JP3994762B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば左座席側と右座席側とで独立して空調空気を吹出制御する独立温度制御方式の空調ユニットを備えた車両用空調装置に関するもので、特に最大暖房条件が設定されたときの暖房能力の向上を図った空調ユニットの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の車両用空調装置には、車室内の左座席側の吹出口に通ずる第1空気通路、車室内の右座席側の吹出口に通ずる第2空気通路とを形成し、そのそれぞれの第1、第2空気通路内に設けられ吹出開閉をする各種の第1、第2開閉手段と、エンジン冷却水を熱源として第1および第2空気通路内に流れる空調空気を加熱する加熱手段と、第1および第2空気通路内にそれぞれ設けられ、加熱手段による空調空気の加熱量を調節して空気温度を調節する温度調節手段とを備え、第1および第2空気通路をそれぞれ独立して空調空気を吹出制御する左右独立温度制御方式の空調ユニットを用いているものがある。
【0003】
なお、この温度調節手段として、例えば加熱手段を通過して温風が流れる温風通路と加熱手段をバイパスして冷風が流れる冷風バイパス通路とを第1および第2空気通路内にそれぞれ形成し、その温風通路を通過する風量と冷風バイパス通路を通過する風量との風量割合を調節するそれぞれのエアミックスドアで構成したものがある。
【0004】
さらに、各種の第1、第2開閉手段およびそれぞれのエアミックスドアには、これらを駆動するためのアクチュエータである駆動手段が設けられている。これにより、左座席側と右座席側とが独立して空調空気の吹出温度を吹出制御し各席ごとの乗員への快適性の向上を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成によれば、左座席側と右座席側とが独立して吹出制御するために、少なくとも空調ユニットの両側面に各種の第1、第2開閉手段およびそれぞれのエアミックスドアなどを駆動する駆動手段を設けるための取付け空間が必要となっている。しかも、近年、車室内空間を拡大するために空調ユニットの小型化の要求が強くなっている。
【0006】
そこで、この要求に対して単純に空調ユニットを小形にすると、第1および第2空気通路の通風面積が縮小することで、圧力損失が増加するとともに風量が大幅に低下して、能力低下と騒音が大きくなる問題を有している。 特に、上記構成の空調ユニットによれば、暖房運転の開始時などの最大暖房条件において、吹出モードが乗員の足元に空調空気を吹き出すフットモードのときに、顕著に風量が低下して、加熱手段の暖房能力を充分に発揮できない問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点に鑑みたことであり、最大暖房条件が設定されたときに、フット吹出口より吹き出される風量が最大となる通風経路を配設させることで暖房能力の向上を可能とした車両用空調装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1および請求項2に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車室内の一方側の吹出口に通ずる第1空気通路(14a)と、車室内の他方側の吹出口に通ずる第2空気通路(14b)とを形成する空調ケース(21)と、エンジン冷却水を熱源として空調ケース(21)に流れる空調空気を加熱する加熱手段(23)と、第1空気通路(14a)および第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、加熱手段(23)による空調空気の加熱量を調節して空気温度を調節する温度調節手段(26a、26b)と、加熱手段(23)の下流側の第1空気通路(14a)および第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、車室内乗員の足元に向けて空調空気を吹き出すフット吹出口に接続されるフット開口部(38a、38b、39a、39b)と、このフット開口部(38a、38b、39a、39b)の上流側に配設され、フット開口部(38a、38b、39a、39b)を開閉するフット開閉部材(36a、36b)と、第1空気通路(14a)および第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、フット開閉部材(36a、36b)を迂回して、加熱手段(23)からフット開口部(38a、38b、39a、39b)に通ずる温風バイパス通路(43a、43b)と、温風バイパス通路(43a、43b)のそれぞれに配設され、この温風バイパス通路(43a、43b)を、連動して開閉する温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)と、第1空気通路(14a)と第2空気通路(14b)とで独立して空調空気を吹出制御する左右独立温度制御方式の空調ユニット(20)とを備える車両用空調装置において、
