JP3971726B2 - 磁気共鳴撮影装置 - Google Patents
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Description
SPSP法においては、正負に振動する勾配磁場と共に所定のRF波の連なりを被検体に印加する。これにより、被検体の被検部位の所定の領域から、脂肪等の所望の組織の周波数が抑制された磁気共鳴信号を得ることができる。
被検部位の所望の領域を選択するときの精度を空間選択性という。また、磁気共鳴信号において脂肪の周波数を抑制することを脂肪抑制といい、脂肪抑制等のために特定の周波数帯の磁気共鳴信号を得ることを周波数選択性という。
フリッツ・シック(Fritz Schick)他,「高選択性の水・脂肪撮影のマルチスライス・シーケンスへのB1場不均一性に対する不感な適用(Highly Selective Water and Fat Imaging Applying Multislice Sequences without Sensitivity to B1 Field Inhomogeneities)」,マグネティック・レゾナンス・イン・メディシン(Magnetic Resonance in Medicine)1997年,38:p269-274 ジェイ・フォースター(J Forster)他,「MRアンギオグラフィにおける空間的・スペクトル的選択性プリパルスを用いたスライス選択性脂肪抑制(Slice-Selective Fat Saturation in MR Angiography Using Spatial-Spectral Selective Prepulses)」,ジャーナル・オブ・マグネティック・レゾナンス・イメージング(Journal of Magnetic Resonance Imaging)1998年,8(3):p583-589
また、本発明の他の目的は、空間選択的かつ周波数選択的に磁気共鳴信号を発生させる場合に、空間選択性および周波数選択性の制限を緩和することが可能な磁気共鳴画像生成方法を提供することにもある。
被検部位からのこの磁気共鳴信号が、検出手段によって検出される。
まず、本発明の第1実施形態に係るMR(Magnetic Resonance)撮影装置の構成例について述べる。
図1が、第1実施形態に係るMR撮影装置100の構成を概略的に示す概略構成図である。
MR撮影装置100は、本体部110と、コンソール部280とを有している。図1においては、本体部110を、要部の模式的な斜視透視図として描いている。
本体部110は、マグネットシステムと駆動部250とをさらに有している。
これらは、たとえば、RFコイル部180a,180b、勾配コイル部160a,160b、静磁場発生用マグネット部150a,150bの順で内側から対向して配置される。最内側のRFコイル部180aと180bとの間に、図示しない被検体が配置されるボア141aが形成される。
図1に示すようなMR撮影装置100は、ボア141aの大部分が解放される形状に筐体141が構成されているため、オープンタイプのMR撮影装置と呼ばれる。
マグネットシステム制御部15が、RFコイル駆動部12と勾配コイル駆動部13とデータ収集部14とにそれぞれ接続される。
また、RFコイル駆動部12とデータ収集部14とがRFコイル部180a,180bに接続される。勾配コイル駆動部13は勾配コイル部160a,160bに接続される。
静磁場発生用マグネット部150a,150bにより形成される静磁場の方向を、たとえば、y方向とする。図1に示すように、本実施形態においては静磁場発生用マグネット部150a,150bを縦方向に対向配置しているため、縦方向がy方向となる。縦方向の静磁場は垂直磁場とも呼ばれる。
また、y方向に直交する2つの方向を、図1に示すようにそれぞれx方向、z方向とする。図示はしないが、被検体の頭部から脚部に向かう体軸方向がz方向に一致するように、被検体がボア141a内に位置付けられることが多い。
これら3方向の勾配磁場は、1つが被検部位のスライスを選択するスライス選択勾配磁場であり、1つが位相エンコード勾配磁場であり、もう1つが読み取り勾配磁場(周波数エンコード勾配磁場とも言う)である。
送信用RFコイルによるRF波の印加を停止した際には、被検部位のスピンに起因して、印加したRF波の周波数帯域と同じ共鳴周波数の周波数成分を有する磁気共鳴信号が被検部位から再放射される。受信用RFコイルは、被検部位からのこの磁気共鳴信号を検出する。
RFコイル部180a,180bのように筐体141内に収容されるRFコイルだけでなく、被検体の頭部や腹部や肩等の被検部位に応じた専用のRFコイルを送信・受信用RFコイルとして用いることもできる。
なお、RF波の周波数の範囲は、たとえば、2.13MHzから85MHzの範囲である。
