JP3860465B2 - 粉体固着不織布、その製法、及びそれを含むシート材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体を固着した不織布、すなわち、粉体固着不織布、その製法、及びそれを含むシート材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体を固着した繊維材料としては、例えば、特開昭63−135550号公報に、粉末状結合剤を担持した繊維材料が記載されている。しかしながら、この繊維材料は、ガラス繊維強化プラスチック成型品の製造用出発材料であり、ガラス繊維として、単繊維直径が5〜20μmで長さが4〜25mmの繊維を使用しているため、小粒径の粉体は振動や衝撃を与えると脱離しやすく、しっかりと固着することのできないものである。また、特開平7−313863号公報には、繊維強化プラスチック成形品を成形する前段階の予備成形体を製造するのに当たり、ガス流を利用して強化用繊維と粉末状樹脂とを混合するエアーミキシング方法が記載されている。しかしながら、この方法において用いる強化用繊維は、太く、しかも長い繊維であることは明らかであり、前記と同様の欠点を有している。
【0003】
また、不織布に粉体を固着させる方法としては、例えば、繊維ウエブで粉体を挟み込んだ後に、ニードルパンチなどで粉体を繊維間に物理的に閉じ込めて固定する方法や、更に固着性を高めるために、熱接着繊維を含む繊維ウエブで粉体を挟み込んだ後に、加熱処理により粉体と繊維や繊維間同士を接着する方法が知られていた。しかしながら、平均粒径が50μm以下の小粒径の粉体は、振動や衝撃を与えると脱離しやすく、平均粒径が50μmを越えるような比較的粒径の大きい粉体しか固着することができないという欠点があった。
一方、繊維ウエブに、より緻密な構造をもたせることにより、平均粒径が50μm以下の小粒径の粉体の保持性を向上させる方法として、湿式法により繊維と一緒に粉体を漉き込む方法が知られている。しかしながら、この湿式法で使用するスラリー中には界面活性剤や糊剤が添加されるため、これら界面活性剤や糊剤が粉体の表面を被覆してしまい、粉体本来の機能が失われ易いという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記のような問題点を解決するために、小粒径の粉体であっても脱落しにくく、粉体本来の機能を発揮することのできる、粉体固着不織布及びその製造方法の開発を目指して鋭意研究した結果、粉体が本来の機能を失わないようにするためには、湿式法以外の方法により形成された繊維ウエブを使用する必要があること、及び粉体の不織布からの脱落を防ぐためには、一定の太さ以下かつ一定の長さ以下の極細短繊維を分散させ、極細短繊維を粉体の周囲に存在させる(好ましくはクモの巣状に絡ませる)ことにより、極細短繊維間の空隙を小さくすることによって、上記の課題を解決することができることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維とを分散した状態で含む粉体固着不織布であって、前記粉体固着不織布全体にわたって前記極細短繊維が束の状態で存在しておらず、前記極細短繊維が海島型繊維の海成分を除去して得た島成分からなり、極細短繊維の集合体又はそれらの集合体群を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて繊維ウエブを形成する方法により形成した粉体含有繊維ウエブから形成した前記粉体固着不織布に関する。
【0006】
前記の粉体固着不織布において、前記粉体の平均粒径が50μm以下であると、粉体の機能を最大限に発揮することができる。また、粉体固着不織布の全質量に対する前記極細短繊維の質量比率が1〜40mass%であると、粉体量が多いため、粉体の機能を最大限に発揮することができる。更に、付着物の付着率が0.5mass%以下であると、付着物によって粉体の機能が阻害されない。
【0007】
本発明者は、極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させると、前記の極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体などが開繊され、分散されると共に、粉体の分散も進み、個々の粉体を極細短繊維がクモの巣状に絡合することも見出した。
【0008】
従って、本発明は、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を極細短繊維に分割させ、及び/又は、分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割させると共に粉体を分散させる工程、
分散した極細短繊維及び粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する工程、及び得られた粉体含有繊維ウエブから不織布を形成する際に、前記粉体含有繊維ウエブ中に含まれている粉体を固着させる工程、
を含むことを特徴とする、粉体固着不織布の製造方法にも関する。
【0009】
更に、本発明は、粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維とを分散した状態で含む粉体固着不織布であって、前記粉体固着不織布全体にわたって前記極細短繊維が束の状態で存在しておらず、前記極細短繊維が海島型繊維の海成分を除去して得た島成分からなり、極細短繊維の集合体又はそれらの集合体群を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて繊維ウエブを形成する方法により形成した粉体含有繊維ウエブから形成した前記粉体固着不織布の層少なくとも1層を含有することを特徴とする、シート材料にも関する。
前記シート材料は、前記粉体固着不織布層の少なくとも片面に、粉体を含まない層(粉体不含層)、例えば、粉体脱落防止層を更に有することができ、この脱落防止層により、一層確実に粉体の脱落を防止することができる。
【0010】
更にまた、本発明は、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を極細短繊維に分割させ、及び/又は、分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割させると共に粉体を分散させる工程、
分散した極細短繊維及び粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する工程、及び得られた粉体含有繊維ウエブから不織布を形成する際に、前記粉体含有繊維ウエブ中に含まれている粉体を固着させ、更に、それらと同時に粉体を含まない層を結合させる工程、
を含むことを特徴とする、粉体固着不織布層含有シート材料の製造方法にも関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の粉体固着不織布は粉体の保持性に優れているように、繊維径が4μm以下の極細短繊維を含んでいる。極細短繊維の繊維径が小さければ小さい程、粉体の保持性に優れ、より粒径の小さい粉体を保持できるため、極細短繊維の繊維径は3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのがより好ましい。なお、極細短繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
本明細書における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には横断面積と面積の同じ円の直径をいう。
【0012】
本発明の粉体固着不織布を構成する極細短繊維は均一分散性に優れているように、その繊維長は3mm以下である。すなわち、繊維長が3mmを越えるような極細繊維であると、極細繊維の自由度が低いため分散性が低下する。より好ましい繊維長は2mm以下である。なお、極細短繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、繊維長が均一であるように、3mm以下の繊維長に切断された極細短繊維であるのが好ましい。
本明細書における「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。
【0013】
本発明で用いる極細短繊維は、任意の成分(例えば、有機成分又は無機成分)から構成することができ、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリスチレン系樹脂(例えば、結晶性ポリスチレン、非晶性ポリスチレンなど)、全芳香族ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの有機成分、ガラス、炭素、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイトなどの無機成分から構成することができる。
【0014】
一般的には、極細短繊維が有機成分からなると、無機成分からなる場合よりも剛性が低く、柔らかいため、極細短繊維が絡まりやすくなり、均一に分散することが困難になるので、極細短繊維を含有することの利点を得ることが困難になるにもかかわらず、本発明の粉体固着不織布では、極細短繊維が均一に分散しているため、極細短繊維が有機成分からなることによる利点(例えば、嵩高性、風合い又は弾力性)を向上させることができる。
【0015】