温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)は、一つの駆動手段(45)によって駆動されており、かつ両方の温度調節手段(26a、26b)が最大暖房条件に設定されたときに、両方の温風バイパス通路(43a、43b)を開き、また、いずれか一方の温度調節手段(26a、26b)が最大暖房条件に設定されたときは、両方の温風バイパス通路(43a、43b)を閉じるように構成されたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、この種の左右独立温度制御方式の空調ユニット(20)とを備える車両用空調装置では、一般的に、例えば左座席側と右座席側とが独立して吹出制御するために、少なくとも空調ユニット(20)の両側面側に各種の制御ドアなどの開閉部材(36a、36b)および温度調節のための温度調節手段(26a、26b)を駆動するためのアクチュエータなどの駆動手段を左座席側と右座席側とにそれぞれ必要であるとともに、駆動手段の取付け空間も必要となる。さらに、車室内の乗員空間を拡大するために空調ユニット(20)の小型化の要求が強くなっている。
【0010】
ところで、要求に応じて空調ユニット(20)を小型化すれば、第1および第2空気通路(14a、14b)の通風面積が狭まり通風抵抗が増加し風量低下を招いてしまう。そこで、本発明では、温風バイパス通路(43a、43b)と、その温風バイパス通路(43a、43b)を、連動して開閉する温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)とを設け、一つの駆動手段(45)によって駆動されており、かつ両方の温度調節手段(26a、26b)が最大暖房条件に設定されたときに、温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)は、両方の温風バイパス通路(43a、43b)を開くように構成されたことにより、フット開閉部材(36a、36b)を通過する温風と温風バイパス通路(43a、43b)とを通過する温風がフット開口部(38a、38b、39a、39b)に導かれ、通路面積の拡大により通風抵抗が減少して風量が増大する。これにより、加熱手段(23)の加熱量を最大限発揮できるため暖房能力の向上が図れる。
【0011】
また、いずれか一方の空気通路(14a、14b)側の加熱量が最大未満のとき、例えば、乗員が所望する設定温度に達するような吹出制御が行われているときは、両方の温風バイパス通路(43a、43b)が閉じられることにより、吹出制御が行われている側への快適性を損なうことはない。
【0012】
従って、暖房運転の開始時など、例えば左座席側と右座席側と両方が最大暖房条件のときに、加熱手段(23)を通過した温風を温風バイパス通路(43a、43b)を通してフット開口部(38a、38b、39a、39b)に導くことで暖房の立ち上がり特性が向上する。
【0014】
また、温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)を一つの駆動手段(45)により駆動させることにより、駆動手段(45)の取付け空間が縮小されるとともに、部品点数が低減でき低コスト化が図れる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、空調ケース(21)には、加熱手段(23)を通過して温風が流れる温風通路(29a、29b)と加熱手段(23)をバイパスして冷風が流れる冷風バイパス通路(25a、25b)とを第1空気通路(14a)および第2空気通路(14b)内にそれぞれ形成させるとともに、温度調節手段(26a、26b)は、温風通路(29a、29b)を通過する風量と冷風バイパス通路(25a、25b)を通過する風量との風量割合を調節するエアミックスドア(26a、26b)により構成したことを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、吹出温度を調節する温度調節手段(26a、26b)として、エアミックスドア(26a、26b)で構成したことにより、このエアミックスドア(26a、26b)によって冷風と温風との風量割合を調節する空気通路の通風系においては、冷風と温風を混合させた後に各種吹出口に導くため、第1および第2空気通路(14a、14b)の通風経路が長くなり通風抵抗が増加する。
【0017】
しかも、暖房時においては加熱手段(23)に空調空気を通過させることで、冷房時の加熱手段(23)をバイパスする冷風よりも大幅に通風抵抗が増大する。そこで、温風バイパス通路(43a、43b)を別に設けることで、通風系の通風面積が増加することで暖房時の風量を増大させ、かつ暖房能力の向上が図れる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、車室内の一方側の吹出口としての運転席、および車室内の他方側の吹出口としての助手席へそれぞれの吹出温度を独立に制御する自動車用空調装置に本発明を適用した一実施形態について、図1ないし図3に基づいて説明する。本実施形態の車両用空調装置の通風系は、図1に示すように、大別して、送風機ユニット1と、空調ユニット20との2つの部分に分かれている。
