JP3994317B2 - 車両用スイッチの故障診断装置及び故障診断方法 - Google Patents

車両用スイッチの故障診断装置及び故障診断方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキペダルスイッチなどの車両用スイッチの故障を判断する故障診断装置及び故障診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な車両では、ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキペダルスイッチがこれを検出し、この検出情報を受けてブレーキランプが点灯し、減速することを後続の車両の運転者へ視覚的に報知する。また近年では、ブレーキペダルスイッチからの情報は、エンジンやATやABSなどの制御にも広く利用されている。このような場合、ブレーキペダルスイッチが故障すると、エンジン等に対して適正な制御が行われない恐れが生じる。このため、ブレーキペダルスイッチをメインスイッチと補助スイッチとから構成し、補助スイッチからの情報に基づいてブレーキペダルスイッチが故障しているか否かを判断する故障診断装置が使用されている。この種の故障診断装置では、メインスイッチが故障していると判断された場合、車室内の警告ランプを点灯させることによって運転者にブレーキペダルスイッチの故障を報知すると共に、エンジン等の制御にブレーキペダルスイッチ(メインスイッチ)からの情報を使用しないようにして、メインスイッチの故障に起因する不都合を早期に解消させている。
【0003】
故障診断装置としては、例えば、図10に示すように、ブレーキペダルが初期位置から踏み込まれて移動して第1検出位置に達したときに出力状態が「0」から「1」へ切り替わる補助スイッチと、ブレーキペダルがさらに移動して第2検出位置に達したときに出力状態が「0」から「1」へ切り替わるメインスイッチと、を備えたものがある。メインスイッチの故障を判断する具体的な方法としては、補助スイッチの状態が「0」から「1」へ切り替わったときにタイマをスタートさせ、その後所定時間が経過する間にメインスイッチの状態が「0」から「1」に切り替わらないときに故障と判断する方法(以下、時間に基づく診断方法と称する)や、図11に示すように、メインスイッチの状態が「0」から「1」に切り替わることなく補助スイッチの状態が「0」から「1」へ切り替わったときにその回数をカウンタによって積算し、その積算値が所定値に達したときに故障と判断する方法(以下、回数に基づく診断方法と称する)がある。
【0004】
また、ブレーキペダルの可動領域のうち初期位置から所定の範囲には、制動機能の働かないいわゆる遊びの領域が設けられており、ブレーキランプがメインスイッチからの情報に基づいて点灯することから、第2検出位置は制動機能が作動する直前の遊びの領域に設定される場合が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、運転者がブレーキペダルに足を軽く置いたまま踏み込むことなく車両走行を続けると、車両の振動等によってブレーキペダル上の足が振動し、これに起因して、ブレーキペダルが、第1検出位置に達した後、第2検出位置に達することなく、第1検出位置の前後を短時間に往復してしまう可能性がある。ブレーキペダルが第1検出位置の前後を往復すると、メインスイッチの状態が「0」に維持されたまま補助スイッチの状態が「0」と「1」との間で切り替わる。
【0006】
ブレーキペダルがこのような特別な挙動を示した場合、上記従来の故障診断装置の時間に基づく診断方法や回数に基づく診断方法では、これに起因してブレーキペダルスイッチが故障であると判断されてしまう。すなわち、時間に基づく診断方法では、メインスイッチ及び補助スイッチの状態が共に「0」の状態の累積時間が所定時間に達すると故障と判断される。また、回数に基づく診断方法では、ブレーキペダルが第2検出位置に達しない状態で第1検出位置の前後を往復する度にその回数が積算され、回数の積算値が所定値に達したときに故障と判断される。
【0007】
このように、従来の故障診断装置では、ブレーキペダルの挙動によっては、メインスイッチが正常であるにもかかわらず、誤って故障と判断されてしまう可能性が生じる。
【0008】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、使用状態に起因する誤診断の可能性が軽減され、高い信頼性が得られる車両用スイッチの故障診断装置及び故障診断方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用スイッチの故障診断装置は、メインスイッチと、補助スイッチと、時間積算手段と、回数積算手段と、故障判断手段と、を備えている。
【0010】
