JP3910448B2 - 自動周波数制御方法および装置ならびに復調装置 - Google Patents
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Description
この発明は、衛星通信、移動体衛星通信および移動体地上通信などにおけるディジタル復調処理に適用される自動周波数制御方法および装置ならびに当該装置を適用した復調装置に関する。
背景技術
近年、衛星通信、移動体衛星通信および移動体地上通信では、ディジタル変復調の研究が活発に行われている。特に移動体通信という環境では、無線信号は激しいフェージングを受ける。そのため、このようなフェージング環境下でも安定に動作する様々な復調方式が検討されている。この中でも、既知信号を利用してフェージング歪みを推定し補償することにより、フェージング環境下でも絶対同期検波を実行し得るようにした方式が注目されている。この方式を用いて準同期検波等を行った後フェージング歪みを推定し補償する場合、無線送信信号の搬送波周波数と準同期検波用の基準信号の発振周波数との周波数オフセットが小さいことが、フェージング歪みを高精度に推定し補償する上で必要である。
しかし、送受信機の発振回路の周波数安定度および精度が不十分な場合、何らかの処理を行ってこの周波数オフセットを除去することにより無線受信信号の周波数を自動制御しなければ、フェージング歪みを高精度に推定し補償することができないという問題があった。
また、移動体通信においては、固定局と移動局、あるいは移動局間同士で送受信を行うことになる。したがって、2つの局が相対的に移動している場合、無線受信信号は、ドップラー変動により周波数が偏移している。そのため、たとえ送受信機の発振回路の安定度および精度が良くても、無線受信信号の周波数と基準信号の発振周波数との間に周波数オフセットが生じることになる。
周波数オフセットを補償するための技術は、たとえば「ディジタル移動無線通信方式」(特開平9−93302号公報)に開示されている。この従来文献に開示されている技術は、既知信号(パイロット信号)の位相変動情報を利用して周波数オフセットを除去する。
この従来技術においては、送信側から挿入周期NFごとに2シンボルの既知信号を挿入した無線送信信号を送信する。一方、受信側においては、連続する2シンボルの既知信号間の位相変化量を算出し、この算出された位相変化量に従って無線受信信号の位相を回転する。こうして、無線受信信号から周波数オフセットを除去している。
ところで、電波の伝送路には、直接波とマルチパス波とが混在するライスフェージングの伝送路が存在する。この場合、直接波はドップラーシフトを受ける。そのため、直接波の周波数fDは、第24図(a)に示すように、発振回路の安定度等に起因するオフセットfOFSTからさらにドップラーシフトに起因するドップラーシフト量fDPだけずれた値となる。
一方、上記従来技術においては、連続する2シンボルの既知信号間の位相変化量を周波数オフセットとして推定している。この場合に求められる周波数オフセットは、受信機側の発振周波数f0と直接波の周波数fDとの差に相当する。すなわち、上記従来技術においては、第24図(b)に示すように、直接波の周波数fDが発振周波数f0にほぼ一致するような周波数制御が行われる。この場合、ドップラー広がりの中心周波数fMは発振周波数f0からドップラーシフト量fDPだけずれる。したがって、ドップラー広がりは見かけ上広がった状態となり、ドップラー広がりの端に相当する周波数は発振周波数f0から大きくずれることになる。そのため、周波数オフセットの補償を良好に行えなくなる。ゆえに、無線受信信号を復調した後のビット誤り率特性(以下「BER特性」という)が劣化するおそれがある。
発明の開示
そこで、この発明の目的は、上述の技術課題を解決し、直接波がドップラーシフトしたライスフェージング環境下において、ドップラーシフトした直接波の影響を受けずに良好なBER特性を実現することができる自動周波数制御方法および装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、上記自動周波数制御装置を適用することにより、復調精度を向上できる復調装置を提供することである。
上記目的を達成するためのこの発明は、隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号の周波数オフセットを補償することにより上記無線受信信号の周波数を制御する自動周波数制御方法において、上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数および上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいて上記無線受信信号の周波数オフセットを補償するようにしたものである。
この構成において、直接波の周波数に基づいて周波数オフセットを補償することにより周波数オフセットの補償範囲を十分に確保でき、かつ、ドップラー広がりの中心周波数に基づいて周波数オフセットを補償することにより良好なBER特性を確保できる。すなわち、十分な周波数オフセット補償範囲の確保と良好なBER特性の確保との両立を実現できる。
また、以上の構成を復調装置に適用することにより、周波数オフセットを良好に除去した無線受信信号に対して復調処理を施すことができる。
したがって、復調品質の向上を図ることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
実施形態1
第1図は、この発明の実施形態1に係る自動周波数制御方法が適用される無線通信システムの構成を示すブロック図である。この無線通信システムは、送信機1および受信機10を備え、送信機1から無線送信されたバースト信号の周波数オフセットを受信機10にて推定し除去する機能を有するものである。
より詳述すれば、この無線通信システムとしては、衛星通信システム、移動体衛星通信システムおよび移動体地上通信システムを適用することができる。衛星通信システムでは、送信機1および受信機10は、地上の異なる位置に配置された地球局に適用される。移動体衛星通信システムでは、送信機1は、地上に設置された地球局および移動局のいずれか一方に適用され、受信機10は、上記2つの局のうち送信機1とは反対の局に適用される。移動体地上通信システムでは、送信機1は、基地局および移動局のいずれか一方に適用され、受信機10は、上記2つの局のうち送信機1とは反対の局に適用される。
なお、移動体衛星通信システムにおける移動局としては、シングルモードまたはデュアルモードの衛星携帯電話機などが適用可能である。また、移動体地上通信システムにおける移動局としては、携帯電話機などが適用可能である。
この通信システムは、TDMA(Time Division Multiple Access)を通信方式とするものである。したがって、送信機1は、所定のタイムスロットに同期したバースト信号を受信機10に対して無線送信する。受信機10は、受信されたバースト信号を復調し、周波数オフセットを除去した後、元の信号を復元する。
送信機1は、既知信号挿入回路2、変調回路3、送信回路4を有している。既知信号挿入回路2は、送信すべき情報信号に対して既知信号を周期的に挿入し、変調前のバースト信号を作成する。具体的には、既知信号挿入回路2は、第2図(a)に示すように、(NF−NP)シンボルの情報に対して、NPシンボル連続した既知信号列(以下「既知信号ブロック」という。)をNFシンボル周期ごとに挿入する。NPは、2以上の整数である(NP≧2)。また、既知信号が挿入される時刻は、(kNF+i)TSで表される。ここに、kは、既知信号の挿入順序を表すものである。iは、0以上でかつ(NP−1)以下の値である(0≦i≦NP−1)。また、TSはシンボル周期である。
既知信号挿入回路2は、変調前のバースト信号を変調回路3に与える。変調回路3は、この変調前のバースト信号を変調し、変調後のバースト信号として出力する。変調回路3は、この変調されたバースト信号を所定のタイムスロットに同期して送信回路4に与える。具体的には、変調回路3は、第2図(b)に示すように、バースト信号B、B+1、B+2、B+3、…を所定のタイムスロットS1、S2,S3、S4、…に同期させて送信回路4に与える。送信回路4は、当該バースト信号を電波に重畳させて受信機10に対して送信する。
受信機10は、受信回路11および復調装置12を含む。受信回路11は、増幅器や周波数変換器等で構成され、無線受信信号である受信バースト信号の周波数を中間周波に変換し受信IF信号として出力する。復調装置12は、受信回路11により出力された受信IF信号を準同期検波により復調し、元の情報信号を復元する。より具体的には、復調装置12は、周波数変換回路21と、2つのA/D(Analog/Digital)変換回路25a、25bと、自動周波数制御装置またはディジタル信号処理装置としてのDSP(Digital Signal Processor)26とを備え、DSP26によりディジタル的に復調処理を実行することにより、元の情報信号を復元する。
周波数変換回路21は、複数の既知信号を周期的に含む受信IF信号をアナログベースバンド信号に変換するもので、1つの発振回路22、2つの乗算回路23a、23bおよびπ/2位相回路24を含む。発振回路22は、予め定められた発振周波数の局部発振信号を発生する。発振回路22にて発生された局部発振信号は、2つの乗算回路23a、23bにそれぞれ入力される。この場合、Iチャネル用の乗算回路23aには、π/2移相回路24を介して局部発振信号が入力される。π/2移相回路24は、局部発振信号の位相をπ/2移相する。したがって、各乗算回路23a、23bには、互いに位相がπ/2だけずれた局部発振信号が入力されることになる。
乗算回路23a、23bは、それぞれ、受信IF信号と局部発振信号とを混合する。その結果、IチャネルおよびQチャネルのアナログベースバンド信号が作成される。この作成された各アナログベースバンド信号は、それぞれ、A/D変換回路25a、25bに与えられる。A/D変換回路25a、25bは、それぞれ、各アナログベースバンド信号をIチャネルおよびQチャネルのディジタルベースバンド信号に変換する。各ディジタルベースバンド信号は、それぞれ、DSP26に与えられる。
DSP26は、このA/D変換回路25a、25bにより作成されたディジタルベースバンド信号を入力とし、この入力されたディジタルベースバンド信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて、直接波の周波数およびドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいて周波数オフセットを補償する。こうして、DSP26は、ディジタルベースバンド信号の周波数を自動制御する。さらに、DSP26は、周波数オフセット補償後のディジタルベースバンド信号からフェージング歪みを除去し、その後ディジタルベースバンド信号を復調することにより、元の情報信号を復元する。
