JP3927270B2 - 研磨剤、研磨方法および半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に半導体装置の製造に関し、特に研磨工程を含む半導体装置の製造方法に関する。さらに、本発明は研磨方法および研磨剤に関する。
半導体装置、特に半導体集積回路では、基板上に形成した絶縁層上に配線パターンを埋め込んだ配線構造を多層積層した多層配線構造が一部に採用されてきた。このような多層配線構造では、第1の、下層配線構造上に、他の配線構造が形成されるため、各々の配線構造は平坦な表面を有することが要求される。
【0002】
【従来の技術】
そこで、従来より、多層配線構造を形成する場合には、絶縁層上にコンタクトホールあるいは配線溝を形成し、かかる絶縁層上に、前記コンタクトホールあるいは配線溝を埋めるように金属層を堆積し、次いでかかる金属層を、前記絶縁層表面が露出するまでCMP(化学機械研磨)により除去し、平坦な配線構造を形成することが行われている。かかる配線構造は、上主面が平坦であるため、その上に次の配線構造を容易に形成することができる。
【0003】
かかる従来の半導体装置の製造工程においては、コンタクトホールあるいは配線溝を埋めるW等の金属層を、α−アルミナ(Al2 O3 )よりなる砥粒とH2 O2 等よりなる液体酸化剤との混合物よりなる研磨剤を使い、ウレタン樹脂等の研磨布上において研磨し、平坦化している。
【0004】
しかし、このような酸化剤を含んだ研磨剤をW等の導体層の研磨に使用すると、研磨剤中の酸化剤が、前記導体層表面に例えばコンタクトホールあるいは配線溝に対応して形成される凹部の継ぎ目ないしシームに沿って、前記導体層中に侵入してしまい、その結果、かかる酸化剤の存在下で実行される研磨工程により、前記シームが拡大してしまう問題が発生する。すなわち、導体層のCMPの結果コンタクトホールを埋めるように形成される導体プラグの中央部に、前記シームに対応して大きくまた深い凹部が形成されてしまい、コンタクトホールにおける電気的な接続が不確実になってしまう問題点が生じる。かかる導体プラグ研磨時に形成される凹部は、特にコンタクトホールの大きさが0.5μmあるいはそれ以下の高い集積密度を有する半導体装置および集積回路において、特に深刻な信頼性の低下をもたらす。
【0005】
この問題点を解決するため、本発明の出願人は、先に、特願平7−169057において、固体酸化剤として作用するMnO2 を砥粒として有する研磨剤、およびかかる研磨剤を使った半導体装置の製造方法を提案した。かかるMnO2 を使った研磨剤では、H2 O2 のような液体酸化剤を使わないため、コンタクトホール中のシームが酸化されることがなく、このため研磨を行ってもシームが侵食されることがない。
【0006】
一方、このようなMnO2 を使った研磨剤では、特にSiO2 膜上に堆積したWやTiN等の導体層を研磨する際に、下地のSiO2 に対する導体層の研磨の選択性、換言すると、SiO2 の研磨速度に対する導体層の研磨速度の比が2倍程度であるため、SiO2 が効果的な研磨ストッパとして作用しない問題点があった。
【0007】
このため、本発明の出願人は、研磨される金属材料の液体酸化剤による侵食を抑止でき、しかも絶縁膜に対して高い選択性を示す研磨剤として、MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤として、ベンゼン環を含む化合物、あるいは乳酸、あるいはラクトース等を使用することを、特願平7−169048において提案した。このような添加剤を使うことにより、Wの研磨速度とSiO2 の研磨速度との間に20以上の選択比を実現できることが発見された。換言すると、SiO2 は、このような場合、効果的な研磨ストッパとして作用する。
【0008】
一方、かかる半導体集積回路の製造においては、層間絶縁膜等の絶縁層を研磨する必要がある場合も度々生じる。
例えば、半導体集積回路では、一般に隣接する半導体装置相互を電気的に分離するために素子分離構造を形成するが、特に最近の微細化された半導体集積回路においては、従来のLOCOS法によるフィールド酸化膜のかわりに、隣接する素子間に溝(シャロートレンチ)を形成した、いわゆるシャロートレンチ構造が使われるようになっている。かかるシャロートレンチ法では、素子間に形成した溝を絶縁層で埋め込むことにより、所期の素子分離効果を得る。しかし、このような従来のシャロートレンチ法では、基板表面に溝を形成するため、必然的に凹凸が生じ、このためかかる分離構造を形成された基板表面上に半導体装置あるいは多層配線構造を形成するためには、基板を覆う層間絶縁膜を平坦化する必要がある。