メインスイッチは、車両に搭載され初期位置から所定方向へ移動自在な可動部材が第1の所定位置に達しているか否かを検出する。補助スイッチは、可動部材が初期位置と第1の所定位置との間の第2の所定位置に達しているか否かを検出する。時間積算手段は、可動部材が第2の所定位置に達していることを補助スイッチが検出したときに時間の積算を開始し、この時間の積算値が第1の所定値に達したとき、可動部材が第1の所定位置に達していることをメインスイッチが検出したとき、又は可動部材が第2の所定位置に達していないことを補助スイッチが検出したときに、時間の積算を停止してその時間の積算値をクリアする。回数積算手段は、時間の積算値が第1の所定値に達した回数を積算する。故障判断手段は、回数積算手段による回数の積算値が第2の所定値に達したときに、メインスイッチが故障していると判断する。
【0011】
上記構成では、可動部材が初期位置から第1の所定位置まで移動すると、まず可動部材が第2の所定位置に達したときに、補助スイッチが可動部材を検出し、時間積算手段が時間の積算を開始する。
【0012】
そして、メインスイッチが正常であれば、可動部材が第1の所定位置に達したときにメインスイッチがこれを検出し、時間積算手段は時間の積算を停止してそれまでの積算値をクリアする。ここで、時間積算手段に設定される第1の所定値を、通常の使用状態において可動部材が第2の所定位置から第1の所定位置まで移動するのに要する時間よりも長く設定しておけば、時間積算手段は、第1の所定値に達する前に時間の積算を停止すると共にそれまでの時間の積算値をクリアし、回数積算手段は回数の積算を行わない。従って、故障判断手段は、メインスイッチが故障していない、すなわち正常であると判断する。
【0013】
一方、メインスイッチが故障していれば、可動部材が第1の所定位置に達してもメインスイッチはこれを検出せず、時間積算手段によって時間の積算が継続される。そして、時間の積算値が第1の所定値に達すると、時間積算手段は積算を停止し時間の積算値をクリアし、回数積算手段は回数の積算を行う。可動部材の移動が繰り返されると、時間積算手段による時間の積算値が第1の所定値に達する度に回数積算手段による回数の積算が繰り返され、回数の積算値が増大して第2の所定値に達したとき、故障判断手段は、メインスイッチが故障していると判断する。
【0014】
また、可動部材が、第2の所定位置に達した後、第1の所定位置に達することなく、第2の所定位置の前後を短時間に往復するような特別な挙動を示した場合、可動部材が第2の所定位置に達したときに、補助スイッチが可動部材を検出し、時間積算手段が時間の積算を開始するが、この時間の積算値が第1の所定値に達する前に可動部材が第2の所定位置よりも初期位置側に戻ってしまうことが多く、このため、時間の積算はその積算値が第1の所定値に達する前に停止されクリアされる。従って、回数積算手段による回数の積算は行われず、故障判断手段は、メインスイッチが故障していると誤って判断してしまうことはない。なお、可動部材が第1の所定位置と第2の所定位置との間に一時的に維持され、可動部材が第2の所定位置よりも初期位置側に戻る前に時間の積算値が単発的に第1の所定値に達してしまった場合であっても、回数積算手段による回数の積算が1回行われるのみであり、回数の積算値が第2の所定値に達しない限り、メインスイッチが故障していると故障判断手段が誤って判断してしまうことはない。
【0015】
このように、本発明によれば、可動部材が、第2の所定位置に達した後、第1の所定位置に達することなく、第2の所定位置の前後を短時間に往復するような例外的な挙動を示した場合であっても、メインスイッチが誤って故障と判断されることが回避される。従って、可動部材の使用状態に起因する誤診断の可能性が軽減され、高い信頼性を得ることができる。
【0016】
上記構成において、回数積算手段を、可動部材が前記第1の所定位置に達したことをメインスイッチが検出したときに、回数の積算値をクリアするように構成しても良い。
【0017】
上記構成では、回数の積算が誤って行われてしまった場合であっても、メインスイッチが正常であると判断されたときにそれまでの回数の積算値がクリアされるので、故障判断手段はより的確な判断を行うことができ、信頼性が一段と向上する。
【0018】
また、可動部材は、ブレーキペダルであっても良い。
【0019】
また、回数積算手段による回数の積算値が第2の所定値に達した回数をさらに積算し、その積算値が所定値に達したときにメインスイッチが故障していると故障判断手段が判断するように構成しても良い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をブレーキペダルスイッチの故障診断装置に適用した一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図3は本実施形態に係るブレーキペダルスイッチの故障診断装置の模式図であり、図1はブレーキペダルの初期状態を、図2はブレーキペダルスイッチの中間状態を、図3はブレーキペダルスイッチの完全切替状態をそれぞれ示している。図4は図1のECMの一部を模式的に示すブロック構成図、図5は本実施形態の故障診断プログラムの制御を示すフローチャート、図6は図1〜図3の各状態におけるブレーキペダルスイッチの状態とブレーキペダルの位置との関係図、図7はメインスイッチが正常である場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャート、図8はメインスイッチが故障している場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャート、図9はブレーキペダルが特別な挙動を示した場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャートである。
