-トリプトファンを吸着させ、該樹脂を水洗後、0.5Nアンモニア水で溶出させる。溶出液を濃縮して得た粗D-トリプトファン結晶粉末を少量の50%熱エタノール水に溶解し、活性炭処理して脱色し、冷却後、精D-トリプトファンの結晶を得ることができる。また、D-バリンの場合には、反応終了後、遠心分離して除菌などした後に6規定塩酸でpH1とする。次いで、析出したN-アセチル-L-バリンを遠心分離で除去し、上清を活性炭処理した後、再びpHを7.0としH+型強酸性陽イオン交換体(アンバーライトIR-120B)に加え、5%アンモニア水溶液で脱着する。さらに、脱着物を80℃で減圧乾燥することで得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0020】
[実施例1]
(1)菌株および培養
アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientaris)IFO 12806は、0.1%のN-アセチル-DL-メチオニン(Sigma社製)を誘導物質として100mlのISP-2液体培地(0.4%酵母エキス(オリエンタル酵母社製)、1.0%麦芽エキス(Difco社製)、0.4%グルコース(サンエイ糖化社製)、pH7.3)を500mlの三角フラスコに分注し、スピードクレーブで滅菌後D-アミノアシラーゼ生産培地として使用した。培養は、振とう培養器で30℃、72時間、160rpm.で培養した。なお、前培養としては、同組成の培地10mlを試験管に分注し、スピードクレーブで滅菌後、スラント(ISP-2寒天培地(0.4%酵母エキス(オリエンタル酵母社製)、1.0%麦芽エキス(Difco社製)、0.4%グルコース(サンエイ糖化社製)、2%寒天、pH7.3))より1白金耳量植菌し、30℃で72時間振とう培養した。
【0021】
培養後、8000rpm(7000×g)で20分間、遠心分離(日立工機製、himac SCR 20B、RPR20-2- 1451ローター)を行い集菌した。集菌体を50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で洗浄した後、再び同ローターにより8000rpm(7000×g)で20分間、遠心分離を行い使用する菌体を得た。得られた菌体は-20℃で保存した。
【0022】
(2)D-アミノアシラーゼの活性測定方法
上記の方法で得た菌体を、ソニケーター(Kubota,Insonataor 201M)で50mMのTris/HCl (pH7.5)緩衝液中で200Wで20分間、超音波破砕した。超音波破砕後、日立工機製冷却遠心機(RPR20-2-1451 ローター)で14000rpm(20000×g)で20分間、遠心分離を行い上清を得た。これをD-アミノアシラーゼの粗酵素液とした。
【0023】
酵素反応は、20mMのN-アセチル-D-メチオニン(Sigma社製)、50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液、1mMのCoCl2、100μlの酵素液を含む全量1.0mlの反応系で、30℃、60分で行った。反応の停止は、TsaiらによるTCA反応停止溶液(0.11Mトリクロロ酢酸と0.22M酢酸ナトリウム、0.33M酢酸からなる)を0.5ml添加することによって行った。
【0024】
酵素活性の測定は、TNBS法(Tokuyama,S.,Hatano,K.and Takahashi,T.:Biosci.Biotech.Biochem.,58, pp24(1994))に従って行った。即ち、アミノ酸を含むサンプルを0.5mlの(C)液(0.1M Na2B4O7)に加え、1.0mlとして、これに20mlの0.11M TNBS溶液を加えて素早く撹拌した。5分後に、420nmにおける吸光度を測定した。
【0025】
なお、D-メチオニンをL-メチオニンをスタンダードとして比色定量し、30℃において1分間に1μmolのD-メチオニンを生成する酵素量を1単位(unit)とした。
【0026】
また、タンパク量の定量はLowry法にしたがい、BSA(Bovine Serum Albumin、Sigma社製)を標準とした。即ち、測定前に、(A)液(2% Na2CO3(0.1N NaOH中))と(B)液(0.5% CuSO4・5H2O(1% クエン酸ナトリウム中))を50:1の割合で混合したアルカリ性銅溶液を調製し、タンパク試料(タンパク質5〜50μg)に上記のアルカリ性銅溶液1mlを加え、室温で20分間放置した後、蒸留水で2倍に希釈したフェノール試薬(酸濃度1N)を0.1ml加え、30分間室温で放置した。反応後、750nmにおける吸光度を測定した。
【0027】
上記の方法でIFOから分与されたアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientaris)IFO 12806に関してD-アミノアシラーゼの生産性を評価した。その結果、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientaris)IFO 12806は比較的高いD-アミノアシラーゼの活性を示した。
【0028】
[実施例2] アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)IFO 12806由来のD-アミノアシラーゼの精製
1.D-アミノアシラーゼの誘導
本菌株を、実施例1のISP-2液体培地(100ml)でD-アミノアシラーゼの誘導物質としてN-アセチル-DL-メチオニン、DL-バリン(関東化学社製)をそれぞれ0.1%添加したもの、誘導物質を添加しなかったものを30℃、160rpm、72時間振とう培養した。