【0009】
このような要求に応じて、本発明の出願人は、先に特願平8−167621において、Mn2 O3 あるいはMn3 O4 を砥粒として使う研磨剤を提案した。Mn2 O3 あるいはMn3 O4 を使うことにより、SiO2 層を、従来のコロイダルシリカ研磨剤と実質的に同等、あるいはそれ以上の研磨速度で研磨することができる。さらに、同様な結果が、研磨の際にMnO2 砥粒を使い、その表面をMn2 O3 あるいはMn3 O4 が形成されるような条件で処理した場合にも得られることが確認された。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、先に説明したMnO2 研磨剤にベンゼン環を有する化合物等よりなる添加剤を加えた場合、望ましい研磨の選択性を得るためには、多量の添加剤を、典型的には10重量%程度加える必要があった。しかし、多量の添加剤を使った場合、研磨後の洗浄を長時間行わなければならない等の問題が生じ、特に半導体装置の製造において、スループットが低下してしまう。
【0011】
また、Mn2 O3 あるいはMn3 O4 を砥粒としてSiO2 層等の絶縁層を研磨する場合、コロイダルシリカ等、シリカ系研磨剤に匹敵する研磨速度は得られるが、研磨速度の絶対値は、セリア(CeO2 )を使ってSiO2 等のガラスを研磨する場合にはおよばない。
【0012】
そこで、本発明は、MnO2 を砥粒とする研磨剤において、金属層を研磨する場合に少量の添加剤を添加することにより、金属膜に対する研磨の選択性を、絶縁膜に対して大きく向上させることのできる研磨剤および研磨方法、さらに半導体装置の製造方法を提供することを第1の課題とする。
【0013】
本発明は、さらに、MnO2 ,Mn2 O3 およびMn3 O4 を含むMn酸化物を砥粒とする研磨剤において、添加剤を添加することにより、絶縁層に対する研磨効率を向上させた研磨剤および研磨方法、さらにかかる研磨剤を使った半導体装置の製造方法を提供することを第2の課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を、
請求項1に記載したように、
MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤はN(CH2 CH2 OH)3 を含むことを特徴とする研磨剤により、または
請求項2に記載したように、
MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤はオルガノシランを含むことを特徴とする研磨剤により、または
請求項3に記載したように、
MnO2 よりなる砥粒と、溶剤と、N(CH2 CH2 OH)3 またはオルガノシランを含む添加剤とからなる研磨剤を使って金属を研磨することを特徴とする研磨方法により、または
請求項4に記載したように、
MnO2 よりなる砥粒と、溶剤と、N(CH2 CH2 OH)3 またはオルガノシランを含む添加剤とからなる研磨剤を使って導体層を研磨する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法により、解決する。
【0015】
本発明は、Mn酸化物を砥粒とする研磨剤において、添加剤を添加することにより、研磨特性を変化させる。
特に、本発明者は、請求項1および2に記載したように、MnO2 を砥粒として使い、N(CH2 CH2 OH)3 または水に溶けるシランカップリング剤を含むオルガノシランを添加剤として少量添加することにより、導体を選択的に研磨でき、また絶縁体で研磨が停止する研磨剤を得ることができることを発見した。
【0016】
図1および図2は、MnO2 を研磨剤としてSiO2 膜を研磨する場合の研磨速度を、それぞれ添加したN(CH2 CH2 OH)3 およびオルガノシランの添加量の関数として示す。ただし、オルガノシランとして、H2 NC3 H6 Si(OC2 H5 )3 を使い、研磨は、RODEL社製SUBA400研磨布上にさらにRODEL社製研磨布IC400を被せたターンテーブル上において、試料を担持する研磨ヘッドおよび前記ターンテーブルを、同一方向にいずれも70rpmの回転速度で回転させながら、350g/cm2 の研磨圧で行った。また、その際、研磨剤を100cc/minの割合で供給した。研磨剤は、砥粒としてMnO2 をH2 O中に約10wt%含んだものを使い、これに添加剤を様々な割合で添加している。