【0022】
図1に示すように、ブレーキペダル1の故障診断装置3は、ブレーキペダルスイッチ5と、ECM(Electric Control Module)7とを備えている。
【0023】
可動部材としてのブレーキペダル1は、運転席の前方下部に配置され、その上端部は車体に対して回転自在に連結されている。ブレーキペダル1の下部は、運転者の足に近接した初期位置から運転者の足によって踏み込まれて車体前方へ移動する。このブレーキペダル1の初期位置は、ストッパ(図示外)とリターンスプリング(図示外)とによって規制されている。すなわち、ブレーキペダル1はリターンスプリングによって初期位置に向かって付勢され、初期位置よりも車体後方へのブレーキペダル1の回転はストッパによって阻止されている。
【0024】
リターンスプリングの付勢力に抗してブレーキペダル1が踏み込まれると、車両の制動装置(図示外)が作動する。なお、ブレーキペダル1の可動領域のうち初期位置から所定の範囲には、制動装置の作動しないいわゆる遊びの領域が設けられている。
【0025】
ブレーキペダルスイッチ5は、補助スイッチSw1とメインスイッチSw2とを備えている。補助スイッチSw1は、ブレーキペダル1が初期位置から踏み込まれて第1検出位置(第2の所定位置)に達していることを検出してECM7へ出力する。メインスイッチSw2は、ブレーキペダル1が第1検出位置からさらに踏み込まれて第2検出位置(第1の所定位置)に達していることを検出してECM7へ出力する。ブレーキランプ(図示外)がメインスイッチSw2からの情報に基づいて点灯することから、第2検出位置は制動機能が作動する直前の遊びの領域に設定されている。また、補助スイッチSw1はメインスイッチSw2の故障を判断するためのものであり、且つブレーキペダルスイッチ5は全体として小型である方が好ましい等の理由から、第1検出位置と第2検出位置とは相互に近接して設定されている。
【0026】
次に、ブレーキペダルスイッチ5について、さらに詳しく説明する。
【0027】
補助スイッチSw1は、2つの接点13,15と、両接点13,15間を開閉自在に電気的に接続する接続板17と、を備えている。一方の接点13はECM7に接続され、他方の接点15はアースされている。両接点13,15間が接続板17によって接続された状態(補助スイッチSw1が閉じた状態)における補助スイッチSw1からECM7への出力状態は「0」であり、接続板17が両接点13,15から離れた状態(補助スイッチSw1が開いた状態)における補助スイッチSw1からECM7への出力状態は「1」である。
【0028】
メインスイッチSw2は、2つの接点19,21と、両接点19,21間を開閉自在に電気的に接続する接続板23と、を備えている。一方の接点19はECM7に接続され、他方の接点21はバッテリの正電極25に接続されている。両接点19,21間が接続板23によって接続された状態(メインスイッチSw2が閉じた状態)におけるメインスイッチSw2からECM7への出力状態は「1」であり、接続板23が両接点19,21から離れた状態(メインスイッチSw2が開いた状態)におけるメインスイッチSw2からECM7への出力状態は「0」である。
【0029】
補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の接点13,15,19,21と接続板17,23とは、ブレーキペダルスイッチ5のハウジング29内に収容され、接続板17,23同士はロッド27によって連結支持されている。ロッド27は、ハウジングに対してスライド移動自在に支持され、接続板17からブレーキペダル1に向かってハウジング外へ延びている。ロッド27の先端はブレーキペダル1に対向し、踏み込まれて移動するブレーキペダル1によって押されて移動する。このロッド27の移動に伴って、接続板17,23が移動する。
【0030】
図1に示すように、初期状態のブレーキペダルスイッチ5では、ロッド27がリターンスプリング(図示外)によってハウジングから最も突出した位置(図1に示す)に付勢され、補助スイッチSw1が閉じて「0」を出力し、メインスイッチSw2が開いて「0」を出力する。ブレーキペダル1が踏み込まれて初期位置から第1検出位置まで移動する間では、ロッド27の先端はブレーキペダル1から離れており、ブレーキペダルスイッチ5は初期状態に維持される。
【0031】