【0029】
培養後、日立工機製冷却遠心機で8000rpm.(7000×g)で20分間、遠心分離を行い集菌した。集菌体は50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で洗浄した後、再び同遠心機で遠心分離を行い使用する菌体を得た。得られた菌体は-20℃で保存した。
【0030】
保存菌体を、20mlの50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液に懸濁し、190Wで10分間、超音波破砕した。破砕後、日立工機製冷却遠心機で14000rpm.(20000×g)で20分間、遠心分離を行い上清を得た。これを粗酵素液とした。
【0031】
酵素反応は、20mMのN-アセチル-D-メチオニン、50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液、1mMのCoCl2、100μlの酵素液を含む全量1.0mlの反応系で、30℃、10分で行った。反応停止はTCA反応停止溶液を添加することによって行った。本菌株の誘導物質によるD-アミノアシラーゼの生産の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
本菌株において、誘導物質無添加ではD-アミノアシラーゼは誘導されず、本酵素は誘導酵素であることが示された。本菌株は基質であるN-アセチル-D-メチオニンを含むN-アセチル-DL-メチオニンよりも、DL-バリンによってD-アミノアシラーゼを強く誘導した。
【0033】
2.培養方法
本菌株を、D-アミノアシラーゼの誘導物質としてDL-バリンを0.1%添加した1lの液体培地(1.5%ポリペプトン(日本製薬社製)、0.5%酵母エキス(オリエンタル酵母社製)、0.5%NaCl、0.25%K2HPO4、1%グルコース(サンエイ糖化社製))を5lの三角フラスコで30℃、160rpm.、72時間で培養した。なお、前々培養は同組成の液体培地20mlを試験管で30℃、72時間振とう培養し、前培養は同組成でグルコースの代わりに3%グリセロールを用いた200mlの液体培地を500mlの三角フラスコで30℃、160rpm.、72時間培養した。
【0034】
培養終了後、日立工機製遠心機(RPR10-2-443 ローター)で10000rpm.(17000×g)で20分間、遠心分離を行い、集菌した。集菌体を50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で洗浄し、同遠心機(RPRS4 373 ローター)で4000rpm.(3500×g)にて30分間で再び遠心して集菌した。これを-20℃で保存した。
【0035】
3.D-アミノアシラーゼの精製
(1)硫安塩析条件の検討
疎水クロマトグラフィーを行うための条件を決めるために硫安塩析の条件検討を行った。上記の方法で培養した菌体の一部を超音波破砕(200Wで30分)し、日立工機製遠心機(RPR20-2-1451 ローター)で 15000rpm.(30000×g)で20分間、遠心分離することによって粗酵素液を調製した。この粗酵素液を10mlずつ分取し、それぞれに10%〜40%飽和になるように硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製)を加えた。氷水中で1時間、攪拌した後、日立工機製冷却遠心機(RPR20-2-1451 ローター)で15000rpm(30000×g)で20分間、遠心し、塩析物を取り除いた上清液を十分な量の50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中で透析し硫酸アンモニウムを脱塩してから酵素活性を測定した。
【0036】
(2)リゾチームによる溶菌
培養後-20℃で保存した菌体90gを270mlの50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液に懸濁し、0.4gの卵白リゾチーム(生化学工業社製)を加え30℃で約120分間攪拌して酵素を漏出させた。リゾチームによる溶菌作用の結果、菌体から酵素とともにDNAも溶出し、菌懸濁液が粘性を帯びてくるのでDNase I(Sigma社製)を1mg加えDNAを分解した。溶菌後、日立工機製遠心機(RPR 20-2-1451 ローター)で16000rpm.(35000×g)で 30分間で遠心分離し、溶菌残さを沈殿させ上清液(273ml)を得た。
【0037】
(3)硫安塩析
上記の上清液を、冷却して20%飽和になるまであらかじめ乳鉢ですりつぶしておいた硫酸アンモニウムを少量ずつ加え、4℃で一晩攪拌した。塩析物を日立工機製冷却遠心機(RPR20-2-1451 ローター)で15000rpm.(3000×g)で20分間、遠心分離によって沈殿させ上清液(278ml)を得た。この結果、本酵素は20%飽和量の硫酸アンモニウムでは塩析されず、30%飽和量の硫酸アンモニウムで塩析された(表2)。そこで、20%飽和量の硫酸アンモニウムを含むTris/HCl緩衝液で平衡化したButyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィーに供した。
【0038】
【表2】
(4)Butyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィー
上記の上清液(278ml)を、あらかじめ20%飽和量の硫酸アンモニウムを加えた50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化したTSK-Gel Butyl-Toyopearl 650Mカラム(東ソー社製、3.0×20cm、140ml)に吸着させた。同カラムの5倍量の緩衝液で洗浄後、同カラムの5倍量の硫酸アンモニウムの20%飽和量〜0%飽和量の直線濃度勾配で溶出させた。各フラクションのタンパク量は280nmの吸光度を測定した(図1)。
【0039】
(5)TLC分析法
各フラクションのD-アミノアシラーゼ活性は、20mMのN-アセチル-D-メチオニンを含む50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液(全量500μl)中で30℃、1時間で行った。反応液の一部(約3μl)をTLCプレートにスポットした。遊離したD-メチオニンはL-メチオニンを標準としてTLC(Silica gel 60 F254)、Merck社製によりn-ブタノール:酢酸:蒸留水(3:1:1、v/v)からなる展開溶媒で展開し、ニンヒドリン試薬(ニンヒドリン0.2g、n-ブタノール95ml、2N-酢酸5mlからなる)を噴霧し、約170℃で加熱し発色させることにより測定した。また、L-アミノアシラーゼ活性を取り除くために、D-アミノアシラーゼ活性と同様に、基質として20mMのN-アセチル-L-メチオニンを用いてTLC法でL-アミノアシラーゼ活性を測定した(図2)。この結果、素通りおよび洗浄画分には本酵素の活性は見られず、溶出画分に本酵素の活性が見られた。
【0040】
(6)DEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィー
上記のButyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィーでの活性画分を回収し、十分な量の50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で透析し完全に硫酸アンモニウムを取り除き粗酵素液(105ml)を得た。この粗酵素液(105ml)をあらかじめ50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化しておいたTSK-Gel DEAE-Toyopearl 650M(東ソー社製、3.0×16cm、100ml)に吸着させた。同カラムの5倍量の緩衝液で洗浄後、同カラムの5倍量のNaClの0M〜0.7Mの直線濃度勾配で溶出させた。
【0041】
D-アミノアシラーゼ活性は、20mMのN-アセチル-D-メチオニンを含む50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液(全量1.0ml)中で30℃、1時間で行った。遊離したD-メチオニンはL-メチオニンを標準としてTNBS法により比色定量した。この結果を図3に示す。
【0042】
(7)Superose 12 HR 10/30を用いたゲル濾過
上記のDEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィーでの活性画分26番目〜33番目(8ml)を限外濾過膜(Centricon、分画分子量10000(グレースJapan社製、Amicon))により濃縮した(1ml)。この濃縮した酵素液を、あらかじめ0.15MのNaClを含む50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化しておいた「Superose 12 HR 10/30」(Pharmacia社製)に供し、30mlの同緩衝液で0.4ml/分で溶出させ、1mlずつ分画した(図4)。この結果、D本酵素の活性のピークは約13mlであった。活性画分は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供した。
【0043】
(8)SDS-PAGE法
Laemmli法(Laemmli,U.K.:Nature,227,pp680)に従い、Mini-PROTEAN II泳動装置(Bio- Rad社製)を用いて、定電流30mAで電気泳動した。濃縮ゲルには4%ポリアクリルアミド(0.125M-Tris/HCl緩衝液(pH6.8)、0.1%SDS)、分離ゲルには12.5%のポリアクリルアミドゲル(0.375M-Tris/HCl緩衝液(pH8.8)、 0.1%SDS)を用いた。試料処理は、酵素液と同量の試料処理液(0.0625M-Tris/HCl緩衝液(pH6.8)、2% SDS、20% グリセリン、1% 2-メルカプトエタノール)を混合し、沸騰水中で約2分間つけた。室温にまで冷却した後、0.5%のブロムフェノールブルーを20μl添加し、約20μlを電気泳動に供した。この結果、目的のD-アミノアシラーゼと考えられるバンドが検出された。
【0044】
[実施例3] アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)IFO12806由来のD-アミノアシラーゼの性質
1.分子量の測定
分子量の測定は、(1)ゲル濾過法と(2)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法によって測定した。
【0045】
(1) ゲル濾過法
前述の「Superose 12 HR 10/30」(Pharmacia社製)カラムを使用した。分子量マーカーには、「Gel Filtration Standard」(Bio-Rad社製);チログロブリン(670K)、ガンマグロブリン(158K)、オバルブミン(44K)、ミオグロビン(17K)、ビタミンB-12(1.35K)を用いた。流速は0.4ml/分で行った。この結果、本酵素の分子量はゲル濾過法で約36000と推定された (図5)。
【0046】