勾配コイル駆動部13からの勾配磁場励起信号を受けて勾配コイル部160a,160bが駆動され、静磁界の強度に3次元の勾配が発生することにより、被検体における撮影対象領域を規定することができる。撮影領域は、所定厚さの断層のスライス単位で規定される。図1に、xy平面に平行な複数のスライスSをz方向に配列した例を示す。しかし、図1に示す配列は単なる一例であり、ボア141a内における任意の位置にスライスを設定することができる。
データ収集部14は、たとえば、1つの画像を生成するためのデータを全て収集した後に、収集したデータを後述するコンソール部280のデータ処理部18に送信する。
また、データ収集部14は、取り込んだ磁気共鳴信号に関するデータの一部をマグネットシステム制御部15にも送信する。
パルスシーケンスとは、RF波、勾配磁場および磁気共鳴信号のパルス波形(以下、単にパルスという)を経過時間に沿って示したものであり、各パルスがパルスシーケンスによって規定された形となるようなRF波励起信号および勾配磁場励起信号が、RFコイル駆動部12および勾配コイル駆動部13からRFコイル部180a,180bおよび勾配コイル部160a,160bにそれぞれ入力される。
図1に示すように、コンソール部280は、MR撮影装置制御部17と、データ処理部18と、操作部19と、表示部20とを有する。
さらに、データ処理部18にはデータ収集部14が接続され、MR装置制御部17には操作部19が接続される。
上記のプログラムは、たとえば、RAM(Random Access Memory)やハードディスクドライブによって実現される図示しない記憶部に記憶されている。
MR撮影装置制御部17は、操作部19を介して入力されたオペレータからの指令を実現するように、マグネットシステム制御部15、データ処理部18、および表示部20を統合的に制御する。本体部110のハードウェア的な制限等の制限が存在する場合には、MR装置制御部17は入力された指令を実行することができない旨を表示部20に表示させる。
表示部20は、たとえば、液晶表示パネルやCRT(Cathode-Ray Tube)等のモニタによって実現される。
また、表示部20には、MR撮影装置100を操作するための操作画面も表示される。
図2に示すパルスシーケンスにおいて、横軸は左側から右側へ進む経過時間tを表わしている。各グラフは、図2の上から順にRF波印加パルスシーケンスRF、スライス選択勾配磁場印加パルスシーケンスG_slice、位相エンコード勾配磁場印加パルスシーケンスG_phase、読み取り勾配磁場印加パルスシーケンスG_read、磁気共鳴信号発生シーケンスSignalをそれぞれ表わしている。
シーケンスG_sliceは、被検部位の撮影スライス選択のために勾配コイル部160a,160bが被検部位に印加するスライス選択勾配磁場パルスの波形を表わしている。
シーケンスG_phaseは、被検体の位相方向の位置情報のエンコーディングに用いるために勾配コイル部160a,160bが被検部位に印加する位相エンコード勾配磁場パルスの波形を表わしている。
シーケンスG_readは、RFコイル部180a,180bによりRF波が印加された被検部位から磁気共鳴信号を放出させるために勾配コイル部160a,160bが被検部位に印加する読み取り勾配磁場パルスの波形を表わしている。
シーケンスSignalは、被検部位から放出され、RFコイル部180a,180bが検出する磁気共鳴信号54を表わしている。
このように空間選択的、周波数選択的に磁気共鳴信号を発生させることができるパルスシーケンスとしては、たとえば、SPSP(spectral spatial)法のパルスシーケンスを用いることができる。
SPSP法については、たとえば前述の非特許文献1および2に記載されているため、詳細な記述は省略するが、図2のRF波50aおよびスライス選択勾配磁場パルス51aに示すように、正負に交互に極性が変わるスライス選択勾配磁場パルスを連続的に印加しながら所定の波形のRF波を印加することにより、対象プロトンを抑制または励起させる領域を選択することができる。
スライスSの厚さを薄くして空間選択性を向上させるためには、より大きなスライス選択勾配磁場パルス51aを印加する必要がある。しかし、スライス選択勾配磁場パルス51aの立ち上がり時間および立ち下がり時間、即ち傾きDKはMR撮影装置100のハードウェアの性能によって限界が存在する。このため、スライス選択勾配磁場パルス51aを大きくしようとすると、スライス選択勾配磁場パルス51aの各パルスにおいてRF波50aの実際のパルスを印加可能なフラットな部分の長さRW1が短くなる。