【0020】
送風機ユニット1は車室内の計器盤下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対し、空調ユニット20は車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0021】
送風機ユニット1は周知のごとく内気(車室内空気)と外気(車室外空気)を切換導入する内外気切換箱2と、この内外気切換箱2を通して空気を吸入して送風する送風手段としての遠心式電動送風機3とから構成されている。
【0022】
内外気切換箱2には、内気吸入口4と外気吸入口5とが形成されており、さらに内気吸入口4と外気吸入口5とが分かれた部分には、各吸入口を選択的に開閉する内外気切換ドア6が設けられている。この内外気切換ドア6には、駆動手段としてのサーボモータ7(図2参照)が連結されている。
【0023】
遠心式電動送風機3は、遠心ファン8とその駆動用のブロアモータ9と遠心ファン8を収容しているスクロールケーシング10とから構成されている。また、ブロアモータ9に印加されるブロア電圧は、駆動手段であるブロアモータコントローラ11(図2参照)によって制御される。
【0024】
空調ユニット20は、図1および図3に示すように、1つの共通の空調ケース21内に空気冷却手段をなす蒸発器22と、その空気下流側に空気加熱手段としての加熱手段であるヒータコア23とを両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。
【0025】
空調ケース21はポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなる。空調ケース21は具体的には複数の分割ケースからなり、この複数の分割ケースは、上記熱交換器22、23、後述のドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ユニット20を構成する。なお、空調ケース21は、スクロールケーシング10の空気出口側部分に接続されている。
【0026】
また、空調ケース21内のうちヒータコア23の空気上流側には仕切板24(図1参照)が配設され、この仕切板によって、後述する第1エアミックスドア26aの開度調節によって温度調節された空調空気を車室内の運転席側に導く第1空気通路14aと、後述する第2エアミックスドア26bの開度調節によって温度調節された空調風を車室内の助手席側に導く第2空気通路14bとが形成されている。
【0027】
そして、空調ケース21内のうちヒータコア23の両側方(図1の上下)には、蒸発器22で冷却された冷風がヒータコア23をバイパスする第1および第2冷風バイパス通路25a、25bが形成されている。
【0028】
また、ヒータコア23の空気上流側には、第1および第2温度調節手段である第1および第2エアミックスドア26a、26bが設けられており、これらのドア26a、26bには、駆動手段としての第1および第2温度調節手段である第1および第2サーボモータ27a、27b(図2参照)がそれぞれ連結されている。このサーボモータ27a、27bには、それぞれのモータの出力軸の回転角を検出することによって、エアミックスドア26a、26bの実際の位置を検出するポテンショメータ56a、56b(図2参照)が内蔵されている。
【0029】
そして、仕切板24より図中(図1参照)上方のヒータコア23を通る温風量と、第1冷風バイパス通路25aを通る冷風量との風量割合が、第1エアミックスドア26aの開度によって調節され、仕切板24より図中(図1参照)下方のヒータコア23を通る温風量と、第2バイパス通路25bを通る冷風量との割合が、第2エアミックスドア26bの開度によって調節される。
【0030】
なお、蒸発器22は、図示しない圧縮機、凝縮器、受液器、減圧器とともに配管結合された周知の冷凍サイクルを構成する熱交換器であり、空調ケース21内の空気を除湿冷却する。上記圧縮機は、自動車のエンジンに図示しない電磁クラッチを介して連結されるもので、この電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
【0031】
また、ヒータコア23は、自動車エンジンの冷却水を熱源とする熱交換器であり、図3に示すように、空調ケース21内の下方側において、車両後方側に傾斜して配置されて蒸発器22にて冷却された冷風を再加熱する。
【0032】
また、空調ケース21内において、ヒータコア23の空気下流側(車両後方側の部位)には、ヒータコア23との間に所定間隔を開けて上下方向に延びる壁面28が空調ケース11に一体成形されている。この壁面28によりヒータコア23の直後から第1、第2温風通路29a、29bを流通して上方に温風が導かれる。