(2) SDS-PAGE法
前述の方法にしたがい、Mini-PROTEAN II泳動装置(Bio-Rad社製)を用いて、定電流30mAで電気泳動した。タンパク質分子量マーカーには第一・III(第一化学薬品社製);フォスフォリラーゼb(97K)、牛血清アルブミン(66K)、アルドラーゼ(42K)、カルボニックアンヒドラーゼ(30K)、トリプシンインヒビター(20K)、リゾチーム(14.4K)を用いた。泳動後、クーマシブルリアントブルーで染色し、脱色液I (100ml酢酸、300mlメタノール、700ml純水)と脱色液II(75ml酢酸、50mlメタノール、875ml純水)によって脱色した後、分子量マーカーと比較した。この結果、分子量が約36000と推定された(図6)。以上より、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)IFO 12806由来のD-アミノアシラーゼは分子量が約36000の単量体であると推定した。本酵素の分子量は、アルカリジェネス (Alcaligenes)属のD-アミノアシラーゼ(MI-4株;51000、A-6株;52000、DA1株;55000、DA181株;58000)より小さく、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のD-アミノアシラーゼ(S.olivaceus;45000)とも異なる値であった。これまでに報告されているD-アミノアシラーゼ中で最も小さい分子量であった。
【0047】
2.基質特異性
本酵素の基質特異性は、N-アセチル-D-メチオニンに対する酵素活性を100%として比較した。比較した基質は、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-アスパラギン、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンを用いた。酵素活性は、100μlの酵素液と20mMの各基質を含む50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量1.0ml)で30℃、3時間で行った。本酵素のD-メチオニン、D-ロイシン、D-アラニン、D-バリン、D-トリプトファン、D-アスパラギン、D-フェニルアラニンのN-アセチル体に対する基質特異性を表3に示す。
【0048】
【表3】
本酵素は、N-アセチル-D-メチオニン、N-アセチル-D-ロイシンによく作用し、 N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-アラニン、N-アセチル-D-アスパラギンに対しても活性を示した。また、本酵素はN-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しなかった。
【0049】
3.酵素の性質
(1) 酵素の熱安定性
酵素液を20℃、30℃、40℃、50℃、60℃で30分処理して、すぐに氷冷した。処理後の酵素は、50mMの Tris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量1.0ml)で30℃、30分で酵素反応を行った。本酵素の熱安定性を図7に示す。本酵素は40℃までは比較的安定だが、50℃以上では失活した。
【0050】
(2) 至適反応温度
酵素反応系の温度のみを20℃〜55℃の各段階にかえて、50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量1.0ml)で30分で酵素反応を行った。本酵素の至適反応温度を図8に示す。本酵素の至適温度は35℃付近であると推定された。
【0051】
(3) 至適反応pH
酵素反応系のpHのみをpH5.0〜pH9.0の各pHにかえて30℃、60分で酵素反応を行った。緩衝液として、pH5.0、6.0、7.0、8.0は50mMのK2HPO4/NaH2PO4緩衝液、pH7.5、8.0、9.0は50mMのTris/HCl緩衝液を用いた。本酵素の至適pHを図9に示す。本酵素の至適pHはpH8.0付近であると推定された。また、pH5〜pH6の酸性条件下では活性が見られなかった。
【0052】
(4) 各種金属塩および各試薬の影響
酵素反応系に、1mMおよび10mMの濃度になるように各種の金属塩および各種の酵素阻害剤を添加して酵素反応を行った。酵素反応は50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量500μl)で、30℃、60分で行った。各種の金属塩と各試薬が本酵素活性に及ぼす影響を表4と表5に示す。なお、表5中の「PCMB」はp-クロロメルクリ安息香酸を示す。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
本酵素は、1mMのCo2+やCa2+などの2価カチオンで活性が著しく促進されたが、Cu2+や Hg2+では阻害された。1mMで活性を促進したCo2+は10mMでは活性を促進しなかった。一方、 Ca2+を10mM添加しても活性は阻害されなかった。本酵素はSH試薬であるPCMB(p-chloromerucuribenzoic acid)やヨード酢酸によって阻害された。また、金属キレート剤であるEDTAによっても阻害された。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物由来の新規なD-アミノアシラーゼおよびその製造方法、並びに該D-アミノアシラーゼを用いたD-アミノ酸の製造方法が提供された。本発明のD-アミノアシラーゼを用いれば、 N-アセチル-DL-アミノ酸(例えば、N-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニンおよびN-アセチル-DL-ロイシンなど)から、対応するD-アミノ酸を簡便かつ効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Butyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィーによる本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す。活性画分を矢印で示した(画分番号50-62)。