より具体的には、DSP26は、ROMなどで構成された記憶部26aを有している。記憶部26aには、コンピュータプログラムである復調処理プログラムが記憶されている。DSP26は、記憶部26aに記憶されている復調処理プログラムを実行することにより、上記2つの周波数の推定、周波数オフセット補償、フェージング歪み補償および復調などの一連の復調処理を実現する。
第3図は、DSP26において実行される復調処理を説明するためのフローチャートである。DSP26は、A/D変換回路25a、25bから与えられたディジタルベースバンド信号に対して波形整形処理などのフィルタリング処理を施す(ステップS1)。これにより、DSP26は、ディジタルベースバンド信号から所定の遮断周波数以上の雑音成分などの高周波成分を除去する。
その後、DSP26は、ナイキスト点検出処理を実行する(ステップS2)。より具体的には、DSP26は、ディジタルベースバンド信号のナイキスト点を検出することにより、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号r(kNF+i)を得る。なお、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号r(kNF+i)は、下記(1)式のように表される。ただし、下記(1)式において、c(kNF+i)はフェージングに起因する歪み量である。また、Aは信号の振幅であり、b(kNF+i)はシンボル値である。さらに、n(kNF+i)はガウス雑音である。
その後、DSP26は、自動周波数制御処理を実行する(ステップS3〜S5)。自動周波数制御処理は、発振回路22の発振周波数f0を基準とした周波数オフセットを推定し、この推定された周波数オフセットをディジタルベースバンド信号r(kNF+i)から除去することにより、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の周波数を自動制御する処理である。言い換えれば、DSP26は、無線受信信号に対応するディジタルベースバンド信号に周期的に含まれる複数の既知信号の歪み量に基づいて、直接波の周波数およびドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいてディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の周波数オフセットを補償することにより、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の周波数を自動制御する。
さらに言い換えれば、DSP26は、無線受信信号に相当するディジタルベースバンド信号r(kNF+i)に周期的に含まれる複数の既知信号の歪み量に基づいて推定された直接波の周波数およびドップラー広がりの中心周波数からディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の周波数オフセットを推定し、この推定された周波数オフセットをディジタルベースバンド信号r(kNF+i)から除去することにより、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の周波数を自動制御する。
自動周波数制御処理についてさらに詳述すれば、DSP26は、まず、周波数オフセット推定処理を実行する(ステップS3)。より具体的には、DSP26は、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)に基づいて、1シンボル間の位相回転量に相当する位相差θS(mLNF)を周波数オフセットとして推定する。さらに具体的には、DSP26は、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)に含まれる複数の既知信号の歪み量に基づき、推定周期T(=LNFTS)ごとに訪れる推定時刻mT(mは自然数)ごとに(第4図参照)、周波数オフセットとしての位相差θS(mLNF)を求める。
次いで、DSP26は、この求められた位相差θS(mLNF)を1シンボル周期TSで積分する積分処理を実行する(ステップS4)。具体的には、DSP26は、下記(2)式に示すように、位相差θS(mLNF)をシンボル周期TSごとに巡回加算する。これにより、DSP26は、累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)を得る。なお、下記(2)式において、lは、既知信号ブロックに1対1に対応する識別番号に相当するものであり、0以上(L−1)以下の値である(0≦l≦L−1)。また、Lは、推定周期T内に含まれる既知信号ブロックの個数である。
その後、DSP26は、この累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)に基づいてディジタルベースバンド信号r(kNF+i)から周波数オフセットを除去する周波数オフセット除去処理を実行する(ステップS5)。より具体的には、DSP26は、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の位相を累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)に見合った量だけ逆方向に回転する。これにより、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)から周波数オフセットを除去することができる。すなわち、DSP26は、下記(3)式に示すように、周波数オフセットが除去されたディジタルベースバンド信号rR(kNF+i)を得る。このようにして、DSP26は、ディジタルベースバンド信号の周波数を自動制御している。
その後、DSP26は、ディジタルベースバンド信号rR(kNF+i)からフェージング歪みを推定し除去するフェージング歪み補償処理を実行する(ステップS6)。より詳述すれば、DSP26は、ディジタルベーバンド信号rR(kNF+i)からNPシンボルの既知信号を抽出する。なお、この抽出された既知信号からは、送信機1および受信機10に起因する周波数オフセットはすでに除去されている。
DSP26は、この抽出されたNFシンボルの既知信号に基づいて、フェージング歪みを検出する。DSP26は、この検出されたフェージング歪みに基づいて、ガウス補間やウィーナー補間などの補間処理を実行する。こうして、DSP26は、情報信号におけるフェージング歪みを推定する。さらに、DSP26は、推定されたフェージング歪みを除去する。こうして、DSP26は、ディジタルベースバンド信号rR(kNF+i)のフェージング補償を実行する。
その後、DSP26は、データ判定処理を実行する(ステップS7)。より具体的には、DSP26は、このフェージング補償されたディジタルベースバンド信号から元の情報信号を判定する。こうして、復調処理が達成される。
第5図は、周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。この周波数オフセット推定処理は、第1周波数オフセット推定処理および第2周波数オフセット推定処理を含む。すなわち、DSP26は、第1周波数オフセット推定処理および第2周波数オフセット推定処理を組み合わせることにより、周波数オフセットを推定する。
第1周波数オフセット推定処理は、無線受信信号のうち直接波の周波数を第1周波数オフセットとして推定する処理である。第2周波数オフセット推定処理は、無線受信信号のうちドップラー広がりの中心周波数を第2周波数オフセットとして推定する処理である。DSP26は、これら2つの周波数オフセット推定処理により推定された第1および第2周波数オフセットから最終的な周波数オフセットを推定する。
このように2つの周波数オフセット推定処理を組み合わせる理由は、以下のとおりである。「背景技術」の項でも説明したように、直接波の周波数fDを周波数オフセットとして補償を行った場合、第24図(b)に示すように、ドップラー広がりは見かけ上さらに広がり、BER特性が劣化する。一方、ドップラー広がりの中心周波数fMを周波数オフセットとして補償を行う場合、第24図(c)に示すように、直接波はドップラーシフト量fDPに相当する周波数偏移を持つが、ドップラー広がりは元の広がりのままである。そのため、直接波の周波数fDを周波数オフセットとする場合よりもBER特性の劣化は少なくて済む。
第6図は、BER特性を示すグラフである。このグラフから明らかなように、直接波の周波数fDよりもドップラー広がりの中心周波数fMに近い周波数で補償を行う方がBER特性の劣化を最小限に抑えるという意味において、最適な周波数オフセットであることがわかる。すなわち、BER特性の劣化防止という点からすれば、直接波の周波数fDよりもドップラー広がりの中心周波数fMを周波数オフセットとする方が望ましいと言える。
一方、ドップラー広がりの中心周波数fMを周波数オフセットとして補償する場合、BER特性の劣化を抑えることは可能であるが、周波数オフセット補償範囲が相対的に狭いとの不具合がある。これに対して、直接波の周波数fDを周波数オフセットとして補償する場合、相対的に広い周波数オフセット補償範囲を確保できる。
より詳述すれば、一般に周波数オフセットΔfは、ある時間Δt内に位相がΔθだけ回転したとすると、下記(4)式のように表すことができる。
この周波数オフセットΔfの推定を既知信号間における位相回転量を使って行うとき、下記(5)式のように表すことができる。ただし、下記(5)式においてΔθPは既知信号間における位相回転量を示している。また、RS(symbol/s)は、信号の伝送速度を表している。
位相回転量ΔθPの検出範囲は、−π≦ΔθP≦πであるから、結局、周波数オフセットΔfの推定可能範囲は、下記(6)式のように表すことができる。
直接波の周波数fDを推定する際には、隣接する既知信号間の位相回転量を利用するから、上記(6)式においてNF=1とした場合と等価となる。すなわち、第1周波数オフセット推定処理における周波数オフセット推定範囲fDET1は、−Rs/2以上Rs/2以下の範囲となる。
また、ドップラー広がりの中心周波数fMを推定する際には、NFシンボルごとに挿入された既知信号ブロック間の位相回転量を利用するから、その周波数オフセット推定範囲fDET2は、上記(6)式に示された範囲と同じ範囲となる。すなわち、第2周波数オフセット推定処理における周波数オフセット推定範囲fDET2は、−Rs/2NF以上Rs/2NF以下の範囲となる。