なお、本発明による粉体固着不織布が不織布形態を保つために、繊維同士が結合しているのが好ましいが、極細短繊維が融着可能であると、極細短繊維の融着によって不織布形態を保つことができ、極細短繊維及び粉体の脱落も生じにくいため好適である。この融着可能な極細短繊維は、極細短繊維表面を構成する成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂から構成されているのが好ましい。例えば、極細短繊維表面を構成する成分が、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、結晶性ポリスチレン系樹脂などの結晶性の熱可塑性樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、非晶性ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの非晶性の熱可塑性樹脂であることができる。これらの中でも、比較的融点の低いポリエチレン系樹脂や同じく比較的融点の低いポリ酢酸ビニル樹脂が好ましい。なお、ガラス繊維などの無機繊維や銅繊維などの金属繊維を用いることもできる。
【0016】
この融着可能な極細短繊維が2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の成分によって繊維形態を維持することができるため好適である。この2種類以上の成分から構成されている場合の融着可能な極細短繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができる。
【0017】
本発明で用いる極細短繊維は、粉体固着不織布の地合いが優れているように、各極細短繊維が、その繊維軸方向において直径が実質的に変化しない(すなわち、実質的に同じ直径を有している)のが好ましい。
このように、個々の極細短繊維において繊維軸方向に直径が実質的に同一で変化していない極細短繊維は、例えば、紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押し出して複合する複合紡糸法で得た海島型繊維の海成分を除去して得ることができる。一般的に、前記の海島型繊維の海成分を除去して極細短繊維を形成する場合は、島成分から誘導された各極細短繊維が束状集合体として存在して極細短繊維が相互に接近しているために絡みやすく、均一に分散させることが困難になるので、極細短繊維を含有することの利点を得ることが困難になるが、本発明の粉体固着不織布では、束状の極細短繊維集合体を使用しても、極細短繊維が束の状態で存在しておらず、均一に分散させることができるため、極細短繊維を含有することの利点を得ることができる。また、海島型繊維から海成分を除去して形成した束状の極細短繊維集合体は、一般に凝集しやすいため、分散させるのが困難であるが、本発明においては分散させることができるので、極細短繊維を含有することの利点を得ることができる。
【0018】
また、本発明で用いる極細短繊維は未延伸状態であることもできるが、強度的に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。
【0019】
本発明の粉体固着不織布は、前述のような極細短繊維が分散した繊維ウエブに、粉体が固着しているため、この極細短繊維によって粉体を保持して脱落を防止することができる。なお、この繊維ウエブは湿式法ではない方法により形成されたものであるため、湿式法により形成した繊維ウエブのように、界面活性剤や糊剤によって粉体が被覆されておらず、粉体本来の機能を発揮できるものである。この湿式法ではない方法、すなわち、湿式法以外の方法とは、界面活性剤及び/又は糊剤を含むスラリーを用いて極細短繊維及び粉体を分散させる方法と異なるものである限り特に限定されるものではないが、例えば、気体を分散媒体として繊維ウエブを形成する方法を挙げることができる。特には、気体中に分散させた極細短繊維を降下堆積させた後、適当な固定方法(例えば、熱融着方法)によって固定する方法が好ましい。
【0020】
本発明で用いる粉体は、有機粉末、無機粉末、あるいは金属粉末、又は有機物と無機物との複合粉末(例えば、有機樹脂被覆無機粉末)などであることができ、種類は特に限定されず、粉体固着不織布を適用する用途によって適宜選択することができる。例えば、粉体固着不織布をオゾンを分解する用途に使用する場合には、前記粉体として活性炭などを使用することができ、粉体固着不織布をイオン交換用途に使用する場合には、イオン交換樹脂粉末などを使用することができ、粉体固着不織布を触媒用途に使用する場合には、二酸化マンガン、白金、又は酸化チタンなどの触媒粉末などを使用することができ、粉体固着不織布を脱臭や消臭用途に使用する場合には、脱臭剤粉末や消臭剤粉末などを使用することができ、粉体固着不織布を繊維強化プラスチック(FRP)やシート状プリプレグ(sheet molding compound;SMC)などの用途に使用する場合には、熱接着性樹脂粉末などを使用することができ、粉体固着不織布を船や浴槽などの繊維強化プラスチック(オーバーレイ)などの用途に使用する場合には、熱硬化性樹脂粉末などを使用することができ、あるいは粉体固着不織布を耐火ボードに使用する場合には、無機粉末などを使用することができる。
【0021】
なお、粉体として、例えば、熱融着性樹脂粉体(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、熱硬化性樹脂粉体(例えば、熱硬化性ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂)、無機粉体(例えば、ガラス)、金属粉体(例えば、亜鉛、アルミニウム、錫など)を含んでいると、これら粉体の接着作用によって粉体を粉体固着不織布に確実に固着することができるため、好適である。
【0022】
また、粉体自体の表面の一部として熱融着性樹脂を含んでいると、この熱融着性樹脂によって粉体を粉体固着不織布に確実に固着することができるため、好適な実施態様の一つである。
【0023】
本発明の粉体固着不織布においては、前述のような極細短繊維を使用しているため、従来は脱落しやすかった平均粒径が50μm以下の粉体であっても脱落することなく保持することができる。この粉体は主として極細短繊維によって保持されているため、極細短繊維の繊維径によって保持することのできる粉体も変化する。すなわち、本発明の粉体固着不織布においては、保持すべき粉体の平均粒径に応じて、適切な繊維径を有する極細短繊維を選択することができる。例えば、極細短繊維の繊維径と最適な粉体の平均粒径との関係は表1のようになる。
【0024】
【表1】
【0025】
なお、粉体の平均粒径が50μmを越えていても、前述のような繊維ウエブにより粉体を保持することができる。
本発明における粉体の「平均粒径」は、コールターカウンター法により得られる値をいう。
【0026】
このような粉体は前述のような繊維ウエブによって固着された状態にあるため、粉体固着不織布から粉体は脱落しない。この「固着された状態」とは、粉体が固定された状態を意味し、例えば、粉体の周囲を主として極細短繊維が包囲していることにより粉体を固定した状態、極細短繊維及び/又は後述する太繊維の融着によって粉体を固定した状態、あるいはこれら複数の要因によって粉体を固定した状態などをいう。
【0027】
本発明による粉体固着不織布において、前述のような極細短繊維の質量比率は、粉体の平均粒径、比重、あるいは極細短繊維の繊維径によって異なるが、40mass%以下であれば、平均粒径50μm以下程度の粒径の小さい粉体であっても脱落しないように保持することができ、20mass%以下でも殆ど粉体が脱落しない粉体固着不織布であることができ、10mass%以下でも実用上問題なく、かつ実用上取り扱いの際の強度的にも問題ない粉体固着不織布であることができる。他方、極細短繊維の質量比率が1mass%以上であれば、粉体が脱落しにくく、実用的な取り扱い強度を有するものである。
【0028】
本発明の粉体固着不織布においては、少なくとも、前述のような極細短繊維が分散しているため、極細短繊維を含んでいることによる効果を発揮することができる。この粉体固着不織布構成繊維における極細短繊維の含有量は、極細短繊維を含んでいることによる効果を発揮することができるように、20mass%以上であるのが好ましく、50mass%以上であるのがより好ましく、100mass%であるのが最も好ましい。
【0029】
本発明の粉体固着不織布においては、前記の極細短繊維以外の繊維として、(1)繊維径が4μmを越えるが繊維長が3mm以下の繊維(以下、太繊維と称する)、(2)繊維径が4μm以下であるが繊維長が3mmを越える繊維(以下、長繊維と称する)、あるいは(3)繊維径が4μmを越え、しかも繊維長が3mmを越える繊維(以下、太長繊維と称する)を使用することができる。これらの中でも、繊維長が3mmを越える長繊維及び太長繊維は分散性が悪く、極細短繊維の分散性を損なう場合があるため、繊維長が3mm以下の太繊維を使用するのが好ましい。
【0030】
前記の太繊維を使用する場合、繊維径の上限は特に限定するものではないが、極細短繊維との繊維径の差が大きすぎると、粉体固着不織布の地合いを損ねる場合があるため、太繊維の繊維径の上限は50μm程度であるのが好ましい。
なお、前記の太繊維も分散性に優れるように、2mm以下であるのが好ましい。下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、前記の太繊維も均一な長さであるように、3mm以下の長さに切断されたものであるのが好ましい。
【0031】
この太繊維も極細短繊維と同様の成分から構成することができる。すなわち、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリスチレン系樹脂(結晶性ポリスチレン、非晶性ポリスチレンなど)、全芳香族ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの有機成分、ガラス、炭素、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイトなどの無機成分から構成することができる。
【0032】