【図2】 TLC法によりD-アミノアシラーゼ活性およびL-アミノアシラーゼ活性を検出した結果を示す。
【図3】 DEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィーによる本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す。
【図4】 Superose 12 HR 10/30を用いたゲル濾過による本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す。
【図5】ゲル濾過による本発明のD-アミノアシラーゼの分子量の測定結果を示す。図中のAはガンマグロブリン (158K)を、Bはオバルブリン(44K)を、Cはミオグロビン(17K)を示す。
【図6】 SDS-PAGE法による本発明のD-アミノアシラーゼの分子量の測定結果を示す。図中のAはアルブミン(66K)を、Bはアルドラーゼ(42K)を、Cはカルボニックアンヒドラーゼ(30K)を示す。
【図7】本発明のD-アミノアシラーゼの熱安定性を示す。
【図8】本発明のD-アミノアシラーゼの至適反応温度を示す。
【図9】本発明のD-アミノアシラーゼの至適反応pHを示す。図中の黒丸はKH2/PO4を緩衝液として用いたものであり、白丸はTis/HClを緩衝液として用いたものである。
Claims (5)
- 下記の理化学的性質を有するD-アミノアシラーゼ。
(a) 作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約36000ダルトンを示す。
(C) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、 N-アセチル-D-バリン、 N-アセチル-D-トリプトファン、 N-アセチル-D-アスパラギン、 N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しない。
(d) 温度安定性:pH7.5で30分間熱処理した場合、40℃では比較的安定であり50℃以上では失活する。
(e) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約35℃において作用が至適である。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約8.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+またはCa2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+、Hg2+、またはZn2+で活性が阻害される。 - アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物に由来する、請求項1に記載のD-アミノアシラーゼ。
- アミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物を培養し、下記の理化学的性質を有する酵素を得ることを特徴とする、請求項1に記載のD-アミノアシラーゼの製造方法。
(a) 作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約36000ダルトンを示す。
(C) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、 N-アセチル-D-バリン、 N-アセチル-D-トリプトファン、 N-アセチル-D-アスパラギン、 N-アセチル-D-フェニルアラニン、 N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンには作用しない。
(d) 温度安定性:pH7.5で30分間熱処理した場合、40℃では比較的安定であり50℃以上では失活する。
(e) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約35℃において作用が至適である。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約8.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+またはCa2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+、Hg2+、またはZn2+で活性が阻害される。 - 請求項1に記載のD-アミノアシラーゼをN-アセチル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
- N-アセチル-DL-アミノ酸がN-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニン、またはN-アセチル-DL-ロイシンである、請求項4に記載の方法。
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