【0017】
図1および図2よりわかるように、N(CH2 CH2 OH)3 あるいはオルガノシランを添加しない場合、SiO2 膜の研磨速度は0.2μm/min程度であったのが、N(CH2 CH2 OH)3 あるいはオルガノシランをわずか1wt%程度添加するだけで、SiO2 膜の研磨速度がほとんどゼロに低下するのがわかる。一方、研磨剤は、このように添加剤を添加していても、Wに対しては、図3に示すように、0.13〜0.14μm/min程度の十分な研磨速度を示す。ただし、図3は、同じ研磨条件下において、Wを研磨した場合の研磨速度を、N(CH2 CH2 OH)3 およびオルガノシランの添加量の関数として示す。
【0018】
さらに、本発明によれば、請求項3〜4に記載したように、Mn酸化物よりなる砥粒に、シリカ,アルミナ,ジルコニアより選ばれる添加剤を添加することにより、絶縁層を効率よく研磨できる研磨剤を得ることができる。
図4は、MnO2 ,Mn2 O3 およびMn3 O4 を砥粒に使った研磨剤によりSiO2 膜を研磨した場合に得られる研磨速度を示す。ただし、図4の結果は、先と同じようにターンテーブルをSUBA400およびIC1000研磨布で覆い、テーブルおよび研磨ヘッドを20rpmの速度で同一方向に回転させながら、420g/cm2 の研磨速度で研磨を行った場合についてのものである。図4よりわかるように、MnO2 ,Mn2 O3 およびMn3 O4 のいずれを砥粒として使っても、0.15μm/minを超える研磨速度が得られ、しかも研磨速度はMnO2 ,Mn2 O3 およびMn3 O4 の順に大きくなる。ただし、図4の実験では、研磨剤中におけるMn酸化物砥粒の割合は、10wt%に設定してある。また、溶剤としては、H2 Oを使っている。
【0019】
図4において、砥粒としてMnO2 を使った場合の研磨速度は0.18μm/min、Mn2 O3 を使った場合には、0.27μm/min、またMn3 O4 を使った場合には0.30μm/minの研磨速度が得られる。
図5,6,7は、それぞれ図4の実験で使ったMnO2 ,Mn2 O3 およびMn3 O4 の粉末X線回折パターンを示す。このうち、MnO2 砥粒は、Mn塩の電解質溶液の電気分解により陽極上に形成されたMnO2 の塊を平均粒径が1μm以下になるまで粉砕することにより製造され、一方、Mn2 O3 砥粒は、このようにして形成されたMnO2 を、空気中、900°Cの温度で10分間熱処理の後急冷することにより製造している。さらに、Mn3 O4 は、前記MnO2 の熱処理を空気中、1000°Cで10分間実行することにより得られる。図5よりわかるように、MnO2 砥粒は主としてγ相のMnO2 より構成され、一方、図6,7よりわかるように、Mn3 O4 砥粒は少量のMn2 O3 を含んでいる。
【0020】
本発明の発明者は、図8に示すように、MnO2 ,Mn2 O3 ,Mn3 O4 をそれぞれ砥粒とする研磨剤において、シリカ、アルミナあるいはジルコニアを添加剤として添加することにより、酸化膜を研磨する場合の研磨速度を大きく増大させることができるのを発見した。
【0021】
より具体的には、MnO2 砥粒を10wt%含む研磨剤において、シリカを3wt%添加することにより、SiO2 膜の研磨速度が、当初の0.18μm/minから0.28μm/minまで増大することが発見された。また、シリカの代わりにアルミナを添加した場合は、研磨速度はSiO2 膜を研磨した場合、先の0.18μm/minから0.291μm/minまで増大した。さらに、シリカの代わりにジルコニアを添加した場合には、研磨速度は、SiO2 膜を研磨した場合、先の0.18μm/minから0.285μm/minまで増大した。ただし、研磨条件は先の場合と同じで、SUBA400研磨布およびIC1000研磨布を被せたターンテーブル上において、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを同一方向に20rpmの速度で回転させながら、研磨圧を420g/cm2 に設定して行った。その際、研磨剤を、100cc/minの割合で研磨布上に供給している。