ブレーキペダル1が踏み込まれて第1検出位置に達すると、ブレーキペダル1がロッド27の先端に当接して押圧し、ロッド27が図1中右方向へ移動し、ブレーキペダルスイッチ5が図2に示すような中間状態へ移行する。中間状態のブレーキペダルスイッチ5では、補助スイッチSw1が開いて「1」を出力し、メインスイッチSw2が開いて「0」を出力する。
【0032】
ブレーキペダル1がさらに踏み込まれて第2検出位置に達すると、ブレーキペダルスイッチ5が図3に示すような完全切替状態へ移行する。完全切替状態のブレーキペダルスイッチ5では、補助スイッチSw1が開いて「1」を出力し、メインスイッチSw2が閉じて「1」を出力する。
【0033】
このように、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態は、ブレーキペダル1の位置に応じて変更される。すなわち、図6に示すように、ブレーキペダル1が初期位置から第1検出位置に達する迄の状態A(図1に示す状態)では、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態は共に「0」であり、ブレーキペダル1が第1検出位置に達した時点で補助スイッチSw1の出力状態のみが「1」に切り替わる。ブレーキペダル1が第1検出位置から第2検出位置に達する迄の状態B(図2に示す状態)では、補助スイッチSw1の出力状態は「1」、メインスイッチSw2の出力状態は「0」であり、ブレーキペダル1が第2検出位置に達した時点でメインスイッチSw2の出力状態も「1」に切り替わる。ブレーキペダル1が第2検出位置に達した後の状態C(図3に示す状態)では、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態は共に「1」である。
【0034】
次に、ECM7について、さらに詳しく説明する。
【0035】
図4に示すように、ECM7は、時間積算手段を構成するタイマ制御部31及びタイマ33と、回数積算手段を構成するカウンタ制御部35及びエラーカウンタ37と、故障判断手段としての故障判断部39と、を備えている。
【0036】
タイマ制御部31は、ブレーキペダル1が初期位置から移動して第1検出位置に達していることを補助スイッチSw1が検出したとき(補助スイッチSw1の出力状態が「0」から「1」に切り替わったとき)にタイマ33を制御して時間の積算を開始する。そして、この時間の積算値(タイマカウント値)Tiが予め設定されたタイマ規定値(第1の所定値)Tpに達したとき、ブレーキペダル1が第2検出位置に達していることをメインスイッチSw2が検出したとき(メインスイッチSw2の出力状態が「0」から「1」に切り替わったとき)、又はブレーキペダル1が第1検出位置に達していないことを補助スイッチSw1が検出したとき(補助スイッチSw1の出力状態が「0」に戻ったとき)の何れかの場合に、タイマ33による時間の積算を停止すると共にタイマカウント値Tiをクリアする。タイマ規定値Tpは、通常の車両走行時において運転者がブレーキを利かすためブレーキペダル1を踏み込んだときに、ブレーキペダル1が第1検出位置から第2検出位置まで移動するのに要する時間よりも長くなるように設定されている。
【0037】
カウンタ制御部35は、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する毎に、エラーカウンタ37による回数の積算値(エラーカウント値)Ecを積算させる。また、カウンタ制御部35は、ブレーキペダル1が第2検出位置に達したことをメインスイッチSw2が検出したとき(メインスイッチSw2の出力状態が「0」から「1」に切り替わったとき)に、エラーカウント値Ecをクリアする。
【0038】
故障判断部39は、エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値(第2の所定値)Epに達したときに、メインスイッチSw2が故障していると判断する。メインスイッチSw2が故障していると判断されると、ECM7は、車室内の警告ランプ(図示外)を点灯させることによって運転者にブレーキペダルスイッチ5のメインスイッチSw2の故障を報知すると共に、エンジンやAT(Automatic Transmission)やABS(Antilock Brake System)などの制御にメインスイッチSw2からの情報を使用することを一時的に停止する。
【0039】
次に、ECM7における故障診断プログラムの制御について、図5のフローチャートに基づいてさらに詳しく説明する。
【0040】
キーシリンダにキーが差し込まれてアクセサリ位置へ回されることにより、タイマ制御部31、タイマ33、カウンタ制御部35、エラーカウンタ37、及び故障判断部39がONされて、ステップS1へ進む。
【0041】
ステップS1では、カウンタ制御部35がエラーカウンタ37のエラーカウント値Ecを0にリセットすると共に、タイマ制御部31がタイマ33のタイマカウント値Tiを0にリセットし、ステップS2へ進む。
【0042】