なお、前記の太繊維が融着可能な場合には、太繊維の融着によって本発明による粉体固着不織布の不織布形態を維持することができる。この融着可能な太繊維は、太繊維表面を構成する成分の少なくとも一部を熱可塑性樹脂から構成することができる。例えば、太繊維表面を構成する成分が、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、結晶性ポリスチレン系樹脂などの結晶性の熱可塑性樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、非晶性ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの非晶性の熱可塑性樹脂であることができる。これらの中でも、比較的融点の低いポリエチレン系樹脂や同じく比較的融点の低いポリ酢酸ビニル樹脂が好ましい。なお、ガラス繊維などの無機繊維や銅繊維などの金属繊維であることもできる。
【0033】
この融着可能な太繊維が融点の異なる2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の他の成分によって繊維形態を維持することができるため好適である。融着可能な太繊維が2種類以上の成分から構成されている場合、融着可能な太繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、又はオレンジ型であることができる。
また、この太繊維は未延伸状態であってもよいが、強度的に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。
【0034】
本発明の粉体固着不織布に付着している付着物(界面活性剤や糊剤など)の付着率は、粉体が付着物によってその機能を損なうことがないように、0.5mass%以下であるのが好ましい。この付着物の付着率が少なければ少ない程、粉体の機能を損なわないため、付着率は、好ましくは0.3mass%以下、より好ましくは0.1mass%以下、更により好ましくは0.08mass%以下、更により好ましくは0.06mass%以下、更により好ましくは0.04mass%以下、更により好ましくは0.02mass%以下である。このような付着物の低い付着率は、従来の湿式法によっては得ることのできないレベルである。なお、界面活性剤や糊剤の付着した湿式繊維ウエブ(粉体を含む)に対して、水流などを作用させたとしても、付着物の付着率を0.5mass%以下とすることは困難である。
【0035】
なお、本発明の粉体固着不織布において、付着物の付着率が低いと、粉体固着不織布使用中に付着物が脱離する危険性が極めて低いことによって、様々な好ましい効果をもたらす。例えば、一般的に、通常の不織布をフィルタとして使用した場合、濾過前の流体中に含まれている塵埃をフィルタで物理的に除去することができても、フィルタ(不織布)自体が汚染物質を発生すると、フィルタとしての役割が半減してしまう。これに対して、本発明の粉体固着不織布、あるいは、前記粉体固着不織布層少なくとも1層を含有する本発明によるシート材料は、付着物量が少なく、付着物が脱離する可能性が極めて低いため、フィルタとして好適に使用することができる。
【0036】
この付着物の付着率は、粉体固着不織布の質量に対する付着物の質量の百分率をいう。すなわち、次の式(1):
A=(ms/mf)×100 (1)
〔ここで、Aは付着物の付着率(%)、msは付着物の付着質量(g)、mfは粉体固着不織布の質量(g)を、それぞれ意味する〕
により得られる値をいう。
また、本明細書における「付着物」には、粉体固着不織布を熱水(例えば、80〜100℃の水)に15分間浸漬することによって得られる抽出物(以下、熱水抽出物と称する)、及び粉体固着不織布を熱メタノール溶液に15分間浸漬することによって得られる抽出物(以下、熱メタノール抽出物と称する)の両方が含まれる。熱水抽出物として、糊剤(例えば、アクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアルギン酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなど)があり、熱メタノール抽出物として、界面活性剤(親水基と親油基の両方を有する化合物、例えば、ノニオン系界面活性剤)がある。
【0037】
本発明の粉体固着不織布は、この不織布を構成している繊維(極細短繊維、太繊維など)及び/又は粉体が融着しているのが好ましい。このように融着していると、この融着によって更に粉体が脱落しにくいためである。
【0038】
本発明の粉体固着不織布は、1層である必要はなく、粉体が固着し、極細短繊維が分散した層を2層以上含んでいることができる。粉体が固着し、極細短繊維が分散した層2層以上を備えていると、様々な特性を付与することができる。例えば、イオン交換樹脂粉末が固着している粉体固着不織布層と脱臭剤粉末が固着している粉体固着不織布層とを備えた粉体固着不織布はイオン交換性能と脱臭性能とを併せ持つものである。
【0039】
本発明の粉体固着不織布は、前述のような粉体が固着した粉体固着不織布層のみから構成されていても、粉体が脱落しにくい十分実用的なものであるが、粉体が微量でも脱落してはいけない場合には、前述のような粉体が固着した粉体固着不織布層の粉体が脱落してはいけない面側(少なくとも片面)に、粉体不含層、例えば、粉体の脱落を防止することのできる脱落防止層を更に備えているのが好ましい。
【0040】
この脱落防止層は、粉体の脱落を防止する機能を有する限り、特に限定されるものではないが、粉体固着不織布層を構成する極細短繊維と繊維径が同じか、それよりも繊維径の細い極細短繊維(すなわち、繊維径が4μm以下)を含む繊維ウエブに由来する不織布であるのが好ましい。もっとも、繊維径は、固着されている粉体の平均粒径によっても異なる。この不織布は、例えば、極細短繊維の融着によって不織布形態を維持している。このような不織布は、例えば、後述のような粉体固着不織布層を形成する際に、粉体を供給しない方法により製造することができるし、極細短繊維を通常の湿式法により繊維ウエブを形成した後、極細短繊維の融着性を利用したり、水流などの流体流により絡合したり、あるいはこれらを併用して製造することもできる。
【0041】
また、粉体の平均粒径によっては、メルトブロー法により得られる不織布や、機械的に分割可能な繊維を含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、水流などの流体流によって絡合させた不織布などを脱落防止層として使用することができる。
【0042】
この脱落防止層の目付は脱落防止層を構成する繊維、構造、粉体の平均粒径などによって異なるため、特に限定されるものではないが、目付が1g/m2以上であれば、実用的に全く問題のない脱落防止層となりうる。
【0043】
本発明の粉体固着不織布は、極細短繊維及び粉体を含んでいることによる各種特性に優れているため、本発明の粉体固着不織布の形態で、あるいは、前記粉体固着不織布層少なくとも1層を含むシート材料の形態で、例えば、電子写真装置用、トイレ用脱臭用、又はオゾン発生装置用などのオゾン分解用シート;イオン交換水精製機などのイオン交換用シート;自動車用、又は化学反応装置用などの触媒用シート;生活用品用、生理用品用、フィルタ用、又は靴用などの脱臭又は消臭シート;繊維強化プラスチック(FRP)やシート状プリプレグ(SMC);あるいは耐火ボードなどの各種用途に使用することができる。
【0044】
本発明の粉体固着不織布は、例えば次の方法によって製造することができる。
まず、前記の粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体(特には、束状の集合体)若しくはそれらの集合体群(特には、複数の束状集合体を束状で含む集合体群)、及び/又は、機械的に分割して繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体(特には、束状の集合体)を準備する。なお、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体として、付着物(界面活性剤、又は糊剤など)の付着率が0.5mass%以下(好ましくは0.3mass%以下、より好ましくは0.1mass%以下、更により好ましくは0.08mass%以下、更により好ましくは0.06mass%以下、更により好ましくは0.04mass%以下、更により好ましくは0.02mass%以下)の前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を使用すると、本発明の粉体固着不織布の製造が容易になる。
【0045】
この付着物の付着率の少ない極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体は、例えば、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の市販極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を用意した後、アセトンなどの溶媒により、付着物の付着率が0.5mass%以下となるまで洗浄して得ることができる。あるいは、付着物の付着率の少ない極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群は、例えば、複合紡糸法や混合紡糸法により製造した海島型繊維又は海島型繊維の群の海成分を、抽出除去して得ることができる。また、海島型繊維から海成分を抽出除去した後に、アセトンなどの溶媒により洗浄すれば、より付着物量を少なくすることができる。なお、付着物を除去すると、極細短繊維表面に静電気が発生しやすくなり、極細短繊維が相互に反発して分散しやすくなる。
【0046】