【0022】
さらに、MnO2 砥粒の代わりにMn2 O3 砥粒を10wt%含む研磨剤では、シリカを3wt%添加することにより、SiO2 膜の研磨速度が、当初の0.27μm/minから0.388μmまで増大した。また、シリカの代わりにアルミナを添加した場合は、研磨速度はSiO2 膜を研磨した場合、当初の前記0.27μmから0.291μmまで増大した。さらに、シリカの代わりにジルコニアを添加した場合には、研磨速度は、SiO2 膜を研磨した場合、当初の前記0.27μmから0.285μmまで増大した。ただし、研磨条件は先の場合と同じで、SUBA400研磨布およびIC1000研磨布を被せた研磨ターンテーブル上において、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを同一方向に20rpmの速度で回転させながら、研磨圧を420g/cm2 に設定して行った。その際、研磨剤を、100cc/minの割合で研磨布上に供給している。
【0023】
添加するシリカ粒子はキズの発生を避けるためにMn酸化物の粒子よりも小さい必要がある。従って、粒径は0.5μm以下、望ましくは0.1μm以下である。このような微粒子は溶融シリカを微粉際しても得られるが、四塩化ケイ素などのガスを公園で噴霧して得られるヒュームドシリカや、水ガラスから析出して得られるコロイダルシリカでもよい。乾燥粉をスラリに添加してもよいが、凝集粒子がほどけないとキズの原因になるので水に分散させたものを添加した方がよい。さらに、Mn酸化物を粉砕し終わってから添加して混合してもよいが、粉砕前あるいは粉砕中に添加してもよい。
【0024】
添加量については0.1〜15%の範囲で効果がある。0.1%よりも少ないと添加して効果が現れず、15%よりも多いと添加剤がMn酸化物の研磨作用を阻害し始めるので、研磨速度がかえって低下する。特に1〜5%の範囲が望ましい。
【0025】
MnO2 砥粒の代わりにMn3 O4 砥粒を10wt%含む研磨剤では、シリカを3wt%添加することにより、SiO2 膜の研磨速度が、当初の0.30μm/minから0.407μmまで増大した。また、シリカの代わりにアルミナを添加した場合は、研磨速度はSiO2 膜を研磨した場合、当初の前記0.30μmから0.399μmまで増大した。さらに、シリカの代わりにジルコニアを添加した場合には、研磨速度は、SiO2 膜を研磨した場合、当初の前記0.30μmから0.405μmまで増大した。ただし、研磨条件は先の場合と同じで、SUBA400研磨布およびIC1000研磨布を被せた研磨ターンテーブル上において、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを同一方向に20rpmの速度で回転させながら、研磨圧を420g/cm2 に設定して行った。その際、研磨剤を、100cc/minの割合で研磨布上に供給している。
【0026】
このように、本発明によれば、Mn酸化物を砥粒とする研磨剤により、SiO2 等の絶縁膜を研磨する場合、シリカ、アルミナあるいはジルコニアを添加剤として添加することにより、研磨速度を大きく増大させることができ、研磨作業の効率を向上させることができる。
【0027】
以下の表1に、前記SiO2 膜研磨の実験結果をまとめて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
さらに、本発明の発明者は、MnO2 を砥粒とする研磨剤においては、シリカ、アルミナあるいはジルコニアを添加剤として添加することにより、WあるいはTiN等の導電膜の研磨速度も大きく向上することを発見した。
より具体的には、MnO2 砥粒を10wt%含む研磨剤において、シリカを3wt%添加することにより、W膜の研磨速度が、当初の0.15μm/minから0.34μm/minまで増大することが見出された。また、シリカの代わりにアルミナを添加した場合は、研磨速度は先の0.15μm/minから0.35μm/minまで増大した。さらに、シリカの代わりにジルコニアを添加した場合には、研磨速度は先の0.15μm/minから0.36μm/minまで増大した。ただし、研磨はSUBA400研磨布およびIC1000研磨布を被せた研磨ターンテーブル上において、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを同一方向に70rpmの速度で回転させながら、研磨圧を250g/cm2 に設定して行った。その際、研磨剤を、100cc/minの割合で研磨布上に供給した。