ステップS2では、故障判断部39が、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態が共に「0」であるか否かを判断する。すなわち、本制御による判断開始条件としてブレーキペダル1が踏み込まれていないことを要求し、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の双方が「0」のとき(ブレーキペダル1が踏み込まれていないとき)に、ステップS3へ進んで本制御による判断を開始する。
【0043】
一方、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の一方が「1」のとき(ブレーキペダル1が既に踏み込まれているとき)は、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の双方が「0」に変わるまで(ブレーキペダル1の踏み込みが解除されるまで)本ステップの判断を繰り返す。
【0044】
ステップS3では、故障判断部39が、補助スイッチSw1の出力状態とメインスイッチSw2の出力状態とが相違しているか否かを判断する。相違していない(等しい)ときは、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態が共に「0」であり、ブレーキペダル1が未だ踏み込まれていないと判断されるため、ステップS2へ戻る。
【0045】
一方、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態が相違しているときは、補助スイッチSw1の出力状態が「1」であり、ブレーキペダル1が踏み込まれて第1検出位置に達したと判断されるため、ステップS4へ進む。
【0046】
ステップS4では、タイマ制御部31がタイマ33を制御してタイマカウント値Tiの積算を開始し、ステップS5へ進む。
【0047】
ステップS5では、故障判断部39が、タイマカウント値Tiとタイマ規定値Tpとを比較し、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpよりも小さいときは、ステップS6へ進む。
【0048】
ステップS6では、故障判断部39が、補助スイッチSw1の出力状態とメインスイッチSw2の出力状態とが相違しているか否かを判断する。相違しているときは、補助スイッチSw1の出力状態が「1」で且つメインスイッチSw2の出力状態が「0」である。この場合、ブレーキペダル1が第1検出位置と第2検出位置との間に存在しているためメインスイッチSw2の出力状態が「0」である可能性と、ブレーキペダル1は第2検出位置に達しているがメインスイッチSw2が故障しているためメインスイッチSw2の出力状態が「0」である可能性とが混在する。このため、直ぐにメインスイッチSw2が故障していると判断せず、ステップS5に戻る。すなわち、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpより小さく、補助スイッチSw1の出力状態が「1」で且つメインスイッチSw2の出力状態が「0」である間は、ステップS5及びステップS6の制御を繰り返す。
【0049】
タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する前に、メインスイッチSw2の出力状態が「1」に切り替わったとき(両スイッチSw1,Sw2の状態が共に「1」のとき)、又は補助スイッチSw1の出力状態が「0」に切り替わったとき(両スイッチSw1,Sw2の状態が共に「0」のとき)は、ステップS6からステップS7へ進む。
【0050】
ステップS7では、タイマ制御部31が、タイマ33によるタイマカウント値Tiの積算を停止し、タイマカウント値Tiを0にリセットして、ステップS8へ進む。
【0051】
ステップS8では、故障判断部39が、補助スイッチSw1及びメインスイッチSw2の出力状態が共に「0」であるか否かを判断する。両スイッチSw1,Sw2が共に「0」ではないときは、ステップS6での判断を受けて、両スイッチSw1,Sw2の状態が共に「1」であると判断される。この場合、図7に示すように、ブレーキペダルスイッチ5では、補助スイッチSw1が「0」から「1」に切り替わった後、タイマ規定値Tpが経過する前にメインスイッチSw2が「0」から「1」に切り替わっていることから、メインスイッチSw2が正常に機能していると判断され、ステップS9へ進む。
【0052】
ステップS9では、カウンタ制御部35が、エラーカウンタ37のエラーカウント値Ecを0にリセットし、ステップS2へ戻り、本制御を繰り返す。
【0053】
ステップS8において、両スイッチSw1,Sw2が共に「0」であると判断されたときは、図9に示すように、ブレーキペダルスイッチ5では、補助スイッチSw1が「0」から「1」に切り替わった後、タイマ規定値Tpが経過する前に、メインスイッチSw2が「0」から「1」に切り替わることなく補助スイッチSw1が「0」から「1」に切り替わっていることから、ブレーキペダル1が十分に踏み込まれずに第1検出位置に達した後第2検出位置に達することなく第1検出位置よりも初期位置側に移動してしまった可能性が極めて高いと判断される。従って、メインスイッチSw2が正常に機能しているか故障しているかの判断を正確に行うことができないため、エラーカウント値Ecをその時の状態に維持したままステップS2へ戻り、本制御を繰り返す。