【0033】
また、空調ケース21内において、第1、第2冷風バイパス通路25a、25bおよび第1、第2温風通路29a、29bの空気下流側(上方側)には、冷風と温風の混合を行う第1、第2空気混合部30a、30bが形成されている。そして、第1、第2空気混合部30a、30bの下流端、かつ空調ケース21の上方部において、車両前方側の部位にはデフロスタ開口部31a、31bが車両前方向の上方側に開口して形成されている。このデフロスタ開口部31a、31bは第1、第2空気混合部30a、30bから温度制御された空調空気が流入するものであって、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、このデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調空気を吹き出す。
【0034】
また、デフロスタ開口部31a、31bは、平板状のデフロスタ開閉部材であるデフロスタドア32a、32bにより開閉される。なお、このデフロスタドア32a、32bは、デフロスタ開口部31a、31bの上流側に設置され、空調ケース21の上面部近傍でデフロスタ開口部31a、31bの上端部に隣接して水平方向に配置された回動軸により回動自在に支持されている。
【0035】
次に、デフロスタ開口部31a、31bよりも車両後方側(乗員寄り)の部位にフェイス開口部33a、33bが形成されており、このフェイス開口部33a、33bには温度制御された空調空気が第1、第2空気混合部30a、30bを通して流入される。
【0036】
また、このフェイス開口部33a、33bは図示しないフェイスダクトを介して、計器盤左右方向中央部の上方側に配置されているフェイス吹出口に接続され、この吹出口から運転席側および助手席側の乗員頭部に向けて空調空気を吹き出す。
【0037】
なお、フェイス開口部33a、33bは、平板状のフェイスドア34a、34bにより開閉される。このフェイスドア34a、34bは、フェイス開口部33a、33bの上流側に設置され、水平方向に配置された回動軸により回動自在に支持されている。
【0038】
次に、空調ケース21内で、フェイスドア34a、34bの車両後方側の部位にフット用通路導入部35a、35bが形成されている。このフット用通路導入部35a、35bには第1、第2空気混合部30a、30bから温度制御された空調空気が流入する。
【0039】
そして、フット用通路導入部35a、35bの空気下流側にフット用通路37a、37bが形成され、このフット用通路37a、37bの途中部位にフット開口部である前席用フット開口部38a、38bが形成されている。この前席用フット開口部38a、38bからの空調空気は図示しない前席用フットダクト、前席用フット吹出口を経て前席の運転席側および助手席側の乗員足元に吹き出す。
【0040】
また、フット用通路37a、37bの末端部には、フット開口部である後席用フット開口部39a、39bが形成され、図示しない後席用フットダクト、後席用フット吹出口を接続し、この後席用フット吹出口を経て後席の運転席側および助手席側の乗員足元に風を吹き出す。なお、このフット用通路導入部35a、35bの開閉は平板状のフット開閉部材であるフットドア36a、36bによって開閉される。このフットドア36a、36bは、フット用通路導入部35a、35bの近傍に設置され、水平方向に配置された回動軸により回動自在に支持されている。
【0041】
このうち、フェイスドア34aとフットドア36aには、駆動手段としてのサーボモータ40(図3参照)が連結され、デフロスタドア32a、32bには、駆動手段としてのサーボモータ41(図3参照)が連結されている。また、フェイスドア34bおよびフットドア36bには、駆動手段としてのサーボモータ42(図3参照)が連結されている。これにより、第1、および第2空気通路14a、14bとで独立した吹出モードの吹出制御ができるように構成している。なお、デフロスタドア32a、32bは一つのサーボモータ41の駆動によりデフロスタドア32a、32bが連動して開閉するようにしてある。
【0042】
次に、本発明の要部である温風バイパス通路43a、43bについて説明する。本実施形態の温風バイパス通路43a、43bは、運転席側および助手席側のフット吹出口より吹き出される温風の風量が最大となるように空調ケース21内に構成したものである。このため、空調ケース21において、ヒータコア23の下流側の壁面28に温風バイパス通路43a、43bを形成したものである。この温風バイパス通路43a、43bは、フット用通路導入部35a、35bおよびフットドア36a、36bを迂回してフット用通路37a、37bを介して前席用フット開口部38a、38bおよび後席用フット開口部39a、39bに温風を導くバイパス通路であって、フットドア36a、36bが開いているときに、ヒータコア23を通過した温風を直接フット用通路37a、37bに導くことで前席用フット開口部38a、38bおよび後席用フット開口部39a、39bに至る通風経路の通風抵抗が減少することにより暖房時のフットモードにおける温風の風量の増加を図って暖房能力の向上を高めたものである。