なお、極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群中の極細短繊維が絡んだ状態にあると、後述のような圧縮気体の作用によっても、極細短繊維を均一に分散させるのが困難になる傾向があったり、圧縮気体を何度も作用させる必要が生じるため、極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群中の極細短繊維は絡んだ状態にないのが好ましい。例えば、機械的に分割可能な分割性繊維をビーターなどによって叩解した極細短繊維集合体や、ビーターなどによって叩解したパルプや、あるいはフラッシュ紡糸法により得られた極細短繊維集合体などは、極細短繊維同士が絡んだ状態にあるため使用しないのが好ましい。なお、圧縮気体の作用によって機械的に分割して、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体(例えば、全芳香族ポリアミド短繊維若しくはそれらの集合体、溶剤抽出法により得られたセルロース短繊維若しくはそれらの集合体など)は使用することができる。また、前記の太繊維若しくはそれらの集合体を使用する場合も、アセトン洗浄などを予め実施して付着物の付着率の少ない状態とするのが好ましい。
【0047】
次いで、前述のような前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体(場合により、更に太繊維若しくはそれらの集合体)を、前述のような粉体と共に、ノズルへ供給するとともに、それらに圧縮気体を作用させることにより、ノズルから気体中に噴出させ、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群から極細短繊維に分割し、それらの極細短繊維を分散させ、及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体から極細短繊維を発生させ、それらの極細短繊維を分散させる。なお、太繊維若しくはそれらの集合体を含んでいる場合には、太繊維を分散させるか、あるいは集合体から太繊維を分割し、そして分散させる。それらの分散と共に、前述のような粉体も同時に分散させる。
【0048】
ノズルへ供給する気体の流れが実質的に層流であるのが好ましい。層流であると、極細短繊維同士の絡みが生じにくいため、極細短繊維が分散しやすくなる。一般的に、ノズル中を通過する繊維の繊維径が4μm以下(特には2μm以下)と細く、剛性が低い(柔らかい)場合、束状の極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群(特に、海島型繊維の島成分から誘導される束状極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群)の場合、あるいは極細短繊維が有機成分からなり剛性が低い(柔らかい)場合には、絡みやすくなる。しかし、このような場合でも、ノズルへ供給する気体の流れを実質的に層流とすることによって、絡みを抑制することができる。なお、ノズルとしてベンチュリー管を使用することにより、ノズルを通過する気体の流れを実質的に層流とすることができる。
【0049】
このノズルは、前記粉体と、前記極細短繊維集合体などの供給側から噴出側に向かって(流れ方向に)、一定の横断面積を有するものであることもできるが、流れ方向に連続的に又は不連続的に横断面積が小さくなるか大きくなるものであることも、流れ方向に連続的に又は不連続的に横断面積が大きくなった後に小さくなるように変化するものであることも、あるいは流れ方向に連続的に又は不連続的に横断面積が小さくなった後に大きくなるように変化するものであることもできる。また、前記ノズル噴出口から噴出させた前記粉体、並びに束状の極細短繊維集合体(若しくはそれらの集合体群)及び/又は極細短繊維発生可能繊維(若しくはそれらの集合体)を、前記ノズル噴射口の前方に設けられた衝突部材(例えば、邪魔板)に衝突させ、前記粉体、並びに束状の極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維(若しくはそれらの集合体)からの極細短繊維の発生効率及び発生した極細短繊維の分散効率を向上させることができる。特に、ノズルへ供給する気体の流れを実質的に層流とする場合には、粉体及び極細短繊維を分割し分散させる作用が乏しいため、衝突部材(例えば、邪魔板)を設けて分散を促進するのが好ましい。
【0050】
圧縮気体としては任意の気体を利用することができ、空気を用いるのが粉体固着不織布の製造上好適である。また、圧縮気体は、粉体を分散させるとともに、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を充分に分散することができ、及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割して充分に分散させることができるように、ノズルの噴出口における気体通過速度が100m/sec以上であるのが好ましい。この「気体通過速度」は、ノズルから噴出された気体の1気圧における流量(m3/sec)を、ノズル噴出口における横断面積(m2)で除した値をいう。また、圧縮気体の圧力は、粉体を分散させるとともに、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を充分に分散、及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割し、充分に分散させることができるように、2kg/cm2以上であるのが好ましい。
【0051】
また、ノズルから噴出された粉体を分散させるとともに、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を極細短繊維に分割し、充分に分散し、及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割し、充分に分散させる分散媒体としての気体は、特に限定されるものではないが、空気であるのが粉体固着不織布の製造上好適である。
【0052】
なお、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体における付着物の付着率が低いと、ノズルとそれらとの摩擦によって静電気が発生しやすく、極細短繊維同士が反発しあって、より分散した状態で集積できる、という効果を奏する。
【0053】
次いで、この分散した粉体及び分散した極細短繊維(場合により、分散した太繊維も含む)を集積して、粉体含有繊維ウエブを形成する。この粉体及び極細短繊維の集積は、例えば、多孔性のロールやネットなどの支持体を利用して実施することができる。なお、粉体及び極細短繊維は自然落下させて集積することができ、あるいは支持体の下方から気体を吸引して集積することができる。後者の場合、吸引力を強くすると、粉体と極細短繊維とが密着した状態の粉体含有繊維ウエブとすることができ、吸引力を弱くすると、比較的嵩高な粉体含有繊維ウエブとすることができる。
【0054】
なお、本発明においては、この粉体含有繊維ウエブの全質量に対する極細短繊維の質量比率を1〜40mass%とすることができるため、粉体量が多く、粉体の機能を十二分に発揮することができる。このような極細短繊維と粉体の量の調整は、粉体と極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群及び/又は極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体のノズルへの供給量を調節することにより実施することができる。
【0055】
次いで、この粉体含有繊維ウエブ中に含まれている粉体を固着させて、本発明の粉体固着不織布を製造することができる。この固着方法は特に限定されるものではないが、例えば、繊維(極細短繊維及び/又は太繊維)及び/又は粉体を融着させる方法を挙げることができる。
【0056】
以上は、本発明の粉体固着不織布の基本的な製造方法であるが、粉体及び極細短繊維が均一に分散しやすいように、粉体と前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維の集合体を圧縮気体の作用によりノズルから気体中へ噴出させる前に、ミキサーなどを利用してより本数の少ない極細短繊維集合体(又は集合体群)及び/又は、より本数の少ない極細短繊維発生可能分割性繊維の集合体に小分けしたり、分散させたり、混合するのが好ましい。
【0057】
また、粉体含有繊維ウエブを形成した後、粉体を固着させる前に、粉体含有繊維ウエブを、同じ又は異なるノズルに再度供給し、粉体及び極細短繊維をノズルから気体中に噴出させて再分散させ、粉体含有繊維ウエブを形成することを繰り返し行うことができる。
【0058】
なお、繊維径の点において異なる、2種類以上の極細短繊維、及び/又は太繊維を含む粉体固着不織布が得られるように、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群、又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体、及び/又は太繊維集合体を併用することができる。
また、繊維径の点において異なる極細短繊維を含む繊維集合体若しくはそれらの集合体群、繊維径の点において異なる極細短繊維を発生可能な分割性繊維若しくはそれらの集合体及び/又は繊維径の点において異なる太繊維、若しくはそれらの集合体の配合量を、連続的に又は不連続的に変化させながらノズルへ供給することもできる。このように変化させると、繊維径の違いによって、見掛密度の異なる層又は領域を、厚さ方向に有する粉体固着不織布を製造することができる。また、平均粒径及び/又は組成の点で異なる2種類以上の粉体の配合量を、連続的に又は不連続的に変化させながらノズルへ供給することもできる。
【0059】
前述のような好適である脱落防止層を備えている粉体固着不織布、あるいは、粉体固着不織布層と脱落防止層とを含む本発明のシート材料は、例えば、最初に、極細短繊維の集合体(特には、束状の集合体)若しくはそれらの集合体群(特には、複数の束状集合体を束状で含む集合体群)、及び/又は、機械的に分割して前記の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体(特には、束状の集合体)を、粉体を含まない条件下で、前述の方法と同様に圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させ、集積させて、極細短繊維からなる繊維ウエブを形成した後、極細短繊維の融着性を利用したり、水流などの流体流により絡合したり、あるいはこれらを併用して脱落防止層である不織布を形成した後、前述と同様の方法によって、この不織布上に粉体及び極細短繊維を集積させた後、粉体を固着して製造することができる。なお、粉体が固着した層の両側に極細短繊維からなる不織布(脱落防止層)を配置する場合には、続いて、前記脱落防止層である不織布を形成する方法と同様にして、粉体が固着した層の上に、脱落防止層である不織布を形成することによって製造することができる。