このように、第1周波数オフセット推定処理における周波数オフセット推定範囲fDET1の方が第2周波数オフセット推定処理におけるそれよりもNF倍大きいことがわかる。すなわち、第1周波数オフセット推定処理においては、相対的に広い周波数オフセット推定範囲fDET1において周波数オフセットを推定できる。
以上のことから、この実施形態1では、直接波の周波数fDおよびドップラー広がりの中心周波数fMの両方を推定し、この両方の周波数fD、fMを周波数オフセット補償に用いることにより、十分な周波数オフセット補償範囲を確保しつつBER特性の劣化を抑制できるようにしている。
以下、周波数オフセット推定処理について詳述する。DSP26は、まず、歪み量検出処理を実行する(ステップT1)。歪み量検出処理は、既知信号に基づいて伝送路の歪み量をシンボル単位で検出する処理である。すなわち、DSP26は、下記(7)式に示すように、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)に含まれるNPシンボルの既知信号ブロックに基づいて、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を当該既知信号ブロックにおける各シンボルごとに検出する。この場合、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)は、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の振幅および位相の歪み量に相当する。なお、下記(7)式において、bPは、既知信号のシンボル値である。
その後、DSP26は、検出された伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、第1周波数オフセット推定処理を実行する(ステップT2)。より具体的には、DSP26は、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて直接波の周波数を第1周波数オフセットとして推定する。さらに具体的には、DSP26は、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)のうち隣接する既知信号間の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、隣接する既知信号間の位相回転量に相当する位相差θEP1(mLNF)を、第1周波数オフセットとして推定する。
その後、DSP26は、この推定された位相差θEP1(mLNF)に基づいて、上記各既知信号の歪み量から第1周波数オフセットを除去する周波数オフセット除去処理を実行する(ステップT3)。より具体的には、DSP26は、下記(8)式に示すように、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)の位相を位相差θEP1(mLNF)だけ回転させることにより、位相補償する。これにより、DSP26は、第1周波数オフセットが除去された歪み量cEP1(kNF+i)を得る。
その後、DSP26は、第2周波数オフセット推定処理を実行する(ステップT4)。より具体的には、DSP26は、第1周波数オフセット除去後の歪み量cEP1(kNF+i)に基づいて、第2周波数オフセットを推定する。さらに具体的には、DSP26は、第1周波数オフセット除去後の歪み量cEP1(kNF+i)のうち周期的に挿入される既知信号間の歪み量に基づいて、1シンボル間の位相回転量に相当する位相差θEP2(mLNF)を第2周波数オフセットとして推定する。
その後、DSP26は、位相合成処理を実行する(ステップT5)。より具体的には、DSP26は、下記(9)式に示すように、上記2つの位相差θEP1(mLNF)およびθEP2(mLNF)を合成することにより、最終的な周波数オフセットとしての位相差θS(mLNF)を推定する。
第7図は、第1周波数オフセット推定処理をより詳細に説明するためのフローチャートである。DSP26は、まず、位相差ベクトル演算処理を実行する(ステップU1)。より具体的には、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、位相差ベクトルDEP(kNF)を求める。さらに具体的には、DSP26は、下記(10)式に示すように、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)のうち任意の既知信号ブロック内の隣接する既知信号間の歪み量に基づいて、位相差ベクトルcEPi(kNF+i)を求める。下記(10)式において、iは、既知信号に1対1に対応する識別番号に相当するものであり、0以上(NP−2)以下の値である(0≦i≦NP−2)。また、*は複素共役を表している。
その後、DSP26は、位相差ベクトル平均化処理を実行する(ステップU2)。より具体的には、DSP26は、任意の既知信号ブロックにおける位相差ベクトルDEP(kNF)を推定期間Tにわたって平均化し、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を求める。
さらに具体的には、DSP26は、既知信号ブロックにおける位相差ベクトルDEP(kNF)を推定時刻(m−1)Tから推定時刻mTまでの推定期間Tにわたって収集する(第4図参照)。測定期間T内の既知信号ブロックの数がL個とすると、DSP26は、L個の位相差ベクトルDEP((m−1)T+lNF)を得る。なお、lは既知信号ブロックに1対1に対応する識別番号に相当するものであり、0以上(L−1)以下の値である(0≦l≦L−1)。その後、DSP26は、下記(11)式に示すように、上記収集されたL個の位相差ベクトルDEP((m−1)LNF+lNF)を平均化することにより、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を求める。
その後、DSP26は、位相差演算処理を実行する(ステップU3)。より具体的には、DSP26は、下記(12)式に示すように、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)に基づいて位相差θEP1(mLNF)を求める。こうして、第2周波数オフセット推定処理における周波数オフセット推定範囲fDET2に比べて広い周波数オフセット推定範囲fDET1内において、直接波の周波数に相当する第1周波数オフセットを推定する。
第8図は、第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。DSP26は、まず、歪み量平均化処理を実行する(ステップV1)。より具体的には、DSP26は、第1周波数オフセットが除去された既知信号ブロックにおける伝送路の歪み量cEP1(kNF+i)(0≦i≦NP−1)に対して平均化処理を施し、平均歪み量cEP(kNF)を求める。
さらに具体的には、DSP26は、下記(13)式に示すように、任意の既知信号ブロック内の各シンボルに対応する歪み量cEP1(kNF+i)を加算し、この加算値を既知信号ブロック内の既知信号のシンボル数NPで割る。こうして、DSP26は、雑音などを排除した1つの既知信号ブロックに関する伝送路の平均歪み量cEP(kNF)を得る。
次いで、DSP26は、この平均歪み量cEP(kNF)に基づいてブロック間離散フーリエ変換(DFT)処理を実行する(ステップV2)。より具体的には、DSP26は、推定期間T(=LNFTS)内にあるL個の既知信号ブロックにおける伝送路の平均歪み量cEP((m+l)NF)(0≦l≦L−1)に対してDFT処理を施すことにより、複数の周波数オフセット候補nΔfRESに対応した信号電力Pf(n)をそれぞれ求める。
さらに具体的には、DSP26は、周波数オフセット推定範囲fDET2内において、第9図(a)に「○」印で示すように所定の推定精度ΔfRESごとに設定された複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する信号電力Pf(n)を求める。ここに、上記周波数オフセット推定範囲fDET2は、上述のように、既知信号の挿入周期NFにより規定されるものであり、推定精度ΔfRESを用いれば、−MΔfRES以上MΔfRES以下の範囲であると表現できる。なお、上記Mは、定数であり、近似的に下記(14)式のように表される。
DSP26は、周波数オフセット推定範囲fDET2内において各周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する位相量だけ上記平均歪み量cEP((m+l)NF)の位相を回転する。その後、DSP26は、位相回転後の平均歪み量cEP((m+l)NF)をベクトル合成する。これにより、DSP26は、第9図(b)に矢印の塊として示すように、複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する信号電力Pf(n)を得る。
以上の処理は、下記(15)式に集約される。下記(15)式において、RSは信号の伝送速度であり、nは−(M+W)以上(M+W)以下の値である。なお、Wは後述する周波数ウィンドウの周波数帯域幅を表すパラメータである。
その後、DSP26は、ウインドウ電力演算処理を実行する(ステップV3)。より具体的には、DSP26は、所定の周波数幅を有する周波数ウインドウに1対1に対応するウインドウ電力Ef(n)を求める。周波数ウインドウの周波数幅は、たとえば推定精度ΔfRESの2W倍である。Wは、伝走路のフェージング状況に応じて設定されるもので、たとえばドップラー広がりの2倍程度に設定される。DSP26は、下記(16)式に示すように、この周波数ウインドウ内に存在する周波数オフセット候補nΔfRESの信号電力Pf(n)を加算することにより、当該周波数ウインドウに対応するウインドウ電力Ef(n)を求める。下記(16)式において、nは−M以上M以下の値である。
このように、周波数ウインドウを用いて信号電力Pf(n)を平滑化することにより、複数の周波数オフセット候補nΔfRESに対応する各ウインドウ電力Ef(n)のうち、第9図(c)に示すように、ドップラー広がりの中心周波数に相当する周波数オフセット候補nΔfRESのウインドウ電力Ef(n)が最大となる。
次いで、DSP26は、最大値検出処理を実行する(ステップV4)。より具体的には、DSP26は、下記(17)式に示すように、すべてのウインドウ電力Ef(n)の中の最大値を検出し、その最大値に対応した周波数オフセット候補nΔfRESを第2周波数オフセットとして推定する。すなわち、DSP26は、ドップラー広がりの中心周波数を第2周波数オフセットとして推定する。
次いで、DSP26は、位相差演算処理を実行する(ステップV5)。より具体的には、DSP26は、下記(18)式に示すように、上記推定された第2周波数オフセットに基づいて、1シンボル間における位相差θEP2(mLNF)を求める。こうして、ドップラー広がりの中心周波数に対応する位相差θEP2(mLNF)を得る。