【0043】
そして、この温風バイパス通路43a、43bには、平板状の温風バイパス通路開閉部材である温風バイパスドア44a、44bを設け、温度調節手段である第1、および第2エアミックスドア26a、26bの開度に応じて開閉させるようにしてある。従って、この温風バイパスドア44a、44bには、駆動手段としてのサーボモータ45(図3参照)を連結させ、一つのサーボモータ45の駆動により、温風バイパスドア44a、44bが連動して温風バイパス通路43a、43bを開閉するようにしている。
【0044】
因みに、第1、および第2エアミックスドア26a、26bの開度が両方の第1、および第2冷風バイパス通路25a、25bを閉塞するときに、温風バイパス通路43a、43bを開き、いずれか一方の第1、および第2エアミックスドア26a、26bが開いたときに、温風バイパス通路43a、43bを閉塞するように後述する制御装置50により制御される。
【0045】
次に、本実施形態の制御系の構成について説明する。図3に示すように、空調装置を制御する制御装置50には、上記ポテンショメータ56a、56bの他に、車室内気温度を検出する内気温センサ51、外気温度を検出する外気温センサ52、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ53、蒸発器22を通過した直後の空気温度を検出する蒸発器後センサ54、およびヒータコア23内のエンジン冷却水温を検出する水温センサ55が電気的に接続されている。なお、これらのセンサ類は環境条件検出手段である。
【0046】
また、制御装置50には、操作部60からの操作信号も入力される。この操作部60には、運転席側の目標温度を設定する設定温度入力手段である運転席側温度設定器61aと、助手席側の目標温度を設定する助手席側温度設定器61bと、自動制御状態を設定するAUTOスイッチ62と、送風量設定手段である手動送風量切替えスイッチ63と、図示しない手動内外気切替えスイッチ、手動吹出口モード切替えスイッチ(DEF、FACE、FOOT、バイレベル(B/L)、フットデフ(F/D))等から構成されている。なお、この操作部60は、車室内前方に設けられたインストルメントパネル上に設置されている。
【0047】
なお、制御装置50は、内部に図示しないA/D変換器、マイクロコンピュータ等を備える周知のものであり、上記各センサ51〜55および各ポテンショメータ56a、56bからの信号は、上記A/D変換器によってA/D変換された後、上記マイクロコンピュータへ入力されるように構成されている。また、上記マイクロコンピュータは、図示しないCPU、ROM、RAM、スタンバイRAM、I/Oポート等を持つ周知のものであり、エンジンのイグニッションスイッチがオンされたときに、図示しないバッテリーから電源が供給される。
【0048】
次に、上記構成の本実施形態の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置は、周知のように、操作部60に設けられた各種操作スイッチからの操作信号および空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される制御装置50の出力信号により、駆動手段としてのサーボモータ27a、27b、40、41、42、45により各制御ドア部材26a、26b、32a、32b、34a、34b、36a、36b、44a、44bの回動位置が制御される。
【0049】
ここで、車室内への吹出空気温度の調整は、サーボモータ27a、27bにより、蒸発器22で冷却されて直接第1、第2冷風バイパス通路25a、25b側に流れる冷風と、ヒータコア23で加熱される温風とを第1、第2エアミックスドア26a、26bを回動させて風量割合を調節して行われる。そして、第1、第2空気混合部30a、30bで混合されたのち、吹出モードに応じて各開口部を介して車室内の運転席側および助手席側の所定の吹出口から吹き出される。
【0050】
ところで、本実施形態では、吹出モードのうち、乗員の足元に吹き出す、例えばフットモードにおいては、ヒータコア23の加熱量が最大となる回動位置に両方の第1、第2エアミックスドア26a、26bが操作される最大暖房条件に設定されたときに、制御装置50は、サーボモータ45を駆動させ温風バイパスドア44a、44bが連動して温風バイパス通路43a、43bを開放させるように制御している。なお、上記最大暖房条件とは、具体的に第1、第2エアミックスドア26a、26bが第1、第2冷風バイパス通路25a、25bを閉塞する位置にあるときである。
【0051】