【0060】
また、極細短繊維から通常の湿式法により繊維ウエブを形成した後、極細短繊維の融着性を利用したり、水流などの流体流により絡合したり、あるいはこれらを併用して製造した不織布や、メルトブロー法により得られる不織布や、機械的に分割可能な繊維を含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、水流などの流体流によって絡合させた不織布などを用意した後、これら脱落防止層として作用する不織布の上に、前述と同様の方法によって、この不織布上に粉体及び極細短繊維を集積させた後、粉体を固着して製造することができる。なお、粉体が固着した層の両側に不織布(脱落防止層)を配置する場合には、前記脱落防止層を構成する不織布と同様の不織布を積層一体化することにより製造することができる。
なお、粉体が固着した層の両側に脱落防止層を配置する場合には、両方の脱落防止層が同じ構造及び材料であっても、異なる構造及び材料であってもよい。
【0061】
なお、分散した極細短繊維及び分散した粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する際に、分散した極細短繊維及び分散した粉体を補強材(例えば、糸、ネット、織物、編物、繊維ウエブ、又は通常の不織布など)の上に集積させて、積層体を形成することもできる。このように積層体とすることにより、粉体固着不織布の強度を向上させることができるため、本発明の粉体固着不織布を強度を必要とする用途に適用することができる。なお、本発明による粉体固着不織布を形成した後に、その粉体固着不織布を前記のような補強材(例えば、糸、ネット、織物、編物、繊維ウエブ、通常の不織布、又はフィルムなど)と一体化して積層体とすることによって、同様の効果を奏することができる。
【0062】
次に、本発明の粉体固着不織布の製造に用いることのできる製造装置について、その具体的態様を示す図1に沿って説明する。なお、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体(特に束状集合体)を用いる場合について説明する。図1は、本発明で用いる粉体固着不織布製造装置の1態様の模式的説明図である。
【0063】
まず、粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の束状集合体を、場合により太繊維若しくはそれらの集合体と共に、ミキサーなどの混合装置10に装入して、その中で束状集合体を、より小さい束状集合体に分割したり、極細短繊維を分散させたり、解したり、あるいは混合する。
【0064】
次いで、この解したり、あるいは粉体と混合された極細短繊維及び/又は束状の極細短繊維集合体(場合により太繊維及び/又はその集合体も)は、混合装置10から供給管11を介してノズル30へ供給される。移送には、混合装置10に設けた搬送用気体供給装置(図示せず)から供給される適当な搬送用気体を用いることもできる。供給管11へは、ノズル30の手前で、圧縮気体導入口20から圧縮気体が導入される。この圧縮気体の作用によって、前記の束状の極細短繊維集合体(場合により太繊維及び/又はその集合体も)は、粉体と共に、混合装置10から供給管11を介してノズル30へ移動し、更にノズル30から勢いよく、分散室40内の気体40a中へと噴出される。この気体40aへ噴出される際に、ノズル30内と気体40aとの気圧差、及び噴出された圧縮気体と気体40aとの間に形成される乱流などの相互作用によって、束状の極細短繊維集合体から極細短繊維70が発生し、粉体70aと共に、分散室40内で分散する。更に、ノズル30から噴出した極細短繊維70及び粉体70aを分散室40の壁部45に衝突させることによって極細短繊維70の分割及び分散を促進し、粉体70aの分散を促進することもできる。この場合、前記壁部45は、衝突部材として作用することができる。また、前記ノズル30の噴出口と前記壁部45との間に、別途に衝突部材を設けることもできる。前記ノズル30の噴出口と衝突部材の平坦部(衝突部)との距離は好ましくは1〜100mm、より好ましくは5〜40mm、より好ましくは5〜30mm、より好ましくは10〜30mm、最も好ましくは10〜20mmである。
【0065】
分散室40内の気体40a中に分散した極細短繊維70及び粉体70aは、分散室40内を降下し、分散室40の底部に設けたネットからなる支持体50上に集積して粉体含有繊維ウエブ80を形成する。本発明で用いる製造装置においては、図1に示すとおり、分散室40の底部の支持体50の下方に気体吸引装置60を設けることができ、この気体吸引装置60によって分散室40内の気体40aを吸引し、極細短繊維70及び粉体70aの集積を促進することができる。分散室40の内部と分散室40の外側とは、気密にすることができるし、気密にしないこともできる。
【0066】
また、粉体含有繊維ウエブ80を集積する支持体50はエンドレスベルト状で回転し、供給管12,13の方向(図1の矢印aの方向)へ粉体含有繊維ウエブ80を搬送する。続いて、粉体含有繊維ウエブ80は、供給管12及び13を介して、再度、ノズル31,32へ供給される。図1に示す態様のように、2つのノズルに再供給することができるだけでなく、1つのノズルに再供給するか、あるいは3つ以上のノズルに再供給することもできる。あるいは、充分な分散が行われている場合には、後述する熱融着装置90へ移送して結合工程に直接に送ることもできる。
【0067】
前記の供給管12及び13においても、ノズル31,32の手前で、それぞれ、圧縮気体導入口21,22から圧縮気体が導入されるので、この圧縮気体の作用によって、粉体含有繊維ウエブ80から供給される極細短繊維(場合により太繊維も)及び粉体が、供給管12,13を介してノズル31,32へ移動し、更にノズル31,32から勢いよく、分散室41,42内の気体41a,42a中へと噴出される。この際に、同様に極細短繊維71,72及び粉体71a,72aは均一に分散する。更に、各ノズル31,32から噴出した極細短繊維71,72及び粉体71a,72aを分散室41,42の壁部46,47に衝突させることによって分散を促進することもできる。この場合、前記壁部46,47は、衝突部材として作用することができる。また、前記ノズル31,32の噴出口と前記壁部46,47との間に、別途に衝突部材を設けることもできる。
【0068】
分散室41,42内の気体41a,42a中に分散した極細短繊維71,72及び粉体71a,72aは、それぞれ分散室41,42内を降下し、分散室41,42の底部に共通して設けたネットからなる支持体51上に集積する。すなわち、分散室41内の気体41a中に分散した極細短繊維71及び粉体71aは、分散室41内を降下して支持体51上に集積して単層粉体含有繊維ウエブ81を形成した後、エンドレスベルト状の支持体51と共に、分散室42の方向(図1の矢印bの方向)へ搬送される。また、分散室42内の気体42a中に分散した極細短繊維72及び粉体72aは、分散室42内を降下して、支持体51上の単層粉体含有繊維ウエブ81の上に更に集積して積層粉体含有繊維ウエブ82を形成する。もっとも、こうして形成される積層粉体含有繊維ウエブ82は、単層の粉体含有繊維ウエブ80を構成する極細短繊維を再度分散させているため、明確な2層構造が存在するものではない。
【0069】
本発明で用いる製造装置においては、図1に示すとおり、分散室41,42の底部の支持体51の下方にも気体吸引装置61を設けることができ、この気体吸引装置61によって分散室41,42内の気体41a,42aを吸引し、極細短繊維71,72及び粉体71a,72aの集積を促進することができる。また、支持体51及び気体吸引装置61は、図1に示すとおり、複数の分散室に対して共通に設けることもでき、あるいは複数の分散室のそれぞれに対して独立に別個に設けることもできる。
【0070】
次いで、エンドレスベルト状の支持体51により、この積層粉体含有繊維ウエブ82を熱融着装置90へと搬送し、この熱融着装置90にて熱の作用により極細短繊維及び/又は粉体、及び場合により太繊維が融着して粉体固着不織布83を形成することができる。そして、この粉体固着不織布83は巻き取り装置100により巻き取られる。
【0071】
本発明によるシート材料は、前記の粉体固着不織布層少なくとも1層を含有する。すなわち、本発明によるシート材料は、前記の粉体固着不織布層の単独層からなるか、あるいは前記の粉体固着不織布層1層又はそれ以上と別の粉体脱落防止層1層又はそれ以上(好ましくは1層又は2層)、又は、1層又はそれ以上の補強層を含む。補強層としては、通常の糸層、ネット層、織物層、編物層、繊維ウエブ層、又は通常の不織布層などを挙げることができる。前記の粉体固着不織布層と補強層を含むシート材料は、例えば、補強層の上に粉体含有繊維ウエブを集積し、粉体含有繊維ウエブと補強層とを結合して粉体固着不織布層を形成すると同時に製造するか、あるいは補強層と粉体固着不織布層とを適当な結合手段によって結合して製造することができる。
本発明によるシート材料は、前記の粉体固着不織布層を含有するので、粉体の有する各種特性を利用する分野に有利に用いることができる。例えば、電子写真装置用、トイレ用脱臭用、又はオゾン発生装置用などのオゾン分解用シート;イオン交換水精製機などのイオン交換用シート;自動車用、又は化学反応装置用などの触媒用シート;生活用品用、生理用品用、フィルタ用、又は靴用などの脱臭又は消臭シート;繊維強化プラスチック(FRP)やシート状プリプレグ(SMC);あるいは耐火ボードなどの各種用途に使用することができる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
