JP3866368B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体内部を超音波で走査し、得られたエコー信号に基づいて超音波画像を生成し表示する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波の医学的な応用としては種々の装置があるが、その主流は超音波パルス反射法を用いて生体の軟部組織の断層像を超音波診断装置である。この超音波診断装置は無侵襲検査法で、組織の断層像を表示するものであり、X線診断装置、X線CT装置、MRIおよび核医学診断装置などの他の診断装置に比べて、リアルタイム表示が可能、装置が小型で安価、X線などの被曝がなく安全性が高く、さらに超音波ドプラ法により血流イメージングが可能であるなどの独自の特徴を有している。
【0003】
このため心臓、腹部、乳腺、泌尿器、および産婦人科などでその活用範囲は広い。特に、超音波プローブを体表から割り当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。
【0004】
このように様々な優位性のある超音波診断であるが、近年ではさらに胎児や病変部や臓器等の大きさを2点間距離や周囲長や面積等で計測する機能が装備されているものが多く、その有用性は増加傾向にある。
【0005】
ところで、上述の計測機能、例えば2点間距離計測では、キャリパーと呼ばれる計測用ノギスが超音波画像に重ねて表示される。このキャリパーはトラックボール等の動きに従って画面上を移動するようになっていて、オペレータはこのキャリパーを計測対象部位にポジショニング(位置合わせ)するだけで後は装置側で演算してくれるようになっている。
【0006】
このキャリパーの位置合わせは、まず、キャリパーの一方の端点(以下、“支点”と称する)を所望位置に固定する。そして、もう一方の端点(以下、“遊点”と称する)を計測対象部位の対角まで動かして、確定操作することにより行われる。遊点を動かしている間、その移動に追従してキャリパーは伸縮するようになっていて、どの距離を計測するのかがよく分かるようになっている。
【0007】
ところでこの計測精度は、支点と遊点を如何に計測対象部位に正確に位置合わせするかにかかっている。計測対象部位が超音波画像上で大きくとらえられている場合には比較的位置合わせがやり易く、ある程度の計測精度を維持できていると考えられる。
【0008】
しかし、計測対象部位が超音波画像上で小さくしかとらえられていない場合には、位置合わせが困難で十分な計測精度を維持することはできないでいるのが現状である。
【0009】
また、支点や遊点のマーカは見易さを考慮してある程度の大きさで表示される。このため、計測対象部位があまりに小さいと、この支点や遊点のマーカに隠れて非常に見え難くなってしまい、計測精度をより低下させる結果となってしまう。
さらに、S/Nの関係と同様で、計測対象部位が小さければ小さいほど、誤差の影響が相対的に大きくなってしまうということもある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、計測精度を向上できる超音波診断装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、超音波で被検体の内部を走査して得られたエコー信号に基づいて得られた超音波画像上に伸縮性の計測キャリパーを表示し、このキャリパーに従って定量的情報を計測する超音波診断装置において、前記キャリパーの長さが所定長より短くなったとき、前記超音波画像を拡大表示することを特徴とする。
【0013】
(作用)
本発明では、キャリパーの長さが所定長より短くなったとき、超音波画像が拡大表示される。これにより計測対象部位が超音波画像上で小さくて、計測用具を合わせ難いことに起因する計測精度の低下が解消される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明による超音波診断装置を好ましい実施形態により説明する。図1に本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す。この装置は、図示しない中央制御回路をシステム中枢として、超音波プローブ2と、送信ユニット3と、受信ユニット4と、エコー信号からBモード(断層イメージ)の画像を生成するためのBモード処理ユニット5と、エコー信号からカラードップラモード(血流イメージ)の画像を生成するためのカラードップラ処理ユニット9と、画像記録ユニット6と、表示ユニット7と、計測ユニット8とから構成される。なお、ここでは説明の便宜上、Bモードとカラードップラモードの処理ユニット5,9しか示していないが、Mモード、連続波ドプラモード、パルス波ドプラモード等の他のモードの処理ユニットを適当に組み合わせて装備していてもよい。これらの処理ユニットの構成は従来から周知のものを採用すればよいので、ここでは説明を省略するものとする。