これにより、ヒータコア23を通過した温風を温風バイパス通路43a、43bを通してフット用通路37a、37bに導くことで、フット用通路37a、37bには、第1、第2空気混合部30a、30bおよび温風バイパス通路43a、43bから温風が導かれる。従って、前席用フット開口部38a、38bおよび後席用フット開口部39a、39bに至る通風経路の通風抵抗が減少することにより風量が増加し、かつ暖房能力を増加できる。
【0052】
なお、いずれか一方の第1、第2空気通路14a、14b側の加熱量が最大未満のとき、すなわち、いずれか一方の第1、第2エアミックスドア26a、26bが第1、第2冷風バイパス通路25a、25bを開いて、乗員が所望する設定温度に達するような吹出制御が行われているときは、温風バイパス通路43a、43bを閉塞させている。これにより、吹出制御が行われている側への快適性を損なうことはない。
【0053】
以上の一実施形態の車両用空調装置によれば、左右独立温度制御方式の空調ユニット20とを備える車両用空調装置では、一般的に、例えば左座席側と右座席側とが独立して吹出制御するために、少なくとも空調ユニット20の両側面側に各制御ドア部材26a、26b、32a、32b、34a、34b、36a、36b、44a、44bおよびこれらを駆動するための駆動手段としてのサーボモータ27a、27b、40、41、42、45を左座席側と右座席側とにそれぞれ必要であるとともに、これらの駆動手段の取付け空間も必要となる。さらに、車室内の乗員空間を拡大するために空調ユニット20の小型化の要求が強くなっている。
【0054】
ところで、要求に応じて空調ユニット20を小型化すれば、第1および第2空気通路14a、14bの通風面積が狭まり通風抵抗が増加し風量低下を招いてしまう。そこで、本発明は、ヒータコア23からフットドア36a、36bを迂回して前席用フット開口部38a、38b、および後席用フット開口部39a、39bに通ずる温風バイパス通路43a、43bを設け、加熱量が最大となる位置に両方の第1、第2エアミックスドア26a、26bが操作される最大暖房条件が設定されたときに、ヒータコア23を通過した温風を温風バイパス通路43a、43bを通して前席用フット開口部38a、38b、および後席用フット開口部39a、39bに導くことにより、フットドア36a、36bを通過する温風と温風バイパス通路43a、43bとを通過する温風が前席用フット開口部38a、38b、および後席用フット開口部39a、39bに導かれ、通路面積拡大により通風抵抗が減少して風量が増大する。これにより、ヒータコア23の加熱量を最大限発揮できるため暖房能力の向上が図れる。
【0055】
また、ヒータコア23を通過した温風を温風バイパス通路43a、43bを通して前席用フット開口部38a、38b、および後席用フット開口部39a、39bに導くことを、両方の第1、第2エアミックスドア26a、26bが操作される最大暖房条件が設定されたときとすることにより、いずれか一方の第1および第2空気通路14a、14b側の加熱量が最大未満のとき、例えば乗員が所望する設定温度に達するような吹出制御が行われているときは、吹出制御を優先させることで快適性を損なうことはない。
【0056】
従って、暖房運転の開始時など、例えば左座席側と右座席側と両方が最大暖房条件のときに、ヒータコア23を通過した温風を温風バイパス通路43a、43bを通して前席用フット開口部38a、38b、および後席用フット開口部39a、39bに導くことで暖房の立ち上がり特性が向上する。
【0057】
また、温風バイパスドア44a、44bを一つのサーボモータ45により駆動させることにより、サーボモータ45の取付け空間が縮小されるとともに、部品点数が低減でき低コスト化が図れる。
【0058】
また、温度調節手段として、第1、第2エアミックスドア26a、26bで構成したことにより、この第1、第2エアミックスドア26a、26bによって冷風と温風との風量割合を調節する空気通路の通風系においては、冷風と温風を混合するために各開口部までに至る通風系が長くなるために通風抵抗も増加する。さらに、暖房時においてはヒータコア23に空調空気を通過させることで、冷房時のヒータコア23をバイパスする冷風よりも大幅に通風抵抗が増大する。そこで、温風バイパス通路43a、43bを別に設けることで、通風系の通風面積が増加することで暖房時の風量を増大させ、かつ暖房能力の向上が図れる。
【0059】
(他の実施形態)
以上の一実施形態では、温風バイパスドア44a、44bを第1、第2空気通路14a、14bそれぞれに別体に設けて開閉を連動するように構成したが、温風バイパス通路43a、43bを近接させて形成し、温風バイパスドア44a、44bを一体で形成させても良い。
【0060】
また、以上の実施形態では、ヒータコア23による空調空気の加熱量を調整して空気温度を調整する温度調整手段として、冷風と温風の風量割合を調整する第1、第2エアミックスドア26a、26bを用いているが、この第1、第2エアミックスドア26a、26bの代わりに、ヒータコア23に流入する温水の流量または温水の温度を調整する温水弁を用いて、この温水弁の温水流量(または温水温度)の調整作用により空気温度を調整するタイプの空調装置にも同様に本発明を適用できる。