以上のようにこの実施形態1によれば、直接波の周波数およびドップラー広がりの中心周波数を両方推定して最終的な周波数オフセットを推定している。したがって、十分な周波数オフセット補償範囲を確保でき、かつ、良好なBER特性を実現できる。すなわち、十分な周波数オフセット補償範囲の確保および良好なBER特性の実現を両立できる。そのため、ライスフェージング環境下においても、フェージング歪みの補償を良好に行える。ゆえに、元のデータを高品質に復元できる。よって、受信機のユーザへのサービス向上を図ることができる。
第10図は、この実施形態1に係る周波数オフセット推定特性を示すグラフである。図中、「○」はこの実施形態1のように直接波の周波数およびドップラー広がりの中心周波数の合成値を周波数オフセットとした場合のBERを示している。また、「△」は、直接波の周波数のみを周波数オフセットとした場合のBERを示している。さらに、「□」は、ドップラー広がりの中心周波数のみを周波数オフセットとした場合のBERを示している。
このグラフから明らかなように、実施形態1に係るBER特性は、直接波の周波数のみを周波数オフセットとした場合に比べて良好なBER特性を示し、かつ、ドップラー広がりの中心周波数のみを周波数オフセットとした場合に比べて広い周波数オフセット補償範囲を実現している。
また、上記実施形態1によれば、推定精度ΔfRESごとに周波数オフセット候補nΔfRESを設定し、各周波数オフセット候補nΔfRESに対応する信号電力Pf(n)を求め、周波数ウインドウを使って信号電力Pf(n)を平滑化することにより第2周波数オフセットを推定している。したがって、たとえば推定精度ΔfRESを細かくすることにより、第2周波数オフセットの推定精度を向上できる。そのため、一層良好なBER特性を実現することができる。
実施形態2
第11図は、この発明の実施形態2に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)から第1周波数オフセットとしての位相差θEP1(mLNF)を求めている。これに対して、この実施形態2では、忘却係数λを用いて平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を受信バースト信号間においてさらに平均化することにより、第1周波数オフセットとしての位相差θEP1(mLNF)を求めている。これにより、周波数オフセットの推定精度の向上を図っている。
より詳述すれば、DSP26は、位相差ベクトルDEP(mLNF)を求め(ステップW1)、当該位相差ベクトルDEP(mLNF)を平均化して平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を求めた後(ステップW2)、バースト間平均化処理を実行する(ステップW3)。バースト間平均化処理は、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を受信バースト信号間においてさらに平均化する処理である。
さらに具体的には、DSP26は、平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を少なくとも次の受信バースト信号が受信されるまで保持する。DSP26は、当該受信バースト信号Bが受信されたときの平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)と一つ前の受信バースト信号(B−1)が受信されたときの平均位相差ベクトル<DEPA(mLNF)>B−1とに基づいて、下記(19)式に従って、平均位相差ベクトル<DEPA(mLNF)>Bを求める。ただし、下記(19)式において、λは忘却係数であり、0以上1以下の値である(0≦λ≦1)。
その後、DSP26は、平均位相差ベクトル<DEPA(mLNF)>Bに基づいて、位相差演算処理を実行する(ステップW4)。より具体的には、DSP26は、下記(20)式に示すように、平均位相差ベクトル<DEPA(mLNF)>Bに基づいて、位相差θEP1(mLNF)を求める。このようにして、DSP26は、直接波の周波数に対応する第1周波数オフセットを推定する。
以上のようにこの実施形態2によれば、忘却係数λを用いることで過去の平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)を徐々に忘れながら平均化処理を実行している。したがって、フェージング状況が時間的に変化する場合であっても、その時間変動に追従しながら平均位相差ベクトルDEPA(mLNF)の平均化処理を行うことができる。そのため、伝送路の状況により適合した位相差ベクトルを得ることができる。ゆえに、低C/Nでかつ周波数オフセットが時間的に変動する環境下においても、周波数オフセットを高精度に推定することができる。
実施形態3
第12図は、この発明の実施形態3に係る第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、1回のウインドウ電力演算処理により求められたウインドウ電力Ef(n)の中から最大値Ef(nMAX)を検出し、第2周波数オフセットを推定している。これに対して、この実施形態3では、忘却係数λを用いてウインドウ電力Ef(n)を受信バースト信号間において平均化した後最大値を検出して第2周波数オフセットを推定している。これにより、周波数オフセットの推定精度の向上を図っている。
より詳述すれば、DSP26は、平均歪み量cEP(kNF)を求め(ステップX1)、当該平均歪み量cEP(kNF)に対してブロック間DFT処理を施すことで信号電力Pf(n)を求め(ステップX2)、さらに当該信号電力Pf(n)からウインドウ電力Ef(n)を求めた後(ステップX3)、ウインドウ電力平均化処理を実行する(ステップX4)。
より具体的には、DSP26は、ウインドウ電力Ef(n)を少なくとも次の受信バースト信号が受信されるまで保持する。DSP26は、当該受信バースト信号Bが受信されたときのウインドウ電力Ef(n)と1つ前の受信バースト信号(B−1)が受信されたときの平均ウインドウ電力<Ef(n)>B−1とに基づいて、下記(21)式に従って、平均ウインドウ電力<Ef(n)>Bを求める。ただし、下記(21)式において、λは忘却係数であり、0以上1以下の値である(0≦λ≦1)。
DSP26は、この求められた平均ウインドウ電力<Ef(n)>Bの中から下記(22)式に示すように、平均ウインドウ電力の最大値<Ef(nmax)>Bを検出する(ステップX5)。
その後、DSP26は、この最大値<Ef(nmax)>Bに対応する周波数オフセット候補nΔfRESに対応する位相差θEP2(mLNF)を、第2周波数オフセットとして推定する(ステップX6)。
以上のようにこの実施形態3によれば、忘却係数λを用いることで過去のウインドウ電力を徐々に忘れながら平均化処理を実行している。したがって、フェージング状況が時間的に変化する場合であっても、その時間変動に追従しながらウインドウ電力の平均化処理を行うことができる。そのため、伝送路の状況により適合したウインドウ電力を得ることができる。ゆえに、低C/Nでかつ周波数オフセットが時間的に変動する環境下においても、周波数オフセットを高精度に推定することができる。
実施形態4
第13図は、この発明の実施形態4に係る第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態3では、ウインドウ電力Ef(n)を平均化することにより、雑音の影響を除去し、もって第2周波数オフセットの推定精度の向上を図っている。一方、雑音の影響を除去することで第2周波数オフセットの推定精度の向上を図ることは、信号電力Pf(n)を平均化することによっても達成可能である。そこで、この実施形態4では、信号電力Pf(n)を受信バースト信号間において平均化することにより、雑音の影響を除去し、もって第2周波数オフセットの推定精度の向上を図ることとしている。
より詳述すれば、DSP26は、平均歪み量cEPA(kNF)を求め(ステップY1)、当該平均歪み量cEPA(kNF)に対してDFT処理を施すことで信号電力Pf(n)を求めた後(ステップY2)、信号電力平均化処理を実行する(ステップY3)。より具体的には、DSP26は、信号電力Pf(n)を少なくとも次の受信バースト信号が受信されるまで保持する。DSP26は、当該受信バースト信号Bが受信されたときの信号電力Pf(n)と1つ前の受信バースト信号(B−1)が受信されたときの平均信号電力<Pf(n)>B−1とに基づいて、下記(23)式に従って平均信号電力<Pf(n)>Bを求める。ただし、下記(23)式において、λは忘却係数であり、0以上1以下の値である(0≦λ≦1)。
その後、DSP26は、この求められた平均信号電力<Pf(n)>Bに基づいてウインドウ電力Ef(n)を求めた後(ステップY4)、ウインドウ電力の最大値Ef(nmax)を検出し(ステップY5)、当該最大値Ef(nmax)に対応する周波数オフセット候補nΔfRESに対応する位相差θEP2(mLNF)を、第2周波数オフセットとして推定する(ステップY6)。
以上のようにこの実施形態4によれば、忘却係数λを用いることで過去の信号電力Pf(n)を徐々に忘れながら平均化処理している。したがって、フェージング状況が時間的に変化する場合であっても、その時間変動に追従しながら信号電力の平均化処理を行うことができる。そのため、伝送路の状況により適合した信号電力を得ることができる。ゆえに、低C/Nでかつ周波数オフセットが時間的に変動する環境下においても、周波数オフセットを高精度に推定することができる。
実施形態5
第14図は、この発明の実施形態5に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、隣接する既知信号間における位相差ベクトルDEP(kNF)を求めている。これに対して、この実施形態5では、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、隣接する既知信号間におけるスカラー量である位相差情報のみを求めることにより、処理の簡素化を図っている。
より詳述すれば、DSP26は、最初に、既知信号間における位相差情報演算処理を実行する(ステップZ1)。この位相差情報演算処理は、隣接する既知信号間のスカラー量としての位相差情報を求める処理である。すなわち、DSP26は、下記(24)式に示すように、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を位相情報θEPi(kNF+i)に変換し、隣接する既知信号間における位相差情報ΔθEP(kNF)を求める。下記(24)式において、iは、既知信号に1対1に対応する識別番号に相当するものであり、0以上(NP−2)以下の値である(0≦i≦NP−2)。