【0030】
このように、本発明によれば、MnO2 を砥粒とする研磨剤により、WやTiN等の導体膜を研磨する場合にも、シリカ、アルミナあるいはジルコニアを添加剤として添加することにより、研磨速度を大きく増大させることができ、研磨作業の効率を向上させることができる。
【0031】
以下の表2に、前記W膜研磨の実験結果をまとめて示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例を、半導体装置の製造に適用した場合につき説明する。
[実施例1]
次に、本発明の研磨剤を使った、本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を、MOSトランジスタの製造工程を例に説明する。
【0034】
図9(A)を参照するに、MOSトランジスタは例えばp型にドープされたSi基板1上に、前記基板1上に形成されたフィールド酸化膜1aが画成する活性領域1Aに対応して形成される。より具体的には、MOSトランジスタは前記活性領域1A表面に形成されたn+ 型拡散領域1bと、前記活性領域1A表面上に、前記拡散領域1bからMOSトランジスタのチャネル領域1dにより隔てられて形成された別の拡散領域1cと、前記チャネル領域1d上に、ゲート酸化膜(図示せず)を挟んで形成されたゲート電極2とより構成され、前記ゲート電極2の側壁には側壁絶縁膜2a,2bが形成される。また、前記拡散領域1bおよび1cはそれぞれMOSトランジスタのソース領域およびドレイン領域として作用する。
【0035】
図9(A)の工程では、かかるMOSトランジスタを埋め込むように、SiO2 よりなる層間絶縁膜3が、例えばCVD法等により、典型的には50nm程度の厚さに堆積される。その結果、前記ゲート電極および拡散領域1b,1cは前記絶縁膜3により覆われる。ただし、図9(A)に示すように、絶縁膜3の表面は前記ゲート電極2に対応した凹凸を有する。
【0036】
次に、図9(B)の工程で、前記絶縁膜3の表面が一様に研磨され、その結果、絶縁膜3の面が平坦化される。この工程では、公知の適当な研磨剤を使えばよい。さらに、図10(C)の工程で、前記絶縁膜3がレジスト(図示せず)を使ったフォトリソグラフィによりパターニングされ、その結果、前記絶縁膜3中に、前記拡散領域1bに対応して、前記領域1bの表面を露出するコンタクトホール3aが形成される。さらに、図10(D)の工程において、図10(C)の構造上に、W,Al,Cu等の金属あるいは合金よりなる導体層4を、一様な厚さに、例えばCVD法により堆積する。その結果、前記導体層4は、前記コンタクトホール3aを埋め、前記コンタクトホールにおいて拡散領域1bと電気的に接触する。図10(D)の構造では、前記導体層4は前記コンタクトホール3aを埋めるため、導体層4表面上には前記コンタクトホール3aに対応して凹部4aが現れる。換言すると、前記導体層4の表面には凹凸が生じる。
【0037】
そこで、本実施例においては、図11(E)の工程において、MnO2 を砥粒として含む研磨剤に、さらにN(CH2 CH2 OH)3 あるいはオルガノシランを添加剤として添加した研磨剤を使って前記導体層4を一様に研磨し、図11(E)に示す絶縁膜3の表面が平坦化された構造を得る。本発明による研磨剤は導体層4を構成するW層に対して選択的に作用し、研磨は前記絶縁膜3の上主面が露出した段階で自発的に停止する。その結果、前記コンタクトホール3aを埋めるように、前記拡散領域1bに接触する導体プラグ4bが形成される。かかる研磨による平坦化の結果、前記導体プラグ4bの上主面は前記絶縁膜3の上主面と一致する。本発明の研磨剤では砥粒として含まれるMnO2 が固体酸化剤として作用するために、研磨は砥粒が実際に作用する導体プラグ4bの表面に限定され、導体プラグ4b中のシームが研磨に際して侵食されることはない。
【0038】
次に、図11(F)の工程において、前記平坦化された図11(F)の構造上に、SiO2 等よりなる別の絶縁膜5が堆積され、図12(G)の工程でフォトリソグラフィによりパターニングされ、前記導体プラグ4bを露出する溝5aが形成される。さらに、図12(H)の工程において、W,Al,Cu等の金属あるいは合金よりなる別の導体層6が、前記図12(G)の構造上に堆積され、その結果前記溝5aに対応して導体層6には凹部6aが、図12(H)に示すように形成される。