【0016】
超音波プローブ2は、電気信号を扱う側と、超音波に内部情報を付与する被検体側との間を媒介するために、配列された複数の微小圧電素子を先端部分に有している。このプローブ2の形態としては、セクタ対応、リニア対応、コンベックス対応等の中から任意に選択される。
【0017】
超音波プローブ2から超音波を送信するための送信ユニット3は、クロック発生器31、レートパルス発生器32、送信遅延回路33、パルサ34とから構成されている。クロック発生器31から発振されたクロックに従ってレートパルス発生器32から超音波の送信レート(毎秒送信回数)を決定するためのレートパルスが出力される。このレートパルスは、送信遅延回路33で超音波の指向性を決めるために必要な適当な遅延を受けて、パルサ34にトリガパルスとして与えられる。このトリガパルスに同期してパルサ34からプローブ2の圧電素子に個別に又は近隣グループ単位で高周波の信号パルスが印可される。プローブ2の圧電素子は、この信号パルスを受けて振動する。これにより超音波が発生され、被検体に送信される。
【0018】
この超音波は生体内を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で次々と反射する。この反射強度は不連続面の音響インピーダンスの差に主に依存している。また、超音波は心臓壁や血球でも反射するが、これら移動体での反射には、そのドップラ効果による周波数偏移の動きが含まれている。
【0019】
このような反射によるエコーはプローブ2に返ってきて、圧電素子を振動する。これにより、圧電素子からは微弱な電気信号が発生する。この電気信号は、受信ユニット4に取り込まれる。受信ユニット4は、プリアンプ41、受信遅延回路42、加算器43とから構成される。プローブ2からの電気信号はまずプリアンプ41で増幅され、受信遅延回路42で例えば送信時とは逆の適当な遅延を受けた後、加算器で加算される。これにより受信指向性を持った1つのエコー信号が取得される。
【0020】
このエコー信号は、Bモード処理ユニット5とカラードップラ処理ユニット9とにそれぞれ送り込まれる。Bモード処理ユニット5は、検波回路51と、対数増幅器52と、アナログデジタルコンバータ(A/D)53とから構成される。検波回路51は、エコー信号を検波して、その包絡線を出力する。この出力信号を対数増幅器52で対数増幅して、さらにアナログデジタルコンバータ53でディジタル信号に変換してから出力する。
【0021】
カラードップラ処理ユニット9は、ミキサ91と、ローパスフィルタ92と、アナログデジタルコンバータ(A/D)93と、MTIフィルタ94と、自己相関器95と、演算部96とから構成される。ミキサ91とローパスフィルタ92とは、直交位相検波回路を構成し、送信周波数と同じ中心周波数の参照信号とそれから90゜移相した参照信号とをそれぞれ個別にエコー信号に掛け合わせ、そしてこの掛け合わせにより得られた信号それぞれから高周波成分を除去することにより、偏移周波数成分を取り出し、ドップラ信号として出力する。なお、このドップラ信号には、主に血球等の速い移動体での反射により周波数偏移を受けた高周波成分と、主に心臓壁等の遅い移動体での反射により周波数偏移を受けた低周波成分とが含まれている。
【0022】
このドプラ信号をアナログデジタルコンバータ63で、1本の走査線に対して例えば0.5mm間隔に相当する所定のサンプリング周波数に従ってサンプリングして、ディジタル信号に変換してから、MTIフィルタ64に送り込む。
【0023】
MTIフィルタ64は、ハイパスフィルタとして機能し、主に血球等の速い移動体での反射により周波数偏移を受けた高周波成分(血流成分)だけを通過し、主に心臓壁等の遅い移動体での反射により周波数偏移を受けた低周波成分(クラッタ成分)を除去する。そして、この血流成分だけになったドップラ信号を自己相関器65により周波数解析して、血球による偏移周波数を求める。この偏移周波数に基づいて、演算部66では血流速度(平均速度)と、その分散と、主に血流量を反映しているパワー(ドップラ信号の振幅)とを、サンプル点毎に演算する。
【0024】
これらBモード信号と血流信号とは表示ユニット7に送られ表示され、それと共に画像記録ユニット6にも送られメモリや磁気ディスク等の記憶媒体に記録される。