ポリ乳酸からなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が25個存在し、複合紡糸法により得た海島型繊維(繊度=1.7dtex;繊維長1mmに切断されたもの)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を加水分解により抽出除去した後、風乾して、ポリプロピレン極細短繊維(繊維径=2μm;繊維長=1mm;フィブリル化していない;延伸されている;繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する;付着物の付着率=0.02mass%未満)が束状となった極細短繊維Aの集合体を得た。
【0073】
また、ポリ乳酸からなる海成分中に、高密度ポリエチレンとポリプロピレンとからなる島成分が25個存在し、複合紡糸法により得た海島型繊維(繊度=1.7dtex;繊維長1mmに切断されたもの)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を加水分解により抽出除去した後、風乾して、高密度ポリエチレン中にポリプロピレンが点在した海島型極細短繊維(繊維径=2μm;繊維長=1mm;フィブリル化していない;延伸されている;繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する;付着物の付着率=0.02mass%未満)が束状となった海島型極細短繊維Bの集合体を得た。
【0074】
更に、粉体として、平均粒径が6μmの活性炭を用意した。
【0075】
次いで、図1に示す製造装置と同様の装置を用いて、本発明による粉体固着不織布を調製した。すなわち、束状の極細短繊維A集合体、束状の海島型極細短繊維B集合体、及び活性炭を、10:5:85の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した後、噴出口における横断面形状が円形(直径=8.5mm)のベンチュリー管〔ベンチュリー管の供給側における横断面形状=円形(直径=3mm)の円錐台状〕に供給するとともに、ベンチュリー管の手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入して、前記ベンチュリー管から前記混合物を空気中に噴出(ベンチュリー管の噴出口における気体通過速度=118m/s)し、前記ベンチュリー管の噴出口前方に設けた邪魔板に衝突させて、活性炭、並びにポリプロピレン極細短繊維A及び海島型極細短繊維Bを分散させた。前記ベンチュリー管の噴出口と邪魔板との距離は15mmであった。
【0076】
次いで、この分散させた活性炭、ポリプロピレン極細短繊維及び海島型極細短繊維を、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させた。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0077】
次いで、この粉体含有繊維ウエブを担持するスパンボンド不織布基材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付70g/m2、厚さ1.2mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布の粉体固着不織布層は、ポリプロピレン極細短繊維A及び海島型極細短繊維Bが活性炭粉末の周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分によって、ポリプロピレン極細短繊維Aと海島型極細短繊維B、及び海島型極細短繊維Bと活性炭粉末とが融着した状態にあった。
【0078】
なお、こうして得られた不織布基材積層粉体固着不織布から不織布基材を剥離し、粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は40g/m2、厚さは1.1mm、見掛密度は0.036g/cm3で、極細短繊維A,Bの質量比率は15mass%であった。また、この粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0079】
この不織布基材積層粉体固着不織布をプリーツ加工したフィルターユニット(山高さ=20mm,ピッチ=2mm)を作成し、トルエンを25ppmの濃度で含む空気を面風速14cm/sec.で通過させたところ、フィルターユニット出口におけるトルエンの除去率は99%以上の高い脱臭性能を示した。また振動を与えても不織布基材積層粉体固着不織布からの活性炭の脱落は観察されなかった。
【0080】
【実施例2】
実施例1と同様にして製造した束状の極細短繊維A集合体、束状の海島型極細短繊維B集合体を用意した。また、粉体として電解質二酸化マンガン粉末(平均粒径=3μm)を用意した。
【0081】
次いで、実施例1と同様に、図1に示す製造装置と同様の装置を用いて、本発明による粉体固着不織布を調製した。すなわち、束状の極細短繊維A集合体、束状の海島型極細短繊維B集合体、及び電解質二酸化マンガン粉末を、6:9:85の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、ポリプロピレン極細短繊維A、海島型極細短繊維B及び電解質二酸化マンガン粉末を分散室内で分散させた。
【0082】
次いで、この分散させた電解質二酸化マンガン粉末、ポリプロピレン極細短繊維A及び海島型極細短繊維Bを、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0083】
次いで、この粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付90g/m2、厚さ1.0mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布の粉体固着不織布層は、ポリプロピレン極細短繊維A及び海島型極細短繊維Bが電解質二酸化マンガン粉末の周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分によって、ポリプロピレン極細短繊維Aと海島型極細短繊維B、及び海島型短繊維Bと電解質二酸化マンガン粉末とが融着した状態にあった。
【0084】
なお、不織布基材積層粉体固着不織布から不織布基材を剥離し、粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は60g/m2、厚さは0.9mm、見掛密度は0.067g/cm3で、極細短繊維A,Bの質量比率は15mass%であった。また、この粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0085】
この不織布基材積層粉体固着不織布を、エリアカレンダー(温度=130℃)でプレス処理して厚さを0.3mmとした後、コルゲート加工(山高さ=2mm,ピッチ=1.5mm)し、濃度10ppmのオゾンガスを通過させたところ、出口のオゾン濃度は0.1ppm以下に低下しており、優れたオゾン分解性能を示した。また振動を与えても不織布基材積層粉体固着不織布からの電解質二酸化マンガン粉末の脱落は観察されなかった。
【0086】
【実施例3】
共重合ポリエステルからなる海成分中に、結晶性ポリスチレンからなる島成分が61個存在し、複合紡糸法により得た海島型繊維(繊度=2.3dtex;繊維長0.5mmに切断されたもの)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分である共重合ポリエステルを加水分解により抽出除去した後、風乾して、結晶性ポリスチレン極細短繊維(繊維径=1.1μm;繊維長=0.5mm;フィブリル化していない;延伸されている;繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する;付着物の付着率=0.02mass%未満)が束状となった極細短繊維Cの集合体を得た。
【0087】
また、実施例1と同様にして製造した束状となった極細短繊維Bの集合体、及び粉体として球状アルミナ粉末(平均粒径=25μm)を用意した。
【0088】
次いで、図1に示す製造装置と同様の装置を用いて、本発明による粉体固着不織布を調製した。すなわち、束状となった極細短繊維C集合体、束状となった極細短繊維B集合体、及び球状アルミナ粉末とを、1:1:98の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズル30の噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、結晶性ポリスチレン極細短繊維C、海島型極細短繊維B及び球状アルミナを分散室内で分散させた。
【0089】
次いで、この分散させた結晶性ポリスチレン極細短繊維C、海島型極細短繊維B及び球状アルミナを、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0090】
次いで、この粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付410g/m2、厚さ0.55mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布の粉体固着不織布層は、結晶性ポリスチレン極細短繊維C及び海島型極細短繊維Bが球状アルミナの周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分によって、結晶性ポリスチレン極細短繊維Cと海島型極細短繊維B、及び海島型極細短繊維Bと球状アルミナとが融着した状態にあった。
【0091】