【0039】
さらに、図13(I)の工程において、前記導体層6を、図11(E)の工程と同様に、MnO2 を砥粒とし、N(CH2 CH2 OH)3 あるいはオルガノシランを添加剤として加えた研磨剤により研磨し、図13(I)に示す平坦化された構造が得られる。図13(I)の構造では、前記絶縁膜5中の溝を前記導体層6の一部をなす導体パターニング6bが埋める。さらに、かかる構造上に、図13(J)の工程で、さらに別の絶縁層7を堆積し、絶縁層7上に、必要に応じて様々な配線パターンを形成する。
【0040】
かかる半導体装置の製造方法においては、図11(E)あるいは図13(I)の研磨工程において平坦性のすぐれた構造を得ることができ、また絶縁層中を延在する導体プラグが研磨剤により侵食されないため、多層配線構造を容易にかつ確実に形成することができる。
【0041】
図11(E)あるいは図13(I)の工程で使われる研磨剤としては、例えば平均粒径が0.1〜1μmのMnO2 砥粒を純水(H2 O)中に約10wt%分散させ、さらに、N(CH2 CH2 OH)3 、あるいはH2 NC3 H6 Si(OC2 H5 )3 ,さらに
【0042】
【化1】
【0043】
等のオルガノシランを純水に対して1〜2wt%程度添加したものを使うのがよく、その際研磨は、例えばSUBA400およびIC1000研磨布を重ねて被せたターンテーブル上において、250〜350g/cm2 程度の圧力で、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを70rpmで回転させながら行うのがよい。その際、研磨剤は、例えば100cc/min程度の割合で供給される。
【0044】
なお、上記実施例ではSiO2 上のWの研磨について詳述したが、本発明は他の絶縁膜上の金属の研磨についても有効である。他の絶縁膜としては、PSG,BPSG,SiN等が含まれ、また本発明が適用できる金属には、さらにAl,Cu,Ti等の高融点金属、あるいはTiN等の高融点金属化合物が含まれる。[実施例2]
図14(A)〜(C)は本発明の第2実施例による半導体装置の製造工程、特にシャロートレンチを使った素子分離構造の形成工程を示す図である。
【0045】
図14(A)を参照するに、Si基板11上には、素子分離溝11Aが、例えば約400nmの深さに形成され、次に工程(B)において工程(A)の構造上にSiO2 層14が、前記溝11Aを埋めるように、CVD法により堆積される。さらに、工程(C)において、前記SiO2 層14が、表1に記載したMnO2 ,Mn2 O3 あるいはMn3 O4 を砥粒とし、シリカ,アルミナあるいはジルコニアを添加した研磨剤を使って研磨される。
【0046】
SiO2 層14の研磨は、先にも説明したように、SUBA400およびIC1000研磨布を被せたターンテーブル上において、420g/cm2 程度の圧力で、ターンテーブルおよび研磨ヘッドを20rpmの速度で同一方向に回転させながら、H2 Oを溶剤に使って実行される。その際、研磨は、Si基板11の表面が露出した時点で、Siに対するSiO2 の研磨速度の選択性により、自動的に停止する。
【0047】
MnO2 ,Mn2 O3 あるいはMn3 O4 等の砥粒にシリカ,アルミナあるいはジルコニア等の添加剤を添加することにより、工程(B)の研磨効率が非常に高くなり、半導体装置の製造スループットが向上する。
また、図14(A)〜(C)の工程では、Si基板11の表面それ自体が研磨ストッパとして作用し、その結果従来におけるような、別に研磨ストッパ層を設け、さらにそれを除去するという余計な工程が省略できる。
【0048】
本実施例においては、また研磨の際にMnO2 を砥粒として使い、溶剤の酸化還元電位およびpHを調整することにより、MnO2 砥粒の表面にMn2 O3 あるいはMn3 O4 を形成してもよい。この場合、Mn2 O3 あるいはMn3 O4 砥粒を使ったのと同様なSiO2 層4の効率的な研磨、およびSiに対するSiO2 の選択性による研磨の自動停止効果が得られる。この方法だと、別の研磨工程でW等の導体層の研磨に使われるMnO2 研磨剤と同じ研磨剤を使い、溶剤の組成だけを変化させることにより、研磨剤の交換が不要になり、研磨工程が非常に簡単になる。例えば、酸化還元電位Eを0V,pHを12以上に設定することにより、Mn2 O3 をMnO2 砥粒表面に形成することが可能になる。