その後、DSP26は、位相差情報ΔθEP(kNF)を1バースト内で平均化する平均化処理を実行する(ステップZ2)。より具体的には、DSP26は、位相差情報ΔθEP(kNF)を推定時刻(m−1)Tから推定時刻mTまでの推定期間Tにわたって収集する。推定期間T内の既知信号ブロックの数がL個とすると、DSP26は、L個の位相差情報ΔθEP((m−1)LNF+lNF)を得る。なお、1は既知信号ブロックに1対1に対応する識別番号に相当するものであり、0以上(L−1)以下の値である(0≦l≦L−1)。
その後、DSP26は、下記(25)式に示すように、収集されたL個の位相差情報ΔθEP((m−1)LNF+lNF)を平均化処理することにより、第1周波数オフセットとしての平均位相差θEP1(mLNF)を求める。
以上のようにこの実施形態5によれば、位相差情報のみを用いて平均化処理している。したがって、処理の簡素化を図ることができる。
実施形態6
第15図は、この発明の実施形態6に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に共役複素数を乗じたものを総和することにより、隣接する既知信号間における位相差ベクトルDEP(kNF)を求めている。これに対して、この実施形態6では、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に対してDFT処理を施すことにより、上記位相差ベクトルDEP(kNF)を求めている。
より詳述すれば、DSP26は、シンボル間DFT処理を実行する(ステップR1)。より具体的には、DSP26は、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に対してDFT処理を施すことにより、複数の周波数オフセット候補nΔfRESに対応した信号電力Pf1(n)をそれぞれ求める。
さらに具体的には、DSP26は、下記式(26)に示すように、−Rs/2以上Rs/2以下の周波数オフセット推定範囲fDET1内において、各周波数オフセット候補nΔfRESに対応した位相量だけ伝送路の歪み量CEPi((m−1)LNF+lNF+i)の位相をそれぞれ回転する。その後、DSP26は、当該位相回転後の歪み量cEPi((m−1)LNF+lNF+i)をベクトル合成し、上記周波数オフセット推定範囲内の複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応した信号電力Pf1(n)を求める。なお、下記(26)式において、nは近似的に−RS/(2ΔfRES)以上RS/(2ΔfRES)以下の値となる。
その後、DSP26は、位相回転後の歪み量cEPi((m−1)LNF+lNF+i)をベクトル合成し、複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応した信号電力Pf1(n)を得る。
その後、DSP26は、ウインドウ電力演算処理を実行する(ステップR2)。より具体的には、DSP26は、下記(27)式に示すように、2W1ΔfRESの周波数幅を有するウインドウ内の周波数オフセット候補nΔfRESに対応する信号電力Pf1(n)を加算することにより、ウインドウ電力Ef1(n)を求める。
その後、DSP26は、ウインドウ電力Ef1(n)の中の最大値Ef1(nMAX)を検出する最大値検出処理を実行し(ステップR3)、検出された最大値Ef1(nMAX)に基づいて位相差演算処理を実行することにより(ステップR4)、第1周波数オフセットとしての位相差θEP1(mLNF)を推定する。
以上のようにこの実施形態6によれば、推定精度ΔfRESごとに周波数オフセット候補nΔfRESを設定し、各周波数オフセット候補nΔfRESに対応する信号電力Pf1(n)を求め、周波数ウインドウを使って信号電力Pf1(n)を平滑化することにより第1周波数オフセットを推定している。したがって、たとえば推定精度ΔfRESを細かく設定することにより、第1周波数オフセットの推定精度を向上できる。
実施形態7
第16図は、この発明の実施形態7に係る周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1ないし6では、第1周波数オフセットとしての位相差θEP1(mLNF)に基づいて伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を補償し、当該補償後の歪み量cEPi(kNF+i)から第2周波数オフセットとしての位相差θEP2(mLNF)を推定している。
ここで、第1周波数オフセットは、直接波の周波数fDに相当するものであり、この直接波の周波数fDはドップラー広がりの中心周波数fMの近傍に存在する(第9図(a)参照)。したがって、当該直接波の周波数fDを中心にしたある程度の範囲を周波数オフセット推定範囲とすれば、その範囲内にドップラー広がりの中心周波数fMが存在すると予想できる。
そこで、この実施形態7では、第1周波数オフセットに基づいて第2周波数オフセットを推定する際の周波数オフセット推定範囲を規定することとしている。
より詳述すれば、DSP26は、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を検出した後(ステップQ1)、第1周波数オフセット推定処理および第2周波数オフセット推定処理を並列に実行する。より具体的には、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて第1周波数オフセットを推定する。DSP26は、たとえばこの第1周波数オフセットを一時的に保持しておく。
また、DSP26は、この第1周波数オフセット推定処理と並行して、歪み量平均化処理を実行する(ステップQ2)。より具体的には、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に対して平均化処理を施し、平均歪み量cEP(kNF)を求める。
その後、DSP26は、DFT処理を実行する(ステップQ3〜Q4)。より具体的には、DSP26は、推定期間T(=LNFTS)内にあるL個の平均歪み量cEP((m+l)NF)に対してDFT処理を施し、複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する信号電力Pf(n)を求める。
さらに具体的には、DSP26は、上記第1周波数オフセットに基づいて周波数オフセット推定範囲を設定し(ステップQ3)、当該周波数オフセット推定範囲内の複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する信号電力Pf(n)を求める(ステップQ4)。
より具体的には、DSP26は、推定精度ΔfRESごとに予め設定されている周波数オフセット候補nΔfRESのうちのいずれか1つに上記第1周波数オフセットを対応付ける。ここに、第1周波数オフセットを対応付けた周波数オフセット候補をNΔfRESとする。また、DSP26は、この周波数オフセット候補NΔfRESを中心とした範囲、すなわち(−M+N)ΔfRES以上(M+N)ΔfRES以下の範囲を周波数オフセット推定範囲として設定する。なお、Mは、上記(14)式で示された定数である。
その後、DSP26は、下記(28)式に示すように、この設定された周波数オフセット推定範囲内の各周波数オフセット候補ΔfRESに対応した位相量に基づいて、平均歪み量cEP((m+l)NF)(0≦l≦L−1)の位相を回転する。なお、下記(28)式において、nは(−M−W+N)以上(M+W+N)以下の値である。
DSP26は、位相回転後の平均歪み量cEP((m+l)NF)をベクトル合成する。こうすることにより、DSP26は、複数の周波数オフセット候補nΔfRESにそれぞれ対応する信号電力Pf(n)を求める。
その後、DSP26は、所定の周波数幅を有する周波数ウインドウ内において信号電力Pf(n)を巡回加算することによりウインドウ電力Ef(n)を求める(ステップQ5)。また、DSP26は、当該ウインドウ電力の最大値Ef(nMAX)を求め(ステップQ6)、この最大値Ef(nMAX)の周波数オフセット候補nΔfRESを、最終的な周波数オフセットとして推定する(ステップQ7)。
以上のようにこの実施形態7によれば、第1周波数オフセットに基づいて周波数オフセットを推定する際の周波数オフセット推定範囲を設定している。したがって、第1周波数オフセット除去処理および位相合成処理などは不要となる。そのため、処理の簡素化を図ることができる。
しかも、第1周波数オフセットを推定する際に比較的広い周波数オフセット推定範囲で推定を行っているので、十分な周波数オフセット補償範囲は確保されている。また、最終的な周波数オフセットを推定するのにドップラー広がりの中心周波数を用いているので、良好なBER特性も確保されている。そのため、十分な周波数オフセット補償範囲の確保およびBER特性の劣化防止を図るとの実施形態1と同様の効果も奏することができる。
実施形態8
第17図は、この発明の実施形態8に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、ディジタルベースバンド信号の位相を回転する周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の後に行っている。これに対して、この実施形態8では、周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に行っている。
受信バースト信号の周波数オフセットは、「背景技術」の項でも説明したように、送信機1および受信機10の有する発振回路の安定度に起因して発生する。特に、低コストの発振回路を使用する場合には、周波数安定度が低いために、大きな周波数オフセットが生じる。また、発振回路の周波数安定度は、温度などの周囲環境および電源電圧の変動などに影響される。
したがって、最初は小さな周波数オフセットであっても時間経過とともに大きな周波数オフセットとなることも十分に考えられる。この場合、受信バースト信号の周波数帯域がフィルタリング処理における遮断周波数と比較して大きな周波数帯まで広がるおそれがある。そのため、受信バースト信号の一部がフィルタリング処理により削られる。ゆえに、データ判定を良好に行えないおそれがある。
以上のことから、この実施形態8では、周波数オフセット除去処理をフィルタリンダ処理の前に実行することにしている。より詳述すれば、この実施形態8では、周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に実行するとともに、歪み量検出処理、周波数オフセット推定処理および積分処理をフェージング歪み補償処理およびデータ判定処理などの一連の処理と並列に実行する。