なお、不織布基材積層粉体固着不織布から不織布基材を剥離し、粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は380g/m2、厚さは0.45mm、見掛密度は0.844g/cm3で、極細短繊維の質量比率は2mass%であった。また、この粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0092】
この粉体固着不織布層を4枚重ね合わせ、温度が130℃の熱プレス機でプレス処理(圧力=50kg/cm2)を施したところ、アルミナ充填率が高く熱伝導性の高い柔軟なシート(目付=1520g/m2;厚さ=0.75mm;見掛密度=2.03g/cm3)が得られた。このシートはアルミナが脱落せず、取り扱い性、強度的に優れるものであった。
【0093】
【実施例4】
市販のポリエステル極細短繊維(繊維径=3.2μm;繊維長=3.0mm;帝人製)を用意し、この繊維表面に付着している繊維油剤をアセトン中で抽出除去した。
【0094】
また、実施例1と同様にして製造した束状の極細短繊維A集合体と束状の極細短繊維B集合体を用意した。
更に、粉体として球状アルミナ粉末(平均粒径=25μm)を用意した。
【0095】
次いで、図1に示す製造装置と同様の装置を用いて、ポリエステル極細短繊維、束状の極細短繊維A集合体、束状の海島型極細短繊維B集合体、及び球状アルミナ粉末を、2:2:4:92の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、ポリエステル極細短繊維、極細短繊維A、海島型極細短繊維B、及び球状アルミナ粉末を分散させた。
【0096】
次いで、この分散させたポリエステル極細短繊維、ポリプロピレン極細短繊維A、海島型極細短繊維B、及び球状アルミナ粉末を、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0097】
次いで、この粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付450g/m2、厚さ0.65mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布の粉体固着不織布層は、ポリエステル極細短繊維、ポリプロピレン極細短繊維A及び海島型極細短繊維Bが球状アルミナ粉末の周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分によって、極細短繊維同士、及び海島型極細短繊維Bと球状アルミナとが融着した状態にあった。
【0098】
なお、不織布基材積層粉体固着不織布から不織布基材を剥離し、粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は420g/m2、厚さは0.55mm、見掛密度は0.764g/cm3で、極細短繊維の質量比率は8mass%であった。また、この粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0099】
この粉体固着不織布を2枚重ね合わせ、温度130℃の熱プレス機でプレス処理(圧力=50kg/cm2)を施したところ、アルミナ充填率が高く、熱伝導性の高い柔軟なシート(目付=840g/m2;厚さ=0.43mm;見掛密度=1.95g/cm3)が得られた。このシートはアルミナが脱落せず、取り扱い性、強度的に優れるものであった。
【0100】
【実施例5】
共重合ポリエステルからなる海成分中に、ポリ−4−メチルペンテンからなる島成分が約3900個存在し、混合紡糸法により得た海島型繊維(繊度=8.8dtex;繊維長0.5mmに切断されたもの)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分である共重合ポリエステルを加水分解により抽出除去した後、風乾して、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維(繊維径=0.4μm;繊維長=0.5mm;フィブリル化していない;延伸されている;繊維軸方向において直径が変化している;付着物の付着率=0.02mass%未満)が束状となったポリ−4−メチルペンテン極細短繊維Dの集合体を得た。
【0101】
また、実施例3と同様にして製造した結晶性ポリスチレン極細短繊維Cの集合体と、実施例1と同様にして製造した束状となった海島型極細短繊維Bの集合体を用意した。
【0102】
次いで、図1に示す製造装置と同様の装置を用いて、束状となったポリ−4−メチルペンテン極細短繊維Dの集合体、結晶性ポリスチレン極細短繊維Cの集合体、及び海島型極細短繊維Bの集合体を、40:20:40の質量比でミキサーに供給して、これら繊維を解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維D、結晶性ポリスチレン極細短繊維C、及び海島型極細短繊維Bを分散させた。
【0103】
次いで、この分散させたポリ−4−メチルペンテン極細短繊維D、結晶性ポリスチレン極細短繊維C、及び海島型極細短繊維Bを、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、極細短繊維ウエブ(脱落防止層;目付=5g/m2)−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0104】
次いで、前述と同様の束状となったポリ−4−メチルペンテン極細短繊維Dの集合体、実施例3と同様にして製造した結晶性ポリスチレン極細短繊維Cの集合体、実施例1と同様にして製造した海島型極細短繊維Bの集合体、及び粉体としてアナターゼ型二酸化チタン粉末(平均粒径=0.2μm)を用意した。
【0105】
次いで、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維Dの集合体、結晶性ポリスチレン極細短繊維Cの集合体、海島型極細短繊維Bの集合体、及びアナターゼ型二酸化チタン粉末を、3:6:6:85の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、二酸化チタン粉末、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維、結晶性ポリスチレン極細短繊維、及び海島型極細短繊維を分散させた。
【0106】
次いで、この分散させたポリ−4−メチルペンテン極細短繊維D、結晶性ポリスチレン極細短繊維C、海島型極細短繊維B、及び二酸化チタン粉末を、前述の極細短繊維ウエブ(脱落防止層;目付=5g/m2)−不織布基材複合材の極細短繊維ウエブ上で捕集して、粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0107】
次いで、前述の方法と全く同様にして、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維Dの集合体、結晶性ポリスチレン極細短繊維Cの集合体、及び海島型極細短繊維Bの集合体を分散散布し、前記粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材の粉体含有繊維ウエブ上で捕集して、極細短繊維ウエブ−粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。
【0108】
次いで、この極細短繊維ウエブ−粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付270g/m2、厚さ0.42mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布の粉体固着不織布層は、ポリ−4−メチルペンテン極細短繊維D、結晶性ポリスチレン極細短繊維C、及び海島型極細短繊維Bが二酸化チタン粉末の周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分によって、極細短繊維同士及び海島型極細短繊維Bと二酸化チタンとが融着した状態にあった。また、極細短繊維のみからなる極細短繊維ウエブに由来する繊維層(脱落防止層)によって、二酸化チタン粉末の脱落を防止できる状態にあった。
【0109】
なお、不織布基材積層粉体固着不織布から不織布基材を剥離し、三層構造粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は240g/m2、厚さは0.32mm、見掛密度は0.750g/cm3で、粉体固着不織布層における極細短繊維の質量比率は15mass%であった。なお、この三層構造粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、三層構造粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0110】
この不織布基材積層粉体固着不織布をプリーツ加工したフィルタユニット(山高さ=20mm;ピッチ=2mm)を作成し、このフィルタユニットに対して紫外線を照射しながら、トルエンを100ppbの濃度で含む空気を速度20cm/sで通過させたところ、フィルターユニット出口におけるトルエンの除去率は80%に達した。また、この不織布基材積層粉体固着不織布に対して振動を与えても、二酸化チタン粉末の脱落は観察されなかった。
【0111】
【実施例6】
実施例1と同様にして製造した束状海島型極細短繊維Bの集合体を用意した。
【0112】
次いで、この海島型極細短繊維Bの集合体をミキサーに供給して、解した後、海島型極細短繊維B集合体を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、海島型極細短繊維Bを分散させた。
【0113】
次いで、この分散させた海島型極細短繊維Bを、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、極細短繊維ウエブ(目付=5g/m2)−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0114】