【0054】
ステップS5において、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達したときは、図8に示すように、ブレーキペダルスイッチ5では、補助スイッチSw1が「0」から「1」に切り替わった後、タイマ規定値Tpが経過しても、補助スイッチSw1が「1」にメインスイッチSw2が「0」にそれぞれ維持されていることから、ブレーキペダル1が十分に踏み込まれて第2検出位置に達してもメインスイッチSw2が「1」に切り替わらない、すなわちメインスイッチSw2が故障している可能性があると判断され、ステップS10へ進む。
【0055】
ステップS10では、タイマ制御部31が、タイマ33によるタイマカウント値Tiの積算を停止し、タイマカウント値Tiを0にリセットして、ステップS11へ進む。
【0056】
ステップS11では、カウンタ制御部35が、エラーカウンタ37のエラーカウント値Ecに1を加算し、ステップS12へ進む。
【0057】
ステップS12では、故障判断部39が、エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値Ep以上か否かを判断する。エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値Ep以上のときは、メインスイッチSw2が故障していると判断し、エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値Ep未満のときは、ステップS2へ戻って本制御を繰り返す。
【0058】
以上のように、本実施形態では、運転者がブレーキを利かすためブレーキペダル1を踏み込み、ブレーキペダル1が移動して第1検出位置に達すると、補助スイッチSw1がブレーキペダル1を検出し(補助スイッチSw1が「0」から「1」に切り替わり)、タイマ33がタイマカウント値Tiの積算を開始する。
【0059】
メインスイッチSw2が正常であれば、図7に示すように、ブレーキペダル1が十分に踏み込まれて第2検出位置に達したときにメインスイッチSw2がこれを検出し(メインスイッチSw2が「0」から「1」に切り替わり)、タイマ制御部31はタイマカウント値Tiの積算を停止しタイマカウント値Tiを0にリセットする。ここで、タイマ制御部31に設定されるタイマ規定値Tpは、通常の車両走行時において運転者がブレーキを利かすためブレーキペダル1を踏み込んだときにブレーキペダル1が第1検出位置から第2検出位置まで移動するのに要する時間よりも長くなるように設定されているため、タイマ制御部31は、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する前にタイマカウント値Tiの積算を停止してこれを0にリセットし、カウンタ制御部35は、エラーカウント値Ecの積算を行わない。従って、故障判断部39は、メインスイッチSw2が故障していない、すなわち正常であると判断する。
【0060】
一方、メインスイッチSw2が故障していれば、図8に示すように、ブレーキペダル1が第2検出位置に達してもメインスイッチSw2はこれを検出せず(メインスイッチSw2が「0」のまま維持され)、タイマ制御部31はタイマカウント値Tiの積算を継続させる。そして、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達すると、タイマ制御部31はタイマカウント値Tiの積算を停止して0にリセットし、カウンタ制御部35は、エラーカウント値Ecの積算を行う。ブレーキペダル1の移動が繰り返されると、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する度にエラーカウント値Ecの積算が繰り返され、エラーカウント値Ecが増大してエラーカウント規定値Epに達したとき、故障判断部39は、メインスイッチSw2が故障していると判断する。
【0061】
また、例えば、運転者がブレーキペダル1に足を軽く置いたまま踏み込むことなく車両走行を続けると、車両の振動等によってブレーキペダル1上の足が振動し、これに起因して、ブレーキペダル1が、第1検出位置に達した後、第2検出位置に達することなく、第1検出位置の前後を短時間に往復するような特別な挙動を示す場合がある。このとき、ブレーキペダルスイッチ5は、図1に示す初期状態と図2に示す中間状態とを繰り返し、図9に示すように、メインスイッチSw2の状態が「0」に維持されたまま補助スイッチSw1の状態が「0」と「1」との間で切り替わる。