【0049】
以上、本発明を半導体装置の製造について説明したが、本発明は、ガラス等の絶縁層をCeO2 に匹敵する研磨速度で研磨できるため、従来CeO2 が使われていたレンズの研磨にも有効である。しかも、Mn酸化物はCeO2 よりもはるかに安価であるため、本発明により、製造されるレンズの価格を低下させることができる。
【0050】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤としてN(CH2 CH2 OH)3 あるいはオルガノシランを使うことにより、絶縁層を実質的に研磨することなく、導体層のみを効率的に研磨することができ、しかも必要な添加剤の添加量が少なくて済む。
【0052】
また本発明によれば、Mn酸化物よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤としてシリカ、アルミナおよびジルコニアよりなる群から選択することにより、ガラス等の絶縁層を研磨する速度が増大し、かかる研磨工程を含む半導体装置の製造工程あるいはレンズ等の製造工程を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する図(その一)である。
【図2】本発明の原理を説明する図(その二)である。
【図3】本発明の原理を説明する図(その三)である。
【図4】Mn酸化物を砥粒とする研磨剤によるSiO2 膜の研磨特性を示す図である。
【図5】本発明によるMnO2 砥粒の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6】本発明によるMn2 O3 砥粒の粉末X回折パターンを示す図である。
【図7】本発明によるMn3 O4 砥粒の粉末X回折パターンを示す図である。
【図8】本発明の原理を説明する図(その四)である。
【図9】(A),(B)は本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を示す図(その一)である。
【図10】(C),(D)は本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を示す図(その二)である。
【図11】(E),(F)は本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を示す図(その三)である。
【図12】(G),(H)は本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を示す図(その四)である。
【図13】(I),(J)は本発明の第1実施例による半導体装置の製造工程を示す図(その五)である。
【図14】本発明の第2実施例による半導体装置の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1,11 基板
1a フィールド酸化膜
1b,1c 拡散領域
1d チャネル領域
2 ゲート電極
2a,2b ゲート側壁絶縁膜
3,5,7 絶縁膜
3a コンタクトホール
4,6 導体層
4a 凹部
4b 導体プラグ
4c シーム
5a 溝
6a 凹部
6b 導体パターン
11A 分離溝
14 酸化膜
14A 凹部
Claims (4)
- MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤はN(CH2 CH2 OH)3 を含むことを特徴とする研磨剤。
- MnO2 よりなる砥粒と、溶媒と、添加剤とよりなる研磨剤において、前記添加剤はオルガノシランを含むことを特徴とする研磨剤。
- MnO2 よりなる砥粒と、溶剤と、N(CH2 CH2 OH)3 またはオルガノシランを含む添加剤とからなる研磨剤を使って金属を研磨することを特徴とする研磨方法。
- MnO2 よりなる砥粒と、溶剤と、N(CH2 CH2 OH)3 またはオルガノシランを含む添加剤とからなる研磨剤を使って導体層を研磨する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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