次いで、実施例1と同様にして製造した束状となった海島型極細短繊維Bの集合体と、粉体として、低密度ポリエチレン粉末(平均粒径=12μm;住友精化(株)製)を用意した。
【0115】
次いで、海島型極細短繊維B集合体と低密度ポリエチレン粉末とを、5:95の質量比でミキサーに供給して、解すとともに混合した後、これら混合物を、噴出口における横断面形状が円形(直径=3.2mm)で連続的に先細りの先細ノズルに供給するとともに、先細ノズルの手前に設けられた圧縮気体導入口から層流の圧縮空気(圧力=6kg/cm2)を導入し、前記先細ノズルから前記混合物を分散室の空気中に噴出(先細ノズルの噴出口における気体通過速度=1600m/s)して、低密度ポリエチレン粉末及び海島型極細短繊維Bを分散させた。
【0116】
次いで、この分散させた低密度ポリエチレン粉末及び海島型極細短繊維Bを、前述の極細短繊維ウエブ(目付=5g/m2)−不織布基材複合材の極細短繊維ウエブ上に集積させ、粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0117】
次いで、この粉体含有繊維ウエブ−極細短繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度107℃に設定されたオーブンに供給し、5分間熱処理を実施して、目付118g/m2、厚さ0.55mmの不織布基材積層粉体固着不織布を製造した。この不織布基材積層粉体固着不織布は海島型極細短繊維Bが低密度ポリエチレン粉末の周囲を囲むように絡合しているとともに、海島型極細短繊維Bを構成する高密度ポリエチレン成分と低密度ポリエチレン粉末の一部が溶融し、海島型極細短繊維B同士及び海島型極細短繊維Bと低密度ポリエチレン粉末とが融着した状態にあった。また、海島型極細短繊維Bのみからなる極細短繊維ウエブに由来する繊維層(脱落防止層)によって、低密度ポリエチレン樹脂粉末の脱落を防止できる状態にあった。
【0118】
なお、不織布基材積層粉体固着不織布から二層構造粉体固着不織布を剥離し、二層構造粉体固着不織布のみについて各種物性を測定したところ、目付は88g/m2、厚さは0.45mm、見掛密度は0.196g/cm3で、粉体固着不織布層における極細短繊維の質量比率は5mass%であった。また、この二層構造粉体固着不織布は低密度ポリエチレン粉末が脱落しないものであった。更に、この二層構造粉体固着不織布を熱水中に15分間浸漬して抽出した付着物と、熱メタノール中に15分間浸漬して抽出した付着物との総付着物質量の、二層構造粉体固着不織布の質量に対する百分率(付着物の付着率)は0.02mass%未満であった。
【0119】
この二層構造粉体固着不織布を125℃に設定されたオーブン中で5分間熱処理したところ、低密度ポリエチレン粉末が溶融してフィルム化し、その低密度ポリエチレン中に海島型極細短繊維Bが分散した、柔軟性と強度に優れた繊維強化プラスチック(FRP)シート(目付=88g/m2;厚さ=0.14mm;見掛密度=0.629g/cm3)となり、海島型極細短繊維BはFRP中の骨材の役目を果たしていることが判った。
【0120】
【発明の効果】
本発明の粉体固着不織布は、小粒径の粉体であっても脱落しにくく、粉体本来の機能を発揮することのできるものである。
前記粉体の平均粒径が50μm以下であると、粉体の機能を最大限に発揮することができる。
前記極細短繊維の前記粉体が固着している層における質量比率が1〜40mass%であると、粉体量が多いため、粉体の機能を最大限に発揮することができる。
【0121】
前記粉体が固着している層に付着している付着物の付着率が0.5mass%以下であると、付着物によって粉体の機能が阻害されない。
前記粉体が固着している層の少なくとも片面に、粉体の脱落を防止することのできる脱落防止層を更に備えていると、より確実に粉体の脱落を防止することができる。
本発明の粉体固着不織布の製造方法によれば、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維が分散した、湿式法ではない方法により形成された繊維ウエブに、粉体が固着した不織布を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粉体固着不織布を製造することのできる製造装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
10・・・混合装置;11,12,13・・・供給管;
20,21,22・・・圧縮気体導入口;
30,31,32・・・ノズル;40,41,42・・・分散室;
40a,41a,42a・・・気体;45,46,47・・・分散室の壁部;
50,51・・・支持体;60,61・・・気体吸引装置;
70,71,72・・・極細短繊維;
70a,71a,72a・・・粉体;80・・・繊維ウエブ;
81・・・単層繊維ウエブ;82・・・積層繊維ウエブ;
83・・・熱融着不織布;90・・・熱融着装置;100・・・巻き取り装置。
Claims (13)
- 粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維とを分散した状態で含む粉体固着不織布であって、前記粉体固着不織布全体にわたって前記極細短繊維が束の状態で存在しておらず、前記極細短繊維が海島型繊維の海成分を除去して得た島成分からなり、極細短繊維の集合体又はそれらの集合体群を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて繊維ウエブを形成する方法により形成した粉体含有繊維ウエブから形成した前記粉体固着不織布。
- 前記粉体の平均粒径が50μm以下である、請求項1記載の粉体固着不織布。
- 粉体固着不織布の全質量に対する前記極細短繊維の質量比率が1〜40mass%である、請求項1又は請求項2記載の粉体固着不織布。
- 付着物の付着率が0.5mass%以下である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の粉体固着不織布。
- 前記極細短繊維が有機成分からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体固着不織布。
- 繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を極細短繊維に分割させ、及び/又は、分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割させると共に粉体を分散させる工程、
分散した極細短繊維及び粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する工程、及び
得られた粉体含有繊維ウエブから不織布を形成する際に、前記粉体含有繊維ウエブ中に含まれている粉体を固着させる工程、
を含むことを特徴とする、粉体固着不織布の製造方法。 - 前記極細短繊維の集合体が束状集合体である、請求項6記載の製造方法。
- 前記極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を前記ノズルへ供給する前に、それらの付着物除去工程を実施する、請求項6又は7に記載の製造方法。
- 前記ノズルへ供給する気体の流れが実質的に層流である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、極細短繊維発生可能分割性繊維若しくはそれらの集合体を、粉体と共にノズルから噴出させた後、前記ノズル噴射口の前方に設けられた衝突部材に衝突させる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
- 粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維とを分散した状態で含む粉体固着不織布であって、前記粉体固着不織布全体にわたって前記極細短繊維が束の状態で存在しておらず、前記極細短繊維が海島型繊維の海成分を除去して得た島成分からなり、極細短繊維の集合体又はそれらの集合体群を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて繊維ウエブを形成する方法により形成した粉体含有繊維ウエブから形成した前記粉体固着不織布の層少なくとも1層を含有することを特徴とする、シート材料。
- 前記粉体固着不織布層の少なくとも片面に、粉体を含まない層を更に有する、請求項11に記載のシート材料。
- 繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、機械的に分割して繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維を発生可能な分割性繊維、若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記極細短繊維集合体若しくはそれらの集合体群を極細短繊維に分割させ、及び/又は、分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細短繊維に分割させると共に粉体を分散させる工程、
分散した極細短繊維及び粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する工程、及び
得られた粉体含有繊維ウエブから不織布を形成する際に、前記粉体含有繊維ウエブ中に含まれている粉体を固着させ、更に、それらと同時に粉体を含まない層を結合させる工程、
を含むことを特徴とする、粉体固着不織布層含有シート材料の製造方法。
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JP2001373171A JP3860465B2 (ja) | 2000-12-06 | 2001-12-06 | 粉体固着不織布、その製法、及びそれを含むシート材料 |
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