より詳述すれば、DSP26は、第17図(a)に示すように、A/D変換回路25a、25bからディジタルベースバンド信号が与えられると、フィルタリング処理に先立って、周波数オフセット除去処理を実行する(ステップP1)。より具体的には、DSP26は、別個に行われている積分処理において求められた累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)に基づいて、上記ディジタルベースバンド信号の位相を逆方向に回転する。これにより、周波数オフセットが除去されたディジタルベースバンド信号が得られる。
その後、DSP26は、当該ディジタルベースバンド信号に対してフィルタリング処理を施し(ステップP2)、雑音成分等を除去する。その後、DSP26は、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出し(ステップP3)、当該ディジタルベースバンド信号からフェージング歪みを除去した後(ステップP4)、データ判定処理を実行する(ステップP5)。
一方、DSP26は、第17図(b)に示すように、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出したか否かを判別する(ステップN1)。ナイキスト点を検出した場合、DSP26は、このナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号に基づいて、伝送路の歪み量CEPi(kNF+i)を検出する(ステップN2)。その後、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて周波数オフセットに対応する位相差θS(mLNF)を推定し(ステップN3)、この位相差θS(mLNF)を巡回加算することにより累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)を求める(ステップN4)。DSP26は、この求められた累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)を、ステップP1における周波数オフセット除去処理に利用する。
以上のようにこの実施形態8によれば、周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に行っている。したがって、受信バースト信号の周波数帯域がフィルタリング処理における遮断周波数よりも大きくなった場合でも、受信バースト信号の一部が削られることなく、周波数オフセットの除去を行うことができる。そのため、データ判定を良好に行うことができる。
実施形態9
第18図は、この発明の実施形態9に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1ないし8では、ディジタルベースバンド信号の位相を直接回転させることにより、周波数オフセットを補償している。これに対して、この実施形態9では、発振回路22にて発生される局部発振信号の周波数を変化させることにより受信バースト信号の位相を回転させ、周波数オフセットを補償するようにしている。
より詳述すれば、この実施形態9では、ディジタルベースバンド信号に対してソフト的なディジタル信号処理を施して周波数オフセットを除去するのではなく、VCOからなる発振回路22に対する印加電圧を制御することにより周波数オフセットを除去する。
すなわち、この実施形態9においては、第18図(a)に示すように、フィルタリング処理(ステップM1)、ナイキスト点検出処理(ステップM2)、フェージング歪み補償処理(ステップM3)およびデータ判定処理(ステップM4)を実行するとともに、この一連の処理と並列に、第18図(b)に示すように、歪み量検出処理、周波数オフセット推定処理およびVCO22への印加電圧を制御するVCO制御処理を実行する。
さらに詳述すれば、DSP26は、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出したか否かを判別する(ステップL1)。ナイキスト点を検出した場合、DSP26は、このナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号に基づいて伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を検出する(ステップL2)。その後、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて周波数オフセットを推定する(ステップL3)。その後、DSP26は、この推定された周波数オフセットに応じた印加電圧をVCO22に与える(ステップL4)。
これにより、VCO22は、従前の発振周波数から周波数オフセットに応じた量だけ偏移した発振周波数を有する局部発振信号を発振することになる。したがって、周波数変換回路21は、周波数オフセットを除去したアナログベースバンド信号を出力することになる。そのため、良好な周波数オフセット補償を実現することができる。
以上のようにこの実施形態9によれば、VCO22にて発生される局部発振信号の周波数を調整することにより受信IF信号から周波数オフセットを除去している。すなわち、DSP26で行われるフィルタリング処理の前に周波数オフセットを除去している。したがって、上記実施形態8と同様に、受信バースト信号の周波数帯域がフィルタリンダ処理における遮断周波数よりも大きな周波数帯まで広がったとしても、受信バースト信号の一部が削られることなく、周波数オフセットの除去を行うことができる。そのため、データ判定を良好に行うことができる。
実施形態10
第19図は、この発明の実施形態10に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態1では、第1周波数オフセットと第2周波数オフセットとを合成して最終的な周波数オフセットを推定し、当該周波数オフセットに応じて周波数オフセット補償を行うことにより、ディジタルベースバンド信号の周波数を自動制御している。これに対して、この実施形態10では、ディジタルベースバンド信号に対して第1周波数オフセットに応じて周波数オフセット補償を行った後、さらに当該補償後のディジタルベースバンド信号に対して第2周波数オフセットに応じた周波数オフセット補償を行うことにより、ディジタルベースバンド信号の周波数を自動制御している。
より詳述すれば、DSP26は、ディジタルベースバンド信号に対して所定のフィルタリング処理を施した後(ステップK1)、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出する(ステップK2)。次いで、DSP26は、当該ディジタルベースバンド信号を対象として第1自動周波数制御処理(以下「第1AFC処理」という)を実行した後(ステップK3)、当該第1AFC処理後のディジタルベースバンド信号を対象として第2自動周波数制御処理(以下「第2AFC処理」という)を実行する(ステップK4)。そして、DSP26は、第2AFC処理後のディジタルベースバンド信号に対してフェージング歪み補償処理を施し(ステップK5)、データ判定処理を施すことにより(ステップK6)、元の情報信号に対応するデータを復元する。
第20図は、第1AFC処理を説明するためのフローチャートである。DSP26は、伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)をシンボルごとに検出した後(ステップJ1)、第1周波数オフセット推定処理を実行する(ステップJ2)。第1周波数オフセット推定処理は、上記実施形態1などと同様の処理であり、この処理によりDSP26は、1シンボル間の位相回転量に相当する第1周波数オフセットとしての位相差θEP1(mLNF)を推定する。
その後、DSP26は、位相差θEP1(mLNF)を巡回加算する積分処理を実行し(ステップJ3)、累積位相差θ1(m−1)LNF+lNF+i)を得る。この場合、DSP26は、推定時刻mTから累積された位相差θ1(m−1)LNF+lNF+i)をシンボル周期TSごとに得る。
その後、DSP26は、第1周波数オフセット除去処理を実行する(ステップJ4)。より具体的には、DSP26は、累積位相差θ1((m−1)LNF+lNF+i)に基づいて、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の位相を累積位相差θ1((m−1)LNF+lNF+i)に見合った量だけ逆方向に回転する。これにより、ディジタルベースバンド信号r(kNF+i)から第1周波数オフセットを除去することができる。こうして、DSP26は、第1周波数オフセットに基づくディジタルベースバンド信号r(kNF+i)の自動周波数制御を達成する。
第21図は、第2AFC処理を説明するためのフローチャートである。DSP26は、第1AFC処理後のディジタルベースバンド信号の既知信号ブロックに基づいて、伝送路の歪み量cEPi2(kNF+i)を既知信号ブロックにおける各シンボルごとに検出する(ステップI1)。
その後、DSP26は、この検出された伝送路の歪み量cEPi2(kNF+i)に基づいて、実施形態1と同様の第2周波数オフセット推定処理を実行する(ステップI2)。こうして、DSP26は、1シンボル間の位相回転量に相当する第2周波数オフセットとしての位相差θEP2(mLNF)を推定する。
その後、DSP26は、位相差θEP2(mLNF)を巡回加算する積分処理を実行し(ステップI3)、累積位相差θ2((m−1)LNF+lNF+i)を得る。この場合、DSP26は、推定時刻mTから累積された位相差θ2((m−1)LNF+lNF+i)をシンボル周期TSごとに得る。
その後、DSP26は、第2周波数オフセット除去処理を実行する(ステップI4)。より具体的には、DSP26は、累積位相差θ2((m−1)LNF+lNF+i)に基づいて、ディジタルベースバンド信号rR1(kNF+i)の位相を累積位相差θ2((m−1)LNF+lNF+i)に見合った量だけ逆方向に回転する。これにより、ディジタルベースバンド信号rR1(kNF+i)から第2周波数オフセットを除去することができる。こうして、DSP26は、第2周波数オフセットに基づくディジタルベースバンド信号rR1(kNF+i)の自動周波数制御を達成する。
以上のようにこの実施形態10によっても、十分な周波数オフセット補償範囲の確保と良好なBER特性の確保との両立を図ることができる。
実施形態11