【0061】
また、以上の実施形態では、空調ユニット20内に蒸発器22を配設しているが、この冷房用熱交換器を持たないタイプの空調装置にも同様に本発明を適用できることはもちろんである。また、以上の実施形態における後席用フット開口部39a、39bを廃止した空調装置にも同様に本発明を適用できることはいうまでもない。
【0062】
さらに、以上の実施形態では、運転席側および助手席側を独立して空調空気を吹出制御をする左右独立制御方式の空調ユニット20について説明したが、これに限らず、前席側および後席側を独立して吹出制御する空調装置にも同様に本発明を適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における空調ユニット10の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における送風ユニット1、空調ユニット10の全体構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態における制御装置50の制御系を示すシステム図である。
【符号の説明】
14a…第1空気通路
14b…第2空気通路
20…空調ユニット
21…空調ケース
23…ヒータコア(加熱手段)
25a…第1冷風バイパス通路(冷風バイパス通路)
25b…第2冷風バイパス通路(冷風バイパス通路)
26a…第1エアミックスドア(温度調節手段)
26b…第1エアミックスドア(温度調節手段)
29a、29b…温風通路
36a、36b…フットドア(フット開閉部材)
38a、38b…前席用フット開口部(フット開口部)
39a、39b…後席用フット開口部(フット開口部)
43a、43b…温風バイパス
44a、44b…温風バイパスドア(温風バイパス通路開閉部材)
45…サーボモータ(駆動手段)
Claims (2)
- 車室内の一方側の吹出口に通ずる第1空気通路(14a)と、車室内の他方側の吹出口に通ずる第2空気通路(14b)とを形成する空調ケース(21)と、
エンジン冷却水を熱源として前記空調ケース(21)に流れる空調空気を加熱する加熱手段(23)と、
前記第1空気通路(14a)および前記第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、前記加熱手段(23)による空調空気の加熱量を調節して空気温度を調節する温度調節手段(26a、26b)と、
前記加熱手段(23)の下流側の前記第1空気通路(14a)および前記第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、車室内乗員の足元に向けて空調空気を吹き出すフット吹出口に接続されるフット開口部(38a、38b、39a、39b)と、
前記フット開口部(38a、38b、39a、39b)の上流側に配設され、前記フット開口部(38a、38b、39a、39b)を開閉するフット開閉部材(36a、36b)と、
前記第1空気通路(14a)および前記第2空気通路(14b)内にそれぞれ配設され、前記フット開閉部材(36a、36b)を迂回して、前記加熱手段(23)から前記フット開口部(38a、38b、39a、39b)に通ずる温風バイパス通路(43a、43b)と、
前記温風バイパス通路(43a、43b)のそれぞれに配設され、前記温風バイパス通路(43a、43b)を、連動して開閉する温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)と、
前記第1空気通路(14a)と前記第2空気通路(14b)とで独立して空調空気を吹出制御する左右独立温度制御方式の空調ユニット(20)とを備える車両用空調装置において、
前記温風バイパス通路開閉部材(44a、44b)は、一つの駆動手段(45)によって駆動されており、かつ両方の前記温度調節手段(26a、26b)が最大暖房条件に設定されたときに、両方の前記温風バイパス通路(43a、43b)を開き、また、いずれか一方の前記温度調節手段(26a、26b)が最大暖房条件に設定されたときは、両方の前記温風バイパス通路(43a、43b)を閉じるように構成されたことを特徴とする車両用空調装置。 - 前記空調ケース(21)には、前記加熱手段(23)を通過して温風が流れる温風通路(29a、29b)と前記加熱手段(23)をバイパスして冷風が流れる冷風バイパス通路(25a、25b)とを前記第1空気通路(14a)および前記第2空気通路(14b)内にそれぞれ形成させるとともに、
前記温度調節手段(26a、26b)は、前記温風通路(29a、29b)を通過する風量と前記冷風バイパス通路(25a、25b)を通過する風量との風量割合を調節するエアミックスドア(26a、26b)により構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
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