つまり、スライス選択勾配磁場パルス51aの正のパルスPLPと負のパルスPLNとは、その面積が等しい。本実施形態においては、各パルスPLP,PLNの面積をar1とする。また、正のパルスPLPの極性の大きさHT1と負のパルスPLNの極性の大きさHT2とは相異なっており、大きさが0の軸に対して非対称となっている。
本実施形態においては、RF波50aを可能な限り長く印加するために、極性の大きさがより小さくそれゆえフラットな部分がより長い正のパルスPLPと共にRF波50aの各パルスを印加している。
本実施形態においては、正のパルスPLPの大きさHT1と負のパルスPLNの大きさHT2とが異なっていることにより、残留磁気の影響を抑制することもできる。以下にその詳細を示す。
図4に示すように、永久磁石を用いた静磁場発生用マグネット150a,150bに生じる残留磁気には、その大きさが勾配の大きさの変化の経路に依存して変化するヒステリシスが存在することが知られている。図4に示すような勾配の大きさの変化がgから−gまでのループを考える。このとき、たとえば、勾配の大きさが−g/2の点から図中の矢印の向きに勾配の大きさを変化させるとする。勾配の大きさが−g/2の点では、残留磁気は0となっている。
ループに従って勾配の大きさを−gまで負の方向に大きくし、その後再び−g/2まで戻したとしても、残留磁気は0とはならず−M残っている。この残留磁気を解消するためには、勾配の大きさをg/2まで大きくする必要がある。
つまり、勾配の大きさをgから−gまで連続的に変化させるループにおいては、残留磁気が一度0となった点から次に0とするためには、勾配の大きさは−gからg/2まで、またはgから−g/2まで連続的に変化させる必要がある。
以上のように、極性が反対で絶対値の大きさが2:1の勾配磁場を続けて印加したときに、残留磁気は解消されることが知られている。この性質は、永久磁石を用いたマグネットシステムであれば、形成する静磁場の大きさに関わらずほとんど全てのマグネットシステムについて当てはまる。
これにより、第1のパルスシーケンスPS1の開始の時点における残留磁気が0であったとすると、RF波50aの各パルスの印加のサイクル毎に考えれば、図2に示す時刻t1の時点において最初に残留磁気の影響を無くすことができる。
なお、HT1:HT2=1:2の場合に限らず、大きさHT1と大きさHT2とが異なっていれば、残留磁気の影響をある程度抑制することが可能である。
図2には、一例として、グラディエントエコー法によって被検体から磁気共鳴信号を入手するパルスシーケンスを挙げている。
また、第1のパルスシーケンスPS1の開始から第2のパルスシーケンスPS2の終了までの時間を、繰返し時間TRという。
また、本実施形態においては、HT1:HT2=1:2とすることにより、残留磁気の影響を無くすことができる。その結果、残留磁気に起因する静磁場の磁界強度の変化を防止してより確実な周波数選択効果を得ることができ、磁気共鳴画像の画質を向上させることができる。
さらに、正負のパルスの大きさHT1,HT2が必ずしも1:2でなくとも残留磁気の影響はある程度抑制でき、また大きさHT1,HT2に応じてフラットな部分の長さRW1の大きさを変化させることができるため、パルスシーケンスの波形を適宜変化させることができパルスシーケンス設計の自由度が向上する。
低中磁場用のマグネットシステムには主として永久磁石が用いられるため、本実施形態は永久磁石のマグネットシステムに対して特に有効であるといえる。
スライス選択勾配磁場パルス51aの波形を変更することにより、残留磁気の影響をより早い時点で無くすことができる。そのためのスライス選択勾配磁場パルスについて以下に述べる。
図3が、第2実施形態おいて第1のパルスシーケンスPS1の代わりに用いるパルスシーケンスPS3を示す図である。
第2実施形態は、第1のパルスシーケンスPS1の代わりにパルスシーケンスPS3を用いる点以外は第1実施形態と同じであるため、同一部分についての詳細な記載は省略する。
ただし、図3においては、シーケンスRFおよびシーケンスG_sliceのグラフと時間tの軸のみを示している。第1実施形態と同様に、時間tは左側から右側に向かって流れる。
この負のパルスPLRの大きさHT3と正のパルスPLPの大きさHT1との比を、第1実施形態と同様にHT1:HT3=1:2とすれば、図3に示す時刻t2の時点において最初に残留磁気の影響を無くすことができる。
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、残留磁気の影響をより早く無くすことができるという効果が得られる。