第22図は、この発明の実施形態11に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態10では、フィルタリング処理の後で周波数オフセット除去処理を実行している。これに対して、この実施形態11では、周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に実行している。
より詳述すれば、この実施形態11では、第1AFC処理の一部である第1周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に実行するとともに、第1AFC処理の残余の処理、すなわち歪み量検出処理、第1周波数オフセット推定処理および積分処理を一連の処理と並列に実行する。
さらに詳述すれば、DSP26は、第22図(a)に示すように、A/D変換回路25a、25bからディジタルベースバンド信号が与えられると、フィルタリング処理に先立って、第1周波数オフセット除去処理を実行する(ステップH1)。より具体的には、DSP26は、この一連の処理とは並列に行われている積分処理において求められた第1周波数オフセットに対応する累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)に見合った量だけ上記ディジタルベースバンド信号の位相を逆方向に回転させる。これにより、第1周波数オフセットが除去されたディジタルベースバンド信号が得られる。
その後、DSP26は、当該ディジタルベースバンド信号に対してフィルタリング処理を施し(ステップH2)、雑音成分等を除去した後、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出する(ステップH3)。その後、DSP26は、当該ディジタルベースバンド信号に基づいて第2AFC処理を実行する(ステップH4)。この第2AFC処理を実行することにより、DSP26は、最終的な周波数オフセットを除去したディジタルベースバンド信号を得ることができる。次いで、DSP26は、当該ディジタルベースバンド信号からフェージング歪みを除去した後(ステップH5)、データ判定処理を実行する(ステップH6)。
一方、DSP26は、第22図(b)に示すように、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出したか否かを判別する(ステップG1)。ナイキスト点を検出した場合、DSP26は、このナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号に基づいて伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を検出する(ステップG2)。その後、DSP26は、この伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて第1周波数オフセットに対応する位相差θS(mLNF)を推定し(ステップG3)、この位相差θS(mLNF)を巡回加算することにより累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)を求める(ステップG4)。DSP26は、この求められた累積位相差θ((m−1)LNF+lNF+i)を、ステップH1における第1周波数オフセット除去処理に利用する。
以上のようにこの実施形態11によれば、第1周波数オフセット除去処理をフィルタリング処理の前に行っている。したがって、受信IF信号の周波数帯域がフィルタリング処理における遮断周波数よりも大きくなった場合でも、受信IF信号の一部が削られることなく、第1周波数オフセットの除去を行うことができる。そのため、データ判定を良好に行うことができる。
実施形態12
第23図は、この発明の実施形態12に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
上記実施形態10では、ディジタルベースバンド信号の位相を直接回転させることにより、周波数オフセットを補償している。これに対して、この実施形態12では、VCOである発振回路22にて発生される局部発振信号の周波数を変化させることにより受信バースト信号の位相を回転させ、周波数オフセットを補償するようにしている。
より詳述すれば、この実施形態12では、ディジタルベースバンド信号に対してソフト的なディジタル信号処理を施して周波数オフセットを除去するのではなく、VCOからなる発振回路22に対する印加電圧を制御することにより周波数オフセットを除去する。
すなわち、この実施形態12においては、第23図(a)に示すように、フィルタリング処理(ステップF1)、ナイキスト点検出処理(ステップF2)、第2AFC処理(ステップF3)、フェージング歪み補償処理(ステップF4)およびデータ判定処理(ステップF5)を実行するとともに、この一連の処理と並列に、第23図(b)に示すように、歪み量検出処理、第1周波数オフセット推定処理およびVCO22への印加電圧を制御するVCO制御処理を実行する。
さらに詳述すれば、DSP26は、ナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号を検出したか否かを判別する(ステップE1)。ナイキスト点を検出した場合、DSP26は、このナイキスト点に対応するディジタルベースバンド信号に基づいて伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)を検出する(ステップE2)。その後、DSP26は、上記伝送路の歪み量cEPi(kNF+i)に基づいて、第1周波数オフセットを推定する(ステップE3)。その後、DSP26は、この推定された第1周波数オフセットに応じた印加電圧をVCO22に与える(ステップE4)。
これにより、VCO22は、従前の発振周波数から第1周波数オフセットに応じた量だけ偏移した発振周波数を有する局部発振信号を発振することになる。したがって、周波数変換回路21は、第1周波数オフセットを除去したアナログベースバンド信号を出力することになる。そのため、良好な周波数オフセット補償を実現することができる。
以上のようにこの実施形態12によれば、VCO22にて発生される局部発振信号の周波数を調整することにより受信IF信号から周波数オフセットを除去している。すなわち、フィルタリング処理の前に第1周波数オフセットを除去している。したがって、上記実施形態11と同様に、受信IF信号の周波数帯域がフィルタリング処理における遮断周波数よりも大きな周波数帯まで広がったとしても、受信IF信号の一部が削られることなく、周波数オフセットの除去を行うことができる。そのため、データ判定を良好に行うことができる。
他の実施形態
この発明の実施形態の説明は以上のとおりであるが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば上記各実施形態では、通信方式としてTDMAを適用する場合を例にとって説明している。しかし、通信方式としては、FDMA(Frequency Division Multiple Access)およびCDMA(Code Division Multiple Access)などを適用することもできる。この場合、無線受信信号はTDMAの場合のようにバースト信号ではなく連続信号となる。しかし、この場合であっても、この発明を容易に適用できることはもちろんである。
また、上記実施形態では、復調処理をDSP26によりソフトウエア的に実現する場合を例にとっている。しかし、たとえば、DSP26により実行される復調処理の各ステップをそれぞれハードウエア的な回路で実現するようにしてもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の実施形態1に係る自動周波数制御方法が適用される無線通信システムの全体構成を示す概念図である。
第2図は、バースト信号のフォーマットを示す図である。
第3図は、復調処理を説明するためのフローチャートである。
第4図は、周波数オフセットの推定タイミングを説明するための図である。
第5図は、周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第6図は、BER特性を示すグラフである。
第7図は、第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第8図は、第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第9図は、第2周波数オフセット推定処理を説明するための概念図である。
第10図は、実施形態1に基づくBERを説明するためのグラフである。
第11図は、この発明の実施形態2に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第12図は、この発明の実施形態3に係る第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第13図は、この発明の実施形態4に係る第2周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第14図は、この発明の実施形態5に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第15図は、この発明の実施形態6に係る第1周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第16図は、この発明の実施形態7に係る周波数オフセット推定処理を説明するためのフローチャートである。
第17図は、この発明の実施形態8に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
第18図は、この発明の実施形態9に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
第19図は、この発明の実施形態10に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
第20図は、第1AFC処理を説明するためのフローチャートである。
第21図は、第2AFC処理を説明するためのフローチャートである。
第22図は、この発明の実施形態11に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
第23図は、この発明の実施形態12に係る復調処理を説明するためのフローチャートである。
第24図は、周波数オフセット推定範囲、推定精度および周波数オフセット候補の関係を説明するための概念図である。
Claims (14)
