JP3865082B2 - シロキサン化合物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシロキサン化合物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは基材との密着性に優れ、かつ防汚性および撥水性に優れた新規なシロキサン化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より金属、ガラス、樹脂、木材およびコンクリ−ト等の表面処理には、防汚性や撥水性を付与する目的でシランカップリング剤が使用されており、例えば、特開平2−99582号公報、特開平2−70787号公報、特開平2−16186号公報、特開平1−292089号公報等には主としてアルキルシランが提案されている。カップリング剤による撥水性付与効果は有用であり、種々の開発が進められている。例えば、表面科学,21,10,48(1983).には、アルキル基のみならず、他の置換基をも導入し、その性能向上を図ることができるフルオロアルキル基置換シランカップリング剤が提案されている。しかし、その他の置換基を導入しようとする研究は少なく、新規な表面処理剤の開発が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水の存在下に容易に反応または縮合する部位と、撥水性、撥油性等を有する部位とを合わせもつ、優れた基材との密着性と優れた防汚性および撥水性を有する新規なシロキサン化合物およびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み、撥水性や防汚性を付与する置換基としてトリアルキルシロキシ基に着目して鋭意研究した結果、水の存在下に容易に反応または縮合して基材と化学結合によって密着する部位と、撥水性、撥油性、防汚性を有するトリアルキルシロキシ基を合わせもつ新規なシロキサン化合物が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
本発明で特許請求される発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(A)で表されることを特徴とするシロキサン化合物。
【化3】
Figure 0003865082
〔ただし、式中のRは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリ−ル基、炭素数7〜13のアラルキル基または炭素数7〜13のアルカリ−ル基、R1 は水素または炭素数1〜6のアルキル基、R2 はカルボニル基、炭素数1〜6の分岐状もしくは線状アルキレン基または炭素数1〜6の分岐状もしくは線状オキシアルキレン基であり、R2 がアルキレン基である場合にR1 は水素、R2 がオキシアルキレン基またはカルボニル基の場合にR1 は炭素数1〜6のアルキル基、R3 は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリ−ル基、aは0〜2の整数、bは0〜1の整数、cは0〜20の整数、Qは下記一般式(B)
【化4】
Figure 0003865082
(Rは上記と同じであり、R4 は炭素数2〜10の線状または分岐状アルキレン、f は1〜100の整数)を意味する。〕
【0006】
(2)両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン化合物にアルケニルシランおよびアルケニルシロキサンを貴金属触媒の存在下に反応させる(1) 記載のシロキサン化合物の製造方法。
(3)両末端にアルケニル基を有するシロキサン化合物にヒドリドシロキサンおよびヒドリドシランを貴金属触媒の存在下に反応させる(1) 記載のシロキサン化合物の製造方法。
【0007】
本発明の一般式(A)で表されるシロキサン化合物は、下記反応式(I)で示されるように、両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン化合物(i) とアルケニルシラン(ii)およびアルケニルシロキサン(iii) とを貴金属触媒の存在下にヒドロシリル化反応を行うことにより得られることができる。
【0008】
【化5】
Figure 0003865082
(ただし、式中のR、R1 、R2 、R3 、R4 、a、b、c、fおよびQは一般式(A)と同じであり、またYはアルケニル基を意味する。)
【0009】
反応式(I)に用いられる両末端にヒドロシリル基を有する化合物(i) としては、例えば、
【化6】
Figure 0003865082
(式中のhは2〜100の整数、j、kは1〜50の整数を表す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
反応式(I)に用いられるアルケニルシラン(ii)としては、例えば
CH2 =CHSi(OCH3)3