補助スイッチSw1が「1」に切り替わったときに、タイマ制御部31がタイマカウント値Tiの積算を開始するが、殆どの場合、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する前にブレーキペダル1が第1検出位置よりも初期位置側に戻ってしまう(補助スイッチSw1が「0」に戻ってしまう)ため、タイマカウント値Tiがタイマ規定値Tpに達する前にその積算が停止され0にリセットされる。従って、カウンタ制御部35によるエラーカウント値Ecの積算は行われず、故障判断部39は、メインスイッチSw2が故障していると誤って判断してしまうことはない。なお、ブレーキペダル1が第2検出位置と第1検出位置との間に一時的に維持され、補助スイッチSw1が「0」に戻る前に、タイマカウント値Tiが単発的にタイマ規定値Tpに達してしまった場合であっても、カウンタ制御部35によるエラーカウント値Ecの積算が1回行われるのみであり、エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値Epに達しない限り、メインスイッチSw2が故障していると故障判断部39が誤って判断してしまうことはない。
【0062】
このように、本発明によれば、ブレーキペダル1が、第1検出位置に達した後、第2検出位置に達することなく、第1検出位置の前後を短時間に往復するような例外的な挙動を示した場合であっても、メインスイッチSw2が故障していると誤って判断されることが回避される。従って、ブレーキペダル1の使用状態に起因する誤診断の可能性が軽減され、高い信頼性を得ることができる。
【0063】
また、カウンタ制御部35は、ブレーキペダル1が第2検出位置に達したことをメインスイッチSw2が検出したときに、エラーカウント値Ecを0にリセットする。従って、エラーカウント値Ecの積算が誤って行われてしまった場合であっても、メインスイッチSw2が正常であると判断されたときにそれまでのエラーカウント値Ecがクリアされるので、故障判断部39はより的確な判断を行うことができ、信頼性が一段と向上する。
【0064】
また、エラーカウント値Ecがエラーカウント規定値Epに達した回数を積算するカウンタをさらに設け、その積算値が所定値に達したときにメインスイッチSw2が故障していると故障判断部39が判断するように構成しても良い。
【0065】
さらに、本実施形態では、本発明をブレーキペダルスイッチに適用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアコンスイッチやクラッチスイッチ等のような可動部材を検出するための車両用の様々なスイッチに適用することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、可動部材が、第2の所定位置に達した後、第1の所定位置に達することなく、第2の所定位置の前後を短時間に往復するような例外的な挙動を示した場合であっても、メインスイッチが誤って故障と判断されることが回避される。従って、可動部材の使用状態に起因する誤診断の可能性が軽減され、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る故障診断装置においてブレーキペダルスイッチの初期状態を示した模式図である。
【図2】図1の故障診断装置においてブレーキペダルスイッチの中間状態を示した模式図である。
【図3】図1の故障診断装置においてブレーキペダルスイッチの完全切替状態を示した模式図である。
【図4】図1のECMの一部を模式的に示すブロック構成図である。
【図5】本実施形態の故障診断プログラムの制御を示すフローチャートである。
【図6】図1〜図3の各状態におけるブレーキペダルスイッチの状態とブレーキペダルの位置との関係図である。
【図7】メインスイッチが正常である場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャートである。
【図8】メインスイッチが故障している場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャートである。
【図9】ブレーキペダルが特別な挙動を示した場合のブレーキペダルスイッチ及びエラーカウンタの状態を示すタイムチャートである。
【図10】従来のブレーキペダルスイッチの状態とブレーキペダルの位置との関係図である。
【図11】ブレーキペダルの特別な挙動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル(可動部材)
3 故障診断装置
5 ブレーキペダルスイッチ(車両用スイッチ)
7 ECM
31 タイマ制御部(時間積算手段)
33 タイマ(時間積算手段)
35 カウンタ制御部(回数積算手段)
37 エラーカウンタ(回数積算手段)
39 故障判断部(故障判断手段)
Sw1 補助スイッチ
Sw2 メインスイッチ
Ti タイマカウント値(時間の積算値)
Tp タイマ規定値(第1の所定値)
Ec エラーカウント値(回数の積算値)
Ep エラーカウント規定値(第2の所定値)

Claims (4)

  1. 車両に搭載され初期位置から所定方向へ移動自在な可動部材が第1の所定位置に達しているか否かを検出するメインスイッチと、