たとえば、図1に示すようなオープンタイプのマグネットシステムを有するMR撮影装置100に限らず、ボアが円筒状に形成されているいわゆるシリンドリカルタイプのマグネットシステムを有するMR撮影装置にも本発明は適用可能である。静磁場形成のためには、永久磁石に限らず、常伝導磁石や超伝導磁石を用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、第2のパルスシーケンスPS2としてはグラディエントエコー法のシーケンスを使用した場合について述べたが、本発明においてはスピンエコー法等のその他の磁気共鳴信号収集シーケンスを用いてもよい。第1のパルスシーケンスPS1としては、空間選択的、周波数選択的に磁気共鳴信号を発生させることが可能であれば、SPSP法以外のパルスシーケンスを適用してもよい。
13…勾配コイル駆動部
14…データ収集部
15…マグネットシステム制御部(制御手段)
50a,50b…RF波
51a,51b…スライス選択勾配磁場パルス
52…位相エンコード勾配磁場パルス
53…読み取り勾配磁場パルス
54…磁気共鳴信号
100…MR撮影装置
110…本体部
150a,150b…静磁場発生用マグネット部
160a,160b…勾配コイル部
180a,180b…RFコイル部
250…駆動部
PS1…第1のパルスシーケンス
PS2…第2のパルスシーケンス
PLP…正のパルス
PLN…負のパルス
Claims (10)
- 静磁場内の被検体の被検部位にRF波を印加するRF波印加手段と、前記被検部位に位置情報を付与して選択領域を設定する勾配磁場を印加する勾配磁場印加手段と、前記選択領域のプロトンからの磁気共鳴信号を検出する検出手段とを備え、前記検出手段により検出した前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検部位の画像データを生成する磁気共鳴撮影装置であって、
前記RF波印加手段と前記勾配磁場印加手段と前記検出手段とを組み合わせて、複数のスライスのうちの所定のスライスのみにおける対象プロトンの抑制または励起のための第1のパルスシーケンスと、前記対象プロトンの共鳴周波数の周波数成分が抑制または励起された前記磁気共鳴信号を収集する第2のパルスシーケンスとを実行させる制御手段を有し、
前記第1のパルスシーケンスは、1つの前記RF波と正の極性を有する1つの前記勾配磁場のパルスと負の極性を有する1つの前記勾配磁場のパルスとからなる1セットを複数セット有しており、
前記1セットにおける正の極性を有する勾配磁場のパルスと負の極性を有する勾配磁場のパルスとは、パルス波形の面積が同一で、パルス波形の振幅の絶対値が異なっており、
前記制御手段は、前記1セットにおけるパルス波形の時間幅が長い方の勾配磁場のパルスと共にRF波を印加させる
磁気共鳴撮影装置。 - 前記1セットにおける勾配磁場のパルスの振幅の絶対値は、当該勾配磁場のパルスによる残留磁気の影響を打ち消すような値である
請求項1に記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記1セットにおける勾配磁場のパルスの振幅の絶対値の比が1:2である
請求項2に記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記静磁場を永久磁石によって形成する
請求項3に記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記制御手段は、前記1セットにおいてRF波と共に印加する勾配磁場のパルスの後に他方の勾配磁場のパルスを印加させる
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記制御手段は、前記1セットにおいてRF波と共に印加する勾配磁場のパルスの前に他方の勾配磁場のパルスを印加させる
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記静磁場は、その磁界強度が0.2〜0.7テスラの低中磁場である
請求項1〜6のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記第1のパルスシーケンスは、脂肪のプロトンの共鳴周波数の抑制または励起のためのパルスシーケンスである
請求項1〜7のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記第1のパルスシーケンスは、水のプロトンの共鳴周波数の抑制または励起のためのパルスシーケンスである
請求項1〜7のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。 - 前記第2のパルスシーケンスは、スピンエコー法、グラディエントエコー法又はエコープラナーイメージング法のパルスシーケンスである
請求項1〜9のいずれかに記載の磁気共鳴撮影装置。
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