CH2 =CHSi CH3(OCH3)2
CH2 =CHSi(CH3)2 OCH3
CH2 =CHSi(OCH2 CH3)3
CH2 =CHSi CH3(OCH2 CH3)2
CH2 =CHSi(CH3)2 OCH2 CH3
CH2 =CHSi(OCH2 CH3)3
CH2 =CCH3 Si CH3(OCH3)2
CH2 =CHCH2 Si(OCH3)3
CH2 =CHCH2 Si(OCH2 CH3)3
CH2 =CCH3 CH2 Si(OCH2 CH3)3
CH2 =CHSi(OPr-i)3
【0011】
【化7】
Figure 0003865082
等が挙げられるが、これらのうち、CH2 =CHSi(OCH3)3 、CH2 =CHSi(OCH2 CH3)3 が好ましい。
【0012】
反応式(I)に用いられるアルケニルシロキサン(iii) としては、例えば、
CH2 =CHSiCH3 OSi(CH3)3 2
CH2 =CHSi OSi(CH3)3 3
CH2 =CHCH2 Si OSi(CH3)3 3
【化8】
Figure 0003865082
(ただし、式中のcは一般式(A)と同じである) が挙げられ、これらのうち好ましいのは、
【0013】
【化9】
Figure 0003865082
である。
【0014】
前記反応式(I)において、両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン化合物(i) に付加させるアルケニルシラン(ii)およびアルケニルシロキサン(iii) は、どちらを先に付加させても特に不具合はないが、蒸留精製が必要とされる場合には、その中間体の沸点において、より有利な順序が存在する場合もあり、適宜選定するのが好ましい。
【0015】
また本発明の一般式(A)で表されるシロキサン化合物は、下記反応式(II)で示されるように、両末端にアルケニルシリル基を有するシロキサン化合物(iv)とヒドリドシラン(v) およびヒドリドシロキサン(vi)とを貴金属触媒の存在下にヒドロシリル化反応を行うことにより得られることができる。
【0016】
反応式(II):
【化10】
Figure 0003865082
(ただし、式中のR、R1 、R2 、R3 、R4 、a、b、c、fおよびQは一般式(A)であり、またYはアルケニル基を意味する。)
【0017】
反応式(II)に用いられる両末端アルケニル基を有するシロキサン化合物(iv)としては上記した両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン化合物(i) のHをアルケニル基で置換したものを挙げることができる。またヒドリドシラン(v) としては上記したアルケニルシラン(ii)のアルケニル基をHで置換したものを挙げることができる。またヒドリドシロキサン(vi)としては上記したアルケニルシロキサン(iii) のアルケニル基をHで置換したものを挙げることができる。
【0018】
反応式(I)および反応式(II)におけるヒドロシリル化反応は、貴金属触媒、特に白金触媒の存在下に円滑に進行する。白金触媒のうちでも、例えば塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液、1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサン白金等が好ましく用いられる。
ヒドロシリル化反応は公知の条件で行うことができる。溶媒としては一般的なトルエン、ヘキサン等の有機溶剤を使用することもできるが、無溶媒でも特に不都合はない。反応温度は0〜200℃が好ましく、より好適には30〜120℃である。反応による発熱が大きい場合には、どちらか一方の原料を滴下することが好ましい。
ヒドロシリル化反応において、反応式(I)による場合には
【0019】
【化11】
Figure 0003865082
【0020】
反応式(II)による場合には
【化12】
Figure 0003865082
【0021】
を中間体として経由するが、これら中間体は蒸留後次の反応に用いてもよく、また蒸留せずに反応粗液のまま次の反応に用いてもよい。
本発明のシロキサン化合物は、単独でまたは2種以上を併用することができ、例えば、プラスチック、金属、セラミック等の基材や線材上に造膜することにより、基材との密着性を向上させ、基材に防汚性や撥水性を付与することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、例中の%は特に限定しない限り、重量%を意味する。
【実施例】
実施例1
(1)テトラメチルジシロキサンとビニルトリメトキシシランのヒドロシリル化反応