【0025】
表示ユニット7は、表示画像制御回路71と、バッファとして機能するメモリ72と、エコー像/グラフィックス混合回路73と、TVモニター74とから構成される。表示画像制御回路71は、ディジタル・スキャン・コンバータ(DSC)としての機能を有しており、Bモード処理ユニット5やカラードップラ処理ユニット9から直接的にリアルタイムで送られてくるBモードやカラードップラの画像信号(以下、“エコー像信号”と称する)、又は再生時に画像記録ユニット6から非リアルタイムで送られてくるエコー像信号を、TV走査方式に変換して出力する。このTV走査方式に変換されたエコー像信号は、メモリ72を介してエコー像/グラフィックス混合回路73に送られ、ここで計測用具(キャリパー)などのグラフィックスと混合されて、TVモニター74に表示される。
【0026】
次に本実施形態の特徴的な計測ユニット8に付いて説明する。この計測ユニット8は、オペレータが胎児や病変部や臓器等の大きさを2点間距離や周囲長や面積等で計測することを希望するときにそのためのコマンド入力により起動するものであり、図示しない中央制御回路の制御下にいるユニット内制御回路81と、トラックボール82と、キャリパー制御回路83と、トラックボール84と、ROI制御回路85と、演算回路86と、グラフィックス制御回路87と、メモリ88とから構成されるが、2つのトラックボールは機能切り替えによりいずれか一方を排除してもよいし、マウスやディジタイザ等の座標入力装置であってもよい。
【0027】
上述したような計測機能、例えば2点間距離計測では、計測用ノギスとしての意味合いを持つキャリパーと呼ばれるマーカのグラフィックスが、グラフィックス制御回路87で作られ、メモリ88を介してエコー像/グラフィックス混合回路73で超音波画像と混合され、TVモニター74に超音波画像に重ねて表示される。
【0028】
このキャリパーは、キャリパー制御回路83の制御により、トラックボール82の動きに追従して画面上を自由に移動でき、また任意に伸縮できるようになっている。そして、オペレータはトラックボール82を動かして計測対象部位にポジショニング(位置合わせ)するだけで後は、装置側の演算回路86で2点間距離等を自動的に演算してくれるようになっている。
【0029】
また、この計測ユニット8では、オペレータが計測領域を自由に指定できるようになっていて、この計測領域を指定するための矩形ROIマーカのグラフィックスが、グラフィックス制御回路87で作られ、メモリ88を介してエコー像/グラフィックス混合回路73で超音波画像と混合され、TVモニター74に超音波画像に重ねて表示される。このROIは、制御回路85の制御により、トラックボール84の動きに追従して画面上を自由に移動でき、また大きさも自由に変えられるようになっている。
【0030】
まず、オペレータはトラックボール84を動かして、計測対象部位の近傍にROIの支点を固定する。そして、トラックボール84をさらに動かして、その対角点(遊点)を移動させると、それに追従してROIの大きさがリアルタイムに変化していく。オペレータはROIが計測対象部位を適当に含んだ状態を確認して遊点を確定する。これによりROI、つまり計測領域も確定される。
【0031】
図2には、計測領域確定後の表示画面例を示している。計測領域が確定されると、そのROIで囲まれている超音波画像の一部分(部分画像)が、画面上の所定位置のウインドウに拡大表示されるように、ユニット内制御回路81は表示画像制御回路71を制御する。この拡大は、表示画像制御回路71に一時記憶されているエコー像の選択的な読み出しと、補間により実現され得る。また、ユニット内制御回路81はこの拡大表示された部分画像上にキャリパーが重なって表示されるようにグラフィックス制御回路87を制御する。
【0032】
このように計測領域を指定すると、その領域内の部分画像が拡大表示されるので、計測対象部位が超音波画像上で小さくて、キャリパーを合わせ難いことに起因する計測精度の低下が解消される。
【0033】
このような自動的な拡大機能を使って計測を行い、それが終了した後には、ユニット内制御回路81からメモリ72へ拡大像の消去信号が供給され、当該拡大像の表示を終了し、通常表示に自動的に復帰して、繰り返し計測を容易にできるようになっている。
【0034】
次にキャリパーの位置合わせについて説明する。このキャリパーの位置合わせのためには、図3に示すように、まず、オペレータがトラックボール82を動かして、キャリパーの一方の端点(以下、“支点”と称する)を、計測対象部位の所望位置に固定する(図4参照)。