- 隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号の周波数オフセットを補償することにより上記無線受信信号の周波数を制御する自動周波数制御方法において、上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数および上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいて上記無線受信信号の周波数オフセットを補償するようにしたことを特徴とする自動周波数制御方法。
- 請求の範囲第1項において、上記無線受信信号は、TDMAにおける所定のタイムスロットに同期したバースト信号であることを特徴とする自動周波数制御方法。
- 隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号から周波数オフセットを除去することにより上記無線受信信号の周波数を制御する自動周波数制御方法において、
上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて推定された上記無線受信信号の直接波の周波数および上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数から上記無線受信信号の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定ステップと、
この推定された周波数オフセットを上記無線受信信号から除去する周波数オフセット除去ステップとを含むことを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第3項において、周波数オフセット推定ステップは、
上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量をそれぞれ求める歪み量演算ステップと、
この求められた歪み量のうち隣接する既知信号間の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数を推定する第1周波数オフセット推定ステップと、
この推定された直接波の周波数に基づいて、上記各既知信号の歪み量から周波数オフセットを除去する歪み量周波数オフセット除去ステップと、
この周波数オフセット除去後の歪み量のうち周期的に挿入される既知信号間の歪み量に基づいて、上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定する第2周波数オフセット推定ステップと、
上記直接波の周波数に対応する位相量と上記ドップラー広がりの中心周波数に対応する位相量とを合成することにより、上記無線受信信号の周波数オフセットを推定する合成ステップとを含むものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第4項において、第1周波数オフセット推定ステップは、
上記求められた各歪み量のうち隣接する既知信号間の歪み量に基づいて、位相差ベクトルを求めるステップと、
この求められた位相差ベクトルを所定期間にわたって平均化することにより平均位相差ベクトルを求めるステップと、
この求められた平均位相差ベクトルに基づいて、上記直接波の周波数を推定するステップとを有するものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第4項において、第2周波数オフセット推定ステップは、
周波数オフセットが除去された後の各歪み量を平均化して平均歪み量を求めるステップと、
この求められた平均歪み量に基づいて、所定の周波数オフセット推定範囲内において所定間隔ごとに設定された複数の周波数オフセット候補にそれぞれ対応する信号電力を求めるステップと、
この求められた信号電力のうち所定周波数幅の周波数ウインドウ内の各周波数オフセット候補の信号電力をそれぞれ加算することにより、上記周波数オフセット推定範囲内のすべての周波数オフセット候補のウインドウ電力を求めるステップと、
この求められたウインドウ電力の最大値に対応する周波数オフセット候補をドップラー広がりの中心周波数として推定するステップとを有するものである自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第4項において、第1周波数オフセット推定ステップは、
上記各歪み量のうち隣接する既知信号間の歪み量に基づいて位相差情報を求めるステップと、
この求められた位相差情報を予め定められた期間にわたって平均化することにより、平均位相差情報を求めるステップと、
この求められた平均位相差情報に基づいて、上記直接波の周波数を推定するステップとを有するものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第4項において、第1周波数オフセット推定ステップは、
上記各歪み量のうち隣接する既知信号の各歪み量に基づいて、所定の周波数オフセット推定範囲内において所定間隔ごとに設定された複数の周波数オフセット候補にそれぞれ対応する信号電力を求めるステップと、
この求められた信号電力のうち所定周波数幅の周波数ウインドウ内の周波数オフセット候補に対応する各信号電力を加算することにより、すべての周波数オフセット候補に対応するウインドウ電力を求めるステップと、
この求められたウインドウ電力の最大値に対応する周波数オフセット候補を、直接波の周波数として推定するステップとを含むものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第3項において、周波数オフセット推定ステップは、
上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量をそれぞれ求める歪み量演算ステップと、
この求められた歪み量のうち隣接する既知信号間の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数を推定する第1周波数オフセット推定ステップと、
上記求められた歪み量を平均化して平均歪み量を求める平均歪み量演算ステップと、
この求められた平均歪み量に基づいて、上記推定された直接波の周波数により規定される周波数オフセット推定範囲内において所定間隔ごとに設定された複数の周波数オフセット候補にそれぞれ対応する信号電力を求める信号電力演算ステップと、
この求められた各信号電力のうち所定周波数幅の周波数ウインドウ内の各周波数オフセット候補の信号電力を加算することにより、上記周波数オフセット推定範囲内のすべての周波数オフセット候補のウインドウ電力を求めるウインドウ電力演算ステップと、
この求められたウインドウ電力の最大値に対応する周波数オフセット候補を上記無線受信信号の周波数オフセットとして推定する第2周波数オフセット推定ステップとを含むものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 請求の範囲第3項において、上記無線受信信号のうち遮断周波数以上の高周波成分を除去するフィルタリングステップをさらに含み、
上記周波数オフセット推定ステップは、上記高周波成分除去後の無線受信信号を用いて各既知信号の歪み量を求めるものであり、
上記周波数オフセット除去ステップは、上記推定された周波数オフセットを上記フィルタリングステップにより高周波成分が除去される前の無線受信信号から除去するものであることを特徴とする自動周波数制御方法。 - 隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号から周波数オフセットを除去することにより上記無線受信信号の周波数を制御する自動周波数制御方法において、
上記無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量をそれぞれ求める第1歪み量演算ステップと、
この求められた各歪み量のうち隣接する既知信号間の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数を推定する第1周波数オフセット推定ステップと、
この推定された直接波の周波数に対応する周波数オフセットを上記無線受信信号から除去する第1周波数オフセット除去ステップと、
この周波数オフセット除去後の無線受信信号に含まれる各既知信号の歪み量をそれぞれ求める第2歪み量演算ステップと、
この求められた各歪み量のうち周期的に含まれる既知信号ブロック間の歪み量に基づいて、上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定する第2周波数オフセット推定ステップと、
この推定されたドップラー広がりの中心周波数に対応する周波数オフセットを上記無線受信信号から除去する第2周波数オフセット除去ステップとを含むことを特徴とする自動周波数制御方法。 - 隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号に対応するA/D変換回路から出力されたディジタルベースバンド信号を入力とし、上記ディジタルベースバンド信号から周波数オフセットを除去することにより上記ディジタルベースバンド信号の周波数を制御する自動周波数制御装置において、上記ディジタルベースバンド信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数および上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいて上記ディジタルベースバンド信号から周波数オフセットを除去するようにしたことを特徴とする自動周波数制御装置。
- 隣接する複数の既知信号を周期的に含む無線受信信号をアナログベースバンド信号に変換する周波数変換回路と、
このアナログベースバンド信号をディジタルベースバンド信号に変換するA/D変換回路と、
このA/D変換回路により作成されたディジタルベースバンド信号を入力とし、この入力されたディジタルベースバンド信号に含まれる各既知信号の歪み量に基づいて、上記無線受信信号の直接波の周波数および上記無線受信信号のドップラー広がりの中心周波数を推定し、この両方の周波数に基づいて上記ディジタルベースバンド信号から周波数オフセットを除去するとともに、周波数オフセット除去後のディジタルベースバンド信号からフェージング歪みを除去した後当該ディジタルベースバンド信号を復調するディジタル信号処理装置とを含むことを特徴とする復調装置。 - 請求の範囲第13項において、周波数変換回路は、無線受信信号をアナログベースバンド信号に変換するための局部発振信号を発振するとともに、印加電圧に応じて上記発振信号の発振周波数を変化させる電圧制御発振部を有するものであり、
上記ディジタル信号処理装置は、上記推定された両方の周波数に応じた電圧を上記電圧制御発振部に印加することにより、上記ディジタルベースバンド信号から周波数オフセットを除去するものであることを特徴とする復調装置。
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