攪拌機、冷却管、温度計および滴下ロ−トを取り付けた500mlの四つ口フラスコに、テトラメチルジシロキサン200g(1.49モル)を入れ、60℃に昇温した。次いでビニルトリメトキシシラン220.7g(1.49モル)に、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の3%キシレン溶液70μlを添加した混合物を200分かけて滴下し、滴下終了後70℃以上で30分攪拌を続けた後、冷却した。得られた生成物は、GC分析により下記(a)および(b)の構造を有するものの混合体であり、目的生成物が63%得られたことが確認された。
【0023】
【化13】
Figure 0003865082
【0024】
得られた反応液を減圧蒸留し、目的生成物が99%以上 (GC分析により確認) の純度で216g得られた。
また、減圧蒸留において留分を分け、a:b=91.6:5.6(GC%)のものと、a:b=54.3:44.4(GC%)のものを、それぞれ 1H−NMR分析(90MHZ ;溶媒CDCl3 )し、生成物(a)および(b)の構造を確認した。それぞれのNMRチャ−トを図1および2に示した。またこれらの生成物のGC−MS分析の結果は以下の通りであった。
【0025】
生成物(a)
CI−MS
281=[M−H]+
267=[M−CH3+
251=[M−OCH3+
207=[SiMe2CH2CH2Si(OCH33+
生成物(b)
CI−MS
281=[M−H]+
267=[M−CH3+
251=[M−OCH3+
207=[SiMe2CH2CH2Si(OCH33+
【0026】
(2)トリス(トリメチルシロキシ)ビニルシランと実施例1で得られた生成物のヒドロシリル化反応によるシロキサン化合物の合成
攪拌機、冷却管、温度計および滴下ロ−トを取り付けた300ml四つ口フラスコに、実施例1で得られた生成物(A:B=68.1:31.6 GC%)70.6g(0.25モル)を入れて70℃に昇温した。次いでGC純度99%のトリス(トリメチルシロキシ)ビニルシラン80.5g(0.25モル)と白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の3%イソプロピルアルコ−ル溶液13μlの混合液を85分かけて滴下し滴下終了後70℃で200分攪拌し、冷却した。得られたシロキサン化合物は、 1H−NMR分析の結果、下記(c)および(d)の構造をとる化合物の混合体であることが確認された。この混合体のNMRチャートを図3に示した。またGC分析により目的生成物が94%の純度で得られたことが確認された。
【0027】
【化14】
Figure 0003865082
【0028】
【発明の効果】
本発明のシロキサン化合物は、水の存在下に容易に反応または縮合する部位と、撥水性、撥油性等を有する部位とを合わせもち、優れた基材との密着性よび防汚性と撥水性を有するため、このシロキサン化合物を基材上に造膜することにより、造膜と基材との密着性が向上し、かつ基材に防汚性や撥水性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた生成物(a)の 1H−NMR分析チャート図である。
【図2】実施例1で得られた生成物(b)の 1H−NMR分析チャート図である。
【図3】実施例1で得られたシロキサン化合物の 1H−NMR分析チャート図である。

Claims (3)

  1. 下記一般式(A)で表されることを特徴とするシロキサン化合物。
    Figure 0003865082
    〔ただし、式中のRは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリ−ル基、炭素数7〜13のアラルキル基または炭素数7〜13のアルカリ−ル基、R1 は水素または炭素数1〜6のアルキル基、R2 はカルボニル基、炭素数1〜6の分岐状もしくは線状アルキレン基または炭素数1〜6の分岐状もしくは線状オキシアルキレン基であり、R2 がアルキレン基である場合にR1 は水素、R2 がオキシアルキレン基またはカルボニル基の場合にR1 は炭素数1〜6のアルキル基、R3 は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリ−ル基、aは0〜2の整数、bは0〜1の整数、cは0〜20の整数、Qは下記一般式(B)
    Figure 0003865082
    (Rは上記と同じであり、R4 は炭素数2〜10の線状または分岐状アルキレン、f は1〜100の整数)を意味する。〕
  2. 両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン化合物にアルケニルシランおよびアルケニルシロキサンを貴金属触媒の存在下に反応させることを特徴とする請求項1記載のシロキサン化合物の製造方法。
  3. 両末端にアルケニル基を有するシロキサン化合物にヒドリドシロキサンおよびヒドリドシランを貴金属触媒の存在下に反応させることを特徴とする請求項1に記載のシロキサン化合物の製造方法。
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