【0035】
そして、トラックボール82をさらに動かして、もう一方の端点(以下、“遊点”と称する)を計測対象部位の対角まで動かして行く。この遊点を動かしている間、その移動に追従してキャリパーは伸縮するようになっている。
【0036】
このキャリパーの長さはユニット内制御回路81により随時監視されており、キャリパーの長さが所定の長さより短くなったとき、ユニット内制御回路81は表示画像制御回路71を制御して、超音波画像の表示を、キャリパーの画面上での支点の位置が拡大の前後で変化しないように、拡大表示に切り替える。この拡大も、表示画像制御回路71に一時記憶されているエコー像の選択的な読み出しと、補間により実現され得る。
【0037】
オペレータはトラックボール82を動かして、拡大画像上で遊点を所望の位置に正確に合わせ、そして確定する。こうしてキャリパーが確定されると、つまり2点が確定されると、この2点間の距離は演算回路86で実寸に換算され、TVモニター74に表示される。
【0038】
なお、自動的な拡大機能を使って計測を行い、それが終了した後には、ユニット内制御回路81から表示画像制御回路71に表示縮尺を元に戻すための制御信号を供給し、表示画像制御回路71にてメモリ72内のデータを再設定できるようにして、繰り返し計測を容易にできるようになっている。
【0039】
このようにキャリパーの長さが所定長より短くなったとき、超音波画像が拡大表示されるので、計測対象部位が超音波画像上で小さくて、キャリパーを合わせ難いことに起因する計測精度の低下が解消される。また、拡大の前後で、キャリパーの画面上での支点の位置は動かないので、オペレータが幻惑されることも少ない。
本発明は、上述してきたような実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能であることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
本発明では、超音波画像上に計測領域を指定したとき、この指定した計測領域内の部分画像が拡大されて、計測用具と共に表示される。これにより計測対象部位が超音波画像上で小さくて、計測用具を合わせ難いことに起因する計測精度の低下が解消される。
【0041】
また、本発明では、キャリパーの長さが所定長より短くなったとき、超音波画像が拡大表示される。これにより計測対象部位が超音波画像上で小さくて、計測用具を合わせ難いことに起因する計測精度の低下が解消される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1のユニット内制御回路の制御により計測範囲を限局するための矩形ROIを設定した後に自動的に切り替えられる表示画面例を示す図。
【図3】2点間距離を計測するためのキャリパーの操作に伴って図1のユニット内制御回路の制御による画面の切り替え制御の手順を示すフローチャート。
【図4】図3の画面切り替え動作を補足するための表示画面例を示す図。
【図5】2点間距離を計測するための従来の表示画面例を示す図。
【符号の説明】
2…超音波プローブ、
3…超音波送信ユニット、
4…超音波受信信ユニット、
5…Bモード処理ユニット、
6…画像記録ユニット、
7…表示ユニット、
8…計測ユニット、
31…クロック発生器、
32…レートパルス発生器、
33…送信遅延回路、
34…パルサ、
41…プリアンプ、
42…受信遅延回路、
43…加算器、
51…検波回路、
52…対数増幅器、
53…アナログ・ディジタル・コンバータ、
71…表示画像制御回路、
72…メモリ、
73…エコー像/グラフィックス混合回路、
74…TVモニター、
81…ユニット内制御回路、
82…トラックボール、
83…キャリパー制御回路、
84…トラックボール、
85…ROI制御回路、
86…演算回路、
87…グラフィックス制御回路、
88…メモリ。
Claims (2)
- 超音波で被検体の内部を走査して得られたエコー信号に基づいて得られた超音波画像上に伸縮性の計測キャリパーを表示し、このキャリパーに従って定量的情報を計測する超音波診断装置において、前記キャリパーの長さが所定長より短くなったとき、前記超音波画像を拡大表示することを特徴とする超音波診断装置。
- 前記拡大の前後で、前記キャリパーの特定点が画面上で動かないように拡大表示に切り替えることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
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