    前記可動部材が前記初期位置と前記第1の所定位置との間の第2の所定位置に達しているか否かを検出する補助スイッチと、
    前記可動部材が前記第1の所定位置に達していないことを前記メインスイッチが検出し且つ前記可動部材が前記第2の所定位置に達していることを前記補助スイッチが検出したときに時間の積算を開始し、当該時間の積算の開始後に、前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないことを前記補助スイッチが検出することなく且つ前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことを前記メインスイッチが検出することなく前記時間の積算値が第1の所定値に達したとき、前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないことを前記補助スイッチが検出することなく前記時間の積算値が前記第1の所定値に達する前に前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことを前記メインスイッチが検出したとき、及び前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことを前記メインスイッチが検出することなく前記時間の積算値が前記第1の所定値に達する前に前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないことを前記補助スイッチが検出したときに、前記時間の積算を停止してその積算値をクリアする時間積算手段と、
    前記時間の積算値が前記第1の所定値に達した回数を積算する回数積算手段と、
    前記回数積算手段による前記回数の積算値が第2の所定値に達したときに、前記メインスイッチが故障していると判断する故障判断手段と、を備え
    前記時間積算手段は、前記時間の積算を停止してその積算値をクリアした後、前記可動部材が前記第1の所定位置に達していないことを前記メインスイッチが検出し且つ前記可動部材が前記第2の所定位置に達していることを前記補助スイッチが検出したときに時間の積算を再び開始する
    ことを特徴とする車両用スイッチの故障診断装置。
  2. 請求項1に記載の車両用スイッチの故障診断装置であって、
    前記回数積算手段は、前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことを前記メインスイッチが検出したときに、前記回数の積算値をクリアする
    ことを特徴とする車両用スイッチの故障診断装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用スイッチの故障診断装置であって、
    前記可動部材は、ブレーキペダルである
    ことを特徴とする車両用スイッチの故障診断装置。
  4. 車両に搭載され初期位置から所定方向へ移動自在な可動部材が第1の所定位置に達しているか否かをメインスイッチによって検出するステップと、
    前記可動部材が前記初期位置と前記第1の所定位置との間の第2の所定位置に達しているか否かを検出するステップと、
    前記可動部材が前記第1の所定位置に達していないこと及び前記可動部材が前記第2の所定位置に達していることが検出されたときに時間の積算を開始するステップと、
    前記時間の積算の開始後に、前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないこと及び前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことの何れも検出されることなく前記時間の積算値が第1の所定値に達したとき、前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないことが検出されることなく前記時間の積算値が前記第1の所定値に達する前に前記可動部材が前記第1の所定位置に達していることが検出されたとき、及び前記可動部材が前記第1の所定位置に達したことが検出されることなく前記時間の積算値が前記第1の所定値に達する前に前記可動部材が前記第2の所定位置に達していないことが検出されたときに、前記時間の積算を停止してその積算値をクリアするステップと、
    前記時間の積算を停止してその積算値をクリアした後、前記可動部材が前記第1の所定位置に達していないこと及び前記可動部材が前記第2の所定位置に達していることが検出されたときに時間の積算を再び開始するステップと、
    前記時間の積算値が前記第1の所定値に達した回数を積算するステップと、
    前記回数の積算値が第2の所定値に達したときに、前記メインスイッチが故障していると判断するステップと、
    を備えたことを特徴とする車両用スイッチの故障診断方法。
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